説明

プリント配線板への実装部品の仮固定構造およびこの仮固定構造を用いたプリント配線板の搬送体

【課題】実装部品をプリント配線板に仮固定する際の時間を短縮することにより、作業効率および生産効率を向上するプリント配線板への実装部品の仮固定構造を提供する。
【解決手段】プリント配線板Pの実装面3には実装穴1が形成されており、実装部品Xのリード2が実装穴1に挿通される。プリント配線板Pは搬送体Hの載置部5に載置される。搬送体Hにはプリント配線板Pに対向する支持部材8が設けられており、支持部材8には解除位置から固定位置まで回転する回転部材13が設けられる。回転部材13には、実装部品Xの第1の面16に臨む第1挟持部14と、第1の面16に対向する第2の面17に臨む第2挟持部15が設けられる。回転部材13が解除位置から固定位置まで回転すると、第1挟持部14と前記第1の面16との間に形成される空隙、および第2挟持部15と第2の面17との間に形成される空隙が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に集積回路や抵抗器等の実装部品をプリント配線板にハンダ付けする際の、実装部品の仮固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板の製造にあたっては、プリント配線がなされたプリント配線板に集積回路や抵抗器、あるいはROM等のさまざまな電子部品からなる実装部品を実装する。このとき、プリント配線板のプリント配線上に形成された多数の実装穴に、実装部品のリードを挿通した状態で実装穴をハンダ付けすることで、実装部品をプリント配線板に接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−216931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように実装部品をプリント配線板にハンダ付けする際に、実装部品の形状によっては、プリント配線板に対して実装部品が傾いた状態でハンダ付けされてしまう可能性がある。例えば、実装部品がプリント配線板の垂直方向に高さを有している場合には、実装穴にリードを挿通しただけでは、自重によって実装部品がプリント配線板に対して傾斜してしまう。このように、実装部品がプリント配線板に対して傾斜した状態でハンダ付けをしてしまうと、接合強度が弱まって容易に脱落してしまったり、あるいは、接触不良を起こしてしまったりという問題が生じる。
そのため、傾斜する可能性がある実装部品をプリント配線板にハンダ付けする際には、実装部品が垂直に維持されるように仮固定をしなければならない。こうした実装部品の仮固定を人手によって行う場合には、作業者が所定の治具を用いることとなるが、現状の治具では仮固定作業に時間がかかり、作業効率および生産効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、実装部品をプリント配線板に仮固定する際の時間を短縮することにより、作業効率および生産効率を向上するプリント配線板への実装部品の仮固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、プリント配線板への実装部品の仮固定構造であって、実装面に形成された実装穴に実装部品のリードが挿通されたプリント配線板を載置する載置部と、該載置部に載置された前記プリント配線板の実装面に対して略平行を維持した状態で少なくとも解除位置から固定位置まで回転する回転部材と、該回転部材に設けられ、該回転部材が前記解除位置にあるとき、前記実装面に対して起立して位置する実装部品の第1の面に空隙を維持して臨む第1挟持部、および、前記第1の面に対向する第2の面に空隙を維持して臨む第2挟持部と、を備え、前記回転部材が解除位置から固定位置まで回転したとき、前記第1挟持部と前記第1の面との間に形成される空隙、および前記第2挟持部と前記第2の面との間に形成される空隙が小さくなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記実装部品の第1の面と前記第1挟持部との間に形成される空隙、および前記第2の面と前記第2挟持部との間に形成される空隙の差が、前記回転部材の回転位置に関わらず一定となることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記解除位置から固定位置への回転方向に対する回転部材の回転を前記固定位置で抑止する抑止部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記回転部材が固定位置にあるとき、前記第1挟持部および第2挟持部の双方が、前記実装面に対して垂直に起立した実装部品の第1の面および第2の面に接触することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、プリント配線板の搬送体であって、実装面に形成された実装穴に実装部品のリードが挿通されたプリント配線板を載置する載置部と、該載置部に載置された前記プリント配線板の実装面に対して略平行を維持した状態で少なくとも解除位置から固定位置まで回転する回転部材と、該回転部材に設けられ、該回転部材が前記解除位置にあるとき、前記実装面に対して起立して位置する実装部品の第1の面に空隙を維持して臨む第1挟持部、および、前記第1の面に対向する第2の面に空隙を維持して臨む第2挟持部と、を備え、前記回転部材が解除位置から固定位置まで回転したとき、前記第1挟持部と前記第1の面との間に形成される空隙、および前記第2挟持部と前記第2の面との間に形成される空隙が小さくなることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記実装部品と非接触状態を維持して前記プリント配線板の実装面に臨む支持部材を備え、該支持部材に前記回転部材が回転自在に支持されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記実装部品の第1の面と前記第1挟持部との間に形成される空隙、および前記第2の面と前記第2挟持部との間に形成される空隙の差が、前記回転部材の回転位置に関わらず一定となることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記支持部材には、前記解除位置から固定位置への回転方向に対する回転部材の回転を前記固定位置で抑止する抑止部を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記回転部材が固定位置にあるとき、前記第1挟持部および第2挟持部の双方が、前記実装面に対して垂直に起立した実装部品の第1の面および第2の面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転部材を回転させるだけでプリント配線板に対する実装部品の傾斜を所定の許容範囲まで補正することができ、また、この許容範囲内で実装部品を仮固定することができる。したがって、実装部品の仮固定に要する作業時間を短縮して、作業効率および生産効率を向上することができる。
【0016】
特に請求項2および請求項7に記載の発明によれば、実装部品がプリント配線板に対して垂直を維持した状態から一方の側に傾いたときの許容範囲と、他方の側へ傾いたときの許容範囲とを等しくすることができる。
【0017】
特に請求項3および請求項8に記載の発明によれば、回転部材が固定位置よりもさらに回転してしまい、実装部品に対して第1挟持部または第2挟持部が強く接触するといった不具合が生じることがない。したがって、誤って回転部材を必要以上に回転させてしまい、実装部品を傷つけたり、かえって傾きを助長させてしまったりすることがない。
【0018】
特に請求項4および請求項9に記載の発明によれば、実装部品の傾きの許容範囲が極めて小さくなるので、実装部品の傾きのばらつきを小さくすることができる。
【0019】
特に請求項6に記載の発明によれば、実装面に臨んで回転部材が位置するので、リードを実装穴に挿通する作業と、実装部品の仮固定作業とを一連の工程で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリント配線板に実装部品を実装した状態を示す斜視図である。
【図2】搬送体の斜視図である。
【図3】搬送体にプリント配線板が載置された状態を示す斜視図である。
【図4】搬送体にプリント配線板が載置されて固定された状態を示す斜視図である。
【図5】回転部材が解除位置にある状態を示す搬送体の部分拡大図である。
【図6】回転部材が固定位置にある状態を示す搬送体の部分拡大図である。
【図7】回転部材が解除位置にある状態を示す俯瞰図である。
【図8】回転部材が固定位置にある状態を示す俯瞰図である。
【図9】搬送装置の斜視図である。
【図10】搬送体の搬送過程を示す搬送装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、プリント配線板および実装部品を示している。プリント配線板Pは、基材に絶縁性を有する樹脂を含浸した基板であり、不図示の導電体によって回路配線が構成されている。また、プリント配線板Pには、回路配線上に多数の小径の穴からなる実装穴1が形成されている。
この実装穴1は、集積回路、抵抗器、コンデンサ、ROM等からなる実装部品Xのリード2を挿通するもので、リード2を実装穴1に挿通した状態でハンダ付けすることにより、実装部品Xがプリント配線板Pの実装面3に接合される。これにより、リード2を介して実装部品Xとプリント配線板Pに構成されるプリント配線とが接続され、プリント配線板Pの回路配線と実装部品Xとによってプリント回路が構成されることとなる。
【0022】
上記のように、実装部品Xをプリント配線板Pに接合するハンダ付けは、専用のハンダ付け装置によって行われる。図2〜図8に、実装部品Xを仮固定したプリント配線板Pを、ハンダ付け装置に搬送するための搬送体を示す。なお、実装部品Xをプリント配線板Pに仮固定した状態というのは、実装部品Xのリード2を、プリント配線板Pの実装穴1に挿通しただけで、ハンダ付けがなされていない状態のことである。
【0023】
プリント配線板Pの搬送体Hは、略正方形の薄板部材からなり、その平面部4に載置部5が一対、並列に形成されている。この載置部5は、ハンダ付けの対象となるプリント配線板Pを載置する部分であり、本実施形態においては図1に示すプリント配線板Pの外形よりも僅かに大きい形状の凹みによって構成されている。また、この載置部5を構成する凹みの厚さは、プリント配線板Pの厚さとほぼ等しくしている。したがって、載置部5にプリント配線板Pを載置した状態では、図3に示すように、平面部4の表面とプリント配線板Pの表面とが面一になる。
【0024】
図2に示すように、両載置部5には、ハンダ付け装置において実装部品Xをプリント配線板Pにハンダ付けするための貫通孔6がそれぞれ形成されている。この貫通孔6は、プリント配線板Pを載置部5に載置した際に、実装部品Xが位置する部分に形成されている。したがって、図3に示すように、載置部5にプリント配線板Pを載置すると、当該プリント配線板Pに仮固定された実装部品Xが、貫通孔6上に位置することとなる。
【0025】
搬送体Hは、当該搬送体Hをハンダ付け装置に搬送するための搬送路上を図示のx方向に搬送される。搬送体Hの平面部4には、搬送方向xに直交する方向の一直線上であって、プリント配線板Pに仮固定された実装部品Xに対向する位置に、3つの台座7が固定されている。より詳細には、平面部4において両載置部5の外側に台座7a,7aが固定されており、両載置部5,5間に台座7bが固定されている。
そして、台座7a,7aには、ヒンジを介して支持部材8,8が固定される。支持部材8(図3において搬送方向xに対して右側に位置する支持部材8)は、図示の開状態から、図4に示す閉状態まで可動する。また、図3において搬送方向xに対して左側に位置する支持部材8も同様に、開状態から閉状態まで可動する。
【0026】
支持部材8は、開状態にあるときには搬送体Hの外側に向かって起立した状態で位置し、閉状態にあるときには搬送体Hの内側に位置して、プリント配線板Pに所定の間隔を維持して対面している。このとき、支持部材8の先端は、台座7bの段部9に当接しており、支持部材8とプリント配線板Pとが平行または略平行状態を維持することとなる。なお、図4に示すように、支持部材8が閉状態にあるとき、当該支持部材8とプリント配線板Pとの間隔が、実装部品Xの高さ以上になるようにしている。つまり、支持部材8が閉状態にあるときに、当該支持部材8が実装部品Xに接触しないようにしている。
【0027】
上記のように、支持部材8を開状態にして搬送体Hの外側に位置させておけば、支持部材8によってプリント配線板Pを載置部5に載置する際の作業が妨げられることがない。そして、プリント配線板Pを載置部5に載置した後に、支持部材8を閉状態にして台座7a,7b間に掛け渡すこととなるが、このとき支持部材8に設けられた押圧部材10によって、プリント配線板Pが載置部5内で移動しないように固定される。
すなわち、ハンダ付け装置において実装部品Xをハンダ付けしている最中には、プリント配線板Pが載置部5内で移動しないように、しっかりと位置決めして固定しなければならない。このとき、載置部5の形状をプリント配線板Pの外形と等しくして、プリント配線板Pを載置部5にしっかりと嵌合させることにより、ハンダ付け中にプリント配線板Pが移動しないように固定することも可能である。しかしながら、プリント配線板Pを載置部5に嵌合させることとなれば、当該プリント配線板Pと載置部5とが接触して、プリント配線板Pに傷がついてしまう。そのため、プリント配線板Pの外形よりも載置部5を僅かに大きくして余裕をもたせておかなければならず、結果として、ハンダ付けの最中に、載置部5内においてプリント配線板Pにズレが生じるおそれがある。
【0028】
そこで、このズレを防止する目的から、支持部材8には押圧部材10が設けられているのである。図5、図6に示すように、押圧部材10は、閉状態に位置する支持部材8であって、プリント配線板Pに対向する面に出没自在に設けられている。押圧部材10は、通常スプリング11の弾性力によって突出位置(最大突出量)に維持されている。押圧部材10が突出位置にある状態、すなわち、押圧部材10の最大突出量は、支持部材8が閉状態にあるときの当該支持部材8とプリント配線板Pとの対向面間の距離以上となっている。したがって、プリント配線板Pを載置部5に載置した後に、支持部材8を開状態から閉状態へと可動させると、その可動の過程で、支持部材8の先端がプリント配線板Pの実装面3に接触する。このとき、支持部材8をプリント配線板Pに近づけるように軽く押しつけるとともに、支持部材8の先端を台座7bの段部9に当接させると、プリント配線板Pの実装面3によって、押圧部材10が支持部材8内に没入していく。ここで、台座7bに設けられた掛け止め部材12を、図3に示す状態から図4に示す状態まで回転させて、支持部材8の跳ね上がりを抑止すれば、スプリング11の弾性力によって押圧部材10がプリント配線板Pの実装面3に押し付けられ、当該プリント配線板Pがしっかりと載置部5内に固定される。
【0029】
また、支持部材8には、本発明の最大の特徴である実装部品Xの傾きを防止する回転部材13が回転自在に軸支されている。そして、この回転部材13には、載置部5に載置されたプリント配線板Pに向かって突出するとともに、図示のとおりに実装部品Xに臨む第1挟持部14および第2挟持部15が設けられている。
本実施形態においては、実装部品Xが、搬送体Hの搬送方向xに沿ってプリント配線板Pに実装される。回転部材13の軸中心は、実装部品Xの幅方向の厚さ(搬送体Hの搬送方向xに直交する方向の厚さ)の中心に一致しており、搬送方向xに直交する方向に臨む実装部品Xの第1の面16に上記第1挟持部14が臨んで位置し、この第1の面16の反対面である第2の面17に上記第2挟持部15が臨んで位置する。
【0030】
また、支持部材8には、切り欠き18が形成されており、この切り欠き18内に第1挟持部14が位置している。そして、回転部材13を回転させると、この回転部材13の回転に伴って第1挟持部14が円弧状の軌跡を描くこととなるが、この回転過程において第1挟持部14が切り欠き18の抑止部18a,18bに当接する。したがって、回転部材13の回転は、第1挟持部14が抑止部18a,18bに当接する範囲内に限られることとなる。言い換えれば、切り欠き18に設けられた抑止部18a,18bがストッパーとして機能し、回転部材13の回転が所定の範囲内に限られることとなる。
なお、第1挟持部14が抑止部18aに当接した状態が回転部材13の解除位置であり、第1挟持部14が抑止部18bに当接した状態が回転部材13の固定位置となる。
【0031】
図7は、回転部材13が解除位置にある状態を示す俯瞰図であり、図8は、回転部材13が固定位置にある状態を示す俯瞰図である。図7、図8に示すように、第1挟持部14は、回転部材13の回転位置に拘わらず、つまり、回転部材13の解除位置から固定位置までの全ての回転可能位置において、実装部品Xの第1の面16に空隙を維持して臨んでいる。同様に、第2挟持部15は、回転部材13の回転位置に拘わらず、回転部材13の解除位置から固定位置までの全ての回転可能位置において、実装部品Xの第2の面17に空隙を維持して臨んでいる。そして、回転部材13を解除位置から固定位置まで回転させると、第1挟持部14と実装部品Xの第1の面16との間に形成される空隙、および第2挟持部15と実装部品Xの第2の面17との間に形成される空隙が、徐々に小さくなる。
このとき、実装部品Xがプリント配線板Pに対して垂直に起立していれば、常に第1挟持部14と実装部品Xの第1の面16との間に形成される空隙、および第2挟持部15と実装部品Xの第2の面17との間に形成される空隙は、その大きさが同じになる。
【0032】
そして、回転部材13が図8に示す固定位置にあるとき、実装部品Xがプリント配線板Pに対して垂直に起立していれば、第1挟持部14と第1の面16との間の空隙、および、第2挟持部15と第2の面17との間の空隙が極めて小さくなる。本実施形態においては、これらの空隙を0.5mmとしているが、空隙を完全になくして、第1挟持部14が第1の面16に、第2挟持部15が第2の面17に僅かに(軽く)接触するようにしても構わない。
このように、回転部材13が固定位置にあるときの、第1挟持部14と第1の面16との間の空隙、および第2挟持部15と第2の面17との間の空隙は、プリント配線板Pに対する実装部品Xの傾斜角度の許容範囲を示している。したがって、回転部材13が固定位置にあるときに、両挟持部14,15が両面16,17にそれぞれ接触するようにすれば、ハンダ付け装置においてハンダ付けする際に、実装部品Xが傾くことなく確実に垂直に維持されることとなる。
【0033】
なお、回転部材13は、実装部品Xを許容範囲の起立角度に保つのみならず、プリント配線板Pに対する傾斜角を補正する機能をも有している。すなわち、プリント配線板Pが載置部5に載置された際に、実装部品Xが大きく傾いている場合には、回転部材13を解除位置から固定位置まで回転させることにより、実装部品Xの傾きを許容範囲まで補正することができる。例えば、実装部品Xが図7中左側に大きく傾いているとする。この状態で、回転部材13を解除位置から固定位置まで回転させると、その回転過程で第1挟持部14が実装部品Xの第1の面16に当接するとともに、第1の面16を図中右側に押しながら実装部品Xの傾きを許容範囲まで補正することとなる。
なお、抑止部18a,18bを設けずに、あるいは回転部材13の回転可能範囲をより広くして、両挟持部14,15を実装部品Xの両面16,17に当接させるようにしても構わない。このようにしても、上記と同様に、実装部品Xの傾きの補正と、実装部品Xの起立角度を許容範囲内に保つという機能を実現することができる。
【0034】
ただし、抑止部18a,18b(特には抑止部18b)を設け、両挟持部14,15が両面16,17に僅かな空隙を維持するか僅かに接触したところで、それ以上の回転を抑止するようにすれば、実装部品Xの破損を予防するとともに、仮固定作業を容易化することができる。すなわち、回転部材13を解除位置から回転させたときに、仮に抑止部18bがないと、両挟持部14,15が実装部品Xの両面16,17にそれぞれ当接したところで、回転部材13の回転が規制される。このとき、回転部材13を回転させすぎてしまうと、両挟持部14,15によって、回転部材13と同一方向の回転力が実装部品Xに付与される。ところが、実装部品Xは、プリント配線板Pに形成された実装穴1にリード2が挿入されているため、上記のようにして回転力が付与されると、リード2が捩じれて破損してしまう。そのため、両挟持部14,15が両面16,17に僅かに接触したところで回転部材13の回転を停止するように、注意深く回転部材13を回転させなければならない。これに対して、本実施形態のように、抑止部18a,18bが設けられていれば、回転部材13が回転しすぎてしまうことがないので、上記のように実装部品Xが破損してしまうこともなく、また、仮固定作業も容易となる。
【0035】
なお、本実施形態においては、回転部材13の軸中心を、実装部品Xの幅方向の厚さ(搬送体Hの搬送方向xに直交する方向の厚さ)の中心に一致させることにより、第1挟持部14と実装部品Xの第1の面16との間の空隙と、第2挟持部15と実装部品Xの第2の面17との間の空隙とが常に同じになるようにしている。これにより、実装部品Xの傾きの許容範囲を両方向で等しくすることができるが、この許容範囲は必ずしも両方向で等しくなければならないわけではない。許容範囲が両方向で異なっても構わないのであれば、回転部材13の軸中心を僅かにずらして、第1挟持部14と実装部品Xの第1の面16との間の空隙と、第2挟持部15と実装部品Xの第2の面17との間の空隙とが異なる大きさとなっても構わない。
【0036】
次に、図9、図10を用いて、搬送体Hをハンダ付け装置に搬送するための搬送装置について説明する。
搬送装置50は、モータ等の駆動源によって駆動する無端ベルトからなる搬送帯51を有している。この搬送帯51上に載置された搬送体Hは、搬送帯51の駆動により図中x方向に搬送されるが、この搬送帯51の両側にはガイド52,52が平行に設置されている。
また、搬送帯50は、不図示のハンダ付け装置内に進入しており、搬送帯50に載置されたプリント配線板Pは、搬送体Hとともに搬送帯50に載置されたままハンダ付け装置内に搬送される。
【0037】
そして、図10に示すように、両ガイド52,52には、ハンダ付け装置に進入する手前の位置に金属製の固定部材53,53が固定されている。この固定部材53は、その基端をガイド52に固定されており、ガイド52から垂直に起立した後、その先端を搬送帯51の上方に突出させている。したがって、固定部材53の先端は搬送帯51の上方に所定の間隔をもって臨むこととなるが、この固定部材53の先端には当接部材54が固定されている。この当接部材54は、円筒状の部材からなり、搬送帯51に向かって垂直に固定され、その先端が、搬送帯51上に載置されて図中x方向に搬送されている搬送体Hの回転部材13に当接するように設けられている。
【0038】
より詳細に説明すると、搬送体Hが図中x方向に搬送されている際に、当接部材54の先端が当接することによって、回転部材13を解除位置から固定位置まで回転させるとともに、回転部材13が固定位置となったところで、当接部材54と回転部材13との接触が断たれる位置関係が保たれている。
この位置関係を保つために、搬送体Hは、搬送帯51の所定の位置、特には搬送帯51の幅方向において所定の位置に載置されるようにしなければならない。したがって、搬送体Hを搬送帯51上に載置するにあたって、搬送体Hが所定の位置からずれないような機構を設けることが望ましいが、搬送体Hを載置する位置を示す印を搬送帯51に記しておくだけでも構わない。
また、当接部材54の素材は特に問わないが、例えばゴム素材のように所定の圧力が加わったときに弾性変形して、回転部材13から当接部材54が退避するようにしておけば、搬送体Hの載置位置が厳密に要求されなくなる。
【0039】
以上のように、搬送装置50に当接部材54を設けることにより、回転部材13が解除位置にあるままハンダ付け装置に搬送されてしまうことがなくなる。つまり、本実施形態の搬送装置50を用いることにより、回転部材13の仮固定作業の忘れを防止したり、あるいは作業者による仮固定作業を省いたり、さらには回転部材13の回転量を均一にしたりすることが可能となる。
これにより、作業工程を一層簡略化するとともに、実装部品Xの傾きについてのバラツキを低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
H 搬送体
P プリント配線板
X 実装部品
x 搬送体の搬送方向
1 実装穴
2 リード
3 実装面
5 載置部
8 支持部材
13 回転部材
14 第1挟持部
15 第2挟持部
16 第1の面
17 第2の面
18b 抑止部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面に形成された実装穴に実装部品のリードが挿通されたプリント配線板を載置する載置部と、
該載置部に載置された前記プリント配線板の実装面に対して略平行を維持した状態で少なくとも解除位置から固定位置まで回転する回転部材と、
該回転部材に設けられ、該回転部材が前記解除位置にあるとき、前記実装面に対して起立して位置する実装部品の第1の面に空隙を維持して臨む第1挟持部、および、前記第1の面に対向する第2の面に空隙を維持して臨む第2挟持部と、を備え、
前記回転部材が解除位置から固定位置まで回転したとき、
前記第1挟持部と前記第1の面との間に形成される空隙、および前記第2挟持部と前記第2の面との間に形成される空隙が小さくなることを特徴とするプリント配線板への実装部品の仮固定構造。
【請求項2】
前記実装部品の第1の面と前記第1挟持部との間に形成される空隙、および前記第2の面と前記第2挟持部との間に形成される空隙の差が、前記回転部材の回転位置に関わらず一定となることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板への実装部品の仮固定構造。
【請求項3】
前記解除位置から固定位置への回転方向に対する回転部材の回転を前記固定位置で抑止する抑止部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のプリント配線板への実装部品の仮固定構造。
【請求項4】
前記回転部材が固定位置にあるとき、前記第1挟持部および第2挟持部の双方が、前記実装面に対して垂直に起立した実装部品の第1の面および第2の面に接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板への実装部品の仮固定構造。
【請求項5】
実装面に形成された実装穴に実装部品のリードが挿通されたプリント配線板を載置する載置部と、
該載置部に載置された前記プリント配線板の実装面に対して略平行を維持した状態で少なくとも解除位置から固定位置まで回転する回転部材と、
該回転部材に設けられ、該回転部材が前記解除位置にあるとき、前記実装面に対して起立して位置する実装部品の第1の面に空隙を維持して臨む第1挟持部、および、前記第1の面に対向する第2の面に空隙を維持して臨む第2挟持部と、を備え、
前記回転部材が解除位置から固定位置まで回転したとき、
前記第1挟持部と前記第1の面との間に形成される空隙、および前記第2挟持部と前記第2の面との間に形成される空隙が小さくなることを特徴とするプリント配線板の搬送体。
【請求項6】
前記実装部品と非接触状態を維持して前記プリント配線板の実装面に臨む支持部材を備え、該支持部材に前記回転部材が回転自在に支持されてなることを特徴とする請求項5記載のプリント配線板の搬送体。
【請求項7】
前記実装部品の第1の面と前記第1挟持部との間に形成される空隙、および前記第2の面と前記第2挟持部との間に形成される空隙の差が、前記回転部材の回転位置に関わらず一定となることを特徴とする請求項6記載のプリント配線板の搬送体。
【請求項8】
前記支持部材には、前記解除位置から固定位置への回転方向に対する回転部材の回転を前記固定位置で抑止する抑止部を備えたことを特徴とする請求項6または7記載のプリント配線板の搬送体。
【請求項9】
前記回転部材が固定位置にあるとき、前記第1挟持部および第2挟持部の双方が、前記実装面に対して垂直に起立した実装部品の第1の面および第2の面に接触することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のプリント配線板の搬送体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−165781(P2010−165781A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5741(P2009−5741)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】