説明

プログラマブル表示器

【課題】 従来のプログラマブル表示器の問題点であったパスワードの漏洩を防ぎ、プログラマブル表示器が有するID番号やパスワード、そして外部認証装置といった複数の認証手段を組合せた併用認証を行なうことで、セキュリティを強化したプログラマブル表示器を得る。
【解決手段】 認証設定処理部106が、併用認証を行なうための情報と操作者を特定するための情報を設定し、認証設定格納部108に格納された併用認証を行なうための情報に基づき、認証処理部107が、操作者の個人認証情報と、認証情報格納部109に格納された操作者を特定するための情報を比較し、認証判定を行なうようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の認証手段を用いて個人認証を行なうプログラマブル表示器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプログラマブル表示器は、機械装置の操作盤として用いられ、セキュリティの観点から個人認証の機能を有している。プログラマブル表示器単独での個人認証に関しては、プログラマブル表示器はID番号とパスワードによる認証手段を有している。操作者毎にID番号とパスワードのペアが、予めプログラマブル表示器に記憶されており、個人認証時に入力されたID番号とパスワードのペアが、記憶されているものと一致するかどうかで認証の可否を決定する。操作者毎のID番号とパスワードのペアや権限の登録は、プログラマブル表示器に設けられた専用の画面で行なう。この専用画面は特定のシステム管理者のみが操作可能となるように、パスワードの設定が可能である。この専用画面のパスワードの変更は、専用画面内でのみ可能である。
【0003】
一方、ID番号とパスワードの入力は画面の操作に手間がかかるため、外部認証装置を用いたIDカードや指紋等でも、個人認証が可能となっている。外部認証装置を用いた認証も、予め操作者毎にID番号と外部認証装置用の認証情報、権限の登録を専用の画面で行なう。外部認証装置を用いた個人認証では、外部認証装置用の認証情報が、基本的に操作者毎で異なるため、ID番号の入力をせずに外部認証装置のみで認証可能である。入力された個人認証情報が外部認証装置の認証情報と一致する場合に、その一致したID番号の操作者が認証される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−202108号公報(第7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプログラマブル表示器は、以上のように構成されているので、ID番号とパスワードのみの個人認証では、ID番号は公開された操作者の名前や社員番号等が用いられることが多く、その場合、パスワードがその操作者であることの証明となるが、パスワードは文字の組合せであるため漏洩しやすく、漏洩を防ぐための定期的なパスワードの変更や、パスワードの複雑な文字の組合せは、操作者の記憶することへの負担につながり、さらには、そのパスワードをメモすることによる漏洩が再度発生するという問題点があった。
【0006】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、その目的は、プログラマブル表示器が有するID番号やパスワード、そして外部認証装置といった複数の認証手段を組合せた併用認証を行なうことで、パスワードの漏洩を防ぎ、セキュリティを強化したプログラマブル表示器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るプログラマブル表示器においては、少なくとも入力部、通信部を有し、通信部を介して外部認証手段が複数接続され、内部に個人認証手段が設けられており、複数の外部認証手段とプログラマブル表示器内部に設けられた個人認証手段の複数の認証手段の組合せによる併用認証を行なうための情報を格納する認証設定格納部と、操作者を特定するための情報を格納する認証情報格納部と、併用認証を行なうための情報と操作者を特定するための情報を設定する認証設定処理部と、認証設定格納部に格納された併用認証を行なうための情報に基づき、操作者が入力部より入力し、または複数の外部認証手段より取得される操作者の個人認証情報と、認証情報格納部に格納された操作者を特定するための情報を比較し、認証判定を行なう認証処理部を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、認証設定格納部に格納された併用認証を行なうための情報に基づき、認証処理部が、操作者の個人認証情報と、認証情報格納部に格納された操作者を特定するための情報を比較し、認証判定を行なう。このため、プログラマブル表示器での個人認証において、パスワードの漏洩を防ぎ、セキュリティを強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1を示す制御システムの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示すプログラマブル表示器の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す認証装置の一覧情報例である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す認証の順序の情報例である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す操作者を特定するための情報例である。
【図6】この発明の実施の形態1を示すプログラマブル表示器における個人認証処理手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における制御システムの構成図である。図1において、10は制御システム、100はプログラマブル表示器である。200はプログラマブル表示器100に接続されたプログラマブルロジックコントローラ(以下、「PLC」と略す)であり、被制御機器を制御する制御機器である。301、302、303はプログラマブル表示器100に接続された認証手段であり、例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末、ICカードリーダや指紋認証装置等の外部認証装置である。
【0011】
図2は、この発明を実施するための実施の形態1におけるプログラマブル表示器100の構成図である。図2において、101は表示部であり、表示データを表示する。102は表示処理部であり、操作者がプログラマブル表示器100を操作するための表示データを作成し、表示部101に表示させる機能を有する。103は入力部であり、プログラマブル表示器100が有している認証手段、例えば、ID番号やパスワード等の認証情報を操作者が入力するインタフェースであり、キーボードやボタン、タッチパネル等によって構成される。104は通信部であり、制御システム10を構成するPLC200や、外部認証装置301、302、303との間で通信回線を介して通信を行なう機能を有する。105は認証装置制御部であり、通信部104を介して外部認証装置301、302、303を制御し、認証情報を取得する。106は認証設定処理部、107は認証処理部、108は認証設定格納部、109は認証情報格納部である。110は制御部であり、各処理部を制御する。
【0012】
次に動作について説明する。まず、操作者が併用認証を行なう前の事前措置として、プログラマブル表示器100のシステム管理者は、認証設定処理部106で必要となる併用認証を行なうための情報と操作者を特定するための情報を予め設定するために、システム管理者専用の設定画面を立上げる。この立上げ指令により、認証設定処理部106は、表示処理部102を通して、表示部101にシステム管理者専用の設定画面を表示する。そして、認証設定処理部106は、システム管理者が入力部103を通して入力した併用認証を行なうための情報と、操作者を特定するための情報を、併用認証を行なうための情報は認証設定格納部108に、操作者を特定するための情報は認証情報格納部109にそれぞれ格納する。
【0013】
併用認証を行なうための情報とは、外部認証装置301、302、303の一覧情報や認証の順序であり、操作者を特定するための情報とは、ID番号のほか、認証装置の一覧に設定された認証装置毎の認証情報である。認証処理部107は、認証設定格納部108に格納された併用認証を行なうための情報に基づき、入力部103及び認証装置制御部105から、操作者を特定するための認証情報を取得し、この取得した認証情報と認証情報格納部109に格納された操作者を特定するための情報を比較し、認証の判定を行なう。
【0014】
図3に、認証設定格納部108に格納される認証装置の一覧情報の例を示す。この一覧情報には、プログラマブル表示器100に接続する外部認証装置301、302、303だけでなく、内蔵のパスワードも含まれており、さらには、それぞれの接続ポート等の設定情報も含まれている。この一覧情報は、認証処理部107にて判定される個人認証時に用いられ、認証設定格納部108に格納された認証の順序や、認証情報格納部109に格納された操作者を特定するための情報と比較される。
【0015】
図4に、認証設定格納部108に格納される認証の順序の情報の例を示す。この認証の順序は、図3に示した一覧情報に記載の外部認証装置やユーザ名(ID番号)を、認証する順番に並べたものであり、この認証の順序の情報は、認証処理部107にて判定される個人認証時に用いられる。
【0016】
図5に、認証情報格納部109に格納される操作者を特定するための情報の例を示す。この操作者を特定するための情報には、各操作者のユーザ名(ID番号)に対し、認証装置の一覧と、各認証装置に対応する認証情報が含まれている。
【0017】
図6に、プログラマブル表示器100における個人認証処理手順のフローチャートを示す。まず、認証開始として、プログラマブル表示器100を構成する制御部110は、操作者が入力した入力部103からの認証要求により、表示部101に認証画面表示を行なう(ステップS11)。具体的には、制御部110は、認証設定格納部108に格納された併用認証を行なうための情報を読み出し、認証の順序の情報の中の1番目の認証に対する認証画面を表示処理部102で作成し、この認証画面を表示部101に表示する。
【0018】
次に、操作者は表示部101に表示された認証画面に基づき、認証の操作を行なう(ステップS12)。操作者が認証操作を行ない、入力した認証情報は、入力部103または認証装置制御部105から、制御部110に移る。制御部110は、認証の順序の情報と入力した認証情報を比較し、まだ入力されていない認証情報がある場合に、入力されていない認証に対する認証画面を表示処理部102で作成し、この認証画面を表示部101に表示する。認証装置の異常、操作者のキャンセル操作、全ての認証情報が入力完了の場合には、次のステップへ進む。
【0019】
次に、制御部110は、取得した認証情報が正しく取得できているかの確認を行なう(ステップS13)。制御部110は、認証装置の異常や操作者のキャンセル操作があった場合には、認証失敗とし(ステップS13のNo)、全ての認証情報がある場合には、次のステップへ進む(ステップS13のYes)。
【0020】
次に、制御部110は、ステップS12で取得した認証情報と、認証設定格納部108から取得した併用認証を行なうための情報と、認証情報格納部109から取得した操作者を特定するための情報を、認証処理部107へ移す。そして、認証処理部107は、ステップS12で制御部110が取得した認証情報のうち、1番目の認証情報を、認証情報格納部109に格納された操作者を特定するための情報から検索する(ステップS14)。
【0021】
次に、認証処理部107は、検索結果として認証情報が一致する操作者が見つかった場合には、次のステップへ進む(ステップS15のYes)。一方、一致する操作者が見つからなかった場合には、認証失敗とする(ステップS15のNo)。
【0022】
次に、認証処理部107は、ステップ12で制御部110が取得した2番目以降の認証情報を、ステップ14で検索した操作者を特定するための情報と比較する。一致した場合には、次のステップへ進む(ステップS16のYes)。一方、一致する操作者が見つからなかった場合には、認証失敗とする(ステップS16のNo)。
【0023】
最後に、認証処理部107は、ステップ12で制御部110が取得した認証情報で、まだ比較していない認証情報がある場合には、ステップ16へ戻る(ステップS17のYes)。ない場合は、認証成功とする(ステップS17のNo)。以上のような処理手順により、プログラマブル表示器100の個人認証判定を行なう。
【0024】
なお、認証設定格納部108に格納される認証の順序は1通りではなく、複数通りの設定も可能であり、この場合、図6に示したフローチャートの認証の順序に基づき情報を入力する(ステップS12)前に、複数通りの設定の中から1つを選択することができる。
【0025】
以上のように、この実施の形態1におけるプログラマブル表示器は、プログラマブル表示器が有するID番号やパスワード、そして外部認証装置といった複数の認証手段を併用することにより、パスワードの漏洩のようなID番号とパスワードのみによる個人認証の問題点を解決でき、セキュリティが強化されるという効果を有する。
【0026】
また、認証手段や認証の順序の異なる併用認証の組合せを複数通り設定し、この複数通り設定された併用認証と、複数の外部認証手段と、プログラマブル表示器内部に設けられた個人認証手段を全て合せ、この全て合された認証手段の中から操作者が個人認証を行なう認証手段の選択枝を複数設定することで、認証不可を防ぎ、利便性が向上するという効果を有する。
【0027】
さらに、認証設定処理部106にて行なわれる、システム管理者が併用認証を行なうための情報と操作者を特定するための情報を設定する専用の設定画面を表示する際には、システム管理者専用のパスワードを設定することができ、セキュリティを強化できる。
【符号の説明】
【0028】
10 制御システム、100 プログラマブル表示器、101 表示部、102 表示処理部、103 入力部、104 通信部、105 認証装置制御部、106 認証設定処理部、107 認証処理部、108 認証設定格納部、109 認証情報格納部、301〜303 外部認証装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも入力部、通信部を有し、前記通信部を介して外部認証手段が複数接続され、内部に個人認証手段が設けられたプログラマブル表示器において、
複数の前記外部認証手段と前記プログラマブル表示器内部に設けられた個人認証手段の複数の認証手段の組合せによる併用認証を行なうための情報を格納する認証設定格納部と、
操作者を特定するための情報を格納する認証情報格納部と、
前記併用認証を行なうための情報と前記操作者を特定するための情報を設定する認証設定処理部と、
前記認証設定格納部に格納された前記併用認証を行なうための情報に基づき、操作者が前記入力部より入力し、または複数の前記外部認証手段より取得される操作者の個人認証情報と、前記認証情報格納部に格納された前記操作者を特定するための情報を比較し、認証判定を行なう認証処理部を備えることを特徴とするプログラマブル表示器。
【請求項2】
前記併用認証を行なうための情報には、認証手段の一覧情報と認証の順序が含まれ、この認証の順序通りに、操作者の個人認証情報が前記操作者を特定するための情報と一致した場合に、認証成功とすることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル表示器。
【請求項3】
認証手段や認証の順序の異なる併用認証の組合せを複数通り設定し、この複数通り設定された併用認証と複数の前記外部認証手段と前記プログラマブル表示器内部に設けられた個人認証手段を全て合せ、この全て合された認証手段の中から操作者が個人認証を行なう認証手段の選択枝を複数設定することを特徴とする請求項1〜2に記載のプログラマブル表示器。
【請求項4】
前記認証設定処理部での前記併用認証を行なうための情報と前記操作者を特定するための情報の入力設定は、特定のシステム管理者専用の個人認証が必要な設定画面において、特定のシステム管理者のみが行なえることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプログラマブル表示器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−100267(P2011−100267A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254082(P2009−254082)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】