説明

プリント処理システム及び画像管理装置

【課題】画像処理能力が異なる複数の画像形成装置がネットワークに接続されていても、プリント処理を効率よく行う。
【解決手段】入力画像データに対して画像処理を行い、プリント用画像データを作成する画像管理装置2と、入力画像データが転送され、この画像データに対して画像処理を行い、プリント用画像データを作成する写真処理装置1と、がネットワークにより接続され、画像管理装置2は、プリント処理を行なうべき写真処理装置1を決定する送信先決定手段24と、この決定結果に基づいて、第1画像処理部で行なう画像処理と、第2画像処理部で行なう画像処理との判断を行なう画像処理判断手段と、この結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理を施した処理途中の画像データを決定された画像形成装置に転送させる画像転送手段と、を備え、画像形成装置は、処理途中の画像データに対し残りの画像処理を施し、プリント用画像データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第1画像処理部を有する画像管理装置と、前記入力された画像データが転送され、この画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第2画像処理部を有する画像形成装置と、を備え、これら画像管理装置と複数の画像形成装置がネットワークにより接続されたプリント処理システム、及び、このシステムに用いられる画像管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の写真処理装置(画像形成装置の一例)と端末処理装置(画像管理装置の一例)とをネットワークで接続したプリント処理システムとしては、例えば、下記特許文献1,2により公知である。一般的に、写真処理装置でプリントを作成するためには、入力された画像データに対して画像処理を施してプリント用画像データを作成する必要がある。この画像処理は、写真処理装置に備えられたプリントエンジンに適した形の画像データに変換したり、適切な画質のプリントを作成したり、顧客の依頼に係るプリントサイズへの変換などのために必要とされるものである。
【0003】
従って、かかる画像処理を行なうための機能を有する画像処理手段が必要であり、特許文献1においては、写真処理装置と画像管理装置の両方に画像処理部が設けられている。この先行技術においては、写真処理装置において入力された画像データに関しては、写真処理装置に設けられた画像処理部により画像処理が行なわれ、画像管理装置において入力された画像データに関しては画像管理装置に設けられた画像処理部により画像処理が行われる。従って、画像管理装置により作成されたプリント用画像データは、ネットワークを介して指定された写真処理装置へと転送されることになる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−173714号公報
【特許文献2】特開2006−140604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、画像管理装置に入力された画像データに関して、すべて画像管理装置で画像処理を行なってプリント用画像データを作成するというシステムの場合、多量のプリント処理の注文があった場合、画像管理装置における画像処理に多くの時間を要し、プリント処理の効率が低下するという問題がある。
【0006】
また、前述の先行技術において写真処理装置で画像処理を行うのは、特に現像済み写真フィルムから読み取った画像データについて行われるものであるが、写真フィルムからのプリント注文が減少して、デジタルカメラからのプリント注文が主流となっている現在においては、より画像管理装置における画像処理が集中する傾向にある。
【0007】
さらに、写真処理装置における画像処理は、ハードウェア基板により行なわれるのが通常であるが、コストダウンのためにハードウェア基板を持たない写真処理装置も出現している。かかる写真処理装置は、画像処理を行なう機能を有しておらず、従って、画像管理装置でプリント用画像データを作成しなければならないことになる。
【0008】
また、画像処理の機能を上げるためにバージョンアップが行なわれるが、ハードウェア基板を用いる写真処理装置の場合は、バージョンアップを行うためにはハードウェア基板の交換を伴い、コスト抑制や交換作業の煩雑さの関係からバージョンアップを行なわないことがある。一方、画像管理装置における画像処理は、通常はソフトウェアにより行なわれるものであり、バージョンアップは容易に行なうことができる。従って、バージョンの異なる画像処理機能が1つのネットワーク上で混在することがあり、特定の画像処理については、画像管理装置では行うことができるが、写真処理装置ではできないというケースも生じる。
【0009】
かかる種々のタイプの写真処理装置がネットワークに接続される可能性があり、一律に画像管理装置で画像処理を行なう方式や、写真処理装置で画像処理を行なう方式では、ネットワーク全体で見た場合、プリント処理の効率があがらないという問題がある。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、画像処理能力が異なる複数の画像形成装置や画像管理装置がネットワークに接続されていても、プリント処理を効率よく行うことが可能なプリント処理システム、及び、このシステムに用いられる画像管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係るプリント処理システムは、
入力された画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第1画像処理部を有する画像管理装置と、前記入力された画像データが転送され、この画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第2画像処理部を有する画像形成装置と、を備え、これら画像管理装置と複数の画像形成装置がネットワークにより接続されたプリント処理システムであって、
前記画像管理装置は、入力された画像データに係るプリント処理を行なうべき画像形成装置を決定する送信先決定手段と、送信先決定手段による決定結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理と、第2画像処理部で行なうことが可能な画像処理との判断を行なう画像処理判断手段と、この画像処理判断手段による判断結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理を施した処理途中の画像データを決定された画像形成装置に転送させる画像転送手段と、を備え、
前記画像形成装置は、転送された処理途中の画像データを受信し、前記第2画像処理部により、残りの画像処理を施すことにより、前記プリント画像データを作成することを特徴とするものである。
【0012】
また、上記課題を解決するため本発明に係る画像管理装置は、
入力された画像データに係るプリント処理を行なうべき画像形成装置を決定する送信先決定手段と、送信先決定手段による決定結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理と、第2画像処理部で行なうことが可能な画像処理との判断を行なう画像処理判断手段と、この画像処理判断手段による判断結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理を施した処理途中の画像データを決定された画像形成装置に転送させる画像転送手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によるプリント処理システム及び画像管理装置の作用・効果を説明する。複数の画像形成装置と、画像管理装置とがネットワークにより接続されている。プリントを作成するためには、画像管理装置に入力された画像データに対して種々の画像処理を行って、プリント用画像データを作成する必要がある。そのために画像管理装置には第1画像処理部が設けられ、画像形成装置には第2画像処理部が設けられる。画像管理装置にプリント処理すべき画像データが入力された場合、送信先決定手段によりネットワークに接続されている複数の画像形成装置のうちの1つを決定する。
【0014】
次に、この送信先決定手段により決定された結果に基づいて、第1画像処理部で行うべき画像処理と、第2画像処理部で行うことが可能な画像処理との判断を行なう。すなわち、画像処理を画像管理装置のみですべて行うのではなく、画像形成装置側でも行なえるものは画像形成装置で行なうようにする。そして、画像管理装置において行なわなければならない画像処理に関しては、画像管理装置により行う。このように画像処理を双方で分担して行なうことにより、画像管理装置の負担を軽減することができる。すなわち、まず画像管理装置において必要とされる画像処理を行った後、残りの画像処理を画像形成装置側で行う。これにより、画像管理装置に負担が集中するのを軽減し、プリント処理を効率よく行なうことができる。
【0015】
例えば、画像管理装置の画像処理機能のほうがバージョンが高く、画像形成装置では行なえない画像処理は、第1画像処理部において行なう。第1画像処理部でも第2画像処理部でも行なうことができるものは、画像形成装置の方で行なうようにする。
【0016】
本発明に係る送信先決定手段は、第1画像処理部における画像処理能力、第2画像処理部における画像処理能力、画像形成装置におけるプリント作成能力、に基づいて、最速でプリント作成が可能な画像形成装置を決定することが好ましい。
【0017】
送信先の画像形成装置を決定する場合は、最もプリント処理が早く終了すると予測される画像形成装置を決定することが好ましい。そのために、第1・第2画像処理部における画像処理能力や画像形成装置におけるプリント作成能力に基づいて、プリント処理が完了するまでの時間を予測演算する。例えば、画像形成装置は1時間当たりサービスサイズを何枚作成可能であるかを示すデータや、夫々の画像処理部におけるCPUの能力、さらに、プリント枚数やプリントサイズなども考慮すれば、どの画像形成装置を選択すれば最も早くプリントが仕上がるかを予測可能である。これにより、最も適切な画像形成装置を決定することができ、プリント処理の効率を高めることができる。
【0018】
本発明において、前記送信先決定手段により、画像処理機能を備えていない画像形成装置が選択された場合、第1画像処理部により必要とされるすべての画像処理を行いプリント用画像データを作成することが好ましい。
【0019】
ネットワークには、画像処理部を備えていない画像形成装置が接続される可能性もある。従って、送信先決定手段により、かかる画像管理装置が決定された場合は、画像管理装置の第1画像処理部により必要とされる画像処理をすべて行いプリント用画像データを作成する。これを画像形成装置に転送することで、画像形成装置はそれをそのまま用いて、プリント作成をおこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係るプリント処理システムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、システムの概要を示す模式図である。
【0021】
<プリント処理システムの構成>
図1において、複数の写真処理装置(画像形成装置に相当)1と画像管理装置2とがネットワーク3により接続されている。なお、画像管理装置2は、1台ではなく複数台をネットワークに接続してもよい。写真処理装置1は、基本的には複数台が設置されるが、何台接続するかは任意である。ネットワーク3はイーサネット等の汎用性のあるLANにより構築されるが、これに限定されるものではない。ネットワーク3は、有線・無線のいずれであってもよく、有線と無線を組み合わせてもよい。
【0022】
写真処理装置1は、銀塩ペーパーに画像形成する方式のものが一般的には使用されるが、画像形成装置としてはこれに限定されるものではなく、例えば、インクジェットプリンタを用いてもよく、種々の方式の画像形成装置を組み合わせてプリント処理システムを構築してもよい。
【0023】
受付端末4は、プリント依頼を行なうために来店した顧客により操作される装置であり、デジタルカメラの記憶媒体から画像データが入力される。かかる記憶媒体としては、コンパクトフラッシュTM、スマートメディアTMなどが例としてあげられる。その他に、CD−Rやフラッシュメモリなども記憶媒体の例としてあげられる。なお、受付端末4を介して画像データを入力するのではなく、画像管理装置2に直接入力させるように構成してもよい。
【0024】
受付端末4は、実際には複数台がネットワークに接続されており、入力された画像データは、適宜のタイミングにて画像管理装置1に送信され、一旦保存される。
【0025】
<画像管理装置の構成>
次に、画像管理装置2の主要な機能について図2のブロック図により説明する。画像管理装置2は、汎用性を有するコンピュータ(パソコン)及びその周辺機器により構成することができる。
【0026】
オーダーデータ保存部20は、プリント処理を行なうべき画像データが保存される。画像データは、受付端末4から送信されてくるものであり、オーダー単位でオーダーデータ保存部20に保存される。ここで、オーダー単位とは、プリント処理を管理する場合の単位を示すものであり、画像データはオーダーごとに付与される管理番号(管理用ID)により管理される。例えば、顧客が1つの記憶媒体を持参して50枚分のプリント処理の依頼を行った場合、その50枚分のプリント処理に係る画像データ群により、1オーダーが構成される。従って、2つの記憶媒体を持参した場合は、2オーダーが構成される。なお、1オーダー(1つの記憶媒体)に係るプリント枚数が多い場合は、2つ以上のオーダーに分割して管理してもよい。
【0027】
オーダーデータ保存部20は、ハードディスクなどの大容量記憶装置により構成される。保存される画像データは、プリント処理を行なった後に削除されるが、削除するタイミングは適宜設定することができる。例えば、プリント処理を行った後に削除してもよいし、後日の焼き増し注文に備えて所定期間(例えば、1週間)保存した後に削除してもよい。
【0028】
オーダー単位で画像データを保存する場合には、画像データのみが保存されるのではなく、そのほかのオーダデータも合わせて保存される。例えば、プリント作成のためには、プリントサイズを指定する必要があるため、サイズデータが保存されている。また、個々の画像データについて、何枚プリントをするのかについてのプリント枚数データも保存される。また、赤目補正などの特殊な補正の依頼があれば、それを表すデータも保存される。
【0029】
画像処理部21(第1画像処理部に相当)は、入力された画像データ(オーダーデータ保存部20に保存されている画像データ)に対して画像処理を行い、プリント作成のために必要なプリント用画像データを作成する機能を有する。画像処理部21は、画像処理を行なうために必要なソフトウェアにより構築することができるが、機能の一部もしくは全部をハードウェアにより構成することも可能である。
【0030】
プレジャッジ用画像処理手段21aは、プレジャッジを行なうために必要な機能を提供する。プレジャッジとは、表示手段であるモニター27に画像データを表示させて、適切な色・濃度のプリントに仕上がるか否かを判定することをいう。モニター27に画像を表示させる場合は、オーダーデータ保存部20に保存されている画像データからサムネイル画像データを生成することで、モニター27に画像表示をさせることができる。
【0031】
オペレータは、モニター27に映し出された画像を見ながら、適切な画質のプリントが作成されるか否かを判定する。画質が適切でないと判断した場合は、色・濃度の補正データを入力する。また、前述の赤目補正のほか、階調補正などの特殊な補正についても必要に応じて行われ、その補正データが入力される。これらの補正データは、個々の画像データに付随するデータとしてオーダーデータ保存部20に保存される。
【0032】
1オーダー分の画像データについてプレジャッジが終了すると、プリント処理指示手段12bにより、そのオーダーに関してプリント処理を開始するように指令を与えることができる。例えば、画面上に表示されるプリント開始ボタンをクリックすることにより、プリント処理の開始を行なうことができる。
【0033】
プリント処理の開始は、例えば、1オーダーに50枚分の画像データが含まれる場合、50枚分すべての画像についてのプレジャッジが終了した後に、プリント処理の開始を行なうことができる。また、モニター27に画像表示を行う場合、所定枚数(例えば、6枚)ずつ行なうことが一般的であるので、当該所定枚数のプレジャッジが終了するごとにプリント処理の指示を与えるようにしてもよい。
【0034】
画像処理部21で行なわれる画像処理には種々の種類の画像処理があり、先ほど説明したプレジャッジにおいて設定される補正データも画像処理を行う際に用いられる。画像処理は、画像処理手段21cの機能により行なわれるが、各写真処理装置1も基本的には画像処理の機能を備えている。ただし、ネットワーク3には、画像処理の機能を備えていない写真処理装置1が接続されることもある。
【0035】
写真処理装置1においてプリントを作成するためには、最終的には入力された画像データに対して種々の画像処理を施してプリント用画像データを作成すればよい。このようなプリント用画像データは、画像管理装置2の画像処理部21ですべて作成するようにしてもよいが、オーダーが集中した場合などには画像処理に時間がかかり、予定された仕上がり時間にプリントが仕上がらないというおそれが生じる。
【0036】
従って、プリント用画像データを作成するための画像処理は、すべて画像管理装置2で行うのではなく、可能な限り、写真処理装置1が有する画像処理部1a(第2画像処理部に相当)でも画像処理を行なわせることが好ましい。特に、写真処理装置1に備えられている画像処理部1aは、ハードウェア基板を用いて行なわれるものであり、処理速度が速いという利点がある。一方、画像管理装置2における画像処理部21は、画像管理装置2が汎用のパソコンで構成される場合には、ソフトウェアを用いて行なわれるため、写真処理装置1に比べると処理速度は遅い。この点においても、写真処理装置1で画像処理を行なわせるのが好ましいが、すべてを写真処理装置1で行なわせるには次のような問題点がある。
【0037】
すなわち、前述のように画像処理機能を備えていない写真処理装置1が接続される可能性があり、かかる写真処理装置1が選択された場合には、画像管理装置2において画像処理を行なわざるをえない。
【0038】
また、画像処理の機能を上げるためにバージョンアップが行なわれるが、ハードウェア基板を用いる写真処理装置1の場合は、バージョンアップを行うためにはハードウェア基板の交換を伴い、コスト抑制や交換作業の煩雑さの関係からバージョンアップを行なわないことがある。一方、画像管理装置2における画像処理は、通常はソフトウェアにより行なわれるものであり、バージョンアップは容易に行なうことができる。従って、バージョンの異なる画像処理機能が1つのネットワーク上で混在することがあり、特定の画像処理については、画像管理装置2では行うことができるが、写真処理装置1ではできないというケースも生じる。
【0039】
従って、種々の画像処理を施して、最終的にプリント画像データを作成する場合、画像管理装置2で行うべき画像処理と、写真処理装置1で行なうべき画像処理とに分けて分担して画像処理を行うことが可能に構成されている。このように分担を決めるための機能として、画像処理判断手段21dが設けられている。
【0040】
画像処理判断手段21dは、上記の画像処理の分担内容を判断し、画像管理装置2で行なわせるべき画像処理のみを画像処理手段21cにより行なわせる。これにより、処理途中の画像データが作成されることになるが、画像転送手段21eの機能により、この処理途中の画像データは写真処理装置1へと転送され、残りの画像処理は写真処理装置1の画像処理部1aにおいて行なわれる。これにより、最終的にプリント用画像データが作成される。
【0041】
次に、画像処理の種々の具体例について説明する。上記説明したプレジャッジにおいて設定される補正データにより色・濃度を修正するための画像処理が行なわれる。また、作成されるプリントサイズに対応した画像データとするために、入力した画像データに対する拡大処理もしくは縮小処理が行われる。また、JPEGなどの圧縮形式の画像ファイルをビットマップに展開するための画像処理も行われる。
【0042】
また、画像データのトリミング処理やフレームとの合成処理についても、画像処理の一例である。フレームとの合成については、例えば、年賀状プリント、カレンダープリントなどの作成の場合は、予め決められたフレームデータと画像データとの合成処理が行われる。
【0043】
また、特殊な画像補正として、赤目補正、階調補正、逆光補正などがある。このような特殊補正は、画像処理手段のバージョンによってはできないというケースがありうる。
【0044】
次に、写真処理装置1の特性に依存する画像処理について説明する。その代表的なものとしては、現像処理液の経時変化に起因するものがある。すなわち、現像処理液は使用している間に劣化していくものであり、これにより、発色にも影響を及ぼす。従って、写真処理装置1を毎日立ち上げる時にテストプリントを作成し、テストプリントに形成された色・濃度のチェックを行なっている。そして、予め設定された発色が得られるように、補正データが作成される。補正データは、例えば、LUT(ルックアップテーブル)のような形態で提供されるものである。また、現像処理液の状態は、仮に全く同じ機種であったとしても写真処理装置1ごとに異なるものになる。この補正データについては、画像管理装置2において一括管理する必要があり、補正データは、プリンタ情報データベース22に保存される。また、補正データは日々更新されるものであり、プリンタ情報データベース22もそれに連動してデータが更新される。
【0045】
また、写真処理装置1において画像形成を行う場合には、露光エンジンが用いられる。露光エンジンには、レーザー光により画像形成を行なわせるレーザーエンジンの他に、PLZTエンジン、CRTエンジンなどがある。これらエンジンの特性に応じたシャープネスの補正を行う必要がある。エンジンの種類が異なれば、当然、補正データも異なり、また、同じレーザーエンジンであっても機体差により特性は異なる。従って、かかる補正データも写真処理装置1の特性に依存する画像処理であり、プリンタ情報データベース22において一括管理される。
【0046】
なお、入力された画像データのビット数を露光エンジンで画像形成を行う時のビット数に合わせるための画像処理が行われることもある。例えば、露光エンジンが12ビットのカラー画像を作成する場合、入力されたオリジナルの画像データが8ビットであれば、8ビットから12ビットに変換するための画像処理が行なわれることになる。
【0047】
また、銀塩式の画像形成装置ではなく、インクジェットプリンタを用いる場合は、インクジェット用に対応した画像データの展開を行う必要があるため、かかる画像処理も行なわれる。
【0048】
プリンタ情報データベース22は、写真処理装置1に関する種々の情報が保存されたデータベースである。前述の現像処理液の変化に起因する補正データは、日々変化するものであるから、毎日補正データが更新される。また、シャープネスに関する補正データやその他の画像処理用の補正データも記憶される。また、各写真処理装置1には固有の識別情報が割り振られており、この識別情報と関連付けて画像処理を行なうための補正データが記憶されている。従って、識別情報を指定することで、対応するデータを読み出すことができる。
【0049】
また、各写真処理装置の画像処理能力やプリント作成能力に関するデータも合わせて保存されている。画像処理能力としては、特定の画像処理を行なうのにどの程度時間がかかるのかについてのデータが記憶されている。同じ内容の画像処理であっても、高速で処理できる機種とそうでない機種が存在する。画像データの枚数や、画像データのサイズが分かれば、1オーダー分(例えば、50枚分)の画像データに対して必要とされる画像処理のトータルの時間を予め演算することができる。
【0050】
画像処理にかかる時間については、画像管理装置2の画像処理部12に関しても同様であり、予め予測演算することが可能である。
【0051】
また、プリンタ情報データベース22には、プリント作成能力に関するデータが各写真処理装置1ごとに保存されている。例えば、サービスサイズ(あるいは、2L、8つ切など)のプリントを1時間当たり何枚作成できるか、に関するデータも保存されている。
【0052】
このような個々の写真処理装置1の能力に関するデータは、ネットワーク3を経由して写真処理装置1から取り込む(ダウンロード)ことが可能である。また、写真処理装置1に固有の補正データ(前述の現像処理液の劣化に関するものなど)もネットワーク経由でダウンロードすることができる。もちろん、ネットワーク経由で取り込むのではなく、画像管理装置2に直接入力するように構成してもよい。
【0053】
入力操作部23は、キーボードやマウス等により構成されるものであり、プレジャッジ作業を行う場合などに、必要なデータの入力を行なったり、操作指令を行なうものである。
【0054】
送信先決定手段24は、プリントを作成するために画像データを送信すべき写真処理装置1を決定する機能を有する。複数の写真処理装置1の中から1つを決定するまでのアルゴリズムは、適宜決めることができる。例えば、次のようにして決めることができる。
【0055】
まず、3台の写真処理装置1が接続されているとし、そのうちの2台が稼働中であり、残りの1台が稼動していなければ、その写真処理装置1を選択することができる。稼働中か否かの状態を表わす信号は、各写真処理装置1から所定時間間隔ごとに受信することができる。仮に、すべての写真処理装置1が稼働中であれば、その時点では決定することができず、どれか1台が空くまで待機するという方法もあるが、後述のように、どの写真処理装置1が一番早く空きになるかを予測演算してもよい。
【0056】
また、上記において、稼働中でなくても、メンテナンス中であることもあり、その場合も写真処理装置1を決定できない場合に相当する。メンテナンスの例としては、ペーパーの交換作業や、ペーパー詰まり対策などがある。メンテナンスが終了すれば、その旨の信号が画像管理装置2に送信される。これに基づいて、写真処理装置1を決定することもできる。
【0057】
更に、複数台の写真処理装置1が稼働中である場合、どの写真処理装置1が一番先にプリント処理を終了するかを予想することが可能である。例えば、画像管理装置2では、どの写真処理装置1にどのようなオーダーを依頼したかは一括して管理されているため、各写真処理装置1におけるプリント枚数を把握することができる。
【0058】
また、稼働中の写真処理装置1におけるプリント処理進行状況に関するデータをネットワーク3を介して取得するようにすることができる。進行状況のデータとしては、例えば、「現在60%完了、残り時間○○分」というデータを受け取ることで、各写真処理装置1の稼働状況を把握することができ、プリント処理が最も早く終了する写真処理装置1を画像管理装置2側で認識することができる。
【0059】
また、前述のように画像管理装置2及び写真処理装置1における画像処理に要する時間やプリント作成に要する時間も予測演算することができる。従って、プリントサイズ及びプリント枚数は、予めオーダーデータとして分かっており、プリント処理の終了時刻を予測演算することができる。これに基づいて、一番早くプリント処理が終了すると予測された写真処理装置1を次の送信先として決定することができる。
【0060】
また、現在可動中の写真処理装置1に関していえば、現在処理中のプリント作成が終了するまでの時間に、これから処理しようとしているオーダーに要するトータルの処理時間を加算すれば、終了時刻を予測できることになる。現在稼動していない(プリント処理依頼待ち)写真処理装置1であれば、これから処理しようとしているオーダーに要するトータルの処理時間に基づいて、終了時刻を予測できることになる。
【0061】
以上のように、送信先決定手段24は、画像処理時間演算機能24aとプリント処理時間演算機能24bと終了時刻演算機能24cを備えている。
【0062】
コントローラ25は、図2に図示される各手段及びオーダーデータ保存部20、プリンタ情報データベース22に対する制御やその他の制御を統括的に行う。
【0063】
通信手段26は、ネットワーク3を経由して送信されてくる画像データを受信し、また、各写真処理装置1からの種々のデータや信号を受信する。また、作成されたプリント用画像データもしくは処理途中の画像データは、オーダー単位で指定された写真処理装置1へと送信される。
【0064】
<プリント作成までの手順>
次に、入力された画像データを用いて画像プリントを作成するまでの手順を図3のフローチャートにより説明する。
【0065】
受付端末4において取り込まれた画像データ群は、ネットワーク3を介して画像管理装置2に受信される(S1)。受信された画像データは、オーダー単位でオーダーデータ保存部20に保存され、オーダー単位で管理される(S2)。
【0066】
保存された画像データについては、プレジャッジが行われる(S3)。どのようなオーダーが現在保存されているかについては、プレジャッジ用画像処理手段21aの機能を用いて、モニター画面に表示させることができる。プレジャッジを開始する場合は、どのオーダーについて行なうのかモニター27を見ながら指定する。なお、プレジャッジが終了しているオーダーに関しては、その旨の識別表示がなされるようにしている。
【0067】
プレジャッジの開始指令を行なうと、オーダーデータ保存部20に保存されている、そのオーダーの画像データからサムネイル画像データを作成する(S4)。このサムネイル画像データは、画像をモニター27に表示させるために使用するものである。モニター27に表示させる場合は、例えば、1画面につき6枚ずつ画像を表示させる。
【0068】
オペレータは、モニター27に表示された画像を見ながら、色・濃度が適切な画像プリントが作成されるか否かを判定する(S5)。そのままでは適切な画質にならないと判断した場合は、色・濃度の補正データを入力操作部25を用いて入力する(S6)。補正データを入力した結果は、モニター画面にすぐに反映されるので、適切な画質になるまで補正データの入力・修正を行なうことができる。確定した補正データは、対応する画像データと対応付けられた形でオーダーデータ保存部20に保存される(S7)。
【0069】
画像のすべてについてプレジャッジが終了すれば(S8)、プリント処理の開始指令を行なう(S9)。次に、送信先決定手段24の機能に基づき、送信先を決定するための処理を行う(S10)。
【0070】
前述のように、各写真処理装置1について、プリント作成の終了時刻を予測演算し、最も早くプリント作成が完了する写真処理装置1を決定することができる。また、稼動していない写真処理装置1があれば、直ちにその写真処理装置1に決定してもよい。また、稼動していない写真処理装置1が複数存在すれば、最も早く仕上がる写真処理装置1を決定すればよい。
【0071】
次に、画像処理判断手段21dにより、行なうべき画像処理のうち、画像管理装置2側で行うべきものと、写真処理装置1側で行なうべきものについて判断する(S11)。写真処理装置1側で行うことのできる画像処理であれば、できるだけ写真処理装置1で行なうように分担を分けるようにする。
【0072】
画像管理装置2側で行なうべき画像処理が決まれば、画像処理手段12cにより、入力された画像データに対して画像処理を行う(S12)。この画像処理の結果得られたものはプリント用画像データではなく、処理途中の画像データである。この処理途中の画像データは、決定された写真処理装置1へと転送される(S14)。すなわち、画像転送手段21eの機能により、通信手段26を介してネットワーク3へ送出され、指定された写真処理装置1へ送信される。
【0073】
なお、決定された写真処理装置1がまだ稼働中であるなど、ただちに画像データを転送できない事情がある場合は、送信可能になるまで待機する(S13)。その場合は、一時的に処理途中の画像データを保存し、転送可能になった時点で送信を行なう(S14)。
【0074】
写真処理装置1において、転送されてきた処理途中の画像データを受信し(S14),写真処理装置1の画像処理部1aでは、残りの必要とされる画像処理を実行する(S15)。これにより、プリント用画像データが作成される(S16)。
【0075】
写真処理装置1が銀塩式のプリンタである場合は、概ね、次のような手順でプリントが作成される。作成されたプリント用画像データは、レーザーエンジンに送信され、画像データにより光変調されたレーザー光により、ペーパーの乳剤面に潜像を形成させる。潜像が形成されたペーパーは、現像処理部へと送られて潜像が顕在化され、写真プリントが作成される。プリントは、オーダー単位で集積部に集積され、袋詰めされる。
【0076】
<別実施形態>
本発明において、画像処理機能を備えていない写真処理装置1をネットワーク3に接続してもよい。すなわち、画像処理機能を有する写真処理装置1と、画像処理機能を有していない写真処理装置1とが混在した状態でシステムを構築してもよい。
【0077】
本実施形態において、種々の画像処理の具体的な内容を説明したが、これらはあくまでも例示であり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0078】
本発明において、プリント用画像データとは、プリントを作成するために必要とされる最終的な形態のデータを意味するものである。単に画像データという場合には、本実施形態で説明しているような処理途中の画像データや、入力された(オリジナルの)画像データを指すものとする。
【0079】
本発明において、処理途中の画像データを一時的に記憶させて記憶手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】プリント処理システムの概要を示す模式図
【図2】画像管理装置の主要な機能を示すブロック図
【図3】プリント作成するときの処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0081】
1 写真処理装置
1a 画像処理部(第2画像処理部)
2 画像管理装置
3 ネットワーク
20 オーダーデータ保存部
21 画像処理部(第1画像処理部)
21c 画像処理手段
21d 画像処理判断手段
21e 画像転送手段
22 プリンタ情報データベース
23 入力操作部
24 送信先決定手段
25 コントローラ
26 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第1画像処理部を有する画像管理装置と、前記入力された画像データが転送され、この画像データに対して画像処理を行い、プリント作成用のプリント用画像データを作成することが可能な第2画像処理部を有する画像形成装置と、を備え、これら画像管理装置と複数の画像形成装置がネットワークにより接続されたプリント処理システムであって、
前記画像管理装置は、
入力された画像データに係るプリント処理を行なうべき画像形成装置を決定する送信先決定手段と、
送信先決定手段による決定結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理と、第2画像処理部で行なうことが可能な画像処理との判断を行なう画像処理判断手段と、
この画像処理判断手段による判断結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理を施した処理途中の画像データを決定された画像形成装置に転送させる画像転送手段と、を備え、
前記画像形成装置は、転送された処理途中の画像データを受信し、前記第2画像処理部により、残りの画像処理を施すことにより、前記プリント画像データを作成することを特徴とするプリント処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント処理システムにおいて用いられる画像管理装置であって、
入力された画像データに係るプリント処理を行なうべき画像形成装置を決定する送信先決定手段と、
送信先決定手段による決定結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理と、第2画像処理部で行なうことが可能な画像処理との判断を行なう画像処理判断手段と、
この画像処理判断手段による判断結果に基づいて、第1画像処理部で行なうべき画像処理を施した処理途中の画像データを決定された画像形成装置に転送させる画像転送手段と、を備えていることを特徴とする画像管理装置。
【請求項3】
前記送信先決定手段は、第1画像処理部における画像処理能力、第2画像処理部における画像処理能力、画像形成装置におけるプリント作成能力、に基づいて、最速でプリント作成が可能な画像形成装置を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像管理装置。
【請求項4】
前記送信先決定手段により、画像処理機能を備えていない画像形成装置が選択された場合、第1画像処理部により必要とされるすべての画像処理を行いプリント用画像データを作成することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−81677(P2009−81677A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249589(P2007−249589)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】