説明

プロジェクタ機能付カメラ

【課題】 画像投影機能付カメラに関して、画像投影時に用いる光源からの高輝度の照明光束が撮像素子を劣化させてしまう可能性があった。
【解決手段】 画像投影モード時において、照明光は偏光ビームスプリッタの在る側とは反対側から液晶表示素子を照明し、且つ偏光ビームスプリッタが、液晶表示素子から出射する第1、2直線偏光を、撮像素子とは異なる方向に導くように撮像装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を投影する機能と、被写体を撮像する機能とを併せ持つカメラ(撮像装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン上に画像を投影するプロジェクタ機能と、被写体を撮像するカメラ機能とを併せ持つ装置が知られている(特許文献1、2、3等)。
【0003】
特許文献3に記載されているプロジェクタ機能付きカメラは、撮影時に被写体からの撮影光束が通る光路と、画像投影時に液晶パネルからの画像光束が通る光路とは、全く重複していない。つまり、互いに別体のカメラとプロジェクタとを一つの装置として合体させただけである。
【0004】
一方、特許文献1に記載された画像入出力装置と、特許文献2に記載された撮像機能付プロジェクタは、撮影時に用いる撮影レンズと、画像投影時に用いる投影レンズとを共通化している。つまり、撮影時に被写体からの撮影光束が通る光路と、画像投影時に液晶パネルからの画像光束が通る光路とを一部重ねることにより、装置全体の小型化を図っている。ここで、撮影レンズと投影レンズを共通化している特許文献1、2の装置は、偏光ビームスプリッタで両者の光路を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−044839号公報
【特許文献2】特開2007−052218号公報
【特許文献3】特開2009−092919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は、光源から発する光のうち偏光変換素子で偏光方向を揃え切れなかった成分が撮像素子に入射し、特許文献2の装置は、光源から発する光の半分(全てのP偏光成分)が撮像素子に入射する。この画像投影時の光源は輝度が高いため、光源から発する光の一部が撮像素子に入射する状況が続くと、撮像素子の性能劣化を招く可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、光源から発する高輝度の照明光のうち撮像素子に入射する光量を低減することが可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の撮像装置は、撮像素子と、被写体からの撮影光束を前記撮像素子に導く光学系と、透過型の液晶表示素子と、前記液晶表示素子を照明する照明光を発する光源と、前記液晶表示素子から出射する第1直線偏光光を反射し該第1直線偏光光と偏光方向が直交する第2直線偏光光を透過することにより、前記第1、2直線偏光光のいずれか一方の直線偏光光を前記光学系に導く偏光ビームスプリッタとを備え、前記液晶表示素子によって表示された画像を前記光学系を介して投影する画像投影モードと、前記光学系を介して前記撮像素子に結像した前記被写体の像を撮像する撮影モードとで動作する撮像装置であって、前記画像投影モードにおいて、前記照明光は前記偏光ビームスプリッタの在る側とは反対側から前記液晶表示素子を照明しており(照明用光源からの照明光束は前記偏光ビームスプリッタを介さずに前記液晶表示素子を照明しており)、且つ前記偏光ビームスプリッタが、前記液晶表示素子から出射する前記第1、2直線偏光を、前記撮像素子とは異なる方向に導くことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像素子の性能劣化を防ぎつつ、高輝度の画像を投影することが可能なプロジェクタ機能付の撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の撮像装置の概略図。
【図2】実施例1の撮影モード時の撮像装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(実施例1)
図1(a)、(b)に、プロジェクタ(プロジェクション、画像投影)機能付き撮像装置(カメラ)の概略図を示す。本実施例のプロジェクタ機能付カメラ(撮像装置)は、被写体の撮影をする撮影モードと、画像を投影する画像投影モードの2つのモードで動作する撮像装置である。ここで、図1(a)は、この撮像装置を側面から見た際の各構成要素の配置の概略図であり、図1(b)は、撮像装置を正面から見た際の各構成要素の配置の概略図である。この図1、及び後述する図2において、z方向は撮像装置の前後方向(被写体が居る方向が前)、x方向は左右方向、y方向は上下方向を指している。これらの方向は、通常の3:4(横長)の撮影を行う場合の方向である。
【0013】
以下に、本実施例の撮像装置の2つの動作モードについて説明する。
【0014】
(1)撮影モード(撮影動作モード)について
撮影モードは撮像装置として機能する場合である。撮像光学系(撮影レンズ)2が、被写体の像を撮像素子1に結像している。この撮像光学系(光学系)2は、被写体側(拡大側)から撮像素子側(縮小側)に向かって、レンズユニット7、プリズムユニット8、レンズユニット9、レンズユニット10を有している。この撮像光学系内(光学系内)のレンズユニット7、9がズーミングの際に移動する群(変倍群、変倍レンズユニット)である。レンズユニット10が合焦の際に移動する群(フォーカスレンズユニット、フォーカス群)であり、プリズムユニット8はズーミングや合焦の際には動かない。尚、それぞれのレンズユニット7、9、10(の移動)が、ズーミングに寄与するか、合焦に寄与するかは変更しても構わない。また、撮像光学系内のレンズユニット7、9、10の配置順も適宜変更しても構わないし、プリズムユニット8を無くしても構わない。
【0015】
符号6は、撮影した画像を観察するための液晶パネルであり、撮像装置の背面側に配置されている。この液晶パネル6は、不図示のバックライト(液晶パネル用光源)で照明している。但し、昼間等のように明るい環境下では入射する外光を変調することにより画像を表示するようにしても良い。
【0016】
ここで、ズーミングに際して、レンズユニット7、9は、それぞれに対応するレンズ駆動部11、12によって駆動されている。これは不図示のズーム操作部材(撮影者がズーミングを行うために操作する部材)の操作に応じてCPU(演算ユニット、制御手段)14がレンズ駆動部11、12を制御する。
【0017】
また、合焦の際に移動するレンズユニット10はレンズ駆動部13によって駆動されている。このレンズ駆動部13に対しても、CPU14が駆動信号を送信している。このCPU14から合焦用のレンズユニット10を駆動するレンズ駆動部13に送信される駆動信号は、撮像素子1の信号に基づいている。つまり、CPU14(或いはそれに代わる手段)が撮像素子上の被写体像のコントラスト(合焦状態)を検出(計測)し、この検出結果に基づいてCPU14が駆動信号を生成している。
【0018】
上述した撮影モード時において、撮像光学系からの光束(撮影光束)は、撮像光学系2を出射した後、偏光ビームスプリッタ(以下、PBS)3を介して撮像素子1に入射する。ここで、PBS(偏光分離素子)3はS偏光(一方の偏光方向の光)を反射しP偏光(他方の偏光方向の光)を透過する特性を持つ。尚、ここで、撮影モード時において、PBS3は、図2(撮像装置正面図)に示すように撮像光学系2から撮像素子1に至る撮影光束の光路から退避させても構わない。
【0019】
(2)画像投影モード(画像投影動作モード)について
画像投影モードは、プロジェクタ(プロジェクション)装置として機能する場合である。LED等の照明用光源5によって照明された透過型の液晶表示素子4から出射した光束は偏光ビームスプリッタ(以下、PBS)3に入射する。この照明用光源5は、直接或いはレンズやフィルタ等を介して液晶表示素子4を照明する。光源5は、透過型の液晶表示素子4を挟んでPBS3が在る側とは反対側に配置されている。この照明用の光源5は、前述の液晶パネル6を照明するバックライトと兼用しても構わない。つまり、図1に示した位置に配置された照明用の光源5の光を用いて前述の液晶パネル6を照明しても構わない。また逆に、図1に示した照明用の光源5を無くし、液晶パネル6の裏面側に配置されたバックライトを用いて液晶表示素子4を照明しても良い。但し、画像投影モードにおいて、背面側の液晶パネル6で投影する画像を確認する場合には、照明用光源5と液晶パネル6を照明するバックライトは、互いに別々の光源とする。
【0020】
PBS3は、液晶表示素子からの光束のうち画像光(ここではS偏光)を反射して撮像光学系2に入射させ、不要光(ここではP偏光)はPBS3を透過させる。このようにして撮像光学系に入射した画像光(S偏光、第1直線偏光)は、撮像光学系(光学系)2によってスクリーン等の被投影面に投影される。
【0021】
ここで、不要光(P偏光、第1直線偏光と偏光方向が直交する第2直線偏光)は、PBS3を透過して後述する第4面3−4に至る。この第4面3−4は、黒色に塗装するか、散乱面(粗面)にするか、或いは透過面として第4面と対向する位置に光吸収部材(黒色の耐熱部材)を配置するか、いずれかが望ましい。
【0022】
ここで、PBS3は図1(c)のように構成されている。つまり、PBS3の4つの光入出射面3−1〜4は正面から見ると正方形(角が若干面取りされていても正方形とする)を成している。また、4つの入出射面はその正方形の各辺に相当する。また、PBS3の偏光分離面3−5は、PBS3の4つの光入出射面3−1〜4に対して45度の角度を成している。
【0023】
以下により詳細に述べる。撮像光学系と対向する第1面3−1は液晶表示素子と対向する第2面3−2と隣接している(お互いの法線が90度の角度を成している)。また、撮像素子と対向する第3面3−3は第2面3−2と隣接している。更に、第4面3−4は、第1面と第3面の両者に隣接している。ここで、第4面3−4は、撮像光学系と対向する第1面3−1と隣接している(第1面の法線と第4面の法線とが90度を成している)ことが望ましい。
【0024】
上述した画像投影モードにおいて、前述の課題を解決するためには、照明用の光源5を、液晶表示素子4を挟んで、PBS3が在る側とは反対側に配置することが望ましい。つまり、照明用の光源5からの照明光束がPBS3を介さずに(PBSの反対側から)液晶表示素子4を照明するように、装置を構成している。このように構成することによって、光源からの高輝度の照明光をPBSを介して撮像素子に入射させないようにすることができる(入射する光量を減らすことができる)。つまり、照明光(或いは液晶表示素子を介した後の画像光、不要光)が、撮像素子に入射することを防止する(入射する光量を低減させる)ことができる、という効果が得られる。尚、多少の大型化を許容すれば、光源そのものとPBS3とが、液晶表示素子4を挟んで同じ側に配置されていても構わない。また、本明細書において、照明用の光源5と記載しているものは、必ずしもランプやLEDやレーザー光源でなくても構わない。すなわち、この照明用の光源5は、前述の光源から出射した照明用の光束を液晶表示素子4に導く照明光学系或いはファイバーのようなものであっても構わない。
【0025】
また、本実施例では液晶表示素子から出射する光束のうち画像光(スクリーンに投影したい光)と不要光(スクリーンに投影したくない光)も撮像素子に入射させないように構成した。具体的には、PBS3の第2面3−2から入射した画像光を第1面3−1から出射させ、同じく第2面3−2から入射した不要光を第4面3−4から出射させている(或いは第4面3−4で吸収、散乱させている)。このように構成することにより、光源から発する照明光束のうち撮像素子1に入射する光の割合はほとんど0にすることができるため、撮像素子の性能劣化(撮影時の画質の劣化)を抑制することができる。尚、PBS3の第4面3−4を散乱面にした場合、照明光束のうち若干の光束が撮像素子に入射する可能性はあるが、その光量は僅かであるためほとんど問題無い。
【0026】
また、PBS3と撮像素子1との間に、遮光部材(不図示)を配置しても構わない。この遮光部材は、PBS3(撮像光学系2)からの光束を撮像素子1に入射させる場合と、入射させない場合とで切り換えられるように構成することが望ましい。尚、この遮光部材は、黒塗りの部材のように入射した光を吸収する光吸収部材や、入射光を散乱させる光散乱部材であることが望ましい。この光吸収部材としては、PBS3を透過したP偏光を吸収する偏光板(P偏光を吸収しS偏光は透過する)を用いても構わない。また、この遮光部材は、撮影モード時において、PBS3と一緒に光路から退避させることが望ましい。
【0027】
また、液晶表示素子4とPBS3との間に、画像光(第1直線偏光、実施例1ではS偏光)を透過し、不要光(第2直線偏光、実施例1ではP偏光)を吸収する偏光板を配置しても良い。
【0028】
また、プリズムユニット8を除く構成としても構わない。この際には、レンズユニット7は、レンズユニット9、10の光軸上の位置(例えばこれらの光軸上で装置のy軸方向の端面に近い位置)に配置すれば良い。
【0029】
(実施例2)
実施例2の構成は、実施例1において、撮像素子1の位置と、液晶表示素子4及び照明用の光源5と、の配置を逆にした構成である。ここでは特に図示はしないこととする。
【0030】
このように撮像素子1と液晶表示素子4との配置を逆にしたとしても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
この実施例2を採用した場合、照明用の光源(照明光を導く照明光学系)5によって、実施例1に比べてy方向(図1参照)の長さが長くなる可能性がある。しかしながら、細長い形状の方が携帯電話等には組み込み安い、というメリットもある。
【0032】
上記のように構成することにより、画像投影モード時において照明用光源からの光が撮像素子にほとんど入射しない。これによって、画像投影モード時においても撮像素子を用いた通常のAF(オートフォーカス)を行うことができる。なぜなら、画像投影モード時においても、撮像光学系2は被写体(この場合は投影している画像)からの光束を受光しており、それを撮像素子1上に結像する。この際、照明用の光源5からの高輝度の光が撮像素子1に入射してしまうと、撮像素子上の被写体像のコントラスト(合焦状態を表す信号、合焦検出信号)が失われてしまう。しかしながら、本実施例においては、照明光束が撮像素子に入射しないため、撮像素子上の被写体像のコントラストが維持される。このため、撮像素子からの信号を用いてコントラスト(合焦検出信号)を検出し、その信号を用いて高精度のAFを行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施例のように構成することにより、画像投影モード時のAF性能を向上させることが可能なプロジェクタ機能付撮像装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
被写体からの撮影光束を前記撮像素子に導く光学系と、
透過型の液晶表示素子と、
前記液晶表示素子を照明する照明光を発する光源と、
前記液晶表示素子から出射する第1直線偏光を反射し該第1直線偏光と偏光方向が直交する第2直線偏光を透過することにより、前記第1、2直線偏光のいずれか一方の直線偏光を前記光学系に導く偏光ビームスプリッタとを備え、
前記液晶表示素子によって表示された画像を前記光学系を介して投影する画像投影モードと、前記光学系を介して前記撮像素子に結像した前記被写体の像を撮像する撮影モードとで動作する撮像装置であって、
前記画像投影モードにおいて、前記照明光は前記偏光ビームスプリッタの在る側とは反対側から前記液晶表示素子を照明しており、且つ前記偏光ビームスプリッタが、前記液晶表示素子から出射する前記第1、2直線偏光を、前記撮像素子とは異なる方向に導くように構成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光源と前記偏光ビームスプリッタとが、前記液晶表示素子を挟んで反対側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記偏光ビームスプリッタと前記撮像素子との間に、前記偏光ビームスプリッタから前記撮像素子に入射する光束を遮ることが可能な遮光部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記偏光ビームスプリッタは、
前記光学系と向かい合う第1面と、前記液晶表示素子と向かい合う第2面と、前記撮像素子と向かい合う第3面と、第4面とを備えており、
前記第1、2、3面は互いに隣接して配置されており、
前記第4面は前記第1面と隣接する面であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像投影モードに、前記撮像素子が前記被写体からの前記撮影光束を受光することにより前記投影された画像の合焦状態を検出する合焦検出手段を備えており、
前記合焦検出手段の検出結果に基づいて、前記光学系内に含まれるフォーカスレンズユニットを駆動することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像投影モードとは異なり、前記撮像素子で被写体からの光を受光する撮影モードにおいて、前記偏光ビームスプリッタが、前記光学系と前記撮像素子との間の光路から退避することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学系と前記撮像素子とが、前記偏光ビームスプリッタを挟んで反対側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像投影モードにおいて、前記偏光ビームスプリッタと前記撮像素子との間に配置され、前記第1直線偏光を反射或いは吸収する偏光板を備えており、
前記画像投影モードとは異なり、前記撮像素子で被写体からの光を受光する撮影モード時において、前記偏光板が、前記偏光ビームスプリッタと前記撮像素子との間の光路から退避することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記偏光ビームスプリッタが、撮影モード時に、前記被写体からの前記撮影光束を前記撮像素子に導くことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−222695(P2012−222695A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88426(P2011−88426)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】