説明

プリント基板

【課題】同軸コネクタ接続部を有するプリント基板であって、信号周波数40GHzクラスの信号伝送において、伝送損失の小さい同軸コネクタ接続部を有するプリント基板を提供する。
【解決手段】同軸コネクタ接続部に、グランドパターンと接続され、かつ、ランドを有する端面スルーホールを設け、かつ、この端面スルーホールを信号線路に近接して位置させることにより、伝送損失が抑制されることを手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプリント基板に関する。詳しくは、同軸コネクタ接続部を有するプリント基板に関し、さらに詳しくは、信号周波数40GHzクラスの信号伝送において、伝送損失の小さい同軸コネクタ接続部を有するプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に形成された信号線路の伝送特性の試験を行う場合、実際に使用するプリント基板を製作し、必要な信号線路の伝送特性を試験することが望ましい。しかし、プリント基板を製作する際の製作上のコストや手間を考慮し、伝送特性を試験すべき信号線路のみを形成した試験用のプリント基板(以下試験板という)を製作して、この試験板を用いて信号線路の試験を行うことがある。
【0003】
前述の試験板の例を図12から図17に示す。図12及び図13は、それぞれ、試験板200の上面図及び上層パターン図である。図14及び図15は、ぞれそれ、試験板200の底面図及び下層パターン図である。図16は図12において一点破線で囲む領域Sの拡大図である。図17は図16において一点破線で囲む領域Tの拡大図である。
【0004】
試験板200は、絶縁基材としてガラスエポキシ基材(以下基材という)を用いた2層構造のプリント基板からなる。試験板200は基材の上層側に信号線路201及びグランドガードパターン202が形成されている(図13参照)。グランドガードパターン202は下層側のグランドパターン(後述)とスルーホール204及びスルーホール205により接続されている。なお、図面においてスルーホール205については、代表的な2カ所しか符号を記していないが、その他の小円の記載はすべてスルーホール205である。このグランドガードパターン202は、信号線路201に高周波信号を流す際の伝送安定を確保するために設けている。そして、信号線路201及びグランドガードパターン202のさらに上側に、一部を除いてソルダーレジスト206を全面に渡って被覆している(図12参照)。このソルダーレジスト206が被覆されていない箇所が上層側の同軸コネクタ接続部となる。
【0005】
また、試験板200は、基材の下層側にベタ形状のグランドパターン203が形成されている(図15参照)。そして、グランドパターン203は、前述の通り、基材の上層側に形成されているグランドガードパターン202と、スルーホール204及びスルーホール205により接続されている。さらに、グランドパターン203の上側を、一部を除いてソルダーレジスト207で全面に渡って被覆している。このソルダーレジスト207が被覆されていない箇所が下層側の同軸コネクタ接続部となる。なお、この試験板200の寸法は、短手方向×長手方向=20mm×65mm、基材の厚みは0.22mm、信号線の幅は0.39mmである。
図16は、図13の領域Sの拡大図である。図17は、図16の領域Tの拡大図である。
【0006】
この試験板200は、信号線路201の伝送特性を試験するために製作したものである。実際の試験方法を以下に述べる。図18は、ネットワークアナライザ210を用いて、試験板200の信号線路201の伝送特性を試験している様子を示す模式図である。
【0007】
図18に示すように、試験板200に横付け型の同軸コネクタ208を嵌合し、同軸ケーブル209を介して、ネットワークアナライザ210に接続する。そして、ネットワークアナライザ210により信号線路201のSパラメータを測定することで、信号線路201の伝送特性を試験することができる。なお、図18においては、試験板200及び同軸コネクタ208の記載は、これらを上面から見た状態を示している。
【0008】
ここで、同軸コネクタ208を例示すると、End Launch Connector 1492−03A−5(Southwest Microwave社製、商品名)を使用することができる。また、ネットワークアナライザ210を例示すると、Agilent8510C(アジレントテクノロジー社製、商品名)を使用することができる。
【0009】
前述の試験を行う場合、信号線路201には、ネットワークアナライザ210からの試験用信号が正確に入力されることが必要である。この点に関し、同軸コネクタ208と試験板200の接続部位の近辺において、信号電流に対してリターン電流の経路が長くなる場合、信号伝送損失が大きくなることが下記特許文献1において指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−0892047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、光信号を電気信号に変換して種々の処理を行うという光−電気信号伝送に供されるプリント基板では、40〜100Gbpsクラス、周波数換算でおおむね40GHzクラスの信号伝送の保証が要求される。
【0012】
ここで、前述の試験板200の信号線路201に、信号周波数40GHzクラスまでのSパラメータを測定した。
【0013】
図19は、信号線路201のSパラメータの測定結果を示すグラフである。S21及びS11は、それぞれ、信号線路201の透過特性及び反射特性を示すものである。図19を参照すると、S21では、信号周波数30GHz以上のところに凹みがみられる。すなわち、これは、信号線路201は、この周波数領域、すなわち、おおむね30GHz以上では透過特性が劣っており、この領域において伝送損失が生じうることを示している。
【0014】
その理由の一つとして、試験板200では、信号電流とリターン電流の経路長に差が生じており、その差に由来する共振が起き、伝送損失が生じたと推測される。図20に、試験板200におけるリターン電流の推測経路を表示した図を示す。図20を参照すると、板端に達したリターン電流は、板端から近傍のスルーホール204に向かうので、この分、リターン電流の経路が長くなっている。
【0015】
そこで、本願発明者らは、信号電流及びリターン電流の経路長の差が小さくなるコネクタ接続部位の形状を検討し、良好な結果を得ることができた。よって、本発明は、同軸コネクタ接続部を有するプリント基板であって、信号周波数40GHzクラスの信号伝送において、伝送損失の小さい同軸コネクタ接続部を有するプリント基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する手段は、プリント基板の同軸コネクタ接続部に、グランドパターンと接続され、かつ、ランドを有する端面スルーホールを設け、かつ、この端面スルーホールを信号線路に近接して位置させることとしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、グランドパターンを流れるリターン電流の経路が、これに接続された端面スルーホールを介して同軸コネクタのグランド部と直結される。これにより、リターン電流の経路が短くなるので、リターン電流の経路による信号伝送損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリント基板の上面図。
【図2】プリント基板の上層パターン図。
【図3】プリント基板の底面図。
【図4】プリント基板の下層パターン図。
【図5】図1の領域Aの拡大図。
【図6】図5の領域Bの拡大図。
【図7】図2の領域Cの拡大図。
【図8】図7の領域Dの拡大図。
【図9】図5で示す箇所の斜視図。
【図10】プリント基板の信号線路のSパラメータの測定結果を示すグラフ。
【図11】プリント基板のリターン電流の推測経路の表示図。
【図12】試験板の上面図。
【図13】試験板の上層パターン図。
【図14】試験板の底面図。
【図15】試験板の下層パターン図。
【図16】図13の領域Sの拡大図。
【図17】図16の領域Tの拡大図。
【図18】試験板の信号線路の伝送特性を試験している様子を示す模式図。
【図19】試験板の信号線路のSパラメータの測定結果を示すグラフ。
【図20】試験板におけるリターン電流の推測経路の表示図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2は、それぞれ、本発明になるプリント基板の上面図及び上層パターン図である。プリント基板は、絶縁基材としてガラスエポキシ基材(以下基材という)を用いた2層構造のプリント基板であって、プリント基板は、基材の上層側に信号線路及びグランドガードパターンが形成されている。グランドガードパターンは下層側のグランドパターンとスルーホール及びスルーホールにより接続されている。なお、図面においてスルーホールについては、代表的な2カ所しか符号を記していないが、その他の小円の記載はすべてスルーホールである。このグランドガードパターンは、信号線路に高周波信号を流す際の伝送安定を確保するために設けている。そして、信号線路及びグランドガードパターンのさらに上側に、一部を除いてソルダーレジストを全面に渡って被覆している。
そして、同軸コネクタ接続部に、グランドパターンと接続され、かつ、ランドを有する端面スルーホールが設けられ、かつ、上記端面スルーホールは信号線路に近接して位置する。
【0020】
図1及び図3は、それぞれ、本発明になるプリント基板101の上面図及び底面図である。このプリント基板101は、銅パターンからなる同軸コネクタ接続部102を有し、さらに、最上層及び最下層がソルダーレジスト103で被覆されている。
【0021】
図5は、図1において一点破線で囲む領域Aを拡大した図である。これを参照すると、同軸コネクタ接続部102には、同軸コネクタを固定するためのスルーホール104が設けられている。
【0022】
図6は、図5の領域Bを拡大した図である。これを参照すると、プリント基板101の板端にランド105を有する端面スルーホール106が設けられ、さらに、信号線路107が設けられている。
【0023】
プリント基板101の構成について、さらに詳しく説明すると、図2は、プリント基板101のソルダーレジストを被覆していない状態を示す上面図である。また、図4は、プリント基板101のソルダーレジストを被覆していない状態を示す下面図である。
【0024】
すなわち、これは、信号層のパターンを示すものである。信号層は、その中心に信号線路107が設けられているとともに、その両端には、グランドガードパターン108が設けられており、このグランドガードパターン108は、下層のグランドパターンとスルーホール104及びスルーホール109で接続されている。すなわち、このグランドガードパターン108は、接地電位を与えるものである。
【0025】
このプリント基板101に対し、図18に示すのと同じように信号線路の試験を行った。図10は、プリント基板の信号線路のSパラメータの測定結果を示すグラフである。これより、伝送損失が抑制されていることがわかる。
【0026】
これについて以下の通り、考察する。図11は、プリント基板のリターン電流の推測経路を表示した図である。プリント基板においては、リターン電流は、板端に達すると、すぐ近くにある端面スルーホールに達し、スルーホールを介して端面めっき部に到達し、ここからコネクタのグランド部に流れる。よって、プリント基板では、試験板に比べて、リターン電流の経路が短くなっている。ゆえに、本発明のプリント基板では、リターン電流の経路が長くなることによる影響は抑制される。実際、グラフを見れば、伝送への影響がない水準になっている。
【符号の説明】
【0027】
101 プリント基板
102 同軸コネクタ接続部
103 ソルダーレジスト
104 スルーホール
105 ランド
106 端面スルーホール
107 信号線路
108 グランドガードパターン
109 スルーホール
200 試験板
201 信号線路
202 グランドガードパターン
203 グランドパターン
204 スルーホール
205 ランド
206 ソルダーレジスト
207 ソルダーレジスト
208 同軸コネクタ
209 同軸ケーブル
210 ネットワークアナライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸コネクタ接続部に、グランドパターンと接続され、かつ、ランドを有する端面スルーホールが設けられ、かつ、上記端面スルーホールは信号線路に近接して位置することを特徴とするプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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