説明

プリント配線板とその製造方法

【課題】本発明は、安価で、かつ、耐エレクトロケミカルマイグレーション性に優れたプリント配線板及び該プリント配線板を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、前記接着層が半導電性であり、前記接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているようにしてなることを特徴とするプリント配線板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、電子機器、電機機器の構成部品として必須である。プリント配線板の構造としては、片面プリント配線板、両面プリント配線板、多層プリント配線板等の各種のものがあり、抵抗、コンデンサ、リアクトル、トランス等をはんだ付けにより実装することで構成されている。
【0003】
プリント配線板の詳細な構造の例として、FR−4タイプのプリント配線板について述べる。一例として示す図8の両面プリント配線板100の場合、ガラスクロスにエポキシ樹脂等を含浸させた、厚さ100〜200μmのプリプレグ(接着層101)を数枚重ね(図中では2枚としている)、その両側に厚さがそれぞれ35、75μmの銅箔層102を積層し、これらを加熱プレスによって貼り合わせる。この銅箔層102を任意の配線パターンにエッチング加工することによって配線板100を得る。
【0004】
プリント配線板が用いられる機器で発生する電圧は、その機器の目的によって様々である。このような機器では、発生する電圧によって、所定の絶縁距離をとるように設計されている。この絶縁距離としては、例えば、IEC664規格に基づいた絶縁距離を用いている。また、絶縁距離は電圧値だけではなく、プリント配線板の耐トラッキング指数、及び使用環境で決定される汚染度等によっても異なってくる。
【0005】
近年、機器を小型化するために、電子部品を高密度に実装することが求められている。そのため、上記の絶縁距離を短縮化することが必要となっている。これを実現するために、電極となる銅箔層をコーティング材又はポッティング材で覆う方法が行われている。これは、銅箔層の配線パターン間で生じる絶縁劣化現象のひとつであるエレクトロケミカルマイグレーションの発生を防止するための方法である。この現象は、機器を使用する際、吸湿又は結露が生じると、銅箔層の配線パターン間の絶縁抵抗が低下し、銅箔から銅イオンが溶出して対極で還元析出することで導電路が形成され、短絡に至る現象である。
【0006】
また、エレクトロケミカルマイグレーションは、多層プリント配線板の内部でも生じる。
ここで、図9に示すように、電子部品を高密度に実装すべく、配線パターンを多く形成できるように、図8のような構成を数回繰り返すことによって得られる、4〜10層程度の銅箔層を有する多層プリント配線板が、一般的に使用されている。この多層プリント配線板110の場合、ガラスクロスとエポキシ樹脂等からなる絶縁層111の中に、銅箔パターン112が形成されている。各層の銅箔パターン112は、銅めっきで形成されたスルーホール113によって、電気的に接続されている。
エレクトロケミカルマイグレーションは、絶縁層111の内部にある銅箔パターン112間、銅箔パターン112とスルーホール113間、スルーホール113とスルーホール113間、層間の銅箔間等、異電位間において発生する。特に、スルーホール113とスルーホール113間のガラス繊維に沿って生じるエレクトロケミカルマイグレーションを、CAF(Conductive Anodic Filaments)と称する。ガラス繊維は、エポキシ樹脂で覆われている。しかし、その界面は吸湿しやすいため、エレクトロケミカルマイグレーションが生じやすい。
【0007】
最近では、より高密度に実装するために、電子部品をプリント配線板の表面に実装するだけでなく、絶縁層の内部にある空き領域にも実装する、部品内蔵プリント配線板が実用化され始めている。一例として示す図10の部品内蔵プリント配線板120では、電子部品124として、チップ抵抗、チップコンデンサー等の受動素子、及びIC等の能動素子を一旦実装しておき、その上に絶縁層121を被せ、さらにその上層に銅箔パターン回路122を形成する。銅箔パターン122は、スルーホール123によって電気的に接続されている。この絶縁層121には、上記したガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを用いる。この場合、ガラスクロスが含まれているため、内蔵する電子部品124に圧力がかかって損傷してしまう。そのため、必要な部分をくり抜いて積層する必要がある。
【0008】
一方、ガラスクロスを含まない絶縁層121を使用する場合もある。エポキシ樹脂等に、シリカ等のフィラーを充填したプリプレグを用いて、電子部品124とともに積層する方法である。ガラスクロスを含まないため、この方法では、所定の熱をかけると溶融し、電子部品124に圧力をかけずに積層することが可能である。
【0009】
このような部品内蔵プリント配線板120の場合、層間の銅箔パターンの厚み方向における絶縁距離は、縮小化する。したがって、その間の電界強度は高くなるため、エレクトロケミカルマイグレーションの防止が必要となる。特に、電界強度が高い銅箔エッジ部では、銅イオンが溶出しやすい。
【0010】
さらに、プリント配線板の構造としては、FR−1タイプのプリント配線板がある。このプリント配線板は、上記したFR−4タイプのプリント配線板よりも安価であるため、以前から家電用機器に用いられてきた。最近では、比較的高い電圧、例えば、200〜1000Vの産業用の電機機器用プリント配線板に採用するという試みがなされている。
【0011】
一例として示す図11のFR−1タイプのプリント配線板130は、紙基材にフェノール樹脂を含浸させたコア基材133に、エポキシ接着層131を用いて銅箔層132を貼り付けたものである。FR−1タイプのプリント配線板は低価格であるが、その構成材料の絶縁性は、上記したガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグよりも低い。そのため、電界が集中し、エレクトロケミカルマイグレーションが発生しやすい。特に、エポキシ接着層131で発生しやすい。また、銅イオンが銅箔層132からエポキシ接着層131に溶出しやすいため、高い電圧の産業用の電機機器用プリント配線板に適用することは難しい状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、安価で、かつ、耐エレクトロケミカルマイグレーション性に優れたプリント配線板及び該プリント配線板を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明によれば、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、前記接着層が半導電性であり、前記接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているようにしてなることを特徴とするプリント配線板が提供される。
また、本発明によれば、コア基材の両面に、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、前記コア基材の両面に設けた前記接着層のうち、少なくとも一方の面の接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているようにしてなることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【0014】
「半導電性」とは、絶縁性の樹脂に、金属製のフィラー、導電性カーボン、シリコーンカーバイド等を充填して、体積抵抗率が1×10−3〜1×10(Ω×cm)の範囲であることを意味する。
「突き出ている」とは、プリント配線板の積層状態を示す全ての断面において、接着層の断面が、その両端(エッジ部)で、銅箔層の両端(エッジ部)を越えて延在することをいう。延在の幅は、後述する絶縁距離のことをいうが、その幅は後述するように電圧値によって定まる。一般的には、銅箔パターンの幅方向に対し、0.01〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0015】
前記接着層の抵抗率は、1×10−3〜1×10(Ω×cm)であることが好適である。
前記接着層は、エッチングにより選択的除去が可能であることが好適である。
前記接着層中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率は、0〜10ppmであることが好適である。
前記接着層の吸水率は、前記コア基材の吸水率よりも低いことが好適である。
【0016】
また、本発明によれば、銅箔層の片面に、接着層を積層する工程と、前記積層した接着層のうち接着層側の面を、コア基材に貼り合わせる工程と、前記貼り合わせた接着層と銅箔層を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成する工程とを含み、前記接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工することを特徴とするプリント配線板の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、銅箔層の片面に、接着層を積層する工程と、前記積層した接着層のうち接着層側の面を、コア基材の両面に貼り合わせる工程と、前記両面に貼り合わせた接着層と銅箔層のうち、少なくとも一方の面の接着層と銅箔層を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成する工程とを含み、前記コア基材の両面に設けた前記接着層のうち、少なくとも一方の面の接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工することを特徴とするプリント配線板の製造方法が提供される。
【0017】
さらに、本発明によれば、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、前記接着層の誘電率が、前記コア基材の誘電率の±25%の範囲であり、前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率の1/100〜100倍の範囲であることを特徴とするプリント配線板が提供される。
また、本発明によれば、コア基材の両面に、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、前記接着層の誘電率が、前記コア基材の誘電率の±25%の範囲であり、前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率の1/100〜100倍の範囲であることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【0018】
前記接着層の誘電率は、前記コア基材の誘電率と等しく、前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率と等しいことが好適である。
前記接着層中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率は、0〜10ppmであることが好適である。
前記接着層の吸水率は、前記コア基材の吸水率よりも低いことが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプリント配線板の製造方法によれば、安価で、かつ、耐エレクトロケミカルマイグレーション性に優れたプリント配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るプリント配線板の一実施の形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るプリント配線板の他の実施の形態を示す模式図である。
【図3】実施例1及び比較例1で得られたプリント配線板の模式図である。
【図4】実施例1におけるプリント配線板の銅箔層のエッジ部分のSEM像である。
【図5】実施例1におけるプリント配線板の銅箔層のエッジ部分のSEM−EDS像である。
【図6】比較例1におけるプリント配線板の銅箔層のエッジ部分のSEM像である。
【図7】比較例1におけるプリント配線板の銅箔層のエッジ部分のSEM−EDS像である。
【図8】従来公知の両面プリント配線板の構造を示す模式図である。
【図9】従来公知の多層プリント配線板の構造を示す模式図である。
【図10】従来公知の部品内蔵プリント配線板の構造を示す模式図である。
【図11】従来公知の、FR−1タイプのプリント配線板の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のプリント配線板及びその製造方法について、その実施の形態を添付図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明に係るプリント配線板の一実施の形態を示す模式図である。
【0022】
本実施の形態に係るプリント配線板10は、コア基材3側から順に接着層1、2と、銅箔層4、5とを備える。また、接着層1、2は、半導電性であり、接着層1、2は、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているようにしてなる。
「半導電性」とは、絶縁性の樹脂に、金属製のフィラー、導電性カーボン、シリコーンカーバイド等を充填して、体積抵抗率が1×10−3〜1×10(Ω×cm)の範囲であることを意味する。
「突き出ている」とは、プリント配線板10の積層状態を示す全ての断面において、接着層1、2の断面が、その両端(エッジ部)で、銅箔層4、5の両端(エッジ部)を越えて延在することをいう。延在の幅は、後述する絶縁距離のことをいうが、その幅は後述するように電圧値によって定まる。一般的には、銅箔パターンの幅方向に対し、0.01〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0023】
本実施の形態に係るプリント配線板10は、コア基材3の両面に、コア基材3側から順に接着層1、2と、銅箔層4、5とを備える。また、コア基材3の両面に設けた接着層1、2のうち、少なくとも一方の面の接着層1、2は、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているようにしてなる。
【0024】
接着層1、2の材質は、銀ペーストである。また、樹脂に、シリコンカーバイド粉を充填したペーストであってもよい。接着層1、2の厚さは、1〜100μmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、コア基材3と銅箔層4、5を十分な強度で貼り合わせることができるからである。接着層1、2の体積抵抗率は、1×10−3〜1×10(Ω×cm)であることが好ましい。
【0025】
接着層1、2は、エッチングにより選択的除去が可能であることが好ましい。これは、接着層1、2を銅箔層4、5より突き出るようにさせるためである。
接着層1、2中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率は、0〜10ppmの範囲であることが好ましい。これらのイオンの溶出濃度を、この範囲内とすることにより、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防ぐことができるためである。
溶出したイオンの分析方法は、後述の硬化が完了した接着層1、2を、ガラス容器等を用い、85℃で超純水中に浸し、イオンを抽出する。抽出時間は24〜48時間であることが好ましく、より好ましくは48時間である。
また、接着層1、2の吸水率は、コア基材3の吸水率よりも低いことが好ましい。接着層1、2の吸水率は、0.1%以下であることが好ましい。この範囲であれば、接着層1、2に電界が集中することを防ぐことができ、かつ、銅箔層4、5からの銅イオンの溶出を防ぐことができるため、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防ぐことができるからである。
【0026】
銅箔層4、5は、通常使用される銅箔が用いられる。銅箔層4、5の厚さは、3〜300μmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、必要な電流密度に対応できるためである。
【0027】
コア基材3としては、例えば、紙/フェノール樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂を単独で使用又は複数組み合わせて使用することができるが、芳香族のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
コア基材3の厚さは、0.1〜1.6mmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、強度が十分得られるためである。通常、プリプレグの厚さは、0.1〜0.2mm程度であるので、コア基材3の厚さを厚くする場合は数枚重ねて積層する。
【0028】
次に、本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施の形態を、図1を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、銅箔層4、5の片面に、接着層1、2を積層する(図1(a))。積層は、銅箔層4、5の片面に、接着層1、2を塗工することによって行われる。塗工の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、カーテンコート法等が挙げられる。
【0029】
次に、積層した接着層1、2のうち接着層1、2側の面を、コア基材3に貼り合わせるか、もしくは、積層した接着層1、2のうち接着層1、2側の面を、コア基材3の両面に貼り合わせる(図1(b))。貼り合わせは、真空加熱プレスを用いて行う。温度を170〜190℃、真空度を1〜50Torr、加圧力を40〜60kg/cm、加熱時間を1〜2時間として行う。この真空加熱プレスにより、接着及びプリプレグの硬化を行う。なお、予めコア基材3のみ硬化しておいてもよい。
【0030】
次に、貼り合わせた接着層1、2と銅箔層4、5を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成するか、もしくは、両面に貼り合わせた接着層1、2と銅箔層4、5のうち、少なくとも一方の面の接着層1、2と銅箔層4、5を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成する(図1(c))。上記した真空加熱プレスにより、接着層1、2、銅箔層4、5、コア基材3を完全に硬化した後、銅箔層4、5を所定の回路パターンに加工する。まず、エッチングレジストを塗工し、接着層1、2と銅箔層4、5を一度に湿式エッチングにより、所定のパターンに加工する。その後、最終回路パターンとなる銅箔部分のみにエッチングレジストを塗工し、エッチングにより、銅箔層4、5を所定の回路パターンに加工する。
このとき、接着層1、2を、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工するか、もしくは、コア基材3の両面に設けた接着層1、2のうち、少なくとも一方の面の接着層1、2を、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工する。この突き出ている部分の距離(絶縁距離)は、0.01〜5mmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、銅箔層4、5のエッジ部の電界強度を各種電圧に対応して緩和できるからである。この絶縁距離は、具体的には、銅箔に印加される電圧値によって定められる。
【0031】
以上のようにして、本実施の形態に係るプリント配線板10を得ることができる。本実施の形態に係るプリント配線板10によれば、接着層1、2を、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工しているか、もしくは、コア基材3の両面に設けた接着層1、2のうち、少なくとも一方の面の接着層1、2を、銅箔層4、5のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工しているので、銅箔層4、5の両端部における電界強度を緩和することができ、この部分におけるエレクトロケミカルマイグレーションの発生を防止することが可能である。
【0032】
他の実施の形態
図2は、本発明に係るプリント配線板の他の実施の形態を示す模式図である。
本実施の他の形態に係るプリント配線板20は、コア基材13側から順に接着層11、12と、銅箔層14、15とを備えるか、もしくは、コア基材13の両面に、コア基材13側から順に接着層11、12と、銅箔層14、15とを備える。
接着層11、12の誘電率は、コア基材13の誘電率の±25%の範囲である。この範囲であれば、接着層11、12とコア基材13との界面における電界集中を緩和できるからである。接着層11、12の誘電率は、コア基材13の誘電率と等しいことが好ましい。接着層11、12の誘電率(比誘電率)は、2〜6の範囲であることが好ましく、3〜5の範囲であることがより好ましい。
接着層11、12における、後述する硬化後の導電率、すなわち、体積抵抗率は、コア基材13の体積抵抗率の1/100〜100倍である。この範囲であれば、接着層11、12とコア基材13との界面における電界集中を緩和できるからである。接着層11、12の体積抵抗率は、コア基材13の体積抵抗率と等しいことが好ましい。接着層11、12の体積抵抗率は、1×10〜1×1016(Ω×cm)の範囲であることが好ましく、1×10〜1×1013(Ω×cm)の範囲であることがより好ましい。
接着層11、12中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率は、0〜10ppmの範囲であることが好ましい。これらのイオンの溶出濃度を、この範囲内とすることにより、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防ぐことができるためである。溶出したイオンの分析方法については、図1の形態について、上述した通りである。
また、接着層11、12の吸水率は、コア基材13の吸水率よりも低いことが好ましい。接着層11、12の吸水率は、0.1%以下であることが好ましい。この範囲であれば、接着層11、12に電界が集中することを防ぐことができ、かつ、銅箔層14、15からの銅イオンの溶出を防ぐことができるため、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防ぐことができるからである。
接着層11、12の材質と厚さについては、上述した図1の接着層1、2と同様である。
【0033】
銅箔層14、15及びコア基材13については、上述した図1の銅箔層4、5及びコア基材3と同様である。
【0034】
次に、本実施の他の形態に係るプリント配線板20の製造方法を、図2を参照して説明する。
まず、コア基材13側から順に接着層11、12、銅箔層14、15を積層するか、もしくは、コア基材13の両面に、コア基材13側から順に接着層11、12、銅箔層14、15を積層する(図2(a))。積層は、予め銅箔層14、15の片面に、接着層11、12を塗工することによって行われてもよい。塗工の方法については、図1の形態について、上述した通りである。
【0035】
次に、コア基材13に積層した接着層11、12と銅箔層14、15を、真空加熱プレスにより貼り合わせるか、もしくは、コア基材13の両面に積層した接着層11、12と銅箔層14、15を、真空加熱プレスにより貼り合わせる(図2(b))。真空加熱プレスについては、図1の形態について、上述した通りである。
【0036】
次に、貼り合わせた銅箔層14、15を、エッチングにより加工するか、もしくは、両面に貼り合わせた銅箔層14、15のうち、少なくとも一方の面の銅箔層14、15を、エッチングにより加工する(図2(c))。上記した真空加熱プレスにより、接着層11、12、銅箔層14、15、コア基材13を完全に硬化した後、最終回路パターンとなる銅箔部分にエッチングレジストを塗工し、湿式エッチングにより、銅箔層14、15を所定の回路パターンに加工する。
【0037】
以上のようにして、本実施の他の形態に係るプリント配線板20を得ることができる。本実施の他の形態に係るプリント配線板20によれば、接着層11、12の誘電率が、コア基材13の誘電率の±25%の範囲であり、接着層11、12の体積抵抗率が、コア基材13の体積抵抗率の1/100〜100倍の範囲であるので、接着層11、12における電界強度を緩和することができ、この部分におけるエレクトロケミカルマイグレーションの発生を防止することが可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例等を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
図3に示すプリント配線板30を製造した。まず、コア基材23として、厚さが800μmである紙/フェノール樹脂(パナソニック電工社製、R−8700)を用いた。このコア基材23上に、接着層21を、乾燥後の接着層21の厚さが65μmとなるように塗布した。接着層21は、エポキシ樹脂主剤とエポキシ樹脂硬化剤を10対3の割合で配合したものとした。エポキシ樹脂主剤としては、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート816に対して、三菱化学社製のケッチェンブラックEC300Jを1重量%配合したものを用いた。エポキシ樹脂硬化剤としては、ジャパンエポキシレジン社製の脂環式ポリアミンエピキュア113を用いた。この接着層21の体積抵抗率は、コア基材23の体積抵抗率と等しいものを用いた。次に、この接着層21上に、銅箔層24を貼り合わせた。この銅箔層24を、マスキングテープ及び塩化第二鉄(FeCl)を用いたエッチングにより、接着層21が突き出るように、10mm×10mmの形状とした。以上のようにして、プリント配線板30を得た。
【0040】
比較例1
エポキシ樹脂主剤として、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート816のみを用いたことと、接着層21の体積抵抗率が、コア基材23の体積抵抗率と等しくないものを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0041】
マイグレーション評価試験
実施例1及び比較例1で得られた各プリント配線板を、アルミニウム電極25で挟み込み、温度85℃、湿度85%の雰囲気下で、DC3kV/mmを印加し、125時間、HAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。各プリント配線板の銅箔層24のエッジ部分におけるマイグレーションの発生状態を、SEM−EDS分析によって行い、○を僅かにマイグレーションの発生が認められたもの、×を顕著にマイグレーションの発生が認められたものとして評価した。
【0042】
実施例1の分析結果を図4及び図5に、比較例1の分析結果を図6及び図7にそれぞれ示す。図5及び図7中における白色のドットは、銅の存在を示している。
また、実施例1及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
図4〜図7及び表1より、接着層21の体積抵抗率が、コア基材23の体積抵抗率と等しいものを用いた場合、接着層21に電界が集中することを防ぐことができ、かつ、銅箔層24からの銅イオンの溶出を防ぐことができるため、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を防ぐことが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30 プリント配線板
1、2、11、12、21 接着層
3、13、23 コア基材
4、5、14、15、24 銅箔層
25 アルミニウム電極
100 配線板
101 接着層
102 銅箔層
110 多層プリント配線板
111 絶縁層
112 銅箔パターン
113 スルーホール
120 部品内蔵プリント配線板
121 絶縁層
122 銅箔パターン回路
123 スルーホール
124 電子部品
130 プリント配線板
131 エポキシ接着層
132 銅箔層
133 コア基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、
前記接着層が半導電性であり、
前記接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているようにしてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
コア基材の両面に、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、
前記コア基材の両面に設けた前記接着層のうち、少なくとも一方の面の接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているようにしてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
前記接着層の抵抗率が、1×10−3〜1×10(Ω×cm)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記接着層が、エッチングにより選択的除去が可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記接着層中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率が、0〜10ppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記接着層の吸水率が、前記コア基材の吸水率よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項7】
銅箔層の片面に、接着層を積層する工程と、
前記積層した接着層のうち接着層側の面を、コア基材に貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせた接着層と銅箔層を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成する工程と
を含み、
前記接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
銅箔層の片面に、接着層を積層する工程と、
前記積層した接着層のうち接着層側の面を、コア基材の両面に貼り合わせる工程と、
前記両面に貼り合わせた接着層と銅箔層のうち、少なくとも一方の面の接着層と銅箔層を、一度にエッチングにより加工して回路パターンを形成する工程と
を含み、
前記コア基材の両面に設けた前記接着層のうち、少なくとも一方の面の接着層が、前記銅箔層のエッジ部よりも突き出ているように、エッチングにより加工することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、
前記接着層の誘電率が、前記コア基材の誘電率の±25%の範囲であり、
前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率の1/100〜100倍の範囲であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
コア基材の両面に、コア基材側から順に接着層と、銅箔層とを備えるプリント配線板であって、
前記接着層の誘電率が、前記コア基材の誘電率の±25%の範囲であり、
前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率の1/100〜100倍の範囲であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項11】
前記接着層の誘電率が、前記コア基材の誘電率と等しく、前記接着層の抵抗率が、前記コア基材の抵抗率と等しいことを特徴とする請求項9又は10に記載のプリント配線板。
【請求項12】
前記接着層中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンの含有率が、0〜10ppmであることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項13】
前記接着層の吸水率が、前記コア基材の吸水率よりも低いことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−205083(P2011−205083A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43975(P2011−43975)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】