説明

プリント装置、プリント方法およびシート処理方法

【課題】 両面プリントにおいて乾燥時間を短縮して高いプリントスループットで高品質なプリントを行なうことができるプリント装置の実現する。
【解決手段】 第1経路においてプリント部(4)、カッタ部(6)、乾燥部(8)が順に配置されている。乾燥部(8)を通過したシートを再びプリント部(4)に供給するための第2経路にはシートの表裏を反転させる反転部(9)が設けられ、乾燥部の下流の第3経路には排出部(12)が設けられている。両面プリントではシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートにプリントを行なうプリント装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール状に巻かれた長尺の連続シートを用いて、インクジェット方式でシート表裏に両面プリントを行なうプリント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、両面プリントにおいて、シート表面へのプリントの後にいったんシートを巻取り軸に巻き取って、表裏を反転させてシート裏面にプリントを行なう。この巻き取りの際にインクが十分に乾燥していないと、巻き取りで重なったシートにインクが転写されてしまう。また、特許文献1の装置では、両面プリントがなされた後のシートは画像ごとに切断されてトレイに排出される。トレイに排出されたプリント済みのシートが十分に乾燥する前に次にシートが排出されるとシート同士が重なった際にインクが転写されたり乾燥の更なる遅れを引き起こす。このため、特許文献1の装置では、インクが転写しないようにするには、プリントの途中に自然乾燥によってインクが十分乾燥するだけの時間が必要である。
【0005】
プリントラボ等の大量プリントの分野では、いかにしてプリント装置のプリントスループット(単位時間あたりのプリント枚数)を向上させるかが課題である。プリントスループットの向上を妨げる要因のひとつは、プリント後のインクの乾燥時間である。特許文献1の装置では、自然乾燥によってインクが十分乾燥するだけの時間が必要であり、これがプリントスループットの向上の妨げになる。とくに、両面プリントではシートの表裏に多量のインクが付与されるので、自然乾燥を待っていたのではプリントスループットの向上は難しい。
【0006】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、両面プリントが可能なプリント装置において乾燥時間を短縮してトータルのプリントスループットを向上させることを目的とする。より具体的には、高速に両面プリントを行なうのに必要な乾燥部を含む複数のユニットが合理的に配置されたプリント装置を実現することを目的とする。また、高速に両面プリント等の処理を行なうことができるプリント方法やシート処理方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、前記シート供給部からシートが供給される経路において、シートにプリントを行なうプリント部と、前記経路において前記プリント部の下流に設けられ、シートを切断するカッタ部と、前記経路において前記カッタ部の下流に設けられ、前記プリント部でプリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部を通過したシートの表裏を反転させて再び前記プリント部に供給するための反転部と、前記乾燥部を通過したシートを排出する排出部とを備え、前記両面プリントにおいては、前記プリント部において第1面にプリントされたシートは前記乾燥部を通過した後に前記反転部に導かれて表裏が反転されて再び前記プリント部に供給され、次いで前記プリント部において前記第1面の背面側の第2面にプリントされたシートは前記カッタ部で切断されて再び前記乾燥部を通過した後に前記排出部に排出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、両面プリントにおいて乾燥時間を短縮して高いプリントスループットでプリントを行なうことができるプリント装置およびプリント方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】乾燥部の内部構成を示す斜視図
【図3】制御部のブロック図
【図4】片面プリントモードでの動作を説明するための図
【図5】両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図6】シート搬送経路に沿った各ユニットの配置関係を概念的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。なお、単位画像といわずに単に画像という場合もある。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0011】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置など、インクを用いて乾燥が必要なプリント装置に広く適用可能である。また、本発明は感光材料が付与されたシートにレーザ等で潜像を描画して液体現像方式でプリントを行なうプリント装置にも適用可能である。また、本発明はプリント処理に限らず連続したシートに乾燥が必要な種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0012】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿部20、制御部13の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0013】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0014】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0015】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0016】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0018】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ23が設けられている。つまり、センサ23はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、センサ23の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8は、シートを次工程に送り出すための搬送ベルトおよび搬送ローラも備えている。図2は乾燥部8の内部の構成図である。シートは複数の搬送ベルト31とローラ32の間に挟持されながら移動する。複数の搬送ベルト31にはモータ35の回転駆動力が伝達される。モータ35の回転状態はロータリエンコーダ36によって検出され、モータ35がフィードバック制御される。インクが付与され乾燥させるべきプリント面は下方向(床方向)を向いている。ヒータ34で加熱された気体(空気)はファン33で図中Z方向に循環して、通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。急速乾燥でシートは反りを生じやすいが、乾燥中にシートは搬送ベルト31とローラ32の間に挟まれているので、反りが抑制される。なお、乾燥部8での乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0021】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0022】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0023】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0024】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0025】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0026】
加湿部20は加湿気体(空気)を生成して、プリント部4のプリントヘッド14とシートの間に供給するためのユニットである。これにより、プリントヘッド14のノズルのインク乾燥が抑制される。加湿部20の加湿方式は、気化式、水噴霧式、蒸気式などの方式が採用される。気化式には、本実施形態の回転式の他に、透湿膜式、滴下浸透式、毛細管式などがある。水噴霧式には、超音波式、遠心式、高圧スプレー式、2流体噴霧式などがある。蒸気式には、蒸気配管式、電熱式、電極式などがある。加湿部20とプリント部4は第1ダクト21で接続され、更に加湿部20と乾燥部8は第2ダクト22で接続されている。乾燥部8ではシートを乾燥させる際に多湿且つ高温の気体が生成される。この気体は第2ダクト22を通して加湿部20に導入されて、加湿部20での加湿気体生成の補助エネルギとして利用される。そして、加湿部20で生成された加湿気体は第1ダクト21を通してプリント部に導入される。
【0027】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザーが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0028】
図3は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザーとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
【0029】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿部20の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0030】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0031】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0032】
図4は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。
【0033】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0034】
図5は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表(おもて)面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、この巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この巻き戻しによって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0035】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0036】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導いて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取る。これと共に、切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0037】
次に、上述の構成のプリント装置における、乾燥部8を中心とする装置レイアウトの合理性についてさらに詳しく説明する。図6はシート搬送経路に沿った各ユニットの配置関係を概念的に示した図である。図6(a)は本実施形態の装置のレイアウトの概念図である。同図において、シート供給部1(S)から乾燥部8(H)までが第1経路、乾燥部8からプリント部4(P)までが第2経路、乾燥部8から排出部12(D)までが第3経路である。図6(b)〜図6(d)は本実施形態との比較のための仮想的なレイアウトの概念図である。
【0038】
[1]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、カッタ部6(C)の下流側に乾燥部8(H)が配置されている。上述したように、両面プリントモードにおいて表面のプリントが済んでシートを切断した後は、切断位置よりも上流側はシート供給部1に巻き戻す。仮に、図6(b)のレイアウトのように、乾燥部8がカッタ部6よりも上流側にあると、切断されたシートをシート供給部1に巻き戻す際に、すでに乾燥部8を通過した領域が再び乾燥部8を通過することになる。このため、乾燥部8とカッタ部6の間の経路長さに相当するシートの先端領域が部分的に過剰に乾燥されて湿潤ムラが生じる。これに対して、本実施形態の図6(a)の構成によれば、乾燥部8よりも上流側で切断を行なうため、シートを巻き戻してもシートに湿潤ムラが生じることがない。
【0039】
[2]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、カッタ部6(C)の下流側且つ乾燥部8(H)の上流側に情報記録部7(I)が配置されている。情報記録部7でプリント直後に乾燥部8を通るため、情報記録部7で付与されたインクは即座に乾燥する。仮に、図6(b)や図6(c)のレイアウトのように、情報記録部7が乾燥部8よりも下流側にあると、情報記録部7で付与されたインクが乾かないうちに排出部12に排出されて、積載された別のシートにインクが付着してしまう可能性がある。
【0040】
[3]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、乾燥部8(H)の下流側に反転部9(R)が配置されている。このため、両面プリントにおいて、表面プリントによってシートに付与されたインクは乾燥部8で確実に乾燥した後に、反転部9にシートが巻き取られる。仮に、図6(d)のレイアウトのように、乾燥部8の上流側に反転部9があると、プリント部4で付与されたインクが乾燥しないままシートが巻き取られて、重なったシートにインク付着してしまう可能性がある。
【0041】
[4]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、両面プリントにおいてシートは共通の乾燥部8を2度通過する。直前のプリントによるシートのインク付与面は2度の通過のいずれにおいても乾燥部8では床方向に面しており、下方からのヒータの熱風に晒される。すなわち、乾燥部8はシートの両面ではなく主に片面側を加熱するように構成すればよく、乾燥部8の小型化と省電力化ひいてはプリント装置全体の小型化と省電力化が実現する。
【0042】
[5]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、シート供給部1(S)に対して、プリント部4(P)と乾燥部8(H)は同じ側に上下に配置されている。プリント部4と乾燥部8の間はシートは概ねUターン形状の経路に沿って進行し、プリント部4でのシートの移動方向と乾燥部8でのシートの移動方向は逆向きである。プリントが完成して乾燥部8を通過したシートはシート供給部1の下方の経路を通って排出部12に排出される。このレイアウトによって、シート供給部1と排出部12は共に装置の同じ側の端部近傍に位置させることを実現している。ユーザーは大きく移動しなくてもシート供給部1と排出部12の両方にアクセスすることができ、ロール状の未使用シートの装填作業、およびプリントされたシートの回収作業を高い作業効率で行なうことができる。
【0043】
[6]プリント部4と乾燥部8とが垂直方向に配置され、その間が概ねUターン形状の経路となっており、且つ乾燥部8から先の排出経路がシート供給部1の下方を通っている。大きなユニットを垂直方向で重複させるレイアウトによって、装置のフットプリントが大きくなることが抑制される。
【0044】
[7]本実施形態の図6(a)のレイアウトでは、プリント部4は装置筐体内部において上方側位置に配置されている。このためユーザーは上方から手を差し込んで容易にプリントヘッドのメンテナンス(交換等)を行なうことができる。
【0045】
[8]本実施形態によれば、乾燥部8ら排気される高温且つ高湿の気体をそのまま機外に放出するのではなく、加湿部20での加湿気体生成の補助とされる。このため、装置のトータルシステムにおけるエネルギ効率が大きく向上する。
【0046】
[9]本実施形態によれば、シート供給部1からプリント部4に供給されるシートならびに反転部9からプリント部4に供給されるシートは、ともに共通のデカール部2で適切な方向にカールが軽減される。つまり、両面プリントにおいて表面と裏面のプリント前に2度のデカールを行なうことを可能で、且つデカール部2はコンパクトな機構なのでプリント装置全体の小型化が実現する。
【符号の説明】
【0047】
1 シート供給部
2 デカール部
3 斜行矯正部
4 プリント部
5 検査部
6 カッタ部
7 情報記録部
8 乾燥部
9 反転部
10 排出搬送部
11 ソータ部
12 排出部
13 制御部
14 プリントヘッド
15 操作部
16 ホスト装置
20 加湿部
23 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部からシートが供給される経路において、シートにプリントを行なうプリント部と、
前記経路において前記プリント部の下流に設けられ、シートを切断するカッタ部と、
前記経路において前記カッタ部の下流に設けられ、前記プリント部でプリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部を通過したシートの表裏を反転させて再び前記プリント部に供給するための反転部と、
前記乾燥部を通過したシートを排出する排出部と、
を備え、
前記両面プリントにおいては、前記シート供給部からシートが供給され、前記プリント部において第1面にプリントされたシートは前記乾燥部を通過した後に前記反転部に導かれて表裏が反転されて再び前記プリント部に供給され、次いで、前記プリント部において前記第1面の背面側の第2面にプリントされたシートは前記カッタ部で切断されて再び前記乾燥部を通過した後に前記排出部に排出されることを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記反転部はシートを巻き取る巻取回転体を有し、前記両面プリントにおいては、前記第1面に複数の単位画像が順次プリントされたシートは前記巻取回転体に一時的に巻き取られ、その後、前記巻取回転体が逆回転して前記一時的に巻き取られたシートが再び前記プリント部に供給されて前記第2面に複数の単位画像が順次プリントされることを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記シート供給部、前記プリント部、前記カッタ部および前記乾燥部は第1経路に順に設けられ、前記乾燥部の先は第2経路と第3経路に分岐され、前記第2経路は途中に反転部が設けられ反転部の先は前記第1経路に合流し、前記第3経路の末端には前記排出部が設けられていることを特徴とする、請求項2記載のプリント装置。
【請求項4】
前記両面プリントにおいては、
(1)前記シート供給部からシートを送り出して前記プリント部に供給する;
(2)前記供給されたシートの前記第1面に前記プリント部で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)前記第1面にプリントされたシートを前記乾燥部を通過させる;
(4)前記乾燥部を通過したシートを前記第2経路に導びいて、前記巻取回転体に巻き取っていく;
(5)前記第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろで前記カッタ部でシートを切断する;
(6)前記切断したシートの端部が前記乾燥部を通過して前記巻取回転体に達するまで前記巻取回転体に巻き取ると共に、前記切断で前記プリント部の側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻す;
(7)前記巻取りが済んだら前記巻取回転体を逆回転させて、前記第2経路から再び前記プリント部にシートを供給する;
(8)前記第2経路から供給されるシートの前記第2面に前記プリント部で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)前記第2面にプリントした単位画像ごとに前記カッタ部でシートの切断を繰り返す;
(10)前記単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ前記乾燥部を通過させる;
(11)前記1枚ずつ乾燥部を通過したシートを、前記第3経路を通して前記排出部に排出する、
シーケンスが実行されるよう制御されることを特徴とする、請求項3に記載のプリント装置。
【請求項5】
前記両面プリントと片面プリントを選択的に行なうことが可能であり、前記片面プリントにおいては、
(1)前記シート供給部からシートを送り出して前記プリント部に供給する;
(2)前記供給されたシートの前記第1面に前記プリント部で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)前記第1面にプリントした単位画像ごとに前記カッタ部でシートの切断を繰り返す;
(4)前記単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ前記乾燥部を通過させる;
(5)前記1枚ずつ乾燥部を通過したシートを、前記第3経路を通して前記排出部に排出する、
シーケンスが実行されるよう制御されることを特徴とする、請求項4記載のプリント装置。
【請求項6】
前記プリント部は通過するシートの上方からインクを付与するプリントヘッドを有し、前記プリント部は前記乾燥部の上方に位置し、前記プリント部におけるシートの移動方向と前記乾燥部におけるシートの移動方向は逆向きであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項7】
前記前記プリント部から前記乾燥部までの経路はUターンする形状を有し、前記カッタ部は前記Uターンの形状の途中に位置していることを特徴とする、請求項6記載のプリント装置。
【請求項8】
前記乾燥部から前記排出部までの経路の一部は前記シート供給部の下方を通過し、前記シート供給部と前記排出部は共に装置の同じ側に設けられていることを特徴とする、請求項6または7に記載のプリント装置。
【請求項9】
前記乾燥部は通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる機構を有することを特徴とする、請求項6から8のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項10】
前記カッタ部で切断したシートに固有の情報を記録する情報記録部を有し、前記情報記録部は前記カッタ部と前記乾燥部の間の経路において情報記録を行なうことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項11】
前記カッタ部と前記情報記録部による記録位置との間でシートの端部を検知するセンサが設けられ、前記センサの検知に基づいて前記情報記録部で情報記録するタイミングが制御されることを特徴とする、請求項10記載のプリント装置。
【請求項12】
加湿気体を生成する加湿部と、前記加湿部から前記プリント部に前記加湿気体を導入するための第1ダクトと、前記乾燥部から排気される気体を前記加湿部に導入するための第2ダクトを備え、前記加湿部での加湿気体の生成に前記乾燥部から排出される気体が利用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項13】
前記シート供給部から前記プリント部に供給されるシートならびに前記反転部から前記プリント部に供給されるシートのカールを軽減させるための、共通のデカール部が設けられていることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項14】
前記デカール部と前記プリント部の間には、シートの斜行を矯正する斜行矯正部が設けられていることを特徴とする、請求項13記載のプリント装置。
【請求項15】
両面プリントを行なうプリント方法であって、
(1)連続したシートを保持するシート供給部からシートを送り出してプリント部に供給する;
(2)前記供給されたシートの第1面に前記プリント部で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)前記第1面にプリントされたシートを乾燥部を通過させる;
(4)前記乾燥部を通過したシートを巻取回転体に巻き取っていく;
(5)前記第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部でシートを切断する;
(6)前記切断したシートの端部が前記乾燥部を通過して前記巻取回転体に達するまで前記巻取回転体に巻き取る;
(7)前記巻取りが済んだら前記巻取回転体を逆回転させてシートを送り出し、前記プリント部にシートを供給する;
(8)前記巻取回転体から供給されるシートの前記第1面の背面側の第2面に前記プリント部で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)前記第2面にプリントした単位画像ごとに前記カッタ部でシートの切断を繰り返す;
(10)前記単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ前記乾燥部を通過させて排出する
ことを特徴とするプリント方法。
【請求項16】
前記第1面への繰返しのプリントの後に切断して前記プリント部の側に残されたシートを、前記巻取回転体から前記プリント部に再びシートを供給するまでに、前記シート供給部に送り戻すことを特徴とする、請求項15記載のプリント方法。
【請求項17】
両面に処理を行なうシート処理方法であって、
(1)連続したシートを保持するシート供給部からシートを送り出して処理部に供給する;
(2)前記供給されたシートの第1面に前記処理部で乾燥が必要な所定の処理を繰り返す;
(3)前記第1面に処理がされたシートを乾燥部を通過させる;
(4)前記乾燥部を通過したシートを巻取回転体に巻き取っていく;
(5)前記第1面への繰返しの処理が済んだら最後の処理の後にカッタ部でシートを切断する;
(6)前記切断したシートの端部が前記乾燥部を通過して前記巻取回転体に達するまで前記巻取回転体に巻き取る;
(7)前記巻取りが済んだら前記巻取回転体を逆回転させてシートを送り出し、前記処理部にシートを供給する;
(8)前記巻取回転体から供給されるシートの前記第1面の背面側の第2面に前記処理部で前記処理の処理を繰り返す;
(9)前記第2面に処理したシートを前記カッタ部で単位長さごとに切断を繰り返す;
(10)前記単位長さごとに切断されたシートを1枚ずつ前記乾燥部を通過させて排出する
ことを特徴とするシート処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177952(P2011−177952A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42349(P2010−42349)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】