説明

プレス成形品の製造装置及び製造方法

【課題】平板状の被成形部材から平面部及び傾斜部を有するプレス成形品を製造する製造装置及び製造方法において、平板部の平坦度及び弾性材の耐久性を向上させる。
【解決手段】剛性のパンチが直交方向一方側の上死点から他方側の下死点へ移動される際に前記パンチ及び剛性のノックアウトピンによって被成形部材の平面部形成領域を挟持する挟持工程と、被成形部材の傾斜部形成領域を弾性材の直交方向一方側を向く上端面に接触させる接触工程と、傾斜部形成領域を弾性材に押し付けた状態でパンチが下死点に到達する成形工程とを順に行い、且つ、少なくとも成形工程の際には弾性材を保持する保持部材が弾性材の内端面をノックアウトピンの基準側面に押圧させることで弾性材を直交方向と直交する水平方向に圧縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の被成形部材から、平面部及び折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた傾斜部を有する、磁気ヘッドサスペンションにおけるロードビーム等のプレス成形品を製造する製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平板状の被成形部材に対してプレス加工を行ってプレス成形品を製造する製造装置として、ダイスの凹部内に弾性材を挿入し、前記弾性材の背圧によって前記被成形部材をパンチに密着させる製造装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
さらに、被成形部材のパンチ形状への追従性をより向上させることを目的として、金型の凹部内にシリコーン等の高粘性物質を充填すると共に、前記高粘性物質の表面をウレタンシート等の可撓性シートによって覆い、前記可撓性シートを前記金型の凹部周縁部と押さえ板とによって挟持した製造装置も提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0004】
前記特許文献1及び2に記載の製造装置は何れも、弾性変形する前記弾性材又は前記高粘性物質の存在によって、被成形部材の前記パンチ形状への追従性を向上させ得る点においては有効であるが、平面部を有するプレス成形品を製造する際には下記に示す問題が生じる。
【0005】
図10に、平面部を有するプレス成形品を製造する際の前記従来の製造装置の模式図を示す。
図10に示すように、パンチを被成形部材の平面部形成領域に押圧させて前記平面部形成領域と直交する直交方向に沿って弾性材内に圧入させると、前記弾性材のうち前記平面部形成領域の直下に位置する部分は前記直交方向に圧縮されて、一部が横方向外方へ逃げ出ることになる。
この際、前記平面部形成領域に対する前記弾性材の背圧が不均一になり、結果として、前記平面部形成領域によって形成される前記平面部に不規則な捩れや反りが生じ易いという問題があった。
【0006】
さらに、前記従来の製造装置を用いて平面部を有するプレス成形品を製造すると、前記弾性材のうち前記被成形部材の曲げ加工エッジ近傍に位置する部分に損傷が生じ易いという問題も生じる。
即ち、前記パンチによる押圧に応じて前記弾性材のうち前記平面部形成領域の直下に位置する部分の一部が横方向へ逃げ出ると、前記弾性材のうち前記平面部形成領域の側方に位置する部分が前記平面部形成領域と平行な水平方向に圧縮され、その結果、前記弾性材は前記平面部形成領域の側方において前記パンチの圧入方向とは反対方向へ膨出する。
この際、前記弾性材のうち前記被成形部材の折り曲げエッジ近傍の部分には、前記パンチによるパンチ圧入方向への流れ、前記パンチ圧入方向への流れに伴う横方向への流れ、及び、前記弾性材のうち前記平面部形成領域の側方に位置する部分に生じる前記パンチの圧入方向とは逆方向への流れの3方向の流れが生じることになる。
従って、前記弾性材の特に前記折り曲げエッジ近傍の部分に亀裂や破損が生じ易いという問題があった。
【特許文献1】特公昭57−055493号公報
【特許文献2】特開昭60−216930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、平板状の被成形部材から、平面部及び折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた傾斜部を有するプレス成形品を製造する製造装置及び製造方法であって、前記平板部の平坦度を向上させることができ、且つ、備えられる弾性材の耐久性を向上させ得る製造装置及び製造方法の提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成する為に、平板状の被成形部材から、平面部及び折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた傾斜部を有するプレス成形品を製造するプレス成形品の製造装置であって、前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材のうち前記平板部に対応した平板部形成領域が載置される載置面と前記載置面のうち前記折り曲げエッジに対応した基準エッジから前記被成形部材とは反対側へ延びる基準側面とを含み、前記載置面と直交する直交方向に沿って移動可能な剛性のノックアウトピンと、前記ノックアウトピンを前記直交方向一方側へ付勢する第1付勢機構と、前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材を挟んで前記載置面と対向する押圧面を含み、前記直交方向に沿って移動可能な剛性のパンチと、前記パンチが前記直交方向一方側の上死点及び他方側の下死点の間で往復動するように前記パンチを作動的に押動する押動機構と、前記ノックアウトピンの前記基準側面と対向する内端面を有する弾性材と、前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面に向けて押圧させることで前記弾性材を前記載置面に平行な水平方向に圧縮させ得る状態で前記弾性材を保持する保持部材とを備え、前記製造装置は、前記パンチを上死点から下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記押圧面及び前記載置面によって前記平面部形成領域を挟持する挟持工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持した状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを直交方向他方側へ押動するように前記パンチを下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記被成形部材のうち前記傾斜部に対応した傾斜部形成領域を前記弾性材の前記直交方向一方側を向く上端面に接触させる接触工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持し且つ前記傾斜部形成領域を前記弾性材に押し付けた状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを前記直交方向他方側へ押動するように前記パンチを直交方向他方側へ移動させ下死点に到達させる成形工程とをとり得るように構成され、少なくとも前記成形工程の際には、前記保持部材は、前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面に押圧させることで前記弾性材を前記水平方向に圧縮させた圧縮状態に保持するプレス成形品の製造装置を提供する。
【0009】
好ましくは、前記パンチを相対移動不能に支持し且つ前記パンチが上死点及び下死点の間で往復動するように前記押動機構によって前記直交方向に沿って往復動される上ケースと、前記ノックアウトピンを前記直交方向移動可能に支持し且つ前記保持部材を支持する下ケースとをさらに備え、前記保持部材は、前記弾性材の前記内端面が前記基準側面の方向へ突出された状態で、前記弾性材の前記内端面及び前記直交方向一方側を向く上端面以外の端面を拘束しており、前記パンチが下死点近傍に位置する際には、前記上ケース又は前記パンチに形成された拘束面が前記上端面に当接して前記弾性材の前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止するように構成される。
【0010】
より好ましくは、前記上ケースにはカム押動面が設けられ、前記保持部材は前記下ケースに前記水平方向移動可能に支持され、前記下ケースには前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面から離間させる前記水平方向一方側へ前記保持部材を付勢する第2付勢機構が設けられ、前記保持部材には前記カム押動面に対応したカム従動面が設けられる。
前記カム押動面及び前記カム従動面は、前記製造装置の少なくとも前記成形工程中における前記上ケースの前記直交方向一方側から他方側への移動に応じて、前記内端面が前記基準側面に押圧させられる水平方向他方側へ前記保持部材を前記第2付勢機構の付勢力に抗して押動するように係合する。
【0011】
一形態においては、前記基準側面は、前記載置面を挟んで前記水平方向一方側及び他方側に位置する一対の第1及び第2基準側面を含み、前記弾性材は、内端面が前記第1及び第2基準側面にそれぞれ対向する一対の第1及び第2弾性材を含み、且つ、前記保持部材は、前記第1及び第2弾性材をそれぞれ保持し且つ前記ノックアウトピンを挟んで対向配置される一対の第1及び第2保持部材を含む。
前記第2付勢機構は、前記第1及び第2保持部材を互いに対して離間させる方向へ付勢するように構成される。
【0012】
又、本発明は、前記目的を達成する為に、平板状の被成形部材から、平面部及び前記平面部の両側に位置する一対の折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた一対の傾斜部を有するプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材のうち前記平板部に対応した平板部形成領域が載置される載置面と前記載置面のうち前記一対の折り曲げエッジに対応した一対の基準エッジから前記被成形部材とは反対側へそれぞれ延びる一対の基準側面とを含む剛性のノックアウトピンを前記載置面と直交する直交方向に沿って移動可能に配設する工程と、前記ノックアウトピンを前記直交方向一方側へ付勢するように第1付勢機構を配設する工程と、前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材を挟んで前記載置面と対向する押圧面を含み剛性のパンチを前記直交方向に沿って移動可能に配設する工程と、前記パンチが前記直交方向一方側の上死点及び他方側の下死点の間で往復動するように前記パンチを作動的に押動する押動機構を用意する工程と、内端面が前記ノックアウトピンの前記一対の基準側面とそれぞれ対向する一対の弾性材を用意する工程と、前記一対の弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面に向けて押圧させることで前記一対の弾性材を前記載置面に平行な水平方向に圧縮させ得るように前記一対の弾性材をそれぞれ保持する一対の保持部材を配設する工程と、前記パンチを上死点から下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記押圧面及び前記載置面によって前記平面部形成領域を挟持する挟持工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持した状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを直交方向他方側へ押動するように前記パンチを下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記被成形部材のうち前記一対の傾斜部に対応した一対の傾斜部形成領域を前記一対の弾性材の前記直交方向一方側を向く上端面にそれぞれ接触させる接触工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持し且つ前記一対の傾斜部形成領域を前記一対の弾性材にそれぞれ押し付けた状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを前記直交方向他方側へ押動するように前記パンチを直交方向他方側へ移動させ下死点に到達させる成形工程とを含み、少なくとも前記成形工程の際には、前記一対の保持部材は、前記一対の弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面に押圧させることで前記一対の弾性材を前記水平方向に圧縮させた圧縮状態に保持しているプレス成形品の製造方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記パンチを相対移動不能に支持し且つ前記パンチが上死点及び下死点の間で往復動するように前記押動機構によって前記直交方向に沿って往復動される上ケースを用意する工程と、前記ノックアウトピンを前記直交方向移動可能に支持し且つ前記一対の保持部材を前記水平方向移動可能に支持する下ケースを用意する工程とをさらに含み、前記一対の保持部材は、対応する前記弾性材の前記内端面が対応する前記基準側面の方向へ突出された状態で、対応する前記弾性材の前記内端面及び前記直交方向一方側を向く上端面以外の端面を拘束しており、前記パンチが下死点近傍に位置する際には、前記上ケース又は前記パンチに形成された拘束面が前記一対の弾性材の前記上端面に当接して前記一対の弾性材の前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止するように構成される。
【0014】
より好ましくは、前記上ケースにはカム押動面が設けられ、前記下ケースには前記一対の弾性材の前記内端面が前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面から離間するように、前記一対の保持部材を互いに対して離間させる方向へ付勢する第2付勢機構が設けられ、且つ、前記一対の保持部材には前記カム押動面に対応したカム従動面が設けられる。
前記カム押動面及び前記カム従動面は、少なくとも前記成形工程中における前記上ケースの前記直交方向一方側から他方側への移動に応じて、前記一対の弾性材の前記内端面が対応する前記基準側面に押圧させられる水平方向他方側へ前記一対の保持部材を前記第2付勢機構の付勢力に抗して押動するように係合する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプレス成形品の製造装置及び製造方法は、剛性のパンチが直交方向一方側の上死点から他方側の下死点へ移動される際に、前記パンチの押圧面及び剛性のノックアウトピンの載置面によって被成形部材の平面部形成領域を挟持する挟持工程と、前記被成形部材の傾斜部形成領域を弾性材の前記直交方向一方側を向く上端面に接触させる接触工程と、前記傾斜部形成領域を前記弾性材に押し付けた状態で前記パンチが下死点に到達する成形工程とを順に行い、且つ、少なくとも前記成形工程の際には、前記弾性材を保持する保持部材が、前記弾性材の内端面を前記ノックアウトピンの基準側面に押圧させることで前記弾性材を前記直交方向と直交する水平方向に圧縮させている。
従って、平面部形成領域に弾性材の背圧を受ける従来の製造装置及び製造方法に比して、前記平面部形成領域によって形成される平面部の平坦度を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る前記製造装置及び製造方法によれば、前記成形工程の際に前記弾性材には、水平方向への圧縮による水平方向の流れ、及び、水平方向の圧縮に伴う前記直交方向一方側(前記パンチの圧入方向とは反対側)への流れが生じるものの、前記直交方向他方側(前記パンチの圧入方向)への流れは実質的に生じない。
従って、被成形部材からプレス成形品を成形する際に、弾性材にパンチ圧入方向の流れ、パンチ圧入方向とは直交する水平方向の流れ、及び、パンチ圧入方向とは反対方向の流れを含む3方向の流れが生じる従来の製造装置に比して、前記弾性材の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るプレス成形品の製造装置の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施の形態に係る製造装置1は、平板状の被成形部材から、平面部及び折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた傾斜部を有するプレス成形品を製造するように構成されている。
なお、本実施の形態においては、前記プレス成形品として、磁気ヘッドサスペンションにおけるフランジ付のロードビーム900を例に説明する。
【0018】
図1に、前記ロードビーム900の平面図を示す。
前記ロードビーム900は、基端部が前記磁気ヘッドサスペンションにおける荷重曲げ部950に連結され且つ磁気ディスクと対向する面において前記磁気ヘッドサスペンションにおけるフレクシャ部を支持する部材であり、前記荷重曲げ部によって発生された荷重を前記フレクシャ部に支持された磁気ヘッドスライダに伝達する為に所定の剛性が要求される。
【0019】
従って、好ましくは、前記ロードビーム900は、図1に示すように、平面部910と、前記平面部910の両側縁から折り曲げられ、一対のフランジ部として作用する一対の傾斜部920a,920bとを一体的に有し得る。
前記平面部910は、ディスク面と対向する面に前記フレクシャ部が接合される為、所定の平坦性が要求される。
なお、図1に示す前記ロードビーム900は、前記荷重曲げ部950と共に一体形成されている。
【0020】
図2に本実施の形態に係るプレス成形品の製造装置1の上方斜視図を、図3にその拡大図を示す。
又、図4に前記製造装置1の下方斜視図を示す。
【0021】
図2〜図4に示すように、前記製造装置1は、プレス成形品(本実施の形態においては前記ロードビーム900)の平面部910(図1参照)に対応した形状を有し且つ被成形部材900’(下記図5及び図7参照)における前記平板部910に対応した平板部形成領域910’(下記図5及び図7参照)が載置される載置面11を有し、前記載置面11と直交する直交方向に移動可能な剛性のノックアウトピン10と、前記ノックアウトピン10を前記直交方向一方側へ付勢する第1付勢機構(図示せず)と、前記平面部910に対応した形状を有し且つ被成形部材900’を挟んで前記載置面11と対向する押圧面21を含み、前記直交方向に沿って移動可能な剛性のパンチ20と、前記パンチ20が前記直交方向一方側の上死点及び他方側の下死点の間で往復動するように前記パンチ20を作動的に押動するエアシリンダ又は油圧シリンダ等の押動機構(図示せず)と、前記ノックアウトピン10と対向する内端面31を有する弾性材30と、前記弾性材30を保持する保持部材40とを備えている。
【0022】
図5及び図6に、それぞれ、前記製造装置1の縦断正面図及び部分縦断斜視図を示す。
図5及び図6に示すように、前記ノックアウトピン10は、前記載置面11に加えて、前記載置面11のうち前記折り曲げエッジに対応した基準エッジから前記被成形部材900’とは反対側へ延び且つ前記弾性材30の内端面31が対向する基準側面12を備えている。
【0023】
前述の通り、本実施の形態に係る前記製造装置1は、前記平面部910及び前記一対の傾斜部910を一体的に備えたプレス成形品(前記ロードビーム900)を形成するように構成されている。
従って、前記ノックアウトピン10は、図5及び図6に示すように、前記基準側面12として、前記載置面11のうち一方の傾斜部920a(図1参照)の折り曲げエッジに対応した第1基準エッジから前記被成形部材900’とは反対側へ延びる第1基準側面12aと、前記載置面11のうち他方の傾斜部920b(図1参照)の折り曲げエッジに対応した第2基準エッジから前記被成形部材900’とは反対側へ延びる第2基準側面12bとを含んでいる。
【0024】
同様に、本実施の形態に係る前記製造装置1は、図3,図5及び図6に示すように、前記弾性材30として、内端面31が前記第1基準側面12aと対向する第1弾性材30aと、内端面31が前記第2基準側面12bと対向する第2弾性材30bとを含み、且つ、前記保持部材40として、前記第1及び第2弾性材30a,30bをそれぞれ保持し且つ前記ノックアウトピン10を挟んで対向配置される一対の第1及び第2保持部材40a,40bを含んでいる。
【0025】
前記第1及び第2保持部材40a,40bの各々は、対応する前記弾性材30a,30bの前記内端面31を前記ノックアウトピン10の対応する前記基準側面12a,12bに押圧させることで対応する前記弾性材30a,30bを前記載置面11に平行な水平方向に圧縮させ得るように、対応する前記弾性材30a,30bを保持している。
【0026】
詳しくは、前記第1及び第2弾性材30a,30bの各々は、図3に示すように、対応する前記基準側面12a,12bと対向する前記内端面31と、前記内端面31とは反対側を向く外端面32と、前記直交方向一方側を向く上端面33と、前記直交方向他方側を向く下端面34と、前記内端面31,前記外端面32,前記上端面33及び前記下端面34の一方側のエッジを連結するように前記直交方向に沿った第1横端面35と、前記内端面31,前記外端面32,前記上端面33及び前記下端面34の他方側のエッジを連結するように前記直交方向に沿い且つ前記第1横端面35とは反対側を向く第2横端面36とを有している。
【0027】
本実施の形態においては、前記第1及び第2保持部材40a,40bの各々は、対応する前記弾性材30a,30bの前記内端面31が対応する前記基準側面12a,12bの方向へ突出された状態で、前記内端面31及び前記上端面33以外の前記弾性材30a,30bの端面を拘束するように構成されている。
具体的には、前記第1及び第2保持部材40a,40bの各々には、対応する前記基準側面12a,12bの方向及び前記直交方向一方側の2方向に開く凹部41(図5及び図6参照)が形成されており、前記弾性材30a,30bは、前記内端面31が対応する基準側面12a,12bの方向へ突出された状態で前記下端面34,前記外端面32,前記第1横端面35及び前記第2横端面36のそれぞれの少なくとも一部が前記凹部41の内周面に当接されている。
【0028】
図2,図4及び図5に示すように、本実施の形態に係る前記製造装置1においては、前記パンチ20は上ケース50に支持されており、且つ、前記ノックアウトピン10,前記第1及び第2保持部材40a,40b並びに前記1及び第2弾性材30a,30bは下ケース60に支持されている。
【0029】
即ち、前記製造装置1は、さらに、前記パンチ20を相対移動不能に支持し且つ前記パンチ20が上死点及び下死点の間で往復動するように前記押動機構によって前記直交方向に沿って往復動される前記上ケース50と、前記ノックアウトピン10を前記直交方向移動可能に支持し且つ前記保持部材40a,40bを前記水平方向移動可能に支持する固定の前記下ケース60とを備えている。
前記下ケース60には、前記保持部材40a,40bを前記水平方向に沿ってガイドするガイド溝が形成されている。
【0030】
ここで、前記製造装置1の動作フローについて説明する。
図7に、前記製造装置1の模式工程図を示す。
【0031】
前記パンチ20が上死点に位置する前記製造装置1の初期状態においては、前記パンチ20の前記押圧面21は前記ノックアウトピン10の前記載置面11から前記直交方向一方側へ離間されており、前記載置面11の上に被成形部材900’を載置させ得るようになっている(図7(a)参照)。
なお、図7(a)に示すように、前記被成形部材900’の前記平面部形成領域910’が前記載置面11上に載置され且つ前記被成形部材900’における前記傾斜部920に対応した傾斜部形成領域920’は前記載置面11から水平方向外方へ突出されている。
【0032】
前記パンチ20が上死点から前記直交方向他方側へ移動すると、前記製造装置1は、前記押圧面21及び前記載置面11が前記平面部形成領域910’を挟持する挟持工程に移行する(図7(b)参照)。
【0033】
前記パンチ20が引き続いて下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動すると、前記製造装置1は、前記押圧面21及び前記載置面11が前記平面部形成領域900’を挟持した状態で前記第1付勢機構(図示せず)の付勢力に抗して前記ノックアウトピン10を前記直交方向他方側へ押動して、前記被成形部材900’の前記傾斜部形成領域920’を前記弾性材30a,30bの前記上端面33に接触させる接触工程へ移行する(図7(c)参照)。
【0034】
前記パンチ20が引き続いて前記直交方向他方側へ移動すると、前記製造装置1は、前記押圧面21及び前記載置面11が前記平面部形成領域910’を挟持し且つ前記傾斜部形成領域920’を前記弾性材30a,30bに押し付けた状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピン10を前記直交方向他方側へ押動しつつ前記パンチ20が下死点に到達する成形工程に移行する(図7(d)及び(e)参照)。
【0035】
そして、前記製造装置1は、少なくとも前記成形工程の際には、前記保持部材40a,40bが対応する前記弾性材30a,30bの前記内端面31を前記ノックアウトピン10の対応する前記基準側面12a,12bに押圧させることで前記弾性材30a,30bを水平方向に圧縮させた圧縮状態に保持するように構成されている。
【0036】
斯かる構成の前記製造装置1においては以下の効果を得ることができる。
まず、前記平面部910の平坦度を向上させることができる。
即ち、本実施の形態に係る前記製造装置1においては、前記被成形部材900’からプレス成形品900を製造する過程において、前記被成形部材900’の前記平面部形成領域910’は剛性の前記パンチ20と剛性の前記ノックアウトピン10とによって挟持されている。
つまり、本実施の形態に係る前記製造装置1においては、プレス成形品900の製造過程において前記平面部形成領域910’に前記弾性材30a,30bからの不均一な背圧が作用することがなく、従って、前記平面部910の平坦度を向上させることができる。
【0037】
次に、前記弾性材30a,30bの耐久性を向上させることができる。
即ち、本実施の形態に係る前記製造装置1においては、前記成形工程の際に、前記弾性材30a,30bは、前記内端面31が対応する前記基準側面12a,12bに押圧されて水平方向に圧縮された圧縮状態に保持されている。
この際、前記弾性材30a,30bには、水平方向への圧縮による水平方向の流れ、及び、水平方向の圧縮に伴う前記直交方向一方側への流れは生じるものの、前記直交方向他方側への流れは生じない(図8参照)。
従って、弾性材に、パンチ圧入方向の流れ、パンチ圧入方向とは直交する水平方向の流れ、及び、パンチ圧入方向とは反対方向の流れを含む3方向の流れが生じる従来の製造装置(図10参照)に比して、前記弾性材30a,30bの耐久性を向上させることができる。
【0038】
さらに、本実施の形態に係る前記製造装置1は、前記傾斜部形成領域920’に急激に力が作用することを防止しつつ、前記傾斜部形成領域920’を前記平面部形成領域910’から確実に折り曲げ成形する為に、下記構成を備えている。
【0039】
即ち、前述の通り、本実施の形態に係る前記製造装置1においては、前記第1及び第2保持部材40a,40bの各々は、対応する前記弾性材30a,30bにおける前記内端面31及び前記上端面33以外の端面を拘束するように構成されている。
つまり、前記保持部材40a,40bは、対応する前記弾性材30a,30bの前記内端面31及び前記上端面33を開放した状態で、他の端面32,34〜36を拘束している。
【0040】
斯かる構成において、前記製造装置1は、前記パンチ20が下死点近傍に位置する際には、前記上ケース50又は前記パンチ20に形成された拘束面70が前記上端面33に当接して前記弾性材30a,30bの前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止するように構成されている。
なお、本実施の形態においては、図4,図5及び図7に示すように、前記拘束面70は前記パンチ20に形成されている。
【0041】
斯かる構成によれば、前記成形工程の初期段階においては、前記弾性材30a,30bは水平方向への圧縮に伴って前記直交方向一方側へ前記拘束面70との間隙内において弾性膨出変形が許容される(図7(d)参照)。従って、前記傾斜部形成領域920’の曲げ成形開始時には、前記傾斜部形成領域920’にそれ程大きな力が作用しない。
そして、前記成形工程の最終段階においては、前記拘束面70が前記弾性材30a,30bの前記上端面33に当接して前記弾性材30a,30bの前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止する(図7(e)参照)。従って、前記弾性材30a,30bから前記傾斜部形成領域920’に十分な力が作用し、これにより、前記傾斜部形成領域920’が前記平面部形成領域910’から確実に折り曲げ成形される。
【0042】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記拘束面70は前記パンチ20に形成されているが、当然ながら、前記拘束面70を前記上ケース50に一体的又は別体的に形成することも可能である。
【0043】
好ましくは、少なくとも前記成形工程においては、前記パンチ20が下死点に近づくに従って前記弾性材30a,30bの水平方向への圧縮度が増すように構成することができる。
斯かる構成によれば、前記成形工程において前記弾性材30a,30bから前記傾斜部形成領域920’に作用する力を前記パンチ20が下死点に近づくに従って徐々に大きくすることができ、前記弾性材30a,30b及び前記傾斜部形成領域920’に急激な負荷が作用することを防止しつつ、最終的には前記傾斜部形成領域920’に十分な力を作用させることができる。
【0044】
本実施の形態に係る前記製造装置1は、カム機構を利用して、少なくとも前記成形工程においては前記パンチ20が下死点に近づくに従って前記弾性材30a,30bの水平方向への圧縮度が増すように構成されている。
【0045】
具体的には、図2に示すように、前記第1及び第2保持部材40a,40bは、前記ガイド溝を介して水平方向移動可能に前記下ケース60に支持されている。
本実施の形態においては、前記第1及び第2保持部材40a,40bは、対応する前記基準側面12a,12bに直交する方向に沿って移動可能とされている。
【0046】
前記下ケース60には、前記弾性材30の前記内端面31を前記ノックアウトピン10の前記基準側面12から離間させる水平方向一方側へ前記保持部材40を付勢する第2付勢機構(図示せず)が設けられている。
本実施の形態においては、前述の通り、前記保持部材40として、前記ノックアウトピン10を挟んで対向する前記第1及び第2保持部材40a,40bが備えられている。
斯かる構成においては、前記第2付勢機構は、前記第1及び第2保持部材40a,40bを互いに対して離間させる方向へ付勢するように構成される。
【0047】
図2,図4及び図5に示すように、前記上ケース50にはカム押動面81が設けられており、且つ、前記第1及び第2保持部材40a,40bには前記カム押動面81に対応したカム従動面82が設けられている。
【0048】
図9に、図5におけるIX部拡大図を示す。
なお、図9(a)〜(d)は、それぞれ、前記製造装置1の初期状態,挟持工程,接触工程及び成形工程を示している。
【0049】
前記カム押動面81は、初期状態においては、前記カム従動面82から前記直交方向一方側に離間している(図8(a)参照)。
初期状態から挟持工程へ移行すると、前記カム押動面81が前記カム従動面82に係合し始める(図8(b)参照)。
そして、接触工程及び成形工程においては、前記パンチ20が前記直交方向他方側へ行くに従って(即ち、下死点へ近づくに従って)、前記カム押動面81及び前記カム従動面82のカム作用によって、前記第1及び第2保持部材40a,40bが前記ノックアウトピン10の対応する前記基準側面12a,12bに近接する方向へ移動するようになっている。
【0050】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、挟持工程において前記カム押動面81が前記カム従動面82に係合し始めるように構成されているが、少なくとも成形工程においては前記パンチ20が下死点に近づくに従って前記第1及び第2保持部材40a,40bが対応する前記基準側面12a,12bへ近接する限り、種々の構成をとり得る。
例えば、接触工程において前記カム押動面81及び前記カム従動面82が接触し始めるように構成することも可能であるし、成形工程において両面が接触し始めるように構成することも可能である。
【0051】
又、本実施の形態においては、前記カム押動面81が前記パンチ20と共に移動するように(即ち、前記パンチ20を上下動させる前記押動機構によって前記カム押動面81を上下動させるように)構成したが、これに代えて、前記カム押動面81を前記パンチ20用の前記押動機構とは異なる第2押動機構(例えばエアシリンダ又は油圧シリンダ)によって上下動させることも可能である。
このように、前記カム押動面81を前記第2押動機構によって前記パンチ20とは独立して上下動させることにより、前記弾性材30a、30bの圧縮制御を前記パンチ20の上下動とは独立して行うことができ、例えば、前記パンチが下死点に到達した後に前記弾性材30a,30bが最大圧縮状態となるように前記弾性材30a,30bの圧縮制御を行うことが可能となる。
【0052】
又、前記カム機構を利用せずに、油圧シリンダ又はエアシリンダ等の第2押動機構によって前記保持部材40a,40bを前記水平方向に押動させるように構成することも可能である。
斯かる構成によっても、前記弾性材30a、30bの圧縮制御を前記パンチ20の上下動とは独立して行うことができる。
【0053】
さらに、本実施の形態においては、前述の通り、成形工程の初期段階においては前記弾性材30a,30bが前記直交方向一方側へ弾性膨出変形することを許容しつつ、成形工程の最終段階においては前記弾性材30a,30bの前記直交方向一方側への弾性膨出変形を防止する為に、前記拘束面70を前記上ケース側(図示の形態においては前記パンチ20)に設けたが、これに代えて、前記保持部材40a,40bに前記弾性材30a,30bの前記直交方向一方側への弾性膨出変形を制限する規制面を設けることも可能である。
この場合には、前記規制面は、前記弾性材30a,30bの前記上端面33のうち前記直交方向に沿って視た際に前記傾斜部形成領域920’がオーバーラップする領域以外の領域と当接するように構成される。
【0054】
又、本実施の形態においては、前述の通り、前記パンチ20が下死点に近づくに従って前記保持部材40a,40bが対応する前記基準側面12a,12bに近接するように構成されているが、これに代えて、前記保持部材40a,40b及び前記基準側面12a,12bによって前記弾性材30a,30bが全製造工程に亘って一定の圧縮状態に保持されるように、前記保持部材40a,40bを固定設置することも可能である。
【0055】
なお、前記平面部910から折り曲げられた前記傾斜部920とは、前記平面部910に対して曲げ加工される態様に加えて、前記平面部910に対して絞り加工される態様も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る製造装置によって製造されるプレス成形品の一例であるロードビームの平面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態に係る製造装置の上方斜視図である。
【図3】図3は、前記製造装置の部分拡大斜視図である。
【図4】図4は、前記製造装置の下方斜視図である。
【図5】図5は、前記製造装置の縦断正面図である。
【図6】図6は、前記製造装置の部分縦断斜視図である。
【図7】図7は、前記製造装置の模式工程図である。
【図8】図8は、前記製造装置の成形工程における弾性材の流れ方向を示す模式図である。
【図9】図9は、図5におけるIX部の模式工程図である。
【図10】図10は、従来の製造装置の成形工程における弾性材の流れ方向を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 製造装置
10 ノックアウトピン
11 載置面
12 基準側面
12a,12b 第1及び第2基準側面
20 パンチ
21 押圧面
30 弾性材
30a,30b 第1及び第2弾性材
31 内端面
33 上端面
40 保持部材
40a,40b 第1及び第2保持部材
50 上ケース
60 下ケース
70 拘束面
81 カム押動面
82 カム従動面
900 ロードビーム(プレス成形品)
910 平面部
920 傾斜部
900’ 被成形部材
910’ 平面部形成領域
920’ 傾斜部形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の被成形部材から、平面部及び折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた傾斜部を有するプレス成形品を製造するプレス成形品の製造装置であって、
前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材のうち前記平板部に対応した平板部形成領域が載置される載置面と前記載置面のうち前記折り曲げエッジに対応した基準エッジから前記被成形部材とは反対側へ延びる基準側面とを含み、前記載置面と直交する直交方向に沿って移動可能な剛性のノックアウトピンと、
前記ノックアウトピンを前記直交方向一方側へ付勢する第1付勢機構と、
前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材を挟んで前記載置面と対向する押圧面を含み、前記直交方向に沿って移動可能な剛性のパンチと、
前記パンチが前記直交方向一方側の上死点及び他方側の下死点の間で往復動するように前記パンチを作動的に押動する押動機構と、
前記ノックアウトピンの前記基準側面と対向する内端面を有する弾性材と、
前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面に向けて押圧させることで前記弾性材を前記載置面に平行な水平方向に圧縮させ得る状態で前記弾性材を保持する保持部材とを備え、
前記製造装置は、前記パンチを上死点から下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記押圧面及び前記載置面によって前記平面部形成領域を挟持する挟持工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持した状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを直交方向他方側へ押動するように前記パンチを下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記被成形部材のうち前記傾斜部に対応した傾斜部形成領域を前記弾性材の前記直交方向一方側を向く上端面に接触させる接触工程と、前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持し且つ前記傾斜部形成領域を前記弾性材に押し付けた状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを前記直交方向他方側へ押動するように前記パンチを直交方向他方側へ移動させ下死点に到達させる成形工程とをとり得るように構成され、
少なくとも前記成形工程の際には、前記保持部材は、前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面に押圧させることで前記弾性材を前記水平方向に圧縮させた圧縮状態に保持することを特徴とするプレス成形品の製造装置。
【請求項2】
前記パンチを相対移動不能に支持し且つ前記パンチが上死点及び下死点の間で往復動するように前記押動機構によって前記直交方向に沿って往復動される上ケースと、
前記ノックアウトピンを前記直交方向移動可能に支持し且つ前記保持部材を支持する下ケースとを備え、
前記保持部材は、前記弾性材の前記内端面が前記基準側面の方向へ突出された状態で、前記弾性材の前記内端面及び前記直交方向一方側を向く上端面以外の端面を拘束しており、
前記パンチが下死点近傍に位置する際には、前記上ケース又は前記パンチに形成された拘束面が前記上端面に当接して前記弾性材の前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形品の製造装置。
【請求項3】
前記上ケースにはカム押動面が設けられ、
前記保持部材は前記下ケースに前記水平方向移動可能に支持され、
前記下ケースには前記弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの前記基準側面から離間させる前記水平方向一方側へ前記保持部材を付勢する第2付勢機構が設けられ、
前記保持部材には前記カム押動面に対応したカム従動面が設けられ、
前記カム押動面及び前記カム従動面は、前記製造装置の少なくとも前記成形工程中における前記上ケースの前記直交方向一方側から他方側への移動に応じて、前記内端面が前記基準側面に押圧させられる水平方向他方側へ前記保持部材を前記第2付勢機構の付勢力に抗して押動するように係合することを特徴とする請求項2に記載のプレス成形品の製造装置。
【請求項4】
前記基準側面は、前記載置面を挟んで前記水平方向一方側及び他方側に位置する一対の第1及び第2基準側面を含み、
前記弾性材は、内端面が前記第1及び第2基準側面にそれぞれ対向する一対の第1及び第2弾性材を含み、
前記保持部材は、前記第1及び第2弾性材をそれぞれ保持し且つ前記ノックアウトピンを挟んで対向配置される一対の第1及び第2保持部材を含み、
前記第2付勢機構は、前記第1及び第2保持部材を互いに対して離間させる方向へ付勢していることを特徴とする請求項3に記載のプレス成形品の製造装置。
【請求項5】
平板状の被成形部材から、平面部及び前記平面部の両側に位置する一対の折り曲げエッジにおいて前記平面部から折り曲げられた一対の傾斜部を有するプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材のうち前記平板部に対応した平板部形成領域が載置される載置面と前記載置面のうち前記一対の折り曲げエッジに対応した一対の基準エッジから前記被成形部材とは反対側へそれぞれ延びる一対の基準側面とを含む剛性のノックアウトピンを前記載置面と直交する直交方向に沿って移動可能に配設する工程と、
前記ノックアウトピンを前記直交方向一方側へ付勢するように第1付勢機構を配設する工程と、
前記平面部に対応した形状を有し且つ前記被成形部材を挟んで前記載置面と対向する押圧面を含み剛性のパンチを前記直交方向に沿って移動可能に配設する工程と、
前記パンチが前記直交方向一方側の上死点及び他方側の下死点の間で往復動するように前記パンチを作動的に押動する押動機構を用意する工程と、
内端面が前記ノックアウトピンの前記一対の基準側面とそれぞれ対向する一対の弾性材を用意する工程と、
前記一対の弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面に向けて押圧させることで前記一対の弾性材を前記載置面に平行な水平方向に圧縮させ得るように前記一対の弾性材をそれぞれ保持する一対の保持部材を配設する工程と、
前記パンチを上死点から下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記押圧面及び前記載置面によって前記平面部形成領域を挟持する挟持工程と、
前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持した状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを直交方向他方側へ押動するように前記パンチを下死点へ向けて前記直交方向他方側へ移動させ、前記被成形部材のうち前記一対の傾斜部に対応した一対の傾斜部形成領域を前記一対の弾性材の前記直交方向一方側を向く上端面にそれぞれ接触させる接触工程と、
前記押圧面及び前記載置面が前記平面部形成領域を挟持し且つ前記一対の傾斜部形成領域を前記一対の弾性材にそれぞれ押し付けた状態で前記第1付勢機構の付勢力に抗して前記ノックアウトピンを前記直交方向他方側へ押動するように前記パンチを直交方向他方側へ移動させ下死点に到達させる成形工程とを含み、
少なくとも前記成形工程の際には、前記一対の保持部材は、前記一対の弾性材の前記内端面を前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面に押圧させることで前記一対の弾性材を前記水平方向に圧縮させた圧縮状態に保持していることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項6】
前記パンチを相対移動不能に支持し且つ前記パンチが上死点及び下死点の間で往復動するように前記押動機構によって前記直交方向に沿って往復動される上ケースを用意する工程と、
前記ノックアウトピンを前記直交方向移動可能に支持し且つ前記一対の保持部材を前記水平方向移動可能に支持する下ケースを用意する工程とを含み、
前記一対の保持部材は、対応する前記弾性材の前記内端面が対応する前記基準側面の方向へ突出された状態で、対応する前記弾性材の前記内端面及び前記直交方向一方側を向く上端面以外の端面を拘束しており、
前記パンチが下死点近傍に位置する際には、前記上ケース又は前記パンチに形成された拘束面が前記一対の弾性材の前記上端面に当接して前記一対の弾性材の前記直交方向一方側への弾性膨張変形を防止することを特徴とする請求項5に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項7】
前記上ケースにはカム押動面が設けられ、
前記下ケースには前記一対の弾性材の前記内端面が前記ノックアウトピンの対応する前記基準側面から離間するように、前記一対の保持部材を互いに対して離間させる方向へ付勢する第2付勢機構が設けられ、
前記一対の保持部材には前記カム押動面に対応したカム従動面が設けられ、
前記カム押動面及び前記カム従動面は、少なくとも前記成形工程中における前記上ケースの前記直交方向一方側から他方側への移動に応じて、前記一対の弾性材の前記内端面が対応する前記基準側面に押圧させられる水平方向他方側へ前記一対の保持部材を前記第2付勢機構の付勢力に抗して押動するように係合することを特徴とする請求項6に記載のプレス成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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