説明

プログラマブル・ディスプレイを含んだカバーシートを備えた抵抗式タッチスクリーン

本発明は、カバーシート(26)内に組み込まれたプログラマブル・ディスプレイ(60)(例えば、有機発光ダイオードのエミッシブ・ディスプレイ・マトリックス、または、反射型の電子ペーパーディスプレイ)を有する抵抗式タッチスクリーンに関する。かかるタッチスクリーンは、4線抵抗式、5線抵抗式または3線ダイオード式などのいずれの種類の抵抗式タッチスクリーンであってよい。かかるタッチスクリーンを用いると、内部タッチセンサー要素を介した画像伝送に起因して表示画像の質が低下しないタッチ/ディスプレイ・システムであって、この内部タッチセンサー要素を不透明材料から形成できるタッチ/ディスプレイ・システムを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、タッチスクリーンに関している。より詳細には、本発明は、プログラマブル・ディスプレイ(またはプログラマブル表示器、programmable display)を含んだカバーシートを備えた抵抗式タッチスクリーンに関する。
【0002】
発明の背景
タッチスクリーンは、コンピュータ制御された種々のデバイスおよび用途に用いるべく選択される入力デバイスである。常套のタッチスクリーンは、指またはスタイラス(または尖筆)などがタッチされた位置に相当する「二次元のタッチ位置」を感知することのできる透明な入力デバイスである。タッチスクリーンは、陰極管モニターおよび液晶ディスプレイ等のディスプレイ・デバイスの上に配置され、タッチ−ディスプレイ・システムを構成している。例えば、レストランのオーダー・エントリー・システムまたは工業的なプロセス制御用途だけでなく、現金自動預入支払機(ATM)、携帯情報端末(PDA)、双方向性のミュージアムの展示物または飛行機の搭乗手続機などの用途にも、タッチディスプレイ・システムが用いられている。
【0003】
タッチスクリーンは種々の技術を用いて製造されている。例えば、抵抗式(4線抵抗式、5線抵抗式、9線抵抗式および3線ダイオード式など)のタッチスクリーン、容量式タッチスクリーン、弾性波式タッチスクリーンおよび赤外線式(IR)タッチスクリーンなどが製造されている。抵抗式タッチスクリーン、例えばカリフォルニア州フリーモントのエロ・タッチシステムズ社(Elo TouchSystems Inc,)のAccuTouch(登録商標)の抵抗式タッチスクリーンは、多くのタッチスクリーン用途として広く受け入れられている。抵抗式タッチスクリーンでは、指またはスタイラスからの機械的な圧力によって、カバーシート(一般的にはプラスチック膜から成るカバーシート)が撓み、下にある基板(一般的にはガラス基板)と物理的に接触する。基板は抵抗性層で被覆されており、かかる抵抗性層に電圧勾配が形成される。5線抵抗式タッチスクリーンでは、基板の4つのコーナーに対して電気的な接続が行われることによって、関連する電子機器によって、XおよびY方向に電圧勾配が形成される。カバーシートの下面には、電圧を感知する電子機器とタッチ位置との電気的な接触をもたらす導電性被膜が設けられている。4線抵抗式タッチスクリーンは、電圧勾配を基板の抵抗被膜に形成することと、直交する電圧勾配をカバーシートの被膜に形成することとを繰り返して行っており、それによって、X座標およびY座標がそれぞれ得られることになる。
【0004】
材料の「抵抗率」は、材料の「導電率」として表すことができるので(「抵抗率」の逆数が「導電率」となる)、比較的高い抵抗率を有する材料は、比較的低い導電率を有する材料であることが理解されよう。特に、個々の基板の被膜およびカバーシートの被膜が十分な導電性を有していると、タッチスクリーンは機能しなくなる。被膜の大きな抵抗率(例えば100〜1000Ω/□またはそれ以上の抵抗率)は、妥当なレベルの消費電力にて電圧勾配を発生させるのに重要である。本明細書および特許請求の範囲で用いられる「導電」および「抵抗」という用語は、加えられた電圧に応じて、少なくとも電流が導電するという特性のことを指している。また、「層」および「被膜」という用語は、全く同じでないにしろ、両者とも機能的に同様の物理的構造を指しており、本明細書および特許請求の範囲において一般に互換性があることを理解されよう。抵抗式タッチスクリーンについての更なる詳細は米国特許第6163313号に記載されている(この特許は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。
【0005】
他のタッチスクリーンと比較した場合の抵抗式タッチスクリーンの性能上の利点は、先端がシャープな受動スタイラス(例えば小さいプラスチック製スタイラス)、長い指の爪またはクレジットカードの角に対して、比較的高いタッチ感度を有していることである。また、抵抗式タッチスクリーンでは、「節電モード」または「検知モード」において消費電力が僅かであるか又はゼロである(このような場合、タッチスクリーンは簡単なオン/オフ膜スイッチとして機能している)。タッチされて、座標情報のために電圧勾配が形成される場合にのみ電力が消費される。このように、抵抗式タッチスクリーンは電力効率が良いので、PDA等の電池式のデバイス(例えば携帯型デバイス)に対するタッチスクリーン技術として非常に魅力的である。しかしながら、抵抗式タッチスクリーンの不利益な点は、視像が通過することになる空気/固体の複数の界面に起因して、表示画像の質が低下することである。また、別の不利益な点は、タッチスクリーンの種々の材料層内で散乱した光に起因して光学的吸収および「かすみ(haze)」が生じることであり、また、空気/固体の複数の界面から反射する周辺光(もしくは外乱光)および/またはタッチスクリーンの種々の材料層内で散乱した周辺光に起因してまぶしく光ることである。インジウムスズ酸化物(ITO)などの縮退半導体の使用によって、導電性フィルムを比較的透明にすることができる。しかしながら、そのような導電性フィルムであっても、ディスプレイ画像における光透過損失および反射損失が依然大きいものである。更に、導電性被膜は透明でなければならない。安価および/または高機能ではあるものの、より不透明な抵抗被膜(例えば導電性ポリマーまたは薄い金属層)というものは、抵抗式タッチスクリーンに使用することは商業上あまり知られておらず、より厚い金属層または組成物等から成る完全に不透明な抵抗被膜は用いられていない。
【0006】
発明の要旨
本発明の要旨において、抵抗式タッチスクリーンは、プログラマブル・ディスプレイ(プログラム制御可能なディスプレイ:電子信号を介して制御および変化させることができる画像を有するディスプレイ)を備えたカバーシートを有している。カバーシートにはプログラマブル・ディスプレイが含まれるので、タッチスクリーンの基板および内部要素(即ち「タッチセンサー」)が透明である必要はない。例えば、比較的不透明な導電性ポリマー層または薄い金属層等の光透過性の不十分な導電性被膜を用いることができる。更に、より厚い金属層または複合材料等の完全に不透明(又は十分に不透明)な抵抗被膜を用いることもできる。
【0007】
ある態様において、タッチスクリーンは基板およびカバーシートを有して成る。カバーシートの底面は基板の上面から離隔して、その基板の上面に面している又は対向している。基板の上面には第1導電性領域が設けられ、カバーシートの底面には第2導電性領域が設けられている。カバーシートは、その上面から視認することができるプログラマブル・ディスプレイを有している。カバーシート(およびプログラマブル・ディスプレイ)は、全体として(又は総じて)十分な可撓性を有しており、カバーシートに力が加えられると、第1導電性領域と第2導電性領域とが、その力が加えられた位置付近で電気的に接触するようになっている(又は、その力が加えられた位置に隣接する位置にて電気的に接触するようになっている)。
【0008】
プログラマブル・ディスプレイは、ダイナミック・ディスプレイ(例えばビデオ・ディスプレイ)、スタティック・ディスプレイ(例えばアイコンの配列を表示するディスプレイ)、およびダイナミック・ディスプレイとスタティック・ディスプレイとを組合せたものを有して成るものであってよい。プログラマブル・ディスプレイは、例えば、有機発光ダイオード(「OLED」)のマトリックスなどのエミッシブ・ディスプレイ(または放出ディスプレイ、emissive display)であってよく、または、電子ペーパー要素などの反射ディスプレイであってよい。あるいは、プログラマブル・ディスプレイは、エミッシブ・ディスプレイ部分および反射ディスプレイ部分の双方を有するものであってよい。
【0009】
本発明の他の更なる要旨、態様および特徴は、以下の詳細な説明および例示態様から明らかとなるであろう。なお、それらは本発明を例示するにすぎず、本発明を制限するものでない。
【0010】
図面には、本発明の態様の設計および実用性が示されている。
【0011】
例示態様の詳細な説明
図1は、基板22およびカバーシート26を一般的に有して成る抵抗式タッチスクリーン20を示している。タッチスクリーン20は、限定する意図ではないが、4線抵抗式、5線抵抗式または3線ダイオード式などの抵抗式タッチスクリーンであってよい。基板22の上面25には導電性被膜(または導電性コーティング)24が形成されている。導電性カバー26の底面27には導電性被膜28が形成されている。別の態様では、基板の上面25および/またはカバーシートの底面27に、例えば粒子インプランテーション(particle implantation)によって、導電性被膜24および導電性被膜28とは異なった導電性領域/抵抗領域をそれぞれ設けてもよいことを理解されよう。
尚、図面では、タッチスクリーン20の種々の層は、例示のためのスケールで示しており、実際のスケールで示していないことに留意されたい。
【0012】
カバーシート26は、外側面(または上面)38を有しており、その面を通してプログラマブル・ディスプレイ60を視認することができるようになっている。このような構成において、タッチスクリーン20は、内部タッチセンサー(導電性層24および28)を有して成る。この内部タッチセンサーは、それに対して位置合せされた状態(または整合した状態)で配置された外部プログラマブル・ディスプレイ60の下に配置されており、その結果、ディスプレイ60に表示されている要素がタッチされると、ディスプレイ60上の二次元のタッチ位置がタッチセンサーによって決定されるようになっている。本明細書で用いる「プログラマブル・ディスプレイ」とは、電子信号を介して制御および変化させることができる画像を表示するディスプレイを一般に意味している。プログラマブル・ディスプレイ60は、エミッシブ・ディスプレイであってよい。別法にて、電力の影響を受けやすい用途に特に適した態様においては、プログラマブル・ディスプレイ60は、反射された周辺光に依存する反射ディスプレイであってもよい。エミッシブ・ディスプレイまたは反射ディスプレイのいずれにしても、プログラマブル・ディスプレイ60は、任意の画像、静止画(アイコンの配列等)またはそれらの組合せが表示されるように、ピクセルのアレイ(常套の矩形アレイ)によって形成されたビデオ・ディスプレイであってよい。
【0013】
より詳細には、プログラマブル・ディスプレイ60は、可撓性基板62(例えばガラス基板)に形成又は配置された表示要素のアレイ(またはマトリックス)を一般的に有して成る。尚、表示要素については後ほど詳細に説明する。場合によっては、例えばプラスチック製の保護層等の透明保護層40がディスプレイ60の上に設けられる。先端の尖った硬いスタイラスは、ディスプレイ要素を損傷させる可能性があるので、保護層40が比較的厚い(軟らかくて比較的厚い)ことが望ましい。カバーシート面が「紙」のようにライティング面(writing surface)となるように、保護層40の材料を選択することが望ましい。また、上側の保護層40を交換可能又は取外し可能とすることも望ましく、例えば、上側の保護層40を離型ライナーとしてもよい。
【0014】
カバーシート26は十分な可撓性を有しており、例えば指またはスタイラスによってカバーシートの上面38に力が加えられると、カバーシートの底面27の導電性被膜28と基板22の導電性被膜24とが、その力が加えられた位置付近で電気的に接触するようになっている。一般的に弾性材料または変形可能な材料のみから成るカバーシートは可能であるが、本明細書および特許請求の範囲で用いられる「可撓性」という用語は、カバーシートが一般的に弾性材料または変形可能な材料のみから成ることを必ずしも意図していない。重要なことは、個々のカバーシート要素の層(28,62,60,40)が十分な「遊び(もしくは自由な動き)」または「可撓性」を全体として有していることである。つまり、過度に力を加える必要がなく、かつ、故障につながり得るカバーシート要素への過度な応力および摩耗が生じることなく、導電性被膜28と導電性被膜24とが電気的に接触するように、個々のカバーシート要素の層(28,62,60,40)が基板22に対して容易に動くことが重要である。「可撓性」が通常考えられないような材料(例えばガラス)から形成されるカバーシート要素が含まれていたとしても、全体的に可撓性を有するカバーシートを達成できるということは容易に理解できるであろう。
【0015】
制御回路(図示せず)が設けられており、導電性被膜24と導電性被膜28とが電気的に接触すると、常套の方式(抵抗式タッチスクリーンの種類に応じて決められる方式)でもって、カバーシート26に対して加えられた力の位置に関する二次元座標(X座標およびY座標)が決められるようになっている。4線式のタッチスクリーンでは、第1位置座標を測定するために第1導電性領域24に第1電圧勾配が形成され、第2位置座標を測定するために第2導電性領域28に第2電圧勾配が形成される。5線式のタッチスクリーンでは、第1位置座標および第2位置座標の双方を測定するために、第1導電性領域24に交流電圧勾配が形成される。3線ダイオード式は、5線式と同様であるが、第1導電性領域24に接続された複数のダイオード(図示せず)を更に含んでいる。尚、同一または別個の制御回路をプログラマブル・ディスプレイ60に連結させて、同様に機能させてもよい。
【0016】
図示する態様において、カバーシート26に力が加えられていない状態では導電性被膜24と導電性被膜28との間に絶縁ギャップ32がもたらされるように、常套の機械的スペーサー要素30(非導電性スペーサー要素)が複数設けられている。カバーシート26は、加えられた力が除かれると基板22から離隔した位置へと戻るように十分な弾性を有していることが好ましい。カバーシート26に対して加えられた力が除かれた際に導電性被膜24と導電性被膜28との間を電気的に絶縁させる他の機構も可能であることは明らかであろう。例えば、別の態様(図示せず)では、トランポリンのようにカバーシート26が張力を受けた状態で基板22の上方に配置されている。この場合、スペーサー要素30を設けなくても、タッチがされていない状態で導電性被膜24と導電性被膜28との電気的絶縁を維持できる。
【0017】
上述した態様のタッチスクリーン20は、タッチ/ディスプレイ・システムとして多くの用途で用いることができる。例示すると、タッチスクリーン20は、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)、例えばPDAおよびパーソナル・コンピューターに広く用いられているようなGUIを支持するように用いることができる。オペレーティング・システム(図示せず)に対しては、タッチスクリーン20およびそれに関連するコントローラー電子機器は、ユーザーがアイコンをクリックしたり、カーソルをドラッグしたりできるような入力デバイス(即ち「マウス・デバイス」)として典型的に機能する。画像を表示したり、表示された画像を更新したりする等、適切に反応することができるように、オペレーティング・システムは、タッチ入力情報を応用コード(application code)へと伝えている。
【0018】
例えば、ディスプレイ60に表示された画像に対してはユーザーの入力が必要であり、その後に表示される画像は、ユーザー入力に少なくとも依存している。例示すると、表示される画像は、カバーシート26で力が検知されると変化し得るものであり、例えば、「待機モード」から「ユーザー入力を求めるモードであって、そのユーザー入力をタッチスクリーン20で受信するモード」へと変化することができる。他のディスプレイ用途(または表示用途)と同様に、関連する電子機器(図示せず)は、本発明の態様では、画像情報をオペレーティング・システムから受け取り、ディスプレイ60に対して適切な駆動信号を生じさせる。当然ではあるが、かかる態様または他の態様のタッチディスプレイ・システムを、標準的なオペレーティング・システムと共に使用する必要はなく、関連する電子機器およびソフトウェアのカスタム・バージョンに対しては多くの選択肢がある。
【0019】
図2を参照して説明すると、ある態様では、プログラマブル・ディスプレイ60は、可撓性ディスプレイ層55に組み込まれた上面発光OLED(top−emitting OLED)54のマトリックスによって形成されたエミッシブ・ディスプレイである。OLED54を予め形成しておいて、その後、基板62に搭載してよく、あるいは、カバーシート構成の一部として基板62上にOLED54を直接的に形成してもよい。好ましくは、OLED54は、カバーシート26と一体に撓むことができる程に薄く可撓性を有しているものの、使用に際して絶えず行われる「突き」および「曲げ」に耐える程に丈夫である。本発明のエミッシブ・ディスプレイ態様に用いられるOLED54の構成の1つとしては、Weaverらの「Flexible Organic LEDs」(Information Display 5&6、第26頁〜第29頁、2001年)に記載されているような構成が考えられる。尚、「Flexible Organic LEDs」の文献は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。かかる文献に記載されているように、可撓性OLEDは、米国(ニュージャージー州エウイング)のユニバーサル・ディスプレイ社(Universal Display Corp.)によって開発されているが、適合可能であるだけでなく、軽量で薄い形状であって固有の耐衝撃性を有している。
【0020】
図3に示すように、OLED54は、基板62上に薄い導電性アノード層64を一般的に有して成る。およそ150nmの厚さを有する有機層66の積層は、真空昇華法または他の蒸着法によってアノード層64上に設けられる。透明な導電性カソード被膜68は、有機層の積層66の上に設けられる。ある態様において、透明カソード被膜は、ITOで覆われた薄い金属射出成形コンタクトから成る。Weaverらが指摘しているように、5mmのピクセル面積を有する上面発光型の可撓性OLEDは、約5mm程度の小さい曲率半径を有する円筒形体の周りに巻き付けることができる程に十分な可撓性を有しており、タッチスクリーンのカバーシートに要求される可撓性よりも大きい可撓性を有している。
【0021】
ガラスなどの湿気および空気の影響を防ぐ材料(または複合材料)から基板62を形成することが望ましい。例えば、ある態様では、基板62は、ガラスから形成されており、約200ミクロン以下の厚さを有している。別法にて、Weaverらの文献に記載されているように、常套のガラス基板上に形成された同様のOLEDデバイスと匹敵する又はそれよりも勝る光学的性能を備えた「バリア被覆された可撓性基板」の上にOLED54を形成させることができる。OLED54は、非導電性の透明な可撓性ポリマー材料55の中に封入させてもよい。制御回路(および電源)と種々のOLED54とが個々に電気的に接続されるように、適当な電気的接続部(図示せず)が設けられる。例えば、基板62上に導線が設けられる。
【0022】
本発明の態様では他の種類のエミッシブ・ディスプレイを用いてもよいことが理解されよう。ディスプレイを外面から認識できる限り、カバーシート26の外面にディスプレイを形成または設置してもよく、あるいは、カバーシート26にディスプレイを埋め込んでもよい。可撓性ディスプレイが大きく撓むことが望ましい場合が多いが、OLEDを用いたディスプレイ等のエミッシブ・ディスプレイは、カバーシート26のタッチセンサー機能に必要とされる僅かな変形が可能となる程に十分に薄くなっていればよく、必ずしも大きく撓む必要のないことを理解されよう。
【0023】
別法にて、プログラマブル・ディスプレイ60の実現のために、「電子ペーパー」ディスプレイなどの反射ディスプレイを用いてもよい。エミッシブ・ディスプレイと同様に、プログラマブル・ディスプレイ60を外面から認識できる限り、カバーシート26の外面に反射ディスプレイを形成または設置してもよく、あるいは、カバーシート26に反射ディスプレイを埋め込んでもよい。また、エミッシブ・ディスプレイの場合と同様に、反射ディスプレイも、カバーシート26のタッチセンサー機能に必要とされる僅かな変形が可能となる程に十分に薄くなっていれば、必ずしも大きく撓まなくてもよい。
【0024】
本明細書で用いる「電子ペーパー」という用語は、薄くて好ましくは可撓性のシート形態を有するように形成され得る電子制御型の反射ディスプレイを含むものとして広く解釈されるものである。例示すると、プログラマブル・ディスプレイ60の反射ディスプレイ態様に用いることができる反射ディスプレイ技術は少なくとも3種類開発されている。その1つは、ロイアル・フィリップス・エレクトロニクス社(Royal Philips Electronics;「フィリップス」)が「エレクトロウエッティング(electrowetting)」に基づいて開発した反射ディスプレイ技術である。このロイアル・フィリップス・エレクトロニクス社のウエッティング技術についての詳細な情報は、本出願日の時点ではURL:www.research.Philips.com/informationcenter/Global/FArticleDetail.asp?IArticleId=2817でリンク付けされたウェブサイトから得ることができる。かかるインターネット情報は、Hayesらの「Video−speed electonic paper based on electrowetting」(ネイチャー、第425巻、第383頁〜第385頁、2003年9月25日)という論文に関するものである。このHayesらの論文には、ウエッティング技術について科学的観点から十分に記載されている(かかる論文は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。
【0025】
他の適当な電子ペーパー技術は、イー・インク社(E ink:www.eink.com)が開発した電気泳動ディスプレイである。このイー・インク社が開発した電気泳動ディスプレイは、「電子インク(electronic ink)」と呼ばれる独自の材料に基づいている。この電気泳動ディスプレイの作動原理については、ウェブサイト(http://www.eink.com/technology/index.html)に記載されており、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。本発明の反射ディスプレイに適当なイー・インク社製の電子インク・ディスプレイについての詳細は、Chenらの論文「Flexible active−matrix electronic ink display」(ネイチャー、第423巻、第136頁、2003年5月8日)に記載されている(かかる論文は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。この論文に記載されているように、電子インク・ディスプレイは、曲げることが可能なアクティブ−マトリクス−アレイ・シート(active−matrix−array sheet)に形成された電子インク要素を有して成る。電子インク・ディスプレイは、好ましくは0.3mm未満の厚さを有しているが、高いピクセル密度(例えば160ピクセル×240ピクセル)および高い解像度(例えば96ピクセル/インチ=約38ピクセル/cm)を有している。また、電子インク・ディスプレイは、劣化することなく約1.5cm程度と小さい曲率半径を有するように曲げることができる。
【0026】
本発明の反射ディスプレイに用いることができる適当な別の電子ペーパー技術としては、エレクトロジャイロスコピック・ディスプレイ技術(electrogyroscopic display technology)がある。かかる技術は、Xerox PARCにて開発され、ジリコンメディア社(Gyricon Media:www.gyriconmedia.com)から「スマートペーパー(Smartpager;登録商標)」として市販されている。このスマートペーパーは、通常の紙のような可撓性を有している。スマートペーパーについての詳細は、ウェブページ(http:www.gyriconmedia.com/SmartPaper.asp)に記載されている(かかるウェブページの内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。
【0027】
本発明のプログラマブル・ディスプレイ60に使用される別の反射ディスプレイ技術としては、可撓性を有する液晶ディスプレイ(「LCD」)を改変したものが挙げられる。例えば、ウェブサイト(www.electronicstimes.com/story/OEG20011108S0004)に掲載されている論文によると、オムロン(日本)は、折り曲げることができるLCDを製造できる技術を開発している。また、ウェブサイト(www.eetimes.com/story/OEG20010829S0065)に掲載されている別の論文によると、フィリップスは、64×64ピクセルの受動マトリックス反射型のコレステリックLCD(passive−matrix reflective,cholesteric LCD)を開発しており、極薄の可撓性ディプレを開発している。更に、ウェブサイト(www.creativepro.com/story/news/16653.html?cprose+3−22)で得られる情報によると、東芝は、湾曲したスクリーンに画像を表示できる可撓性を有した大きいLCDを開発し、ひいては、折り曲げることが可能な液晶ディスプレイを開発したことを発表している。上述のウェブサイトの内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0028】
このように、薄い可撓性を有するディスプレイは、実験室レベルでは開発されており、一般市場で取引される商品となる可能性を秘めている。例えば、インフォメーション・ディスプレイ(Information Display)の2003年3月発行の20/24頁に記載された「Bendng the Rules」の文献を参照のこと(尚、そこに記載されている事項は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)。そのようなディスプレイの全てに共通する事項は、適当な薄い可撓性の基板材料の必要性である。上述の文献に記載されていることであるが、ポリマーおよび30〜150μmの厚さのガラス・フィルムを含んだ構成は、適当な薄い可撓性の基板材料を得るために開発されている。また、上述の文献によると、独立に制御されるピクセルを多く有するディスプレイが望ましい場合には、適当なアクティブ・マトリクス・バックプレーンが必要であり、そのバックプレーンが、アモルファスシリコン構造および有機半導体を用いて実現できる。電気光学画像要素の性質については、多くの選択肢がある。上述の文献では、可撓性ディスプレイ技術で用いることができるディスプレイの最有力候補として、液晶ディスプレイ(LCD)、OLEDディスプレイおよび電気泳動ディスプレイが挙げられている。
【0029】
上述の本発明の詳細な説明は、主としてまたは専ら本発明の特定の特徴または要旨に関する記載を含んでいる。そのような説明は明瞭にするためのものであって、便宜上のものであり、特定の特徴が、開示されている記載および態様の範囲を超えて妥当するものであることを理解されよう。
【0030】
同様に、本明細書の種々の図面および説明は、本発明の特定の態様に関係しているが、特定の特徴が特定の図面または態様の内容に開示されている場合、かかる特徴は、別の図面または態様の内容にて用いることができたり、別の特徴との組合せて用いることができたり、あるいは、一般的に本発明において適切な程度まで用いることができることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、プログラマブル・ディスプレイを備えたカバーシートを有する抵抗式タッチスクリーンを例示した側断面図である。
【図2】図2は、図1のタッチスクリーンのカバーシートの1つの態様を示した一部平面図である。OLEDのマトリックスによって、カバーシートに埋め込まれたエミッシブ・プログラマブル・ディスプレイが形成されている。
【図3】図3は、図2の態様のOLED要素の側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、および
カバーシート
を有して成り、カバーシートの底面が基板の上面から離隔してそれに面しているタッチスクリーンであって、
基板がその上面に第1導電性領域を有し、
カバーシートが、
(a)その底面に第2導電性領域を有し、
(b)プログラマブル・ディスプレイを有して成り、また、
(c)十分な可撓性を有しており、カバーシートに力が加えられると、第1導電性領域と第2導電性領域とが、その力が加えられた位置付近で電気的に接触するようになっている、
タッチスクリーン。
【請求項2】
カバーシートが十分な弾性を有しており、カバーシートに力が加えられていない状態では、第1導電性領域と第2導電性領域とが電気的に接触しない、請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項3】
第1位置座標の測定のために第1導電性領域に電圧勾配が形成され、第2位置座標の測定のために第2導電性領域に電圧勾配が形成される、請求項1または2に記載のタッチスクリーン。
【請求項4】
第1位置座標の測定のために第1導電性領域に第1電圧勾配が形成され、第2位置座標測定のために第1導電性領域に第2電圧勾配が形成され、
タッチスクリーンが、好ましくは、第1導電性領域に接続されたダイオードを更に有して成る、請求項1または2に記載のタッチスクリーン。
【請求項5】
プログラマブル・ディスプレイがビデオ・ディスプレイである、請求項1〜4のいずれかに記載のタッチスクリーン。
【請求項6】
プログラマブル・ディスプレイがエミッシブ・ディスプレイである、請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項7】
プログラマブル・ディスプレイが1またはそれよりも多い有機発光ダイオード(「OLED」)を有して成る、請求項6に記載のタッチスクリーン。
【請求項8】
カバーシートが可撓性ポリマー基板を有して成り、1またはそれよりも多いOLEDが可撓性ポリマー基板上に形成されている、請求項7に記載のタッチスクリーン。
【請求項9】
カバーシートが可撓性ガラス基板を有して成り、1またはそれよりも多いOLEDが可撓性ガラス基板上に形成されており、
可撓性ガラス基板が好ましくは約200ミクロン以下の厚さを有している、請求項7に記載のタッチスクリーン。
【請求項10】
プログラマブル・ディスプレイが反射ディスプレイであり、その反射ディスプレイが好ましくは電子ペーパーを有して成る、請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項11】
カバーシートの上面には実質的に透明な保護ポリマー層が設けられており、好ましくは保護ポリマー層がライティング面として使用されるように構成されている又は保護ポリマー層が取り外し可能になっている、請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項12】
第1導電性領域および第2導電性領域の一方または双方が、不透明材料または導電性ポリマー被膜を有して成る、請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項13】
上面を有する基板、
基板の上面に面する底面および上面を有するカバーシート、
基板の上面に設けられた第1導電性被膜、
カバーシートの底面に設けられた第2導電性被膜、ならびに
カバーシートの上面から視認できる画像を表示するように構成されたプログラマブル・ディスプレイ
を有して成り、
カバーシートが十分な可撓性を有しており、カバーシートの上面に力が加えられると、第1導電性被膜と第2導電性被膜とが、その力が加えられた位置付近で電気的に接触するようになっている、タッチスクリーン。
【請求項14】
カバーシートに加えられた力の位置の二次元座標が特定されるように構成された制御回路を更に有して成る、請求項13に記載のタッチスクリーン。
【請求項15】
プログラマブル・ディスプレイが有機発光ダイオードまたは電子ペーパーを有して成る、請求項13に記載のタッチスクリーン。
【請求項16】
内部タッチセンサー、および
内部タッチセンサーに対して位置合せされた状態で配置された外部プログラマブル・ディスプレイ
を有して成り、
外部プログラマブル・ディスプレイによって表示されている要素がタッチされると、内部タッチセンサーが外部プログラマブル・ディスプレイ上の二次元のタッチ位置を決定するようになっている、タッチスクリーン。
【請求項17】
内部タッチセンサーが基板およびカバーシートを有して成り、カバーシートの内面が基板の外面から離隔してそれに面しているタッチスクリーンであって、
基板が、その外面に第1導電性領域を有し、
カバーシートが、その内面に第2導電性領域を有し、また
外部プログラマブル・ディスプレイがタッチされると、第1導電性領域と第2導電性領域とが、そのタッチされた位置付近で電気的に接触するように、カバーシートが十分な可撓性を有している、請求項16に記載のタッチスクリーン。
【請求項18】
外部プログラマブル・ディスプレイがエミッシブ・ディスプレイまたは反射ディスプレイであり、好ましくは外部プログラマブル・ディスプレイがビデオ・ディスプレイである、請求項17に記載のタッチスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522586(P2007−522586A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553206(P2006−553206)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/004100
【国際公開番号】WO2005/078566
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】