説明

プレス成形用クッション材、その製造方法およびそれを用いたプレス成形方法

【課題】被成形体全体に均等にプレス圧を伝達するための成形生に優れたプレス成形用クッション材およびそれを用いたプレス成形方法を提供する。
【解決手段】熱プレス成形用のクッション材は、1層または2層以上のフェルト層14と、超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層12a,12bと、を具備する。このクッション材はフェルト層とポリマー層とが交互に積層接着されており、表面に凹凸形状を有する電子機器部品を含む被成形体を熱プレス成形するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板等の被成形体をプレス成形する際に用いるクッション材に関する。より具体的には、被成形体全体に均等にプレス圧を伝達するためのプレス成形用クッション材およびそのクッション材を用いたプレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板等の電子機器部品の製造において、その表面に施された配線パターンを保護するため、これを保護シートで被覆する必要がある。この際、プレス成形や熱圧着により保護シートの被覆が行われるが、熱と圧力を全体に均等に加えるため熱盤と被成形体(たとえばプリント回路基板)との間にクッション材が設けられる。
【0003】
たとえばこのような熱プレス用クッション材として、ニードルパンチで一体化された不織布を用いて、クッション性および熱伝達性を高めたものが特許文献1に記載されており、このクッション材によれば、プリント回路基板に多少の凹凸があっても、ある程度均一化して圧力を加えることができた。しかし、このクッション材を被成形体に近接した位置で保護シートの圧着のために使用すると、フェルトの基布マークやニードルマークが保護フィルムに転写されるなどの問題があった。さらに、回路基板上の配線パターンにより出現する凹凸形状は、微細加工技術の発展に伴って極めて微細になっており、フィルムの圧着工程において配線保護フィルムをこの微細な凹凸形状に密着させることが困難であるため、空隙(ボイド)を除去しきれなかったり、フィルムの圧着位置がずれるなどの問題があった。
【0004】
また、フレキシブルプリント基板の製造工程において、ポリイミド系フィルムを基材とするカバーレイフィルムをフレキシブル基板に圧着させる際に、配線部の凹凸に起因して生じるボイドの発生に対処したクッション材が特許文献2に記載されている。この文献には、耐熱性ゴムからなるクッション材であって、芯材として耐熱性樹脂を含浸させたガラスクロスを用い、表面層にアルミニウム板を張り合わせたものが記載されている。しかし、このクッション材を用いても、プレス圧が作用する方向にある程度の弾力性を提供するに過ぎないため、基板の微細な凹凸形状には対応することができず、カバーレイフィルムを基板に密着させる効果は十分ではなかった。
【0005】
特許文献3には、プレス成形に用いられる被成形体と熱板との間に設けるフィルムを、超高分子量ポリオレフィンを含む層で構成することによって、これらの問題の解決を試みたものが記載されている。同文献によれば、超高分子量ポリオレフィンを含む層からなるプレス成形用のフィルムを、プレス板と被成形体のカバーレイフィルムとの間に設けて熱プレス工程を行うと、成形用フィルムがプレス熱によって軟化して、カバーレイフィルムの凹凸形状に沿って密着するため、被成形体に対してプレス圧を均等に伝達することができる。こうすることで、プレス工程後にプレス圧を解放しても基板とカバーレイフィルムが密着した状態を得ることができ、空隙や位置ずれの発生を防止できる。しかし、一度熱プレス工程を行うと、このプレス成形用フィルムは形状の復元性が低いため、繰り返し使用することができず、1000μm以下の薄膜フィルムであるから単独で取り扱うことが比較的困難であり、またすぐに新しいフィルムと交換する必要があり、コストや作業効率の点でなお問題があった。
【特許文献1】特開2003−145567号公報
【特許文献2】特開平8−148814号公報
【特許文献3】特開2007−62175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術における諸問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、クッション材としての性質を損ねることなく、コスト面および作業効率の点で従来のものよりも優れた熱プレス成形用クッション材およびそれを用いた熱プレス成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フェルト層と超高分子ポリオレフィンを含む層とを接着するなどして一体とすることによって、プリント回路基板の表面形状に沿って変形可能で圧力を均等に伝達するとともに、繰り返し何度も使用することができる、優れた新規のクッション材を発明するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、熱プレス成形用のクッション材であって、1層または2層以上のフェルト層と、超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層とを具備する、前記クッション材に関する。
【0009】
また本発明は、フェルト層とポリマー層とが交互に積層接着されてなる前記クッション材に関する。
さらに本発明は、上層または下層の少なくとも一方がポリマー層である前記クッション材に関する。
【0010】
また本発明は、ポリマー層の厚さが50〜500μmである前記クッション材に関する。
さらに本発明は、表面に凹凸形状を有する電子機器部品を含む被成形体を熱プレス成形するために使用される、前記クッション材に関する。
【0011】
また本発明は、ポリマー層の厚さが500〜1000μmである前記クッション材に関する。
さらに本発明は、上層または下層の少なくとも一方がフェルト層である前記クッション材に関する。
さらにまた、本発明は、プリプレグおよび銅の薄膜体をプレス成形により一体化して積層体を成形するために使用される、前記クッション材に関する。
【0012】
また本発明は、熱プレス成形用のクッション材の製造方法であって、1層または2層以上のフェルト層を用意する工程と、超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層を用意する工程と、前記フェルト層と前記ポリマー層を接着して一体化する工程とを含む、前記方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、熱プレス成形方法であって、1層または2層以上のフェルト層と、超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層とを具備するクッション材を熱プレス板の間に配して熱プレス工程を行うことを特徴とする、前記方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるクッション材によれば、高い追随性を有し、被成形体の表面に微細な凹凸形状が存在する場合であってもボイド(間隙)を生ずることなく、プレス圧および熱を被成形体全体に均等に伝達して所望のプレス成形を行うことができ、かつクッション材としての繰返しの使用に耐える、コストおよび作業効率の点について非常に優れた新しい熱プレス成形用クッション材を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、プレス装置の熱盤やSUS板、鏡面板などプレス工程に際して用いる各要素の表面に微小な撓みやゆがみが発生しても、プレス圧を均一化して被成形体に伝達することができる。
【0016】
なお、本明細書における「追随性」の用語は、被成形体の表面形状に対応してクッション材が変形しうる程度を意味し、プレス圧をかけた場合に、この追随性が高いほど被成形体に密着して圧力をより均等に与えることができるので、半導体部品の成形、製造など精密さが求められる用途において非常に有用であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るクッション材の基本的な構成の一例を図1に示す。すなわち、クッション材10は、フェルト層14と、その上面および下面に接着された、超高分子ポリオレフィンフィルムを含むポリマー層12a、12bとからなる。
【0018】
フェルト層14としては、たとえばメタ系芳香族ポリアミドまたはパラ系芳香族ポリアミドからなるものを利用できる。また、メタ系芳香族ポリアミドとパラ系芳香族ポリアミドからそれぞれなる2つのフェルトを重ね合わせ、ニードルパンチングにより一体化させたものを使用することもできる。フェルト層14の基布16は、たとえばメタ系芳香族ポリアミド繊維またはパラ系芳香族ポリアミド繊維またはPBO繊維から選択される1種または複合種のスパン糸からなるものを1枚または2枚以上重ね合わせて使用することができる。
【0019】
フェルト層14の材料は、ここで例示したものに限定されないが、高い熱伝導性を有するものが好ましい。また、回路基板のような電子機器部品を被成形体とする場合には、静電気が発生しないように材料およびその構成を選定することが好ましい。
【0020】
また、フェルト層の厚さは、とくに限定されないが、あまり厚さを大きくすると所望の数の被成形体を一度に処理できなくなったり、位置ずれが生じたりするので、好ましくは約1〜6mmとするのが適当である。より具体的には、後述するインナークッション用のものとして、約1〜2mm、アウタークッション用のものとしては約2〜6mmとするのが好ましい。
【0021】
フェルト層の目付は、とくに限定されないが、インナークッション用として100〜1000g/m、アウタークッション用としては1000〜2000g/m、また密度は0.3〜0.5g/cmのものを使用することが好ましい。
【0022】
なお、本明細書における「インナークッション」は、被成形体側に配して使用するクッション材、たとえば被成形体に接触させて使用するクッション材を意味するが、後述する離型フィルム等、本発明のクッション材による有利な効果を妨げない追加の構成要素を適宜その間に挟んで使用するものも含まれる。
これに対し、本明細書における「アウタークッション」とは、熱盤側に配置して使用するクッション材である。
【0023】
本発明に係るクッション材10のポリマー層12a、12bは、好ましくは平均分子量が約100万〜1000万、より好ましくは約200万〜600万の超高分子量ポリオレフィンからなる。本発明のポリマー層12a、12bとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1ペンテンなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体を好適に使用することができる。具体的な一例として、淀川ヒューテック株式会社から入手可能なウルトラポリマー(粘度平均分子量200万)を挙げることができる。また、これらと他のポリマーとを組み合わせてポリマー層12aまたは12bを形成してもよい。
【0024】
ポリマー層12の厚さとしては、クッション材10を被成形体に接触させて(または後述する離型フィルムをその間に挟んで)使用する場合には、50〜500μmとすることが好ましい。
【0025】
このような超高分子量ポリオレフィンは、加熱されて融点を超えると軟化して膨張するが、その一方で保形性はそれ程失われない。したがって、これを微小な凹凸面を有する被成形体上に接触させて熱プレスを行うと、超高分子ポリオレフィンからなる層が被成形体の表面に沿って変形し、クッション材と被成形体との間に隙間がない状態を作りだすことができる。かかる状態でプレス圧をかけることによって、被成形体の全体に圧力を均等に加えることが可能になる。
【0026】
図1に示した態様では、超高分子量ポリオレフィンを含むポリマー層12a、12bがフェルト層14を挟むようにして接着されている。かかる積層構造とすることにより、フェルト層14がクッションとして圧力を均等に伝達するだけでなく、後述するようにポリマー層12a、12bの支持体として作用する。本発明において、ポリマー層とフェルト層との間の接合の際には、接着剤を用いたり、ポリマー層を加熱溶融させてフェルト層と一体化させたり、フェルト層に熱溶融繊維を配置しておき加熱溶融させるなどの方法を採用することができる。
【0027】
本発明のクッション材は、図1に示した1層のフェルト層14と、一対のポリマー層12a、12bとからなるものに限られず、2層以上のフェルト層14またはポリマー層12を含むもの、たとえば図2に示すように、2層のフェルト層14a、14bと、フェルト層14aの上面に設けられたポリマー層12aと、フェルト層14bの下面に設けられたポリマー層12bと、フェルト層14a、14bの間に設けられたポリマー層12cとからなるクッション材10’としてもよい。
【0028】
次に、本発明に係るクッション材10をインナークッションとして使用して被成形体20を熱プレス成形する工程について、図3を参照して説明する。
本発明のプレス成形方法は、プリント配線板などの被成形体20にカバーレイフィルム24を圧着して、基板18の面上に施された配線28を保護するために行われる。
なお、図3における波線は、その部分の図示を省略したことを意味する。
【0029】
カバーレイフィルム24としては、たとえばポリイミド系フィルムを基材としたものを使用することができ、ポリピロメリット酸イミド系フィルム、ポリビフェニルイミド系フィルム、ポリケトンイミド系フィルム、ポリアミドイミド系フィルム、ポリエーテルイミド系フィルムなどをその例として挙げることができる。また、カバーレイフィルム24には、たとえば熱硬化性樹脂の接着剤を付着させ、加熱および加圧することによって、被成形体20と接着可能なように構成する。
【0030】
図3に示すように、被成形体20をプレス装置の熱盤22a、22bの間に設置し、その上にカバーレイフィルム24を載置する。そして、フェルト層14と超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層12とからなるクッション材10または10’(図1、図2参照)、およびステンレス鋼板30を介して被成形体にプレス圧をかける。
なお、クッション材10と被成形体の間に離型フィルム26を設けてもよい。これは、プレス処理後にクッション材10を容易に被成形体20から離間させるために設けるものである。
【0031】
プレス装置を稼働させて熱盤22a、22bを接近させて被成形体20を押圧すると、熱盤22a、22bから熱がステンレス鋼板30、クッション材10、カバーレイフィルム24に順に伝わる。このとき、クッション材10のポリマー層12に含まれる超高分子ポリオレフィンは、熱を受けて軟化し、膨張しながら、プレス装置による圧力によって被成形体20の表面形状に沿って変形する。カバーレイフィルム24は、クッション材10の変形を受けて被成形体20の表面形状に沿って密着していき、その後熱硬化性樹脂からなる接着剤により被成形体と隙間なく圧着される。
【0032】
被成形体20へのカバーレイフィルム24の圧着が完了したら、プレス装置を稼働させて熱盤22a、22bを互いに離して、プレス圧を解放する。そして被成形体20を除去して、次に処理すべき被成形体をプレス装置内に設置する。このときプレス工程に用いるクッション材10は、交換する必要がなく同じものを引き続き使用することができる。これは、本発明のクッション材10のポリマー層12a、12bは、プレス工程の前後を通じてその上面または下面において保形性の高いフェルト層14と接着しているので、その接着部位付近はフェルト層14によって支持されて変形量が抑えられており、また、加熱により超高分子ポリオレフィン材料に内在する復元力が作用して、ポリマー層12a、12bがプレス処理を行う前の形状に略回復するからである。
【0033】
以上のとおり、クッション材10をフェルト層14とポリマー層12a、12bとの組合せとして構成することによって、フェルトの有するクッション性および昇温性(熱伝導性)並びに超高分子ポリオレフィンの加熱による膨張性および復元性を備え、かつこれらの組合せによるクッション材としての寸法安定性を担保した優れたクッション材を提供することができる。
【0034】
(実施例1)インナークッション用の実施
(実施例1−1)
実施例1−1に係るクッション材は、図1に示した態様のインナークッション用のクッション材であり、フェルト層のフェルト目付を400g/mとし、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層の厚みを上面、下面それぞれ50μm(ポリマー層全体として100μm)としたものである。
【0035】
(実施例1−2)
実施例1−2に係るクッション材は、図1に示した態様のインナークッション材のクッション材であり、フェルト層のフェルト目付を400g/mとし、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層の厚みを上面、下面それぞれ250μm(ポリマー層全体として500μm)としたものである。
【0036】
(実施例1−3)
実施例1−3に係るクッション材は、図1に示した態様のインナークッション材のクッション材であり、フェルト層のフェルト目付を400g/mとし、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層の厚みを上面、下面それぞれ500μm(ポリマー層全体として1000μm)としたものである。
【0037】
(比較例1A)
比較例1Aに係るインナークッション材は、フェルト層のみからなり、フェルトの目付は、各実施例と同じ400g/mとした。
【0038】
(比較例1B)
比較例1Bに係るインナークッション材は、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層のみからなるものである。その厚さは、実施例1−2のポリマー層と同じ厚さである250μmとした。
【0039】
以上の各実施例1−1、1−2、1−3と比較例1A、1Bのクッション材をインナークッションとして用いて、電子回路基板の熱プレス成形工程をそれぞれ実施した結果を次の表1に示す。
【表1】

【0040】
表1から分かるように本発明の各実施例に係るクッション材は、カバーレイフィルムの接着性が良好で、かつカバーレイフィルムと基板との空隙やズレも生じず、繰返し取扱性に優れた良好な結果が得られた。
【0041】
次に、本発明のクッション材をアウタークッションとして使用した実施例について図4を参照して説明する。なお、図4における波線は、その部分について図示を省略したことを意味する。
【0042】
アウタークッションとしてクッション材を使用した態様の1つを図4に示す。この態様では、銅箔42a、42bとプリプレグ40を接着して積層体を形性する際に本発明のクッション材50を用いている。この態様におけるプリプレグ40は、ガラスクロスにエポキシ樹脂が含浸されて半キュアー状態の板材を複数枚重ねて構成されたものである。
【0043】
そして鏡面板44a、44bを間に挟んだ状態で熱盤22a、22bによって熱と圧力を同時に加え、プリプレグ40、銅箔42a、42bを積層成形する。このとき従来のクッション材を使用した場合では、クッション材の昇温速度(熱移動量)が設計条件に適合していないと、熱盤22aまたは22b側の部分と熱盤22a、22bの間に位置する部分とで被成形体の物性に差が生じて最終製品としての品質が劣化してしまう虞があった。これに対し、アウタークッションとして本発明のクッション材50を使用すると、種々の要因によってプレス装置による加圧分布にゆがみが生じてもそれを補償するようにクッション材50が作用するので、プレス装置による加圧を均一化して被成形体に伝達することができる。
【0044】
本発明に係るアウタークッション用のクッション材50の基本構成を図5に示す。すなわちクッション材50は、フェルト層54と、フェルト材層54の上下各表面に接着して一体可された超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層52(52a、52b)とからなる。
【0045】
(実施例2)アウタークッション用の実施
(実施例2−1)
実施例2−1に係るクッション材は、図5に示した態様のアウタークッション用のクッション材であり、フェルト層のフェルト目付を2000g/mとし、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層の厚みを上面、下面それぞれ500μm(ポリマー層全体として1000μm)としたものである。
【0046】
(実施例2−2)
実施例2−2に係るクッション材は、図5に示した態様と同様の構成を有するもので、フェルト層のフェルト目付を1500g/mとし、ポリマー層の厚さを上面、下面それぞれ1000μm(ポリマー層全体として2000μm)としたものである。
【0047】
(比較例2A)
比較例2Aは、フェルト層のみからなるクッション材であり、フェルト目付は2400g/mである。
【0048】
(比較例2B)
比較例2Bは、同じくフェルト層のみからなるクッション材であり、フェルト目付は1500g/mである。
【0049】
以上説明した実施例2−1、2−2と比較例2A、2Bのクッション材をアウタークッションとして用いて電子回路基板の熱プレス成形工程をそれぞれ実施した結果を次の表2に示す。
【表2】

【0050】
なお、ここでの熱プレス工程は、温度200℃で40kg/cmの加重を60分間加え、これを10回繰り返すことによって実施した。表2中のクッション変位量は、圧縮されて厚さが小さくなった場合を正の値として表している。すなわち、実施例2における加熱プレス時のクッション材変位量が負の値であるということは、熱を加えられた結果ポリマー層が膨張して全体の厚さが増大していることを意味している。
表中の到達温度は、プレス作業を10回繰り返した後に達した温度で、表の数値は、30℃到達した時から60分後の値である。これは、仕様によってフェルトの目付を調節する際の基準となり、到達温度を高くしたい場合には目付を減らし、到達温度を低くする場合には目付を増やす必要がある。
【0051】
表2から分かるように、本発明の各実施例によるクッション材を使用すると、その構成要素であるポリマー層が熱により膨張して、プレス装置のゆがみ等に対応して被成形体全面に均一なプレス圧を与えることができるようなり、被成形体の接着性(空隙の有無、基板厚み斑)が改善された。
【0052】
(本発明に係る他の実施形態)
以上の実施態様において、超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層を外側(上面および/または下面)に設けたものに基づいて説明したが、かかるポリマー層をフェルト層の間に設けて、代わりにフェルト層を外側に配したものについても、とくにアウタークッション用として好適に使用することができる。
【0053】
図6にフェルト層を外側に配設してなる本発明のクッション材の構成例を示す。すなわちこの態様に係るクッション材60は、フェルト層64a、64bと、その間に挟まれた超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層62とからなる。
【0054】
図7に示した態様は、フェルト層74a、74b、74cと、その間にそれぞれ挟まれた超高分子ポリオレフィンを含むポリマー層72a、72bとからなる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のとおり、本発明に係るクッション材は、良好なクッション性および成形性を有し、かつ繰り返し使用ができるコスト面、効率面において優れた熱プレス成形用クッション材として使用することができる。また、かかるクッション材を用いることで、本発明の熱プレス成形方法は、上記利点を享受することができ、プリント配線板などの電子機器部品をプレス成形する際に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のクッション材の一態様を示す図である。
【図2】本発明のクッション材の一態様を示す図である。
【図3】本発明のクッション材を用いて熱プレス成形を行う際のプレス装置の構成を表した模式図である。
【図4】本発明のクッション材を用いて熱プレス成形を行う際のプレス装置の構成を表した模式図である。
【図5】本発明のクッション材の別の態様を示す図である。
【図6】本発明のクッション材のさらに別の態様を示す図である。
【図7】本発明のクッション材のさらに別の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10、10’ クッション材
12(12a、12b、12c) ポリマー層
14(14a、14b) フェルト層
16 基布
18 基板
20 被成形体
22a、22b 熱盤
24 カバーレイフィルム
28 配線
30 ステンレス鋼板
40 プリプレグ
42(42a、42b) 銅箔
44(44a、44b) 鏡面板
50 クッション材
52(52a、52b) ポリマー層
54 フェルト層
60 クッション材
62 ポリマー層
64(64a、64b) フェルト層
70 クッション材
72(72a、72b) ポリマー層
74(74a、74b、74c) フェルト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱プレス成形用のクッション材であって、
1層または2層以上のフェルト層と、
超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層と、
を具備する、前記クッション材。
【請求項2】
フェルト層とポリマー層とが交互に積層接着されてなる、請求項1に記載のクッション材。
【請求項3】
上層または下層の少なくとも一方がポリマー層である、請求項1または2に記載のクッション材。
【請求項4】
ポリマー層の厚さが50〜500μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のクッション材。
【請求項5】
表面に凹凸形状を有する電子機器部品を含む被成形体を熱プレス成形するために使用される、請求項1〜4のいずれかに記載のクッション材。
【請求項6】
ポリマー層の厚さが500〜1000μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のクッション材。
【請求項7】
上層または下層の少なくとも一方がフェルト層である、請求項1、2または6に記載のクッション材。
【請求項8】
プリプレグおよび銅の薄膜体をプレス成形により一体化して積層体を成形するために使用される、請求項1、2、6または7に記載のクッション材。
【請求項9】
熱プレス成形用のクッション材の製造方法であって、
1層または2層以上のフェルト層を用意する工程と、
超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層を用意する工程と、
前記フェルト層と前記ポリマー層を接着して一体化する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項10】
熱プレス成形方法であって、
1層または2層以上のフェルト層と、超高分子ポリオレフィンを含む1層または2層以上のポリマー層とを具備するクッション材を熱プレス板の間に配して熱プレス工程を行うことを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101659(P2009−101659A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277597(P2007−277597)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】