説明

プリンタ及びプリンタのしきい値設定方法

【課題】 センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によりプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことを可能にする。
【解決手段】 プリンタ10において、ロール紙に形成されたブラックマークを検出する反射型フォトインタラプタの経年変化に伴う検出信号のレベル低下によって、検出信号を2値化するためのしきい値が不適合となりオフライン状態になった際は、ホストコンピュータ20からプリンタ10にリアルタイムしきい値設定コマンドを送ってしきい値設定モードに移行する(ステップS103)。しきい値設定モードにおいて、ホストコンピュータ20はプリンタ10の現在のしきい値が異常であるか判断し(ステップS107)、異常な場合に新しいしきい値を生成して(ステップS109)プリンタ10に送信する(ステップS110)。プリンタ10は、この新しいしきい値をフラッシュROMに記憶する(ステップS111)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよびプリンタのしきい値設定方法に係り、特に、プリンタに設けられたセンサの経年変化等に伴って現在のしきい値が不適合になった際に、しきい値を変更することが可能なプリンタ及びプリンタのしきい値変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙の搬送経路中にプリントヘッドやカッタ等を備え、ホストコンピュータから送られるデータを基に印刷を行うとともに、ロール紙を切断して出力するプリンタが知られている。このようなプリンタでは、ロール紙の印刷位置に対する切断位置を正確に規定するために、ロール紙の裏面に形成された黒色のマーク(以下、ブラックマークという)や用紙無しを、搬送経路上に配置した反射型フォトインタラプタ等のセンサで検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
反射型フォトインタラプタは、ロール紙に対向して光を放射するLED等の発光素子と、ロール紙で反射した光を受光するフォトトランジスタ等の受光素子から構成されている。反射型フォトインタラプタの検出出力は、A/D変換器でデジタル信号に変換されてしきい値と比較され、ブラックマークの有無や用紙の有無が検出される。
【0004】
一般に、しきい値は、反射型フォトインタラプタの個体差に応じて最適な値がプリンタの出荷時に設定されており、ブラックマークの有無や用紙の有無による受光光の出力の違いを識別可能なように設定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−361959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリンタの使用に伴って反射型フォトインタラプタの封止部材に紙粉等の塵埃が付着したり、経年変化によって発光素子の発光光量および受光素子の受光感度が低下すると、反射型フォトインタラプタの出力レベルが低下し、設定したしきい値ではブラックマークの有無や用紙の有無がうまく検出できなくなる場合がある。特に、用紙残量が十分であるにもかかわらず、プリンタの動作中に用紙無しが検出されてしまうとオフライン状態となってしまい、オフライン要因を取り除くまでプリンタの動作を再開することができなくなってしまう。
【0007】
オフライン要因を取り除く場合には、しきい値を変更する必要があるが、プリンタの印刷中にオフライン状態となると、プリンタは通常コマンドを受け付けなくなるためしきい値を変更することができなくなってしまう。その結果、ユーザはサポートデスクに問い合わせを行い、サービスマンによってしきい値の変更を行ったり、反射型フォトインタラプタを交換したりしなければならず、作業が滞ってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によりプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能なプリンタ、しきい値変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1) ホストコンピュータからの指示に従って所定の印刷媒体に印刷を行うプリンタであって、
前記ホストコンピュータから送信されるコマンドを受信する受信部と、
前記受信部が受信したデータがリアルタイム制御コマンドであるかどうか判別するリアルタイム制御コマンド判別部と、
前記受信部が受信する前記リアルタイム制御コマンド以外のコマンドを一時的に保存する受信バッファと、
前記受信バッファに保存されたコマンドを解析するコマンド解析部と、
用紙を検出するセンサと、
前記センサの検出信号を2値化するしきい値を保存する不揮発性記憶部と、
前記コマンドに応じた処理を行う制御部と、を備え、
前記リアルタイム制御コマンドは、前記不揮発性記憶部に保存されたしきい値を書き換えるしきい値設定モードに移行させるリアルタイムしきい値設定コマンドを含み、
前記制御部は、受信したコマンドが前記制御コマンド判別手段によって前記しきい値設定コマンドであると判定されると、オフライン状態であってもしきい値設定モードに移行することを特徴とするプリンタ。
(2) 前記制御部は、オフライン状態となると、前記コマンド解析部による処理を停止させ、前記コマンド解析部は、前記受信バッファに保存されたコマンドの解析処理を行わないことを特徴とする(1)に記載のプリンタ。
(3) 所定の物理量を検出するセンサを備え、ホストコンピュータに接続されて印刷を行うとともに、前記センサの検出信号を所定のしきい値で2値化した信号に基づいて所定の処理を行うプリンタの前記しきい値を変更するしきい値変更方法であって、
前記プリンタがオフライン状態にあるか否かを判定するステップと、
前記プリンタがオフライン状態にあると判定された場合、前記ホストコンピュータから前記プリンタにリアルタイムコマンドを送信することにより、前記しきい値を変更するしきい値設定モードに移行するステップと、を有することを特徴とするしきい値変更方法。
(4) 前記しきい値設定モードは、
前記ホストコンピュータが、前記プリンタに対して現在のしきい値を要求するステップと、
前記プリンタが、前記現在のしきい値を前記ホストコンピュータに送信するステップと、
前記ホストコンピュータにおいて、前記現在のしきい値の異常の有無を判定するステップと、
前記現在のしきい値が異常であると判定された場合に、前記ホストコンピュータにおいて新しいしきい値を生成するステップと、
前記ホストコンピュータが、前記生成された新しいしきい値をプリンタに送信するステップと、
前記プリンタが、前記変更されたしきい値を所定の領域に記憶するステップと、を有することを特徴とする(3)に記載のしきい値変更方法。
(5) 前記ホストコンピュータは、前記現在のしきい値が所定の範囲内にない場合に、異常と判定することを特徴とする(4)に記載のしきい値変更方法。
(6) 前記ホストコンピュータは、センサの経年変化に伴う出力レベルの低下を考慮に入れた前記現在のしきい値より低い値を新しいしきい値として生成することを特徴とする(4)に記載のしきい値変更方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプリンタによれば、前記リアルタイム制御コマンドは、不揮発性記憶部に保存されたしきい値を書き換えるしきい値設定モードに移行させるリアルタイムしきい値設定コマンドを含み、そして制御部は、受信したコマンドが制御コマンド判別手段によってしきい値設定コマンドであると判定されると、オフライン状態であってもしきい値設定モードに移行する。
【0011】
したがって、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によってプリンタがオフライン状態に陥ったとしても、ユーザは、所定のアプリケーションが備えられたホストコンピュータからリアルタイムしきい値設定コマンドを送信してやることにより、容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【0012】
通常、制御部は、オフライン状態となると、コマンド解析部による処理を停止させる。したがって、コマンド解析部は、受信バッファに保存されたコマンドの解析処理を行わなくなり、通常のしきい値設定コマンドを受信しても、制御部による処理が為されない。しかしながら、本発明によれば、リアルタイム制御コマンドとしてしきい値設定コマンドを用意しているため、コマンド解析部による処理が為されなくても、プリンタを動作させてしきい値設定モードに移行させることができる。よって、センサの不適合による障害発生時であっても、容易にしきい値の変更を行い、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【0013】
また、本発明のしきい値変更方法は、所定の物理量を検出するセンサを備え、ホストコンピュータに接続されて印刷を行うとともに、前記センサの検出信号を所定のしきい値で2値化した信号に基づいて所定の処理を行うプリンタの、前記しきい値を変更するしきい値変更方法であって、前記プリンタがオフライン状態にあるか否かを前記ホストコンピュータによって判定するステップと、前記プリンタがオフライン状態にあると判定された場合に、前記ホストコンピュータから前記プリンタにリアルタイムコマンドを送信することにより、前記しきい値を変更するしきい値設定モードに移行するステップと、を有することを特徴とするものである。
【0014】
この方法により、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によってプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【0015】
また、本発明の一態様として、上記のしきい値変更方法であって、前記しきい値設定モードは、前記ホストコンピュータが、前記プリンタに対して現在のしきい値を要求するステップと、前記プリンタが、前記現在のしきい値を前記ホストコンピュータに送信するステップと、前記ホストコンピュータにおいて、前記現在のしきい値の異常の有無を判定するステップと、前記現在のしきい値が異常であると判定された場合に、前記ホストコンピュータにおいて新しいしきい値を生成するステップと、前記ホストコンピュータが、前記生成された新しいしきい値をプリンタに送信するステップと、前記プリンタが、前記変更されたしきい値を所定の領域に記憶するステップと、を有することを特徴とするものも含まれる。
【0016】
この方法により、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によってプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【0017】
また、本発明の一態様として、上記のしきい値変更方法であって、前記ホストコンピュータは、前記現在のしきい値が所定の範囲内にない場合に、異常と判定することを特徴とするものも含まれる。
【0018】
この方法により、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によってプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【0019】
また、本発明の一態様として、上記のしきい値変更方法であって、前記ホストコンピュータは、センサの経年変化に伴う出力レベルの低下を考慮に入れた前記現在のしきい値より低い値を新しいしきい値として生成することを特徴とするものも含まれる。
【0020】
この方法により、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によってプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るプリンタおよびしきい値変更方法の実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態では、ロール紙に形成されたブラックマークを検出するセンサを備え、ホストコンピュータから送られるデータをロール紙に印刷するプリンタと、ブラックマークの検出信号を2値化するためのしきい値を変更するしきい値変更方法を例示して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタの外観構成を示す斜視図、図2はプリンタの上部筐体を開いた状態を示す斜視図である。また、図3はロール紙のブラックマークを検出するためのセンサが装着される付近の詳細構成を示す断面図である。
【0023】
図1〜図3において、プリンタ10は開閉自在に形成された上部筐体11と、装置本体を収納する下部筐体12から構成され、上部筐体11を上部に開くことによって、ロール紙の交換および装置内部の保守点検が可能となっている。ロール紙は、プリンタ10内部の用紙収容部13に収納されて繰り出され、上部筐体11に装着された図3に示すワイヤドット印刷ヘッド107で印刷された後、不図示のカッタで所定の長さに切断されて、上部筐体11の紙出口14から排出される。
【0024】
また、下部筐体12の前面には、プリンタ10が後述するしきい値設定モードに入ったことをユーザに報知するためのLED表示ランプ109が設けられている。
【0025】
図3において、用紙収容部13から繰り出されるロール紙の搬送路15には、ロール紙の裏面に形成されたブラックマークや用紙切れを検出するためのセンサとして、反射型フォトインタラプタ110が配設されている。反射型フォトインタラプタ110は、搬送路15を通過するロール紙に光を放射するLED等の発光素子と、ロール紙で反射した光を受光して光電変換するフォトトランジスタ等の受光素子から構成される。
【0026】
図4は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示すブロック図である。同図において、プリンタ10は、CPU101、フラッシュROM102、RAM103、インタフェース回路104、ドライバ回路105、駆動モータ106、印刷ヘッド107、カッタ108、LED表示ランプ109、反射型フォトインタラプタ110およびA/D変換器111を有する構成である。
【0027】
CPU101は、不図示のROMに格納された制御プログラムに従い、インタフェース回路104を介してホストコンピュータ20から印刷データおよび制御信号を入力して処理するとともに、プリンタ10の各部を制御する。インタフェース回路104は、ホストコンピュータ20とプリンタ10間におけるデータや制御信号の授受を行う。
【0028】
フラッシュROM102は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであり、プリンタ10を駆動制御するファームウェアや各種制御データを記憶している。特に、本実施形態においては、所定の領域にしきい値データが格納される。
【0029】
RAM103は、しきい値設定装置100から送られる印刷データを一時的に記憶するための受信バッファとして機能するとともに、プリンタ10の動作中にフラッシュROM102から読み出されたしきい値データを保持している。
【0030】
A/D変換器111は、反射型フォトインタラプタ110で検出した信号を、例えば8ビットのデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、CPU101におけるしきい値判定に用いられる。
【0031】
ドライバ回路105は、駆動モータ106、印刷ヘッド107、カッタ108およびLED表示ランプ109のそれぞれを駆動する駆動回路である。ドライバ回路105は、CPU101からの指示に応じて、駆動モータ106、印刷ヘッド107、カッタ108およびLED表示ランプ109の各々を駆動制御する
【0032】
駆動モータ106は、ロール紙の搬送ローラを制御して回転させるための、例えばステッピングモータである。駆動モータ106は、ドライバ回路105から出力されるパルス信号に応じて搬送ローラの回転量を制御する。これにより、搬送ローラにより紙送りされる用紙の紙送り量が制御される。
【0033】
印刷ヘッド107は、ロール紙にドットマトリクス文字をシリアルに印刷するワイヤドットプリントヘッドである。
【0034】
カッタ108は、ロール紙に形成されたブラックマークの検出タイミングに基づいて、印刷が終了したロール紙をCPU101の制御により自動的に切断するロータリ式やギロチン式のオートカッタである。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係る全体構成を示す機能ブロック図であり、各機能手段の関係を示している。
【0036】
ホストコンピュータ20は、コマンドデータや印刷データなどをプリンタ10に送信する。特に、本発明の実施形態では、プリンタ10のしきい値を設定を制御するしきい値設定装置としても機能する。
【0037】
データ受信部31は、ホストコンピュータ20から送られるデータコードを受信データとして受信する。受信データは、次段のリアルタイムコマンド判別部33にて判別処理が為される。
【0038】
リアルタイムコマンド判別部33は、データ受信部31が受信した受信データを解析してリアルタイム制御コマンドであるかどうかを判別するデータの選別部である。リアルタイムコマンド判別部33は、リアルタイム制御コマンドであれば制御部37にそのコマンド指令に従って所定の処理を実行させる。この処理は、データ受信部31における処理とともに、図4に示すインタフェース回路104により起動される割込み処理によって実現される。
【0039】
受信バッファ34は、リアルタイム制御コマンド以外の受信データを、一時的に蓄えるデータ記憶部である。受信バッファ34は、データ受信部31側から送られる受信データを受信順に保存しており、先に保存された受信データから順に、下流側のコマンド解析部35に読み出される。
【0040】
コマンド解析部35は、受信データを受信バッファ34に格納された順に1データ単位、例えば1バイトずつ取り出してそのデータコードを解析し、印刷データとプリンタ10に対して様々な指令を設定するコマンドデータとに判別する。コマンド解析部35は、判別の結果、受信データがコマンドデータであればそれを制御部37に送り、一方受信データが印刷データであればデータコードに対応するドットマトリクス構成の文字パターンを印刷バッファ36に格納する。
【0041】
制御部37は、コマンド解析部35が解析したコマンドコードまたはリアルタイムコマンド判別33から送られるリアルタイム制御コマンドに従って所定の動作や設定を行い、プリンタ10の各部における所定の動作を実行する。例えば、制御部37は、コマンドコードに従って所定の設定を行い、又はプリンタ10の各部における所定の動作を実行する。また、制御部37は、印刷バッファ36から文字パターンを読み出し、印刷部41を制御して印刷を実行させる。なお、制御部37は、プリンタがオフライン状態であるときには、コマンド解析部35の機能を停止させる。したがって、オフライン状態では、受信バッファ34に蓄積されるリアルタイム制御コマンド以外のコマンドの処理が実行されなくなる。
【0042】
ステータス生成記憶部38は、プリンタ10内部の各種ステータスを収集してステータス情報を生成して記憶する記憶部である。ステータス生成記憶部38は、例えばホストコンピュータ20からの指示に基づいて、データ送信部32からホストコンピュータ20へステータス情報を送信する。また、ステータス生成記憶部38は、プリンタ10内部の各種ステータスを自動的に収集し、ステータスが変化するとホストコンピュータ20に送信するように構成されていてもよい。
【0043】
しきい値記憶部39は、センサ42が検出する検出信号を二値化するためのしきい値を記憶する記憶部である。このしきい値記憶部39は、プリンタ10が起動されたり、またリセットされたりすると、図4に示すフラッシュROM102内に記憶されたしきい値データがRAM103内の所定領域に設定されることにより生成される。
【0044】
表示部40は、図4に示すようにドライバ105とLED109等から構成され、制御部37からの指示に基づき、LED109を点滅させる。
【0045】
印刷部41は、図4に示すように、ドライバ105、モータ106、印刷ヘッド107、カッタ108等から構成され、制御部37からの指示に基づき、印刷バッファ36中の印刷データをロール紙に印刷する。
【0046】
センサ42は、プリンタ10における各種の物理量を検出する検出器であり、例えば、印刷を行うロール紙の切断位置や終端位置を規定するブラックマークや用紙切れを検出するための例えば図4において示した反射型フォトインタラプタ110である。反射型フォトインタラプタ110による検出信号は、A/D変換器111でデジタル信号に変換されて制御部37に読み込まれ、しきい値記憶部39に記憶されたしきい値に基づいて2値化処理される。
【0047】
次に、リアルタイムコマンドについて説明する。
ホストコンピュータ20から送られるリアルタイムコマンドは、プリンタ10の状態を要求するリアルタイムコマンドや、リアルタイムしきい値設定コマンド等がある。リアルタイムコマンドは、プリンタ10がオフライン状態となり、コマンド解析部35が機能停止した状態であっても、制御部37の一部機能を動作させ、ステータス生成期億部38に記憶されたプリンタ10のステータスをデータ送信部32を介してホストコンピュータ20に通知したり、後述するように、しきい値設定モードに移行して、フラッシュROM102内のしきい値データを書き換え、しきい値記憶部39に記憶されるしきい値を変更したりする。
【0048】
次に、以上のように構成された本実施形態のプリンタ10において、センサ42に含まれる反射型フォトインタラプタ110の経年変化等に伴う発光素子の発光光量低下および受光素子の受光感度低下によって検出信号のレベルが低下し、しきい値記憶部39に記憶されたしきい値が検出信号の2値化処理に適合しなくなってオフライン状態に陥った際に、ホストコンピュータ20を用いてしきい値を変更する方法を説明する。図6は、本実施形態におけるしきい値の変更手順を説明するためのシーケンス図である。
【0049】
通常は、オフライン状態となると、プリンタ10からホストコンピュータ20にオフラインを通知するステータス信号が送信される場合と、送信されない場合とが考えられる。
【0050】
まず、プリンタ10からホストコンピュータ20へオフライン通知が送信されない場合を説明する。
プリンタ10がオフライン状態になる(ステップS101)と、ホストコンピュータ20は、プリンタ10の状態を要求するコマンドに対応してプリンタ10から返って来るステータス情報を受信しなくなったことで、プリンタ10がオフライン状態になったと判断する(ステップS102)。
【0051】
次いで、ホストコンピュータ20は、プリンタ10に対してリアルタイムしきい値設定コマンドを送信する(ステップS103)。プリンタ10はこのリアルタイムしきい値設定コマンドを受信し、リアルタイムコマンド判別部33で解析してリアルタイム制御コマンドであると判断する。これを受けて、制御部37は、一部機能がオンラインとなり、しきい値設定モードに移行する(ステップS104)。
【0052】
続いて、ホストコンピュータ20は、プリンタ10に対して現在のしきい値を送信するよう要求する(ステップS105)。この要求を受信したプリンタ10は、制御部37の制御の基にしきい値記憶部39に記憶されている現在のしきい値を読み出してホストコンピュータ20に送信する(ステップS106)。
【0053】
ホストコンピュータ20は、プリンタ10から送られた現在のしきい値を受信し、しきい値が正常であるか否かを判定する(ステップS107)。その結果、現在のしきい値が所定の範囲内にあって正常であると判定された場合は、その旨をプリンタ10に通知する(ステップS108)。
【0054】
一方、ステップS107において、現在のしきい値が所定の範囲を超えた異常値であると判定された場合、ホストコンピュータ20は新しいしきい値を生成する(ステップS109)。このしきい値の生成は、例えば、プリンタ10におけるセンサ42の経年変化に伴う出力レベルの低下を考慮に入れて予め設定した値を用いる。
【0055】
このようにして生成された新しいしきい値は、直ちにプリンタ10に送られる(ステップS110)。プリンタ10は、この新しいしきい値をデータ受信部31を介して受信し、コマンド解析部35で解析した後、しきい値記憶部39に記憶する(ステップS111)。これにより、しきい値設定モードを終了し(ステップS112)、オンライン状態に復帰して中断した作業を再開する。
【0056】
なお、本実施形態の上記の説明では、センサ42として、ロール紙のブラックマークを検出する1個の反射型フォトインタラプタ110を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、ペーパジャムを検出するためのセンサや、上部筐体11が開いたことを検出するセンサ等、センサが複数あってもよく、その場合はセンサ毎に本実施形態を同様に適用することができる。
【0057】
次に、プリンタ10がホストコンピュータ20へオフライン通知を送信する場合について説明する。また本例では、ホストコンピュータ20がプリンタ10から現在のしきい値を受信せず、従来のしきい値が正しいかどうかを確認するものとして説明する。
【0058】
プリンタ10がオフライン状態になる(ステップS201)と、プリンタ10は、自身のステータスが変化したことを自己検知して、ホストコンピュータ20に対してオフライン通知を送信する。ホストコンピュータ20はこのオフライン通知によりプリンタ10がオフライン状態になったと判断すると(ステップS202)、ホストコンピュータ20は、プリンタ10に対してリアルタイムしきい値設定コマンドを送信する(ステップS203)。プリンタ10はこのリアルタイムしきい値設定コマンドを受信し、リアルタイムコマンド判別部33で解析してリアルタイム制御コマンドであると判断する。これを受けて、制御部37は、一部機能がオンラインとなり、しきい値設定モードに移行する(ステップS204)。
【0059】
続いて、ホストコンピュータ20は、新たなしきい値を含むしきい値設定要求をプリンタ10に送信する(ステップS205)。プリンタ10は、このしきい値をデータ受信部31を介して受信し、コマンド解析部35で解析した後、送信されたしきい値が適切な正常範囲にあるかどうかを確認する(ステップS206)。そして、このステップS206にてしきい値が正常範囲にあれば、プリンタ10は、しきい値設定要求とともに送信されたしきい値をしきい値記憶部39に記憶する(ステップS207)。その後、しきい値設定モードを終了し(ステップS208)、オンライン状態に復帰して中断した作業を再開する。
【0060】
一方、ステップS206にてしきい値が正常範囲に無ければ、しきい値の記憶を行わず、エラーとしてエラー終了する。
【0061】
なお、図6及び図7の説明では、ステップS103,ステップS203において、プリンタ10に対してリアルタイムしきい値設定コマンドを送信して、プリンタ10はこのリアルタイムしきい値設定コマンドを受けて、リアルタイムコマンド判別部33で解析してリアルタイム制御コマンドであると判断する。そして、制御部37は、これを受けて一部機能がオンラインとなり、しきい値設定モードに移行し、しきい値を設定するとしたがこれに限られることはない。
【0062】
例えば、しきい値設定コマンドではなく、ホストコンピュータ20は、まずリアルタイムオンライン復帰コマンドをプリンタ10に対し送信し、プリンタ10をオンラインに復帰させてユーザ設定モードに移行させるようにしてもよい。このリアルタイムオンライン復帰コマンドは、オフライン状態にあるプリンタ10の一部機能を強制的にオンラインに復帰させて、ホストコンピュータ20がプリンタ10を通常コマンドを用いて制御可能とするものであり、しきい値設定のみに限定されない。ここで、しきい値設定を行う場合には、リアルタイムオンライン復帰コマンドによりプリンタ10をオンラインに復帰させた後、ホストコンピュータ20からしきい値設定要求コマンドをプリンタ10に送信し、しきい値をフラッシュROM102に再設定させるようにすればよい。
【0063】
なお、上記説明では、ホストコンピュータ20は、リアルタイムオンライン復帰コマンドとしきい値設定要求コマンドの2つを送信するようにしたが、これに限られることはなく、一つのコマンドでオンライン復帰させかつしきい値をプリンタ10のフラッシュROM102に設定するように構成してもよい。
【0064】
プリンタ10にしきい値が設定された後、プリンタ10は、ホストコンピュータ20からのコマンドに応じて、ホストコンピュータ20に新たに設定したしきい値を送信する。これにより、ホストコンピュータ20は、正しくしきい値が設定されたかどうか判断することができる。ホストコンピュータ20は、正しくしきい値が設定されたことを確認すると、プリンタ10にユーザ設定モードを抜けるように指示するコマンドを送信すればよい。
【0065】
また、ステップS109における新しいしきい値の生成方法は、上記の他に、ユーザの主観によって設定する方法がある。例えば、プリンタ10の使用中にしきい値の不適合により頻繁にペーパアウトとなってオフライン状態になるような場合は、経験的に得られた値をユーザのマニュアル操作によって設定し、この値をホストコンピュータ20からプリンタ10に送信してやればよい。
【0066】
以上説明したように、このような本発明の実施形態に係るプリンタ、及びしきい値変更方法によれば、プリンタ10のしきい値がセンサの経年変化によって不適切となりオフライン状態になった際に、ホストコンピュータ20からプリンタ10にリアルタイムしきい値設定コマンドを送ってしきい値設定モードに移行する。しきい値設定モードにおいて、ホストコンピュータ20はプリンタ10の現在のしきい値が異常であるか判断し、異常な場合に新しいしきい値を生成してプリンタ10に送信する。プリンタ10は、この新しいしきい値をフラッシュROM102に記憶する。これによって、プリンタ10がオフライン状態になったときに、ユーザがしきい値を容易に変更することが可能となり、現在の作業を遅滞なく進めることができる。
【0067】
なお、本発明のプリンタのしきい値変更方法は、センサの経年変化等に伴うしきい値の不適合によりプリンタがオフライン状態に陥った際に、ユーザによって容易にしきい値の変更を行うことができ、現在の作業を遅滞なく継続することが可能となる効果を有し、ホストコンピュータに接続されて印刷を行うプリンタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るプリンタの上部筐体を開いた状態における斜視図である。
【図3】実施形態に係るプリンタのロール紙のブラックマーク検出センサ付近の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る相互に接続されたプリンタとホストコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る全体構成を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態におけるしきい値の変更手順を説明するためのシーケンス図である。
【図7】本発明の実施形態におけるしきい値の変更手順を説明するための別のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0069】
10 プリンタ
20 ホストコンピュータ
31 データ受信部
33 リアルタイムコマンド判別部
35 コマンド解析部
37 制御部
39 しきい値記憶部
42 センサ
101 CPU
102 フラッシュROM
110 反射型フォトインタラプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータからの指示に従って所定の印刷媒体に印刷を行うプリンタであって、
前記ホストコンピュータから送信されるコマンドを受信する受信部と、
前記受信部が受信したデータがリアルタイム制御コマンドであるかどうか判別するリアルタイム制御コマンド判別部と、
前記受信部が受信する前記リアルタイム制御コマンド以外のコマンドを一時的に保存する受信バッファと、
前記受信バッファに保存されたコマンドを解析するコマンド解析部と、
用紙を検出するセンサと、
前記センサの検出信号を2値化するしきい値を保存する不揮発性記憶部と、
前記コマンドに応じた処理を行う制御部と、を備え、
前記リアルタイム制御コマンドは、前記不揮発性記憶部に保存されたしきい値を書き換えるしきい値設定モードに移行させるリアルタイムしきい値設定コマンドを含み、
前記制御部は、受信したコマンドが前記制御コマンド判別手段によって前記しきい値設定コマンドであると判定されると、オフライン状態であってもしきい値設定モードに移行することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、オフライン状態となると、前記コマンド解析部による処理を停止させ、前記コマンド解析部は、前記受信バッファに保存されたコマンドの解析処理を行わないことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
所定の物理量を検出するセンサを備え、ホストコンピュータに接続されて印刷を行うとともに、前記センサの検出信号を所定のしきい値で2値化した信号に基づいて所定の処理を行うプリンタの前記しきい値を変更するしきい値変更方法であって、
前記プリンタがオフライン状態にあるか否かを判定するステップと、
前記プリンタがオフライン状態にあると判定された場合、前記ホストコンピュータから前記プリンタにリアルタイムコマンドを送信することにより、前記しきい値を変更するしきい値設定モードに移行するステップと、を有することを特徴とするしきい値変更方法。
【請求項4】
請求項3に記載のしきい値変更方法であって、
前記しきい値設定モードは、
前記ホストコンピュータが、前記プリンタに対して現在のしきい値を要求するステップと、
前記プリンタが、前記現在のしきい値を前記ホストコンピュータに送信するステップと、
前記ホストコンピュータにおいて、前記現在のしきい値の異常の有無を判定するステップと、
前記現在のしきい値が異常であると判定された場合に、前記ホストコンピュータにおいて新しいしきい値を生成するステップと、
前記ホストコンピュータが、前記生成された新しいしきい値をプリンタに送信するステップと、
前記プリンタが、前記変更されたしきい値を所定の領域に記憶するステップと、を有することを特徴とするしきい値変更方法。
【請求項5】
請求項4に記載のしきい値変更方法であって、
前記ホストコンピュータは、前記現在のしきい値が所定の範囲内にない場合に、異常と判定することを特徴とするしきい値変更方法。
【請求項6】
請求項4に記載のしきい値変更方法であって、
前記ホストコンピュータは、センサの経年変化に伴う出力レベルの低下を考慮に入れた前記現在のしきい値より低い値を新しいしきい値として生成することを特徴とするしきい値変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−305938(P2006−305938A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133280(P2005−133280)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】