プレストレス導入構造およびプレストレス導入方法
【課題】手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくし、簡単な構造でコンクリート構造物にプレストレスを導入することができ、しかもコンクリート構造物の耐久性の低下を防止するこができる。
【解決手段】PC鋼材3がシース管4に挿通され、シース管4の一端4aに固定された第1端板5にPC鋼材3の固定側端部3aが固定され、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bに固定された押圧板8と、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3b側を押圧板8とともに引っ張って緊張力を与えた状態でシース管4の他端4bに固定された第2端板6と、押圧板8と第2端板6との間に配置されるピン部材9とを備え、ピン部材9は、押圧板8の第2端板6に対する支持状態が解除可能に設けられたプレストレス導入構造1を提供する。
【解決手段】PC鋼材3がシース管4に挿通され、シース管4の一端4aに固定された第1端板5にPC鋼材3の固定側端部3aが固定され、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bに固定された押圧板8と、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3b側を押圧板8とともに引っ張って緊張力を与えた状態でシース管4の他端4bに固定された第2端板6と、押圧板8と第2端板6との間に配置されるピン部材9とを備え、ピン部材9は、押圧板8の第2端板6に対する支持状態が解除可能に設けられたプレストレス導入構造1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材にプレストレスを与える場合、PC鋼線やPC鋼棒などのPC鋼材を緊張している。このようなプレストレスの導入作業では、通常、後からコンクリート部材にプレストレスを与える場合において、コンクリート打設後に予めセットしておいたPC鋼材を緊張したり、定着したりする作業が行われている。
そして、一般的にPC鋼材の定着部は、コンクリート部材を切り欠いて設けたり、部材の外側に設けたりすることとなる(例えば、特許文献1参照)。この場合、部材の面内に定着部を設け、専用の開放機にて緊張開放して部材にプレストレスを導入し、その後、切欠部にモルタルを充填することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−207590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレストレス導入装置では、以下のような問題があった。
すなわち、プレストレス導入装置では、コンクリート部材にプレストレスを導入すれば、ひび割れを抑制することができるが、構築されたコンクリート部材に対して後からプレストレスを導入する場合、別途、PC鋼材の緊張、定着作業が必要となり、手間と時間がかかるという問題があった。
また、コンクリート表面に定着用の切欠部が形成され、定着後に切欠部の穴埋めが行われるが、その切欠部からひび割れが発生し、さらにひび割れよりコンクリート内部に水が浸透してコンクリートの耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくし、簡単な構造でコンクリート構造物にプレストレスを導入することができるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、コンクリート構造物の耐久性の低下を防止するこができるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレストレス導入構造では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部がコンクリート構造物内に埋設され、一方の固定側定着部は、筒状体の一端に固定された第1端板にPC鋼材の一端が固定されてなり、他方の圧縮力導入側定着部は、PC鋼材の他端に固定された押圧板と、PC鋼材の他端側を押圧板とともに引っ張って緊張力を与えた状態で筒状体の他端に固定された第2端板と、押圧板と第2端板との間に配置される介挿部材と、を備え、介挿部材は、押圧板の第2端板に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るプレストレス導入方法では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、PC鋼材を筒状体に挿通するとともに、両端の定着部をコンクリート構造物内に配置する工程と、筒状体の一端に固定された第1端板にPC鋼材の一端を固定する工程と、PC鋼材の他端に押圧板を固定するとともに、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で筒状体の他端に第2端板を固定する工程と、押圧板と第2端板との間に介挿部材を配置するする工程と、コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、押圧板の第2端板に対する支持状態を解除する工程と、を有していることを特徴としている。
【0008】
本発明では、コンクリート構造物の構築時において、コンクリート構造物の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材をセットしておき、打設したコンクリートが硬化した後に、介挿部材における押圧板の第2端板に対する支持状態を解除することができる。これにより、押圧板はPC鋼材によって作用する緊張力が開放されて第2端板側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板がコンクリートを押圧して圧縮力を与えることとなり、コンクリート構造物にプレストレスを導入することができる。
また、プレストレス導入を行うためのPC鋼材の定着部(圧縮力導入側定着部)がコンクリート構造物のコンクリート内部に配置されているので、コンクリート構造物の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなり、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、コンクリート構造物の強度の低下を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部がコンクリート構造物内に埋設され、筒状体は、長手方向中間部で二分割され、PC鋼材の一端が二分割された一方の第1筒状体の一端に固定され、PC鋼材の他端が他方の第2筒状体に固定され、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で第1筒状体と第2筒状体との間に配置されるとともに、第1筒状体に対して第2筒状体を支持する介挿部材が設けられ、介挿部材は、第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るプレストレス導入方法では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、PC鋼材を長手方向中間部で二分割された筒状体に挿通するとともに、両端の定着部をコンクリート構造物内に配置する工程と、PC鋼材の一端を二分割された一方の第1筒状体の一端に固定するとともに、PC鋼材の他端を他方の第2筒状体に固定する工程と、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で第1筒状体と第2筒状体との間に介挿部材を設け、第1筒状体に対して第2筒状体を支持する工程と、コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態を解除する工程とを有していることを特徴としている。
【0011】
本発明では、コンクリート構造物の構築時において、コンクリート構造物の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材をセットしておき、打設したコンクリートが硬化した後に、介挿部材における第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態を解除することができる。これにより、第2筒状体はPC鋼材によって作用する緊張力が開放されて第1筒状体側へ近接する方向へ向けて移動するため、第2筒状体がコンクリートを押圧して圧縮力を与えることとなり、コンクリート構造物にプレストレスを導入することができる。
また、プレストレス導入を行う部分がコンクリート構造物のコンクリート内部に配置されているので、コンクリート構造物の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなり、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、コンクリート構造物の強度の低下を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、押圧板と介挿部材との周囲を覆うカバー体が設けられていてもよい。
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、第1筒状体と第2筒状体との分割部の周囲がカバー体によって覆われていてもよい。
この場合、プレストレス導入後にカバー体の内部に硬化材を充填することができ、カバー体の内部に空隙が残るのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、カバー体には、その内部空間とコンクリート構造物の外方とを連通する挿通孔が設けられていることが好ましい。
本発明では、例えば棒状部材を挿通孔よりカバー体の内部に挿入することが可能であり、その棒状部材を用いることによりカバー体内に配置される介挿部材の支持状態を簡単に解除することができる。そして、プレストレス導入後には、挿通孔よりカバー体内の空間に硬化材を注入することができ、隙間無く確実な充填を行うことができる。また、コンクリート打設後に注入用の孔を設けるといった手間のかかる作業をなくすことが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、軸方向を略圧縮力導入方向に向けて配置されるピン部材であることが好ましい。
この場合、ピン部材を軸方向を略圧縮力導入方向に向けた状態で部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、ピン部材を倒すことでその支持状態を極めて簡単に解除することができる。
【0015】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、収縮可能な膨張体であることが好ましい。
本発明では、膨張体を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、膨張体を収縮させることでその支持状態を容易に解除することができる。
【0016】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、膨張体は、液状の樹脂入り袋体であってもよい。
この場合、液状の樹脂が入った状態の袋体を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、袋体を破って収縮させることでその支持状態を容易に解除することができる。
【0017】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、融解部材と、融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線とからなることが好ましい。
この場合、融解部材を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持される。そして、融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線に電流を流し、発熱させて融解部材を融解することでその支持状態を容易に解除することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法によれば、介挿部材によって緊張力が与えられたPC鋼材をコンクリート構造物の所定位置に配置し、コンクリート打設後に介挿部材の支持状態を解除するという簡単な構造によりコンクリート構造物にプレストレスを導入することができるうえ、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくすことが可能となる。
また、コンクリート内部の空間でプレストレス導入が行えるので、コンクリート表面に切欠部が形成されることがなく、コンクリート構造物の耐久性の低下を防止するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスラブを下方から見た図である。
【図2】図1に示すA−A線断面図である。
【図3】図1に示すB−B線断面図である。
【図4】プレストレス導入構造を示す図であって、スラブの水平断面図である。
【図5】図4に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図6】図5に示す圧縮力導入側定着部におけるプレストレス導入作業状態を示す図であって、(a)は支持状態の解除時の図、(b)はプレストレス導入時の図である。
【図7】第2の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図8】図7に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図9】第3の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図10】図9に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図11】第4の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図12】図11においてプレストレス導入時を示す図である。
【図13】第5の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図14】図13においてプレストレス導入時を示す図である。
【図15】第6の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図16】図15においてプレストレス導入時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1乃至図3に示すように、本第1の実施の形態によるプレストレス導入構造1は、高架橋の中間スラブ(以下、単に「スラブ2」という)であるコンクリート構造物に採用され、スラブ2の幅方向に生じるひび割れR(図1に示す二点鎖線)を防止するため、スラブ2の一方向に沿って延在する複数のPC鋼材3、3、…が互いに所定間隔をもって配設され、スラブ2を形成するコンクリートCにプレストレスが導入された構造となっている。ここで、スラブ2は、平面視で外周部に梁2Aが一体的に設けられている。
PC鋼材3は、例えば鋼棒、鋼線、鋼より線などを採用でき、スラブ2の厚さ方向において略中央の位置(図3に示す厚さ方向で上側鉄筋2Bと下側鉄筋2Cの間の位置)に配置されるとともに、両端部3a、3bのそれぞれが梁2Aが設けられる位置で定着されている。
【0022】
なお、図4乃至図5に示すプレストレス導入構造1は、プレストレスを導入する前の状態を示している。
図4に示すように、プレストレス導入構造1は、PC鋼材3と、PC鋼材3を挿通させるためのシース管4(筒状体)と、このシース管4の長手方向の一端(図4で右側の端部)でPC鋼材3の一端(固定側端部3a)を定着する固定側定着部T1と、シース管4の他端(図4で左側の端部)でPC鋼材3の他端(圧縮力導入側端部3b)を定着する圧縮力導入側定着部T2とを備えて概略構成されている。固定側定着部T1と圧縮力導入側定着部T2は、それぞれ梁2A内(図2参照)に位置している。
【0023】
固定側定着部T1は、シース管4の一端4aに固定される第1端板5が設けられており、この第1端板5にはPC鋼材3の固定側端部3aが挿通されて第1ナット31で締め付けられている。そして、固定側定着部T1は、スラブ2のコンクリートCに埋設され付着している。
【0024】
図5に示すように、圧縮力導入側定着部T2は、PC鋼材3の他端3bに固定された押圧板8と、PC鋼材3の他端3b側を押圧板8とともに引っ張って緊張力を与えた状態でシース管4の他端4bに固定された第2端板6と、が設けられ、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bは第2端板6を挿通するとともに、押圧板8も挿通して第2ナット32で締め付けられている。
さらに、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bを引っ張って緊張力を与えた状態で第2端板6と押圧板8との間に複数のピン部材9、9、…(介挿部材)が介挿され、これら複数のピン部材9の周囲がカバー体7で覆われ、カバー体7の内部空間7aとスラブ2の外方とが挿通孔10によって連通されている。
【0025】
複数本のピン部材9は、それぞれ軸方向をPC鋼材3の略長手方向(略圧縮力導入方向)に向けた状態で第2端板6と押圧板8との間に非固定状態で介挿されている。つまり、押圧板8は、緊張力が与えられたPC鋼材3が元の状態に戻ろうとする方向(矢印F2)の力に対して、ピン部材9によってつっかえ棒の状態で支持されている。
ピン部材9の長さ寸法は、第2端板6と押圧板8との間に配置されるピン部材9の本数や剛性などの条件により設定されている。
【0026】
挿通孔10は、スラブ2の上面2aからカバー体7を貫通し、第2端板6と押圧板8との間の内部空間7aに連通しており、適宜な棒状部材P(図6参照)を挿入可能で且つ硬化材11(後述する)を注入できる孔径により形成されている。なお、棒状部材Pとしては、上述したピン部材9を横から押し倒し、第2端板6と押圧板8との間の支持状態を解除することが可能な剛性、太さ寸法を有するものが使用される。
【0027】
次に、上述した構成のプレストレス導入構造の作用と、スラブ2にプレストレスを導入する方法ついて、図面に基づいて具体的に説明する。
先ず、図4に示すように、コンクリートCを打設する前において、構築するスラブ2の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材3を型枠内にセットしておく。すなわち、プレストレス導入構造1は、例えば工場などにおいて、PC鋼材3に緊張力(図5に示す矢印F1方向)を与えた状態を維持しつつ、圧縮力導入側定着部T2の第2端板6と押圧板8との間に複数のピン部材9、9、…を介挿させた状態で予め製作しておく。
【0028】
そして、型枠内にコンクリートCを打設し、プレストレス導入構造1をコンクリートC内に埋設する。このとき、スラブ2の上面2aには挿通孔10の開口10aのみが設けられることになる(図5参照)。
続いて、図6(a)に示すように、打設したコンクリートCが硬化したとき、挿通孔10から棒状部材Pを挿入して、ピン部材9を側方(ピン部材9の軸方向に対して略直交する方向)から押して倒す。つまり、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、ピン部材9における押圧板8の第2端板6に対する支持状態を解除することができる。これにより、図6(b)に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
このとき、図6(b)に示すように、剛性の小さい樹脂製等のカバー体7は、押圧板8と第2端板6とによって押し潰され、また、第2端板6と押圧板8との間の空間には押し倒された複数のピン部材9が残った状態となる。
【0029】
次いで、図6(b)に示すように、挿通孔10を利用して、カバー体7内の内部空間7aに硬化材11を充填する。
そして、プレストレス導入後には、図6(b)に示すように、挿通孔10よりカバー体7の内部空間7aに硬化材11を充填することで、プレストレス導入作業が完了となる。
また、コンクリート打設後に注入用の孔を設けるといった手間のかかる作業をなくすことが可能となる。
【0030】
また、プレストレス導入を行う圧縮力導入側定着部T2がスラブ2のコンクリートC内部に配置されているので、スラブ2の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなる。そのため、カバー体7の内部空間7aにはプレストレス導入後に硬化材11を充填しておけばよく、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、スラブ2の強度の低下を防ぐことができる。
【0031】
上述した第1の実施の形態によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法では、ピン部材9によって緊張力が与えられたPC鋼材3をスラブ2の所定位置に配置し、コンクリート打設後にピン部材9の支持状態を解除するという簡単な構造によりスラブ2にプレストレスを導入することができるうえ、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくすことが可能となる。
また、コンクリート内部の空間でプレストレス導入が行えるので、コンクリート表面に切欠部が形成されることがなく、スラブ2の耐久性の低下を防止するこができる。
【0032】
次に、本発明のプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0033】
(第2の実施の形態)
図7に示すように、第2の実施の形態によるプレストレス導入構造1Aは、上述した第1の実施の形態の圧縮力導入側定着部T2におけるピン部材9(図4参照)に代えて袋体12(介挿部材、膨張体)を設けた構成としたものである。すなわち、圧縮力導入側定着部T2は、PC鋼材3に緊張力を与えた状態における第2端板6と押圧板8との間に、例えばアラミド繊維などの高強度の樹脂系の材料からなる袋に例えば遅延剤入りモルタル等の樹脂材121(液状の樹脂)を詰めて膨張した状態の袋体12を介挿させている。
【0034】
この袋体12は、緊張力が与えられたPC鋼材3とともに押圧板8に作用する圧縮方向の力F2に耐え得るだけの強度を有するとともに、圧縮方向に略直交する方向の力に対しては強度が小さく、割れ易い、或いは裂け易い材料であることが好ましい。例えば、繊維の向きを圧縮方向に平行となる軸線方向を中心軸としてスパイラル状に配置させた材料とすることで、圧縮方向に強く、横方向に弱い構造を実現することができる。つまり、袋体12を第2端板6と押圧板8との間に配置することで、それら部材6、8同士の支持状態が維持されている。
【0035】
この場合、コンクリートCを型枠内に打設し、コンクリートCが硬化した後、先端が尖った棒状部材(図示省略)を挿通孔10から挿入させて、袋体12を突き破って穴を開ける。これにより、袋体12が内部のモルタル等の流出により収縮し、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、袋体12を破って収縮させることでその支持状態を極めて簡単に解除することができる。これにより、図8に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
そして、袋体12の内部の樹脂材121(図7参照)がカバー体7の内部空間7aを充填するが、充填量が不足する場合には挿通孔10より上述した第1の実施の形態と同様に硬化材11を注入すれば良い。
【0036】
(第3の実施の形態)
次に、図9に示すように、第3の実施の形態によるプレストレス導入構造1Bは、第2端板6と押圧板8との間に電熱線131を外周に巻き付けた硬化樹脂体13(介挿部材、融解部材)を介挿させた構成としたものである。この硬化樹脂体13は、電熱線131に電流を流すことによって生じる熱により融解する樹脂を硬化させたものであり、例えば軌道レール調節等に用いられる電熱式調整パッキン(HMP)等の材料を採用することができる。
そして、硬化樹脂体13に巻き付けられている電熱線131は、スラブ2の外方へ出されて電源(図示省略)へ繋がっている。
【0037】
第3の実施の形態では、コンクリートCを型枠内に打設し、そのコンクリートCが硬化した後、硬化樹脂体の外周に設けられた電熱線131に電流を流し、発熱させて硬化樹脂体13を融解することで、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、その支持状態を極めて簡単に解除することができる。これにより、図10に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。なお、融解した樹脂13´は、カバー体7の内部空間7a内を充填することになる。
【0038】
また、本第3の実施の形態によるプレストレス導入構造1Bでは、電熱線131に電流を流すだけの操作となるので、カバー体7のスラブ2の上面2aからの深さ寸法に左右されることがない。つまり、上述した第1、第2の実施の形態によるプレストレス導入構造1、1Aでは、挿通孔10を使って棒状部材でピン部材9を倒したり、袋体12に穴を開けたりする必要があるので、比較的深さの小さい場合が好適であるが、第3の実施の形態では電熱線131が表面から外方に出ていれば良く、とくに深さ寸法が制限を受けることはない。
したがって、本プレストレス導入構造1Bは、梁高が1m程の梁など、PC鋼材3の設置位置が深くなるようなコンクリート部材に対応することができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
次に、図11に示すように、第4の実施の形態によるプレストレス導入構造1Cは、PC鋼材3と、PC鋼材3を挿通させるとともに長手方向中間部で二分割された固定側鋼管14(第1筒状体)および圧縮力導入側鋼管15(第2筒状体)と、PC鋼材3の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で、固定側鋼管14に対して圧縮力導入側鋼管15を支持するピン部材16(介挿部材)と、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との分割部の周囲を覆うカバー体17とを備えている。ここで、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とはそれぞれ同径をなし、同軸線上に係合している。
【0040】
固定側鋼管14は、外筒部141と、圧縮力導入側鋼管15側の一端14a側に圧縮力導入側鋼管15を嵌合させる内筒部142とが形成されるとともに、その内筒部142と反対側の他端14bにはPC鋼材3の固定側端部3aを定着する端板143を備え、外筒部141の圧縮力導入側鋼管15側の一端と内筒部142の端板143側の一端とが連結環144によって連結された構成となっている。その内筒部142の外周側に圧縮力導入側鋼管15が嵌合するようになっている。
圧縮力導入側鋼管15は、一端(当接部15a)側が前記内筒部142に嵌合し、固定側鋼管14とは反対側の他端15bにPC鋼材3の圧縮力導入側端部3bを定着する端板151を備えている。
【0041】
そして、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とを軸方向で離反させることで、PC鋼材3に所定の緊張力を与えることができる。さらに、この離反状態において、固定側鋼管14の連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間に隙間Sが形成され、この隙間Sに複数の前記ピン部材16が介挿されている。このとき、ピン部材16は、その軸方向をPC鋼材3の軸線方向Xに略平行に向けて配置され、鋼管の周方向において適宜な位置に配置されている。具体的には、後述する挿通孔18より棒状部材を挿入してピン部材16を倒すことが可能な位置であって、固定側鋼管14の下側とならない位置にピン部材16が配置されている。
【0042】
また、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との接続部(分割部に相当)は、カバー体17によって覆われており、このカバー体17内の前記隙間Sとスラブ2の上面2aとを連通する挿通孔18が複数のピン部材16に対応する位置に設けられている。挿通孔18は、適宜な棒状部材(図示省略)を挿入可能な孔径により形成されている。なお、棒状部材としては、ピン部材16を押圧して倒し、支持状態を解除することが可能な剛性、太さ寸法を有するものが使用される。
【0043】
本第4の実施の形態では、図11に示すように、構築するスラブ2の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材3をセットしておく。すなわち、プレストレス導入構造1は、例えば工場などにおいて、PC鋼材3に緊張力(矢印F1方向)を与えた状態を維持しつつ、固定側鋼管14の連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間に複数のピン部材16を介挿させた状態で予め製作しておく。
【0044】
そして、型枠内にプレストレス導入構造1Cを設置した後にコンクリートCを打設することで、該プレストレス導入構造1CをコンクリートC内に埋設する。このとき、スラブ2の上面2aには挿通孔18の開口18aのみが設けられることになる。
続いて、図12に示すように、打設したコンクリートCが硬化したとき、挿通孔18から前記棒状部材を挿入して、ピン部材16を側方から押して倒す。つまり、連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間のつっかえが外れ、ピン部材16における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。なお、倒れたピン部材16は、カバー体17内に残したままとする。
【0045】
なお、本第4の実施の形態によるプレストレス導入構造1Cでは、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15どうしの分割部をPC鋼材3の長手方向中間部に配置できるので、プレストレス導入の操作位置がPC鋼材3の端部に制限されないという利点がある。
【0046】
(第5の実施の形態)
次に、図13に示す第5の実施の形態によるプレストレス導入構造1Dは、上述した第4の実施の形態のピン部材16(図11参照)に代えて、樹脂入りの袋体19を鋼管内に配置させた構成のものである。
具体的にプレストレス導入構造1Dは、固定側鋼管14が圧縮力導入側鋼管15より大径の筒状をなし、圧縮力導入側鋼管15が固定側鋼管14の内周側に挿通した状態で嵌合している。そして、圧縮力導入側鋼管15が固定側鋼管14の内側にはPC鋼材3の長手方向X全体にわたって袋体19が設けられている。
【0047】
袋体19は、PC鋼棒3に緊張力を与えた状態でPC鋼材3の両端の定着部の端板143、151どうしに密着した状態で配置されている。このときの袋体19は、前記緊張力に耐え得る強度、すなわちPC鋼材3が緊張力に対して元に戻ろうとする力に対抗できる強度を有するものとされる。なお、袋体19は、上述した第2の実施の形態の袋体12と同様の部材から形成されるものであるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0048】
また、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15のうち所定の箇所には、鋼管内の空間とスラブ2の外方とを連通する挿通孔18が適宜な位置に設けられている。
さらに、プレストレス導入前の状態において、図13に示す二点差線のように、圧縮力導入側鋼管15の外周面を覆う被覆部材20を設けておき、打設したコンクリートCと圧縮力導入側鋼管15とが接着しない構成となっている。
【0049】
この場合、コンクリートCを型枠内に打設し、コンクリートCが硬化した後、棒状部材(図示省略)を挿通孔18から挿入させて、袋体19を突き破って穴を開ける。これにより、袋体19の内部のモルタル等が流出して収縮し、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との間のつっかえが外れ、袋体19における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、図14に示すように、被覆部材20によってコンクリートCに付着していない圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力をかけることになり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
【0050】
(第6の実施の形態)
次に、図15に示す第6の実施の形態によるプレストレス導入構造1Eは、上述した第5の実施の形態において、袋体19(図13参照)に代え、プレストレス導入前でPC鋼材3の緊張力を保持するために、電熱線211を内装した硬化樹脂体21(介挿部材、溶融部材)によって固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15を接着保持させた構成となっている。
すなわち、硬化樹脂体21は、PC鋼棒3に緊張力を与えた状態で固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とがPC鋼材3の軸線方向Xにオーバーラップする部分を固着している。このときの鋼管14、15どうしの接着強度は、前記緊張力に耐え得る強度、すなわちPC鋼材3が緊張力に対して元に戻ろうとする力に対抗できる強度を有するものとされる。なお、硬化樹脂体21は、上述した第3の実施の形態の硬化樹脂体13(図9参照)と同様の部材から形成されるものであるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0051】
また、硬化樹脂体21に内装されている電熱線(図示省略)は、固定側鋼管14を貫通してスラブの外方にまで伸ばされた状態でコンクリートCが打設される。
さらに、上述した第5の実施の形態と同様に、プレストレス導入前の状態において、図 に示す二点差線のように、圧縮力導入側鋼管15の外周面を覆う被覆部材20を設けておき、打設したコンクリートCと圧縮力導入側鋼管15とが接着しない構成となっている。
【0052】
本第6の実施の形態では、コンクリートCを型枠内に打設し、そのコンクリートCが硬化した後、前記電熱線に電流を流して熱を発生させる。そして、この熱により硬化樹脂体21が融解し、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15の固着が外れ、硬化樹脂体21における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、図16に示すように、被覆部材20によってコンクリートCに付着していない圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力をかけることになり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
【0053】
以上、本発明によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では梁2Aを備えた中間スラブを適用対象としているが、これに限定されることはなく、例えば高架橋の張出しスラブに本実施の形態のプレストレス導入構造1、1A〜1Eを適用することも可能である。
【0054】
また、PC鋼材3のコンクリート構造物に対する位置、方向、配置箇所、長さ寸法、配置ピッチ等は、本実施の形態に制限されず、適用するコンクリート構造物の形状、コンクリートの厚さ等の適用条件から予測されるひび割れの発生状態に応じて任意に設定することが可能である。基本的には、予測されるひび割れの方向に対して直角方向にPC鋼材を配置し、ひび割れの発生密度に応じてPC鋼材も集中的に設けたり、広範囲にわたって設けるように設定する。
そして、本実施の形態のようにPC鋼材3の両端部3a、3bの定着部の位置を梁2Aが設けられる位置としているが、定着部の位置についてもとくに制限されることはない。
【0055】
さらに、介挿部材は、本実施の形態に限定されることはなく、ピン部材9、16の形状、径寸法、袋体12、19の大きさ、内部に詰める充填材の材質などは適宜設定することが可能である。例えば、ピン部材として、軸方向中間にヒンジを設けておくことで、軸方向に作用する力には強く、側方からの外力に対しては弱い構造とし、支持状態の解除をし易くすることも可能である。
【0056】
また、本実施の形態では袋体12、19に充填材を詰めた構成としているが、例えばエアや水などの液状体を袋体内に注入出可能な状態とし、介挿部材による支持状態を維持する場合には袋体内にエア等を注入して膨張させ、その支持状態を解除する際には袋体内のエア等を排出することで収縮させる構成のものであっても良い。
【0057】
さらにまた、本第3の実施の形態では、硬化樹脂体13の外周に電熱線131を巻き付けた構成となっているが、これに限らない。要は、熱で硬化樹脂体13が融解すればよいのであって、例えば硬化樹脂体13の内部に電熱線131を埋め込んだ形態であってもよく、また電熱線に代えて高周波誘導による加熱方法を利用したものを採用することもできる。
【0058】
また、第4〜第6の実施の形態において、筒状体の分割部(固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15と接続部)の位置をPC鋼材3の長手方向で略中央部分としているが、この分割部の位置は任意に設定することができる。
さらに、挿通孔10、18、カバー体7、17の形状、位置、大きさ等の構成についても、PC鋼材3の引張力や介挿部材の種類に応じて任意に設定することが可能である。
なお、本第1乃至第3の実施の形態ではカバー体7を設けた構成としているが、カバー体7は省略することも可能である。
【0059】
さらにまた、本実施の形態では挿通孔10、18より棒状部材を挿入してピン部材9、16の横から棒状部材を押し込んで倒すことでその支持状態を解除しているが、ピン部材9、16の解除方法としてはこれに限定されることはない。例えば、先端に掛止部を備えた紐状部材を挿通孔から差し込み、その掛止部をピン部材に引っ掛けて紐状部材を引き抜くことで倒す方法としても良い。このような紐状部材を用いれば、例えば上述した第4の実施の形態において、固定側鋼管14の下側の位置にピン部材16を配置することも可能である。
また、第2の実施の形態では、袋体12を先端の尖った棒状部材で突き破る方法により、その袋体12を収縮させているが、袋体12を突き破る手段として針状の部材等を用いることも可能であり、その他の手段を採用することも勿論可能である。例えば、カバー体7内で袋体12の入口部を封止する紐状部材を取り外すことで、その入口部を開放して袋体を収縮させるようにしても良い。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0061】
1、1A、1B、1C プレストレス導入構造
2 スラブ(コンクリート構造物)
3 PC鋼材
4 シース管(筒状体)
5 第1端板
6 第2端板
7、17 カバー体
8 押圧板
9、16 ピン部材(介挿部材)
10、18 挿通孔
11 硬化材
12、19 袋体(介挿部材、膨張体)
13、21 硬化樹脂体(介挿部材、融解部材)
14 固定側鋼管(第1筒状体)
15 圧縮力導入側鋼管(第2筒状体)
20 被覆部材
131 電熱線
C コンクリート
F1 緊張力
F2 圧縮力
S 隙間
T1 固定側定着部
T2 圧縮力導入側定着部
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材にプレストレスを与える場合、PC鋼線やPC鋼棒などのPC鋼材を緊張している。このようなプレストレスの導入作業では、通常、後からコンクリート部材にプレストレスを与える場合において、コンクリート打設後に予めセットしておいたPC鋼材を緊張したり、定着したりする作業が行われている。
そして、一般的にPC鋼材の定着部は、コンクリート部材を切り欠いて設けたり、部材の外側に設けたりすることとなる(例えば、特許文献1参照)。この場合、部材の面内に定着部を設け、専用の開放機にて緊張開放して部材にプレストレスを導入し、その後、切欠部にモルタルを充填することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−207590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレストレス導入装置では、以下のような問題があった。
すなわち、プレストレス導入装置では、コンクリート部材にプレストレスを導入すれば、ひび割れを抑制することができるが、構築されたコンクリート部材に対して後からプレストレスを導入する場合、別途、PC鋼材の緊張、定着作業が必要となり、手間と時間がかかるという問題があった。
また、コンクリート表面に定着用の切欠部が形成され、定着後に切欠部の穴埋めが行われるが、その切欠部からひび割れが発生し、さらにひび割れよりコンクリート内部に水が浸透してコンクリートの耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくし、簡単な構造でコンクリート構造物にプレストレスを導入することができるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、コンクリート構造物の耐久性の低下を防止するこができるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレストレス導入構造では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部がコンクリート構造物内に埋設され、一方の固定側定着部は、筒状体の一端に固定された第1端板にPC鋼材の一端が固定されてなり、他方の圧縮力導入側定着部は、PC鋼材の他端に固定された押圧板と、PC鋼材の他端側を押圧板とともに引っ張って緊張力を与えた状態で筒状体の他端に固定された第2端板と、押圧板と第2端板との間に配置される介挿部材と、を備え、介挿部材は、押圧板の第2端板に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るプレストレス導入方法では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、PC鋼材を筒状体に挿通するとともに、両端の定着部をコンクリート構造物内に配置する工程と、筒状体の一端に固定された第1端板にPC鋼材の一端を固定する工程と、PC鋼材の他端に押圧板を固定するとともに、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で筒状体の他端に第2端板を固定する工程と、押圧板と第2端板との間に介挿部材を配置するする工程と、コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、押圧板の第2端板に対する支持状態を解除する工程と、を有していることを特徴としている。
【0008】
本発明では、コンクリート構造物の構築時において、コンクリート構造物の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材をセットしておき、打設したコンクリートが硬化した後に、介挿部材における押圧板の第2端板に対する支持状態を解除することができる。これにより、押圧板はPC鋼材によって作用する緊張力が開放されて第2端板側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板がコンクリートを押圧して圧縮力を与えることとなり、コンクリート構造物にプレストレスを導入することができる。
また、プレストレス導入を行うためのPC鋼材の定着部(圧縮力導入側定着部)がコンクリート構造物のコンクリート内部に配置されているので、コンクリート構造物の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなり、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、コンクリート構造物の強度の低下を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部がコンクリート構造物内に埋設され、筒状体は、長手方向中間部で二分割され、PC鋼材の一端が二分割された一方の第1筒状体の一端に固定され、PC鋼材の他端が他方の第2筒状体に固定され、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で第1筒状体と第2筒状体との間に配置されるとともに、第1筒状体に対して第2筒状体を支持する介挿部材が設けられ、介挿部材は、第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るプレストレス導入方法では、PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、PC鋼材を長手方向中間部で二分割された筒状体に挿通するとともに、両端の定着部をコンクリート構造物内に配置する工程と、PC鋼材の一端を二分割された一方の第1筒状体の一端に固定するとともに、PC鋼材の他端を他方の第2筒状体に固定する工程と、PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で第1筒状体と第2筒状体との間に介挿部材を設け、第1筒状体に対して第2筒状体を支持する工程と、コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態を解除する工程とを有していることを特徴としている。
【0011】
本発明では、コンクリート構造物の構築時において、コンクリート構造物の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材をセットしておき、打設したコンクリートが硬化した後に、介挿部材における第2筒状体の第1筒状体に対する支持状態を解除することができる。これにより、第2筒状体はPC鋼材によって作用する緊張力が開放されて第1筒状体側へ近接する方向へ向けて移動するため、第2筒状体がコンクリートを押圧して圧縮力を与えることとなり、コンクリート構造物にプレストレスを導入することができる。
また、プレストレス導入を行う部分がコンクリート構造物のコンクリート内部に配置されているので、コンクリート構造物の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなり、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、コンクリート構造物の強度の低下を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、押圧板と介挿部材との周囲を覆うカバー体が設けられていてもよい。
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、第1筒状体と第2筒状体との分割部の周囲がカバー体によって覆われていてもよい。
この場合、プレストレス導入後にカバー体の内部に硬化材を充填することができ、カバー体の内部に空隙が残るのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、カバー体には、その内部空間とコンクリート構造物の外方とを連通する挿通孔が設けられていることが好ましい。
本発明では、例えば棒状部材を挿通孔よりカバー体の内部に挿入することが可能であり、その棒状部材を用いることによりカバー体内に配置される介挿部材の支持状態を簡単に解除することができる。そして、プレストレス導入後には、挿通孔よりカバー体内の空間に硬化材を注入することができ、隙間無く確実な充填を行うことができる。また、コンクリート打設後に注入用の孔を設けるといった手間のかかる作業をなくすことが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、軸方向を略圧縮力導入方向に向けて配置されるピン部材であることが好ましい。
この場合、ピン部材を軸方向を略圧縮力導入方向に向けた状態で部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、ピン部材を倒すことでその支持状態を極めて簡単に解除することができる。
【0015】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、収縮可能な膨張体であることが好ましい。
本発明では、膨張体を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、膨張体を収縮させることでその支持状態を容易に解除することができる。
【0016】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、膨張体は、液状の樹脂入り袋体であってもよい。
この場合、液状の樹脂が入った状態の袋体を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持され、袋体を破って収縮させることでその支持状態を容易に解除することができる。
【0017】
また、本発明に係るプレストレス導入構造では、介挿部材は、融解部材と、融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線とからなることが好ましい。
この場合、融解部材を部材間に配置することで部材同士の支持状態が維持される。そして、融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線に電流を流し、発熱させて融解部材を融解することでその支持状態を容易に解除することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法によれば、介挿部材によって緊張力が与えられたPC鋼材をコンクリート構造物の所定位置に配置し、コンクリート打設後に介挿部材の支持状態を解除するという簡単な構造によりコンクリート構造物にプレストレスを導入することができるうえ、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくすことが可能となる。
また、コンクリート内部の空間でプレストレス導入が行えるので、コンクリート表面に切欠部が形成されることがなく、コンクリート構造物の耐久性の低下を防止するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスラブを下方から見た図である。
【図2】図1に示すA−A線断面図である。
【図3】図1に示すB−B線断面図である。
【図4】プレストレス導入構造を示す図であって、スラブの水平断面図である。
【図5】図4に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図6】図5に示す圧縮力導入側定着部におけるプレストレス導入作業状態を示す図であって、(a)は支持状態の解除時の図、(b)はプレストレス導入時の図である。
【図7】第2の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図8】図7に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図9】第3の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図10】図9に示す圧縮力導入側定着部の拡大図である。
【図11】第4の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図12】図11においてプレストレス導入時を示す図である。
【図13】第5の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図14】図13においてプレストレス導入時を示す図である。
【図15】第6の実施の形態によるプレストレス導入構造を示す水平断面図である。
【図16】図15においてプレストレス導入時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1乃至図3に示すように、本第1の実施の形態によるプレストレス導入構造1は、高架橋の中間スラブ(以下、単に「スラブ2」という)であるコンクリート構造物に採用され、スラブ2の幅方向に生じるひび割れR(図1に示す二点鎖線)を防止するため、スラブ2の一方向に沿って延在する複数のPC鋼材3、3、…が互いに所定間隔をもって配設され、スラブ2を形成するコンクリートCにプレストレスが導入された構造となっている。ここで、スラブ2は、平面視で外周部に梁2Aが一体的に設けられている。
PC鋼材3は、例えば鋼棒、鋼線、鋼より線などを採用でき、スラブ2の厚さ方向において略中央の位置(図3に示す厚さ方向で上側鉄筋2Bと下側鉄筋2Cの間の位置)に配置されるとともに、両端部3a、3bのそれぞれが梁2Aが設けられる位置で定着されている。
【0022】
なお、図4乃至図5に示すプレストレス導入構造1は、プレストレスを導入する前の状態を示している。
図4に示すように、プレストレス導入構造1は、PC鋼材3と、PC鋼材3を挿通させるためのシース管4(筒状体)と、このシース管4の長手方向の一端(図4で右側の端部)でPC鋼材3の一端(固定側端部3a)を定着する固定側定着部T1と、シース管4の他端(図4で左側の端部)でPC鋼材3の他端(圧縮力導入側端部3b)を定着する圧縮力導入側定着部T2とを備えて概略構成されている。固定側定着部T1と圧縮力導入側定着部T2は、それぞれ梁2A内(図2参照)に位置している。
【0023】
固定側定着部T1は、シース管4の一端4aに固定される第1端板5が設けられており、この第1端板5にはPC鋼材3の固定側端部3aが挿通されて第1ナット31で締め付けられている。そして、固定側定着部T1は、スラブ2のコンクリートCに埋設され付着している。
【0024】
図5に示すように、圧縮力導入側定着部T2は、PC鋼材3の他端3bに固定された押圧板8と、PC鋼材3の他端3b側を押圧板8とともに引っ張って緊張力を与えた状態でシース管4の他端4bに固定された第2端板6と、が設けられ、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bは第2端板6を挿通するとともに、押圧板8も挿通して第2ナット32で締め付けられている。
さらに、PC鋼材3の圧縮力導入側端部3bを引っ張って緊張力を与えた状態で第2端板6と押圧板8との間に複数のピン部材9、9、…(介挿部材)が介挿され、これら複数のピン部材9の周囲がカバー体7で覆われ、カバー体7の内部空間7aとスラブ2の外方とが挿通孔10によって連通されている。
【0025】
複数本のピン部材9は、それぞれ軸方向をPC鋼材3の略長手方向(略圧縮力導入方向)に向けた状態で第2端板6と押圧板8との間に非固定状態で介挿されている。つまり、押圧板8は、緊張力が与えられたPC鋼材3が元の状態に戻ろうとする方向(矢印F2)の力に対して、ピン部材9によってつっかえ棒の状態で支持されている。
ピン部材9の長さ寸法は、第2端板6と押圧板8との間に配置されるピン部材9の本数や剛性などの条件により設定されている。
【0026】
挿通孔10は、スラブ2の上面2aからカバー体7を貫通し、第2端板6と押圧板8との間の内部空間7aに連通しており、適宜な棒状部材P(図6参照)を挿入可能で且つ硬化材11(後述する)を注入できる孔径により形成されている。なお、棒状部材Pとしては、上述したピン部材9を横から押し倒し、第2端板6と押圧板8との間の支持状態を解除することが可能な剛性、太さ寸法を有するものが使用される。
【0027】
次に、上述した構成のプレストレス導入構造の作用と、スラブ2にプレストレスを導入する方法ついて、図面に基づいて具体的に説明する。
先ず、図4に示すように、コンクリートCを打設する前において、構築するスラブ2の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材3を型枠内にセットしておく。すなわち、プレストレス導入構造1は、例えば工場などにおいて、PC鋼材3に緊張力(図5に示す矢印F1方向)を与えた状態を維持しつつ、圧縮力導入側定着部T2の第2端板6と押圧板8との間に複数のピン部材9、9、…を介挿させた状態で予め製作しておく。
【0028】
そして、型枠内にコンクリートCを打設し、プレストレス導入構造1をコンクリートC内に埋設する。このとき、スラブ2の上面2aには挿通孔10の開口10aのみが設けられることになる(図5参照)。
続いて、図6(a)に示すように、打設したコンクリートCが硬化したとき、挿通孔10から棒状部材Pを挿入して、ピン部材9を側方(ピン部材9の軸方向に対して略直交する方向)から押して倒す。つまり、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、ピン部材9における押圧板8の第2端板6に対する支持状態を解除することができる。これにより、図6(b)に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
このとき、図6(b)に示すように、剛性の小さい樹脂製等のカバー体7は、押圧板8と第2端板6とによって押し潰され、また、第2端板6と押圧板8との間の空間には押し倒された複数のピン部材9が残った状態となる。
【0029】
次いで、図6(b)に示すように、挿通孔10を利用して、カバー体7内の内部空間7aに硬化材11を充填する。
そして、プレストレス導入後には、図6(b)に示すように、挿通孔10よりカバー体7の内部空間7aに硬化材11を充填することで、プレストレス導入作業が完了となる。
また、コンクリート打設後に注入用の孔を設けるといった手間のかかる作業をなくすことが可能となる。
【0030】
また、プレストレス導入を行う圧縮力導入側定着部T2がスラブ2のコンクリートC内部に配置されているので、スラブ2の表面側からプレストレス導入を行う必要がなくなる。そのため、カバー体7の内部空間7aにはプレストレス導入後に硬化材11を充填しておけばよく、ひび割れ等の原因となる切欠部がコンクリート表面に形成されることがないので、スラブ2の強度の低下を防ぐことができる。
【0031】
上述した第1の実施の形態によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法では、ピン部材9によって緊張力が与えられたPC鋼材3をスラブ2の所定位置に配置し、コンクリート打設後にピン部材9の支持状態を解除するという簡単な構造によりスラブ2にプレストレスを導入することができるうえ、手間と時間のかかる大掛かりな緊張作業をなくすことが可能となる。
また、コンクリート内部の空間でプレストレス導入が行えるので、コンクリート表面に切欠部が形成されることがなく、スラブ2の耐久性の低下を防止するこができる。
【0032】
次に、本発明のプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0033】
(第2の実施の形態)
図7に示すように、第2の実施の形態によるプレストレス導入構造1Aは、上述した第1の実施の形態の圧縮力導入側定着部T2におけるピン部材9(図4参照)に代えて袋体12(介挿部材、膨張体)を設けた構成としたものである。すなわち、圧縮力導入側定着部T2は、PC鋼材3に緊張力を与えた状態における第2端板6と押圧板8との間に、例えばアラミド繊維などの高強度の樹脂系の材料からなる袋に例えば遅延剤入りモルタル等の樹脂材121(液状の樹脂)を詰めて膨張した状態の袋体12を介挿させている。
【0034】
この袋体12は、緊張力が与えられたPC鋼材3とともに押圧板8に作用する圧縮方向の力F2に耐え得るだけの強度を有するとともに、圧縮方向に略直交する方向の力に対しては強度が小さく、割れ易い、或いは裂け易い材料であることが好ましい。例えば、繊維の向きを圧縮方向に平行となる軸線方向を中心軸としてスパイラル状に配置させた材料とすることで、圧縮方向に強く、横方向に弱い構造を実現することができる。つまり、袋体12を第2端板6と押圧板8との間に配置することで、それら部材6、8同士の支持状態が維持されている。
【0035】
この場合、コンクリートCを型枠内に打設し、コンクリートCが硬化した後、先端が尖った棒状部材(図示省略)を挿通孔10から挿入させて、袋体12を突き破って穴を開ける。これにより、袋体12が内部のモルタル等の流出により収縮し、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、袋体12を破って収縮させることでその支持状態を極めて簡単に解除することができる。これにより、図8に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
そして、袋体12の内部の樹脂材121(図7参照)がカバー体7の内部空間7aを充填するが、充填量が不足する場合には挿通孔10より上述した第1の実施の形態と同様に硬化材11を注入すれば良い。
【0036】
(第3の実施の形態)
次に、図9に示すように、第3の実施の形態によるプレストレス導入構造1Bは、第2端板6と押圧板8との間に電熱線131を外周に巻き付けた硬化樹脂体13(介挿部材、融解部材)を介挿させた構成としたものである。この硬化樹脂体13は、電熱線131に電流を流すことによって生じる熱により融解する樹脂を硬化させたものであり、例えば軌道レール調節等に用いられる電熱式調整パッキン(HMP)等の材料を採用することができる。
そして、硬化樹脂体13に巻き付けられている電熱線131は、スラブ2の外方へ出されて電源(図示省略)へ繋がっている。
【0037】
第3の実施の形態では、コンクリートCを型枠内に打設し、そのコンクリートCが硬化した後、硬化樹脂体の外周に設けられた電熱線131に電流を流し、発熱させて硬化樹脂体13を融解することで、第2端板6と押圧板8との間のつっかえが外れ、その支持状態を極めて簡単に解除することができる。これにより、図10に示すように、押圧板8はPC鋼材3によって作用する緊張力が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して第2端板6側へ近接する方向へ向けて移動するため、押圧板8がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。なお、融解した樹脂13´は、カバー体7の内部空間7a内を充填することになる。
【0038】
また、本第3の実施の形態によるプレストレス導入構造1Bでは、電熱線131に電流を流すだけの操作となるので、カバー体7のスラブ2の上面2aからの深さ寸法に左右されることがない。つまり、上述した第1、第2の実施の形態によるプレストレス導入構造1、1Aでは、挿通孔10を使って棒状部材でピン部材9を倒したり、袋体12に穴を開けたりする必要があるので、比較的深さの小さい場合が好適であるが、第3の実施の形態では電熱線131が表面から外方に出ていれば良く、とくに深さ寸法が制限を受けることはない。
したがって、本プレストレス導入構造1Bは、梁高が1m程の梁など、PC鋼材3の設置位置が深くなるようなコンクリート部材に対応することができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
次に、図11に示すように、第4の実施の形態によるプレストレス導入構造1Cは、PC鋼材3と、PC鋼材3を挿通させるとともに長手方向中間部で二分割された固定側鋼管14(第1筒状体)および圧縮力導入側鋼管15(第2筒状体)と、PC鋼材3の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で、固定側鋼管14に対して圧縮力導入側鋼管15を支持するピン部材16(介挿部材)と、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との分割部の周囲を覆うカバー体17とを備えている。ここで、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とはそれぞれ同径をなし、同軸線上に係合している。
【0040】
固定側鋼管14は、外筒部141と、圧縮力導入側鋼管15側の一端14a側に圧縮力導入側鋼管15を嵌合させる内筒部142とが形成されるとともに、その内筒部142と反対側の他端14bにはPC鋼材3の固定側端部3aを定着する端板143を備え、外筒部141の圧縮力導入側鋼管15側の一端と内筒部142の端板143側の一端とが連結環144によって連結された構成となっている。その内筒部142の外周側に圧縮力導入側鋼管15が嵌合するようになっている。
圧縮力導入側鋼管15は、一端(当接部15a)側が前記内筒部142に嵌合し、固定側鋼管14とは反対側の他端15bにPC鋼材3の圧縮力導入側端部3bを定着する端板151を備えている。
【0041】
そして、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とを軸方向で離反させることで、PC鋼材3に所定の緊張力を与えることができる。さらに、この離反状態において、固定側鋼管14の連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間に隙間Sが形成され、この隙間Sに複数の前記ピン部材16が介挿されている。このとき、ピン部材16は、その軸方向をPC鋼材3の軸線方向Xに略平行に向けて配置され、鋼管の周方向において適宜な位置に配置されている。具体的には、後述する挿通孔18より棒状部材を挿入してピン部材16を倒すことが可能な位置であって、固定側鋼管14の下側とならない位置にピン部材16が配置されている。
【0042】
また、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との接続部(分割部に相当)は、カバー体17によって覆われており、このカバー体17内の前記隙間Sとスラブ2の上面2aとを連通する挿通孔18が複数のピン部材16に対応する位置に設けられている。挿通孔18は、適宜な棒状部材(図示省略)を挿入可能な孔径により形成されている。なお、棒状部材としては、ピン部材16を押圧して倒し、支持状態を解除することが可能な剛性、太さ寸法を有するものが使用される。
【0043】
本第4の実施の形態では、図11に示すように、構築するスラブ2の所定位置に予め緊張力が与えられたPC鋼材3をセットしておく。すなわち、プレストレス導入構造1は、例えば工場などにおいて、PC鋼材3に緊張力(矢印F1方向)を与えた状態を維持しつつ、固定側鋼管14の連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間に複数のピン部材16を介挿させた状態で予め製作しておく。
【0044】
そして、型枠内にプレストレス導入構造1Cを設置した後にコンクリートCを打設することで、該プレストレス導入構造1CをコンクリートC内に埋設する。このとき、スラブ2の上面2aには挿通孔18の開口18aのみが設けられることになる。
続いて、図12に示すように、打設したコンクリートCが硬化したとき、挿通孔18から前記棒状部材を挿入して、ピン部材16を側方から押して倒す。つまり、連結環144と圧縮力導入側鋼管15の当接部15aとの間のつっかえが外れ、ピン部材16における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力を与えることとなり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。なお、倒れたピン部材16は、カバー体17内に残したままとする。
【0045】
なお、本第4の実施の形態によるプレストレス導入構造1Cでは、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15どうしの分割部をPC鋼材3の長手方向中間部に配置できるので、プレストレス導入の操作位置がPC鋼材3の端部に制限されないという利点がある。
【0046】
(第5の実施の形態)
次に、図13に示す第5の実施の形態によるプレストレス導入構造1Dは、上述した第4の実施の形態のピン部材16(図11参照)に代えて、樹脂入りの袋体19を鋼管内に配置させた構成のものである。
具体的にプレストレス導入構造1Dは、固定側鋼管14が圧縮力導入側鋼管15より大径の筒状をなし、圧縮力導入側鋼管15が固定側鋼管14の内周側に挿通した状態で嵌合している。そして、圧縮力導入側鋼管15が固定側鋼管14の内側にはPC鋼材3の長手方向X全体にわたって袋体19が設けられている。
【0047】
袋体19は、PC鋼棒3に緊張力を与えた状態でPC鋼材3の両端の定着部の端板143、151どうしに密着した状態で配置されている。このときの袋体19は、前記緊張力に耐え得る強度、すなわちPC鋼材3が緊張力に対して元に戻ろうとする力に対抗できる強度を有するものとされる。なお、袋体19は、上述した第2の実施の形態の袋体12と同様の部材から形成されるものであるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0048】
また、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15のうち所定の箇所には、鋼管内の空間とスラブ2の外方とを連通する挿通孔18が適宜な位置に設けられている。
さらに、プレストレス導入前の状態において、図13に示す二点差線のように、圧縮力導入側鋼管15の外周面を覆う被覆部材20を設けておき、打設したコンクリートCと圧縮力導入側鋼管15とが接着しない構成となっている。
【0049】
この場合、コンクリートCを型枠内に打設し、コンクリートCが硬化した後、棒状部材(図示省略)を挿通孔18から挿入させて、袋体19を突き破って穴を開ける。これにより、袋体19の内部のモルタル等が流出して収縮し、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15との間のつっかえが外れ、袋体19における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、図14に示すように、被覆部材20によってコンクリートCに付着していない圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力をかけることになり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
【0050】
(第6の実施の形態)
次に、図15に示す第6の実施の形態によるプレストレス導入構造1Eは、上述した第5の実施の形態において、袋体19(図13参照)に代え、プレストレス導入前でPC鋼材3の緊張力を保持するために、電熱線211を内装した硬化樹脂体21(介挿部材、溶融部材)によって固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15を接着保持させた構成となっている。
すなわち、硬化樹脂体21は、PC鋼棒3に緊張力を与えた状態で固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15とがPC鋼材3の軸線方向Xにオーバーラップする部分を固着している。このときの鋼管14、15どうしの接着強度は、前記緊張力に耐え得る強度、すなわちPC鋼材3が緊張力に対して元に戻ろうとする力に対抗できる強度を有するものとされる。なお、硬化樹脂体21は、上述した第3の実施の形態の硬化樹脂体13(図9参照)と同様の部材から形成されるものであるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0051】
また、硬化樹脂体21に内装されている電熱線(図示省略)は、固定側鋼管14を貫通してスラブの外方にまで伸ばされた状態でコンクリートCが打設される。
さらに、上述した第5の実施の形態と同様に、プレストレス導入前の状態において、図 に示す二点差線のように、圧縮力導入側鋼管15の外周面を覆う被覆部材20を設けておき、打設したコンクリートCと圧縮力導入側鋼管15とが接着しない構成となっている。
【0052】
本第6の実施の形態では、コンクリートCを型枠内に打設し、そのコンクリートCが硬化した後、前記電熱線に電流を流して熱を発生させる。そして、この熱により硬化樹脂体21が融解し、固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15の固着が外れ、硬化樹脂体21における圧縮力導入側鋼管15の固定側鋼管14に対する支持状態を解除することができる。これにより、図16に示すように、被覆部材20によってコンクリートCに付着していない圧縮力導入側鋼管15はPC鋼材3によって作用する緊張力F1が開放され、緊張力F1とは反対方向に戻ろうとする力(矢印F2)が作用して固定側鋼管14側へ近接する方向へ向けて移動するため、圧縮力導入側鋼管15に固定される端板151がコンクリートCを押圧して圧縮力をかけることになり、スラブ2にプレストレスを導入することができる。
【0053】
以上、本発明によるプレストレス導入構造およびプレストレス導入方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では梁2Aを備えた中間スラブを適用対象としているが、これに限定されることはなく、例えば高架橋の張出しスラブに本実施の形態のプレストレス導入構造1、1A〜1Eを適用することも可能である。
【0054】
また、PC鋼材3のコンクリート構造物に対する位置、方向、配置箇所、長さ寸法、配置ピッチ等は、本実施の形態に制限されず、適用するコンクリート構造物の形状、コンクリートの厚さ等の適用条件から予測されるひび割れの発生状態に応じて任意に設定することが可能である。基本的には、予測されるひび割れの方向に対して直角方向にPC鋼材を配置し、ひび割れの発生密度に応じてPC鋼材も集中的に設けたり、広範囲にわたって設けるように設定する。
そして、本実施の形態のようにPC鋼材3の両端部3a、3bの定着部の位置を梁2Aが設けられる位置としているが、定着部の位置についてもとくに制限されることはない。
【0055】
さらに、介挿部材は、本実施の形態に限定されることはなく、ピン部材9、16の形状、径寸法、袋体12、19の大きさ、内部に詰める充填材の材質などは適宜設定することが可能である。例えば、ピン部材として、軸方向中間にヒンジを設けておくことで、軸方向に作用する力には強く、側方からの外力に対しては弱い構造とし、支持状態の解除をし易くすることも可能である。
【0056】
また、本実施の形態では袋体12、19に充填材を詰めた構成としているが、例えばエアや水などの液状体を袋体内に注入出可能な状態とし、介挿部材による支持状態を維持する場合には袋体内にエア等を注入して膨張させ、その支持状態を解除する際には袋体内のエア等を排出することで収縮させる構成のものであっても良い。
【0057】
さらにまた、本第3の実施の形態では、硬化樹脂体13の外周に電熱線131を巻き付けた構成となっているが、これに限らない。要は、熱で硬化樹脂体13が融解すればよいのであって、例えば硬化樹脂体13の内部に電熱線131を埋め込んだ形態であってもよく、また電熱線に代えて高周波誘導による加熱方法を利用したものを採用することもできる。
【0058】
また、第4〜第6の実施の形態において、筒状体の分割部(固定側鋼管14と圧縮力導入側鋼管15と接続部)の位置をPC鋼材3の長手方向で略中央部分としているが、この分割部の位置は任意に設定することができる。
さらに、挿通孔10、18、カバー体7、17の形状、位置、大きさ等の構成についても、PC鋼材3の引張力や介挿部材の種類に応じて任意に設定することが可能である。
なお、本第1乃至第3の実施の形態ではカバー体7を設けた構成としているが、カバー体7は省略することも可能である。
【0059】
さらにまた、本実施の形態では挿通孔10、18より棒状部材を挿入してピン部材9、16の横から棒状部材を押し込んで倒すことでその支持状態を解除しているが、ピン部材9、16の解除方法としてはこれに限定されることはない。例えば、先端に掛止部を備えた紐状部材を挿通孔から差し込み、その掛止部をピン部材に引っ掛けて紐状部材を引き抜くことで倒す方法としても良い。このような紐状部材を用いれば、例えば上述した第4の実施の形態において、固定側鋼管14の下側の位置にピン部材16を配置することも可能である。
また、第2の実施の形態では、袋体12を先端の尖った棒状部材で突き破る方法により、その袋体12を収縮させているが、袋体12を突き破る手段として針状の部材等を用いることも可能であり、その他の手段を採用することも勿論可能である。例えば、カバー体7内で袋体12の入口部を封止する紐状部材を取り外すことで、その入口部を開放して袋体を収縮させるようにしても良い。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0061】
1、1A、1B、1C プレストレス導入構造
2 スラブ(コンクリート構造物)
3 PC鋼材
4 シース管(筒状体)
5 第1端板
6 第2端板
7、17 カバー体
8 押圧板
9、16 ピン部材(介挿部材)
10、18 挿通孔
11 硬化材
12、19 袋体(介挿部材、膨張体)
13、21 硬化樹脂体(介挿部材、融解部材)
14 固定側鋼管(第1筒状体)
15 圧縮力導入側鋼管(第2筒状体)
20 被覆部材
131 電熱線
C コンクリート
F1 緊張力
F2 圧縮力
S 隙間
T1 固定側定着部
T2 圧縮力導入側定着部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、
前記PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部が前記コンクリート構造物内に埋設され、
一方の固定側定着部は、前記筒状体の一端に固定された第1端板に前記PC鋼材の一端が固定されてなり、
他方の圧縮力導入側定着部は、
前記PC鋼材の他端に固定された押圧板と、
前記PC鋼材の他端側を前記押圧板とともに引っ張って緊張力を与えた状態で前記筒状体の他端に固定された第2端板と、
前記押圧板と前記第2端板との間に配置される介挿部材と、
を備え、
前記介挿部材は、前記押圧板の前記第2端板に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴とするプレストレス導入構造。
【請求項2】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、
前記PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部が前記コンクリート構造物内に埋設され、
前記筒状体は、長手方向中間部で二分割され、
前記PC鋼材の一端が二分割された一方の第1筒状体の一端に固定され、前記PC鋼材の他端が他方の第2筒状体に固定され、
前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記第1筒状体と前記第2筒状体との間に配置されるとともに、前記第1筒状体に対して前記第2筒状体を支持する介挿部材が設けられ、
前記介挿部材は、前記第2筒状体の前記第1筒状体に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴とするプレストレス導入構造。
【請求項3】
前記押圧板と前記介挿部材との周囲を覆うカバー体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプレストレス導入構造。
【請求項4】
前記第1筒状体と前記第2筒状体との分割部の周囲がカバー体によって覆われていることを特徴とする請求項2に記載のプレストレス導入構造。
【請求項5】
前記カバー体には、その内部空間と前記コンクリート構造物の外方とを連通する挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のプレストレス導入構造。
【請求項6】
前記介挿部材は、軸方向を略圧縮力導入方向に向けて配置されるピン部材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレストレス導入構造。
【請求項7】
前記介挿部材は、収縮可能な膨張体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレストレス導入構造。
【請求項8】
前記膨張体は、液状の樹脂入り袋体であることを特徴とする請求項7に記載のプレストレス導入構造。
【請求項9】
前記介挿部材は、融解部材と、該融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレストレス導入構造。
【請求項10】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、
前記PC鋼材を筒状体に挿通するとともに、両端の定着部を前記コンクリート構造物内に配置する工程と、
前記筒状体の一端に固定された第1端板に前記PC鋼材の一端を固定する工程と、
前記PC鋼材の他端に押圧板を固定するとともに、前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記筒状体の他端に第2端板を固定する工程と、
前記押圧板と前記第2端板との間に介挿部材を配置するする工程と、
前記コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、前記押圧板の前記第2端板に対する支持状態を解除する工程と、
を有していることを特徴とするプレストレス導入方法。
【請求項11】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、
前記PC鋼材を長手方向中間部で二分割された筒状体に挿通するとともに、両端の定着部を前記コンクリート構造物内に配置する工程と、
前記PC鋼材の一端を二分割された一方の第1筒状体の一端に固定するとともに、前記PC鋼材の他端を他方の第2筒状体に固定する工程と、
前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記第1筒状体と前記第2筒状体との間に介挿部材を設け、前記第1筒状体に対して前記第2筒状体を支持する工程と、
前記コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、前記第2筒状体の前記第1筒状体に対する支持状態を解除する工程と、
を有していることを特徴とするプレストレス導入方法。
【請求項1】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、
前記PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部が前記コンクリート構造物内に埋設され、
一方の固定側定着部は、前記筒状体の一端に固定された第1端板に前記PC鋼材の一端が固定されてなり、
他方の圧縮力導入側定着部は、
前記PC鋼材の他端に固定された押圧板と、
前記PC鋼材の他端側を前記押圧板とともに引っ張って緊張力を与えた状態で前記筒状体の他端に固定された第2端板と、
前記押圧板と前記第2端板との間に配置される介挿部材と、
を備え、
前記介挿部材は、前記押圧板の前記第2端板に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴とするプレストレス導入構造。
【請求項2】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入構造であって、
前記PC鋼材は、筒状体に挿通されるとともに、両端の定着部が前記コンクリート構造物内に埋設され、
前記筒状体は、長手方向中間部で二分割され、
前記PC鋼材の一端が二分割された一方の第1筒状体の一端に固定され、前記PC鋼材の他端が他方の第2筒状体に固定され、
前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記第1筒状体と前記第2筒状体との間に配置されるとともに、前記第1筒状体に対して前記第2筒状体を支持する介挿部材が設けられ、
前記介挿部材は、前記第2筒状体の前記第1筒状体に対する支持状態が解除可能に設けられていることを特徴とするプレストレス導入構造。
【請求項3】
前記押圧板と前記介挿部材との周囲を覆うカバー体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプレストレス導入構造。
【請求項4】
前記第1筒状体と前記第2筒状体との分割部の周囲がカバー体によって覆われていることを特徴とする請求項2に記載のプレストレス導入構造。
【請求項5】
前記カバー体には、その内部空間と前記コンクリート構造物の外方とを連通する挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のプレストレス導入構造。
【請求項6】
前記介挿部材は、軸方向を略圧縮力導入方向に向けて配置されるピン部材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレストレス導入構造。
【請求項7】
前記介挿部材は、収縮可能な膨張体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレストレス導入構造。
【請求項8】
前記膨張体は、液状の樹脂入り袋体であることを特徴とする請求項7に記載のプレストレス導入構造。
【請求項9】
前記介挿部材は、融解部材と、該融解部材の外周及び内部の少なくとも一方に設けられた電熱線とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレストレス導入構造。
【請求項10】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、
前記PC鋼材を筒状体に挿通するとともに、両端の定着部を前記コンクリート構造物内に配置する工程と、
前記筒状体の一端に固定された第1端板に前記PC鋼材の一端を固定する工程と、
前記PC鋼材の他端に押圧板を固定するとともに、前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記筒状体の他端に第2端板を固定する工程と、
前記押圧板と前記第2端板との間に介挿部材を配置するする工程と、
前記コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、前記押圧板の前記第2端板に対する支持状態を解除する工程と、
を有していることを特徴とするプレストレス導入方法。
【請求項11】
PC鋼材を用いてコンクリート構造物にプレストレスを導入するためのプレストレス導入方法であって、
前記PC鋼材を長手方向中間部で二分割された筒状体に挿通するとともに、両端の定着部を前記コンクリート構造物内に配置する工程と、
前記PC鋼材の一端を二分割された一方の第1筒状体の一端に固定するとともに、前記PC鋼材の他端を他方の第2筒状体に固定する工程と、
前記PC鋼材の他端側を引っ張って緊張力を与えた状態で前記第1筒状体と前記第2筒状体との間に介挿部材を設け、前記第1筒状体に対して前記第2筒状体を支持する工程と、
前記コンクリート構造物のコンクリートの打設後において、前記第2筒状体の前記第1筒状体に対する支持状態を解除する工程と、
を有していることを特徴とするプレストレス導入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−144946(P2012−144946A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5876(P2011−5876)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
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