説明

プリンタ及び該プリンタにおける画像データの処理方法

【課題】ディジタルカメラ等で撮影した画像データを直接読み込んで印刷を行うプリンタにおいて、限られたメモリ容量等の中でも、インデクス印刷等、主走査方向に複数の画像を含む印刷データを処理することを可能としたプリンタ及びその画像データの処理方法を提供する。
【解決手段】1回の主走査で印刷する複数の画像のうち1画像の原画像データファイルを読み込んで復元した画像データから、1ライン分のラインデータを読み出して所定の画像処理を施したラインデータを、バンドバッファにコピーする。以上の処理を1回の主走査で印刷する複数の画像のすべてについて繰り返し、当該ラインについて全画像のデータがバンドバッファにそろったら、次のラインについて同様の処理を繰り返し、1バンドに必要なライン数分のデータが全画像についてそろったら印刷を行う。以上の処理をバンドごとに繰り返して、主走査方向に並んだ複数画像の印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルカメラ等で撮影しメモリカード等に格納された画像データを直接(ホストを介することなく)読み込んで印刷を行うプリンタに関し、特に、いわゆるインデクス印刷等を行う場合の当該プリンタにおける画像データの処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラが、その性能の向上に伴って、普及してきている。従来、かかるディジタルカメラで撮影した画像データを印刷する場合には、PCカード等に格納された画像データを一旦パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略称する)に読み込ませた後、そのパソコンに接続されたプリンタで印刷していた。
【0003】
このようにディジタルカメラで撮影した画像データをパソコンを介してプリンタで印刷する場合には、従来からの銀塩写真に比べ、ユーザ自らより自由な編集が可能になるというメリットがあり、例えば、ユーザは、パソコン上の専用のアプリケーションソフトを用いれば、ディジタルカメラを用いて撮影した多数の画像のうち複数枚分の写真を1枚の印刷用紙(以下、単に用紙という)に印刷するインデクス印刷等を自由に行うことができる。
【0004】
かかるインデクス印刷では、例えば、縦横(5×4)で20枚分程の多数の画像を絵葉書サイズの用紙に、それぞれ縮小した形で印刷するので、パソコンに読み込んだ画像データに対し縮小等の処理が必要であり、ワークメモリも大きな容量が必要となるので、上述したアプリケーションソフトでは、パソコン上、いわゆるスプールファイルを作成した上で、その都度必要な画像の一部を取得し、縮小等の処理を行うようにしている。
【0005】
以下、上記の如きパソコン上のアプリケーションソフトを用い、通常のインクジェットプリンタを介してインデクス印刷を行う場合を例にとって、図8及び図9を参照しつつ、具体的に説明する。尚、このインクジェットプリンタは、バンドバッファを備え、バンドごとにイメージデータを展開して印刷を行うものとする。
【0006】
例示のインデクス印刷は、図8に示すように、絵葉書サイズ或いはA4サイズ等の用紙1に、20枚分のそれぞれの縮小画像A1,A2,A3,・・・を、インクジェットプリンタにおける主走査方向Xを横方向、紙送り方向(副走査方向)Yを縦方向とした場合に、横方向に4枚、縦方向に5枚を印刷する場合である。このように、多数の画像を1枚の用紙に印刷するインデクス印刷は、1つの画像を1枚の用紙に印刷する通常の印刷に比べて、より多くの処理が必要となるので、印刷のスループットも長くなる。
【0007】
図9を用いて、パソコン上のアプリケーションソフトによりインデクス印刷を行う場合のパソコン及びプリンタにおける処理のフローについて説明しておく。まず、ディジタルカメラで撮影され、JPEG方式等により圧縮されたファイル形式でPCカード等に格納された画像データのうち、上記インデクス印刷に必要なすべての画像データを伸長(圧縮されていない元の画像データに復元)し(S1)、復元した画像データのスプールファイルを作成し、ハードディスクに保存しておく(S2)。
【0008】
そして、バンドごとに、当該バンドに必要な画像の一部を取得し(S3)た上で、縮小等の処理を行う(S4)。その後、バンドバッファにコピー(展開)する(S5)。以上のS3〜S5の処理をすべての画像(図8の例では、A1,A2,A3,A4、即ちA,B,C,D)について行う(S6でNo)。そして、当該バンドに必要な画像データがすべてそろった場合(S6でYes)には、バンドバッファに展開したイメージデータの印刷を行う(S7)。そして、このインデクス印刷に必要な画像データのすべてのバンドについてS3〜S7の処理を繰り返し(S8でNo)、すべてのバンドの処理が完了したら(S8でYes)、インデクス印刷における1段目の画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4、即ちA,B,C,D)の印刷が終了する。
【0009】
インデクス印刷等、主走査方向に複数の画像(図8の例では、4枚の画像)を含む場合、パソコン上のアプリケーションソフトでは、以上のように印刷データを生成・処理し、プリンタに転送してその印刷を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最近では、パソコンと略同様の画像データ処理機能を備え、ディジタルカメラ等で撮影しメモリカード等に格納された画像データを直接(ホストを介することなく)読み込んで所定の画像処理を行った上で印刷を行うプリンタ(以下、フォトプリンタと呼ぶ)が実用化されている。
【0011】
このようなフォトプリンタの構成は、大きく分けると、従来のプリンタと同様の動作を行う印刷処理部と、メモリカード等から読み込んだ画像データに対しパソコンと同様の画像データ処理を行うフォト画像処理部とから成り、このフォトプリンタを用いれば、パソコンを必要とすることなくディジタルカメラで撮影した画像データを印刷することが可能となるので、大変便利である。従って、かかるフォトプリンタを安価に提供し得るようになれば、ディジタルカメラの解像度の高画質化に伴って、両者の利用がより一層進むものと思われる。
【0012】
しかしながら、かかるフォトプリンタは、上述したように、パソコンと同様の画像データ処理機能と通常のプリンタの機能とが一体となっているので、全体としてのコスト等を考えると、フォトプリンタに内臓されるCPUの処理能力や速度、更には、ワークメモリとしてのRAMの容量は、自ずから制約を受ける。即ち、パソコンと同様の画像データ処理を行うといっても、このようなフォトプリンタが備えるCPUは、パソコンが備えるCPUに比べると、処理能力や速度の点で制限があり、例えば、画像データを一時的に蓄積しておくバッファメモリの容量にも限界がある。特に、上述したインデクス印刷等、多数の画像データをメモリ等に一時的に蓄積した上で縮小等の処理を行う必要がある場合には、バッファメモリ等の容量が間に合わない事態も考えられる。上述したパソコン上のアプリケーションソフトによりインデクス印刷を行う場合では、特に、最近のパソコンでは、大変高性能のCPUを備え、ワークメモリとしてのRAMの容量も十分であることが多く、また、スプールファイルの形式でハードディスクに保存しておくことも可能であるため、あまり問題にはならなかった。しかし、フォトプリンタでは、限られたメモリ資源の中で、処理のスループットも遅くしないで、インデクス印刷等多くの画像データ処理を伴う作業を行うというのは、難題である。
【0013】
従来、フォトプリンタにおける構成及び画像データ処理の制御方法等の点から、このような問題を解決するための有効な提案は、ほとんどなされていなかった。
【0014】
本発明の目的は、ディジタルカメラ等で撮影しメモリカード等に格納された画像データを直接(ホストを介することなく)読み込んで所定の画像処理を行った上で印刷を行うプリンタにおいて、限られたメモリ容量等の中でも、上述したインデクス印刷等、主走査方向に複数の画像を含む印刷データを処理することを可能としたプリンタ及びその画像データの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的達成のため、本発明では、例えば、上述したインデクス印刷等の場合に、主走査方向に並ぶそれぞれの画像について、原画像データファイルを読み込んで復元した各画像データから、その都度、nライン(nは1又はイメージのバンド高さ×1/縮小率で決まる、当該バンドに必要なライン数)分のデータを読み出し、縮小処理等を行ってバンドバッファに保持し、1バンド分の処理が終了したら、そのバンドのバンドデータを印刷処理部に送って印刷するようにしている。
【0016】
これにより、インデクス印刷等の主走査方向に複数の画像を含む場合でも、プリンタ内で画像データの処理が可能となり、ホスト上のアプリケーションによらなくても、かかるインデクス印刷等を行うことができる。特に、バンド単位でバッファリングを行って印刷するので、バッファメモリとしては数メガバイトの容量を確保するだけでも、かかるインデクス印刷等が可能である。
【0017】
即ち、本発明によれば、請求項1記載のように、1回の主走査で印刷するイメージデータに含まれる各々の部分的イメージを提供する圧縮された原画像ファイルデータに対して、復元を含む所定の画像処理を施してビットイメージ形式の画像データを生成する画像データ処理手段と、前記画像データ処理手段により、必要に応じて前記原画像ファイルデータからその都度画像データを生成し、関連する部分を読み出して利用するように制御を行う制御手段とを有することを特徴とするプリンタが得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、ディジタルカメラなどで撮影して得られた画像を、ホスト上のアプリケーションソフトを用いることなく、プリンタで直接、印刷できる上に、例えば主走査方向に複数枚並べて印刷するような場合でも画像データの処理が可能となる。
従って、メモリ等の容量をいたずらに増やすこと無しに、多数枚のインデクス印刷等も可能となるので、使い勝手の良いプリンタをより安価に提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプリンタの外観構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプリンタの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るプリンタの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図6】用紙を横向きに置いた時に正位置となる、回転処理を伴うインデクス印刷を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るプリンタの動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】用紙を縦向きに置いた時に正位置となる、回転処理のないインデクス印刷を示す図である。
【図9】従来のパソコン上のアプリケーションを用いて図8に示したインデクス印刷を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の諸実施形態を図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態に係るプリンタは、上述したように、ディジタルカメラ等で撮影しメモリカード等に格納された画像データを直接(ホストを介することなく)読み込んで所定の画像処理を行った上で印刷を行うフォトプリンタであり、シリアルのインクジェット方式のプリンタである。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタの概略構成を示すブロック図である。本実施形態のプリンタは、大きく分けると、フォト画像処理部11と、印刷処理部13とから成る。
【0022】
印刷処理部13は、図示しないインクジェット方式の印字ヘッド、キャリッジ機構、紙送り機構等を含むプリントエンジン部や、プリントエンジン部の制御等を行う印刷制御部等を含んでおり、従来のプリンタと同様の動作を行う部分である。
【0023】
フォト画像処理部11は、例えば、メモリカード10から読み込んだ画像データに対しパソコンと同様の画像データ処理を行う部分であり、画像データ処理部112と、バンドバッファ116と、画像データ制御部118とを有する。
【0024】
画像データ処理部112は、メモリカード10から読み込んだ原画像データファイルに対して、復元を含む所定の画像処理を施してビットイメージ形式の画像データを生成する。即ち、画像データ処理部112は、ディジタルカメラ等で撮影された画像データを格納したメモリカード10内の原画像データファイルを読み込む原画像データファイル読み込み部112a、この原画像データファイル読み込み部112aで読み込まれた、JPEG圧縮等されている画像データファイルを復元(伸長)する復元処理部112b、この復元処理部112bにより復元された画像データからn番目のラインデータを読み込むラインデータ読み込み部112c、ラインデータ読み込み部112cにより読み込まれたラインデータを縮小し又は拡大するリサイズ処理部112dと、従来はパソコン側(例えば、プリンタドライバ設定の画像補正機能)で行っていたコントラスト調整、明度調整、カラーバランス補正、彩度調整、記憶色再現、シャープネス向上、ノイズ軽減、輪郭補正等を行う画像補正部112eとを含んでいる。尚、メモリカード10内に格納された画像データは、例えばJPEG方式によって圧縮処理された画像データである。従って、この圧縮された画像データを画像データ読み込み部112aで読み込んだ後、復元(伸長)した上で他の所定の画像処理を施すために復元処理部112bが設けられている。また、本実施形態では、画像補正部112eは、上記の画像補正処理を、後述するように、上述したリサイズ処理部112dによるリサイズ処理後の画像がどのような大きさの画像となったかによって、リサイズ処理後の画像又はリサイズ処理前の画像のいずれかを用いて行うことができる。
【0025】
バンドバッファ116は、印刷に先立って1バンド分の画像データを保持するものである。
【0026】
画像データ制御部118は、画像データ処理部112にビットイメージ形式の画像データを生成させ、必要に応じて該画像データの関連する部分を読み出して利用するための制御を行う。
【0027】
図2は、本実施形態のプリンタの外観構成を示すものであり、同図に示すように、外観構成上は、従来のインクジェットプリンタ等と大きく異なるところはないが、メモリカード10が差し込まれるカード挿入部21が設けられている。その他、各種操作上の設定等を行う操作パネル部23、用紙の給紙部25と排出部27等が設けられている。
【0028】
以上の構成を有する本実施形態のプリンタの動作について、以下、図面を参照しつつ説明する。ここでは、従来例との関連で図8に示したようなインデクス印刷を行うものとし、そのため画像のリサイズ処理としての縮小処理を必要とする場合について説明する。本実施形態は、インデクス印刷等、主走査方向に複数の画像(図8の例では、4枚の画像)を含む場合に、ライン単位で画像データを生成・処理し、バンド単位で印刷処理を行うことを特徴とする。
【0029】
さて、ユーザは、まず、図2に示した本実施形態のプリンタのカード挿入部21にメモリカード10を挿入すると共に、操作パネル部23によって、印刷を行うための種々の指示設定を行う。尚、ここでは、A4の用紙を縦長に用いる、図8に示したようなインデクス印刷の設定もしたものとする。
【0030】
これ以降の動作を、図3のフローチャートによって説明する。まず、原画像データファイル読み込み部112aは、インデクス印刷すべき画像のうち、メモリカード10内に格納された、図8の画像A1に対応する原画像データファイルを読み込む(ステップS30)。尚、メモリカード10に格納されている原画像データファイルは、JPEG等の方式による圧縮画像データであるので、それを復元処理部112bが復元(伸長)処理する(ステップS31)。ラインデータ読み込み部112cは、この復元された画像データから1番目のラインデータを読み込み(ステップS32)、リサイズ処理部112dがリサイズ処理として縮小処理を行い、画像補正部112eが必要な補正処理を行う(ステップS33)。この縮小等の処理をされたラインデータは、バンドバッファ116にコピーされる(ステップS34)。そして、以上の1番目のラインデータの処理を、主走査方向に存在する残りのすべての画像(図8の、画像A2,A3,A4)についても行い(ステップS35でNo)、すべての画像について終了したら(ステップS35でYes)、今度は2番目のラインデータの処理を行う(ステップS36、ステップS37でNo)。即ち、再び、図8の画像A1に対応する原画像データファイルを読み込み、復元した後、2番目のラインデータを読み込み、縮小等の処理を行った上で、縮小等の処理をされたラインデータをバンドバッファ116にコピー(ステップS30〜S34)し、同様に、画像A2,A3,A4のそれぞれの2番目のラインデータについても行う(ステップS35でNo)。以上の処理を、1バンドに必要なライン数の画像データがそろうまで繰り返し(ステップS37でNo)、1バンドに必要なライン数の画像データがすべてバンドバッファ116にコピーされたら(ステップS37でYes)、バンドデータの印刷処理を行う(ステップS38)。かかる処理を、主走査方向の1段目に存在する画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4)を印刷するのに必要なすべてのバンドについて行い(ステップS39でNo)、すべてのバンドの処理が終わったら(ステップS39でYes)、1段目の画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4)の印刷が完了する。
【0031】
本実施形態は、このように、処理対象のそれぞれの画像について、その都度、メモリカード10内の原画像データファイルを読み込み、復元した画像データから、1ライン分のデータを読み出して縮小等の処理を行い、バンドバッファ116に保持し、1バンド分のライン数の処理が終了したら、そのバンドのバンドデータを印刷処理部13に送って印刷するようにしている。かかる方法で、インデクス印刷等の主走査方向に複数の画像を含む場合でも、プリンタ内で画像データの処理が可能となり、ホスト上のアプリケーションによらなくても、かかるインデクス印刷等を行うことができる。特に、バンド単位でバッファリングを行って印刷するので、バッファメモリとしては数メガバイトの容量を確保するだけでも、かかるインデクス印刷等が可能である。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るプリンタの概略構成は、上述した第1の実施形態のものと同様であるので、図1及び図2を参照することとして、その説明は省略する。
【0033】
第1の実施形態では、当該ラインについて、1段目の画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4)のすべてを処理してから、次のラインを、同様に、1段目の画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4)のすべてを処理する、即ち、そのラインについてすべての画像の処理を終えてから、つぎのラインに進むのに対し、この第2の実施形態では、当該ラインについて1段目の画像のうち画像A1を処理したら、次は画像A1の次のラインを処理する、というように同じ画像について1バンド分のライン数だけ、まず処理してから次の画像に進むことを特徴とする。
【0034】
ユーザによるインデクス印刷の設定後の動作を、図4のフローチャートによって説明する。まず、原画像データファイル読み込み部112aは、インデクス印刷すべき画像のうち、メモリカード10内に格納された、図8の画像A1に対応する原画像データファイルを読み込む(ステップS40)。尚、メモリカード10に格納されている画像データは、JPEG等の方式による圧縮画像データであるので、それを復元処理部112bが復元(伸長)処理する(ステップS41)。ラインデータ読み込み部112cは、この復元された画像データから1ライン分のデータを読み込み(ステップS42)、リサイズ処理部112dがリサイズ処理として縮小処理を行い、画像補正部112eが必要な補正処理を行う(ステップS43)。この縮小等の処理をされたラインデータは、バンドバッファ116にコピーされる(ステップS44)。そして、以上のラインデータの処理を、当該画像(図8の画像A1)の1バンド分のライン数だけ行い(ステップS45でNo)、1バンド分のライン数について終了したら(ステップS45でYes)、今度は図8の画像A2に対応する原画像データファイルを読み込み、復元した画像データから1ライン分のデータを読み込み、縮小等の処理を行って、バンドバッファ116にコピーし(ステップS40〜S44)、同様に、当該画像(図8の画像A2)の1バンド分のライン数だけ行う(ステップS45でNo)というように、主走査方向に並ぶ画像A1,A2,A3,A4のすべての画像についての1バンド分の処理が終わるまで行い(ステップS46でNo)、画像A1〜A4の1バンド分の処理が終ったら(ステップS46でYes)、当該バンドデータの印刷処理を行う(ステップS47)。以上の処理を、各画像の必要なバンド数だけ繰り返し(ステップS48でNo)、すべてのバンドの処理が終われば(ステップS48でYes)、1段目の画像(図8の、画像A1,A2,A3,A4)の印刷が完了する。
【0035】
本実施形態でも、このように、処理対象のそれぞれの画像について、その都度、メモリカード10内の原画像データファイルを読み込み、復元した画像データからラインごとにデータを読み出し、縮小等の処理を行ってバンドバッファ116に保持し、1バンド分のライン数の処理が終了したら、そのバンドのバンドデータを印刷処理部13に送って印刷するようにしている。かかる方法で、インデクス印刷等の主走査方向に複数の画像を含む場合でも、プリンタ内で画像データの処理が可能となり、ホスト上のアプリケーションによらなくても、かかるインデクス印刷等を行うことができる。特に、バンド単位でバッファリングを行って印刷するので、バッファメモリとしては数メガバイトの容量を確保するだけでも、かかるインデクス印刷が可能である。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態に係るプリンタについて、図5〜図7を参照しつつ述べる。本実施形態のプリンタの基本構成も、上述した第1の実施形態のものと略同様であり、同様の部分には同様の参照符号を付して、その詳しい説明は省略する。即ち、本発明の第3の実施形態のプリンタは、図5に示すように、フォト画像処理部41と、印刷処理部13とから成る。印刷処理部13は、上述した第1の実施形態のものと全く同様である。
【0037】
フォト画像処理部41は、第1の実施形態のフォト画像処理部11と略同様に、例えば、メモリカード10から読み込んだ画像データに対しパソコンと同様の画像データ処理を行う部分であり、画像データ処理部412と、バンドバッファ416と、画像データ制御部418とを有するが、本実施形態では、更に、タイトル選択部420を有している。
【0038】
フォト画像処理部41内の画像データ処理部412は、第1の実施形態の画像データ処理部112と同様に、原画像データファイル読み込み部412a、復元処理部412b、ラインデータ読み込み部412c、リサイズ処理部412eと、画像補正部412fとを含むが、本実施形態では、更に、後述する各画像を90度回転させたインデクス印刷等、画像データを回転させる必要のある場合に、回転処理を行う回転処理部412dを備えている。
【0039】
バンドバッファ416は、第1の実施形態のバンドバッファ116と同様に、印刷に先立って1バンド分の画像データを保持するものである。
【0040】
画像データ制御部418は、画像データ処理部412にビットイメージ形式の画像データを生成させ、必要に応じて該画像データの関連する部分を読み出して利用するための制御を行う。
【0041】
ところで、インデクス印刷を行う場合等に、ディジタルカメラで撮影した画像とは別の、図8に示したようなタイトル(この場合「INDEX BANNER」)も同時に印刷することが多い。本実施形態のプリンタは、このような場合において、あらかじめ印刷するタイトル形式を複数用意しておき、いずれのタイトルを付すかを選択し得るタイトル選択部420も有している。タイトル選択部420の機能等の詳細については後述する。
【0042】
ここで、以上に述べた本実施形態のプリンタの動作について説明しておく。
【0043】
図6は、インデクス印刷の他の例を示すものであり、用紙2を横向きに置いて見たときに正位置となるように画像配置して印刷する場合である。同図に示すA,B,C,・・・,Tの記号で示す如く、元の画像をそれぞれ90度回転させた状態で印刷されたものとなる。
【0044】
以下、かかるインデクス印刷を行う場合を例にとって、本実施形態のプリンタの動作について、図7のフローチャートをも参照しつつ説明する。さて、ユーザは、まず、図2に示したカード挿入部21にメモリカード10を挿入すると共に、操作パネル部23によって、印刷を行うための種々の指示設定を行う。ここでは、図6に示したように、用紙を横向きに置いて見た時に正位置となるようなインデクス印刷の設定をしたものとする。
【0045】
まず、原画像データファイル読み込み部412aは、メモリカード10内に格納されている1枚の画像(画像B1とする)について、その原画像データファイルを読み込む(ステップS70)。尚、メモリカード10内に格納されている画像データはJPEGなどによる圧縮データであるので、これを復元処理部412bが復元(伸張)処理する(ステップS71)。そして、この復元された画像データから、ラインデータ読み込み部412cが、1バンドに必要なライン数(イメージのバンド高さ×1/縮小率で決定されるので、予め分かっている)の画象(ライン)データを読み込む(ステップS72)。この読み込んだ画像(ライン)データに対し、回転処理部412dが画像を90度回転させるための回転処理を行い(ステップS73)、更に、リサイズ処理部412eが画像のリサイズ処理として縮小処理を施すと共に、画像補正部412fが必要な補正処理を行う(ステップS74)。
【0046】
そして、ステップS74にて縮小等の処理をされた画像データから、当該1番目のバンドの画像データを得て、そのバンドデータをバンドバッファにコピーする(ステップS75)。
【0047】
次に、1つのバンド(この場合、1番目のバンド)を生成するために必要なすべての画像について、処理が終了したか否かを判断し(ステップS76)、終了していなければ(ステップS76でNo)、ステップS70に戻り、次の画像(画像B2とする)について、前述同様にステップS70〜S75までの処理を行う。即ち、原画像データファイルを読み込み、復元した後、必要なライン数の画像(ライン)データを読み込み、回転、縮小等の各処理を行い、縮小等した画像データから1つのバンド(1番目のバンド)分の画像データを得て、そのバンドデータをバンドバッファにコピーする。
【0048】
このようにして、1つのバンド分(この場合、1番目のバンド分)のバンドデータを生成するに必要なすべての画像(この場合、図6のようなインデクス印刷を行うのであるから4枚の画像B1〜B4について、ステップS70からS75までの処理を繰り返し、これにより、バンドバッファには印刷すべき1バンド分(1番目のバンド分)のバンドデータ(画像B1〜B4の画像データにおける、それぞれ1番目のバンドデータにより構成される)が生成され(ステップS76でYes)、そのバンドデータを印刷処理部13に送る(ステップS77)。
【0049】
そして、全てのバンドの処理が終了したか否かを判断して(ステップS78)、処理が終了していなければ(ステップS78でNo)、ステップS70に処理が房る。このとき、次のバンド(2番目のバンド)のバンドデータを作るために、前述したステップS70からS75までの処理を画像B1〜B4についてそれぞれ行ってから、2番目のバンドデータを得ている。この2番目のバンドデータを印刷処理部に送った後、3番目のバンドデータを作る処理に入るが、このときも、ステップS70からS75までの処理を、画像B1〜B4についてそれぞれ行ってから、3番目のバンドデータを得る。以上の処理を全バンドの処理が終わるまで繰り返し、全バンドの処理が終わると(ステップS78でYes)、用紙2の主走査方向Xに一列に並んでいる画像B1〜B4についての印刷が完了する。
【0050】
以上のように、本実施形態では、主走査方向に並んだ画像B1〜B4のそれぞれについて、メモリカード10内の原画像データファイルを読み込んで復元した画像データから、イメージのバンド高さ×1/縮小率で決定される、当該バンドに必要なライン数分の画像(ライン)データを読み込み、回転・縮小等の処理を行ってバンドバッファに保持し、画像B1〜B4の1バンド分の処理が終了したら、そのバンドのバンドデータを印刷処理部13に送って印刷し、以後、バンドごとに同様の処理を繰り返して、画像B1〜B4の印刷を行うようにしている。かかる方法で、インデクス印刷等の主走査方向に複数の画像を含む場合でも、プリンタ内で画像データの処理が可能となり、ホスト上のアプリケーションによらなくても、かかるインデクス印刷等を行うことができる。特に、バンド単位でバッファリングを行って印刷するので、バッファメモリとしては数メガバイトの容量を確保するだけでも、かかるインデクス印刷が可能である。
【0051】
ところで、ディジタルカメラで撮影された画像を90度回転処理する場合には、図6に示したようなタイトル「INDEX BANNER」にも同様の回転処理が施される。一方、例えば、図8に示したように、画像を回転させずに、元の状態のままでインデクス印刷する場合もある。この場合、用紙1の紙送り方向Yを縦方向としたとき、その用紙1を縦方向に置いて見ることで正位置となるように、用紙1の主走査方向Xに沿ってタイトルが印刷される。
【0052】
これに対して、図6に示したように、元の画像を90度回転させて印刷する場合は、タイトルも90度回転させ、用紙2の紙送り方向Yを縦方向としたとき、その用紙2を横方向に置いて見ることで正位置となるように、用紙2の紙送り方向Yに沿ってタイトルが印刷される。
【0053】
このように、画像を回転処理する場合は、それに合わせて、タイトルも回転させた状態で印刷する必要が生じる。本実施形態では、前述したように、タイトル選択部420を有し、このタイトル選択部420では、処理を効率化するために、回転処理前のタイトルと、そのタイトルを90度回転させた状態のタイトルの両方を用意しておき、元の画像の印刷に関する回転処理の有無に応じて、回転処理前のタイトルと90度回転させた状態のタイトルのいずれかを選択し、印刷処理部13に送る。即ち、タイトル選択部420は、回転処理部412dによって回転処理がなされたか否かを示す情報を受け取って、それに応じたタイトルを選択し、その結果を印刷処理部13に送る。
【0054】
このように、2通りのタイトルを用意しておけば、回転処理する場合としない場合とで、それに対応したタイトルを選択すればよいので、画像を回転処理する場合でも、タイトルまで回転させる処理を行う必要がなくなり、処理が簡略化される。
【0055】
更に、本実施形態では、画像補正部412fは、画像データに対して画像補正処理を施す場合、前述したように、リサイズ処理後の画像がどのような大きさの画像となったかによって、リサイズ処理後の画像又はリサイズ処理前の画像のいずれかを用いて画像補正処理を行う。つまり、画像補正処理の処理量を少なくするために、小さい方の画像、即ち、画素数の少ない方の画像を用いて行う。従って、元の画像を拡大処理して印刷する場合は、元の画像を用いて画像補正を施し、反対に元の画像を縮小処理して印刷する場合は、縮小後の画像に対して画像補正を施す。具体的には、画像補正部412fは、リサイズ処理部412eによるリサイズ処理情報を受け取って、拡大処理の場合は、リサイズ処理前の画像データを用いて画像補正処理を行い、縮小処理の場合は、リサイズ処理部412eによるリサイズ処理後の画像データを用いて画像補正処理を行う。このように、画素数の少ない画像を用いて画像補正を施すことにより、画像補正の場合のデータ処理量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…メモリカード、11…フォト画像処理部、41…フォト画像処理部、13…印刷処理部、112…画像データ処理部、412…画像データ処理部、116…バンドバッファ、416…バンドバッファ、118…画像データ制御部、418…画像データ制御部、112a…原画像データファイル読み込み部、412a…原画像データファイル読み込み部、112b…復元処理部、412b…復元処理部、112c…ラインデータ読み込み部、412c…ラインデータ読み込み部、112d…リサイズ処理部、412d…回転処理部、112e…画像補正部、412e…リサイズ処理部、412f…画像補正部、21…カード挿入部、23…操作パネル部、25…用紙の給紙部、27…用紙の排出部、420…タイトル選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回の主走査で印刷するイメージデータに含まれる各々の部分的イメージを提供する圧縮された原画像ファイルデータに対して、復元を含む所定の画像処理を施してビットイメージ形式の画像データを生成する画像データ処理手段と、
前記画像データ処理手段により、必要に応じて前記原画像ファイルデータからその都度画像データを生成し、関連する部分を読み出して利用するように制御を行う制御手段とを有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、前記原画像ファイルデータは、JPEG圧縮されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2記載のプリンタにおいて、前記原画像ファイルデータは、複数枚の画像を含み、該複数枚の画像を1枚の印刷用紙に所定の配列で並べて印刷を行う場合であって、前記制御手段は、前記画像データ処理手段により、前記原画像ファイルデータからその都度画像データを復元し、該復元した画像データからn(nは1以上の整数)ライン分のデータを読み出して、他の所定の画像処理を施して前記n(nは1以上の整数)ライン分のビットイメージ形式の画像データを生成し、該n(nは1以上の整数)ライン分の画像データをバンドバッファに保持し、1バンド分の処理が終了したら、当該バンドのバンドデータを印刷するように制御することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項3記載のプリンタにおいて、前記nは、1であることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項3記載のプリンタにおいて、前記nは、イメージのバンド高さ×1/縮小率で決まる、当該バンドに必要なライン数であることを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5記載のプリンタにおいて、前記画像データ処理手段は、更に、前記所定の画像処理として、印刷する際に原画像を回転させて画像の向きを所定角度だけ変える回転処理を実行可能な回転処理部と、原画像を拡大又は縮小するリサイズ処理を実行可能なリサイズ処理部を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
請求項6記載のプリンタにおいて、更に、原画像とは別のタイトルをも印刷可能に構成され、該タイトルを、少なくとも前記回転処理前用のタイトルと、該回転処理前用のタイトルを回転させたタイトルの2つ用意しておき、前記所定の画像処理として回転処理を実行するか否かに応じて、前記回転処理前用のタイトル又は前記回転させたタイトルのうち、いずれかを選択して印刷する手段を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
請求項6記載のプリンタにおいて、前記画像データ処理手段は、更に、前記所定の画像処理として、原画像に所定の補正処理を加える画像補正部を有し、前記リサイズ処理を実行した場合に、該画像補正部は、リサイズ前の画像とリサイズ後の画像のうち画素数のより少ない方を選択し、該選択した画像に対し前記所定の補正処理を加えることを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
圧縮された原画像ファイルデータを読み込んでビットイメージ形式の画像データを生成して印刷処理装置に送る処理を行う画像処理装置であって、前記印刷処理装置による1回の主走査で印刷するイメージデータに含まれる各々の部分的イメージを提供する前記圧縮された原画像ファイルデータに対して、復元を含む所定の画像処理を施してビットイメージ形式の画像データを生成する画像データ処理部と、
前記画像データ処理部により、必要に応じて前記原画像ファイルデータからその都度画像データを生成し、関連する部分を読み出して利用するように制御を行う主制御部とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
所定の記憶媒体にそれぞれファイルデータとして格納された複数枚の画像を読み込んで1枚の印刷用紙に所定の配列で並べて印刷するプリンタにおける画像データの処理方法であって、
主走査方向に並べて印刷するそれぞれの画像について、圧縮された原画像ファイルデータを読み込む原画像の読み込みステップと、
該読み込んだ原画像データを復元する復元ステップと、
該復元した原画像データからn(nは1以上の整数)ライン分のデータを読み出し、該n(nは1以上の整数)ライン分のデータに対し所定の画像処理を行う画像処理ステップと、
該所定の画像処理を行ったn(nは1以上の整数)ライン分のデータをバンドバッファに保持するバッファリングステップとを有し、
主走査方向に並べて印刷する全画像について少なくとも前記バンドバッファに1バンド分のバンドデータがそろうまで、前記原画像の読み込みステップ、復元ステップ、画像処理ステップ、及びバッファリングステップを繰り返して実行することを特徴とするプリンタにおける画像データの処理方法。
【請求項11】
圧縮された原画像ファイルデータを読み込んで印刷可能なプリンタにおいて、該プリンタは、処理対象となる画像データを複数のバンドに分割してバンドデータを得て、該バンドデータを用いて印刷処理する方式である場合の該プリンタを制御するプログラムを記録した記録媒体であって、該プログラムは、
主走査方向に並べて印刷するそれぞれの画像について、圧縮された原画像ファイルデータを読み込む処理と、
該読み込んだ原画像データを復元する処理と、
該復元した原画像データからn(nは1以上の整数)ライン分のデータを読み出し、該n(nは1以上の整数)ライン分のデータに対して行う所定の画像処理と、
該所定の画像処理を行ったn(nは1以上の整数)ライン分のデータをバンドバッファに保持する処理とを有し、
主走査方向に並べて印刷する全画像について少なくとも前記バンドバッファに1バンド分のバンドデータがそろうまで、前記原画像の読み込み、復元、画像処理、及びバッファリングを繰り返して実行させるものであることを特徴とするプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−42679(P2010−42679A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224162(P2009−224162)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【分割の表示】特願平11−246440の分割
【原出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】