説明

プリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置

【課題】検査治具を必要としない検査用プローブを連続的に移動させて検査ポイントに当接させるプリント配線板の電気検査方法において、薄型あるいはフレキシブルタイプのプリント配線板に対しても、たわみが生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触が得られるプリント配線板の電気検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】検査領域の周囲の少なくとも一部を含む領域をプリント配線板の両面から保持部材で挟持することによって保持し、前記検査領域の両面に検査用プローブを当接させ導体回路を検査することによって電気検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、移動体通信機器、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の各種電子機器に用いられるプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント配線板の断線、ショートを検査する電気検査方法としては、製品の実装ランド等から選択した検査ポイントに対応した位置に検査用プローブを配設した専用の検査治具を製品毎に作製し、この検査用プローブを製品の検査ポイントに当接させて行うという方法が主流となっている。この方法によれば1回の検査を短時間に行うことができ、同一製品を大量に検査する場合には非常に適している反面、検査治具の作製費用が高い、作製リードタイムが長い、保管場所が必要という課題があり、多品種少量の検査には不向きである。
【0003】
そこで近年、上記のような検査治具を必要としない方法として、次に示す方法が広まってきている。以下、この方法について簡単に説明する。
【0004】
まずプリント配線板を縦型にして上辺と下辺の端部を固定治具に固定することによって検査装置に設置する。次にプリント配線板の両面に各数本設置した検査用プローブをコンピューター制御によって次々と連続的に所定の検査ポイントに移動、当接し、電気信号を検出することによって検査を行う。ここでの位置合わせ方法としては、検査装置に設けられた基準ピンにプリント配線板の基準穴を挿入するか、あるいは製品に設けられた位置合わせマークを検査装置に備え付けられたカメラによって位置認識するという方法によって行われる。そして検査用プローブを介して得られた電気信号から合否を判定する。以上のようにして検査が完了する。
【0005】
この方法は検査治具を作製する必要がないので、多品種少量の検査を行うには非常に適した方法であると言うことができる。
【0006】
この発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平4−338530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来のプリント配線板の電気検査方法では以下の課題を有していた。
【0008】
すなわち、パソコン、移動体通信機器、ビデオカメラ、デジタルカメラ等に使用されるプリント配線板は、軽薄短小の要求に応え益々高密度化が進み、その厚みについても薄型化が進行し最近では0.1mmといった極薄型が実用化されている。さらにプリント配線板の材質としても、ガラス繊維や有機材料による繊維の織布や不織布を補強材とするもの以外に、補強材を有しないフレキシブルタイプのものも普及してきている。このような薄型あるいはフレキシブルタイプのプリント配線板では、その対向する2辺もしくは4辺の端部を固定治具に固定するだけでは固定が不十分で、中央部付近ではたわみ、そりが生じ、検査用プローブを当接させても十分な接触が得られないという課題を有していた。
【0009】
また、前記特許文献1に示すように、プリント配線板の端部を固定した固定治具を介してプリント配線板に張力を与えるという方法も実用化されているが、この方法によれば薄型あるいはフレキシブルタイプのプリント配線板に張力を与える際に、プリント配線板に伸びが発生したり固定箇所が損傷するといった課題を有していた。
【0010】
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、検査治具を必要としない検査用プローブを連続的に移動させて検査ポイントに当接させるプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置において、薄型あるいはフレキシブルタイプのプリント配線板に対しても、たわみ、そりが生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触が得られるプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、プリント配線板を複数の検査領域に分割し、前記検査領域の周囲の一部を含む領域をプリント配線板の両面から保持部材で挟持することによって保持し、前記検査領域の両面に検査用プローブを当接させ導体回路を検査し、これを繰り返して分割した前記検査領域を順次検査していくことを特徴とするプリント配線板の電気検査方法である。この構成により、プリント配線板を電気検査装置に固定する際に、プリント配線板の外周端部を固定するだけでなくプリント配線板を構成する個々の検査領域の周囲を保持部材で挟持することによって保持するので、検査用プローブが当接する検査ポイントの近傍を保持することになる。その結果、検査領域の平面状態が確保されるので、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。またプリント配線板に対して機械的に引っ張る等の力を加えるわけではなく、単に検査領域の周囲を両面から挟持するだけなので、プリント配線板に伸びが発生したり固定箇所が損傷するといったことは起こらない。
【0012】
また本発明は、保持部材は検査領域に対応した部分に開口部を形成した平面板であるというものであり、この構成により、プリント配線板は平面板によって開口部以外の部分が挟持されるので、開口部に対応した検査領域の周囲が平面板で保持され、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0013】
また本発明は、開口部は検査領域と略同一形状かつ略同一寸法であるというものであり、この構成により、検査に必要な検査領域を開口部から露出させると同時に検査領域の近傍を平面板によって挟持することができるので、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0014】
また本発明は、平面板は外形寸法がプリント配線板と略同一であるというものであり、この構成により、プリント配線板およびプリント配線板を両面から保持する平面板は外形寸法が略同一であるので、これら3枚の位置合わせは外周が一致するように揃えて重ね合わせればよく、容易に位置合わせをすることができる。
【0015】
また本発明は、検査領域の周囲の一部を含む部分において、平面板とプリント配線板を剥離可能な接着剤で固定するというものであり、この構成により、検査領域の周辺に平面板とプリント配線板との間に隙間が生じることを防止することができ、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0016】
また本発明は、プリント配線板の対向した辺の両端部を固定治具で固定するというものであり、この構成により、プリント配線板の固定と検査領域周囲の保持との両方の作用によりプリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0017】
また本発明は、プリント配線板の対向した辺の両端部を固定治具によりプリント配線板に張力を与えるというものであり、この構成により、プリント配線板に与えた張力と検査領域周囲の保持との両方の作用によりプリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0018】
また本発明は、プリント配線板を垂直方向に立てた状態で行うというものであり、この構成により、重力はプリント配線板の平面と平行な方向に働くのでプリント配線板は保持部を基点として重力によってたわむことはなく、検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0019】
また本発明は、プリント配線板を水平方向の状態で行うというものであり、この構成により、検査用プローブおよび保持用プローブの移動は水平方向とすることができ、重力方向と同じ垂直方向に移動させるのと比較して設備的な負荷を軽減することができる。
【0020】
また本発明は、一つの検査領域内の検査が終了した後、プリント配線板と保持部材を相対的に移動させ、別の検査領域を検査するというものであり、この構成により、プリント配線板を構成する複数の検査領域を切替えロスを発生させずに順次検査していくことができる。
【0021】
また本発明は、プリント配線板の検査ポイントの近傍に保持用プローブを当接することによってプリント配線板を保持し、プリント配線板の両面に検査用プローブを当接させ導体回路を検査するというものであり、この構成により、保持用プローブでプリント配線板の検査ポイントの近傍は保持されるので、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0022】
また本発明は、プリント配線板の両面各々に複数の検査用プローブを配置し、複数の導体回路を連続的に検査する際、導体回路毎に検査に必要な検査用プローブを選択し、検査に不要な検査用プローブを保持用プローブとするというものであり、この構成により、保持用プローブを特別に設置する必要がなく検査用プローブを保持用プローブとして兼用することができ効率的に活用できる。
【0023】
また本発明は、検査用プローブが当接する測定ポイントに対応した箇所をプリント配線板の裏面から保持用プローブを当接することにより支えるというものであり、この構成により、プリント配線板に検査用プローブを当接させた時に裏面からの支えによって十分な接触を得ることができる。
【0024】
また本発明は、保持用プローブの先端が平面形状であるというものであり、この構成により、プリント配線板に検査用プローブを当接させた時に裏面から平面的に支えることができ十分な接触を得ることができる。
【0025】
また本発明は、先端が検査用プローブと保持用プローブに交換可能なプローブをプリント配線板の両面に各2本合計4本配置し、検査を行う導体回路両端の2つの検査ポイントが、両方共プリント配線板の第1面に位置する第1の導体回路群と、両方共プリント配線板の第2面に位置する第2の導体回路群と、互いにプリント配線板の異なった面に位置する第3の導体回路群に分類し、各導体回路群毎に各導体回路の2つの検査ポイントのそれぞれが位置する面と同一面側に配置した2つのプローブに検査用プローブを、残りの2つのプローブに保持用プローブをそれぞれ装着した後に検査するというものであり、この構成により、4本のプローブを効率的に検査用プローブおよび保持用プローブとして活用することができる。
【0026】
また本発明は、プリント配線板を装置本体内に固定する固定治具と、前記プリント配線板の両面に配置され、前記プリント配線板の検査領域の周囲を挟持することによって保持する枠状の保持部材と、前記プリント配線板の両面から前記検査領域内の所望の位置へ移動し、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う検査用プローブを備え、前記保持部材は前記プリント配線板に複数の検査領域を形成するために前記プリント配線板面内の任意の場所へ移動可能な機構を有することを特徴とするプリント配線板の電気検査装置というものであり、この構成により、プリント配線板を構成する個々の検査領域の周囲を保持部材で挟持することによって保持するので、検査用プローブが当接する検査ポイントの近傍を保持することができ、その結果、検査領域の平面状態が確保され、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0027】
また本発明は、プリント配線板を装置本体内に固定する固定治具と、前記プリント配線板の所望の位置へ移動し前記プリント配線板の検査ポイントの近傍に当接することによって、前記プリント配線板を保持する保持用プローブと、前記プリント配線板の両面から前記プリント配線板上の所望の位置へ移動し、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う検査用プローブを備えることを特徴とするプリント配線板の電気検査装置というものであり、この構成により、保持用プローブでプリント配線板の検査ポイントの近傍は保持されるので、プリント配線板にはたわみ、そりは生じず検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。
【0028】
また本発明は、検査用プローブはプリント配線板の両面各々に複数本配置され、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う際に導体回路毎に検査に必要な検査用プローブを選択し、検査に不要な検査用プローブを保持用プローブとするプリント配線板の電気検査装置というものであり、この構成により、保持用プローブを特別に設置する必要がなく検査用プローブを保持用プローブとして兼用することができ効率的に活用できる。
【0029】
また本発明は、検査用プローブと保持用プローブを連動して対をなして移動させ、前記保持用プローブは前記検査用プローブが検査を行うために当接する箇所と同じ箇所をプリント配線板の裏面から支えるように当接させるプリント配線板の電気検査装置というものであり、この構成により、プリント配線板に検査用プローブを当接させた時に裏面からの支えによって十分な接触を得ることができる。
【0030】
また本発明は、先端を保持用プローブと検査用プローブに交換可能としたプローブをプリント配線板の両面各々に複数本配置するプリント配線板の電気検査装置というものであり、この構成により、プローブを効率的に検査用プローブおよび保持用プローブとして活用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、プリント配線板を電気検査装置に固定する際に、プリント配線板の外周端部を固定するだけでなくプリント配線板を構成する個々の検査領域の周囲を保持部材で挟持することによって保持するので、検査用プローブが当接する検査ポイントの近傍を保持することができ、プリント配線板の検査領域にはたわみ、そりは生じず、検査用プローブを当接させた時に十分な接触を得ることができる。その結果、誤判定のない高精度なプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1、図2は本発明のプリント配線板の電気検査方法を示す概略図である。以下、図1、図2を用いて本発明のプリント配線板の電気検査方法にかかわる実施の形態1について説明する。
【0034】
本発明で用いる被検査物であるプリント配線板1は、複数の個別プリント配線板によって構成された集合プリント配線板、すなわち、1枚の集合プリント配線板に個別プリント配線板が、2行3列で6個、2行4列で8個、3行8列で24個などというように配置されたものである。例えば、150mm×110mmの個別プリント配線板を適当な間隔を設けた上で2行4列に配置し500mm×330mmの集合プリント配線板にするといった具合である。ICチップ等の部品をはんだ付けする実装工程では、集合プリント配線板を切断によって分割した後の個々の個別プリント配線板を用いるのが一般的であるが、プリント配線板の製造工程では、効率的に生産するために集合プリント配線板の状態で加工されていくのが一般的である。電気検査は、プリント配線板1の表面および必要に応じ内部に形成された導体回路の断線、短絡、抵抗値異常などの不具合を検出するものであり、加工工程の全工程終了後の個別プリント配線板の状態にしたもので行うのも有効であるが、目的によっては加工工程の途中で集合プリント配線板の状態で行うのも有効である。導体回路の内、ソルダレジストによって被覆される部分を検査ポイントとする場合は、導体回路形成後でソルダレジスト形成前という加工工程の途中で検査を行うことになり、この場合は集合プリント配線板の状態でなければならない。また、適宜選択した途中の加工工程にて集合プリント配線板の状態で検査を行い、不良と判定した集合プリント配線板の全体もしくは一部を後の加工工程で加工を行わないことによって無駄な加工費を節約する場合もある。
【0035】
本発明はまずはじめにプリント配線板1を複数の検査領域2に分割する。これは次に示すとおり、検査領域2の周囲を保持するために必要な作業であり、実際に切断するのではなく複数の検査領域2を予め設定しておいて検査領域2毎に電気検査を行うためのものである。プリント配線板1は先に述べたとおり複数の個別プリント配線板によって構成された集合プリント配線板であるので、各々の個別プリント配線板を検査領域2として設定するのが一般的である。個別プリント配線板のサイズが小さい場合は隣接した複数の個別プリント配線板をまとめて一つの検査領域2としてもよい。例えば4行8列で32個の個別プリント配線板によって構成された集合プリント配線板の場合、2行4列で8個の個別プリント配線板を一つの検査領域2とすることにより、2行2列の4つの検査領域2を設定することができる。ここでは検査領域2内に含まれる個別プリント配線板の数をいくつにするかによって設定した検査領域2の数が違ってくる。多くの検査領域2に分けることにより本発明の効果が高まるが、その反面作業の手間が掛かることになる。検査領域2の数をいくつに設定すればよいかは、本発明が目的とする効果の度合いと手間との兼ね合わせを考慮して適宜選択すればよい。
【0036】
次に図1に示すとおり、開口部4a、4bを設けた平面板3a、3bを用意する。開口部4a、4bは検査領域2aと略同一の形状および略同一の寸法かあるいは検査領域よりもやや大きい目にすればよい。そしてプリント配線板1を表裏の両面から平面板3a、3bで検査領域2aと開口部4a、4bの位置が一致するように位置合わせして挟持する。この時、予め平面板3a、3bはプリント配線板1と外形寸法を略同一にしておき開口部4a、4bは検査領域2aと同位置になるように加工しておけば、平面板3a、3bとプリント配線板1との位置合わせは端面を揃えるだけで容易に行うことができる。
【0037】
このように平面板3a、3bで挟持したプリント配線板1は、次に図2に示すように検査装置に固定する。図2は検査装置の中で説明に必要な主要部分を模式的に示したものである。平面板3a、3bで挟持したプリント配線板1を、平面板3a、3bと端面を揃えたまま垂直方向に立てた状態にし、対向した辺の両端部を固定治具5で固定する。図2では上辺を固定治具5a、5bで固定し、これに対向した下辺を固定治具5c、5dで固定した例を示した。固定治具5のチャッキング部はバネ式やネジ式などの周知の方法を用いればよい。固定治具5の本数は図2の例にこだわるものではなく、1つの辺に3本以上としてもよく、辺全体にわたるような幅が広いものを用いてもよい。また固定場所は上下2辺ではなく左右2辺でもよいし、4辺とも固定してもよい。
【0038】
以上のような構成でプリント配線板1を検査装置に固定することによって、プリント配線板1の検査領域2aの周囲を含む部分を平面板3a、3bで挟持することで保持することができるので、検査領域2aは平面板により平面状態が確保され、たわみ、そりは生じない。次にプリント配線板1の手前側に設置された検査用プローブ6a、6bとその反対面側に設置された検査用プローブ6c、6dをコンピューター制御によって次々と連続的に検査領域2aの所定の検査ポイントに移動、当接し、電気信号を検出することによって検査を行う。そして検査用プローブ6を介してプリント配線板1から得られた電気信号により合否を判定する。検査領域2a内にはたわみ、そりは生じないので検査用プローブ6を当接させた時に十分な接触を得ることができる。検査領域2a内の予定した全ての検査ポイントに対してこの動作が終了すれば第一番目の検査領域2a内の検査が完了する。
【0039】
次に別の検査領域2を検査するために、平面板3を別の検査領域2に対応した箇所に開口部4を設けたものに交換し、第一番目の検査領域2aに対して行ったのと同様の方法により検査領域2b〜2dに対して検査を行う。これを全ての検査領域2にわたって繰り返すことでプリント配線板1の全ての検査が完了する。
【0040】
なお、上記の動作と同時にプリント配線板1を固定した固定治具5によりプリント配線板1に張力を与えることでたわみ、そりを一層確実に防止することも可能である。
【0041】
また、プリント配線板1が持っている元々のそりが大きい場合には、平面板およびプリント配線板を辺の部分のみで固定するだけでは中央部付近において平面板とプリント配線板との間に生じる隙間が原因となってたわみ、そりが発生する可能性がある。このことを防止するために平面板3の中央部付近の検査領域2の周囲の一部を含む部分に剥離可能な接着剤を付与する等の方法により平面板とプリント配線板を固定するのも有効である。この接着剤は流動性のものでもよいし、テープの両面に接着剤の層を設けたタイプのものでもよい。外し易く接着剤が残らないという面ではシリコン性粘着テープが良好であった。
【0042】
また、プリント配線板1は本実施の形態で示したように検査装置に垂直方向に立てた状態で固定するほうがたわみ、そりを防止するためには好ましいが、水平方向にしたほうがプローブの移動方向の多くは水平方向となり重力に逆らった上下の動きは少なくて済むので、検査装置の駆動部の負荷を低減する場合にはこちらのほうが好ましい。
【0043】
さらに、本実施の形態1では1枚の平面板3に開口部4は1つだけ形成した例を示したが、例えば千鳥の配置になるように隣接しない検査領域2に対応した複数の開口部4を形成してもよいし、検査領域2の間隔が比較的大きければ隣接した検査領域2に対応する開口部4を形成してもよい。1枚の平面板3に形成する開口部4の数を多くすることにより平面板3を交換する切り替え作業を減らすことができる。これらのことについてはプリント配線板1の検査領域2の平面状態と、たわみ、そりが防止されていることを検証しながら適宜選択すればよい。
【0044】
(実施の形態2)
次に、プリント配線板1の検査領域2の保持方法として、実施の形態1での平面板3に替えて、検査領域2よりも一回り大きい程度の大きさの枠状のものを保持部材として用いる方法を図3を用いて説明する。本実施の形態2に係る電気検査装置は、固定治具5と、枠状の保持部材7と、検査用プローブ6を備え、枠状の保持部材7はプリント配線板1に複数の検査領域2を形成するためにプリント配線板1内の任意の場所へ移動可能な機構を有する。この装置を用い、本実施の形態2では、プリント配線板1のみを直接、固定治具5に固定し、そしてプリント配線板1の両面に各々設置された駆動部を有する枠状の保持部材7を、プリント配線板1の検査領域2を囲むように両面からプリント配線板1を挟持することによって保持する。枠の大きさは開口部が検査領域2と略同一形状で略同一もしくはそれ以上の大きさであればよい。プリント配線板1の製品毎に回路パターンの図柄が異なり、したがって検査領域2の形状、大きさが異なるので、予め製品毎に、その製品の検査領域2の大きさに合った大きさの枠を準備しておき、検査時に保持部材7先端の枠の部分を取替えればよい。なお、プリント配線板1を挟持するためには両面に設置する2つの枠の形状、大きさは同一でなければならず、またプリント配線板1に当接する時に2つの枠は同じ位置に位置合わせしなければならない。以上のような構成でプリント配線板1は、枠状の保持部材7で検査領域2の周囲が保持されるので、検査領域2は平面状態が維持され、たわみ、そりは発生しない。その後、実施の形態1と同様の方法により検査用プローブ6を連続的に検査領域2の所定の検査ポイントに移動、当接し、電気信号を検出することによって検査を行っていき、検査領域2内の予定した全ての検査ポイントに対してこの動作が終了すれば第一番目の検査領域2内の検査が完了する。
【0045】
続いて次に検査を行う他の検査領域2へ保持部材7を移動させ、先程と同様に検査領域2を囲むように両面からプリント配線板1を挟持することによって保持し、同様に検査を行う。これを全ての検査領域2にわたって繰り返すことでプリント配線板1の全ての検査が完了する。
【0046】
本実施の形態2によれば、実施の形態1のように1枚のプリント配線板1を検査するために途中で検査領域2毎に平面板3を取り替えるなどの人による作業を必要とせず、全て自動動作で行うことができるという利点がある。
【0047】
なお、本実施の形態2では保持部材は検査領域2の周囲を囲む枠状の形状としたが、周囲全体を囲む必要はなく、4隅や、対向する2辺などというように、検査領域2の周囲の一部を保持する機能を有すれば同様の効果を発揮することができる。
【0048】
(実施の形態3)
次にプリント配線板1の保持方法として、保持部材で検査領域2の周囲を挟持する方法に替えて、保持用プローブ8をプリント配線板1に当接することによってプリント配線板1を保持する方法を図4を用いて説明する。本実施の形態3に係る電気検査装置は、固定治具5と、保持用プローブ8と、検査用プローブ6によって構成されている。この装置を用い、本実施の形態3に係る電気検査方法は、実施の形態1、2のように平面板3もしくは枠状の保持部材7で検査領域2の周囲を挟持することにより検査領域2の平面状態を確保するというのとは異なり、検査用プローブ6が当接する検査ポイントの近傍に保持用プローブ8を当接させるというものである。これにより、プリント配線板1の検査ポイント近傍にたわみ、そりが生じていた場合でも、保持用プローブ8がプリント配線板1に当接することで直接、矯正することができる。保持用プローブ8が当接する面は、検査用プローブ6が当接する面と同一面でも有効であるが、反対面のほうが検査ポイント近傍のたわみ、そりを矯正すると同時に、検査用プローブ6が当接するときに裏面からの支えとしての機能も発揮することができるのでなお有効である。
【0049】
検査用プローブ6の動作としては実施の形態1と同様にプリント配線板1の手前側に設置された検査用プローブ6a、6bをコンピューター制御によって次々と連続的にプリント配線板1の所定の検査ポイントに移動、当接させていく。このとき、保持用プローブ8は検査用プローブ6の動きに連動して連続的に検査用プローブ6の近傍へ移動させてもよいし、一定のポイントに当接させておいてそこからある決められた距離内に位置する検査ポイントを検査する間はそのままとしておき、そこから外れる場合は別の場所に移動して再び当接させるという方法をとってもよい。ただし言うまでもなく、保持用プローブ8は検査用プローブ6が検査ポイントに当接するときに邪魔にならないようにする必要があるので、そのための移動は最低でも必要となってくる。なお保持用プローブ8の数は、図4に示すとおり検査用プローブ6と保持用プローブ8を同じ数だけ設置し、検査用プローブ6aに保持用プローブ8aを検査用プローブ6bに保持用プローブ8bを対応させ、これらが連動して対をなして移動してもよいし、表裏各1つあるいはどちらか一方に1つとしてもよい。プリント配線板1のたわみ、そりの発生度合いや製品密度によって適宜選択すればよい。
【0050】
連動して対をなして移動させる場合は、保持用プローブ8は検査用プローブ6が当接する箇所と同じ箇所をプリント配線板1の裏面から支えるのがより効果的である。さらに保持用プローブ8の先端は平面形状とするほうがプリント配線板1の平面状態を確保できるので望ましい。
【0051】
以後は実施の形態1、2と同様に検査用プローブ6を介してプリント配線板1の各検査ポイントから得られた電気信号により合否を判定する。プリント配線板1にはたわみ、そりは矯正されているので検査用プローブ6を当接させた時に十分な接触を得ることができる。予定した全ての検査ポイントに対してこの動作が終了すれば検査が完了する。
【0052】
なお、本実施の形態3と実施の形態1または2とを組合せ、平面板3や枠状の保持部材7でプリント配線板1の検査領域2の平面状態を確保し、さらに保持用プローブ8で検査領域2内のたわみ、そりを矯正するという方法も可能である。
【0053】
(実施の形態4)
さらにプリント配線板1の両面に配置した複数の検査用プローブ6a、6bおよび6c、6dの内、複数の導体回路を連続的に検査する際に、導体回路毎に検査に必要な検査用プローブ6を選択し、検査に不要な検査用プローブ6を保持用プローブとして使用する方法も有効である。導体回路はそれぞれの両端にある2つの検査ポイントに検査用プローブ6を当接して検査されるが、この2つの検査ポイントはプリント配線板の同一面にある場合もあるが、互いに反対面にある場合もある。したがって、検査用プローブ6は最低限、両面に2本ずつ配置する必要がある。さらに検査用プローブ6の数を多くして検査速度を向上することもできるが、最小数で抑えた場合は、両面に各2本、合計4本となる。本実施の形態4は、両面に配置した4本のプローブの内、2本は検査用プローブ6として使用し、残りの検査に不要な2本のプローブを保持用プローブ6として使用するというものである。例えば2つの検査ポイントが同一面にあって検査用プローブ6a、6bを使用する場合は、反対面のプローブ6c、6dを保持用プローブとして使用し、また、2つの検査ポイントが異なった面にあって検査用プローブ6a、6cを使用する場合は、残りのプローブ6b、6dを保持用プローブとして使用するといった具合である。この方法によれば検査に最低限必要な本数の検査用プローブ6のみを使用し、導体回路毎に検査に不要な残りのプローブを保持用プローブとして効率的に活用することができる。
【0054】
検査用プローブ6の選定以外の内容は実施の形態3と同様である。
【0055】
なお、本実施の形態3と同様に、本実施の形態4と実施の形態1または2とを組合せ、平面板3や枠状の保持部材7でプリント配線板1の検査領域2の平面状態を確保し、さらに保持用プローブで検査領域2内のたわみ、そりを矯正するという方法も可能である。
【0056】
(実施の形態5)
次に、前記実施の形態3における検査用プローブ6と保持用プローブ8を連動して対をなして移動させる場合をさらに発展させた実施の形態を説明する。
【0057】
実施の形態4で示したように検査用プローブ6の数は最低で両面2本ずつ、合計4本必要であるので、保持用プローブ8も最低で両面2本ずつ、合計4本必要となり、検査用プローブ6と保持用プローブ8を別々に用意すれば合わせて8本のプローブが必要となる。そこで本実施の形態5では次の手順により効率化を図る。
【0058】
予めプローブとしては先端を交換することによって検査用プローブ6と保持用プローブ8に切り替え可能なものを両面2本ずつ、合計4本配置しておく。検査に先立って検査を行う導体回路の両端の2つの検査ポイントがプリント配線板1のどちらの面に位置するかによって、両方共プリント配線板1の第1面に位置する第1の導体回路群と、両方共プリント配線板1の第2面に位置する第2の導体回路群と、互いにプリント配線板1の異なった面に位置する第3の導体回路群に分類し、各導体回路群毎にプローブの先端を適宜交換して検査を行う。第1の導体回路群を検査するときは、検査ポイントは両方共プリント配線板1の第1面に位置するので、これに対応して第1面側に配置したプローブに検査用プローブ6を装着し、残りの第2面側に配置したプローブには保持用プローブ8を装着する。所定のプローブを装着できれば検査用プローブ6をコンピューター制御によって次々と連続的に所定の検査ポイントに移動、当接し、同時に保持用プローブ8は検査用プローブ6が当接する箇所と同じ箇所をプリント配線板1の裏面から支えるように当接させる。そして検査用プローブ6を介してプリント配線板1から得られた電気信号により合否を判定する。予定した全ての検査ポイントに対してこの動作が終了すれば第1の導体回路群の検査が完了する。以下同様の方法により、プローブの先端を所定のプローブに交換した後に第2の導体回路群、第3の導体回路群と検査を繰り返し、プリント配線板1の全ての検査が完了する。
【0059】
この方法によれば、検査に最低限必要な本数のプローブを効率的に活用し、検査用プローブ6、保持用プローブ8として使用することができる。
【0060】
なお、第1、第2、第3の回路群をどの順番に検査してもよいことは言うまでもない。また、製品の回路配置によっては上記第1、第2、第3の内いずれか1つまたは2つの回路群の検査を省略する場合もあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように本発明のプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置は、検査治具を必要としない検査用プローブを連続的に移動させて検査ポイントに当接させるプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置において、薄型あるいはフレキシブルタイプのプリント配線板に対しても、たわみ、そりが生じずに検査を行うことができ、パソコン、移動体通信機器、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の各種電子機器に用いられるプリント配線板の電気検査方法およびプリント配線板の電気検査装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のプリント配線板の電気検査方法を示す概略図
【図2】本発明のプリント配線板の電気検査方法を示す概略図
【図3】本発明のプリント配線板の電気検査方法を示す概略図
【図4】本発明のプリント配線板の電気検査方法を示す概略図
【符号の説明】
【0063】
1 プリント配線板
2 検査領域
3(3a、3b) 平面板
4(4a、4b) 開口部
5(5a、5b、5c、5d) 固定治具
6(6a、6b、6c、6d) 検査用プローブ
7(7a、7b) 保持部材
8(8a、8b) 保持用プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板を複数の検査領域に分割し、前記検査領域の周囲の一部を含む領域をプリント配線板の両面から保持部材で挟持することによって保持し、前記検査領域の両面に検査用プローブを当接させ導体回路を検査し、これを繰り返して分割した前記検査領域を順次検査していくことを特徴とするプリント配線板の電気検査方法。
【請求項2】
保持部材は検査領域に対応した部分に開口部を形成した平面板である請求項1に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項3】
開口部は検査領域と略同一形状かつ略同一寸法である請求項2に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項4】
平面板は外形寸法がプリント配線板と略同一である請求項2に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項5】
検査領域の周囲の一部を含む部分において、平面板とプリント配線板を剥離可能な接着剤で固定する請求項2に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項6】
プリント配線板の対向した辺の両端部を固定治具で固定する請求項1に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項7】
プリント配線板の対向した辺の両端部を固定治具によりプリント配線板に張力を与える請求項6に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項8】
プリント配線板を垂直方向に立てた状態で行う請求項1に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項9】
プリント配線板を水平方向の状態で行う請求項1に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項10】
一つの検査領域内の検査が終了した後、プリント配線板と保持部材を相対的に移動させ、別の検査領域を検査する請求項1に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項11】
プリント配線板の検査ポイントの近傍に保持用プローブを当接することによってプリント配線板を保持し、プリント配線板の両面から検査ポイントに検査用プローブを当接させ導体回路を検査することを特徴とするプリント配線板の電気検査方法。
【請求項12】
プリント配線板の両面各々に複数の検査用プローブを配置し、複数の導体回路を連続的に検査する際、導体回路毎に検査に必要な検査用プローブを選択し、検査に不要な検査用プローブを保持用プローブとする請求項11に記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項13】
検査用プローブが当接する測定ポイントに対応した箇所をプリント配線板の裏面から保持用プローブを当接することにより支える請求項11記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項14】
保持用プローブの先端が平面形状である請求項13記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項15】
先端が検査用プローブと保持用プローブに交換可能なプローブをプリント配線板の両面に各2本合計4本配置し、検査を行う導体回路両端の2つの検査ポイントが、両方共プリント配線板の第1面に位置する第1の導体回路群と、両方共プリント配線板の第2面に位置する第2の導体回路群と、互いにプリント配線板の異なった面に位置する第3の導体回路群に分類し、各導体回路群毎に各導体回路の2つの検査ポイントのそれぞれが位置する面と同一面側に配置した2つのプローブに検査用プローブを、残りの2つのプローブに保持用プローブをそれぞれ装着した後に検査する請求項13記載のプリント配線板の電気検査方法。
【請求項16】
プリント配線板を装置本体内に固定する固定治具と、前記プリント配線板の両面に配置され、前記プリント配線板の検査領域の周囲を挟持することによって保持する枠状の保持部材と、前記プリント配線板の両面から前記検査領域内の所望の位置へ移動し、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う検査用プローブを備え、前記保持部材は前記プリント配線板に複数の検査領域を形成するために前記プリント配線板面内の任意の場所へ移動可能な機構を有することを特徴とするプリント配線板の電気検査装置。
【請求項17】
プリント配線板を装置本体内に固定する固定治具と、前記プリント配線板の所望の位置へ移動し前記プリント配線板の検査ポイントの近傍に当接することによって、前記プリント配線板を保持する保持用プローブと、前記プリント配線板の両面から前記プリント配線板上の所望の位置へ移動し、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う検査用プローブを備えることを特徴とするプリント配線板の電気検査装置。
【請求項18】
検査用プローブはプリント配線板の両面各々に複数本配置され、検査ポイントに対して連続的に当接して検査を行う際に導体回路毎に検査に必要な検査用プローブを選択し、検査に不要な検査用プローブを保持用プローブとする請求項17記載のプリント配線板の電気検査装置。
【請求項19】
検査用プローブと保持用プローブを連動して対をなして移動させ、前記保持用プローブは前記検査用プローブが検査を行うために当接する箇所と同じ箇所をプリント配線板の裏面から支えるように当接させる請求項17記載のプリント配線板の電気検査装置。
【請求項20】
先端を保持用プローブと検査用プローブに交換可能としたプローブをプリント配線板の両面各々に複数本配置する請求項17記載のプリント配線板の電気検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−39725(P2008−39725A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218062(P2006−218062)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】