説明

プリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物、それにより製造されたプリント回路基板、及びプリント回路基板の製造方法

【課題】環境にやさしく、経済的な方法で基板の粗さを形成することができるとともに、高信頼性の微細回路を実現することができるプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物、それにより製造されたプリント回路基板、及びプリント回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むものである。また、本発明のプリント回路基板の製造方法は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むエポキシ樹脂組成物を提供する段階と、エポキシ樹脂組成物をシート化して基板を形成する段階と、形成された基板を完全に後硬化させた後、界面活性剤を除去してシリカ粒子を脱着させる表面処理段階と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物、それにより製造されたプリント回路基板、及びプリント回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化、高性能化が進むにつれて、高い解像度のパターン形成が求められている。これにより、基板の解像度のために、ビルドアップ(Build−up)材料では10〜12μmの配線を用いており、さらには8μm以下の配線を用いる、極めて高い解像度が求められている。このような配線の量産工法は、SAP(Semi Additive Process)が唯一であるが、このような微細配線用基板の製作において、従来、化学銅の厚さが約2μmに近かったが、現在、約1μm程度の薄い厚さで施している。化学銅の厚さが薄くなるほど、樹脂基板との密着力が優れていなければならない(1kN)。しかし、従来のデスミア工法によって樹脂基板の粗さを形成する際、樹脂基板の粗さは非常に大きく、これにより化学銅の表面も粗くなるため、銅と樹脂基板との密着力が低下するという問題点がある。
【0003】
従来のデスミア工法において、樹脂絶縁物の硬化度が高い場合には、デスミア処理時に好適な粗さを得ることが非常に困難であり、硬化度が低い場合には、均一な粗さ処理が困難であって、部分的に深く凹刻された部分のため、均一な絶縁膜を得ることができない。このような理由から、樹脂の硬化度を高めながらも、硬化度の高い絶縁樹脂に粗さを形成することができる方法が研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明では、上記のような問題点を解決するために広範囲な研究を繰り返した結果、ビルドアッププリント回路基板において、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含む基板を形成した後、これを後硬化した後粗さを形成することにより、環境に優しく、信頼性の高い微細回路の実現が可能なビルドアッププリント回路基板を製造し、本発明はこれに基づいて完成された。
【0005】
従って、本発明の一側面は、ビルドアッププリント回路基板で樹脂基板と金属層との界面接着力を向上させ、高信頼性の微細回路を実現することができるプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物を提供することをその目的とする。
【0006】
本発明の他の側面は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含む基板を形成した後、界面活性剤を除去してシリカ粒子を脱着する工程を導入することにより、環境にやさしく、経済的な方法でプリント回路基板の粗さを形成することができるプリント回路基板の製造方法を提供することをその目的とする。
【0007】
本発明のさらに他の側面は、マイクロエマルションシリカ及びシリカ粒子を混合して用いることにより、均一な粗さの形成及び熱膨張率(CTE)の物性の向上を同時に果たすことができるプリント回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を果たすためのプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含む。
【0009】
前記エポキシ樹脂組成物は、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、で構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記マイクロエマルションシリカの粒子サイズは、5〜200nmであることを特徴とする。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはポリエステル型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記硬化剤は、ジシアンジアミド、アミン系化合物、アミン系化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性カチオン重合触媒、光硬化性カチオン重合開始剤、またはシアン酸エステル樹脂からなる群から選択されることを特徴とする。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記無機充填剤は、溶融シリカであることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明の他の課題を果たすための本発明のプリント回路基板の製造方法は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカ1〜5重量%を含むエポキシ樹脂組成物を提供する段階と、前記エポキシ樹脂組成物をシート化して基板を形成する段階と、前記形成された基板を完全に後硬化させた後、前記界面活性剤を除去してシリカ粒子を脱着させる表面処理段階と、を含む。
【0015】
本発明の製造方法において、前記エポキシ樹脂組成物は、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、で構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法において、前記シリカの粒子サイズは、5〜200nmであることを特徴とする。
【0017】
本発明の製造方法において、前記エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはポリエステル型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0018】
本発明の製造方法において、前記硬化剤は、ジシアンジアミド、アミン系化合物、アミン系化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性カチオン重合触媒、光硬化性カチオン重合開始剤、またはシアン酸エステル樹脂からなる群から選択されることを特徴とする。
【0019】
本発明の製造方法において、前記無機充填剤は、溶融シリカであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のさらに他の課題を果たすための本発明のプリント回路基板は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むエポキシ樹脂組成物を用いてシート形態に製造されたプリント回路基板であって、表面処理後の前記プリント回路基板の中心線の算術平均粗さが0.5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明は、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むエポキシ樹脂組成物を用いて、環境にやさしく、経済的な方法で基板の粗さを形成することができる。さらに、ビルドアップ基板材料と金属回路層との密着力を強化することにより、高信頼性の微細回路を実現することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明で用いられる界面活性剤の濃度を8%にして製造されたマイクロエマルションシリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図1B】本発明で用いられる界面活性剤の濃度を15%にして製造されたマイクロエマルションシリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2】本発明におけるマイクロエマルションシリカが含まれた基板の表面に粗さを形成する過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。本発明を詳細に説明するにあたり、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【0024】
従って、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明のもっとも好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全部を代弁しているわけではないため、本出願時点においてこれらを代替することができる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0025】
上述のように、既存のビルドアッププリント回路基板の回路形成工程においては、過マンガン酸を用いて湿式で粗さを形成するが、この際、絶縁層は、半乾燥状態のものを用いなければならない。デスミア処理により半乾燥状態の基板に粗さを形成する場合、粗さの程度が局所的に異なったり、粗さの程度を調節することが容易ではない。
【0026】
本発明によると、界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含む基材を用いて、絶縁物を完全に硬化させた後デスミア処理する際に、マイクロエマルションシリカを溶解することにより粗さを形成することができる。このような方法によると、粗さが高く、完全に硬化された基板を用いることにより、デスミア処理時に均一な塗膜が得られる。
【0027】
本発明のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物は、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカを含む。ここで、マイクロエマルションシリカ中のシリカ粒子の含有量は、20〜65重量%範囲内である。好ましくは、本発明のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物は、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、で構成される。ここで、用いられる樹脂のエポキシと硬化剤は、当量比で0.8〜1.2の範囲で最適の硬化条件を合わせて、90%以上の硬化度を維持することができる粗液を設計する。
【0028】
本発明によると、前記マイクロエマルションシリカの使用量が1重量%未満であると、基板と金属層との接着強度を高めることができなく、5重量%を超過すると、デスミア処理された基板の表面粗さを小さくすることができないため、デスミア処理された表面の算術平均粗さが0.5μm以下の基板を得ることができない。
【0029】
前記マイクロエマルションシリカは、その製造に用いられた界面活性剤またはオイルの種類及び重量%の割合によって、多様なサイズのシリカ粒子に製造することができ、これらのうち1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
本発明によるエポキシ樹脂組成物において、マイクロエマルションシリカの粒子サイズは、5〜200nmである。この際、前記マイクロエマルションシリカの粒子サイズが5nm未満であると、粗さの形成が困難であり、200nmを超過すると、粗さの形成が大きくなりすぎて、微細線幅の形成が困難である。
【0031】
本発明によるマイクロエマルションシリカの製造方法は、既に当業界において公知されている方法により、シリカナノ粒子のサイズを5〜200nmに調節することができる。例えば、界面活性剤を長いアルキル鎖を有するオイルに溶解して、アンモニア水をさらに添加してエマルション相を製造する。前記界面活性剤としては、一般的に非イオンまたはアニオン界面活性剤を用いて、例えば、AOT(Aerosol OT)、Brj30、NP4などが挙げられる。ここで、界面活性剤の濃度を増加させると、生成されたシリカ粒子のサイズは減少する反面、個数は増加する。一方、長いアルキル鎖を有するオイルとしては、純度98%のn−ヘプタン(heptane)、n−デカン(decane)、iso−オクタン(octane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、トルエン(toluene)などが挙げられる。次に、製造されたエマルション相にシリカの前駆体であるTEOS(Tetraethylorthosilicate)を添加してシリカナノ粒子を製造する。
【0032】
最後に、前記製造されたシリカナノ粒子を遠心分離した後、約60℃で乾燥して粉末形態にして用いられる。前記の製造方法によりマイクロエマルションシリカを製造する際に、シリカ粒子は界面活性剤で取り囲まれ、コア−シェル構造が提供されるようになる。
【0033】
図1A及び図1Bは、本発明の一実施例によるエポキシ樹脂組成物に含まれるマイクロエマルションシリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図1Aは、界面活性剤の濃度を8%に、図1Bは、界面活性剤の濃度を15%にして製造されたマイクロエマルションシリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0034】
界面活性剤の濃度が8%である場合、シリカ粒子のサイズは50〜55nmであり、界面活性剤の濃度が15%である場合、シリカ粒子のサイズは25〜29nmの範囲である。これにより、界面活性剤の濃度が増加するにつれて、シリカ粒子のサイズが減少することが分かり、このように界面活性剤の濃度の変化によって、シリカ粒子のサイズを調節することができる。
【0035】
一方、本発明によるエポキシ樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂は、少なくとも一つのエポキシ基を有する有機化合物であり、エポキシ樹脂の1分子当たりのエポキシ基の数は一つ以上であり、好ましくは二つ以上である。
【0036】
前記エポキシ樹脂は、従来に公知されている多様な種類のエポキシ樹脂を用いることができる。前記エポキシ樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、前記エポキシ樹脂には、エポキシ樹脂の誘導体またはエポキシ樹脂の水素添加物も含まれる。
【0037】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはポリエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0038】
本発明によるエポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば、特に限定されず、従来に公知された硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミン系化合物、アミン系化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性カチオン重合触媒、光硬化性カチオン重合開始剤、またはシアン酸エステル樹脂などが挙げられる。また、これら硬化剤の誘導体を用いることもできる。硬化剤は1種または2種以上が併用されることもできる。また、硬化剤とともに、アセチルアセトン鉄などの硬化触媒を用いることもできる。
【0039】
本発明の好ましい一実施例において、15〜40重量%のエポキシ樹脂、15〜40重量%の硬化剤を当量基準で0.8〜1.2範囲で配合した後、有機溶剤、例えば、PGMEA(Propylene Glycol Mnomethyl Ether Acetate)、MEK(Mathylethylketon)、2−メトキシエタノール(2−methoxy ethanol)、アセトン(aceton)、トルエン(toluen)などに完全に溶解して用いる。この際、硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂を完全に硬化することができる配合比を考慮して決めなければならない。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含有させることにより、基板の熱膨張率をより低くすることができる。前記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。そのうちでもシリカが好ましい。また、非晶質シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカなどのシリカが好ましく、溶融シリカがもっと好ましい。また、シリカとしては、球形のものが好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
無機充填剤の平均粒径は、特に限定されるものではないが、その上限値は、絶縁基板上に微細配線を形成することを考慮して、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましい。一方、無機充填剤の平均粒径の下限値は、エポキシ樹脂組成物としてワニス(Varnish)を用いた場合、ワニスの粘度が上昇し、取扱い性が低下することを防止するために、0.05μm以上であることが好ましい。
【0042】
本発明の好ましい一実施例において、前記無機充填剤の使用量は、20〜70重量%であることが好ましく、これは、目標とする樹脂のCTE(熱膨張率)に応じて添加される。シートに形成された後、固形分の60重量%使用時には25ppm、68重量%使用時には16ppmの結果が得られる。即ち、無機充填剤は、基板の層間絶縁物の形成時に求められる製品毎のCTEとの相関関係に応じて添加されなければならない。
【0043】
本発明によるエポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、及びマイクロエマルションシリカと必要に応じて配合される成分を溶剤に添加した後、乾燥して溶剤を除去する方法などが挙げられる。
【0044】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、例えば、多層基板のコア層またはビルドアップ層などを形成する基板用材料、接着シート、積層板、樹脂付き銅箔、銅張積層板、プリント回路基板、などに好ましく用いられる。
【0045】
一方、本発明の好ましい一実施例によると、本発明のプリント回路基板は、まず、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、を含むエポキシ樹脂組成物を製造した後、前記エポキシ樹脂組成物をシート化して基板を形成し、前記形成された基板を完全に後硬化させた後、前記界面活性剤を除去してシリカ粒子を脱着させる方法を用いて微細な粗さを形成する。
【0046】
前記形成された微細な粗さにより、基板の表面に微細配線を形成することができる。前記エポキシ樹脂組成物を用いてシート形態に製造された基板の表面処理後、基板表面の中心線の算術平均粗さは、通常、0.5μm以下に形成される。
【0047】
本発明のプリント回路基板の製造方法をより詳細に説明すると、まず、前記エポキシ樹脂組成物を反応(予備硬化または半径化)させた後、後硬化して完全に硬化された反応物を得る。前記エポキシ樹脂組成物を適切に反応させるために、前記エポキシ樹脂組成物を加熱または光照射などによって反応させることが好ましい。
【0048】
前記エポキシ樹脂組成物を反応させる際の温度は、特に限定されず、130〜190℃の範囲内が好ましい。加熱温度が130℃より低いと、エポキシ樹脂組成物が充分に硬化されないため、表面処理された基板表面の粗さが大きくなりやすい。加熱温度が190℃より高いと、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が急速に進むため、硬化度が部分的に低くなりやすく、粗い部分と密な部分が形成されやすい。その結果、基板表面の粗さが大きくなる。
【0049】
前記エポキシ樹脂組成物を反応させる際の加熱時間は、特に限定されず、約30分以上であることが好ましい。加熱時間が30分より短いと、エポキシ樹脂組成物が充分に硬化されないため、表面処理された基板の表面の粗さが大きくなる。生産性を高めるためには、加熱時間が約1時間以下であることが好ましい。
【0050】
基板の表面に微細な粗さを形成するためにデスミア処理する際、界面活性剤を溶解することができる溶剤を用いる。一般的には、アルコールを用いるが、界面活性剤の除去のために短い鎖のアルコールを用いてキャピング(capping)分子を膨張させて、長い鎖のアルコールを用いて界面活性剤の脱着を有利にする。
【0051】
既存には、シリカを含む絶縁基板の粗さを形成するため、シリカ粒子を脱着するようなフッ酸などを用いたが、環境問題と底面への浸透などの問題点があった。しかし、本発明によると、表面処理時にアルコールを用いるため、環境問題が生じることなく効果的に基板表面の粗さを形成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、これに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
A.マイクロエマルションシリカの製造
13重量%の界面活性剤AOT(Aerosol OT)を83重量%のn−ヘプタンに溶解し、4重量%のアンモニア水を添加してエマルション相を製造する。次に、製造されたエマルション相にシリカの前駆体であるTEOS(Tetraethylorthosilicate)をモル比基準でアンモニア水/TEOSの割合が6になるように添加して、平均粒子サイズが約12.33nmであるマイクロエマルションシリカナノ粒子を製造する。最後に、前記製造されたシリカナノ粒子を遠心分離した後、約60℃で乾燥して粉末形態に作る。
【0054】
B.エポキシ樹脂組成物の製造
ノボラックエポキシ(TDCN−500−80P)とゴム変性エポキシ(KR−909)を1:1の重量比で混合した。その後、50重量%のMEKにアミン系熱硬化剤(ジシアンジアミド)を1eq当量比で混合して撹拌した樹脂溶液148gに60重量%の固形分が含まれた200nm以下のD90を有する溶融シリカ分散液200gを添加した。その後、前記製造されたマイクロエマルションシリカ10重量%分散液を60g添加して、均一な溶液になるまで常温で撹拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0055】
C.基板の製造
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥した後の厚さが約50μmになるように得られたエポキシ樹脂組成物を塗工した。次に、約100℃のギヤーオーブン内で約12分間乾燥することにより、縦200mm×横200mm×厚さ50μmサイズのシート状の半径化基板を製作した。前記得られたシート状の半径化基板をガラスエポキシ基板に真空ラミネートして、約150℃で約60分間反応させた。その後、完全に硬化された基板をアルコールで2分間洗浄した後、微細な粗さが形成された基板を得た。
【0056】
このように製造された本発明のマイクロエマルションシリカが含まれた基板の表面に粗さを形成する過程を、図2に概略的に図示した。
【0057】
図2に図示したように、マイクロエマルションシリカを含む基板表面にデスミア処理を施し、マイクロエマルションシリカに含まれた界面活性剤を溶解させることにより、シリカ粒子が脱着されて基板表面の粗さが形成される。
【0058】
前記実施例1による基板の粗さを3D Optical Surface Profilerとして用いられるZygo社のNewview7200モデルで、A工程で粗さを形成した後、5地点の粗さを評価して平均をとってその粗さ値を測定した結果、約0.42μmの粗さを得た。
【0059】
(実施例2)
実施例1の段階Aにおいて、NP4界面活性剤15重量%、アンモニア水1重量%、iso−オクタン84重量%の条件で平均粒子サイズが約17.23nmであるマイクロエマルションシリカを製造したことを除き、前記実施例1と同様に施して基板を製造した。
【0060】
前記基板の粗さを3D Optical Surface Profilerで測定した結果、約0.45μmの粗さを得た。
【0061】
(実施例3)
実施例1の段階Aとして、Brj30界面活性剤15重量%、アンモニア水3重量%、シクロヘキサン82重量%の条件で平均粒子サイズが約32nmであるマイクロエマルションシリカを製造したことを除き、前記実施例1と同様に施して基板を製造した。
【0062】
前記基板の粗さを3D Optical Surface Profilerで測定した結果、約0.46μmの粗さを得た。
【0063】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明によるプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物、それにより製造されたプリント回路基板、及びプリント回路基板の製造方法は、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0064】
本発明の単純な変形乃至変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、プリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物、それにより製造されたプリント回路基板、及びプリント回路基板の製造方法に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物は、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、で構成されることを特徴とする請求項1に記載のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記マイクロエマルションシリカの粒子サイズは、5〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはポリエステル型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化剤は、ジシアンジアミド、アミン系化合物、アミン系化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性カチオン重合触媒、光硬化性カチオン重合開始剤、またはシアン酸エステル樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤は、溶融シリカであることを特徴とする請求項2に記載のプリント回路基板形成用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
界面活性剤で取り囲まれた形態のコア−シェル構造のマイクロエマルションシリカを含むエポキシ樹脂組成物を提供する段階と、
前記エポキシ樹脂組成物をシート化して基板を形成する段階と、
前記形成された基板を完全に後硬化させた後、前記界面活性剤を除去してシリカ粒子を脱着させる表面処理段階と、を含むプリント回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂組成物は、15〜40重量%のエポキシ樹脂と、15〜40重量%の硬化剤と、20〜70重量%の無機充填剤と、1〜5重量%のマイクロエマルションシリカと、で構成されることを特徴とする請求項7に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記シリカの粒子サイズは、5〜200nmであることを特徴とする請求項7に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはポリエステル型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記硬化剤は、ジシアンジアミド、アミン系化合物、アミン系化合物の誘導体、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性カチオン重合触媒、光硬化性カチオン重合開始剤、またはシアン酸エステル樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記無機充填剤は、溶融シリカであることを特徴とする請求項8に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1から6の何れか一つに記載のエポキシ樹脂組成物を用いてシート形態に製造されたプリント回路基板であって、表面処理後の前記プリント回路基板の中心線の算術平均粗さが0.5μm以下であることを特徴とするプリント回路基板。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104060(P2013−104060A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12414(P2012−12414)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】