説明

プロジェクター

【課題】照明装置での光量ロスを抑えつつ、光路上に進退可能な2以上の光学部品を組み込んだプロジェクターを提供すること。
【解決手段】共通の支持軸86aを利用したスライド移動によって、カットフィルター31と絞り32とを重ね合わせるように光路上に配置可能にするので、カットフィルター31と絞り32とを移動させるための機構であるスライド機構33を共通の支持軸86aによって小型化することができ、カットフィルター31と絞り32とを省スペースで光路上に進退させることができる。これにより、2つの光学部品であるカットフィルター31と絞り32とを光路上に進退可能にして投射状態の多様な切替を可能にした場合にも、照明装置20での光量ロスを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターその他の光学部品を光路上に進退可能に設けた照明装置を備えるプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクターとして、照明装置の光路上において、光学フィルターを光軸の直交する平面に対して傾斜した状態で配置するものが存在する(特許文献1参照)。この光学フィルターは、支持体とともにレールに支持されており、ラックを設けた支持体をギアやモーターを含む駆動機構によって駆動することにより、第2レンズアレイと偏光変換素子との間の光路上に傾斜状態を維持しつつ進退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−65496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなプロジェクターにおいて、多様な投射モードを実現するため、光学フィルターだけでなく絞り等の他の光学部品を光路上に進退可能に配置したい場合がある。しかしながら、他の光学部品を追加した場合、これらの光学部品やその駆動機構を配置する空間が光学フィルター単独の場合に比較して倍程度に増大するため、かかる空間確保に伴う光路延長の結果として、照明装置での光量ロスが増加する傾向が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、照明装置での光量ロスを抑えつつ、光路上に進退可能な2以上の光学部品を組み込んだプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクターは、絞りを含む2つの光学部品を光路上に進退可能に設けた照明装置と、照明装置からの光束によって照明される光変調装置とを備え、照明装置が、2つの光学部品を光軸と交差する所定方向にスライド移動可能に支持する共通の支持軸を有するとともに、2つの光学部品をスライド移動によって重ね合わせるように光路上に配置可能にする。
【0007】
上記プロジェクターによれば、照明装置において2つの光学部品を個別に光路上に配置できるので、プロジェクターによる画像の投射状態を複数パターンで調整することができる。また、上記プロジェクターによれば、共通の支持軸を利用したスライド移動によって、2つの光学部品を重ね合わせるように光路上に配置可能にするので、2つの光学部品の移動機構を共通の支持軸によって小型化することができ、2つの光学部品を省スペースで光路上に進退させることができる。これにより、2以上の光学部品を光路上に進退可能にして投射状態の多様な切替を可能にした場合にも、照明装置での光量ロスを抑えることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、照明装置が、2つの光学部品を支持軸の反対側からそれぞれ支持するガイド部を有する。この場合、各光学部品が支持軸とガイド部とに挟まれるように支持されることで簡易かつ確実に案内され、各光学部品のスライド移動を省スペースで安定化させることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、2つの光学部品が、互いに離間した状態で光路上に進退する。この場合、2つの光学部品の干渉を回避して両光学部品の滑らかなスライド移動を確保することができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、2つの光学部品のうち第1の光学部品が、光路上に優先的に配置可能であり、2つの光学部品のうち第2の光学部品が、第1の光学部品が光路上に配置されていることを条件として光路上に配置可能である。この場合、第1の光学部品と第2の光学部品とを入れ違いに配置する必要がなくなり、第1の光学部品と第2の光学部品とをより狭い空間に収納することができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、2つの光学部品が、光軸に垂直な基準面に対して傾斜して配置される。この場合、2つの光学部品を光路上に挿入した動作モードによる画像投射において、ゴースト像の発生等の弊害を抑制できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、2つの光学部品が、光軸に垂直な基準面に対して傾斜する方向に移動することで光路上に進退する。この場合、2つの光学部品を傾けて光路上に挿入しても、2つの光学部品を挿入する空間の光路長さが増大することを防止しつつ、2つの光学部品の進退移動を可能にすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、照明装置が、光源ランプユニットからの照明光束を複数の部分光束に分割する第1及び第2のレンズアレイと、第1及び第2のレンズアレイを経た照明光束を重畳させるための重畳レンズと、第2のレンズアレイと重畳レンズとの間に配置されて偏光状態を整える偏光変換装部とを有し、2つの光学部品が、第2のレンズアレイと偏光変換装部との間に配置される。この場合、2つの光学部品を第2のレンズアレイと偏光変換装部との間の比較的狭くなりがちな光路上に進退可能に設けても、第2のレンズアレイと偏光変換装部との間隔を実質的に広げる必要がなく、かつ、照明光を光学部品によって処理することに伴う照明光の劣化を確実に抑えることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、2つの光学部品のうち第1の光学部品が、所定波長域の光束を減衰させるカットフィルターであり、2つの光学部品のうち第2の光学部品は、光束を部分的に通過させるための開口部を有する絞りである。この場合、カットフィルターにより、色調を優先する色調優先モードでの画像投射と、明るさを優先する明るさ優先モードでの画像投射との切換が可能になる。また、絞りにより、コントラストを相対的に高めたコントラスト優先モードでの画像投射と、明るさ優先モードでの画像投射との切換が可能になる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、2つの光学部品が、部品本体を支持する支持体をそれぞれ有し、支持体が、支持軸に支持された状態で支持軸に対向して平行に配置されるラックを有し、ラックが、歯車を介してモーターによって駆動される。この場合モーター等によって支持軸に支持された支持体延いては光学部品を自動的に進退動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態のプロジェクターの光学系を概念的に示す図である。
【図2】(A)はモード切替装置及びその周辺を拡大した平面図であり、(B)はモード切替装置等の側面図であり、(C)はモード切替装置等の正面図である。
【図3】(A)はプロジェクター内部の機械的構造を説明する斜視図であり、(B)はプロジェクター内部の機械的構造を説明する斜視図である。
【図4】図1に示す照明装置の一部を説明する斜視図である。
【図5】駆動機構等の構造を説明する斜視図であり、明るさ優先モードを示す。
【図6】駆動機構等の構造を説明する斜視図であり、色再現性優先モードを示す。
【図7】駆動機構等の構造を説明する斜視図であり、色再現性優先モードかつコントラスト優先モードを示す。
【図8】案内機構等の構造を説明する平面図である。
【図9】(A)はカットフィルターを支持する支持体である第1摺動部材の斜視図であり、(B)は絞りを支持する支持体である第2摺動部材の斜視図である。
【図10】案内機構の変形例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプロジェクターについて詳細に説明する。
【0018】
〔プロジェクターの光学系〕
図1に示すように、プロジェクター100は、その光学系として、照明光を射出する照明装置20と、照明装置20からの照明光を緑赤青の3つの色光に分離する色分離導光部40と、色分離導光部40から射出された3つの色光をそれぞれ変調する光変調部60と、光変調部60から射出された各色の画像光を合成する光合成部71と、光合成部71によって合成された画像光を投射する投射光学系75とを備える。これらのうち、照明装置20から光合成部71までの部分は、ライトガイド100aの内部に収納されている。なお、図面では便宜上部分的に展開した状態を示しているが、照明装置20内におけるシステム光軸SAは、色分離導光部40から投射光学系75までにおけるシステム光軸SAが配置されるXY平面に垂直なZ方向に沿って延びている。
【0019】
以上のプロジェクター100において、照明装置20は、光源装置10と、凹レンズ14と、第1及び第2のレンズアレイ15,16と、偏光変換部17と、重畳レンズ18と、モード切替装置30とを備える。このうち、光源装置10は、照明用の光束を射出する光源であり、例えば高圧水銀ランプ等である発光管11と、発光管11から重畳レンズ18等のある前方に射出された光束を発光管11に戻す副鏡11aと、発光管11から後方に射出された光束を前方に反射させる凹面鏡12とを備える。凹レンズ14は、光源装置10からの光束を平行化する役割を有するが、例えば凹面鏡12が放物面鏡である場合には、省略することもできる。第1のレンズアレイ15は、X方向及びY方向に関してマトリクス状に配置された複数の要素レンズ15aからなり、レンズ14から射出された光束を要素レンズ15aの区画に対応して分割する。第2のレンズアレイ16は、複数の要素レンズ15aにそれぞれ対応して配置された複数の要素レンズ16aからなり、各要素レンズ15aからの分割光束の発散状態を調整する。偏光変換部17は、レンズアレイ16から射出された分割光束を第1方向(この場合例えばX方向)に平行な偏光面を有する直線偏光のみに変換する。重畳レンズ18は、偏光変換部17を経た直線偏光の照明光束ILを全体として適宜収束させることにより、被照明領域すなわち光変調部60に設けた各色の液晶ライトバルブ60g,60r,60bに対する重畳照明を可能にする。つまり、両レンズアレイ15,16と重畳レンズ18とを経た照明光束ILは、以下に詳述する色分離導光部40を通って、光変調部60に設けられた各色の液晶パネル61g,61r,61bの照明領域を略均一な照度で照明する。
【0020】
図2(B)に示すように、偏光変換部17は、PBS及びミラーを組み込んだ構造をそれぞれ有する複数のプリズム素子17aと、これらプリズム素子17aの一方の光射出面上にそれぞれ貼り付けられる複数の位相差板17bとを備える。各プリズム素子17aは、Y方向に延びる棒状の部材であり、これら複数のプリズム素子17aは、X方向に配列され、全体としてXY平面に平行に延びる板状に配置される。偏光変換部17からは、上述のようにX方向に平行な偏光面を有する直線偏光の照明光束IL(Gp,Rp,Bp)が射出される(図1参照)。なお、偏光変換部17の光入射側には、ストライプ状のマスク17cが形成されており、偏光度が低下することを防止している。
【0021】
図1に戻って、照明装置20におけるモード切替装置30は、第1の光学部品としてのカットフィルター31と、第2の光学部品としての絞り32と、これらカットフィルター31及び絞り32を第2のレンズアレイ16と偏光変換部17との間の光路上に個別に進退させるための移動機構であるスライド機構33と、スライド機構33の駆動源である一対のモーター34,35とを備える。
【0022】
カットフィルター31は、照明光束ILの色域を調節するための板状の色域フィルターであり、光路上に配置されたオン状態で、光源装置10から射出される照明光束ILのうち所定波長域のスペクトル成分を反射又は吸収によって減衰させて、投射画像の色合いを調整する。例えば、カットフィルター31が所定波長域として580nm付近における緑色光成分及び赤色光成分の強度を減衰させるような色域フィルターである場合、緑色光成分と赤色光成分との分離が良くなり、赤色及び緑色の色再現性を向上させることができる。
【0023】
カットフィルター31は、システム光軸SAに対して正確に垂直な±Y方向にスライド移動することで、システム光軸SAを中心軸とする照明光束ILの光路上に進退可能となっており、当該光路上に配置されたオン状態(図中実線)では、照明光束ILのうち所定波長域の光束を減衰させ、光路外に退避したオフ状態(図中点線)では、照明光束ILの減衰を行わない。このようなカットフィルター31の存在により、本実施形態のプロジェクター100では、カットフィルター31を光路上に配置した際に、照明光束ILのうち色再現性の向上に寄与する波長域の光束を選択的に通過させる色再現性の高い表示モード(以下、色再現性優先モードという)での画像投射を行うことができる。一方、本プロジェクター100は、カットフィルター31を光路上から外れた位置に待避させることで、照明光束ILをそのまま通過させる高輝度の表示モード(以下、明るさ優先モードという)での画像投射も行うことができる。
【0024】
絞り32は、照明光束ILの断面形状を調整するための板状の遮光部材であり、光路上に配置されたオン状態で、光源装置10から射出される照明光束ILを部分的に遮断して、光変調部60を構成する各液晶パネル61g,61r,61bを照明する照明光束ILの入射角度範囲すなわち開口角を調整する。図2(C)に示すように、絞り32は、これに設けた開口APによって照明光束ILの中心側の一部を通過させ、この開口APの周囲によって照明光束ILの残りを遮蔽する。ここで、開口APの輪郭は、輝度ムラの発生を抑制するため、第2のレンズアレイ16を構成する複数の要素レンズ16aのうちシステム光軸SAに近い12個の要素レンズ16aを組み合わせたものの輪郭に相当する。このように、絞り32によって照明光束ILの周辺光束を遮光して入射角度が小さくなる中心光束に絞った場合、各液晶パネル61g,61r,61bでの光漏れが少なくなり、光変調部60による表示のコントラストを高めることができる。
【0025】
図1に戻って、絞り32は、システム光軸SAに対して正確に垂直な±Y方向にスライド移動することで、システム光軸SAを中心軸とする照明光束ILの光路上に進退可能となっており、当該光路上に配置されたオン状態(図中実線)では、照明光束ILのうち周辺光束を遮蔽し、光路外に退避したオフ状態(図中点線)では、照明光束ILの遮蔽を行わない。このような絞り32の存在により、本実施形態のプロジェクター100では、絞り32を光路上に配置した際に、照明光束ILのうち比較的コントラスト特性の向上に寄与する中心光束のみを通過させる高コントラスト表示のモード(以下、コントラスト優先モードという)での画像投射を行うことができる。一方、本プロジェクター100は、絞り32を光路上から外れた位置に待避させることで、照明光束ILをそのまま通過させる明るさ優先モードでの画像投射も行うことができる。
【0026】
カットフィルター31や絞り32を支持するスライド機構33は、後に詳述するように、第1のモーター34に駆動されてカットフィルター31を光路上に進退させるとともに、第2のモーター35に駆動されて絞り32を光路上に進退させる。これらのモーター34,35は、制御装置90の監視下で、不図示の位置センサー等を含むモーター駆動部91によって回転動作が制御されている。
【0027】
図2(A)等に示すように、モード切替装置30を構成するカットフィルター31の主面である入射側面31aは、システム光軸SAに垂直な面即ちXY面に対して正確に平行とはなっておらず、その+Y側端部が−Y側端部より光路下流側に位置するように僅かに傾いた状態に保たれて光路上に進退する。つまり、カットフィルター31は、XY面を基準としてX方向に平行な軸のまわりに傾斜角度αだけ反時計回りの方向に回転した状態となっている。これにより、例えば光路下流側からカットフィルター31に向かう戻り光その他の不要光ULは、カットフィルター31の裏面である射出側面31bで照明光束ILの光路外の方向に反射される。結果的に、不要光ULは、照明光束ILの一部となって照明装置20の後段の光変調部60等に導かれることがなくなるので、ゴースト像の発生源となることなく除去される。つまり、プロジェクター100は、色再現性優先モードにおいても、ゴースト像を発生させることなく良好な画像を提供することができる。また、カットフィルター31が上述のように傾斜していることで、光路上流側からカットフィルター31に向かう照明光束ILのうちカットフィルター31の入射側面31a上で反射される成分についても、そのまま反対側にある光源装置10には戻らず光路外へ排出等されるため、発光管11の加熱等の原因とならない。
【0028】
同様に、絞り32も、XY面を基準としてX方向に平行な軸のまわりに傾斜角度αだけ反時計回りの方向に回転しており、絞り32の主面である表側面32aは、その+Y側端部が−Y側端部より光路下流側に位置するように傾いた状態に保たれて光路上に進退する。これにより、光路下流側から絞り32に向かう戻り光その他の不要光ULは、絞り32の外縁部の裏側面32bで照明光束ILの光路外の方向に反射され、ゴースト像の発生源となることなく除去される。つまり、プロジェクター100は、コントラスト優先モードにおいても、ゴースト像を発生させることなく良好な画像を提供することができる。また、絞り32が上述のように傾斜していることで、光路上流側から絞り32に向かう照明光束ILのうち絞り32の外縁部の表側面32a上で反射される成分についても、そのまま反対側にある光源装置10には戻らず光路外へ排出等されるため、発光管11の加熱等の原因とならない。
【0029】
ここで、カットフィルター31や絞り32の傾斜方向又は傾斜方位は、Y方向に平行であり、カットフィルター31や絞り32の進退移動の方向と一致している。つまり、カットフィルター31や絞り32は、傾斜方向に移動する。さらに、カットフィルター31は、第2のレンズアレイ16側に配置されており、結果的に、絞り32は、その進退に関してカットフィルター31よりも相対的に奥側(退避側)に配置されていることになる。しかも、カットフィルター31と絞り32とは、省スペース化のため、互いに極めて近接した状態で配置されている。この結果、カットフィルター31の進退は、機能的な意味において、絞り32の進退よりも優先されることになる。つまり、カットフィルター31を光路上に配置する色再現性優先モードにおいて、絞り32を光路上に進退させてコントラスト優先モードのオン・オフを切り替えることができるが、カットフィルター31を光路上から退避させる明るさ優先モードにおいて、絞り32を光路上に配置することができず、コントラスト優先モードをオンにすることができない。具体的には、カットフィルター31と絞り32とを、ともに光路上に配置したり、ともに光路上から退避させたりすることができるが、カットフィルター31を光路上から退避させた場合、絞り32を光路上に配置することができない。ただし、絞り32を光路上から退避させた場合、カットフィルター31を光路上に進退させることができる。以上のようにカットフィルター31を絞り32よりも優先する理由について説明すると、絞り32を用いて投射画像のコントラストを向上させ黒の深みを与える場面は、一般に映画等を投射する場合であり、この場合、色再現性の向上が前提となると考えられるからである。
【0030】
図1に戻って、色分離導光部40は、クロスダイクロイックミラー41と、ダイクロイックミラー42と、折曲ミラー43a,43bと、第1レンズ45a,45bと、第2レンズ46g,46b,46rとを備える。ここで、クロスダイクロイックミラー41は、第1ダイクロイックミラー41aと、第2ダイクロイックミラー41bとを備える。第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bは互いに直交しており、それらの交差軸41cはZ方向に延びている。第1ダイクロイックミラー41aは、光路折曲ミラー19を介して照明装置20から入射する照明光束ILに含まれる例えば緑(G)色光及び赤(R)色光を反射し、残りの青(B)色光を透過させる。第2ダイクロイックミラー41bは、青(B)色光を反射し、緑(G)色光及び赤(R)色光を透過させる。ダイクロイックミラー42は、入射した緑赤(GR)色光を含む光のうちの例えば緑(G)色光を反射し、残りの赤(R)色光を透過させる。これにより、照明装置20から射出された照明光束ILに含まれる緑光Gp、赤光Rp、及び青光Bpは、第1、第2、及び第3光路OP1,OP2,OP3にそれぞれ導かれ、異なる照明対象にそれぞれ入射する。詳細に説明すると、照明装置20からの照明光束ILは、クロスダイクロイックミラー41に入射する。クロスダイクロイックミラー1の第1ダイクロイックミラー41aで反射・分岐され、折曲ミラー43a等を経て、ダイクロイックミラー42でさらに反射・分岐された緑光Gpは、液晶ライトバルブ60gの偏光ビームスプリッター52gに入射する。さらに、クロスダイクロイックミラー41の第1ダイクロイックミラー41aで反射・分岐され、ダイクロイックミラー42の通過によって分岐された赤光Rpは、液晶ライトバルブ60rの偏光ビームスプリッター52rに入射する。クロスダイクロイックミラー41の第2ダイクロイックミラー41bで反射・分岐された青光Bpは、折曲ミラー43b等を経て、液晶ライトバルブ60bの偏光ビームスプリッター52bに入射する。
【0031】
光変調部60は、上記した各色用の3つの光路OP1,OP2,OP3に対応して、3つの液晶ライトバルブ60g,60r,60bを備える。各液晶ライトバルブ60g,60r,60bは、入射した照明光の強度の空間分布を変調する非発光型の光変調装置である。
【0032】
ここで、第1光路OP1に配置されたG色用の液晶ライトバルブ60gは、緑光Gpによって照明される液晶パネル61gと、液晶ライトバルブ60gでの緑光の入出射を管理する偏光ビームスプリッター52gと、液晶ライトバルブ60gの光入射側に配置される入射偏光板51gと、液晶ライトバルブ60gの光射出側に配置される出射偏光板55gとを備える。このうち、液晶パネル61gは、背面側に反射板を備え、照明光が入射した面から変調された光が射出される反射型液晶素子であり、第1ダイクロイックミラー41a及びダイクロイックミラー42で反射されて、偏光ビームスプリッター52gを通過した緑光Gpによって均一な照度で照明される。液晶パネル61gは、図示による説明を省略するが、透明電極等を有する光透過性基板と、反射画素電極等を有する駆動基板と、光透過性基板及び駆動基板間に密閉封入される液晶層とを備える。液晶パネル61gは、これに入射した緑光Gpの偏光状態を画像信号に応じて変換し、これを偏光ビームスプリッター52gに向けて反射する。偏光ビームスプリッター52gの射出側パターン層53gは、液晶パネル61gを経て変調された光のうち、第1方向に対して垂直な第2方向(この場合Z方向)の直線偏光成分のみを選択的に反射する。
【0033】
第2光路OP2に配置されたR色用の液晶ライトバルブ60rは、赤光Rpによって照明される液晶パネル61rと、液晶ライトバルブ60rでの赤光の入出射を管理する偏光ビームスプリッター52rと、液晶ライトバルブ60rの光入射側に配置される入射偏光板51rと、液晶ライトバルブ60rの光射出側に配置される出射偏光板55rとを備える。このうち、液晶パネル61rは、背面側に反射板を備え、照明光が入射した面から変調された光が射出される反射型液晶素子であり、第1ダイクロイックミラー41aで反射されダイクロイックミラー42を通過して、偏光ビームスプリッター52rを通過した赤光Rpによって均一な照度で照明される。液晶パネル61rは、詳細な説明を省略するが、緑色用の液晶パネル61gと同様の構造を有する。液晶パネル61rは、これに入射した赤光Rpの偏光状態を画像信号に応じて変換し、これを偏光ビームスプリッター52rに向けて反射する。偏光ビームスプリッター52rの射出側パターン層53rは、液晶パネル61rを経て変調された光のうち、第1方向に対して垂直な第2方向(この場合Z方向)の直線偏光成分のみを選択的に反射する。
【0034】
第3光路OP3に配置されたB色用の液晶ライトバルブ60bは、青光Bpによって照明される液晶パネル61bと、液晶ライトバルブ60bでの青光の入出射を管理する偏光ビームスプリッター52bと、液晶ライトバルブ60bの光入射側に配置される入射偏光板51bと、液晶ライトバルブ60bの光射出側に配置される出射偏光板55bとを備える。このうち、液晶パネル61bは、背面側に反射板を備え、照明光が入射した面から変調された光が射出される反射型液晶素子であり、第2ダイクロイックミラー41bで反射されて、偏光ビームスプリッター52bを通過した青光Bpによって均一な照度で照明される。液晶パネル61bは、詳細な説明を省略するが、緑色用の液晶パネル61gと同様の構造を有する。液晶パネル61bは、これに入射した青光Bpの偏光状態を画像信号に応じて変換し、これを偏光ビームスプリッター52bに向けて反射する。偏光ビームスプリッター52bの射出側パターン層53bは、液晶パネル61bを経て変調された光のうち、第1方向に対して垂直な第2方向(この場合Z方向)の直線偏光成分のみを選択的に反射する。
【0035】
以上の液晶パネル61g,61r,61bは、制御装置90の監視下で、パネル駆動部92によって光学特性を制御されており、各液晶パネル61g,61r,61bで反射される光束の偏光状態を2次元的に変調する。
【0036】
光合成部71は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、合成面として、X字状に交差する一対のダイクロイックミラー71a,71bが形成されている。両ダイクロイックミラー71a,71bは、特性が異なる誘電体多層膜で形成されている。すなわち、一方の第1ダイクロイックミラー71aは赤光LRを反射し、他方の第1ダイクロイックミラー71bは青光LBを反射する。この光合成部71は、液晶ライトバルブ60gからの変調後の緑光LGを第1及び第2ダイクロイックミラー71a,71bを透過させることによりY方向に直進させ、液晶ライトバルブ60rからの変調後の赤光LRを第1ダイクロイックミラー71aで反射して光路を折り曲げることによりY方向に射出させ、液晶ライトバルブ60bからの変調後の青光LBを第2ダイクロイックミラー71bで反射して光路を折り曲げることによりY方向に射出させる。光合成部71の光射出側では、各色光LG,LB,LRが重ね合わされて色合成が行われる。なお、光合成部71とG色用の液晶パネル61gとの間には、緑光LGをP偏光状態でダイクロイックミラー71a,71bに入射させるため、1/2波長板56が配置されている。
【0037】
投射光学系75は、光合成部71で合成されたカラーの画像光を、所望の倍率でスクリーン(不図示)上に投射する。つまり、各液晶パネル61g,61r,61bに入力された駆動信号或いは画像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画がスクリーン上に投射される。
【0038】
〔プロジェクターの機械的構造〕
図3(A)及び図3(B)は、プロジェクター100の内部の機械的構造を説明する斜視図である。図示のプロジェクター100において、第1ベース部95は、照明装置20や色分離導光部40を支持・固定する部分であり、第2ベース部96は、投射光学系75や光合成部71等を支持・固定する部分である。第1ベース部95には、ライトガイド100aを構成する第1ライトガイド部分100bと第2ライトガイド部分100cとが固定されており、第2ベース部96には、レンズ駆動装置76を介して投射光学系75が支持されている。
【0039】
図4に示す第1ライトガイド部分100bは、図1に示す照明装置20のうち、第1及び第2のレンズアレイ15,16と、偏光変換部17と、モード切替装置30とを一体的に組み付けるための部分となっている。第1ライトガイド部分100bは、根元側に設けた固定部材82を介して図3の第1ベース部95に固定される。第1ライトガイド部分100bは、光路上の本体側から+Y側に張り出した収納部81を有しており、この収納部81は、薄い矩形の内部空間IS内に、モード切替装置30を構成するカットフィルター31と絞り32とをY方向に摺動可能な状態で収納している。収納部81の上部(+X側)には、収納部81の長手方向に沿って蓋部材83が固定されており、カットフィルター31や絞り32がガタツクことを防止している。収納部81の底部(−X側)には、図1に示すスライド機構33の一部を構成する駆動機構84を支持するための支持部材85が固定されている。この支持部材85には、図1に示すモーター34,35や位置センサー36a,36bも固定されている。
【0040】
図5、6、7等を参照して、カットフィルター31と絞り32とを進退動作させるための駆動機構84等の具体的な構造について説明する。なお、図5は、明るさ優先モードに相当し、図6は、色再現性優先モードに相当し、図7は、色再現性優先モードかつコントラスト優先モードに相当する。駆動機構84は、モーター34,35にそれぞれ連結され支持部材85に固定される減速ギアボックス84a,84bと、支持部材85にそれぞれ回転可能に支持された第1及び第2主動歯車84c,84dと、支持部材85にそれぞれ独立して回転可能に支持された第1及び第2従動歯車84e,84fと、カットフィルター31側に設けられた第1ラック84gと、絞り32側に設けられた第2ラック84hとを備える。
【0041】
ここで、第1及び第2主動歯車84c,84dは、第1及び第2従動歯車84e,84fとそれぞれ噛合しており、第1及び第2従動歯車84e,84fは、第1及び第2ラック84g,84hとそれぞれ噛合している。このため、第1のモーター34の動力が、第1主動歯車84c、第1従動歯車84e、及び第1ラック84gを介してカットフィルター31に伝達され、カットフィルター31の±Y方向の往復移動を可能にする。また、第2のモーター35の動力が、第2主動歯車84d、第2従動歯車84f、及び第2ラック84hを介して絞り32に伝達され、絞り32の±Y方向の往復移動を可能にする。
【0042】
図8、9(A)、9(B)等を参照して、カットフィルター31と絞り32とを支持するとともに±Y方向に沿って案内する案内機構86について説明する。案内機構86は、駆動機構84と同様に図1等に示すスライド機構33の一部を構成するものであり、支持軸86aと、支持体としての第1摺動部材86cと、支持体としての第2摺動部材86dと、ガイド部としての案内溝86fとを備える。
【0043】
支持軸86aは、円形断面の金属製ロッドであり、第1ライトガイド部分100bの一対の壁体87a,87b間に掛け渡されてEリング87dによって固定されている。これにより、支持軸86aは、ガイド部たる案内溝86f内において中空状態に支持される。
【0044】
第1摺動部材86cは、支持軸86aと案内溝86fの第1内壁86gとの間に挟まれた状態で支持されている樹脂製の細長い部材であり、案内溝86f内で±Y方向への往復移動が可能になっている。第1摺動部材86cの下端面には、図9(A)に示すようにY方向に延びる第1ラック84gが形成されており、第1摺動部材86cは、図5等に示す駆動機構84を介して第1のモーター34によって駆動されて、±Y方向の所望の位置に移動可能になっている。第1摺動部材86cの上部88aには、カットフィルター31が固定されており、第1摺動部材86cとともに移動する。第1摺動部材86cの位置は、その移動限界位置でこの両端に接触する位置センサー36a,37a(図5参照)によって監視されている。例えば色再現性優先モードが設定された場合、位置センサー37aを利用してカットフィルター31を−Y側の限界位置まで移動させることで、カットフィルター31が光路上に配置されたオン状態となっていることが確認され、逆に明るさ優先モードが設定された場合、位置センサー36aを利用してカットフィルター31を+Y側の限界位置まで移動させることで、カットフィルター31が光路上から退避したオフ状態となっていることが確認される。なお、カットフィルター31は、XY面に略沿って延びているが、X軸に平行な軸のまわりに傾斜角度αだけ反時計方向に回転している(図2(A)参照)。以上のカットフィルター31は、図5等にも示すように、色域フィルターとして機能する本体部分31eと、本体部分31eを周囲から支持する金属製のフレーム31fとを有し、フレーム31fを介して第1摺動部材86cに固定されている。
【0045】
第2摺動部材86dは、支持軸86aと案内溝86fの第2内壁86hとの間に挟まれた状態で支持されている樹脂製の細長い部材であり、案内溝86f内で±Y方向への往復移動が可能になっている。第2摺動部材86dの下端面には、図9(B)に示すようにY方向に延びる第2ラック84hが形成されており、第2摺動部材86dは、図5等に示す駆動機構84を介して第2のモーター35によって駆動されて、±Y方向の所望の位置に移動可能になっている。第2摺動部材86dの上部89aには、金属製の絞り32が固定されており、第2摺動部材86dとともに移動する。第2摺動部材86dの位置は、その移動限界位置でこの両端に接触する位置センサー36b,37b(図5参照)によって監視されている。例えばコントラスト優先モードが設定された場合、位置センサー37bを利用して絞り32を−Y側の限界位置まで移動させることで、絞り32が光路上に配置されたオン状態となっていることが確認され、逆に明るさ優先モードが設定された場合、位置センサー36bを利用して絞り32を+Y側の限界位置まで移動させることで、絞り32が光路上から退避したオフ状態となっていることが確認される。なお、絞り32は、カットフィルター31に平行に配置されている。すなわち、絞り32は、XY面に略沿って延びているが、X軸に平行な軸のまわりに傾斜角度αだけ反時計方向に回転している(図2(A)参照)。
【0046】
以上のように、支持軸86aは、案内溝86fと協働することにより、第1摺動部材86cすなわちカットフィルター31のガイド手段として機能するとともに、第2摺動部材86dすなわち絞り32のガイド手段としても機能する。
【0047】
図9(A)に示すように、第1摺動部材86cの両端には、第1支持部88cと第2支持部88dとが形成されている。これら支持部88c,88dは、コ字状のXZ断面形状を有しており、支持軸86aを3方向から囲むことによって支持軸86aに支持されており、結果的に、第1摺動部材86cが両端の2箇所において支持軸86aに安定な状態で支持される。なお、第1摺動部材86cは、両端の支持部88c,88dでのみ支持軸86aに接しており、他の部分は、非接触の状態に保たれているので、第1摺動部材86cの滑らかな移動が確保される。
【0048】
図9(B)に示すように、第2摺動部材86dの両端には、第1支持部89cと第2支持部89dとが形成されている。これら支持部89c,89dは、コ字状のXZ断面形状を有しており、支持軸86aを3方向から囲むことによって支持軸86aに支持されており、結果的に、第1摺動部材86cが両端の2箇所において支持軸86aに安定な状態で支持される。なお、第2摺動部材86dは、両端の支持部89c,89dでのみ支持軸86aに接しており、他の部分は、非接触の状態に保たれているので、第2摺動部材86dの滑らかな移動が確保される。
【0049】
なお、第1摺動部材86cは、第2摺動部材86dと離間して配置されており、第2摺動部材86dとの干渉が回避されている。ただし、第1摺動部材86cの両端の支持部88c,88dは、第2摺動部材86dの両端の支持部89c,89dよりもそれぞれ−Y側に配置されており、また、第1摺動部材86cの上部88aは、−Y側で−Z方向に突起し、第2摺動部材86dの上部89aは、+Y側で+Z方向に突起している。この結果、第1摺動部材86cは、第2摺動部材86dよりも+Y側に移動できないようになっており、第2摺動部材86dは、第1摺動部材86cよりも−Y側に移動できないようになっている。つまり、第1摺動部材86cに支持されたカットフィルター31と、第2摺動部材86dに支持された絞り32とを、光路上に重ね合わせて配置でき、カットフィルター31のみを単独で光路上に配置することができるが、絞り32のみを単独で光路上に配置することはできない。
【0050】
モード切替装置30の動作について説明する。まず、モーター駆動部91の制御下で第1のモーター34を動作させると、駆動機構84を介して第1摺動部材86cに動力が伝達され第1摺動部材86cが案内溝86f内で移動する。この際、モーター34の回転方向と位置センサー36a,37aの検出値とを監視することで、第1摺動部材86cすなわちカットフィルター31を、所望のタイミングで光路上のオン状態と光路上から退避したオフ状態とに切り替えて配置することができる。また、モーター駆動部91の制御下で第2のモーター35を動作させると、駆動機構84を介して第2摺動部材86dに動力が伝達され第2摺動部材86dが案内溝86f内で移動する。この際、モーター35の回転方向と位置センサー36b,37bの検出値とを監視することで、第2摺動部材86dすなわち絞り32を、所望のタイミングで光路上のオン状態と光路上から退避したオフ状態とに切り替えて配置することができる。ただし、第1摺動部材86cすなわちカットフィルター31が+Y側の限界位置にあってオフ状態となっている場合、第2摺動部材86dすなわち絞り32は、+Y側の限界位置にあってオフ状態とせざるを得ず、−Y側のオン状態とすることができない。このような制限は、上記のように機械機構的に実現されるが、モーター駆動部91の制御下で位置センサー36a,36b,37b,37bを利用して電気的に実現することもできる。
【0051】
以上のように、本実施形態のプロジェクター100によれば、照明装置20において2つの光学部品であるカットフィルター31と絞り32とを個別に光路上に配置できるので、プロジェクター100による画像の投射状態を、色再現性優先モード、コントラスト優先モード、明るさ優先モード等の複数パターンで調整することができる。また、本実施形態のプロジェクター100によれば、案内機構86に設けた共通の支持軸86aを利用したスライド移動によって、カットフィルター31と絞り32とを重ね合わせるように光路上に配置可能にするので、カットフィルター31と絞り32とを移動させるための機構であるスライド機構33を共通の支持軸86aによって小型化することができ、カットフィルター31と絞り32とを省スペースで光路上に進退させることができる。これにより、2つの光学部品であるカットフィルター31と絞り32とを光路上に進退可能にして投射状態の多様な切替を可能にした場合にも、照明装置20での光量ロスを抑えることができる。
〔その他、変形例等〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
上記実施形態では、案内機構86を構成する支持軸86aとして、円形断面のロッドを用いているが、矩形その他の多様な断面のロッドを用いることができる。また、支持軸86aは、単独で使用する場合に限らず、複数の支持軸として第1摺動部材86cと第2摺動部材86dとの間に配置することができる。さらに、支持軸86aは、図5等に示すような光路の周囲において下側に配置する必要はなく、光路の上方及び左右のいずれにも配置することができる。つまり、両摺動部材86c,86dの摺動方向は、プロジェクター100の仕様等に応じて適宜変更することができる。
【0053】
上記実施形態では、支持軸86aを挟む摺動部材86c,86dにラック84g,84hを設けているが、カットフィルター31や絞り32を挟んで摺動部材86c,86dの反対側(具体的には、+X側の辺及びその周辺)にラックを設けて、カットフィルター31や絞り32を駆動することもできる。
【0054】
また、支持軸86aをシステム光軸SAの両側に均等に延ばすこともできる。この場合、カットフィルター31の退避方向と絞り32の退避方向とを反対にできるので、絞り32のみを光路上に配置することが簡易に可能になる。さらに、支持軸86aをシステム光軸SAの両側に均等に延ばした場合において、図10に示すように、支持軸86aの光路上流側に光学部品31,131をそれぞれ支持する摺動部材86c,186cを摺動可能に配置することができ、支持軸86aの光路下流側に光学部品32,132をそれぞれ支持する摺動部材86d,186dを摺動可能に配置することができる。この場合、4つの光学部品31,131,32,132を適宜組み合わせて省スペースで光路上に配置することができる。
【0055】
上記実施形態では、摺動部材86c,86dをカットフィルター31や絞り32の片側に設けているが、摺動部材を2組とすることによりカットフィルター31や絞り32を上下等の対向する2辺で保持することもできる。
【0056】
上記実施形態では、カットフィルター31と絞り32とをシステム光軸SAに対して傾けて配置しているが、カットフィルター31と絞り32とをシステム光軸SAに対して垂直に配置することもできる。この場合、第1摺動部材86cと第2摺動部材86dとのいずれを奥側又は退避側とするかの区別をなくすることができるので、絞り32のみを光路上に配置するといった案内機構86が可能になる。
【0057】
以上で説明した絞り32の開口APの形状は、単なる例示であり、様々な形状の開口APを有する絞り32によって所望のコントラストを実現することができる。
【0058】
また、カットフィルター31と絞り32との順番を入れ替えることもできる。つまり、カットフィルター31を光路下流側に配置し、絞り32を光路上流側に配置することもできる。さらに、カットフィルター31に代えて絞り32とは異なるタイプの絞りを配置することで、2種類の絞りを組み合わせる絞りとすることができる。同様に、絞り32に代えてカットフィルター31とは異なるタイプのカットフィルターを配置することで、2種類のカットフィルターを組み合わせるフィルターとすることができる。
【0059】
また、カットフィルター31と絞り32との優先順位を入れ替えることもできる。すなわち、絞り32が光路上にあってオン状態の場合にのみカットフィルター31を光路上に進退させる構成とすることができる。
【0060】
上記各実施形態では、モード切替装置30を構成するカットフィルター31や絞り32を、第2のレンズアレイ16と偏光変換部17との間に配置しているが、これらを他の位置に挿入することもできる。例えばカットフィルター31や絞り32を、第1及び第2のレンズアレイ15,16の間や、重畳レンズ18の前後に挿入することも可能である。
【0061】
上記各実施形態では、照明装置20から射出する照明光束ILの光量を多段階で調整することについて説明していないが、例えば第1及び第2のレンズアレイ15,16間に開閉可能な遮蔽部材を配置することにより、照明光量の連続的な増減が可能になり、動画の投射等において動的なコントラストを高めることができる。
【0062】
また、駆動機構84については省略することができ、第1摺動部材86cや第2摺動部材86dを手動で動作させることもできる。
【0063】
上記実施形態では、反射型の液晶ライトバルブ60g,60r,60cを備えるプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、透過型の液晶ライトバルブを備えるプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、液晶ライトバルブが光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味している。さらに、液晶ライトバルブ60g,60r,60cに代えて、微小ミラーを2次元的に配列したデジタル・マイクロミラー・デバイス等からなる光変調装置を用いることもできる。
【0064】
上記実施形態では、光源装置10が発光管11を備えるとしたが、発光管11に代えてLED等の別光源を用いることができる。
【0065】
上記実施形態では、3つの液晶ライトバルブ60g,60r,60bを用いたプロジェクター100の例のみを挙げたが、本発明は、2つの液晶ライトバルブを用いたプロジェクター、或いは、4つ以上の液晶ライトバルブを用いたプロジェクターにも適用可能である。また、液晶ライトバルブ60g,60r,60bに照明光ILを導くための色分離導光部40も、例示のものに限らず様々な光路構成とすることができ、例えばクロスダイクロイックミラー41を通常のダイクロイックミラーとしたり、光路折曲ミラー19を省略したりすることができる。
【0066】
また、プロジェクターとしては、投射面を観察する方向から画像投射を行う前面投射型のプロジェクターと、投射面を観察する方向とは反対側から画像投射を行う背面投射型のプロジェクターとがあるが、図1等に示すプロジェクターの構成は、いずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…光源装置、 11…発光管、 12…凹面鏡、 15,16…レンズアレイ、 17…偏光変換部、 18…重畳レンズ、 20…照明装置、 30…モード切替装置、 31…カットフィルター、 32…絞り、 33…スライド機構、 34,35…モーター、 40…色分離導光部、 41…クロスダイクロイックミラー、 52b,52g,52r…偏光ビームスプリッター、 60…光変調部、 60g,60r,60b…液晶ライトバルブ、 61g,61r,61b…液晶パネル、 71…光合成部、 75…投射光学系、 81…収納部、 84…駆動機構、 84g,84h…ラック、 86…案内機構、 86a…支持軸、 86c,86d…摺動部材、 86f…案内溝、 86g,86h…内壁、 88c,88d…支持部、 89c,89d…支持部、 91…モーター駆動部、 92…パネル駆動部、 100…プロジェクター、 AP…開口、 IL…照明光束、 LG,LB,LR…色光、 OP1,OP2,OP3…光路、 SA…システム光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの光学部品を光路上に進退可能に設けた照明装置と、
前記照明装置からの光束によって照明される光変調装置とを備え、
前記照明装置は、前記2つの光学部品を光軸と交差する所定方向にスライド移動可能に支持する共通の支持軸を有するとともに、前記2つの光学部品をスライド移動によって重ね合わせるように前記光路上に配置可能にする、プロジェクター。
【請求項2】
前記照明装置は、前記2つの光学部品を前記支持軸の反対側からそれぞれ支持するガイド部を有する、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記2つの光学部品は、互いに離間した状態で前記光路上に進退する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記2つの光学部品のうち第1の光学部品は、前記光路上に優先的に配置可能であり、前記2つの光学部品のうち第2の光学部品は、前記第1の光学部品が前記光路上に配置されていることを条件として前記光路上に配置可能である、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記2つの光学部品は、光軸に垂直な基準面に対して傾斜して配置される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記2つの光学部品は、前記基準面に対して傾斜する方向に移動することで前記光路上に進退する、請求項5に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記照明装置は、前記光源ランプユニットからの前記照明光束を複数の部分光束に分割する第1及び第2のレンズアレイと、前記第1及び第2のレンズアレイを経た前記照明光束を重畳させるための重畳レンズと、前記第2のレンズアレイと前記重畳レンズとの間に配置されて偏光状態を整える偏光変換装部とを有し、前記前記2つの光学部品は、前記第2のレンズアレイと前記偏光変換装部との間に配置される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記2つの光学部品のうち第1の光学部品は、所定波長域の光束を減衰させるカットフィルターであり、前記2つの光学部品のうち第2の光学部品は、光束を部分的に通過させるための開口を有する絞りである、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項9】
前記2つの光学部品は、部品本体を支持する支持体をそれぞれ有し、前記支持体は、前記支持軸に支持された状態で前記支持軸に対向して平行に配置されるラックを有し、前記ラックは、歯車を介してモーターによって駆動される、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のプロジェクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−8182(P2012−8182A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141393(P2010−141393)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】