説明

プログラム、情報入力装置、及びその制御方法

【課題】ユーザによる操作入力をしやすくすることのできるプログラムを提供する。
【解決手段】単位時間ごとに、操作入力装置が受け付けたユーザの操作入力の内容を示す入力値を取得し、取得した複数の入力値の一つに応じて決まる基準値を、取得した複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、操作対象となるパラメータの出力値として算出するように、操作入力装置と接続されたコンピュータを機能させるためのプログラムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが行う操作入力を受け付けるプログラム、情報入力装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが操作入力装置に対して行った操作入力を受け付けて各種の情報処理を行う情報入力装置がある。このような情報入力装置は、ユーザが操作入力装置に対して操作入力を行った場合に、その操作内容を示す入力値を取得し、取得した入力値に応じて、例えばキャラクタを移動させたり、仮想空間内に設定された視点を移動させたりする処理を実行する。このような操作入力の具体例としては、タッチセンサ上にユーザが指やスタイラスなどを接触させる操作や、アナログスティックなどの操作部材を動かす操作が挙げられる。また、情報入力装置の中には、操作入力装置として、筐体の傾きを検知するセンサ(ジャイロスコープ等)を内蔵したものがある。このような情報入力装置は、ユーザがその筐体を傾ける操作を行うことにより、その傾きを示すセンサの検知結果の値を入力値として取得して、各種の情報処理を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような情報入力装置においては、操作入力装置の物理的な制約等により入力値のとり得る値の範囲が限られてしまうので、ある瞬間にユーザが行っている操作入力の内容を示す入力値を用いるだけでは、ユーザが入力可能な値の範囲が限られてしまう。一例として、ユーザが筐体を傾ける操作を行った場合に、その傾き量に応じて仮想空間内に設定された視点の向きを変化させる処理を考える。この場合、視点の向きを大きく変化させるためには筐体をそれだけ大きく傾ける必要があり、筐体の形状やユーザの筐体の持ち方などによっては、大きな値の操作入力をしにくくなってしまうことがあり得る。
【0004】
一方、ユーザが行った操作入力の内容を示す入力値を、操作対象となるパラメータの単位時間あたりの変化量として用いることも考えられる。このような操作入力方法を前述の例に適用した場合、ユーザが情報入力装置の筐体を一定方向に傾けた状態を保っている間、情報入力装置は、その傾き方向と対応する方向に視線の向きを変化させ続けることになる。しかしながら、このような操作入力方法は、場面によっては、パラメータの値を微調整させにくく、ユーザにとって操作がしにくい場合がある。
【0005】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、ユーザが行った操作入力の内容を示す入力値に応じて、操作対象のパラメータの値を変化させる場合に、ユーザによる操作入力をしやすくすることのできるプログラム、情報入力装置、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプログラムは、ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置と接続されたコンピュータを、単位時間ごとに、前記操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得手段、及び、前記入力値取得手段が取得した複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出手段、として機能させるためのプログラムであって、前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得手段が単位時間ごとに取得した複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出することを特徴とする。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に記憶されてよい。
【0007】
また、上記プログラムにおいて、前記基準値は、前記入力値取得手段が最後に取得した入力値に応じた値であることとしてもよい。
【0008】
また、前記出力値算出手段は、前記ユーザが所定の開始操作を実行した後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力することとしてもよい。
【0009】
あるいは、前記出力値算出手段は、前記ユーザが所定の開始操作を実行した後で、かつ、所定の開始条件が満たされた後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力することとしてもよい。
【0010】
また、前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した入力値が予め定められた値を上回る場合、前記変化量として予め定められた上限値を用いて前記出力値を算出することとしてもよい。
【0011】
また、上記プログラムにおいて、前記操作入力装置は、ユーザが手で把持する筐体の傾きを検知するセンサであって、前記入力値取得手段は、前記筐体を傾ける操作入力をユーザが行った場合に、当該操作による前記筐体の傾き方向及び傾き量を示す値を、前記入力値として取得し、前記出力値は、方向及び大きさを示す値であって、前記基準値は、前記一つの入力値が示す傾き方向及び傾き量に応じて決まる方向及び大きさを示す値であり、前記変化量は、対応する前記入力値が示す傾き方向に応じて決まる方向への前記傾き量に応じた大きさの変化量であることとしてもよい。
【0012】
さらに、上記プログラムにおいて、前記入力値は、二つの基準軸それぞれを回転中心とした回転量を表す第1の入力成分値及び第2の入力成分値によって構成され、前記出力値は、二つの基準方向のそれぞれに沿った大きさを示す第1の出力成分値及び第2の出力成分値によって構成され、前記出力値算出手段は、前記第1の出力成分値に対する変化量を前記第1の入力成分値に応じて決定し、前記第2の出力成分値に対する変化量を前記第2の入力成分値に応じて決定し、かつ、それぞれの出力成分値に対する変化量を互いに異なる計算方法で決定することとしてもよい。
【0013】
また、上記プログラムにおいて、前記基準値は、前記入力値の絶対値が所定値を超える範囲において、前記入力値の変化に対する前記基準値の変化の割合が、前記所定値以下の範囲における前記入力値の変化に対する前記基準値の変化の割合より小さくなるように決定されることとしてもよい。
【0014】
また、上記プログラムは、前記出力値算出手段が前記出力値を算出する際に、前記入力値取得手段が最後に取得した入力値に応じた前記変化量の大きさを示す画像を表示画面に表示させる手段、として前記コンピュータをさらに機能させることとしてもよい。
【0015】
また、本発明に係る情報入力装置は、ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置と接続された情報入力装置であって、単位時間ごとに、前記操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得手段と、前記入力値取得手段が取得した複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出手段と、を含み、前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得手段が単位時間ごとに取得した複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出することを特徴とする。
【0016】
また、上記情報入力装置において、前記情報入力装置は、その筐体の表面及び裏面のそれぞれに配置されたタッチセンサと、前記ユーザが前記筐体の表面に配置されたタッチセンサに両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させるとともに、前記筐体の裏面に配置されたタッチセンサにも両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させる操作を行った場合に、当該操作を開始操作として受け付ける開始操作受付手段と、をさらに備え、前記操作入力装置は、前記筐体の傾きを検知するセンサであって、前記出力値算出手段は、前記開始操作が受け付けられた後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力することとしてもよい。
【0017】
さらに、上記情報入力装置において、前記開始操作受付手段は、前記ユーザが前記筐体の表面に配置されたタッチセンサに両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させるとともに、前記筐体の裏面に配置されたタッチセンサにも両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させた状態を解除する操作を行った場合に、当該操作を終了操作として受け付け、前記出力値算出手段は、前記終了操作が受け付けられた場合、前記出力値の算出を終了することとしてもよい。
【0018】
また、本発明に係る情報入力装置の制御方法は、単位時間ごとに、ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得ステップと、前記入力値取得ステップで取得された複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出ステップと、を含み、前記出力値算出ステップでは、前記入力値取得ステップで取得された一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得ステップで単位時間ごとに取得された複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の実施の形態に係る情報入力装置の外観を示す斜視図である。
【図1B】本発明の実施の形態に係る情報入力装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る情報入力装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る情報入力装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る情報入力装置の筐体をユーザが把持する様子を示す図である。
【図5】筐体の姿勢を示す法線ベクトルと入力値との関係を示す説明図である。
【図6A】図5の法線ベクトルをX軸負方向側から見た様子を示す図である。
【図6B】図5の法線ベクトルをY軸負方向側から見た様子を示す図である。
【図7】開始操作が検出された時点の視点座標系と出力角度値との関係を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る情報入力装置が表示する表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1A及び図1Bは、本発明の一実施形態に係る情報入力装置1の外観を示す斜視図であって、図1Aは情報入力装置1を表面(正面)側から見た様子を、図1Bは裏面側から見た様子を、それぞれ示している。なお、以下では、本実施形態に係る情報入力装置1が携帯型ゲーム機である場合について、説明する。
【0022】
これらの図に示されるように、情報入力装置1の筐体10は、全体として略矩形の平板状の形状をしており、その表面にはタッチパネル12が設けられている。タッチパネル12は、略矩形の形状をしており、ディスプレイ12aと表面タッチセンサ12bとを含んで構成されている。ディスプレイ12aは、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等、各種の画像表示デバイスであってよい。
【0023】
表面タッチセンサ12bは、ディスプレイ12aに重ねて配置されており、ディスプレイ12aの表示面に対応する形状及び大きさの略矩形の検出面を備えている。そして、この検出面上にユーザの指やスタイラス等の物体が接触した場合に、当該物体の接触位置を検出する。なお、表面タッチセンサ12bは、必ずしも物体が検出面に接触した場合だけ物体の位置を検出するのではなく、検出面上の検出可能範囲内まで物体が近接した場合に、当該物体の検出面に対する位置を検出してもよい。また、表面タッチセンサ12bは、例えば静電容量式や感圧式、光学式など、検出面上における物体の位置を検出可能なデバイスであれば、どのような方式のものであってもよい。なお、本実施形態では、表面タッチセンサ12bは、複数箇所での物体の接触を検知可能な多点検知型タッチセンサであることとする。
【0024】
さらに本実施形態では、筐体10の裏面側に、タッチパネル12と対向するように、裏面タッチセンサ14が配置されている。この裏面タッチセンサ14は、ディスプレイ12aの表示面に対応する形状及び大きさの略矩形の検出面を備えている。すなわち、ディスプレイ12aの表示面、表面タッチセンサ12bの検出面、及び裏面タッチセンサ14の検出面は、いずれも略同型、かつ略同サイズであって、筐体10の厚さ方向(Z軸方向)に沿って直線状に並んで配置されている。なお、裏面タッチセンサ14は、表面タッチセンサ12bと同様に各種の方式のものであってよい。また、本実施形態では、裏面タッチセンサ14は、表面タッチセンサ12bと同様に、複数箇所での物体の接触を検知可能な多点検知型タッチセンサであることとする。ユーザは、情報入力装置1の筐体10を両手で把持して、自分の指を表面タッチセンサ12bや裏面タッチセンサ14の検出面上に接触させることによって、情報入力装置1に対する操作入力を行うことができる。このとき、表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14のいずれも多点検知型タッチセンサなので、ユーザは、自分の複数の指を同時にこれらのタッチセンサに接触させることにより、多様な操作入力を行うことができる。
【0025】
なお、図1A及び図1Bには示されていないが、情報入力装置1は、表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14以外に、例えばボタンやスイッチなど、ユーザの操作入力を受け付けるための各種の操作部材を筐体10の表面や裏面、側面などに備えることとしてもよい。
【0026】
また、情報入力装置1の筐体10の内部には、筐体10の傾きを検出するためのセンサとして、ジャイロスコープ16が配置されている。ジャイロスコープ16は、圧電振動型ジャイロなどであって、筐体10に設定された複数のジャイロ基準軸を中心とした筐体10の回転を検知し、当該検知した回転に応じた電気信号を出力する。なお、本実施形態では、ジャイロ基準軸は、ディスプレイ12aの長辺方向(横方向)に沿ったX軸、及び短辺方向(縦方向)に沿ったY軸であることとし、ジャイロスコープ16は、これらのジャイロ基準軸それぞれを回転中心とした筐体10の回転に応じた信号を出力する。
【0027】
図2は、情報入力装置1の内部構成を示す構成ブロック図である。同図に示されるように、情報入力装置1は、その内部に、制御部20と、記憶部22と、画像処理部24と、を含んで構成されている。制御部20は、例えばCPU等を含んで構成され、記憶部22に格納されているプログラムに従って、各種の情報処理を実行する。制御部20が実行する処理の具体例については、後述する。記憶部22は、例えばRAMやROM等のメモリ素子や、ディスクデバイスなどであって、制御部20によって実行されるプログラムや各種のデータを格納する。また、記憶部22は、制御部20のワークメモリとしても機能する。
【0028】
画像処理部24は、例えばGPUとフレームバッファメモリとを含んで構成され、制御部20が出力する指示に従って、ディスプレイ12aに表示する画像を描画する。具体例として、画像処理部24はディスプレイ12aの表示領域に対応したフレームバッファメモリを備え、GPUは、制御部20からの指示に従って、所定時間おきにこのフレームバッファメモリに対して画像を書き込む。そして、このフレームバッファメモリに書き込まれた画像が、所定のタイミングでビデオ信号に変換されて、ディスプレイ12aに表示される。
【0029】
以下、本実施形態において情報入力装置1が実現する機能について、説明する。本実施形態では、情報入力装置1は、記憶部22に格納されたゲームアプリケーションプログラムを実行することで、仮想3次元空間内の様子を示す空間画像を生成し、ディスプレイ12aに表示する。さらにユーザは、このような空間画像が表示された状態において、筐体10を傾ける操作(以下、傾き操作という)を行うことによって、情報入力装置1への操作入力を行う。この操作入力に応じて、情報入力装置1は、仮想3次元空間内に設定された視点の向き(以下、視線方向VDという)を変化させる処理を実行する。すなわち、この視線方向VDを示すパラメータが、傾き操作による操作対象のパラメータとなる。そして、情報入力装置1は、傾き操作に応じて変化した視線方向VDに向かって仮想3次元空間内を見た様子を示す画像を生成し、ディスプレイ12aに表示する。これにより、ユーザは、筐体10を傾けて視線方向を変化させながら、仮想3次元空間内の様子を観覧することができる。このような処理を実現するために、本実施形態では、ジャイロスコープ16がユーザの傾き操作による操作入力を受け付ける操作入力装置として機能する。
【0030】
情報入力装置1は、機能的に、図3に示すように、開始操作受付部30と、入力値取得部32と、出力値算出部34と、表示画像制御部36と、を含んで構成される。これらの機能は、制御部20が記憶部22に格納されたプログラムを実行することにより実現される。このプログラムは、例えば光ディスクやメモリカード等のコンピュータ読み取り可能な各種の情報記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して情報入力装置1に提供されてもよい。
【0031】
開始操作受付部30は、ユーザから所定の開始操作の入力を受け付ける。後述する入力値取得部32は、この開始操作が受け付けられた時点以降に、ユーザが行った傾き操作の内容を示す入力値を取得する。こうすれば、ユーザは、開始操作を実行してから筐体10を傾ける傾き操作を開始することで、ゲームのプレイ中に、視線方向VDを変化させる意図がないにも関わらず、筐体10の傾きを変化させて視線方向VDを変化させてしまうことを避けることができる。
【0032】
本実施形態では、この開始操作は、ユーザが両手で筐体10を挟むように把持して、表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14のそれぞれに両手の指を少なくとも1本ずつ接触させる操作(以下、把持操作という)であることとする。具体的に、ユーザは、図4に示すように、左手の親指を表面タッチセンサ12bの向かって左側の所定領域内に接触させ、左手の人差し指などを裏面タッチセンサ14の裏面側から見て右側の所定領域内に接触させる。同様に、右手の親指を表面タッチセンサ12bの向かって右側の所定領域内に接触させ、右手の人差し指などを裏面タッチセンサ14の裏面側から見て左側の所定領域内に接触させる。開始操作受付部30は、表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14の検出結果を受け付けて、ユーザがこのような把持操作を行ったか否かを判定する。具体的に、例えば開始操作受付部30は、表面タッチセンサ12bの左右両側、及び裏面タッチセンサ14の左右両側の計4箇所の所定領域のそれぞれにユーザの指が1本以上接触しているか否かにより、ユーザが把持操作を行ったか否かを判定する。あるいは、より簡易な処理として、表面タッチセンサ12bのいずれかの位置で2箇所以上、裏面タッチセンサ14でもいずれかの位置で2箇所以上ユーザの指が接触していることを検知した場合に、ユーザが把持操作を行ったと判定してもよい。ユーザは、傾き操作を行う際には、筐体10の左右両側を両手で把持するのが自然である。そこで、このような把持操作を開始操作とすることで、ユーザは、違和感なく開始操作を行ってから傾き操作を開始することができる。
【0033】
入力値取得部32は、ジャイロスコープ16の検出結果に基づいて、ユーザが実行した傾き操作の内容を示す入力値Iを取得する。本実施形態では、入力値取得部32は、ユーザが開始操作を行ったことを開始操作受付部30が検出した後、単位時間(例えば1/60秒)ごとに、ジャイロスコープ16の検出結果から、入力値Iを算出する。ここでは、入力値Iは、x成分値Ix及びy成分値Iyの二つの数値の組によって構成される二次元量であって、初期筐体方向EDiに対する筐体10の相対的な傾き(すなわち、初期筐体方向EDiからの筐体10の傾き方向及び傾き量)を表す値であるものとする。初期筐体方向EDiは、ユーザが開始操作を行った際における筐体10の姿勢を示す方向であって、開始操作受付部30が開始操作を検出した時点における裏面タッチセンサ14の法線方向である。なお、以下では、開始操作の検出時点におけるタッチパネル12及び裏面タッチセンサ14に平行な面を傾き操作の基準面RPとする。通常、ユーザはディスプレイ12aが自分の正面に位置するように筐体10を把持するので、初期筐体方向EDiは、開始操作が行われた時点におけるユーザの視線方向と略一致すると考えられる。
【0034】
具体的に、x成分値Ix及びy成分値Iyは、それぞれ、ユーザが傾き操作を行った際における裏面タッチセンサ14の法線方向(以下、筐体方向EDという)を向いた単位ベクトル(以下、法線ベクトルVという)を基準面RPに射影して得られる射影点のX座標及びY座標を示す値である。図5は、法線ベクトルVと入力値Iとの関係を示す説明図である。また、図6Aは図5の法線ベクトルVをX軸負方向側から見た様子を、図6Bは図5の法線ベクトルVをY軸負方向側から見た様子を、それぞれ示している。なお、これらの図においては、開始操作がなされた時点の筐体10の姿勢が示されており、傾き操作後の筐体10の向きについては図示が省略されている。これらの図から分かるように、x成分値Ix及びy成分値Iyは、法線ベクトルVの大きさを1として、それぞれ最大値1から最小値−1までの数値範囲のいずれかの値をとり、これらの成分値の組によって、ユーザがX軸及びY軸それぞれを回転中心として筐体10を初期筐体方向EDiに対してどの程度回転させたかが示される。すなわち、傾き操作によるX軸及びY軸それぞれを回転中心とした筐体10の回転角をθx及びθyとすると、入力値取得部32は、ジャイロスコープ16の検出結果から得られる回転角θx及びθyを用いて、入力値Iのx成分値Ix及びy成分値Iyを取得することができる。具体的には、
Ix=sinθy
Iy=sinθx
の関係が成り立つ。なお、ここでは、X軸を中心とした回転については、X軸負方向側から見て時計回りに回転する方向を正方向とし、Y軸を中心とした回転については、Y軸負方向側から見て反時計回りに回転する方向を正方向としている。また、ユーザは初期筐体方向EDiから左右前後いずれの向きにも90度を超えて筐体10を傾けることはないものとしている。
【0035】
また、以下では、開始操作受付部30が開始操作を検出した時刻をt=0とし、その後、開始操作受付部30が終了操作を検出するまでの間、単位時間が経過するごとに時刻を示す値tが1ずつ増加することとする。さらに、時刻tにおいて入力値取得部32が取得する入力値IをI(t)と表記し、入力値I(t)のx成分値及びy成分値をそれぞれIx(t)及びIy(t)と表記する。t=0の時点では法線ベクトルVの方向は初期筐体方向EDiと一致するので、Ix(0)=0,Iy(0)=0となる。また、以下では、時刻tにおける筐体方向EDをED(t)と表記する。
【0036】
出力値算出部34は、ユーザが把持操作を行っている間に入力値取得部32が取得した複数の入力値Iに応じて、操作対象となるパラメータの出力値Poを算出する。本実施形態では、操作対象となるパラメータは、前述したように、仮想3次元空間に設定された視線方向VDを示す視線方向パラメータである。具体的に、この視線方向パラメータの出力値Poは、初期視線方向VDiを基準とした視線方向VDの方位を示す二つの出力角度値Pox及びPoyによって構成されるものとする。ここで、初期視線方向VDiは、開始操作が検出された時点における視線方向である。また、これらの出力角度値Pox及びPoyは、二つの基準軸を回転中心とした視線方向VDの回転角を示し、その基準軸は、開始操作が検出された時点の視点座標系に基づいて定義される。視点座標系は互いに直交するVx軸、Vy軸、及びVz軸を用いた座標系であって、Vx軸はディスプレイ12aの画面横方向に、Vy軸は画面縦方向に、またVz軸は視線方向VDに、それぞれ対応している。具体的に、出力角度値Poxは、開始操作が検出された時点の視点座標系におけるVx軸を回転中心とした回転角を、出力角度値Poyは、Vy軸を回転中心とした回転角を、それぞれ示すこととする。図7は、このような視点座標系と出力角度値Pox及びPoyとの関係を示す説明図であって、仮想3次元空間内に設定される視点の位置VP、初期視線方向VDi、及び画像の投影面PPが示されている。この出力角度値Pox及びPoyが、出力値算出部34による算出の対象となる。視線方向VDは、出力角度値Pox及びPoyに応じて初期視線方向VDiを回転させて得られる方向となる。すなわち、出力角度値Pox及びPoyは、Vy軸方向及びVx軸方向という二つの基準軸方向への回転の大きさを示す値になっており、これらの角度値の組によって表される方向及び大きさで初期視線方向VDiを回転させることにより、視線方向VDが決定される。
【0037】
以下、出力値Poの算出方法の具体例について説明する。出力値算出部34は、入力値取得部32が取得した複数の入力値Iの一つに応じて決まる基準値Prを、入力値取得部32が単位時間ごとに取得した複数の入力値Iのそれぞれに応じた変化量Pdだけ変化させた値を、出力値Poとして算出する。出力値Poと同様に、基準値Prも基準角度値Prx及びPryの二つの角度値によって構成される。また、変化量Pdも、角度値Poxの変化量を示す差分角度値Pdxと、角度値Poyの変化量を示す差分角度値Pdyの二つの角度値によって構成されてよい。
【0038】
本実施形態では、出力値算出部34は、単位時間が経過して、入力値取得部32が新たな入力値Iを取得するごとに、出力値Poを更新する。このとき、時刻t=nにおける基準値Pr(n)は、入力値取得部32が最後に取得した入力値I(n)に応じて決まる値であるものとする。また、変化量Pdについては、開始操作が検出された時刻t=0の時点より後に取得された全ての入力値I(t)(t=0,1,2,・・・,n)のそれぞれについて算出され、出力値Po(n)に反映される。その結果、時刻t=nにおける角度値Pox(n)及びPoy(n)は、例えば以下の計算式により算出される値となる。
【数1】

【0039】
ここで、基準角度値Prx(n)及びPry(n)の算出方法の具体例について、説明する。これらの基準角度値は、時刻t=nにおける入力値I(n)に応じて決まるので、時刻t=nの時点における筐体10の姿勢に応じて一意に決定される値となる。例えばPrx(n)及びPry(n)は、入力値I(t)のx成分値Ix(t)及びy成分値Iy(t)を用いて、以下の計算式により算出される値となる。
Prx(n)=sin−1(α・Iy(n))
Pry(n)=sin−1(α・Ix(n))
ここで、αは予め定められた係数である。
【0040】
αが1の場合、基準角度値Prx(n)及びPry(n)は、前述した計算式により、それぞれθx及びθyに一致する。すなわち、基準値Prは、初期筐体方向EDiに対する筐体方向ED(n)の傾き方向及び傾き量と一致する方向及び量で、初期視線方向VDiを回転させる回転角を表す。また、αが1より小さい場合、基準値Prは、初期筐体方向EDiに対する筐体方向ED(n)の傾き方向と一致する方向に、この傾き量より小さい角度だけ初期視線方向VDiを回転させる回転角を表すことになる。逆にαを1より大きい値とすれば、基準値Prは、初期筐体方向EDiに対する筐体方向ED(n)の傾き量よりも大きな角度だけ初期視線方向VDiを回転させる回転角を表すことになる。いずれにせよ、このように基準角度値Prx(n)及びPry(n)を算出することで、出力値Po(n)は、時刻t=nにおける筐体10の姿勢に対応する向きに初期視線方向VDiを回転させる成分を含むことになる。なお、係数αは負の値であってもよい。この場合、基準値Prが示す初期視線方向VDiからの回転方向は、筐体10の傾き方向とは逆方向になる。また、上記の例では、Iy(n)からPrx(n)を算出する計算式と、Ix(n)からPry(n)を算出する計算式とは、同じ関数であることとしたが、出力値算出部34は、互いに異なる計算方法でPrx(n)及びPry(n)を算出してもよい。具体的に、例えば出力値算出部34は、係数αの代わりに、互いに異なる係数α1及びα2を用いてPrx(n)及びPry(n)を算出してもよい。
【0041】
また、基準角度値Poxは、入力値Iyの絶対値が所定の閾値Ithを超える範囲において、入力値Iyの変化に対する基準角度値Prxの変化の割合が、閾値Ith以下の範囲における入力値Iyの変化に対する基準値Prxの変化の割合より小さくなるように決定されることとしてもよい。具体的に、例えば出力値算出部34は、以下の計算式により基準角度値Prxを算出する。
【数2】

こうすれば、入力値Iyの絶対値が閾値Ithを超えた範囲では、Iyに乗じる係数が1/2になり、その分、入力値Iyの単位変化当たりの基準角度値Prxの変化の割合が小さくなる。これにより、入力値Iyが、上限値(ここでは+1)及び下限値(ここでは−1)に近づいたときに、入力値Iyの変化が基準角度値Prxの変化に反映されにくくなる。なお、ここでは入力値Iyの絶対値が閾値Ith以下の範囲での係数と、閾値Ithを超える範囲での係数との比を1/2としたが、この比はそれ以外の値であってもよい。また、入力値Iyの絶対値が閾値Ith以下の場合と閾値Ithを超える場合とで異なる計算式を用いるのではなく、入力値Iyの絶対値が大きくなるにつれて、入力値Iyの変化に対する基準角度値Prxの変化の割合が小さくなるような一つの関数(例えば二階微分が負の値になる関数)を用いて基準角度値Prxを算出してもよい。また、入力値Ixを用いて基準角度値Poyを算出する場合についても、以上説明した基準角度値Pryの計算式と同様の計算式で算出することとしてよい。
【0042】
一方、入力値I(t)に応じて決まる差分角度値Pdx(t)及びPdy(t)も、基準角度値Prx(n)及びPry(n)と同様に、入力値I(t)に応じた向き及び量で視線方向VDを回転させる回転角を示す角度値であってよい。ただし、差分角度値Pdx(t)およびPdy(t)は、同じ入力値I(t)に応じて決まる基準角度値Prx(t)およびPry(t)と比較して、相対的に小さな値となることが望ましい。そのため、これらの差分角度値は、基準角度値とは異なる関数により算出される。例えば差分角度値Pdx(t)およびPdy(t)は、それぞれ、Ix(t)及びIy(t)を用いて、下記のような関数で表される。
Pdx(t)=sin−1(F(Iy(t)))
Pdy(t)=sin−1(F(Ix(t)))
ここで、F(x)は予め定められた関数である。関数F(x)は、例えば以下のように定義される。
【数3】

ここで、βは予め定められた係数である。なお、係数βも、係数αと同様、正の値であっても負の値であってもよい。さらに、F(x)は、その絶対値が所定の上限値を超えないように制限されてもよい。この場合、xの絶対値が所定の値を超える場合、F(x)の絶対値はこの上限値に一致する値になる。なお、基準角度値Prと同様に、Pdx(t)及びPdy(t)についても、互いに異なる計算式によって算出してもよい。具体的に、例えば出力値算出部34は、Pdx(t)を算出する場合と、Pdy(t)を算出する場合とで、上述した計算式における係数βを変化させてもよい。こうすれば、Y軸を回転中心として筐体10を回転させた場合と、X軸を回転中心として筐体10を回転させた場合とで、同じ回転量でも視線方向VDの変化量が異なるようにすることができる。
【0043】
なお、出力値算出部34は、前述したように、単位時間が経過するごとに新たに入力値取得部32が取得した入力値Iを反映して新たな出力値Poを算出する必要がある。しかしながら、出力値算出部34は、必ずしも出力値Poの計算を最初からやり直す必要はなく、前回算出された出力値Poに対して、基準値Prを新たに取得した入力値Iに応じて決まる値に更新するとともに、新たに取得した入力値Iに応じた変化量だけさらに変化させればよい。具体例として、時刻t=nにおける出力角度値Pox(n)及びPoy(n)は、時刻t=(n−1)における出力角度値Pox(n−1)及びPoy(n−1)を用いて、下記の計算式により算出される。
【数4】

このような計算式により出力値Poを算出する場合、出力値算出部34は、時刻t=(n−1)において出力角度値Pox(n−1)及びPoy(n−1)を算出した際に、当該算出した出力角度値Pox(n−1),Poy(n−1)と、その算出に用いた基準角度値Prx(n−1),Pry(n−1)と、を記憶部22内に一時的に格納しておく。そして、次回の演算の際には、記憶部22に格納されている前回の出力角度値及び基準角度値と、新たに取得された入力値I(n)から算出した基準角度値及び差分角度値と、を用いて、上述した計算式により出力角度値Pox(n)及びPoy(n)を算出する。
【0044】
あるいは、出力値算出部34は、以下に示す計算式により出力角度値Pox(n)及びPoy(n)を算出してもよい。
【数5】

この例では、出力値算出部34は、開始操作後に算出された差分角度値Pdxを合計した累積値を、記憶部22内に格納しておく。そして、新たに入力値I(t)が取得された際には、記憶部22に格納されている累積値を、入力値I(t)から算出した差分角度値Pdx(t)をさらに加算した値に更新する。そして、この更新された累積値に、入力値I(t)から算出した基準角度値Pdx(t)を加算することで、出力角度値Pox(t)を算出する。出力角度値Poy(t)についても、同様の処理により算出できる。
【0045】
なお、これまでの説明では、出力値算出部34は、開始操作が検出された後に取得された全ての入力値Iについて変化量Pdを算出し、これらの変化量Pdを出力値Poに反映させることとしたが、ユーザが開始操作を実行した後、かつ、所定の開始条件が満たされた後に取得された入力値Iについて算出した変化量Pdだけを出力値Poに反映させることとしてもよい。この場合の開始条件は、例えば開始操作の検出後予め定められた時間が経過することであってよい。あるいは、入力値Iの単位時間の変化量が所定の値未満となったことでもよい。このようにすることで、ユーザが開始操作を行った直後においては、基準値Prのみに基づいて出力値Poが決定され、開始操作後、しばらく時間が経過してから(あるいは、ユーザが筐体10の姿勢を一定の状態に保つようになってから)変化量Pdに応じた出力値Poの変化が開始するようにすることができる。
【0046】
表示画像制御部36は、出力値算出部34が出力する視線方向パラメータの出力値Poに応じて、ディスプレイ12aに表示されている画像を更新する。本実施形態では、表示画像制御部36は、時刻tにおいて出力値算出部34が出力する出力値Po(t)に応じて決まる回転方向及び回転量で初期視線方向VDiを回転させた方向を、時刻tにおける視線方向VD(t)とし、この視線方向VD(t)に沿って仮想3次元空間内の様子を見た空間画像をディスプレイ12aに表示させる。このような処理が単位時間ごとに繰り返されることにより、表示画像内に含まれる画像要素は、出力値Poの変化に応じて当該表示画像内を移動することになる。この画像要素は、仮想空間内に配置された各種のオブジェクトであってもよいし、メニュー画面内のアイコン等であってもよい。
【0047】
本実施形態では、表示画像制御部36は、ゲームキャラクタオブジェクトや背景オブジェクト等のオブジェクトを配置した仮想3次元空間を記憶部22内に構築する。そして、出力値算出部34が算出する出力値Poに応じて決定される視線方向VDから見た当該仮想3次元空間内の様子を示す画像の描画を画像処理部24に指示することとする。当該指示に応じて画像処理部24内のGPUが画像を生成し、フレームバッファに書き込むことで、ディスプレイ12aにゲーム画像が表示される。これにより、ユーザは、自身が行った傾き操作に応じて変化した視線方向VDから見た仮想3次元空間内の様子を観覧できる。
【0048】
なお、表示画像制御部36は、出力値算出部34が算出する出力値Poに応じて表示画像を更新する場合に、この出力値Poの算出に用いられた変化量の大きさを示す画像(以下、インジケータ画像40という)を表示画像に含めてもよい。図8は、このようなインジケータ画像40を含んだ表示画像の一例を示す図である。ここで、インジケータ画像40は、特に最後に入力値取得部32が取得した入力値Iに応じた変化量の大きさを示すこととする。すなわち、時刻tにおいて算出された出力値Po(t)に応じて表示画像を更新する際には、入力値I(t)に応じて算出された差分角度値Pdx(t)及びPdy(t)の大きさを示すインジケータ画像40を表示する。インジケータ画像40は、差分角度値Pdx(t)及びPdy(t)それぞれの絶対値の合計値に応じて変化する画像であってもよいし、Pdx(t)及びPdy(t)の二乗和に応じて変化する画像であってよい。あるいは、Pdx(t)及びPdy(t)それぞれの大きさを示す画像であってよい。また、Pdx(t)及びPdy(t)そのものの大きさではなく、例えば基準値Pr(t)や出力値Po(t)の大きさに対するPdx(t)及びPdy(t)の大きさを示す画像であってもよい。このようなインジケータ画像40を表示することにより、ユーザに、操作対象のパラメータの現在の変化状況を明示的に知らせることができる。
【0049】
また、本実施形態では、以上説明した入力値Iに応じた操作対象のパラメータの更新処理は、ユーザが所定の終了操作を行うまで繰り返し実行されることとする。ユーザが所定の終了操作を行うと、これに応じて出力値算出部34は操作対象のパラメータの出力値Poを算出する処理を終了し、表示画像制御部36は、当該終了操作の時点における出力値Poによって決まる視線方向VDを維持しながら、当該視線方向VDから見た仮想3次元空間の画像を表示する。
【0050】
具体的に、この終了操作は、ユーザが把持操作を行っている状態(すなわち、ユーザが表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14それぞれに両手の指を接触させた状態)を解除する操作であることとする。この例では、ユーザは、傾き操作を実行している間、把持操作を行っている状態を保つこととする。すなわち、開始操作受付部30は、ユーザが把持操作を開始した後、その状態を維持しているか否かの判定を所定時間おきに繰り返す。そして、把持状態が終了したと判断される場合(すなわち、ユーザが表面タッチセンサ12b及び裏面タッチセンサ14それぞれの左右に設定された所定領域のいずれかに接触させていた指を離した場合)、開始操作受付部30は、この操作を傾き操作の終了を示す終了操作として受け付けて、その旨を入力値取得部32に対して出力する。これにより、入力値取得部32は、ユーザが把持操作を継続している間(すなわち、開始操作を行ってから終了操作を行うまでの間)、ユーザが行った操作入力の内容を示す入力値を取得する処理を継続し、ユーザが終了操作を実行した場合には、この入力値取得処理を終了することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る情報入力装置1においては、操作対象となるパラメータの出力値Poが、基準値Prと変化量Pdとに基づいて決定される。このうち、基準値Prは、ある瞬間の入力値Iを反映した成分であり、変化量Pdについては、ユーザが開始操作を行った後に取得された複数の入力値Iのそれぞれに応じた変化量Pdが累積されて出力値Poに反映される。ユーザが傾き操作を継続している間は、時間経過に従って出力値Poに占める変化量Pdの寄与は増大していくので、ある一時点における入力値Iだけを用いて出力値Poを算出する場合と異なり、出力値Poがとり得る値の範囲を大きくすることができる。逆に、傾き操作を開始した直後は、出力値Poに対する変化量Pdの寄与は基準値Prと比較して小さいので、基準値Prに略対応する出力値Poが出力される。例えばユーザは、開始操作を行った後、視線方向VDを変化させたい向きに筐体10を傾ける傾き操作を行い、その後、すぐに終了操作を行うことで、自分の意図した向きに近い向きに視線方向VDを変化させることができる。
【0052】
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えば以上の説明においては、操作対象のパラメータは視線方向VDを表すパラメータであることとしたが、操作対象のパラメータはこれ以外の各種のパラメータであってよい。例えば情報入力装置1は、仮想3次元空間に設定された視点VPの位置座標をユーザの傾き操作に応じて変化させてもよいし、仮想3次元空間や仮想平面内に配置されたキャラクタの位置や進行方向をユーザの傾き操作に応じて変化させてもよい。あるいは、仮想平面内においてディスプレイ12aに表示させる表示範囲を変化させてもよい。
【0053】
また、情報入力装置1は、ジャイロスコープに限らず、例えば地磁気センサなど、各種の検知手段によってユーザが行った傾き操作の向きや傾き量を検出することとしてもよい。また、ユーザが行う操作入力の方法は、筐体10を傾ける傾き操作に限られない。例えば情報入力装置1は、表面タッチセンサ12bや裏面タッチセンサ14に対するユーザの操作入力を受け付けることによって、入力値Iを取得してもよい。このような処理の具体例として、ユーザは、裏面タッチセンサ14の一点に自分の指のいずれかを接触させる。そして、その状態を保ったまま、別の指を裏面タッチセンサ14の他の一点に接触させる。このとき、情報入力装置1は、最初にユーザの指が接触した位置を基準位置として、この基準位置から、次にユーザの指が接触した位置までの方向及び距離を示す値を、入力値Iとして取得する。こうすれば、ユーザは、開始操作の後に筐体10を傾ける操作を行った場合と同様に、タッチセンサを用いて基準位置に対する方向及び量を示す操作入力を行うことができる。あるいは、ユーザは、単にいずれかの指を裏面タッチセンサ14の一点に接触させることで、操作対象のパラメータを変化させる操作入力を行うこととしてもよい。この場合には、情報入力装置1は、例えば裏面タッチセンサ14の検出面の中心位置を基準位置とすることで、ユーザの指が接触した位置の基準位置に対する方向及び量を示す値を、入力値Iとして取得できる。なお、表面タッチセンサ12bを用いても、以上説明したような裏面タッチセンサ14に対する操作入力と同様の操作入力を行うことができる。
【0054】
また、以上の説明では、入力値Iは、筐体10の向きを示す法線ベクトルVを基準面RPに射影して得られる射影点のX座標及びY座標を示す2つの成分値から構成されることとしたが、これに代えて、情報入力装置1は、筐体10のX軸及びY軸それぞれを回転中心とした回転角そのものを示すθx及びθyを入力値Iとして取得し、この回転角θx及びθyを用いて出力角度値Pox及びPoyの算出を行ってもよい。また、以上の説明では、入力値Iは基準位置に対する方向及び量を示す二次元の値であることとしたが、入力値Iは一次元の値であってもよい。例えば情報入力装置1は、表面タッチセンサ12bや裏面タッチセンサ14上においてユーザの指が接触した位置のX軸方向の座標値だけを入力値Iとして取得し、取得された複数の入力値Iを用いて算出される一次元の出力値Poを用いて、当該出力値Poに応じた量だけディスプレイ12aに表示される表示画像を画面横方向にスクロールさせるスクロール処理を実行してもよい。また、入力値Iは3つの成分値の組によって構成される三次元の値であってもよい。例えば以上の説明ではジャイロスコープ16によって検出されるX軸及びY軸それぞれを回転中心とした回転量を示す成分値を入力値としたが、これらの成分値に加えて、X軸及びY軸双方に直交するZ軸を回転中心とした回転量を示す成分値Izも、入力値に含めてよい。この場合、情報入力装置1は、ユーザが裏面タッチセンサ14の法線方向を回転中心として筐体10を回転させる操作に応じて、視線方向VDを回転中心としてディスプレイ12aに表示する画像を回転させることとし、出力値算出部34は、成分値Izに応じて表示画像の回転量を示す出力角度値Pozを算出する。
【0055】
また、以上の説明では、ジャイロスコープ16や表面タッチセンサ12b、裏面タッチセンサ14が操作入力装置として機能することとしたが、例えばアナログスティックなど、これ以外の各種の操作入力装置を用いてユーザの操作入力を受け付けてもよい。また、入力値Iを取得する対象となる操作入力の開始や終了を指示する開始操作、終了操作も、以上説明したものに限られず、例えばボタンの押下などであってもよい。さらに、これらの操作入力装置は、いずれも情報入力装置1の筐体10内に配置されることとしたが、操作入力装置は情報入力装置1と別体に構成されてもよい。具体例として、情報入力装置1は家庭用ゲーム機やパーソナルコンピュータ等であって、操作入力装置は、この情報入力装置1と有線又は無線で通信接続され、ジャイロスコープを内蔵するコントローラであってもよい。この場合、ユーザは、このコントローラの筐体を手で把持して傾ける操作を行い、情報入力装置1は、コントローラから送信されるジャイロスコープの検出結果に基づいて、出力値の算出を行う。
【符号の説明】
【0056】
1 情報入力装置、10 筐体、12 タッチパネル、12a ディスプレイ、12b 表面タッチセンサ、14 裏面タッチセンサ、16 ジャイロスコープ、20 制御部、22 記憶部、24 画像処理部、30 開始操作受付部、32 入力値取得部、34 出力値算出部、36 表示画像制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置と接続されたコンピュータを、
単位時間ごとに、前記操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得手段、及び、
前記入力値取得手段が取得した複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得手段が単位時間ごとに取得した複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記基準値は、前記入力値取得手段が最後に取得した入力値に応じた値である
ことを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプログラムにおいて、
前記出力値算出手段は、前記ユーザが所定の開始操作を実行した後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプログラムにおいて、
前記出力値算出手段は、前記ユーザが所定の開始操作を実行した後で、かつ、所定の開始条件が満たされた後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した入力値が予め定められた値を上回る場合、前記変化量として予め定められた上限値を用いて前記出力値を算出する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記操作入力装置は、ユーザが手で把持する筐体の傾きを検知するセンサであって、
前記入力値取得手段は、前記筐体を傾ける操作入力をユーザが行った場合に、当該操作による前記筐体の傾き方向及び傾き量を示す値を、前記入力値として取得し、
前記出力値は、方向及び大きさを示す値であって、
前記基準値は、前記一つの入力値が示す傾き方向及び傾き量に応じて決まる方向及び大きさを示す値であり、
前記変化量は、対応する前記入力値が示す傾き方向に応じて決まる方向への前記傾き量に応じた大きさの変化量である
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記入力値は、二つの基準軸それぞれを回転中心とした回転量を表す第1の入力成分値及び第2の入力成分値によって構成され、
前記出力値は、二つの基準方向のそれぞれに沿った大きさを示す第1の出力成分値及び第2の出力成分値によって構成され、
前記出力値算出手段は、前記第1の出力成分値に対する変化量を前記第1の入力成分値に応じて決定し、前記第2の出力成分値に対する変化量を前記第2の入力成分値に応じて決定し、かつ、それぞれの出力成分値に対する変化量を互いに異なる計算方法で決定する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記基準値は、前記入力値の絶対値が所定値を超える範囲において、前記入力値の変化に対する前記基準値の変化の割合が、前記所定値以下の範囲における前記入力値の変化に対する前記基準値の変化の割合より小さくなるように決定される
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記出力値算出手段が前記出力値を算出する際に、前記入力値取得手段が最後に取得した入力値に応じた前記変化量の大きさを示す画像を表示画面に表示させる手段、
として前記コンピュータをさらに機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置と接続された情報入力装置であって、
単位時間ごとに、前記操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得手段と、
前記入力値取得手段が取得した複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出手段と、
を含み、
前記出力値算出手段は、前記入力値取得手段が取得した一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得手段が単位時間ごとに取得した複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出する
ことを特徴とする情報入力装置。
【請求項11】
請求項10に記載の情報入力装置において、
前記情報入力装置は、
その筐体の表面及び裏面のそれぞれに配置されたタッチセンサと、
前記ユーザが前記筐体の表面に配置されたタッチセンサに両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させるとともに、前記筐体の裏面に配置されたタッチセンサにも両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させる操作を行った場合に、当該操作を開始操作として受け付ける開始操作受付手段と、
をさらに備え、
前記操作入力装置は、前記筐体の傾きを検知するセンサであって、
前記出力値算出手段は、前記開始操作が受け付けられた後に前記入力値取得手段が取得した複数の入力値のそれぞれに応じて決まる変化量だけ前記基準値を変化させた値を、前記出力値として出力する
ことを特徴とする情報入力装置。
【請求項12】
請求項11に記載の情報入力装置において、
前記開始操作受付手段は、前記ユーザが前記筐体の表面に配置されたタッチセンサに両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させるとともに、前記筐体の裏面に配置されたタッチセンサにも両手それぞれの指を少なくとも1本ずつ接触させた状態を解除する操作を行った場合に、当該操作を終了操作として受け付け、
前記出力値算出手段は、前記終了操作が受け付けられた場合、前記出力値の算出を終了する
ことを特徴とする情報入力装置。
【請求項13】
単位時間ごとに、ユーザの操作入力を受け付ける操作入力装置が受け付けた操作入力の内容を示す入力値を取得する入力値取得ステップと、
前記入力値取得ステップで取得された複数の入力値に応じて、操作対象となるパラメータの出力値を算出する出力値算出ステップと、
を含み、
前記出力値算出ステップでは、前記入力値取得ステップで取得された一つの入力値に応じて決まる基準値を、前記入力値取得ステップで単位時間ごとに取得された複数の入力値のそれぞれに応じた変化量だけ変化させた値を、前記出力値として算出する
ことを特徴とする情報入力装置の制御方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237838(P2011−237838A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105856(P2010−105856)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】