説明

プリント配線板及びその製造方法

【課題】ビアフィルめっきを行う際、表層めっき層の厚みを低減するとともに、フィルドビア上のディンプルの凹み量のばらつきを小さくする。
【解決手段】可撓性の絶縁ベース材1の表面および裏面にそれぞれ銅箔2及び3を有する両面銅張積層板4を用意し、
内側に向かう突起部を有する星形形状のメタルマスクを銅箔2に形成し、
前記メタルマスクを用いてコンフォーマルレーザー加工を行い、底面に銅箔3が露出した、横断面が前記星形形状の有底ビアホールを形成し、
前記メタルマスクの周縁部の銅箔2及びその下の絶縁ベース材1の一部を除去し、横断面が前記星形形状の下側ビアホール7aと、この下側ビアホール7aと連通し、かつ横断面が円形の上側ビアホール7bとから構成されるステップ有底ビアホール7を形成し、
電解めっき手法によりステップ有底ビアホール7内にめっき金属を充填し、フィルドビア8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、より詳しくは、フィルドビア構造を有するプリント配線板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の層間導通路を形成する方法の一つとして、ブラインドビアホール工法が用いられている。これは、所定の位置に開口した有底のビアホール(以下、有底ビアホールという。)の内壁にめっき処理を施すことにより、有底ビアホールの内壁に層間導電路となる導電性金属層を形成する方法である。しかし、有底ビアホールの底部周縁部において導電性金属層の厚さが薄くなる傾向があるため、ブラインドビアの導通信頼性が低下する虞がある。
【0003】
この問題を解決する方法として、開口した有底ビアホール内にめっき金属を充填する(フィリングするともいう。)ビアフィルめっき工法が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、従来のビアフィルめっき工法によるフレキシブルプリント配線板の製造方法を、図7を用いて具体的に説明する。
【0005】
図7は、従来技術によるビアフィルめっき工法により、フィリングされた有底ビアホール(フィルドビア構造)を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す工程断面図である。
【0006】
(1)まず、可撓性の絶縁ベース材51(例えば25μm厚)の表面および裏面にそれぞれ銅箔52及び53(各々例えば5μm厚)を有する両面銅張積層板54を用意する。そして、この両面銅張積層板54の表面に感光性ドライフィルム型のレジスト膜をラミネートする。次いで、正円形(例えばφ100μm)の露光パターンをレジスト膜に照射した後、現像を行う。これにより、正円形の開口部を有するレジスト膜を銅箔52上に形成する。
【0007】
(2)次に、正円形の開口部を有するレジスト膜をマスクにして、銅箔52のエッチングを行う。その後、レジスト膜を剥離する。これにより、図7(1)に示すように、レーザー遮光用の正円形のメタルマスク55を銅箔52に形成する。
【0008】
(3)次に、メタルマスク55よりも大きな照射範囲のレーザー光をメタルマスク55に照射し、コンフォーマルレーザー加工を行う。これにより、図7(2)に示すように、両面銅張積層板54の所定の位置に、底面に銅箔53が露呈した有底ビアホール56を形成する。
【0009】
(4)次に、有底ビアホール56内にデスミア処理を施し、樹脂残渣を除去する。その後、有底ビアホール56内に導電化処理を施し、導電化処理膜を形成する。
【0010】
(5)次に、ビアフィルめっき用添加剤を含む硫酸銅めっき液を用いて、電解めっき手法により有底ビアホール56内に銅を充填する。これにより、図7(3)に示すように、フィルドビア57が形成される。ビアフィルめっきが行われる間に、表層めっき58が銅箔52の上に形成される。この表層めっき58の厚みは、ビアフィルめっきに要する時間が長いほど大きくなる。例えば、表層めっき58の厚みは、有底ビアホール56内に十分な量の銅を充填した場合、約25μmとなる。
【0011】
また、図7(3)に示すように、フィルドビア57上にディンプル59が形成される。電子部品を実装する際、電子部品のはんだボールがディンプル59上に載置されることがある。その際、ディンプル59の凹み量が大きいと、エアギャップが発生し、電子部品との接続信頼性を損なう虞がある。このため、ディンプル59の凹み量は所定の値(例えば仕様で規定された値)よりも小さいことが求められる。
【0012】
(6)次に、図7(3)に示すビアフィリングを施した両面銅張積層板54に対して、フォトファブリケーション手法を行う。これにより、図7(4)に示すように、表層めっき58及び銅箔52を所定のパターンに加工し、回路配線パターン60を形成する。なお、フォトファブリケーション手法は、表層めっき層上のレジスト層の形成、露光、現像、エッチング及びレジスト層の剥離除去などの一連工程からなる。
【0013】
被加工導体膜(表層めっき58及び銅箔52)の厚みが約30μmと比較的大きいため、本工程で形成される回路配線パターン60のピッチを、例えば150μmよりも小さくすることは困難である。
【0014】
上述したところからわかるように、従来、ビアフィルめっき手法により有底ビアホール内に導体を充填する際、基板表面に形成される表層めっきの厚みが大きいために、微細な回路配線パターンを形成することが困難であった。
【0015】
この課題を解決するために、有底ビアホールの径を小さくして有底ビアホール内の体積を減らすことでビアフィルめっきに要する時間を短縮し、それにより、表層めっきの厚みを低減することが考えられる。しかし、径が小さくなることでフィルドビアの層間接続信頼性が低下することが懸念される。
【0016】
その他、表層めっき厚を低減する手段として、PR電解を用いるビアフィルめっき工法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、PR電解めっき用の電源は高価であり、設備投資が増加することにより製品コストが増加する懸念がある。
【0017】
また、表層めっきの厚み以外の課題として、ディンプルの凹み量のばらつきがある。ビアフィルめっき工法では、表層めっきの厚みとディンプルの凹み量が密接に関連している。電解めっきの特性上、表層めっきの厚みは、複数のプリント配線板が作製されるシート面内である程度ばらつくことが避けられない。この表層めっきの厚み分布によって、ディンプルの凹み量にもばらつきが生じる。即ち、図8に示すように、シート61において、表層めっき58が薄い箇所ではディンプル59の凹み量が大きく(図8左側)、表層めっき58が厚くなるに従ってディンプル59の凹み量は減少する(図8中央)。そして、表層めっき58がある厚さ以上になると、ディンプル59は凸状となる(図8右側)。このように凸状になると電子部品を実装する際に不安定になるため、避ける必要がある。
【0018】
上記のように、フィルドビア上のディンプルの凹み量のばらつきを小さくすることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平03−159298号公報
【特許文献2】特許第4056492号公報
【特許文献3】特開平07−336017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、表層めっき層の厚みを可及的に低減するとともに、フィルドビア上のディンプルの凹み量のばらつきを可及的に小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様によれば、絶縁層と、前記絶縁層の表面および裏面にそれぞれ第1及び第2の金属層とを有する被加工基材を用意し、内側に向かう突起部を有する第1の形状のメタルマスクを前記第1の金属層に形成し、前記メタルマスクを用いてコンフォーマルレーザー加工を行うことにより、底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が前記第1の形状である有底ビアホールを形成し、前記メタルマスクの周縁部における前記第1の金属層及びその下の前記絶縁層の一部を除去することにより、横断面が突起部を有しない第2の形状である上側ビアホールを形成し、前記有底ビアホールの下側部分に対応し、底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が前記第1の形状である下側ビアホールと、この下側ビアホールと連通する前記上側ビアホールとから構成されるステップ有底ビアホール内に、電解めっき手法によりめっき金属を充填し、前記第1の金属層と前記第2の金属層を電気的に接続するフィルドビアを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の別態様によれば、絶縁層と、前記絶縁層の表面および裏面にそれぞれ設けられた、第1及び第2の金属層と、底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が内側に向かう突起部を有する第1の形状である下側ビアホールと、前記下側ビアホールと連通し、前記下側ビアホールの径よりも大きい径を有し、横断面が突起部を有しない第2の形状である上側ビアホールとから構成され、前記第1の金属層に開口面を有する、ステップ有底ビアホールと、前記ステップ有底ビアホールに充填されためっき金属からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層を電気的に接続する、フィルドビアとを備えることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0023】
これらの特徴により、本発明は次のような効果を奏する。
【0024】
上側ビアホールと下側ビアホールから構成されるステップ有底ビアホール内にめっき金属を充填する際、下側ビアホールの横断面形状が内側に向かう突起部を有するため、ビアフィルめっきの特性によりめっき金属の析出量が増加する。したがって、従来よりも下側ビアホール内にめっき金属を充填する時間を短縮することができる。その結果、ビアフィルめっきに要する全体の時間も短縮され、第1の金属層に形成される表層めっきの厚みを低減することができる。
【0025】
さらに、上側ビアホールの径は下側ビアホールをよりも大きく、かつ上側ビアホールは突起部を有しないため、上側ビアホールを充填する際のめっき速度は、下側ビアホール内を充填するときに比べて低下する。これにより、フィルドビア上に凸部が形成されることを回避するとともに、形成されるディンプルの凹み量のばらつきを小さくすることができる。
【0026】
また、第1の形状の周長は、突起部が無い場合に比べて長くなるため、フィルドビアの熱的応力などに対する耐性が増加し、層間接続信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図1B】図1Aに続く、本発明の第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図1C】図1Bに続く、本発明の第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図1D】図1Cに続く、本発明の第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図1E】図1Dに続く、本発明の第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る有底ビアホールについて説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係るビアフィリング工程を説明するための図である。
【図4】めっき時間とビア内めっき厚の関係を示す図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態に係るフィルドビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図5B】図5Aに続く、本発明の第2の実施形態に係るフィルドビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図6】下側ビアホールの横断面の形状についての変形例を示す図である。
【図7】従来技術による、フィルドビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板の製造方法を示す図である。
【図8】フィルドビア上に形成されたディンプルのシート面内におけるばらつきを説明するための図である。
【図9】比較例に係る有底ビアホールに対するビアフィルめっきについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を説明する前に、比較例について説明する。
【0029】
上述したところからわかるように、表層めっきの厚みを低減し回路配線パターンの狭ピッチ化を可能とするためには、ビアフィルめっきに要する時間を短縮する必要がある。
【0030】
そこで、本発明者らは、まず、ビアフィルめっき工法(電解めっき工法)においては角張った部分にめっき金属が析出しやすいという性質を利用することを考えた。具体的には、図9(a),(b)からわかるように、横断面が多角形などの非円形の形状である有底ビアホール62を形成し、ビアフィルめっき工法を用いてフィルドビアを形成することを考えた。この場合、有底ビアホール62内においてめっき析出量が増大し、有底ビアホール62内に導体を充填する時間が短縮される。その結果、表層めっきの厚みを低減することが可能となる。
【0031】
しかし、図9(a),(b)に示すように、めっきの形成速度が速いために、フィルドビア63上に凸部64が形成される。このような凸部64は、電子部品をフィルドビア63上に実装する上で避けるべきものである。凸部64を除去するためには、研磨工程を新たに追加する必要があり、製造コストが上昇する上、歩留まりの低下を招く虞がある。特に、フレキシブルプリント配線板の場合、薄く撓みやすいシートを均等に研磨することは容易ではない。
【0032】
また、比較例の場合、めっき速度が速いために、フィルドビア上のディンプルの凹み量のばらつきが大きくなってしまう虞もある。
【0033】
本発明は、このような技術的認識に基づきなされたものであり、以下の実施形態において述べるように、上述の課題を解決するものである。
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る2つの実施形態について説明する。各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0035】
(第1の実施形態)
図1A乃至図1Eは、第1の実施形態に係るフィルドビア構造を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための図であり、各図において、(a)は工程断面図であり、(b)はフィルドビアが形成される領域付近の平面図を示している。
【0036】
(1)まず、可撓性の絶縁ベース材1(例えば25μm厚)の表面および裏面にそれぞれ銅箔2及び3(各々例えば5μm厚)を有する両面銅張積層板4を用意する。そして、この両面銅張積層板4の表面に感光性ドライフィルム型のレジスト膜をラミネートする。次いで、所定の露光パターンをレジスト膜に照射する。ここで照射する露光パターンは、図1A(b)からわかるように、内側に向かう突起部を有する星形の形状である。突起部の数は12個であり、これらの突起部は連結されている。その後、現像を行い、星形の開口部を有するレジスト層を銅箔2の上に形成する。
【0037】
(2)次に、星形の開口部を有するレジスト膜をマスクにして、銅箔2のエッチングを行う。その後、レジスト膜を剥離する。これにより、図1A(a)及び(b)に示すように、レーザー遮光用の星形のメタルマスク5を銅箔2に形成する。メタルマスク5は、前述のレジスト膜の開口部と同様、連結された12個の内側に向かう突起部5aを有する星形の形状である。
【0038】
(3)次に、メタルマスク5よりも大きな照射範囲のレーザー光をメタルマスク5に照射し、コンフォーマルレーザー加工を行う。これにより、図1B(a)及び(b)に示すように、両面銅張積層板4の所定の位置に、底面に銅箔3が露呈した有底ビアホール6を形成する。有底ビアホール6の横断面の形状は、メタルマスク5と同じ形状となる。なお、本工程で使用可能なレーザーとしては、炭酸ガスレーザー又はUV−YAGレーザーなどが挙げられるが、生産性の観点から炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。
【0039】
(4)次に、銅箔2を除去可能な高エネルギー密度のレーザー光をメタルマスク5に向けて照射し、ダイレクトレーザー加工を行う。例えば、図2(a)からわかるように、メタルマスク5の周縁部にレーザー光を回転照射するトレパニング加工を用いる。その他、メタルマスク5よりも大きな照射範囲のレーザー光をメタルマスク5に照射する加工方法を用いてもよい。
【0040】
これにより、図1C(a),(b)及び図2(a),(b)に示すように、有底ビアホール6の周縁部における銅箔2及びその下の絶縁ベース材1の一部を除去し、横断面が正円形(例えばφ100μm)である上側ビアホール7bを形成する。有底ビアホール6の下側部分に対応する下側ビアホール7aと、この下側ビアホール7aに連通する上側ビアホール7bは、ステップ有底ビアホール7を構成する。
【0041】
なお、図1C(a)に示すように、上側ビアホール7bは、絶縁ベース材1からなる側壁を有する上側絶縁ビアホール7b1と、銅箔2からなる側壁を有する上側金属ビアホール7b2とから構成される。上側絶縁ビアホール7b1の側壁はレーザー加工により斜めに形成されるが、これは本発明の本質的な特徴ではない。但し、側壁が斜めに形成されることにより、導電化処理の際における液更新性が改善し、導電化処理膜を形成し易くなるという利点が得られる。
【0042】
なお、本工程のレーザー加工では、UV−YAGレーザー又は炭酸ガスレーザーを用いることができる。また、レーザー加工を用いる代わりに、NCドリル加工により、上側ビアホール7bを形成してもよい。
【0043】
(5)次に、ステップ有底ビアホール7内にデスミア処理を施し、樹脂残渣を除去する。このデスミア処理として、プラズマ処理の後、約1μm程度の樹脂エッチングを行うことが好ましい。この樹脂エッチングにより、ステップ有底ビアホール7の側壁の絶縁ベース材1に大きなダメージを与えずに、ステップ有底ビアホール7底面のスミアを除去することができる。その後、ステップ有底ビアホール7内に導電化処理を施し、導電化処理膜を形成する。
【0044】
(6)次に、ビアフィルめっき用添加剤(例えば、上村工業(株)製のスルカップEVF−R)を含む硫酸銅めっき液を用いて、電解めっき手法によりステップ有底ビアホール7内に銅を充填する。これにより、図1D(a)及び(b)に示すように、銅箔2及び銅箔3を電気的に接続するフィルドビア8が形成されるとともに、銅箔2上に表層めっき9が形成される。また、図1D(a)及び(b)に示すように、フィルドビア8上にディンプル10が形成される。
【0045】
フィルドビア8の形成過程の詳細は後述するが、ステップ有底ビアホール7の形状により、表層めっき9の厚みは従来よりも大幅に低減するとともに(約10μm)、フィルドビア8上に形成されるディンプル10の凹み量のばらつきは従来よりも小さくなる。
【0046】
(7)次に、図1D(a)に示すビアフィリングを施した両面銅張積層板4に対して、フォトファブリケーション手法を行う。これにより、図1E(a)に示すように、表層めっき9及び銅箔2を所定のパターンに加工し、回路配線パターン11を形成する。
【0047】
表層めっき9の厚みが比較的薄いために、被加工導体膜(表層めっき9及び銅箔2)の厚みは約15μmであり、従来よりも薄い。このため、回路配線パターン11の形成ピッチを従来よりも小さくすることができ(例えば80μm)、狭ピッチの回路配線パターンを形成することができる。
【0048】
上記の工程を経て得られた本実施形態に係るプリント配線板は、図1Eに示すように、絶縁ベース材1と、絶縁ベース材1の表面および裏面にそれぞれ設けられた銅箔2,3と、を有する両面銅張積層板4を基材としている。そして、本実施形態に係るプリント配線板は、両面銅張積層板4に形成されたステップ有底ビアホール7を備えるとともに、このステップ有底ビアホール7に充填されためっき金属からなり、銅箔2と銅箔3を電気的に接続するフィルドビア8を備える。ステップ有底ビアホール7は、銅箔2に開口を有するとともに、底面に銅箔3が露出し、横断面がメタルマスク5と同じ形状である下側ビアホール7aと、この下側ビアホール7aと連通し、横断面が正円形である上側ビアホール7bとから構成されている。下側ビアホール7aの横断面の星形の中心位置と、上側ビアホール7bの横断面の正円形の中心位置はほぼ同じである。
【0049】
本実施形態によるプリント配線板によれば、下側ビアホール7aの横断面の形状の周長は突起部が無い場合に比べて長くなるため、フィルドビアの熱的応力などに対する耐性が増加し、層間接続路としての信頼性が向上する。
【0050】
次に、上記のステップ有底ビアホール7に対して電解めっき手法を用いてビアフィルめっきを行い、フィルドビア8を形成する過程の詳細について、図3及び図4を用いて説明する。
【0051】
図3(1)〜(3)は、ビアフィルめっき工程におけるステップ有底ビアホール7の断面図を時系列で示している。
【0052】
図3(1)は、横断面が星形の下側ビアホール7a内に導体12を充填する工程が完了した時点の概略的な様子を示している。前述のように、ビアフィルめっき(電解めっき)工法には、ビアホールの角張った部分にめっき金属が析出しやすいという特性がある。このため、下側ビアホール7aにおけるめっき速度は、それ以外の箇所に比べて速い。但し、めっき速度が速いために、図3(1)に示すように凸部10Aが形成される。
【0053】
図3(2)は、横断面が正円形の上側ビアホール7b内に導体12を充填する工程の途中の時点における概略的な様子を示している。上側ビアホール7bは下側ビアホール7aに比べて径が大きく、かつ角張った部分(突起部)が存在しないため、めっき速度は低下する。そのため、めっきが進行するにつれて、凸部10Aは消滅し、その代わりに凹みを有するディンプル10が形成される。
【0054】
図3(3)は、ビアフィルめっきが完了した時点の概略的な様子を示している。めっきの進行とともにディンプル10の凹み量は減少し、最終的には所定の値以下となる。
【0055】
図4は、前述の比較例(図9参照)の場合と、本実施形態の場合について、めっき時間とビア内めっき厚の関係を示したグラフである。ビア内めっき厚は、ステップ有底ビアホール7の底面からめっき金属面までの長さである。図4中のビア内めっき厚dは、図3(1)に示すように下側ビアホール7aが充填されたときのビア内めっき厚を示している。ビア内めっき厚dは、図3(3)に示すようにビアフィルめっき工程が完了したときのビア内めっき厚を示している。実際にはめっき速度はシート面内でばらつきを持つため、めっき速度の遅い箇所(めっきの薄い箇所)におけるビア内めっき厚がdに達したときにビアフィルめっき工程を終了する。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の場合、下側ビアホール7aが充填されるまでは比較例の場合と同じめっき速度でビアフィルめっきが進行する。そして、ビア内めっき厚がdに達し、上側ビアホール7b内への充填が始まるとめっき速度が低下する。めっき速度の低下により、ビア内めっき厚のばらつき、即ち、めっきの厚い箇所におけるビア内めっき厚と、めっきの薄い箇所におけるビア内めっき厚の差が小さくなる。ビアフィルめっき工程が終了した時刻tにおいて、ビア内めっき厚のばらつきは図4に示すようにΔである。
【0057】
一方、比較例の場合、最初から最後までめっき速度は高速のまま一定である。このため、ビア内めっき厚のばらつきは、めっき時間に比例して拡大していき、ビアフィルめっき工程が終了した時刻t(<t)において図4に示すようにΔより大きいΔとなる。また、めっきの厚い箇所においては、ビア内めっき厚が所定の厚みdを超えることにより、フィルドビア上に凸部が形成されてしまう(図9参照)。
【0058】
上述したところからわかるように、本実施形態によれば、下側ビアホール7aの充填に要する時間が短縮されるため、ビアフィルめっきに要する全体の時間も短縮される。それにより、表層めっき9の厚みを従来よりも低減することができる。
【0059】
さらに、本実施形態によれば、上側ビアホール7b内に導体を充填する際のめっき速度は下側ビアホール7aのときに比べて低下するため、ビア内めっき厚のばらつきが小さくなり、フィルドビア上のディンプル10の凹み量のシート面内におけるばらつきを小さくすることができる。
【0060】
なお、上記の実施形態の説明において、下側ビアホール7aの星形横断面の突起部の数は12個としたが、これに限らず、突起部の数は8〜32であることが好ましい。突起部の数が8個より少ない場合、角張った部分にめっきが析出しやすいというビアフィルめっきの特性を十分に活かせず、表層めっきの厚みを低減する効果が十分に得られない。一方、突起部の数が32個よりも多い場合、突起部間の溝が狭くなるため、導電化処理の際に薬液更新性が低下し、導電化処理膜の形成が困難になるという問題が生じる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るフィルドビア構造を備える多層フレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。
【0062】
図5A及び図5Bは、第2の実施形態に係るフィルドビア構造を有する多層フレキシブルプリント配線板の工程断面図を示している。
【0063】
(1)まず、可撓性の絶縁ベース材31(例えば25μm厚)の表面および裏面にそれぞれ銅箔32及び33(各々例えば5μm厚)を有する両面銅張積層板34を用意する。
【0064】
(2)次に、図5A(1)からわかるように、NCドリルを用いて、両面銅張積層板34の所定の位置に貫通ホール35を形成する。
【0065】
(3)次に、図5A(1)からわかるように、貫通ホール35内にデスミア処置および導電化処理を施した後、電解めっきを両面銅張積層板34の全面に行い、内層めっき皮膜36を形成する。
【0066】
(4)次に、図5A(1)からわかるように、フォトファブリケーション手法を用いて、銅箔32,33及び内層めっき皮膜36からなる導電層を所定のパターンに加工し、内層回路配線パターン37を形成する。
【0067】
(5)次に、図5A(1)からわかるように、貫通ホール35内に接着剤を充填し、接着剤層38を形成する。その後、接着剤層38を介して、絶縁フィルム39とその表面に銅箔40を有する片面銅張積層板41を、内層回路配線パターン37の形成された基板の両面にそれぞれ積層接着する。
【0068】
(6)次に、図5A(1)からわかるように、前述のメタルマスク5を形成したのと同様にして、片面銅張積層板41の銅箔40に、内側に向かう突起部を所定の数(例えば12個)有する星形のメタルマスク42を形成する。
【0069】
(7)次に、図5A(2)からわかるように、前述の有底ビアホール6を形成したのと同様にして、コンフォーマルレーザー加工を行い、絶縁フィルム39及び接着剤層38を除去し、横断面が星形の有底ビアホールを形成する。
【0070】
(8)次に、図5A(2)からわかるように、前述のステップ有底ビアホール7を形成したのと同様にして、ダイレクトレーザー加工を行い、メタルマスク42の周縁部の銅箔40及びその下にある絶縁フィルム39の一部を除去する。これにより、横断面がメタルマスク42の形状と同じ星形の下側ビアホール43aと、それと連通する、横断面が正円形(φ150μm)の上側ビアホール43bとから構成されるステップ有底ビアホール43が形成される。下側ビアホール43aの側壁は接着剤層38と絶縁フィルム39からなる。上側ビアホール43bは、側壁が絶縁フィルム39である上側絶縁ビアホール43b1と、側壁が銅箔40である上側金属ビアホール43b2とから構成される。
【0071】
(9)次に、図5B(3)に示すように、ステップ有底ビアホール43内にデスミア処理および導電化処理を行った後、ビアフィルめっき手法を用いてステップ有底ビアホール43内にめっき金属を充填する。これにより、銅箔40と内層めっき皮膜36を電気的に接続するフィルドビア44、及び銅箔40上の表層めっき45が形成される。前述のように、ステップ有底ビアホール43の形状によりビアフィルめっきに要する時間は短くなり、表層めっき45の厚みを低減することができる。また、フィルドビア44上に形成されるディンプル(図示せず)の凹み量の、シート面内におけるばらつきを小さくすることができる。
【0072】
(10)次に、図5B(4)に示すように、フォトファブリケーション手法を用いて、被加工導体膜(表層めっき45及び銅箔40)を所定のパターンに加工し、外層回路配線パターン46を形成する。被加工導体膜の厚みは、表層めっき45の厚みが15μm、銅箔40の厚みが5μmであるから約20μmとなる。このように被加工導体膜の厚みが低減されるので、外層回路配線パターン46は、従来よりも狭ピッチ化(例えば100μm)することができる。
【0073】
以上、本発明に係るプリント配線板の製造方法およびプリント配線板について説明した。上記の実施形態の説明ではフレキシブルプリント配線板を例にとったが、本発明はフレキシブルプリント配線板以外のプリント配線板に適用することも可能である。
【0074】
また、上記の実施形態の説明では、回路配線パターンを構成する金属およびビアホールに充填されるめっき金属はコスト的に有利な銅としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばアルミニウムや銀など他の金属でもよい。
【0075】
また、下側ビアホールの横断面の形状は、めっきが析出し易いように内側に向かう突起部が形成されていればよく、実施形態の星形形状に限るものではない。例えば、図6(a)に示すように突起部は連結されていなくともよい。また、突起部の形状は、図6(b)及び(c)に示すような形状でもよい。
【0076】
また、上側ビアホールの横断面の形状は、下側ビアホールの横断面の形状よりも径が大きく、かつ突起部を有しない形状であればよく、円形に限らず、例えば楕円形でもよい。
【0077】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,31,51 絶縁ベース材
2,3,32,33,40,52,53 銅箔
4,34,54 両面銅張積層板
5,42,55 メタルマスク
5a,5b 突起部
6,56,62 有底ビアホール
7,43 ステップ有底ビアホール
7a,43a 下側ビアホール
7b,43b 上側ビアホール
7b1,43b1 上側絶縁ビアホール
7b2,43b2 上側金属ビアホール
8,44,57,63 フィルドビア
9,45,58 表層めっき
10,59 ディンプル
10A,64 凸部
11,60 回路配線パターン
12 導体
35 貫通ホール
36 内層めっき皮膜
37 内層回路配線パターン
38 接着剤層
39 絶縁フィルム
41 片面銅張積層板
46 外層回路配線パターン
61 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の表面および裏面にそれぞれ第1及び第2の金属層とを有する被加工基材を用意し、
内側に向かう突起部を有する第1の形状のメタルマスクを前記第1の金属層に形成し、
前記メタルマスクを用いてコンフォーマルレーザー加工を行うことにより、底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が前記第1の形状である有底ビアホールを形成し、
前記メタルマスクの周縁部における前記第1の金属層及びその下の前記絶縁層の一部を除去することにより、横断面が突起部を有しない第2の形状である上側ビアホールを形成し、
前記有底ビアホールの下側部分に対応し、底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が前記第1の形状である下側ビアホールと、この下側ビアホールと連通する前記上側ビアホールとから構成されるステップ有底ビアホール内に、電解めっき手法によりめっき金属を充填し、前記第1の金属層と前記第2の金属層を電気的に接続するフィルドビアを形成する、
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記上側ビアホールは、前記メタルマスクの周縁部にレーザー光を回転照射するトレパニング加工により形成することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記上側ビアホールは、前記メタルマスクよりも大きな照射範囲のレーザー光を前記メタルマスクに照射することより形成することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記上側ビアホールは、NCドリル加工により形成することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記第1の形状の前記突起部の数は8〜32であり、前記突起部は連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記第2の形状は、正円形または楕円形であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ有底ビアホール内にめっき金属を充填する工程において前記第1の金属層の上に形成された前記めっき金属からなる表層めっきと、前記第1の金属層とからなる被加工導体膜を、フォトファブリケーション手法を用いて所定のパターンに加工し、回路配線パターンを形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
絶縁層と、
前記絶縁層の表面および裏面にそれぞれ設けられた、第1及び第2の金属層と、
底面に前記第2の金属層が露出し、横断面が内側に向かう突起部を有する第1の形状である下側ビアホールと、前記下側ビアホールと連通し、前記下側ビアホールの径よりも大きい径を有し、横断面が突起部を有しない第2の形状である上側ビアホールとから構成され、前記第1の金属層に開口面を有する、ステップ有底ビアホールと、
前記ステップ有底ビアホールに充填されためっき金属からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層を電気的に接続する、フィルドビアと、
を備えることを特徴とするプリント配線板。
【請求項9】
前記第1の形状の前記突起部の数は8〜32であり、前記突起部は連結されていることを特徴とする請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記第2の形状は、正円形または楕円形であることを特徴とする請求項8又は9に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−38989(P2012−38989A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179337(P2010−179337)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】