説明

プリント配線基板およびプリント配線基板のビア配列方法

【課題】オンボード電源からデバイスに電力を供給する際のリターン電流経路を小さくすることができるプリント配線基板およびプリント配線基板のビア配列方法を提供する。
【解決手段】オンボード電源のグランド端子と接続されるグランドパターン111とオンボード電源の電源端子と接続される電源パターン112とが形成された表面層110と、グランドパターン121が形成された第1の内層120とを備え、電源パターン112側に電源ビアとグランドビアとが交互に配置され、電源パターン112側に配置されたグランドビアとグランドパターン111側に配置されたグランドビアとが、第1の内層120のグランドパターン121によって電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンボード電源が搭載されたプリント配線基板およびプリント配線基板のビア配列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オンボード電源から電源ラインを経由してデバイスへ給電を行う場合、デバイスからグランドラインを経由してリターン電流がオンボード電源へ戻ってくる。その際に、電流の経路となる電源ラインとグランドラインとによって構成されるループが、ループアンテナとなってノイズを発生させる。ループアンテナによるノイズはループを流れる電流の大きさとともに増大し、また、低電圧で動作するデバイスはノイズの影響を受けやすい。そのため、低電圧・大電流で動作するデバイスなどに対して給電を行う場合には、ループアンテナなどによるノイズを低減させることが必要である。
【0003】
ループアンテナによるノイズは、ループ面積を小さくすることによって低減させることができる。デバイスは、通常、電源/グランドピンのレイアウトが近接している(0.8mm〜1.0mm程度)ため、デバイス側の電源/グランドピンのレイアウトがループの面積(以下、ループ面積という。)を大きくする要因にはならない。しかし、オンボード電源の電源端子とグランド端子とはおよそ5mm程度離れているため、リターン電流の経路を大きくし、ループ面積を大きくすることがある。したがって、電源パターン設計において、ループアンテナによるノイズを低減させるために、リターン電流の経路を電源ラインに近接して設計することが重要になる。
【0004】
集積回路素子(LSI)を搭載した集積回路実装プリント基板において、ノイズ源となる供給電源の電源端子とグランド端子との間に、自己共振周波数の異なる複数のバイパスコンデンサを並列に設置し、供給電源の電源端子に近い側から、順に、自己共振周波数の高いバイパスコンデンサを配置することによって、周波数の高い成分のノイズ電流が流れる経路面積をより小さくして、放射ノイズ電界強度を小さくする装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−48879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、供給電源の電源端子とグランド端子が離れている場合には、ノイズ電流が流れる経路面積が大きくなり、放射ノイズ電界強度が大きくなる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、オンボード電源からデバイスに電力を供給する際のリターン電流経路を小さくすることができるプリント配線基板およびプリント配線基板のビア配列方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるプリント配線基板は、オンボード電源が搭載された多層のプリント配線基板であって、オンボード電源のグランド端子と接続されるグランドパターンとオンボード電源の電源端子と接続される電源パターンとが形成された表面層と、グランドパターンが形成された第1の内層とを備え、電源パターン側に電源ビアとグランドビアとが交互に配置され、電源パターン側に配置されたグランドビアとグランドパターン側に配置されたグランドビアとが、第1の内層のグランドパターンによって電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるプリント配線基板のビア配列方法は、オンボード電源が搭載される多層のプリント配線基板のビア配列方法であって、表面層と第1の内層とを設け、表面層に、オンボード電源のグランド端子と接続されるグランドパターンとオンボード電源の電源端子と接続される電源パターンとを形成し、グランドパターン側にグランドビアを配置し、電源パターン側に電源ビアとグランドビアとを交互に配置し、電源パターン側に配置したグランドビアとグランドパターン側に配置したグランドビアとを電気的に接続させるためのグランドパターンを第1の内層に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オンボード電源からデバイスに電力を供給する際のリターン電流経路を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるプリント配線基板を示す平面図および断面図である。
【図2】表面層を上方から見た場合の平面図である。
【図3】第1の内層を上方から見た場合の平面図である。
【図4】第2の内層を上方から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態1.
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明によるプリント配線基板を示す平面図および断面図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。
【0014】
プリント配線基板は、図1(b)に示すように多層基板であって、表面層110と、第1の内層120と、第2の内層130と、第3の内層140と、第4の内層150とを含む。また、プリント配線基板には、プリント配線基板の各層を貫通するように設けられたグランドビア161と、電源ビア162とが設けられている。
【0015】
図2は、表面層110を上方から見た場合の平面図である。図2に示すように、表面層110には、グランドパターン111と、電源パターン112とが形成されている。グランドパターン111側にはグランドビア161が配置され、電源パターン112側には電源ビア162とグランドビア161とが交互に配置されている。また、グランドパターン111と電源パターン112とは、デカップリングキャパシタ113を介して接続されている。
【0016】
表面層110のグランドパターン111は、グランド電位が与えられる平面パターン(グランドプレーン)である。グランドパターン111は、オンボード電源300のグランド端子301と接続されている。グランドパターン111には、グランドビア用のビアホールが設けられていて、グランドビア161と接続されている。
【0017】
表面層110の電源パターン112は、電源電位が与えられる平面パターン(電源プレーン)である。電源パターン112は、オンボード電源300の電源端子302と接続されている。電源パターン112には、電源ビア用のビアホールが設けられていて、電源ビア162と接続されている。また、電源パターン112には、グランドビア用のクリアランスが設けられている。グランドビア用のクリアランスは、電源パターン112とグランドビア161とが電気的に接触しないようにするための領域である。グランドビア用のクリアランスとして、例えば、グランドビア161よりも直径が大きい孔が設けられたり、電源パターン112とグランドビア161とが接触する部分に導体のない領域が設けられたりする。
【0018】
デカップリングキャパシタ113は、グランドパターン111と電源パターン112とを接続するキャパシタ(コンデンサ)である。
【0019】
図3は、第1の内層120を上方から見た場合の平面図である。第1の内層120には、グランドパターン121が形成されている。グランドパターン121には、グランドビア用のビアホールが設けられていて、表面層110のグランドパターン111側に配置されたグランドビアと、表面層110の電源パターン112側に配置されたグランドビアとを接続する。また、グランドパターン121には、電源パターン112側にグランドビアと電源ビアとを交互に配置させるために、図3に示すように、グランドパターン121と電源ビア162とを電気的に接触させないための電源ビア用のクリアランスが設けられている。
【0020】
第2の内層130には、電源パターン131が形成されている。図4は、第2の内層130を上方から見た場合の平面図である。表面層110の電源パターン112側にグランドビアと電源ビアとを交互に配置したことにより、表面層110の電源パターン112にグランドビア用のクリアランスホールが空いてしまい、オンボード電源300から供給される電流を電源パターン112だけでは十分に引き出すことができない場合に、第2の内層130が補助プレーンとしてプリント配線基板に挿入される。
【0021】
第3の内層140には、電源パターン(図示せず)が形成されていて、表面層110の電源パターン112側に配置された電源ビアと、デバイス400の電源ピン402に接続される電源ビアとを接続する。第3の内層140の電源パターンには、電源ビア用のビアホールとグランドビア用のクリアランスとが設けられている。
【0022】
第4の内層150は、グランドパターン(図示せず)が形成されていて、電源パターン112側に配置されたグランドビアと、デバイス400のグランドピン401に接続されるグランドビアとを接続する。第4の内層150のグランドパターンには、グランドビア用のビアホールと電源ビア用のクリアランスが設けられている。
【0023】
次に、本実施形態におけるプリント配線基板の電流経路について説明する。
【0024】
図1(a)および(b)に示すように、オンボード電源300の電源端子302からデバイスへ供給される電流の経路である電流経路501は、「オンボード電源300の電源端子302」→「表面層110の電源パターン112」→「電源ビア162」→「第3の内層140の電源パターン」→「電源ビア162」→「デバイス400の電源ピン402」となる。
【0025】
また、デバイス400のグランドピン401からオンボード電源300のグランド端子301に戻ってくる電流(リターン電流)の経路であるリターン電流経路502は、「デバイス400のグランドピン401」→「グランドビア161」→「第4の内層150のグランドパターン」→「グランドビア161」→「第1の内層120のグランドパターン121」→「グランドビア161」→「表面層110のグランドパターン111」→「オンボード電源300のグランド端子301」となる。
【0026】
以上に説明したように、電源パターン112側にグランドビアと電源ビアとを交互にレイアウトすることによって、リターン電流経路をオンボード電源の電源/グランド端子の直近まで並走させることができるので、電源ラインである電流経路およびグランドラインであるリターン電流経路で形成される電流のループ経路を小さくすることができる。そのため、オンボード電源の電源端子とグランド端子とが離れている場合であっても、電源ラインとグランドラインとによって構成されるループの面積を小さくすることができ、ノイズの発生を抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態では、プリント配線基板に補助プレーンとして第2の内層130を挿入しているが、補助プレーン用の内層はいくつ挿入されていてもよい。そのような構成によれば、オンボード電源から供給される電流の容量が増えた場合であっても、補助プレーンを増やすことによって電流を十分に引き出すことが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
110 表面層
111、121 グランドパターン
112 電源パターン
113 デカップリングキャパシタ
120 第1の内層
130 第2の内層
140 第3の内層
150 第4の内層
161 グランドビア
162 電源ビア
300 オンボード電源
301 グランド端子
302 電源端子
400 デバイス
401 グランドピン
402 電源ピン
501 電流経路
502 リターン電流経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンボード電源が搭載される多層のプリント配線基板であって、
前記オンボード電源のグランド端子と接続されるグランドパターンと前記オンボード電源の電源端子と接続される電源パターンとが形成された表面層と、
グランドパターンが形成された第1の内層とを備え、
前記電源パターン側に電源ビアとグランドビアとが交互に配置され、
前記電源パターン側に配置された前記グランドビアと前記グランドパターン側に配置されたグランドビアとが、前記第1の内層のグランドパターンによって電気的に接続されている
ことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
表面層の電源パターン側に配置されたグランドビアとの電気的接触を避けるためのクリアランスが前記電源パターンに設けられ、前記電源パターン側に配置された電源ビアとの電気的接触を避けるためのクリアランスが第1の内層のグランドパターンに設けられている
請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
オンボード電源から電流が供給されるデバイスの電源端子と接続可能な電源ビアと前記デバイスのグランド端子と接続可能なグランドビアと、
前記電源ビアと表面層の電源パターン側に配置された電源ビアとを電気的に接続する電源パターンが形成された第3の内層と、
前記グランドビアと表面層の電源パターン側に配置されたグランドビアとを電気的に接続するグランドパターンが形成された第4の内層とを備えた
請求項1または請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
表面層に形成された電源パターンとグランドパターンとは分離されていて、
コンデンサによって電気的に接続されている
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のプリント配線基板。
【請求項5】
電源パターンが形成された第2の内層とを備え、
表面層の電源パターンと前記第2の内層の電源パターンとが、電源ビアを介して電気的に接続されている
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のプリント配線基板。
【請求項6】
オンボード電源が搭載される多層のプリント配線基板のビア配列方法であって、
表面層と第1の内層とを設け、
前記表面層に、オンボード電源のグランド端子と接続されるグランドパターンと前記オンボード電源の電源端子と接続される電源パターンとを形成し、
前記グランドパターン側にグランドビアを配置し、
前記電源パターン側に電源ビアとグランドビアとを交互に配置し、
前記電源パターン側に配置したグランドビアと前記グランドパターン側に配置したグランドビアとを電気的に接続させるためのグランドパターンを前記第1の内層に形成する
ことを特徴とするプリント配線基板のビア配列方法。
【請求項7】
表面層の電源パターン側に配置されたグランドビアとの電気的接触を避けるためのクリアランスを前記電源パターンに設け、前記電源パターン側に配置された電源ビアとの電気的接触を避けるためのクリアランスを第1の内層のグランドパターンに設ける
請求項6に記載のプリント配線基板のビア配列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4830(P2013−4830A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135968(P2011−135968)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】