説明

プログラム自動更新方法及びPBX装置

【目的】主PBX装置のプログラム更新に応じて、他のPBX装置のプログラム更新やこれに適合するデータ更新の自動化を図ったプログラム自動更新方法及びPBX装置を提供する。
【構成】主PBX装置において新たに更新されたプログラムのバージョン情報と、当該プログラムに対応する更新プログラムと、当該新たに更新されたプログラムに対応して展開されるべきデータ値及び当該データ値のデータ構造情報を含む抽出データテーブルと、を他のPBX装置に向けて配信する。当該他のPBX装置において、該バージョン情報と自身の既存プログラムのバージョン情報とを間欠的に比較することによって、当該既存プログラムの更新要否を判定し、当該既存プログラムの更新が必要と判定した場合に、該更新プログラムを用いて当該既存プログラムを更新すると共に、該抽出データテーブルのデータ値を当該データ値のデータ構造情報に従って展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散配置された複数の電話端末にセントレックス機能を提供する主PBX装置と、かかる主PBX装置の障害時にその代替機能を果たす少なくとも1つの他のPBX装置とを含む電話システムにおけるプログラム自動更新方法、並びにかかるPBX装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークを用いた電話交換システムに設けられるIP対応の構内電話交換機(IP−PBXとも称される)の利用においては、セントレックス機能が有効である。セントレックス機能とは、多数の拠点に分散配置されIP電話端末に対して1つの拠点に設置された主PBX装置のみが交換サービスを集中的に行う機能である。かかる機能により、拠点毎にPBX装置を配置する必要がなくコスト的にも有利である。
【0003】
その一方で、交換サービスを集中的に行っていた主PBX装置の障害は、電話システム全体の運用が不可能となり、致命的な結果をもたらす。そのために、主PBX装置の他に、バックアップ装置として副PBX装置を各拠点に分散配置し、主PBX装置の障害時には主PBX装置が従前に担っていた当該拠点部分のみの電話交換サービスを当該副PBX装置が代替する形態が考えられる。
【0004】
このような機能分散を図った電話システムにおいては、各拠点において用いられる呼制御プログラムやデータの同期を図ることが求められる。呼制御プログラム等のソフトウェアは、通常、機能拡張や不具合修正を契機とするプログラムアップデート、すなわちプログラム更新を行うことが想定される。さらに、ソフトウェア機能の変更に際しては、当該ソフトウェア機能が扱うデータ構造に対する変更、例えばテーブルのデータ項目追加や削減を考慮しなければならない。このようなプログラムやデータの同期のための保守作業は、運用コスト上大きな問題となる。
【0005】
この点、例えば、特許文献1には、センター局とリモート局間でバージョンを通知することでリモート局のプログラムを自動的に更新するISDN端末の遠隔制御方式が記載されている。また、特許文献2には、主PBX装置に代わって処理をするバックアップ装置が主PBX装置のデータをコピーして取得し自局に保存することで、主PBX装置のデータとバックアップ装置のデータとを同じにするIP−PBXバックアップシステムやその障害対応方法が記載されている。
【0006】
従って、これらの技術を組み合わせることで、主PBX装置とバックアップ用の副PBX装置との間でデータ及びプログラムを自動的に更新、すなわちアップデートすることができるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−6121号公報
【特許文献2】特開平11−65850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プログラムを更新した場合、以前のデータをそのまま使用することができず、以前のデータを新しいプログラムに対応したデータ構造に変換する作業が必要となり、単純にデータとプログラムをコピーしただけであるとPBX装置として動作しないという問題がある。
【0009】
また、データの変換作業は人的作業で複雑なオペレーションを必要とし、人為的ミスなどによりPBX装置の運用が停止する危険性がある。データとプログラムを自動的に更新し、さらに複雑なデータ変換作業を実施する必要がないことが望まれている。
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主PBX装置のプログラム更新に応じて、他のPBX装置のプログラム更新やこれに適合するデータ更新の自動化を図ったプログラム自動更新方法及びPBX装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるプログラム自動更新方法は、複数の電話端末と、前記電話端末間の呼接続機能を実現するためのプログラムを実行する1つの主PBX装置と、前記主PBX装置に代わって前記プログラムと同一のプログラムを実行する少なくとも1つの副PBX装置と、を含む電話システムが実行するプログラム自動更新方法であって、前記主PBX装置において新たに更新されたプログラムのバージョン情報と、当該プログラムに対応する更新プログラムと、当該新たに更新されたプログラムに対応して展開されるべきデータ値及び当該データ値のデータ構造情報を含む抽出データテーブルと、を前記副PBX装置に向けて配信する配信ステップと、前記副PBX装置において、前記バージョン情報と自身の既存プログラムのバージョン情報とを間欠的に比較することによって、当該既存プログラムの更新要否を判定する更新要否判定ステップと、前記副PBX装置において、当該既存プログラムの更新が必要と判定した場合に、前記更新プログラムを用いて当該既存プログラムを更新すると共に、前記抽出データテーブルのデータ値を当該データ値のデータ構造情報に従って展開する更新実行ステップと、を含むことを特徴とする。 本発明によるPBX装置は、複数の電話端末と、前記電話端末間の呼接続機能を実現するためのプログラムを実行する主PBX装置と、に接続され、前記主PBX装置に代わって前記プログラムと同一のプログラムを実行する少なくとも1つのPBX装置であって、前記主PBX装置において新たに更新されたプログラムのバージョン情報と、当該プログラムに対応する更新プログラムと、当該新たに更新されたプログラムに対応して展開されるべきデータ値及び当該データ値のデータ構造情報を含む抽出データテーブルと、を前記主PBX装置から集信する集信手段と、前記バージョン情報と自身の既存プログラムのバージョン情報とを間欠的に比較することによって、当該既存プログラムの更新要否を判定する更新要否判定手段と、当該既存プログラムの更新が必要と判定した場合に、前記更新プログラムを用いて当該既存プログラムを更新すると共に、前記抽出データテーブルのデータ値を当該データ値のデータ構造情報に従って展開する更新実行手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるプログラム自動更新方法及びPBX装置によれば、主PBX装置のプログラム更新に応じて、他のPBX装置のプログラム更新やこれに適合するデータ更新の自動化が図られる。かかるデータ展開は、更新プログラムと共に他のPBX装置に配信されるデータ構造情報に従ってなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示し、本発明によるPBX装置を含むIP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したセントレックスサーバの内部構成を示すブロック図である。
【図3A】図2に示した第2抽出キーテーブルの構成例を示す図である。
【図3B】図2に示した第2抽出データテーブルの構成例を示す図である。
【図4】図1に示したサバイバルサーバの内部構成を示すブロック図である。
【図5A】図4に示した第1抽出キーテーブルの構成例を示す図である。
【図5B】図4に示した第1データテーブルの構成例を示す図である。
【図6】本発明によるプログラム自動更新方法の処理手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例を示し、本発明によるPBX装置を含む電話システムの構成を示している。当該電話システムは、複数のIP電話端末101〜10n(nは整数)と、少なくとも1つのセントレックスサーバ20と、複数のサバイバルサーバ40a及び40bとを含み、これらがIPネットワーク60を介して相互に接続されている。複数のIP電話端末101〜10nの各々は、複数の拠点毎に分散配置された通常のIP電話端末であり、各々に内線番号が付与されていると共にIPネットワーク60において当該端末を一意に識別し得るIPアドレスが付与されている。IP電話端末101〜10nの各々は、1つのIPネットワーク60に直接接続されているように図示されているが、ルータやスイッチ等によって隔てられたローカルネットワークを介して接続されてもよい。
【0016】
セントレックスサーバ20は、主PBX装置に相当するIP−PBX装置であり、IP電話システムに含まれる全てのIP電話端末101〜10nに、内線通話や外線通話のための呼接続や呼転送等の電話交換サービスを提供する。セントレックスサーバ20には、メンテイスPC(パーソナルコンピュータ)30が接続され、保守者によるプログラム更新等の保守作業を可能としている。セントレックスサーバ20も、IPネットワーク60において一意に識別し得るIPアドレスが付与されている。
【0017】
サバイバルサーバ40a及び40bの各々は、副PBX装置に相当するIP−PBX装置であり、セントレックスサーバ20の障害時に、IP電話端末101〜10nのうちで自身の属する拠点に含まれるIP電話端末のみに対して電話交換サービスを提供する。図に則して説明すると、例えば、サバイバルサーバ40aは、拠点A内のIP電話端末101、102及び103にのみ電話交換サービスを提供する。サバイバルサーバ40bは、拠点B内のIP電話端末104及び105にのみ電話交換サービスを提供する。サバイバルサーバ40a及び40bの各々にも、IPネットワーク60において一意に識別し得るIPアドレスが付与されている。
【0018】
また、図1において、1つのセントレックスサーバ20及び2つのサバイバルサーバ40a及び40bが示されているが、本発明にかかる限定はなく、2つ以上のセントレックスサーバや3つ以上のサバイバルサーバを含む形態も本発明の範囲内である。さらに、セントレックスサーバ20並びに2つのサバイバルサーバ40a及び40bには、図示されていないが、通常の公衆加入者電話網(PSTN)が接続されて、IP電話端末101〜10nの各々と外部の電話端末との外線通話を行うことができる。
【0019】
図2は、図1に示したセントレックスサーバ20の内部構成を示している。セントレックスサーバ20は、外部のIPネットワーク60との間でパケット通信を可能とするIP部21と、PBX機能部22と、既存プログラム23と、第1データセット24と、第2データセット25と、を備える。
【0020】
PBX機能部22は、IP電話端末間やIP電話端末と外部端末との間の呼接続機能、例えばソフトスイッチ(交換)とも称される機能を実現する。セントレックスサーバ20は、通常の汎用コンピュータによって実現され得る装置である。従って、PBX機能部22の機能は、セントレックスサーバ20内にインストールされた既存プログラム23が実行されることによって実現される。既存プログラム23は、機能追加や不具合修正のために適切なタイミングで更新される可能性のあるプログラム群であり、プログラムの新旧はバージョン情報(例えば、Vxx等のバージョン番号表記やHHMMSS等の更新日時表記)によって識別される。
【0021】
第1データセット24は、主PBX装置としてのセントレックスサーバ20自体の設定データ群、例えば、自身のIPアドレスや局名等の情報からなる。第2データセット25は、当該電話システムが収容する全てのIP電話端末の設定データ群、例えば、IP電話端末のIPアドレスと電話番号等の情報からなる。ここで、IPアドレス及び電話番号は、対になって記憶され、IPアドレスから電話番号が特定されると共に電話番号からIPアドレスが特定され得る。従って、PBX機能部22は、これらのデータ群を参照して、IP電話端末からの接続要求に応じた呼接続処理を行うことができる。
【0022】
セントレックスサーバ20は、さらに、HTTP部31と、メンテナンススPC29に接続されたメンテナンスツール30と、バージョン情報33と、更新プログラム34と、第2抽出データテーブル35と、第2抽出キーテーブル36と、を含む。HTTP部31は、バージョン情報33、更新プログラム34及び第2抽出データテーブル35を、IPネットワーク60を介して外部のサバイバルサーバ40a及び40bに対してHTTPプロトコルを用いて同報配信することによって公開する。メンテナンスツール30は、メンテナンススPC29を介した保守者のメンテナンス操作に応じて、新たなプログラム群である更新プログラム34を生成するともに、これに対応してバージョン情報33を更新する機能を有する。メンテナンスツール30は、また、更新プログラム34を生成と共に、当該新たなプログラムに対応するデータ構造の変更を反映するために、第2抽出キーテーブル36の内容に基づいて第2抽出データテーブル35を生成する。
【0023】
尚、メンテナンスPC29を介した保守者のメンテナンス操作は、セントレックスサーバ20自体のプログラム更新操作のみならず、これに対応してサバイバルサーバ40a及び40bのためにバージョン情報33、更新プログラム34及び第2抽出データテーブル35を準備する操作を含む。一方、サバイバルサーバ40a及び40b自体のプログラム更新やデータ更新は、後述するように自動的に行われ、何ら保守者の操作を必要としない。
【0024】
図3A及び図3Bは、図2に示した第2抽出キーテーブル36及び第2抽出データテーブル35の構成例を各々示している。
【0025】
図3Aを参照すると、第2抽出キーテーブル36は、複数行からなり、行毎に、検索キーに相当するデータ名と、当該データ名に対応する抽出要否とからなる。例えば、データ名「slfdn」は、内線番号を意味し抽出要否が「要」である。データ名「slftn」は内線端末番号を意味し、抽出要否が「要」である。データ名「USA」はヘルスチェック結果情報を意味し、抽出要否が「不要」である。抽出要否は、プログラム更新を行う際に、当該データ名のデータ値がプログラム更新に応じて展開されるべきデータであることを示している。
【0026】
図3Bを参照すると、第2抽出データテーブル35は、第2抽出キーテーブル36の内容に基づいて第2データセット25から抽出されたデータ名とデータ値列とデータ構造情報とからなる。第2抽出データテーブル35は、例えば、複数行からなり、行毎に、検索キーに相当するデータ名と、当該データ名に対応するデータ値列とからなる。例えば、データ名「slfdn」と、これに対応するデータ値列として「0001,0002,・・・」と、データ構造情報「root/..../data2/slfdn.txt」が格納されている。データ値の配列順は、好ましくは異なるデータ名の間で対応関係が維持されてもよく、例えば、1つのIP電話端末の内線番号「0001」が内線端末番号「TN1」に対応するものとすることができる。データ構造情報は、データ値の展開先の場所情報やデータ値の展開先の形式情報である。ここで、展開先の場所情報とは、当該データ値が展開されるべきファイル等の資源の場所を指定する情報である。展開先の形式情報とは、当該データ値が展開された際の格納形式、例えば、バイナリ形式や文字列形式の如き格納形式を指定する情報である。かかるデータ構造情報に従って、各データ値が展開されることによって、更新されたプログラムに適合するデータ構造が実現される。
【0027】
図4は、図1に示したサバイバルサーバ40の内部構成を示している。サバイバルサーバ40は、IP部41と、PBX機能部42と、既存プログラム43と、第1データセット44と、第2データセット45と、を備える。IP部41及びPBX機能部42は、前述したセントレックスサーバ20におけるIP部21及びPBX機能部22と各々同一の機能を実現する。
【0028】
第1データセット44は、副PBX装置としてのサバイバルサーバ40自体の設定データ群、例えば、自身のIPアドレスや局名等の情報からなる。第2データセット45は、サバイバルサーバ40が収容するIP電話端末の設定データ群、例えば、IP電話端末のIPアドレスと電話番号等の情報からなる。第1データセット44の内容は、プログラム更新にかかわらず維持されるべきデータであることから、後述するようにプログラム更新の前後においてバックアップ及び復元がなされる必要がある。
【0029】
サバイバルサーバ40は、さらに、プログラム自動更新部50と、HTTP部51と、第1抽出データテーブル57と、第1抽出キーテーブル56と、を備える。HTTP部51は、セントレックスサーバ20に対してHTTPプロトコルを用いてアクセスしてデータ集信を行う機能を実現する。
【0030】
プログラム自動更新部50は、所定周期毎に定期的にまたは任意の間隔を置いて間欠的にセントレックスサーバ20にHTTP部51を介してアクセスし、セントレックスサーバ20内のバージョン情報33を参照する。もしバージョン情報33が新たに更新された場合には、セントレックスサーバ20から第2抽出データテーブル35及び更新プログラム34をダウンロードすることによって取り込み保持する。プログラム自動更新部50は、さらに、更新プログラム34を適用することによってインストール済の既存プログラム43を新たなプログラムに更新すると共に、第2抽出データテーブル35を用いて既存の第2データセット45の内容を更新する機能を実現する。
【0031】
図5A及び図5Bは、図4に示した第1抽出キーテーブル56及び第1抽出データテーブル57の構成例を各々示している。
【0032】
図5Aを参照すると、第1抽出キーテーブル56は、複数行からなり、行毎に、検索キーに相当するデータ名と、当該データ名に対応する抽出要否とからなる。例えば、データ名「IPD」は、IPアドレス情報を意味し抽出要否が「要」である。データ名「SYN」は、システムネームを意味し、抽出要否が「要」である。データ名「HRL」はヘルスチェック情報を意味し、抽出要否が「不要」である。抽出要否は、プログラム更新を行う際に、当該データ名のデータが第1データセット44のデータのうちで、プログラム更新前にバックアップのために抽出され、プログラム更新後に復元されるべきデータであることを示している。
【0033】
図5Bを参照すると、第1抽出データテーブル57は、第1抽出キーテーブル56の内容に基づいて第1データセット44から抽出されたデータ名とデータ値列とからなる。第1抽出データセット54は、例えば、複数行からなり、行毎に、検索キーに相当するデータ名と、当該データ名に対応するデータ値とからなる。例えば、データ名「IPD」と、これに対応するデータ値列として「192.168.0.1」と、データ構造情報「root/..../data1/IPD.txt」とが格納されている。データ構造情報は、データ値の展開先の場所情報やデータ値の展開先のデータ形式情報であり得る。ここで、展開先の場所情報とは、当該データ値が展開されるべきファイル等の資源の場所を指定する情報である。展開先のデータ形式情報とは、当該データ値が展開された際の格納形式、例えば、バイナリ形式や文字列形式の如き格納形式を指定する情報である。かかるデータ構造情報に従って、各データ値が展開されることによって、更新されたプログラムに対応するデータ構造が実現される。
【0034】
図6は、本発明によるプログラム自動更新方法の処理手順を示している。かかる処理手順は、セントレックスサーバ20とサバイバルサーバ40とが連携動作することによって実行される。
【0035】
先ず、セントレックスサーバ20は、自装置のプログラム更新を行う(ステップS1)。自装置のプログラム更新は、メンテナンスPC29を介したメンテナンスツール30に対する保守者の操作に応じて、例えばDVD(Digital Versatile Disc)等の外部媒体から入力される更新プログラムを、インストール済みの既存プログラム23に対して適用することにより行われる。既存プログラム23に対する更新に併せて、第1データセット24のバックアップ及び復元並びに第2データセット25に対する更新が行われる。これにより、セントレックスサーバ20自体のプログラムバージョン更新がなされたことになる。
【0036】
次に、セントレックスサーバ20は、サバイバルサーバ用の更新プログラム34を生成する(ステップS2)。更新プログラム34の生成は、メンテナンスPC29を介したメンテナンスツール30に対する保守者の操作に応じて、例えばDVD(Digital Versatile Disc)等の外部媒体から入力される更新プログラムを更新プログラム34として複写することにより行われる。次いで、サバイバルサーバ用の第2抽出データテーブル35を生成する(ステップS3)。第2抽出データテーブル35の生成は、第2データセット25から第2抽出キーテーブル36に指定されたデータのみをイクスポート(export)、すなわち抽出することによって行われる。尚、サバイバルサーバ40が、図1に示されるように複数台を存在する場合には、第2抽出データテーブル35は、各サバイバルサーバ単位に複数生成される。
【0037】
次いで、セントレックスサーバ20は、バージョン情報33を更新する(ステップS4)。バージョン情報33は、例えばテキストファイルに記述されていて、以前の記述が更新プログラム34に対応するバージョンアップに応じて書き換えられる。最終的に、セントレックスサーバ20は、バージョン情報33と共に、サバイバルサーバ用の更新プログラム34と、第2抽出データテーブル35とを公開する(ステップS5)。これら情報の公開は、例えば、HTTPプロトコルを用いた同報配信によって行われる。
【0038】
一方、サバイバルサーバ40は、セントレックスサーバ20のバージョン情報33を参照する(ステップS6)。バージョン情報33の参照は、サバイバルサーバ40が定期的にセントレックスサーバ20にアクセスすることによって実行される。次いで、サバイバルサーバ40はバージョン情報33が更新されたか否かを判定し(ステップS7)、もしバージョン情報33が以前と変わらず更新されていないと判定した場合には、所定期間だけ待った(ステップS8)後に、ステップS6に戻りバージョン情報33の参照を再度行う。サバイバルサーバ40のセントレックスサーバ20に対するアクセスは、所定周期等の定期頻度に限られず、任意の間隔を置いて間欠的になされてもよい。
【0039】
ステップS7において、バージョン情報33が更新された(例えば、バージョンアップ)と判定した場合には、サバイバルサーバ40は、第1データセット44のバックアップを行う(ステップS9)。第1データセット44がバックアップされることにより、プログラム更新の失敗に起因するデータの損失を防ぐことかできる。
【0040】
次に、サバイバルサーバ40は、セントレックスサーバ20によって公開された、サバイバルサーバ用の更新プログラム34と、第2抽出データテーブル35とを取り込む(ステップS10)。これらデータの取り込みは、HTTP等のプロトコルを用いたダウンロードの方法によって実行される。
【0041】
次に、サバイバルサーバ40は、既存プログラム43に対するプログラム更新と、第2テータセット45に対するデータ更新とを行う(ステップS11)。プログラム更新は、既存プログラム43に対して更新プログラム34を適用することにより行われる。更新プログラム34の適用方法は多様な形態が可能である。例えば、既存プログラム34を更新プログラム34で単純に置き換える形態がある。また、更新プログラム34をいわゆるインストーラとして準備することで、更新プログラム34を起動することによって既存プログラム34内のプログラムモジュールの更新を連続的に行う形態がある。さらに、更新プログラム34をいわゆるバッチ適用プログラムとして準備することによって既存プログラム34の部分的な修復を行う形態がある。
【0042】
データ更新は、第2抽出データテーブル35の内容をインポート(import)、すなわち、第2抽出データテーブル35が与えるデータ値を、当該データ値に対応するデータ構造情報に従って展開することによって実行される。尚、第2抽出データテーブル35は自己展開型のプログラムとして提供されてもよく、プログラム形式の第2抽出データテーブル35を起動するだけでデータ展開が連続してなされるようにしてもよい。
【0043】
次に、サバイバルサーバ40は、バックアップしていた第1抽出データテーブル54の内容を第1データセット44に復元する(ステップS12)。かかる復元は、第1抽出データテーブル57の内容をインポート(import)、すなわち、第1抽出データテーブル57が与えるデータ値を、当該データ値に対応するデータ構造情報に従って展開することによって実行される。
【0044】
以上の処理手順によって、プログラム更新に係る一連の自動動作を終了する。以後、サバイバルサーバ40は、セントレックスサーバ20の障害時等の代替運用に備えて、例えばホットスタンバイ状態となる。
【0045】
以上の実施例において、本発明が適用されることによって、主PBX装置であるセントレックスサーバのプログラム及びデータのバージョンアップがなれると、自動的に副PBX装置であるサバイバルサーバ側でもプログラム及びデータのバージョンアップがなされる。ここでプログラムの更新によってデータ構造に変更があった場合でも、自動的にかかる変更がサバイバルサーバ側でも適切に反映される。これにより、サバイバルサーバの障害時や運用停止時においても、サバイバルサーバによるセントレックスサーバの代替運用が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
20 セントレックスサーバ
21、41 IP部
22、42 PBX機能部
23、43 既存プログラム
24、44 第1データセット
25、45 第2データセット
29 メンテナンスPC
30 メンテナンスツール
31、51 HTTP部
33 バージョン情報
34 更新プログラム
35 第2抽出データテーブル
36、第2抽出キーテーブル
40、40a、40b サバイバルサーバ
50 プログラム自動更新部
56 第1抽出キーテーブル
57 第1抽出データテーブル
60 IPネットワーク
101〜10n 電話端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電話端末と、前記電話端末間の呼接続機能を実現するためのプログラムを実行する1つの主PBX装置と、前記主PBX装置に代わって前記プログラムと同一のプログラムを実行する少なくとも1つの副PBX装置と、を含む電話システムが実行するプログラム自動更新方法であって、
前記主PBX装置において新たに更新されたプログラムのバージョン情報と、当該プログラムに対応する更新プログラムと、当該新たに更新されたプログラムに対応して展開されるべきデータ値及び当該データ値のデータ構造情報を含む抽出データテーブルと、を前記副PBX装置に向けて配信する配信ステップと、
前記副PBX装置において、前記バージョン情報と自身の既存プログラムのバージョン情報とを間欠的に比較することによって、当該既存プログラムの更新要否を判定する更新要否判定ステップと、
前記副PBX装置において、当該既存プログラムの更新が必要と判定した場合に、前記更新プログラムを用いて当該既存プログラムを更新すると共に、前記抽出データテーブルのデータ値を当該データ値のデータ構造情報に従って展開する更新実行ステップと、
を含むことを特徴とするプログラム自動更新方法。
【請求項2】
前記データ構造情報は、当該データ値の展開先の場所情報と、当該データ値の展開先のデータ形式情報と、のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載のプログラム自動更新方法。
【請求項3】
前記更新実行ステップに先立って、当該既存プログラムの更新にかかわらず維持されるべきデータ値をバックアップするステップと、当該バックアップしたデータ値を、前記更新実行ステップの後に復元するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載のプログラム自動更新方法。
【請求項4】
複数の電話端末と、前記電話端末間の呼接続機能を実現するためのプログラムを実行する主PBX装置と、に接続され、前記主PBX装置に代わって前記プログラムと同一のプログラムを実行する少なくとも1つのPBX装置であって、
前記主PBX装置において新たに更新されたプログラムのバージョン情報と、当該プログラムに対応する更新プログラムと、当該新たに更新されたプログラムに対応して展開されるべきデータ値及び当該データ値のデータ構造情報を含む抽出データテーブルと、を前記主PBX装置から集信する集信手段と、
前記バージョン情報と自身の既存プログラムのバージョン情報とを間欠的に比較することによって、当該既存プログラムの更新要否を判定する更新要否判定手段と、
当該既存プログラムの更新が必要と判定した場合に、前記更新プログラムを用いて当該既存プログラムを更新すると共に、前記抽出データテーブルのデータ値を当該データ値のデータ構造情報に従って展開する更新実行手段と、
を含むことを特徴とするPBX装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−77803(P2011−77803A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226770(P2009−226770)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】