説明

プルリリーフ端部固定構造

【課題】 ホース本体に内蔵されてホースの過度の伸びを抑制するプルリリーフをホース端部に固定する際の固定作業を簡単にしながら、固定強度を高める。
【解決手段】 プルリリーフ(1)端部をホース本体(2)よりも硬質な材料により形成される係止部材(3)に固定する。該係止部材(3)は、プルリリーフ端部が固定される固定部(34)と、ホース本体の外側および内側にそれぞれ配置されるよう対をなす挟持部(31)、(32)と、該挟持部の間を連結する連結部(33)とを有するように構成され、挟持部と連結部とにより囲まれる空間にホース本体端部のホース壁(2b)を配置して、該係止部材をホース本体端部のホース壁に係止させてプルリリーフ(1)をホース本体(2)の端部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性ホースに内蔵されて可撓性ホースの伸びを抑制・制限するプルリリーフを、可撓性ホースに固定するプルリリーフの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機には、電気掃除機本体と手元操作部との間に接続される可撓性ホースが用いられている。このような可撓性ホースにおいては、電気掃除機の操作に伴い、ホースに張力がかかる。張力が大きいと、ホースが伸びすぎて、ホースが破損したり、ホースに内蔵される導線が断線したりするといった不具合が生ずるおそれがある。
【0003】
そこで、ホースに加わる張力によるホースの過度の伸びを抑制する目的で、プルリリーフと呼ばれる伸縮性に乏しいひも状の部材を、可撓性ホース内部に挿通して、張力をプルリリーフによって受けるようにする技術が開発されている。プルリリーフは所定の長さでホースに内蔵されて、少なくともホースの両端部で固定される必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ホース本体の端部にカップリング部材を一体に取付けると共に、射出成形を利用して、ホースに内蔵されるプルリリーフの端部をカップリング部材に固定する技術が開示されている。また、特許文献2には、プルリリーフをホース壁内周面に接着一体化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO98/17936号公報
【特許文献2】欧州特許EP0742399(B1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プルリリーフには大きな引張り力が作用するため、その固定を強固に行う必要がある。しかしながら、特許文献2に記載された技術においては、ホースの可撓性とプルリリーフ固定強度の両立を図ることが難しい。ホースが伸縮すると接着がはがれやすくなるからである。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術は、ホースからプルリリーフを引き出して、カップリング部材と仮組み立てをしたのちに、これらを接着樹脂の射出成形用金型内部に導入し、接着樹脂の射出成形によりプルリリーフをカップリング部材に一体化するものである。そのため、導線やプルリリーフが金型に挟まれて破損しないように、複雑な構造の金型が必要となり、その成形工程の作業も煩雑なものとなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、固定作業が簡単であり、固定強度が高いプルリリーフの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、プルリリーフ端部を特定の係止部材に固定して、その係止部材をホース本体端部のホース壁に引っ掛けるようにして、プルリリーフ端部をホース本体端部に固定すると、プルリリーフの取り付け作業が簡単になるとともに、十分な固定強度が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、可撓性のホース本体の内部に挿通されたプルリリーフの端部を、ホース本体の端部に固定するプルリリーフ端部固定構造であって、プルリリーフ端部はホース本体よりも硬質な材料により形成される係止部材に固定され、該係止部材は、プルリリーフ端部が固定される固定部と、ホース本体の外側および内側にそれぞれ配置されるよう対をなす挟持部と、該挟持部の間を連結する連結部とを有すると共に、挟持部と連結部とにより囲まれる空間にホース本体端部のホース壁を配置することにより、該係止部材をホース本体端部のホース壁に係止させたプルリリーフ端部固定構造である(第1発明)。
【0011】
さらに、第1発明において、プルリリーフが端部で折り返されて、折り返された側でプルリリーフが係止部材に固定されることが好ましい(第2発明)。
【0012】
さらに、第2発明において、固定部が、ホース外側に配置される挟持部に配置されることが好ましい(第3発明)。
【0013】
また、第1発明において、ホース本体の内部には、ホース軸方向に延在するチューブが接合一体化される場合においては、ホース内部に配置される挟持部を二股に分岐させて設けて、分岐した挟持部の間にチューブを配置することが好ましい(第4発明)。
【発明の効果】
【0014】
本発明(第1発明)によれば、簡単な固定作業によってプルリリーフをホース本体端部に取付けることができ、プルリリーフの取付強度も高められるという効果が得られる。
【0015】
さらに、第2発明のように、プルリリーフを折り返して折り返した側で固定した場合には、プルリリーフの取付強度を高める上で有利である。
【0016】
さらに、第3発明のように、プルリリーフ固定部を外側の挟持部に設けた場合には、プルリリーフ取付作業の作業性を高める上で有利である。
【0017】
また、第4発明のようにすれば、係止部材のホース周方向の取り付け位置を適切に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電気掃除機の構成を示す図である。
【図2】ホースAの端部の構造を示す斜視図である。
【図3】ホースAの端部の構造を、ホース本体端部に固定されるべきプルリリーフと係止部材を引き出した状態で示した図である。
【図4】ホースAの端部の断面図である。
【図5】係止部材前駆体の形状を示す斜視図である。
【図6】ホース本体にプルリリーフを固定する工程の例を示す図である。
【図7】ホース本体にプルリリーフを固定する他の工程例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照しながら、電気掃除機用ホースにおける本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
図1は本発明が適用できる電気掃除機の全体の外観を示し、図1において、電気掃除機用ホースAは合成樹脂材料製の可撓性ホースであり、掃除機本体10に設けられた吸気口に接続パイプ(カップリング部材)11を介してホースAの一端が接続され、ホースAの他端は手元操作部12に接続され、手元操作部12に連続して延長管13、続いて床用ノズル14が接続されて電気掃除機が構成されている。
【0020】
図2はホースAの端部の構造を示す斜視図である。図3はホースAの端部に固定されるプルリリーフと係止部材を引き出した状態で示した図である。図4はホースAの端部の断面図である。本実施形態におけるホースAは、図2ないし図4にも示されるように、以下の構成を備えている。
【0021】
即ち、本実施形態におけるホースAは、ホース本体2、ホース長さ方向に延在しホース本体の内周面に接合一体化されたチューブ4、チューブに内蔵された導線5、チューブ4に内蔵されたプルリリーフ1、及び、プルリリーフ端部をホース本体端部に固定するための係止部材3を含んで構成されている。なお、本発明において、導線5やチューブ4の存在は任意である。
【0022】
ホース本体2は、適度な可撓性を有するように、蛇腹状に形成されたホース壁を有している。蛇腹は螺旋状に設けられていても良いし、リング状に設けられていても良い。ホース本体2はポリエチレン樹脂やエチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)といった熱可塑性樹脂などにより形成されている。ホース本体の製造は、いわゆるスパイラル法や連続ブロー成形法といった公知の方法によることができ、ホース本体には、その円筒形状を維持するための硬質樹脂や金属線等からなる補強体を備えさせても良い。
【0023】
チューブ4は、ホース長さ方向に沿ってホース内側に挿通されて、ホース本体2の内周面に接合一体化されている。チューブ4はホース本体の可撓性を大きく損なわない程度の柔軟性を有するように、比較的軟質の材料で構成されたり、蛇腹状に形成されたりする。チューブの接合一体化には、接着剤を用いてもよいし、溶着により一体化を行っても良い。なお、図4(及び後述する図6、図7)においては、図面を見やすくするために、ホース本体とチューブを接合する接着剤を図から省略している。
【0024】
チューブ4の内側には、導線5およびプルリリーフ1が挿通されている。通常複数本が挿通される導線5は電気掃除機本体10と手元操作部12との間を電気的に接続して、電気信号や電力を送る用途に使用される。なお、図4(及び後述する図6、図7)においては導線5を省略している。
【0025】
ホースAの構成において、プルリリーフ1は、その両端部がホース本体2の端部に固定されている。そしてホースAの端部は接続部材11や手元操作部12に接続一体化されて、その結果、接続部材11と手元操作部12との間でホースAが過度に伸びるのをプルリリーフ1が抑制する。
【0026】
プルリリーフ1は、ホース本体2と比べ比較的伸縮性に乏しいひも状あるいは糸状・線状の部材である。プルリリーフは、金属線や合成樹脂繊維などを含んで構成される。プルリリーフ1は単糸(ストランド)又は単線であっても良いが、複数の単糸を組み合わせたより線、編み線、撚糸などの複合糸(複合線)が好ましい。プルリリーフの材質としては、ステンレス線などの金属線や、天然糸のほか、ポリエステル糸やアラミド繊維の糸などの合成樹脂繊維の糸などが例示できる。
【0027】
プルリリーフ1の端部をホース本体2の端部に固定するために、係止部材3が使用されている。係止部材3は、ホース本体の構成材料よりも硬質な材料(例えば金属材料や硬質樹脂材料)により形成される部材である。ホースAの端部において、プルリリーフ1の端部は、係止部材3に固定され、係止部材3がホース本体2の端部2aのホース壁に係合するように固定されて、プルリリーフの端部がホース本体端部に固定されている。
【0028】
本実施形態においては、係止部材3はスチール板を曲げ加工して形成されている。スチール板やアルミ板などといった金属材料により係止部材を形成すると、かしめによりプルリリーフを係止部材に固定することができて、製造効率が高められて好ましい。
【0029】
係止部材3には、ホース本体2の内側及び外側に配置されるよう、対をなす挟持部が設けられている。即ち、ホース外側には外側挟持部31が設けられ、ホース内側には内側挟持部32が設けられ、外側挟持部31と内側挟持部32によって、ホース本体のホース壁を挟み込むようにされている。対をなす挟持部31、32を互いに連結するように、外側挟持部31と内側挟持部32との間には連結部33が設けられている。外側挟持部31と内側挟持部32と連結部33とは、ホース軸方向に沿った断面(即ち図4の断面)で見て、略コの字をなすように形成されている。そして、挟持部31,32と連結部33とによって囲まれる空間にホース本体の端部2aのホース壁が配置されて、外側挟持部31と内側挟持部32の間にホース壁が挟持されて、係止部材3はホース本体端部のホース壁に係止されている。係止が確実なものとなるように、挟持部31,32は、その長さ(図4における左右方向の長さ)が、挟持されるホース壁の厚み寸法(図4における上下方向の寸法)よりも長い寸法となるように設けられることが好ましい。
【0030】
係止部材3が係止するホース本体の端部は、ホース壁の強度が高められるよう、熱板によりホース本体の蛇腹を押しつぶすなどして、ホース壁を平坦にした平坦部2bとすることが好ましい。
【0031】
また、係止部材3がホース本体端部のホース壁に係止される部分に接着材を適用するなどして、両者を接着一体化することも、好ましい実施の形態である。
【0032】
係止部材3には、プルリリーフ1の端部を固定するための固定部34が設けられている。本実施形態においては、プルリリーフ端部を固定部34に挟み込んで固定部34をかしめることによってプルリリーフの固定を行うように、固定部34は構成されている。また、本実施形態においては、係止部材3の外側挟持部31と固定部34とは共用されて一体に設けられており、ホース内側に挿通されたプルリリーフは、ホース外側へと折り返されて、プルリリーフの折り返された側の部分がホース外側に設けられた固定部にかしめ固定されている。
【0033】
固定部34はかしめ構造としても良いが、プルリリーフを結びつけたり引っ掛けたりするための穴やノッチを設けた構造としてもよい。プルリリーフ1の端部を係止部材3に固定する固定部34の具体的形状は、固定が十分な強度で行われる限りにおいて、多様な構成を採用することができる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、内側挟持部32は互いに所定間隔離れた二股状に分岐して形成されている。係止部材をホース本体に取り付ける際には、内側挟持部32が二股に分岐した間の空間にチューブ4(もしくはチューブとホースを接合一体化する接合部)が配置されるように取付けられる。即ち、内側挟持部を二股にすることにより、チューブ4を用いて係合部材3のホース周方向の位置決めができる。
【0035】
上記ホースAの製造方法について説明する。
ホース本体2は公知のホース製造方法により製造される。
そして、ホース本体2の内部に、プルリリーフ1や導線5を内蔵するチューブ4を挿通して、ホース内周面にチューブを接合一体化する。この工程も、例えば国際公開WO2008/035484等に記載されたような公知の方法により行うことができる。
ホース壁に平坦部2bを設ける場合には、この時点で熱板などによりホースの蛇腹を押しつぶすなどして平坦部2bを作成しておいても良い。
【0036】
以上の工程によりホース本体2にプルリリーフ1が挿通されるので、以下の工程によって、プルリリーフ1の端部をホース本体2の端部に固定する。
【0037】
まず、スチール板を加工して、係止部材3の前駆体3aを準備する。前駆体の形状を図5に示すが、前駆体には、係止部材の内側挟持部32や連結部33や固定部34、外側挟持部31となる部分(前駆体3aにおいては、それぞれ、32a、33a、34a、31aと図5中に示す)がすでに形成されており、外側挟持部となるべき部分31aは連結部となるべき部分33aを延長する方向に延在して設けられており、固定部となるべき部分34aは、プルリリーフ1を挟み込みやすいように、やや開いた形状とされている。また、外側挟持部となるべき部分31aと連結部となるべき部分33aの間には、後の工程で折り曲げやすいようにノッチが設けられている。
【0038】
まず、図6(a)に示すように、前駆体3aをホース本体2とチューブ4とが接着一体化された部分に挿入する。すなわち、内側挟持部となるべき部分32aの二股の間にチューブ4(もしくはチューブとホースを接合一体化する接合部)が位置し、かつ、連結部となるべき部分33aがホース本体端面に当接するように、前駆体3aをホース本体端部に押し込む。
【0039】
前駆体3aが所定の位置に配置された後に、図6(b)に示すように、プルリリーフ1の端部を、固定部となるべき部分34aに挟みこむようにして、その後固定部となるべき部分34aをかしめて、プルリリーフ1の端部を固定する。余分なプルリリーフの末端は切除しても良い。
【0040】
その後、図6(c)に示すように、外側挟持部となるべき部分31aをホース本体2に向かって折り曲げる。この折り曲げ工程と並行して、熱板等によりホース本体に平坦部2bを形成するようにしても良い。
かかる工程を経ることにより、前駆体3aが係止部材3となり、プルリリーフ1が係止部材3に固定されて、係止部材3がホース本体2の端部のホース壁に係止されて、上記説明におけるホースAが製造される(図6(d))。
【0041】
この後、ホースAをカップリング部材11や手元操作部12に接合するためには、接着材を使用したり、溶融樹脂の射出成形を利用したり、ホースAの端部に直接カップリング部材を成形したり、といった、多様な接合一体化方法を適宜選択して接合すればよい。また、ホースAが導線5を備える場合には、導線5がカップリング部材11や手元操作部12に対して適切に配線されるように、接合作業を行う。
【0042】
なお、係止部材3を利用したプルリリーフ端部の固定は、上記固定方法以外の方法によることもできる。例えば、プルリリーフの長さに余裕がある場合などには、ホース本体やチューブから、プルリリーフを少し引き出して、あらかじめ外側挟持部31と内側挟持部32と連結部33とが略コの字状となるように形成されている係止部材3に対して、プルリリーフ端部を結びつけて固定し、その後、前記コの字状空間にホース壁が挟持されるように、係止部材をホース壁に対して押し込むようにして、上記プルリリーフ固定構造を実現することもできる。この場合は、プルリリーフを結びつけた部位が、係止部材3の固定部になる。
【0043】
本発明の作用及び効果について説明する。本発明のプルリリーフ端部固定構造によれば、プルリリーフの端部を係止部材に固定した上で、係止部材をホース本体端部のホース壁に係止させて、プルリリーフを固定する構造とした。そのため、簡単な固定作業によりプルリリーフ端部をホース端部に固定することができる。即ち特許文献1記載の技術のように、プルリリーフを取り回しながら射出成形金型にホース端部を配置するような、煩雑な作業を行う必要がなくなる。よって、本発明によれば、プルリリーフの端部を固定したホースの製造工程が簡単なものとなる。
【0044】
また、本発明のプルリリーフ固定構造では、プルリリーフ端部がホース本体端部に固定されたホースAが得られるので、ホースAの端部をカップリング部材などに接合一体化する際には、プルリリーフがほとんど露出していない。そのため、カップリング部材等との接合一体化の際に、金型などによってプルリリーフを挟んでしまって切断してしまうような不具合の発生が未然に防止される。このことはカップリング部材等を一体化したホースアッセンブリー製造の簡易化に寄与する。
【0045】
また、本発明においては、ホース本体よりも硬質な材料により形成される係止部材を用いるとともに、該係止部材が有する挟持部と連結部とによって囲まれる空間にホース壁を配置して、ホース本体端部のホース壁に係止部材を係止させてプルリリーフを固定する構造としたので、係止部材の変形が防止されると共に、係止部材がホース壁から外れてしまうことが防止されて、プルリリーフの固定強度が非常に高い。
【0046】
プルリリーフの固定強度を高める観点からは、さらに以下のような構成とすることが特に好ましい。
【0047】
プルリリーフ1の端部の係止部材3への固定においては、上記実施形態のように、プルリリーフ端部を折り返すようにして、プルリリーフ端部が折り返された側において係止部材に固定されるようにすることが好ましい。このようにすれば、プルリリーフに張力が作用した場合に、プルリリーフが折り返される係止部材の角の部分に力がかかるようになり、プルリリーフ1が滑りにくくなるため、固定部34からプルリリーフが脱けにくくなって、固定強度が向上する。そして、プルリリーフを折り返す部分に近接して固定部を設けることが特に好ましい。
【0048】
さらに、固定部34がホース本体の外側に配置される挟持部(外側挟持部)31に配置されるようにすれば、上記プルリリーフ折り返し固定構造が自然に実現されると共に、プルリリーフを固定部に固定する作業もしやすくなって、かしめ不良などによる強度低下も未然防止されて、特に好ましい。
【0049】
また、係止部材のホース周方向の位置決めを確実に行う観点からは、ホース本体の内部にホース軸方向に延在するチューブを接合一体化すると共に、内側挟持部を二股に分岐させて設けて、分岐した内側挟持部の間にチューブを配置することが特に好ましい。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号をつけると共にその説明を省略する。
【0051】
プルリリーフ1の端部を係止部材3に固定する固定方法については、上述したかしめ方法以外の方法を採用することができる。例えば、係止部材に穴やノッチを設けて固定部として、プルリリーフ端部をこれら穴やノッチ周りに結んで固定しても良い。あるいは、プルリリーフの端部を係止部材に接着剤などで接着しても良い。さらに、これら固定方法を併用しても良く、例えば、プルリリーフ端部に結節を作って、かしめ固定部の抜け止めとしても良い。
【0052】
係止部材3の固定部は、外側挟持部だけでなく、内側挟持部や連結部に設けることもできる。プルリリーフを係止部材に結んで固定する場合には、連結部に固定部を設けてプルリリーフを固定することが、作業性及び強度上の観点から好ましい。
【0053】
また、上記実施形態においては、プルリリーフを折り返して、折り返した側を係止部材固定部に固定する形態について説明したが、プルリリーフの折り返しは必須ではない。即ち、例えば、内側挟持部や連結部に固定部を設けるような場合には、プルリリーフを折り返さずに固定することも可能である。なお、前述したように、固定強度の観点から、プルリリーフを折り返して、折り返した側において係止部材固定部に固定することが好ましい。
【0054】
上記実施形態の説明においては、ホース本体端部に蛇腹をつぶした平坦部2bを設けて平坦部に係止部材3を係止させる形態を説明したが、必ずしも平坦部2bを設ける必要は無く、蛇腹状のホース壁に対して係止部材3を取り付けるようにしても良い。平坦部2bを設けると、平坦部は伸縮性が乏しくなるとともに強度が増すので、係止部材3が外れにくくなる。従って、プルリリーフの固定強度を高める観点からは、平坦部2bを設けて、平坦部に係止部材3を係止させることが好ましい。
【0055】
ホースAにおける、プルリリーフ1と係止部材3の位置関係についても、特に制限されるものではない。すなわち、上記実施形態においては、略コの字状の係止部材の外側を回りこむようにプルリリーフ1が配置され、固定されるような形態とされている。この形態は、プルリリーフの固定作業が効率的に行いうるという点で優れている。
【0056】
一方、図7に示すような固定作業工程を経て実現されるような形態、即ち、略コの字状の係止部材の内側に沿ってプルリリーフ1が配置され、固定されるような形態とすることも可能である。このような形態は、図5の係止部材前駆体3aとほぼ同様の構成を有しつつ、固定部を外側挟持部の裏側に形成可能な前駆体3a’を用いて、実現できる。
【0057】
まず、図7(a)に示すように、プルリリーフ1をホース半径方向外側に向かってに引き伸ばした状態で、内側挟持部32a’の二股の間に、チューブ4とプルリリーフ1が配置されるようにして、係止部材前駆体3a’をホース本体端部に押し込む。次に、前駆体3a’とホース本体端部の間に挟まれたプルリリーフの先の部分を固定部となる部位34a’に挟み込むようにして、かしめて固定する(図7(b))。次に、固定部や外側接続部となるべき部位(31a’ 、34a’)をホース本体側に折り曲げて、前駆体3a’を係止部材3’とする(図7(c))。かかる工程を経て、略コの字状の係止部材3’の内側に沿ってプルリリーフ1が配置され、固定されるような形態とすることができる(図7(d))。
【0058】
この形態は、ホースAにおいてプルリリーフ1が全く露出しないようにすることができ、後のカップリング部材一体化工程などにおいて、プルリリーフが金型などに挟まれて損傷する不具合をほぼ完全に解消できる。
【0059】
そして、以上説明した実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施することができる。
また、プルリリーフのホース本体への固定は、必ずしもホースの両端で同じ固定方法をとらなければならないわけではない。例えば、一方のホース端部においては、本発明のプルリリーフ固定構造を採用しつつ、他方のホース端部においては、プルリリーフを手元操作部に直接結びつけるといった他の固定方法を採用することもできる。
【0060】
そして、本発明は上記実施形態で説明した以外の、他の技術分野にも応用できる。例えば、産業用液体吸引ホースに伸び防止のプルリリーフを備えつける場合などに応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のプルリリーフ取付構造によれば、効果的に可撓性ホースの伸びを抑制できると共に、その構造を簡単な製造工程により実現できて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0062】
A 可撓性ホース
1 プルリリーフ
2 ホース本体
3 係止部材
31 外側挟持部
32 内側挟持部
33 連結部
34 固定部
4 チューブ
5 導線
10 電気掃除機本体
11 接続部材(カップリング部材)
12 手元操作部
13 延長パイプ
14 床用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のホース本体の内部に挿通されたプルリリーフの端部を、ホース本体の端部に固定するプルリリーフ端部固定構造であって、
プルリリーフ端部はホース本体よりも硬質な材料により形成される係止部材に固定され、
該係止部材は、プルリリーフ端部が固定される固定部と、ホース本体の外側および内側にそれぞれ配置されるよう対をなす挟持部と、該挟持部の間を連結する連結部とを有すると共に、
挟持部と連結部とにより囲まれる空間にホース本体端部のホース壁を配置することにより、該係止部材をホース本体端部のホース壁に係止させた
プルリリーフ端部固定構造。
【請求項2】
プルリリーフが端部で折り返されて、折り返された側でプルリリーフが係止部材に固定された請求項1に記載のプルリリーフ端部固定構造。
【請求項3】
固定部が、ホース外側に配置される挟持部に配置された請求項2に記載のプルリリーフ端部固定構造。
【請求項4】
ホース本体の内部には、ホース軸方向に延在するチューブが接合一体化されると共に、
ホース内部に配置される挟持部は二股に分岐して設けられて、分岐した挟持部の間にチューブを配置した請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプルリリーフ端部固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77765(P2012−77765A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220707(P2010−220707)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】