説明

プリンタ内の転写ローラにより加えられる転写圧を変化させるシステムおよび方法

【課題】プリンタにおいて、作像部材に対向する転写ローラに印加される複数の力を決定し、ニップ内の媒体との様々な接触段階中のニップ力制御を容易にする。
【解決手段】プリンタは、作像部材12と、作像部材に隣接して配置された転写ローラ94と、転写ローラ94の移動を制御する信号を発生させるように構成された制御装置と、転写ローラ94の移動を制御する制御装置からの信号を受容するように制御装置に連結され、転写ローラ94を作像部材12との接触および接触解除のため移動させるように転写ローラ94に連結された変位可能なリンク機構240とを備える。変位可能なリンク機構240は、指令される第1の力により作像部材12と接触させる転写ローラ94の第1の移動を行なって転写ニップを形成し、指令される第2の力により転写ローラ94に第2の移動を行なわせ、指令される第3の力により転写ローラ94に第3の移動を行なわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作像部材を有するプリンタに関し、より詳細には、プリンタ内のローラ移動を制御する構成要素および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクまたは相変化インクプリンタは通常、ペレットまたはインクスティックのいずれかによる固体形状のインクを受け取る。固体のインクペレットまたはインクスティックは供給シュート内に配置され、ヒータアセンブリに給送される。固体インクの給送は、重力または電気機械的もしくは機械的機構またはこれら方法の組合せを用いて実現可能である。ヒータアセンブリにおいて、ヒータプレートはプレートに突き当たった固体インクを液体へと溶融させ、この液体は収集され、記録媒体に対する噴射を行なう印刷ヘッドまで搬送される。
【0003】
中間作像部材を有する既知の印刷システムでは、印刷プロセスは作像段階と、転写段階と、オーバーヘッド段階とを含む。インク印刷システムにおいて、作像段階は、印刷ヘッドを構成する圧電素子を介して印刷ドラムまたは他の中間作像部材上にインクが画像パターンで吐出される印刷プロセスの一部分である。転写または転写段階は、作像部材上のインク画像が記録媒体に転写される印刷プロセスの一部分である。画像転写は一般的に、転写ローラを作像部材と接触させ、転写ニップを形成することにより行なわれる。作像部材が転写ニップを通して画像を回転させると、記録媒体がニップに到達する。ニップ内の圧力により、順応性を有する画像インクの作像部材から記録媒体への転写が促進される。オーバーヘッド段階において、記録媒体の後縁がニップを通過して出るとともに、転写ローラの作像部材に対する接触が解放される。画像記録基材の画像領域が転写ニップを通過すると、オーバーヘッド段階が開始される。基材の後縁がニップを通過する際に、転写ローラを作像部材から即座に引き込んでもよく、または低減した力で作像部材に対して回転させ続けてから引き込んでもよい。画像の転写を容易にするため転写ローラおよび/または中間作像部材を加熱してもよいが、必須ではない。プリンタによっては、転写ローラは定着ローラと呼ばれる。簡略化のため、本明細書で用いる用語「転写ローラ」は、記録媒体シートへの画像の転写またはシートに対する画像の定着を促進するために用いられる、加熱されるか非加熱のすべてのローラを指す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くのプリンタが、様々な種類の記録媒体が格納される複数のトレイを有する。これら様々な媒体は、サイズが異なる紙またはポリマフィルムの記録媒体であってもよい。これら様々な媒体は、厚さも異なる。媒体が転写ニップに導入されると、媒体がニップに進入するにつれて転写ローラが媒体の前縁に乗り上げる。ニップにおける圧力の下での媒体に対する画像の転写は転写または転写定着(transfix)として知られ、転写ローラと中間作像部材との間の力が調整されるので、名目上、均一かつ一定不変の力の下で実現される。ニップにおいて媒体シート縁部に乗り上げるために必要なトルクは、中間作像部材に対する転写ローラの圧力、ニップに進入する媒体の厚さ、および中間作像部材の回転速度の関数であるが、それらに限らない。媒体が厚くなり転写ローラ圧が高くなると、中間作像部材駆動システムが駆動ベルトの過度なすべりまたは駆動サーボ追従エラーにより停止してしまうかもしれない。多様な厚さの媒体すべてに対応する中間作像部材に単一の圧力を加えるように転写ローラを構成しようとすると、処理能力および/または品質/耐久性の間にトレードオフ関係が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
作像部材に対向する転写ローラに印加される複数の力を決定し、ニップ内の媒体との様々な接触段階中のニップ力制御を容易にするプリンタおよび方法が開発された。このプリンタは、印刷ヘッドにより吐出されたインクを受容する作像部材と、作像部材に隣接して配置された転写ローラと、転写ローラの移動を制御する信号を発生させるように構成された制御装置と、転写ローラの移動を制御する制御装置からの信号を受容するように制御装置に連結され、転写ローラを作像部材との接触および接触解除のため移動させるように転写ローラに連結された変位可能なリンク機構とを備え、変位可能なリンク機構は、指令される第1の力により作像部材と接触させる転写ローラの第1の移動を行なって転写ニップを形成し、指令される第2の力により転写ローラに第2の移動を行なわせ、指令される第3の力により転写ローラに第3の移動を行なわせる。指令される力は、ニップ内の媒体シートとの相互作用の段階に対応しており、これらの力は相互に異なっていてもよい。ニップ内の次のシートとの相互作用のため転写ローラに、付加的に指令される力を加えてもよい。次のシートに関して指令される力は、前のシートの処理における対応する段階に関して用いられる指令される力に対応してもよく、または異なってもよい。
【0006】
作像部材上の転写ローラまたは他のローラにより現われる圧力を変化させるシステムおよび方法を実現するインクプリンタの上記態様および他の特徴を、添付図面に関連して与えられる以下の記述において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、インクプリンタの主要なサブシステムを示す固体インクプリンタのシステム図である。
【図2】図2は、作像部材に関して転写ローラを移動させる転写ローラ制御システムの斜視図である。
【図3】図3は、例示的印刷動作の間に転写ローラの位置および力が制御される手順のフローチャートである。
【図4】図4は、作像部材の回転速度、転写ローラの指令速度、および転写ローラに加えられる力の間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、転写ローラに対する力の印加を制御して、転写動作の間の作像部材駆動ベルトのすべりまたは他の故障の危険を低減するように変更可能な、従来技術によるインクプリンタ10のシステム図を示す。読者は、以下で論ずる印刷プロセスの実施形態が多くの代替的形態および変更により実現可能であることを理解すべきである。さらに、要素または材料の寸法、形状または種類はいかなる適切なものを用いてもよい。
【0009】
図1を参照すると、高速相変化インク画像作成機またはプリンタ10のような画像作成機が図示されている。図示のように、作成機10は、以下で説明する操作サブシステムおよび構成要素が直接または間接的に取り付けられるフレーム11を備える。高速相変化インク画像作成機またはプリンタ10は、ドラム形状で図示されているが、支持されたエンドレスベルト形状であってもよい中間作像部材12を備える。中間作像部材12は、方向16に移動可能で相変化インク画像が形成される作像面14を有する。
【0010】
また高速相変化インク画像作成機またはプリンタ10は、固体形状である、ある色の相変化インクの少なくとも1つの供給源22を有する相変化インク給配サブシステム20を備える。相変化インク画像作成機またはプリンタ10は多色画像作成機なので、インク給配システム20は、相変化インクの異なる4色CYMK(シアン(cyan)、黄色(yellow)、マゼンタ(magenta)、黒色(black))を表わす4つの供給源22、24、26、28を備える。また相変化インク給配システムは、固体形状の相変化インクを液体形状に溶融または相変化させ、少なくとも1つの印刷ヘッドアセンブリ32を含む印刷ヘッドシステム30に液体形状インクを供給する溶融・制御装置を備える。相変化インク画像作成機またはプリンタ10は高速、すなわち処理能力が高い多色画像作成機なので、印刷ヘッドシステムは、図示のような4つの独立した印刷ヘッドアセンブリ32、34、36および38を備える。
【0011】
引き続き図1を参照すると、相変化インク画像作成機またはプリンタ10は基材供給取扱いシステム40を備えている。例えば基材供給取扱いシステム40は基材供給源42、44、46、48を備えてもよく、例えばそのうち供給源48は、例えばカット紙形状の画像受容基材を格納供給する高容量用紙供給部またはフィーダである。基材供給取扱いシステム40は、基材予熱器52と、基材・画像ヒータ54と、定着装置60とを有する基材取扱い処理システム50を備えている。また図示のような相変化インク画像作成機またはプリンタ10は、文書保持トレイ72と、文書シート給送回収装置74と、文書露光走査システム76とを有するオリジナル文書フィーダ70を備えてもよい。
【0012】
作成機またはプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素および機能の動作および制御は、制御装置または電子サブシステム(ESS)80の助力により実行される。ESSまたは制御装置80は例えば、中央処理装置(CPU)82と、電子記憶装置84と、表示装置またはユーザインタフェース(UI)86とを有する自立型、専用マイクロコンピュータである。ESSまたは制御装置80は例えば、センサ入力・制御手段88と、画素配置・制御手段89とを備える。さらに、CPU82は、走査システム76などの画像入力源、またはオンライン接続またはワークステーション接続90、および印刷ヘッドアセンブリ32、34、36、38の間の画像データフローの読取り、捕捉、前処理および管理を行なう。それ自体として、ESSまたは制御装置80は、マシンの印刷動作を含むマシンの他のサブシステムおよび機能のすべてを動作させ制御する主たるマルチタスク演算処理装置である。
【0013】
この制御装置は、メモリに格納されたプログラム命令を実行する汎用マイクロプロセッサであってもよい。この制御装置は、プリンタからステータス信号を受信してプリンタ要素に制御信号を供給するインタフェースおよび入出力(I/O)要素を備える。代替的に、制御装置は、必要なメモリ、インタフェースおよびI/O要素も基板上に設置された基板上の専用処理装置であってもよい。そのような装置は、特定用途向け集積回路(ASIC)として知られる場合がある。この制御装置は、適切に構成された別個の電子部品により、または主にコンピュータプログラムとして、または適切に構成されたハードウェア要素およびソフトウェア要素の組合せとして実現してもよい。制御装置のメモリに格納されたプログラム命令は、媒体シートが転写ニップに進入する前、シートが画像を受容する間、およびシートが転写ニップを出る際に、転写ローラに加えられる力の変化を含む、転写ローラの移動および転写ローラに加えられる力を調整するための、以下に記述するプロセスを実現するように制御装置を構成する。
【0014】
動作の際、作成すべき画像に関する画像データは、処理のため走査システム76から、またはオンライン接続またはワークステーション接続90から制御装置80に送られ、印刷ヘッドアセンブリ32、34、36、38に出力される。さらに、制御装置は、例えばオペレータの入力からユーザインタフェース86を介して、関連するサブシステムおよび構成要素の制御を決定および/または容認し、それに応じてそのような制御を実行する。この結果、適切な色の固体形状の相変化インクが溶融して印刷ヘッドアセンブリに給送される。さらに、画素配置制御が作像面14に対して行なわれ、そのような画像データごとに所望の画像が形成されるとともに、作像面14上の画像形成と時間を合わせて受容基材が供給源42、44、46、48のいずれか1つにより供給され、サブシステム50により操作される。次に制御装置は、以下でより詳細に説明するように、転写ローラ94に連結された駆動システムを作動させる信号を発生させ、転写ローラを移動させて中間作像部材12と接触させ、転写ニップ92を形成する。転写ローラ94が基材に乗り上げながら受容基材がニップに進入し、定着装置60におけるその後の定着のため、中間作像部材12の作像面14から受容基材上に画像が転写される。
【0015】
中間作像部材12に対して転写ローラ94を移動させる、従来技術による転写ローラ制御システム120を図2に示す。システム120は、転写ローラ94の一端における転写ローラ制御アセンブリ210と、転写ローラ94の他端における転写ローラ制御アセンブリ220とを備える。転写ローラ制御アセンブリ210および220は本質的に同じなので、以下の説明はローラ制御アセンブリ210についてのみ行なう。アセンブリ210は、その出力シャフト上にプーリ(図示せず)を有するモータ224を備える。エンドレスベルト228は、モータ224の出力シャフト上のプーリ、およびプーリ230の周囲に巻き掛けられる。プーリ230はその中央に、セクタギヤ238の歯に係合するギヤ歯234を有する。セクタギヤ238の外側端部には、保持アーム244に対するリンク240が取り付けられる。保持アーム244内には、転写ローラ94の一端を受容するようにジャーナル軸受248が取り付けられた開口が存する。保持アーム244の近端にはピボットピンがあるので、リンク240の動きにより調整されるように保持アーム244が軸243を中心として回転することができる。転写ローラ制御アセンブリ220も同様に配設される。
【0016】
制御装置がモータ224を動作させるため信号を発生させると、その出力シャフトが回転することにより、エンドレスベルト228がプーリ230を回転させる。プーリ230が回転すると、ギヤ歯234が軸受軸239を中心としてセクタギヤ238を回転させる。セクタギヤ238の外側端部におけるリンク240は、ピボットピン241によりセクタギヤ238に連結され、ピボットピン242により保持アーム244に連結される。セクタギヤ238の回転によりリンク240が移動し、リンク240により保持アーム244が軸243を中心として回転する。このようにして、軸受248内の転写ローラの端部はモータ224の双方向制御により移動する。アセンブリ210内のモータ224およびアセンブリ220内の対応するモータの動作は制御装置により整合され、転写ローラ94が作像部材12との係合および係合解除状態へ円滑に移動するようになっている。ある実施形態では、これらモータの動作は独立して制御される。アセンブリ210および220は、リンク240に取り付けられたひずみゲージまたはリンク240のたわみを計測するセンサのようなセンサを備えてもよい。これらアセンブリ内のセンサは、転写ローラ94により作像部材12に加えられている圧力の示度を与える。アセンブリ210および220内のモータを制御することにより作像部材12に対する転写ローラ94の力を調整する信号の調整のためのフィードバックとして、圧力信号を制御装置で用いることができる。
【0017】
転写ローラ制御アセンブリの一実施形態を説明してきたが、他の実施形態を用いてもよい。他の実施形態は、転写ローラの各端部ごとにローラ制御アセンブリで構成してもよく、転写ローラの両端部を制御する単一のアセンブリで構成してもよい。様々な転写ローラ制御の実施形態に必要なのは、転写ローラ制御が変位可能なリンク機構として動作し、リンク機構をある移動範囲内で移動させる制御信号に応じて転写ローラを作像部材との係合状態および係合解除状態へ移動させることである。この移動範囲は一端が作像部材からの係合解除状態として規定され、範囲の他端は、十分な圧力で作像部材に対して押圧され転写ニップを形成している状態として規定される。さらに、印刷プロセスにおいて、プリンタに通された作像部材と選択的に係合する他のローラとともに同様の制御アセンブリを用いてもよい。以下で説明するシステムおよび方法を用いて、これらローラの移動、さらにこれらローラに加えられる力を制御してもよい。
【0018】
以下でより詳細に説明するシステムおよび方法は、変位可能なリンク機構を動作させ、転写ローラに対する力の印加を調整する方法を実現する。概略的に、作像部材に向けてローラを移動させ、ローラに毎回異なる力を加えるように制御装置を構成してもよい。例えば、制御装置は、第1の力で転写ローラを移動させて転写ニップを形成し、次に第2の力を加えて媒体シート前縁の乗上げ(climb)を容易にし、第3の力を加えて画像転写を行ない、第4の力を加えてシートをニップから出やすくしてもよい。この例では、制御装置は、前に処理されたシート直後に別の媒体シートが続く場合にはあるレベルで、または他のシートが直ちに利用可能でない場合には異なるレベルで第4の力を加えてもよい。第2のシートが続く場合、第4の力は、ニップを形成する対向する構造にローラが接触してから次のシートに乗り上げる短い期間に適合するものでもよい。第2のシートへの画像の転写を容易にするため制御装置により第5の力を指令してもよく、第2のシートを排出するため制御装置により第6の力を指令してもよい。制御装置により指令される力は、既定のレベル、またはニップ内の媒体シートの厚さおよび作像部材の表面速度に関して制御装置により決定されるレベルに設定してもよい。
【0019】
ローラ制御を実現するための方法の一実施形態を図3に示す。制御装置は、転写ローラを移動させて作像部材と接触させ転写ニップを形成するため、第1指令力信号とともに第1開ループ速度指令信号を発生させる(ブロック302)。転写ローラと作像部材とを接触させると、転写機構内のセンサが、転写ローラによって加えられている力の大きさを認識する信号を発生させる。これらの信号を制御装置により用いて、プロセス300の間に制御装置により指令される所与の力に応じて転写ローラにより加えられる転写力を調整することができる。第1のニップを形成するために用いられる第1の力とは異なる第2の力が制御装置により指令される(ブロック304)。この第2の力により、ニップ形成後にニップに進入する第1の画像基材の前縁に対する転写ローラの乗上げが容易になる。ある実施形態では、第2の力は制御装置により生成される乗上げ信号に応じて加えられる。乗上げが完了すると、作像部材から第1の画像基材に第1の画像を転写するため転写ローラに第3の力が加えられる(ブロック306)。
【0020】
図3で説明する例示的プロセスでは、2つの別個の画像基材に2つの画像が順次転写される。第1画像プロセスの完了後、第3の指令された力とは異なる第4の力が制御装置により指令される。この例では、第4の力は第3の力よりも小さい(ブロック308)。この第4の力により、第2の画像基材の前縁に対する転写ローラの乗上げが容易になる。転写ローラは第1の画像基材の後縁を外れてコピー間ギャップ(inter-copy gap)と呼ばれる短い距離の間、作像部材上を転がり、その後、第2の画像基材の前縁に乗り上げる(ブロック310)。乗上げが完了すると、本例では第3の力とほぼ同じ第5の力が制御装置により指令される(ブロック312)。第2の画像が転写された後、第2の基材の後縁を外れて転がる準備として、制御装置により第6の力が指令される(ブロック314)。基材がニップを出ると、転写ローラが再び作像部材上へと転がる。制御装置が開ループ速度指令信号を発生させるとともに、転写ローラが作像部材から離れる(ブロック316)。
【0021】
画像基材の前縁に対する転写ローラ94の乗上げを容易にする改良されたプリンタでは、転写ローラ94は中間位置に移動する。中間位置において、転写ローラは、画像転写圧力よりも低い圧力で作像部材12とともに転写ニップを形成する。作像部材の速度と転写ローラの圧力との間の関係を図4に示す。作像部材の表面速度は線180により示される。転写ローラの開ループ指令速度は線182により示される。この指令により、転写ローラが作像部材と接触しておらず、かつ加えられている力が転写機構内のセンサからの信号に関して調整されていない一方で、作像部材12に対する転写ローラの位置が制御される。図4において、線184は作像部材に抗して指令される転写力を示しており、転写機構内のセンサにより計測される転写力は線186で示される。図面において、図示の転写力は、独立したサーボ機構が転写ローラの各端部に連結されているので、転写ローラの前方側に関するものである。転写ローラの一端を前方側と呼び、他端を後方側と呼ぶ。
【0022】
部材12上の画像形成が終了に近づくにつれ、およそ3000ニュートンの荷重1として示される指令接触力が設定される。荷重1により、制御装置は転写ローラが作像部材12と接触していない間にサーボ機構の開ループ指令速度を独立して用いて転写ローラの位置を制御することができ、指令力が転写ローラの指令速度制御を無効化することなく、25mm/秒の指令速度を用いることができる。作像部材の表面速度はタイミング点190により示されるようにおよそ76.2cm/秒(30インチ/秒)まで減速される。作像部材の速度が減速している間に、転写ローラの開ループ指令速度は点188で示されるように25mm/秒に設定される。この速度指令により、およそ1mmの初期ギャップから作像部材12に向けて転写ローラの移動が開始される。タイミング点190のおよそ20ミリ秒後、転写ローラは作像部材と接触し、点192で示すようにゼロよりも十分大きい計測される力(線186)を発生させ始める。このとき、制御装置は図中で荷重2である指令乗上げ力を、この例ではおよそ3470ニュートンに設定する。線186は、計測される力が増大し、その直後、指令乗上げ力に達する際の応答を示す。指令乗上げ力が実現されておよそ50ミリ秒後、転写ローラが画像基材の前縁に対する乗上げを開始する。これにつれて、計測される力186も増大する。指令乗上げ力が実現されておよそ55ミリ秒後、画像基材の前縁がニップの中心に位置する。転写ローラの乗上げが完了すると、制御装置は、図中で荷重3として表わされ、この例ではおよそ5100ニュートンである指令転写力を設定する。乗上げ事象および転写ローラの前方端部に加えられる指令乗上げ力に対するサーボ機構の計測力の応答は、増大して指令力線184に達する線186により示される。読者は、図4に示す速度および移動距離は実現可能な1つの方式のみに関する例であることに留意すべきである。これらの値は、製品の機構、駆動能力、基材縁部に対する画像位置の許容誤差、およびプリンタ要素の形状に影響されるものだった。
【0023】
この実施形態では、およそ28.6mm分離された2つの個別の画像が作像部材12上に形成された。これらの画像は2つの別個の画像基材上に転写される。第1の画像基材の後縁から外れる以前に、指令力は、点194における荷重4に相当するおよそ4000ニュートンまで低減される。第2の画像基材の前縁に対する乗上げが完了すると、指令力は、図中の点196に相当する荷重5に設定される。この例では、荷重3および荷重5の大きさは等しいが、異なっていてもよい。
【0024】
最後の画像に関する転写動作の完了後、制御装置は、図4における点198で示されるように、指令力をおよそ2000ニュートンである荷重6まで低減するように信号を発生させる。転写ローラは最終の画像基材の後縁を外れて作像部材の表面上へと転がる。転写ローラは、点200で示されるように開ループ指令速度が−25mm/秒になるまで作像部材表面に対して転がり続け、サーボ機構が転写ローラを作像部材表面から引き込んで、転写ローラと作像部材との間に1mmのすき間を保持するその開始位置へと戻す。この説明は転写部材の前方端部に関して行なってきたが、制御装置は転写部材の後方端部に関しても同様の方式でサーボ機構を動作させるように、対応する信号を発生させる。
【0025】
このように転写ローラを動作させると、多くの利点がもたらされることが分かっている。一例として、第1画像基材の前縁に関する荷重2や第2画像基材の前縁に関する荷重4など、低減された既定の乗上げ力を用いると、画像基材および作像部材に実際に加えられる力および圧力のオーバーシュートが低減する。別の利点は、作像部材の駆動に用いられるベルトに関する滑りの量が低下するということである。さらに、作像部材を駆動するモータにより使用される電流も低減する。結果として、低減された既定の乗上げ力を用いると、動作特性の改善とともに、乗上げ段階の間の作像部材に対する荷重が低下する。
【0026】
しかしながら転写ローラの力は、より低い乗上げ力から、画像の有効な転写のためのより高い転写力へ増大させなければならない。この増大は、乗上げの終了と作像部材上の画像のニップ進入開始との間の時間に起こることが理想的である。記述される最大の利益をもたらす乗上げ力の決定は、画像の開始時の転写力に関する妥協を最小化しながら行なうことが望ましい。より最適な乗上げ力は、ベルトの滑り、作像部材のモータ電流、作像部材の位置誤差、および計測された転写力の計測値から経験的に決定可能である。最適な指令乗上げ力を決定する1つの目的は、指令転写力と指令乗上げ力との差を、乗上げによってたわむ転写機構および構造のシステム剛性により生じる力のインクリメンタルな増加によって相殺することにある。このように最適な乗上げ力を決定することにより、最小の遅れおよび最小のオーバーシュートにより転写力を実現することができる。結果として、媒体の厚さに対する乗上げ力の曲線、表または等式は転写システムの剛性により影響される。
【0027】
ある実施形態では、指令乗上げ力は、これらの応答により決定され、入力変数である媒体厚さおよび作像部材速度を用いてある等式により計算される。よって、指令乗上げ力は、この力を媒体厚さおよび作像部材速度と関係付ける等式により特徴付けることができ、その結果、作像部材のモータ電流、ベルトの滑り、および追従誤差の応答が改善される。さらに、転写ローラ力の応答も改善される。ある実施形態では、この等式は以下のように表わされる。
【0028】
(数1) F=A*V*T+B*V+C*T+D
【0029】
式中、結果Fは片面あたりニュートン単位の指令乗上げ力である。等式の定数は、本例では経験的に決定可能であり、以下のように規定される。A=11.665、B=0.146、C=−22962.9、D=4962.9である。入力変数Vはmm/秒単位による作像部材の表面速度であり、入力変数Tはmm単位による媒体厚さである。
【0030】
ある実施形態では、乗上げ力の結果に関して、限定した範囲が決定される。そのような限定は、媒体がより厚くなると、計算される指令乗上げ力が範囲の最小限より低くなる場合に行なわれ、範囲の最小限が使用される。同様に、媒体がより薄くなると、計算される指令乗上げ力が範囲の最大限より大きくなる場合、範囲の最大限が使用される。この例では、指令乗上げ力の範囲は0ニュートンから5100ニュートンである。
【0031】
ある実施形態では、媒体厚さおよび作像部材速度に対する乗上げ力の等式はプリンタ制御装置により計算される。ある印刷サイクルの間、制御装置は、サブシステム50によって扱われる画像基材に関してメモリに格納された媒体厚さおよび作像部材転写速度を検索する。媒体厚さは、プリンタの媒体トレイに格納された様々な媒体のパラメータである。ある実施形態では、媒体はユーザにより単一のシートフィーダに供給するか、あるいは供給トレイに装填してもよい。媒体装填後、印刷サイクルの開始前に、媒体厚さの入力に関してユーザに質問を行なってもよい。媒体厚さが決定されると、制御装置は、転写ローラの前方側および後方側端部に関するサーボ機構により転写ローラを作像部材に向けて移動させる信号を発生させる。作像部材との接触後、制御装置は、サーボ機構により乗上げの準備として、転写ローラ端部に加えられる力を変化させる信号を発生させる。乗上げ動作が完了すると、制御装置は転写信号を発生させ、転写ローラの端部に加えられる力が、作像部材から画像基材への画像転写のための転写力まで増大する。画像転写の終末において、制御装置は、転写ローラを移動させて作像部材に対する転写ローラの接触を解除するため解除信号を発生させる。
【0032】
上記のように、転写部材に加えられる力の選択的制御を行なって、画像基材の解放の間、転写ローラの端部に加えられる力を低減することができる。このような動作において、前記力は図4で荷重6として示されるような力まで低減される。このような力を用いて、画像端部と基材後縁との間の領域において転写ローラに加えられる力を低減することにより、ベルトの滑り状態を回避しやすくなる。これらの状態は一般的に、より厚い媒体の場合に生じる。このような媒体には、タブ付きシート、名刺、ラベル、封筒、折畳みシート、複数シート文書、事前印刷用紙、または様々な厚さのインク付きシートが含まれる。さらに、印刷サイクル内で必要に応じ画像転写が完了した後、転写ローラは作像部材に対して転がり続けるので、前記力の低下に伴い、作像部材の駆動に必要な動力も低減する。
【0033】
ベルトによる駆動転写動作を伴う力の発生を、上記変位可能なリンク機構の実現方式を参照して説明してきた。しかし、他の駆動システムを使用することも可能なので、この駆動構成は駆動における多くの選択肢の1つにすぎない。例えば、ロータリモータまたはリニアモータ、親ねじ、歯車、または歯車・ラックによる構成、けん引駆動、空圧駆動、または歯の無いプーリシステム、およびそれらの様々な組合せによる直接駆動を用いることができる。適切な駆動システムの選択は主として、効率、費用、速度、および/または応答時間、製品の構造上の互換性および力の生成および/または力の増幅に依存している。これら様々なパラメータの優先順位は用途に特有のものとなる。また、上記システムおよび方法は、後に画像基材に転写される画像を受容する印刷ドラムまたはエンドレスベルトのような作像部材に関して説明を行なってきた。本明細書で用いる作像部材とは、1以上の印刷ヘッドから画像を直接受容してその後、画像を基材上に定着させる媒体を指すものであってもよい。例えば、1巻きの媒体または一連のシートに画像を受容し、その後、加熱または非加熱のローラにより基材にインク画像をより恒久的に付着させてもよい。上記のように、転写ローラという用語は、可変的な圧力で画像受容部材に画像を付着させるために使用可能なこれらローラを含むものである。加えられる圧力または力は、基材位置、および/または入力または検知された基材厚さ、および/または参照用テーブル、および/または検知または決定された力、位置、速度、および/または印刷および転写プロセスにおいて要素を移動させるための加速度値により決定してもよい。
【0034】
転写ローラの前方および後方端部の力はおおむね等しくローラ端部に加えられるが、指令および印加される力は、中心にない基材位置、転写ローラの長さに沿った画像基材厚さの変異、または転写ローラまたは他の要素の他の特性に応じて非対称であってもよい。したがって、転写プロセス信号は、指令および印加される転写力の一部またはすべてに関して、各面において独自の値を有してもよい。具体的な基材の差異は転写力の影響に対して二次的なものなので、上記方法およびシステムにおいて用いられる力の変異を具現化して、基材厚さ、速度、画像内容、およびデフォルトまたは参照用テーブルの値を除くかそれらに関連する他の適用可能なパラメータに関する計測された信号または決定された効果を伴う、上記計算または値における制御装置の変更に基づく望ましい力をリアルタイムで実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 高速相変化インク画像作成機またはプリンタ、 11 フレーム、 12 中間作像部材、 14 作像面、 16 方向、 20 相変化インク給配サブシステム、 22、24、26、28 供給源、 30 印刷ヘッドシステム、 32、34、36、38 印刷ヘッドアセンブリ、 40 基材供給取扱いシステム、 42、44、46、48 基材供給源、 52 基材予熱器、 54 基材・画像ヒータ、 60 定着装置、 70 オリジナル文書フィーダ、 72 文書保持トレイ、 74 文書シート給送回収装置、 76 文書露光走査システム、 80 制御装置または電子サブシステム(ESS)、 82 中央処理装置(CPU)、 84 電子記憶装置、 86 表示装置またはユーザインタフェース(UI)、 88 センサ入力・制御手段、 89 画素配置・制御手段、 90 オンライン接続またはワークステーション接続、 92 転写ニップ、 94 転写ローラ、 120 転写ローラ制御システム、 210、220 転写ローラ制御アセンブリ、 224 モータ、228 エンドレスベルト、230 プーリ、 234 ギヤ歯、 238 セクタギヤ、 239 軸受軸、 240 リンク、 241、242 ピボットピン、 243 軸、 244 保持アーム、 248 ジャーナル軸受。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作像部材と、
作像部材に隣接して配置された転写ローラと、
転写ローラの移動を制御する信号を発生させるように構成された制御装置と、
転写ローラの移動を制御する制御装置からの信号を受容するように制御装置に連結され、転写ローラを作像部材との接触および接触解除のため移動させるように転写ローラに連結された変位可能なリンク機構と、を備えるプリンタにおいて、
変位可能なリンク機構は、指令される第1の力により作像部材と接触させる転写ローラの第1の移動を行なって転写ニップを形成し、指令される第2の力により転写ローラに第2の移動を行なわせ、指令される第3の力により転写ローラに第3の移動を行なわせることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
媒体の厚さに対する乗上げ力のデータおよび作像部材速度のデータが格納されるメモリと、
格納されたデータにおける媒体厚さおよび作像部材速度に対応する乗上げ力を決定し、決定された乗上げ力に関して転写ローラを移動させるための信号を発生させるように構成されている前記制御装置と、をさらに備える請求項1のプリンタ。
【請求項3】
転写ローラの一端に連結されたサーボ機構のための信号を発生させ、転写ローラの別の端部に連結された別のサーボ機構のための別の信号を発生させるように制御装置が構成されていることを特徴とする請求項1のプリンタ。
【請求項4】
変位可能なリンク機構が、
転写ローラの一端を回転可能に保持する保持アームと、
保持アームに連結されたリンクと、
リンクおよび保持アームを移動させるようにリンクに連結されたセクタギヤと、
セクタギヤと相互に噛み合う歯を有する歯車と、
歯車に連結された回転出力シャフトを有するモータであって、制御装置によって生成された信号を受信し、制御装置から受信した信号にしたがって歯車を回転させ転写ローラを移動させるように制御装置に連結されているモータと、を備えることを特徴とする請求項1のプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−64482(P2010−64482A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206587(P2009−206587)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】