説明

プロジェクター及びプロジェクターの制御方法

【課題】ホストコンピューターを利用することなく、特定の者だけがプロジェクター内に保存された投写データにアクセスすることができ、且つ、ホストコンピューターを利用することなくその投写データに追加、変更を行なうことが可能なプロジェクター及びプロジェクターの制御方法を提供する。
【解決手段】認証情報と関連させて投写データを保存する投写データ保存部55と、認証情報に基づいてユーザー認証を行なう認証部51と、認証部51による認証が成功すると、投写データ保存部55に保存されている投写データを投写する投写ユニット11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター及びプロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターは、講演や会議、学校の授業等において広く利用されている。プロジェクターは、通信可能に接続されたホストコンピューターにおいて専用のソフトウェアを実行することによって動作状態が制御される。したがって、ユーザーはプレゼンテーション等でプロジェクターを使用する場合には、使用場所にプロジェクターとホストコンピューターとをセットで持ち運ぶ必要があり、可搬性において不便なところがあった。
【0003】
このため、投写ファイルを保存したメモリーカード等を、プロジェクターの端子に接続するだけで、投写処理を開始することができるプロジェクターが提案されている。これにより、パーソナルコンピューターを一緒に持ち運ぶ必要がなく、プロジェクターのみを携帯すればプレゼンテーション等を実施することが可能となっている。
【0004】
ところが、メモリーカードをプロジェクターへ抜き差しする操作を伴うため、取り出したメモリーカードを紛失したり、盗難されたりする可能性があり、保存されている投写データが漏洩する虞がある。このため、投写データを安全に保管できるよう、投写データにパスワードをつけてプロジェクター内に保存し、パスワードで取りだすといったシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−90285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムは、プロジェクターに接続された外部記憶装置に投写ファイルが保存される。つまり、外部記憶装置に対して投写データを保存するには、ホストコンピューターによって行うことが前提である。投写データに追加や変更がある場合もホストコンピューターによって行なう必要がある。このため、プレゼンテーション中に投写データに追加や変更を行なう必要がある場合には、やはりプロジェクターとともにホストコンピューターを持ち運ばなければならない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ホストコンピューターを利用することなく、特定の者だけがプロジェクター内に保存された投写データにアクセスすることができ、且つ、ホストコンピューターを利用することなくその投写データに追加、変更を行なうことが可能なプロジェクター及びプロジェクターの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明に係るプロジェクターは、認証情報と関連させて投写データを保存する投写データ保存部と、前記認証情報に基づいてユーザー認証を行なう認証部と、前記認証部による認証が成功すると、前記投写データ保存部に保存されている前記投写データを投写する投写部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、プロジェクターは、認証情報と関連させて投写データ保存部に投写データが保存され、ユーザー認証が成功するとその投写データを投写することができる。このため、外部記憶装置やホストコンピューター等を必要とすることなく、プロジェクター単体で投写データを安全に内部に保存することができる。このため、プロジェクターのみを持ち運ぶだけで、どこでも容易に投写処理を行うことができる。
【0009】
また、本発明のプロジェクターにおいて、アプリケーションプログラムを記憶する記憶部を更に備え、前記認証部は、前記アプリケーションプログラムとして前記記憶部に記憶可能に構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、認証部をアプリケーションプログラムとして記憶部に記憶させることができるので、ユーザーの使用環境に応じたユーザー認証システムを容易に導入することができる。例えば、認証装置のアップデートや方式の異なる認証装置の追加に伴い認証部の更新や切り替えが必要な場合でも、新たな認証装置に対応した認証アプリケーションを認証部として追加したり、既存の認証アプリケーションと入れ替えたりすることができる。このため、顧客の認証システム導入のためのコストを低減することができる。なお、本発明では「アプリケーション」を「アプリケーションプログラム」と同義の用語として使用する。
【0010】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記投写データを編集するための入力操作を受け付ける入力部と、前記入力操作に基づいて前記投写データを編集するデータ編集部と、を更に備え、前記投写データ保存部は、前記認証情報と関連させて編集後の投写データを保存することが好ましい。
上記構成によれば、投写データを編集するための入力操作を受け付け、さらに編集後の投写データをプロジェクター内部の投写データ保存部に保存することができる。例えば、プレゼンテーション中に受け付けた入力操作によって、投写データ、すなわちプレゼンテーション資料に対する文字や図形の追加や文章やレイアウトの変更等の編集が行われた場合、その編集の結果を反映させた投写データを、認証情報に対応するユーザーだけがアクセス可能なように保存することができる。
【0011】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記投写データ保存部は、複数の認証情報と関連させて前記投写データを保存することが好ましい。
上記構成によれば、複数の認証情報と関連させて投写データを保存することができるので、各認証情報に対応する複数のユーザーだけが投写データにアクセスすることができる。したがって、投写データを安全に保存しつつも、特定のユーザーの間では投写データに容易にアクセスすることを可能にすることができる。
【0012】
また、本発明のプロジェクターにおいて、投写終了時における投写データを、次回投写時に再投写させるための投写データ回復情報を保存する回復情報保存部を更に備え、前記投写部は、次回投写時に前記投写データ回復情報を読み出して投写することが好ましい。
上記構成によれば、投写データ回復情報を保存することができるので、次回プロジェクターの電源をONした場合には、投写データ回復情報に基づいて投写処理を行うことができ、前回の続きの投写画面から投写処理を開始することができる。
【0013】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る表示装置の制御方法は、認証情報と関連させて投写データを保存する保存ステップと、前記認証情報に基づいてユーザー認証を行なう認証ステップと、前記認証ステップにおいて認証が成功すると、前記投写データを投写データ保存部から読み出して投写する投写ステップと、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、投写データを認証情報と関連させて保存し、ユーザー認証が成功すると投写データを投写することができる。このため、外部メモリーやホストコンピューター等を必要とすることなく、プロジェクター単独で投写データを安全に内部に保存することができる。このため、プロジェクターのみを持ち運ぶだけで、どこでも容易に投写処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のプロジェクターの内部構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のプロジェクターのアプリケーション実行環境を説明するソフトウェア階層図である。
【図3】本実施形態のプロジェクターのユーザー認証機能及び編集機能を説明するためのブロック図である。
【図4】投写データ保存部に保存されている投写データの一例である。
【図5】投写データ保存部に保存されている投写ファイルの一例である。
【図6】回復情報保存部に保存されるデータ回復情報の一例である。
【図7】本実施形態のプロジェクターによるユーザー認証及びデータ編集処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】ユーザーの認証画面の一例である。
【図9】投写ファイルを選択する画面の一例である。
【図10】投写データに編集を行なったときの投写画面の一例である。
【図11】複数のユーザーの認証を促す画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプロジェクター及びプロジェクターの制御方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るプロジェクター1の概略構成を示す図である。図1に示すように、プロジェクター1は、制御部10と、投写ユニット11と、拡張スロット12と、ネットワークカード13と、フラッシュROM14、撮像ユニット40とを有している。
【0017】
制御部10は、プロジェクター1の各部を中枢的に制御するものであり、演算処理プロセッサとしてのCPU15と、このCPU15により実行される制御プログラム(いわゆるファームウェア)が格納されるROM17と、CPU15のワークエリアとして機能して演算結果や各種データを一時的に格納するRAM16とを有している。
【0018】
投写ユニット11は、例えば、放電発光型の光源ランプや、LED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子等からなる光源と、光源から射出された光束を画像信号に基づいて変調して画像光を形成する光変調装置(例えば、液晶パネル、入射側偏光板および射出側偏光板を備えた液晶ライトバルブやマイクロミラーを用いたデバイス等)と、画像光を拡大投写する投写レンズ等と、を備えて構成されている。
【0019】
拡張スロット12は、プロジェクター1に内設され、当該プロジェクター1の機能を拡張するためのカード型の回路が挿脱されるソケットであり、この拡張スロット12には、上記ネットワークカード13が挿着されている。
【0020】
ネットワークカード13は、データ通信部18と周辺機器接続部19とを有し、建物内に敷設されたLANやインターネット等のネットワーク2を介して他のプロジェクターや通信端末(例えばコンテンツサーバー20)とデータ通信する機能、および、周辺機器を接続する機能を有するものである。すなわち、上記データ通信部18は、TCP/IP等の所定の通信プロトコルに基づいて信号処理するネットワークコントローラー21と、有線または無線にてネットワーク2に接続される通信I/F22とを有して構成されている。また、周辺機器接続部19は、周辺機器を接続するためのものであり、例えばUSB規格やIEEE1394規格等の所定規格に準拠して信号処理を実行する接続I/Fコントローラー23と、周辺装置との接続部たる複数(図示例では2つ)の接続コネクター25を備えている。本実施形態では周辺装置として、認証装置90やペンタブレットのような入力装置91が接続される。
【0021】
本発明の記憶部を構成するフラッシュROM14は、書き換え可能な不揮発性メモリーであり、各種のアプリケーションが格納されている。これらのアプリケーションは、例えばメモリーカード等の記録媒体26に記録されて配布され、あるいは、ネットワーク2等の電気通信回線を通じて配布され、そして、このようにして配布されたアプリケーションがフラッシュROM14にインストール可能に構成されている。また、制御部10のROM17に格納される制御プログラムもアプリケーションと同様に、記録媒体26、あるいは、ネットワーク2等の電気通信回線を介して配布可能であり、このように配布された制御プログラムがROM17にインストール可能に構成されている。なお、ROM17を、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やFlashメモリーなど、電気的に書換え可能な不揮発性メモリーで構成する場合、フラッシュROM14と同様に本発明の記憶部として機能させることができる。
【0022】
上記フラッシュROM14等に格納されるアプリケーションとしては、認証装置90によるユーザー認証を行なうための認証アプリケーションや、プロジェクター1内部に認証情報と関連付けて保存されている投写データに追加や変更を加えて編集するための編集アプリケーション等がある。このアプリケーションの実行環境について図2を参照して説明する。
【0023】
撮像ユニット40は、撮像光学系、撮像素子および撮像制御回路等を有し、制御部10からの指示に応じて、投写ユニット11によって投写された投写画像を撮像する。
【0024】
図2は、プロジェクター1のアプリケーション実行環境を示すソフトウェア概略構成図である。この図に示すように、プロジェクター1の制御部10には、OSプラットフォーム30上にインタプリタ環境であるソフトウェアプラットフォーム31が構成されている。ソフトウェアプラットフォーム31は、Java(登録商標)プラットフォームのランタイム環境として構成されており、インタプリタとしてのJava(登録商標)VM(Java(登録商標)仮想マシン)32、ライブラリー33およびフレームワーク群34を備えて構成されている。Java(登録商標)はサンマイクロシステムズ社の商標である。
ライブラリー33は標準のAPIライブラリーとプロジェクター1に専用のライブラリーを含んで構成されており、OSプラットフォーム30が提供する抽象化された各種コンピューター資源を、さらにソフトウェアプラットフォーム31専用のモデルによって抽象化して、この上で動作するアプリケーションのための実行環境を提供する。
【0025】
フレームワーク群34はOSGi(Open Service Gateway initiative)フレームワーク34aを含んで構成されており、このOSGiフレームワーク34aは単一のJava(登録商標)VM32上に複数のアプリケーションを動作させる。また、OSGiフレームワーク34aは、アプリケーションのライフサイクルの管理やアプリケーション間通信機能などを提供する。このOSGiフレームワーク34a上には、複数のシステムサービスがプリインストールされている。システムサービスには、新たなアプリケーションを追加したり更新したり削除したりするためのアプリケーション管理サービス等がある。
【0026】
以下では、図2に示したアプリケーション実行環境において実行される、本実施形態における認証アプリケーション及びデータ編集アプリケーションが提供する機能について説明する。
【0027】
<ユーザー認証機能及びデータ編集機能について>
次に、上述したアプリケーションが提供するユーザー認証機能及びデータ編集機能について、図3を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、図2のアプリケーション実行環境によって各アプリケーションが実行されると、プロジェクター1内には、認証部51、データ編集部53が構成される。また、プロジェクター1のフラッシュROM14には、記憶部として、投写データ保存部55、回復情報保存部57が設定される。
【0028】
認証部51は、ユーザー毎に割り当てられている認証情報に基づいてユーザー認証を行なう。例えば、接触式あるいは非接触式ICカードのリーダー/ライターや、指静脈を用いた生体認証装置などのユーザー認証装置90が読み取った認証情報を、不図示のデバイスドライバーを通じて取得し、投写データと関連付けて保存されているユーザーの認証情報と一致するか否かによって認証を行なう。ユーザー認証装置90のデバイスドライバーは、アプリケーションプログラムと同様に、記憶部としてのフラッシュROM14等に記憶される。
【0029】
本発明における入力部として機能するデータ入力部59は、入力装置91から投写データを編集するための入力操作を受け付けると、その入力操作をデータ編集部53に出力する。データ入力部59は、CPU15によって実行されるソフトウェアであることが好ましいが、ハードウェアで実現することもできる。データ編集部53は、データ入力部59から入力された入力操作に基づいて投写データを編集する。例えば、投写ユニット11による投写データの投写処理中に、ペンタブレット等の入力装置91を使ってその投写データに追加や変更等の編集が行われた場合、その追加や変更を投写データに反映させる。そして、データ編集部53は、編集後の投写データを投写データ保存部55へ保存する。
【0030】
また、データ編集部53は、データ入力部59を介して撮像ユニット40から取得した撮像データに基づいて、ユーザーが行なった入力操作を分析し、結果を投写データに反映させることもできる。具体的には、投写ユニット11による投写処理中に、レーザーポインターなどで投写画像上に文字や図形を編集する操作(入力操作)が行なわれると、投写画面上に描かれたレーザーポインターの輝点の軌跡が撮像ユニット40によって撮像される。データ編集部53は、データ入力部59を介して取得した輝点の軌跡を投写データに反映させ、編集後の投写データを投写データ保存部55へ保存する。ここで、レーザーポインターによる入力操作は、実際に文字や図形の形をレーザーポインターの輝点で描くアクションであってもよいし、投写画像を編集するために提供されるグラフィカルユーザーインターフェースに対するアクションであってもよい。グラフィカルユーザーインターフェースについては詳述しないが、簡単な図形の描画や消しゴムの機能を備えていることが望ましい。また、このようなグラフィカルユーザーインターフェースは、後述するデータ編集アプリケーションの機能の一部であることが好ましいが、データ編集アプリケーションと連携して動作する別のアプリケーションプログラムとしてグラフィカルユーザーインターフェースを実現してもよい。
【0031】
投写データ保存部55は、認証情報と関連させて投写データを保存する。投写データ保存部55には、図4に示すように保存ファイル名と、そのファイルにアクセス可能なユーザーの認証情報とが関連されて保存されている。具体的には、ファイル名「001.data」の投写データにアクセス可能なユーザーの認証情報は、「UserX,UserY,UserZ」であり、ファイル名「002.data」の投写データにアクセス可能なユーザーの認証情報は、「UserX」であることが分かる。
【0032】
図5には、ファイル名「001.data」のファイル内容、ファイル名「002.data」のファイル内容を示している。このように、投写データ保存部55にはユーザーの認証情報と関連させて投写データが保存されている。
【0033】
回復情報保存部57は、投写ユニット11による投写終了時における投写データを、次回投写時に再投写させるための投写データ回復情報を保存する。データ編集部53は、回復情報保存部57にデータ回復情報が保存されていれば、そのデータ回復情報を読み出し、投写ユニット11によって投写する。図6に示すデータ回復情報によれば、投写ユニット11は、ファイル名「001.data」のデータ回復情報(2ページ目の投写データ)に基づいて投写し、以降はそのファイルの続きのページを投写する。
【0034】
次に、本実施形態のプロジェクター1がユーザー認証を行い、投写データを編集する処理について図7のフローチャートにしたがい、図8〜図11を参照しつつ説明する。
【0035】
例えば、ユーザーXは、プレゼンテーションを実施するにあたって、予めプロジェクター1内の投写データ保存部55に、自己に割り当てられている認証情報と関連させて投写データを保存させておく。これは、図1に示したPC20などによりネットワーク2を介して行なわれる。
【0036】
ユーザーXは、プロジェクター1をプレゼンテーションを実施する会議室へ持ち込み、電源ONして起動させる(ステップS11)。このとき、PC20との接続が維持されている必要はなく、PC20を会議室へ持ち運ぶ必要はない。会議室へ持ち運ぶものは、プロジェクター1、周辺装置であるユーザー認証装置90及び入力装置91だけでよい。
【0037】
プロジェクター1が起動すると、図2に示したJava(登録商標)VM32の上で、データ編集アプリケーションが起動し(ステップS13)、さらに認証アプリケーションが起動する(ステップS15)。認証アプリケーションが起動すると、図8に示す、ユーザーの認証情報の入力を促すメッセージを表示する。
【0038】
次に、ユーザーXは、ICカードをユーザー認証装置90にかざすと、ユーザー認証装置90は、ICカードからユーザーXの認証情報「UserX」を読み取るとともに、認証情報を読み取った旨を認証部51に通知する。この通知を受け、認証部51はユーザー認証装置90から認証情報の取得を試みる。認証部51は、認証情報を取得すると(ステップS17:Yes)、データ編集部53を介して投写データ保存部55に保存されている投写データと関連付けられている認証情報を取得し、入力されたユーザーXの認証情報「UserX」と一致するかを判定する。一致する場合は、ユーザー認証に成功したものとして(ステップS19:Yes)、データ編集部53は回復情報保存部57にデータ回復情報が保存されているか否かを判定する。認証部51が取得した認証情報と、投写データと関連付けられて投写データ保存部に保存されている認証情報とが一致しない場合(ステップS19:No)、正しい認証情報の入力を促す(ステップS18)。
【0039】
回復情報保存部57にデータ回復情報が保存されていない場合は(ステップS21:No)、データ編集部53はユーザーXの認証情報と関連する投写データを、投写データ保存部55から読み出し、投写ユニット11によって投写する(ステップS23)。なお、図4に示すように、ユーザーXの認証情報「UserX」と関連付けられている保存ファイルは「001.data」及び「002.data」の2つである。このように、ユーザー認証情報と関連するファイルが複数ある場合は、図9に示すように投写ファイルを選択する画面を表示することができる。
【0040】
図9では、ユーザーXは「001.data」の投写ファイルを選択し、入力装置91によって「OK」ボタンを選択すると、データ編集部53は「001.data」の投写ファイルを投写データ保存部55から読み出し、投写ユニット11によって投写する。これにより、ユーザーXはプレゼンテーションを開始する。
【0041】
一方、回復情報保存部57にデータ回復情報が保存されている場合は(ステップS21:Yes)、データ編集部53は、図6に示したようにファイル名「001.data」のデータ回復情報(2ページ目の投写データ)を読み出すことによって、前回の投写処理終了時の投写データを回復して投写ユニット11によって投写する(ステップS25)。これにより、ユーザーXは前回プレゼンテーションを中断した時からの続きを行なうこともできる。
【0042】
投写処理中に、入力装置91あるいは撮像ユニット40からの入力があると(ステップS27:Yes)、データ編集部53はデータ入力部59を介して取得した入力操作に応じて投写データを編集する(ステップS29)。例えばファイル名「001.data」の投写ファイルの投写中に、図10に示すように投写画面の文字部分を丸で囲う入力操作70があったとすると、データ編集部53は、その丸の軌跡を元の投写データに反映させる。そして、反映後の投写データを保存するための保存操作の入力があると(ステップS31:Yes)、投写ユニット11は図11に示すような関連付けしておきたい利用者の認証を促すメッセージを表示する。
【0043】
プレゼンテーションに参加した他のユーザーの認証を行なう場合は、ユーザー認証装置90に、ユーザーX以外の他のユーザーが携帯するICカードをかざすと、認証部51は同じ会議室にいるユーザーをリストアップし(ステップS33)、追加したい認証情報の入力を受け付ける(ステップS35)。
【0044】
ユーザーXがプレゼンテーションで、投写していたファイル名「001.data」の投写データ回復情報を保存する場合は、データ編集部53が回復情報保存部57へ保存する(ステップS37)。さらに、データ編集部53は、ユーザーXの認証情報及びステップS35において受け付けた追加の認証情報と関連させてファイル名「001.data」の投写ファイルを投写データ保存部55へ再び保存して(ステップS39)、投写処理を終了する。
【0045】
このように本実施形態によれば、プロジェクター1は、ステップS19でユーザー認証が成功すると、ステップS23やステップS25でユーザーの認証情報と関連させて保存されている投写データを投写する。このため、外部メモリーやホストコンピューター等を必要とすることなく、プロジェクター1単体で投写データを安全に内部に保存することができる。このため、プロジェクター1のみを持ち運ぶだけで、どこでも容易に投写処理を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態の認証部51は、OSGiフレームワーク34aにアプリケーションプログラムとして追加したり、削除することができる。このため、ユーザーの使用環境に応じたユーザー認証システムを容易に導入することができる。例えば、ユーザー認証装置90を非接触式のICカードを読み取るタイプのものから、指静脈を読み取るタイプや、指紋を読み取るタイプ、瞳の虹彩を読み取るタイプ(アイリス認証)などといった生体認証方式の装置に切り替えるような場合でも、新たな認証装置に対応したアプリケーションプログラムを認証部として追加することができる。このため、顧客の認証システム導入のためのコストを低減することができる。
【0047】
また、ステップS27において投写データを編集するための入力操作を受け付けると、ステップS39において編集後の投写データをプロジェクター1内部の投写データ保存部55に保存する。したがって、プレゼンテーション中に投写データに追加や変更等の編集を行なう入力操作があっても、その操作を反映させた投写データを保存することができる。
【0048】
また、ステップS35で追加したいユーザーの認証情報の入力を受け付け、複数の認証情報と関連させて投写データを保存することができる。このため、各認証情報に対応する複数のユーザーだけが投写データにアクセスすることができる。したがって、投写データを安全に保存しつつも、特定のユーザーの間では投写データに容易にアクセスすることを可能にすることができる。
【0049】
さらに、ステップS37において回復情報保存部57に投写データ回復情報を保存することができるので、次回プロジェクター1の電源をONした場合には、投写データ回復情報に基づいて投写処理を行うことができ、前回の続きの投写画面から投写処理を開始することができる。
【0050】
なお、上記実施形態において、ソフトウェアプラットフォーム31は、Java(登録商標)プラットフォームのランタイム環境として構成されており、インタプリタとしてのJava(登録商標)VM32、ライブラリー33およびフレームワーク群34を備えて構成されているとしたが、発明はこれに限定されるものではない。すなわち、OSGiフレームワーク34aと同等の機能を提供するフレームワークと、当該フレームワークがサポートするソフトウェア実行環境との組合せを、ソフトウェアプラットフォーム31として採用することができる。
【0051】
また、上記実施形態において、認証装置90や入力装置91を、接続コネクター25を介して接続されるプロジェクター1の周辺装置として説明したが、発明はこれに限定されるものではない。例えば、プロジェクター1の筐体に、認証装置90を備える実施形態も可能である。また、プロジェクター1の本体や図示しないリモートコントローラーの操作パネルを入力装置91として利用する実施形態や、ペンタブレットまたはタッチパネルのような入力デバイスをプロジェクター1の本体あるいは図示しないリモートコントローラーに設け、入力装置91として利用する実施形態も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:プロジェクター、2:ネットワーク、10:制御部、11:投写ユニット、12:拡張スロット、13:ネットワークカード、14:フラッシュROM、15:CPU、16:RAM、17:ROM、18:データ通信部、19:周辺機器接続部、20:PC、21:ネットワークコントローラー、22:通信I/F、23:接続I/Fコントローラー、25:接続コネクター、26:記録媒体、30:OSプラットフォーム、31:ソフトウェアプラットフォーム、32:Java(登録商標)VM、33:ライブラリー、34:フレームワーク群、34a:OSGiフレームワーク、40:撮像ユニット、51:認証部、53:データ編集部、55:投写データ保存部、57:回復情報保存部、70:入力操作、90:ユーザー認証装置、91:入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証情報と関連させて投写データを保存する投写データ保存部と、
前記認証情報に基づいてユーザー認証を行なう認証部と、
前記認証部による認証が成功すると、前記投写データ保存部に保存されている前記投写データを投写する投写部と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
アプリケーションプログラムを記憶する記憶部を更に備え、
前記認証部は、前記アプリケーションプログラムとして前記記憶部に記憶可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記投写データを編集するための入力操作を受け付ける入力部と、
前記入力操作に基づいて前記投写データを編集するデータ編集部と、を更に備え、
前記投写データ保存部は、前記認証情報と関連させて編集後の投写データを保存することを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記投写データ保存部は、複数の認証情報と関連させて前記投写データを保存することと特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプロジェクター。
【請求項5】
投写終了時における投写データを、次回投写時に再投写させるための投写データ回復情報を保存する回復情報保存部を更に備え、
前記投写部は、次回投写時に前記投写データ回復情報を読み出して投写することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプロジェクター。
【請求項6】
認証情報と関連させて投写データを保存する保存ステップと、
前記認証情報に基づいてユーザー認証を行なう認証ステップと、
前記認証ステップにおいて認証が成功すると、投写データ保存部に保存されている前記投写データを投写する投写ステップと、を有することを特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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