説明

プロジェクタ

【課題】プロジェクタとスクリーン等との間の進入者が投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現できるプロジェクタを提供することを提供すること。
【解決手段】照明光を供給する光源部と、複数の画素部404を備え、光源部からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置110と、空間光変調装置110からの光を所定面に投写する投写レンズと、を有し、空間光変調装置110は、投写レンズから投写され、投写レンズと所定面との間の遮蔽物で反射された光Lrを検出する光検出部406を有し、光検出部406は、画素部404に対応して設けられ、空間光変調装置110は、遮蔽物の位置に応じた光検出部406が遮蔽物で反射された光を検出することにより、遮蔽物の位置に対応する画素部404からの変調光Lpの供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ、特に、フロント型プロジェクタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン等に投写された光をプロジェクタの側から観察する、いわゆるフロント型プロジェクタは、プロジェクタと、例えばスクリーンとの間の空間に投写光を進行させる。プロジェクタは、プレゼンテーションや家庭での鑑賞等、用途が広がりつつあることから、さまざまな状況においてプロジェクタとスクリーンとの間に人が進入する場合が起きると考えられる。人がプロジェクタとスクリーンとの間に進入すると、例えばその人の眼に投写光が入射し、不快感を覚える場合がある。プロジェクタは、進入者が投写光を不快に感じることを防止する必要がある。そのためには、プロジェクタとスクリーンとの間に人が進入すると同時に投写光の供給を停止することが考えられる。投写光の供給を停止することは、進入者の不快感を防止する点に鑑みれば有効であると考えられるものの、観察者に対しては鑑賞の妨げとなってしまう。また、例えばプレゼンテーションにおいて演説者や通行人の進入のたびに投写光が停止されると、円滑なプレゼンテーションを妨げるばかりでなく、画像の表示を停止させることに対して演説者や通行人にストレスを与える場合がある。
【0003】
従って、進入者の部分のみの投写光の供給を停止し、その他の部分の投写光の供給を続けることが可能であれば、進入者が投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現できると考えられる。投写光を遮蔽する部分について投写光を制御するためには、遮蔽物で反射した光を検知し、その位置への投写光の供給を停止することが考えられる。プロジェクタや画像表示装置において光を検知する技術は、例えば、特許文献1〜3に提案されているものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平6−125479号公報
【特許文献2】特開平6−186585号公報
【特許文献3】特開平6−138842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている構成は、いずれも投写光の遮蔽物で反射した光を検知し、その位置への投写光の供給を停止するためのものではない。このため、これらの構成をそのまま用いても、プロジェクタとスクリーンとの間の進入者が投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現することは困難である。本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、プロジェクタとスクリーン等との間の進入者が投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現できるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、照明光を供給する光源部と、複数の画素部を備え、光源部からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、空間光変調装置からの光を所定面に投写する投写レンズと、を有し、空間光変調装置は、投写レンズから投写され、投写レンズと所定面との間の遮蔽物で反射された光を検出する光検出部を有し、光検出部は、画素部に対応して設けられ、空間光変調装置は、遮蔽物の位置に応じた光検出部が遮蔽物で反射された光を検出することにより、遮蔽物の位置に対応する画素部からの変調光の供給を停止することを特徴とするプロジェクタを提供することができる。
【0007】
空間光変調装置と、例えばスクリーンとが結像関係にある場合、スクリーン付近の遮蔽物で反射した光は、遮蔽物の位置に応じた画素部の周辺部に戻る。本発明のプロジェクタは、例えば画素部の周辺部に光検出部を設ける。光検出部が遮蔽物で反射した光を検出することにより、空間光変調装置は、遮蔽物の位置に対応して画素部からの変調光の供給を停止する。本発明のプロジェクタは、このようにして遮蔽物への投写光の供給を停止する。例えば、プロジェクタとスクリーンとの間に人が進入した場合であっても、進入者への投写光の供給を遮断し、進入者の不快感を防止することができる。また、遮蔽物の位置以外の位置については、投写光の供給をそのまま続ける。例えば、進入者の位置以外の位置については画像の投写を続行することを可能とし、画像の鑑賞を続けることができる。
【0008】
このように、光検出部を画素部に対応して設けることにより、遮蔽物の位置に応じて投写光の供給を停止することができる。遮蔽物で反射した光は、画素部から出射するときよりも広がりをもつ光となって空間光変調装置に戻ることとなる。光検出部は、遮蔽物が進入すると予想される位置に応じて位置や大きさを設定することが可能である。このようにして光検出部を設けることにより、空間光変調装置へ戻る光がある程度の広がりをもって戻ったとしても、遮蔽物の位置に対応して正確に画素部をOFFにすることができる。これにより、プロジェクタとスクリーン等との間の進入者が投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現できるプロジェクタを得られる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、空間光変調装置は、複数の画素部どうしの間に設けられている遮光部を有し、光検出部は、遮光部に対応して設けられることが望ましい。例えば、空間光変調装置である液晶表示装置は、TFT素子や配線への照明光の入射を遮断するために、遮光部が設けられている。遮光部に対応して光検出部を設けることにより、光検出部が画素部からの光を遮ることを防止できる上、画素部に対応して光検出部を設けることができる。また、光検出部を遮光部に対応して構成することで、光検出部を比較的容易に形成することができる。これにより、光検出部が変調光の妨げになることを防止し、かつ容易に光検出部を形成することができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、遮蔽物で反射され光検出部の方向へ進行する光を光検出部に集光する集光レンズをさらに有することが望ましい。集光レンズは、遮蔽物が進入すると予想される位置に応じて位置を設定することが可能である。集光レンズを設けることにより、遮蔽物で反射した光を、遮蔽物の位置に対応する位置の光検出部へ確実に進行させることが可能となる。これにより、遮蔽物の位置に応じて正確に投写光の供給を停止可能なプロジェクタを得られる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、光検出部は、光スイッチ素子であって、光スイッチ素子は、遮蔽物で反射された光によってON/OFFが制御されることが望ましい。各画素部について、画素部を駆動するためのスイッチ素子とは別に、光検出部である光スイッチ素子を設ける。光スイッチ素子は、遮蔽物で反射した光を検知することにより、画素部をOFFにする。光検出部として光スイッチ素子を用いることにより、複雑なコントローラを介さなくても、光の検知に応じて直接的に画素部をOFFにできる。これにより、空間光変調装置を簡易な構成にでき、かつ光の検知に応じて画素部を確実にOFFにすることができる。さらに、光スイッチ素子は、画素部を駆動するスイッチ素子と兼用する構成としても良い。これにより、さらに空間光変調装置を簡易な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクタ100の概略構成を示す。本実施例のプロジェクタ100は、単独の空間光変調装置110を有する、いわゆる単板式プロジェクタである。R光用光源装置101R、G光用光源装置101G、B光用光源装置101Bは、固体発光素子である発光ダイオード素子(以下、適宜「LED」という。)を有する。各色光用光源装置101R、101G、101Bは、それぞれ照明光であるR光、G光、B光を供給する光源部である。
【0014】
R光用光源装置101RからのR光は、レンズLNを透過してクロスダイクロイックプリズム112に入射する。G光用光源装置101GからのG光は、レンズLNを透過してクロスダイクロイックプリズム112に入射する。B光用光源装置101RからのB光は、レンズLNを透過してクロスダイクロイックプリズム112に入射する。プロジェクタ100は、各色光用光源装置101R、101G、101Bの像を投写レンズ130の入射瞳の位置に結像し、空間光変調装置110をケーラー照明する。
【0015】
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム112は、2つのダイクロイック膜112a、112bを有する。ダイクロイック膜112a、112bは、X字型に直交して配置される。ダイクロイック膜112aは、R光を反射し、G光を透過する。ダイクロイック膜112bは、B光を反射し、G光を透過する。クロスダイクロイックプリズム112は、このようにしてR光、G光及びB光を合成する。
【0016】
クロスダイクロイックプリズム112は、色合成を行うほか、各色光を拡散することで、各色光の光量分布を略均一にする。クロスダイクロイックプリズム112で合成された光は、導光光学系であるロッドインテグレータ115に入射する。クロスダイクロイックプリズム112を射出した各色光は、ロッドインテグレータ115においても、光量分布が略均一となるように均一化される。ロッドインテグレータ115は、断面が略矩形の透明な硝子部材からなる。ロッドインテグレータ115に入射した光は、硝子部材と空気との界面において全反射を繰り返しながらロッドインテグレータ115の内部を進行する。
【0017】
ロッドインテグレータ115としては、硝子部材から構成するものに限らず、内面を反射面で構成する中空構造としても良い。内面を反射面とするロッドインテグレータの場合、ロッドインテグレータに入射した光は、反射面において反射を繰り返しながらロッドインテグレータの内部を進行する。また、ロッドインテグレータは、硝子部材と反射面とを組み合わせる構成としても良い。クロスダイクロイックプリズム112及びロッドインテグレータ115で光量分布を略均一にされた各色光は、空間光変調装置110に入射する。空間光変調装置110は、複数の画素部を備え、各色光を画像信号に応じて変調する透過型液晶表示装置である。投写レンズ130は、空間光変調装置110からの光を、空間光変調装置110と結像関係にある所定面であるスクリーン140に投写する。
【0018】
プロジェクタ100は、単独の空間光変調装置110を用いて変調する構成である。このため、各色光用光源装置101R、101G、101Bは、振動方向がいずれも同一の偏光光に変換して供給することが望ましい。例えば、各色光用光源装置101R、101G、101Bからの各色光をp偏光光に変換する場合、空間光変調装置110は、p偏光光を画像信号に応じて変調し、s偏光光に変換する。また、各色光用光源装置101R、101G、101Bは、各色についての画像信号に応じた空間光変調装置110の駆動に同期するように、順次点灯する。なお、導光光学系としては、ロッドインテグレータ115に限らず、例えばフライアイレンズを用いても良い。
【0019】
図2は、プロジェクタ100からの投写光によってスクリーン140に画像を表示する状態を示す。本発明のプロジェクタ100は、プロジェクタ100とスクリーン140との間の空間に遮蔽物が入り込んだ場合に、進入者Sの位置への投写光の供給を停止することを特徴とする。図2に示す進入者Sは、投写レンズ130(図1参照)と、所定面であるスクリーン140との間に進入した遮蔽物であるとする。
【0020】
図3は、空間光変調装置110の要部断面構成を示す。クロスダイクロイックプリズム112で合成された各色光は、空間光変調装置110の入射側防塵透明プレート301から入射し、射出側防塵透明プレート306から射出する。入射側防塵透明プレート301の内側には、透明電極等を有する対向基板302が形成されている。射出側防塵透明プレート306の内側にはTFT(薄膜トランジスタ)や透明電極等を有するTFT基板305が形成されている。そして、対向基板302とTFT基板305とを対向させて、入射側防塵透明プレート301と射出側防塵透明プレート306とを貼り合わせる。対向基板302とTFT基板305との間には、画像表示のための液晶層304が封入されている。また、液晶層304の入射光側には遮光のためのブラックマトリックス形成層303が設けられている。ブラックマトリックス形成層303は、開口部311と遮光部312とを有する。
【0021】
図4は、画素部404及び画素部404の周辺部の構成を説明するものである。遮光部312は、TFT基板305に設けられたTFT素子405に対応する位置に設けられている。TFT素子405は、画素部404ごとに画素電極407に接続して設けられている。TFT素子405は、画像信号に応じて画素部404を駆動するスイッチ素子である。TFT素子405は、照明光の照射によって光電変換を引き起こす場合がある。照明光に応じてTFT素子405が作動すると、空間光変調装置110を画像信号に応じて駆動することが困難となってしまう。遮光部312は、TFT素子405への照明光を遮断するために設けられている。
【0022】
各色光用光源装置101R、101G、101Bからの照明光は、ブラックマトリックス形成層303の開口部311を透過した後、液晶層304に設けられた画素部404に入射する。画素部404は、液晶層304のうち画素に対応して液晶分子を封入したセル部分である。画素部404から射出した光Lpは、変調光として空間光変調装置110から射出した後、スクリーン140へ投写される。投写像の画素は、単独の画素部404から射出した光によって形成される。画素部404を透過する光の光量は、画素部404ごとの印加電圧に応じた液晶分子の配列によって変化する。空間光変調装置110は、印加電圧に応じて液晶分子の配列を変化させることによって、画素部404の駆動を行う。
【0023】
画素部404から射出した光によって投写光を形成するために、複数の画素部404及び開口部311は、画素に対応して行列状に配列されている。また、遮光部312は、複数の画素部404どうしの間に設けられている。TFT素子405の上には、光スイッチ素子406が設けられている。光スイッチ素子406は、投写レンズ130(図1参照)から投写され、遮蔽物である進入者S(図2参照)で反射された光Lrを検出する光検出部である。また、光スイッチ素子406は、進入者Sで反射された光LrによってON/OFFが制御される。光スイッチ素子406としては、例えば、光電変換が可能なフォトダイオードを用いることができる。
【0024】
光スイッチ素子406は、TFT素子405と同様に、画素部404に対応して設けられている。また、光スイッチ素子406は、遮光部312から見て射出側の、遮光部312に対応する位置に設けられている。なお、光スイッチ素子406は、射出側防塵透明プレート306に埋め込む場合に限らず、射出側防塵透明プレート306とは別に設けても良い。
【0025】
図5は、投写レンズ130とスクリーン140との間に進入者Sが侵入していない時における投写光Lpの振舞いを示す。図6は、投写レンズ130とスクリーン140との間に進入者Sが進入した時における反射光Lrの振舞いを示す。本発明の基礎となる説明を行う必要上、図5及び図6は、プロジェクタ100のうち1つの画素部404からの光の振舞いを示している。図5に示す開口部311の像P1は、投写レンズ130によりスクリーン140上にて結像し、像P2となって表示される。このように、空間光変調装置110とスクリーン140とは、結像関係にある。なお、光スイッチ素子406は、各画素部404に対応してTFT素子405に並列して設けても良い。
【0026】
投写レンズ130とスクリーン140との間に進入者Sが進入した場合、進入者Sで反射した光Lrは、投写レンズ130を透過して元の画素部404の方向へ戻る。空間光変調装置110とスクリーン140とが結像関係にあるのに対して、進入者Sと空間光変調装置110とは結像関係とはある程度ずれている。このことから、光Lrは、画素部404を射出するときよりある程度の広がりをもって空間光変調装置110に戻る。図6には、ある画素部404に対応して設けられている光スイッチ素子406に光Lrが入射する状態を示している。このようにして、光Lrは、進入者Sの位置に応じた光スイッチ素子406によって検出される。
【0027】
図7は、空間光変調装置110を駆動するための回路構成を示す。画素アレイ部701は、行列状に配列された複数の画素回路710を有する。画素回路710は、画素部404を駆動する。各画素回路710は、データ線Xm(m=1〜M)とアドレス線Yn(n=1〜N)とに接続されている。データ線Xmは、画素回路710の配列における列方向に沿って伸びる配線であって、「ソース線」とも呼ばれる。アドレス線Ynは、画素回路710の配列における行方向に沿って伸びる配線であって、「ゲート線」とも呼ばれる。
【0028】
アドレス線駆動回路702は、不図示のコントローラからのアドレス線駆動信号に基づいて、アドレス線選択信号を供給する。アドレス線駆動回路702は、アドレス線選択信号によって、1本のアドレス線Ynを選択的に駆動して1行分の画素回路710群を選択する(ハイレベルにする)。データ線駆動回路703は、不図示のコントローラからのデータ線駆動信号に基づき、各データ線X1〜XMを介して各画素回路710にデータ信号を供給する。画素部404は、データ信号に応じて印加電圧が制御される。
【0029】
図8は、画素回路710の詳細な構成を示す。図8に示す画素回路710は、画素部404に電圧を印加するときに光を透過するノーマリーブラックモードの液晶表示装置における構成例である。TFT素子405のゲート電極は、アドレス線Ynに接続されている。TFT素子405のソース電極は、データ線Xmに接続されている。TFT素子405のドレイン電極は、フォトダイオード803、画素部404及び保持容量用コンデンサ802に接続されている。フォトダイオード803、804、抵抗部806は、直列して接続されている。フォトダイオード803、804は、それぞれ正負が逆になるように直列接続されている。フォトダイオード803〜抵抗部806と、画素部404と、保持容量用コンデンサ802とは、TFT素子405と対向電極803との間に並列して接続されている。なお、抵抗部806の位置は、図示するものに限られない。また、画素回路710は、抵抗部806を設けない構成としても良い。
【0030】
アドレス線選択信号によってアドレス線Ynが選択されると、アドレス線Yn上のTFT素子405がONになる。TFT素子405がONになると、その時のデータ線駆動信号に基づいて設定された所定の電圧値に従って、保持容量用コンデンサ802に電荷が供給される。画素部404は、所定の電圧値に応じた階調でONになる(光を透過させる)。画素部404の印加電圧は、次の書き込みが行われるまで保持容量用コンデンサ802に保持された電荷によって維持される。このように、進入者Sで反射した光Lrが入射しない場合、画素部404は、TFT素子405からの電流に応じて駆動する。
【0031】
これに対して、フォトダイオード803、804に光Lrが入射すると、フォトダイオード803、804の等価抵抗値が低下して保持容量用コンデンサ802の電荷が対向電極808から流出する。画素部404の印加電圧は、保持容量用コンデンサ802の電荷が流出することによって略ゼロとなる。画素部404は、印加電圧が略ゼロになることによってOFFになる。
【0032】
図9は、画素部404への印加電圧が略ゼロであるときに光を透過するノーマリーホワイトモードの液晶表示装置における画素回路910の構成例を示す。抵抗部806、フォトダイオード803、804は、直列して接続されている。また、抵抗部806〜フォトダイオード803の両端は、正電源あるいは高電位のバイアス線と画素部404の高電位側端子に接続されている。なお、抵抗部806の位置は、図示するものに限られない。また、画素回路910は、抵抗部806を設けない構成としても良い。
【0033】
フォトダイオード803、804に光Lrが入射すると、フォトダイオード803、804の等価抵抗値が低下して正電源からの電荷が保持容量用コンデンサ802へ流入する。保持容量用コンデンサ802からの電荷が供給されることにより、画素部404には電圧が印加される。そして、画素部404は、電圧が印加されることによってOFFになる。
【0034】
一般に、画素部404の液晶の劣化を低減するため、画素部404は周期的に反転されたコモン電位によって駆動される。画素回路710、910において、光検出部は、正負両方の印加電圧に対応するために、正負が逆の2つのフォトダイオード803、804で構成されている。コモン電位を反転させないで画素部404を駆動する場合は、光検出部としてフォトダイオード803、804のいずれか1つを設ける構成とすれば良い。
【0035】
プロジェクタ100をプレゼンテーション目的で使用する場合は、スクリーン140のプロジェクタ100側の位置に演説者等が進入する場面や、プロジェクタ100とスクリーン140との間を参加者が横切らざるを得ない場面もあり得る。さらに、家庭用としてプロジェクタ100を使用する場合でも同様に、観察者等が投写光を遮る状況は十分に考えられる。このような事態に対して、例えば、進入者が不快感を覚えない程度の投写光の強度にすることが考えられる。この場合、進入者が投写光を不快に感じることを防止できるが、明るい投写像を得ることできない。
【0036】
この他、進入者Sの進入によってプロジェクタ100からの射出光を全てシャットダウンする構成が考えられる。全ての射出光をシャットダウンする構成をとれば、明るい投写像を得られる強度で光を供給できると考えられる。この場合、進入者Sの進入のたびに投写光が停止されることで円滑なプレゼンテーションを妨げるばかりでなく、画像の表示を停止させることに対して演説者や通行人にストレスを与える場合が生じ得る。さらに、進入者Sの進入によって光源部をOFFにする構成では、光源部の再起動に長時間を要することも考えられる。光源部の再起動に長時間を要すれば、さらに画像鑑賞やプレゼンテーションを妨げることになる。
【0037】
本発明のプロジェクタ100は、進入者Sの位置に対応する画素部404からの変調光の供給を停止する。プロジェクタ100は、プロジェクタ100とスクリーン140との間の進入者Sへの投写光Lpの供給を遮断し、進入者Sが投写光を不快に感じることを防止できる。また、進入者Sの位置以外の位置については、投写光Lpの供給をそのまま続ける。進入者Sの位置以外の位置については画像の投写を続行することを可能とし、画像の鑑賞を続けることができる。
【0038】
このように、光スイッチ素子406を画素部404に対応して設けることにより、遮蔽物の位置に応じて投写光Lpの供給を停止することができる。遮蔽物で反射した光Lrは、画素部404から出射するときよりも広がりをもつ光となって空間光変調装置に戻ることとなる。光スイッチ素子406は、遮蔽物が進入すると予想される位置に応じて位置や大きさを設定することが可能である。このようにして光スイッチ素子406を設けることにより、光Lrがある程度の広がりをもって戻ったとしても、遮蔽物の位置に対応して正確に画素部404をOFFにすることができる。これにより、プロジェクタ100とスクリーン140等との間の進入者Sが投写光を不快に感じることの防止と、画像の鑑賞を続けることとを同時に実現できるという効果を奏する。
【0039】
また、光スイッチ素子406を遮光部312に対応して設けることにより、光スイッチ素子406が画素部404からの光を遮ることを防止できる上、画素部404に対応して光スイッチ素子406を設けることができる。光スイッチ素子406は、例えばTFT素子405を形成する際のマスクパターンの変更によって形成可能である。このように光スイッチ素子406を遮光部312に対応させることで、光スイッチ素子406を比較的容易に形成することができる。また、変調光のスイッチングを簡易な構成で行うことが可能であるから、投写光をシャットダウンするための複雑な構成を設ける必要も無い。これにより、光スイッチ素子406が変調光の妨げになることを防止し、かつ容易に光スイッチ素子406を形成できるという効果を奏する。
【0040】
光スイッチ素子406の位置や大きさは、進入者S等の遮蔽物が進入する位置を予想し、遮蔽物の位置に応じて画素部404を正確にOFFにできるように設定可能である。例えば、遮蔽物の進入が予想される位置と結像関係となる位置に光スイッチ素子406を設けると、遮蔽物の位置への投写光の遮断を正確に行うことができる。このような光スイッチ素子406の設定は、プロジェクタ100の用途や使用状況に応じて適宜変更できる。
【0041】
なお、図6に図示するよりも光Lrが広がりをもって空間光変調装置110に戻る場合は、元の画素部404及びその周辺の画素部404に対応する各光スイッチ素子406に光Lrが入射する。この場合、進入者Sの位置と、さらにその周辺の位置について投写光の供給を停止することとなる。この場合も、進入者Sの不快感を十分に防止することができる。
【0042】
光スイッチ素子406は、空間光変調装置110の全ての画素部404に対応して設ける構成に限らず、1つの光スイッチ素子406を複数の画素部404に対応させる構成としても良い。例えば、光スイッチ素子406で遮蔽物からの光を検知した場合、その光スイッチ素子406の周辺に設けられた画素部404からの変調光の供給を停止する。これにより、遮蔽物の位置に応じて変調光の供給を停止できる。1つの光スイッチ素子406を複数の画素部404に対応させる場合、光スイッチ素子406は、空間光変調装置110において略等間隔で設けることが望ましい。また、光スイッチ素子406の数を多くするに従い、遮蔽部の位置に正確に対応して変調光の供給を停止させることができる。
【0043】
光スイッチ素子406は、図4に示す遮光部312及びTFT素子405のスクリーン140側の位置に設ける場合に限られない。例えば、光スイッチ素子406は、TFT素子405に並列させて配置しても良い。光スイッチ素子406は、TFT素子405と一体に形成しても良い。さらに、TFT素子405とは別に光スイッチ素子406に設けず、TFT素子405が光スイッチ素子406としての機能を兼用することとしても良い。
【実施例2】
【0044】
図10は、本発明の実施例2に係る空間光変調装置1110の構成を説明するものである。本実施例の空間光変調装置1110は、上記のプロジェクタ100に適用することができる。上記実施例1のプロジェクタ100と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施例の空間光変調装置1110は、集光レンズ1001を有することを特徴とする。集光レンズ1001は、光スイッチ素子406のスクリーン140側に設けられている。
【0045】
図11は、投写レンズ130とスクリーン140との間に進入者Sが進入した時における反射光Lrの振舞いを示す。進入者Sで反射した光Lrは、投写レンズ130を透過した後集光レンズ1001に入射する。集光レンズ1001に入射した光Lrは、元の画素部404に対応する光スイッチ素子406に集光する。集光レンズ1001は、進入者Sで反射され光スイッチ素子406の方向へ進行する光Lrを光スイッチ素子406に集光する。集光レンズ1001を設けると、ある程度広がりをもって空間光変調装置110に戻る光Lrを、元の画素部404に対応する光スイッチ素子406へ導くことができる。
【0046】
集光レンズ1001の位置は、遮蔽物が進入すると予想される位置に応じて設定することが可能である。このようにして集光レンズ1001の位置を設定することにより、光Lrがある程度の広がりをもって戻ったとしても、遮蔽物の位置に対応して正確に画素部404をOFFにすることができる。これにより、遮蔽物の位置に応じて正確に投写光の供給を停止できるという効果を奏する。なお、集光レンズ1001は、光スイッチ素子406よりスクリーン140側にあれば良く、射出側防塵透明プレート306の上に設ける構成に限られない。集光レンズ1001は、例えば光スイッチ素子406の上に直接設けても良い。
【0047】
図12は、本実施例の変形例に係る空間光変調装置1210の構成を説明するものである。空間光変調装置1210は、照明光の入射側と変調光Lpの射出側とにそれぞれ複数のマイクロレンズ素子1201、1202を有する。マイクロレンズ素子1201は、照明光を開口部311へ導くために設けられている。マイクロレンズ素子1202は、マイクロレンズ素子1201で絞られた光を略平行な光に変換する。マイクロレンズ素子1202を設けることで、投写レンズ130に入射するまでの変調光Lpの広がりを低減できる。なお、マイクロレンズ素子1202は必ずしも必要でなく、変調光Lpの広がりを許容するのであれば省略しても良い。
【0048】
本変形例の空間光変調装置1210は、反射光Lrが光スイッチ素子406へ入射する位置以外の位置に、マイクロレンズ素子1202を設けることを特徴とする。例えば、光スイッチ素子406へ入射する反射光Lrがマイクロレンズ素子1202に入射したとすると、反射光Lrが光スイッチ素子406以外の位置へ進行する場合が考えられる。従って、反射光Lrが光スイッチ素子406へ入射する位置以外の位置にマイクロレンズ素子1202を設けることで、反射光Lrを確実に光スイッチ素子406へ入射可能な構成にできる。
【0049】
さらに、図13に示す空間光変調装置1310のように、反射光Lrが光スイッチ素子406へ入射する位置に集光レンズ1301を設ける構成としても良い。集光レンズ1301を設けることにより、元の画素部404に対応する光スイッチ素子406へ正確に反射光Lrを導くことができる。
【0050】
なお、上記のプロジェクタ100は、空間光変調装置110として透過型液晶表示装置を用いる場合に限らず、反射型液晶表示装置やティルトミラーデバイスを用いても良い。ティルトミラーデバイスの例は、テキサス・インスツルメンツ社のDMDである。ティルトミラーデバイスは、画素部として可動ミラー素子を有する。遮蔽物で反射された光を光検出部が検出することにより、変調光が遮蔽物へ投写されないように可動ミラー素子を制御する。このようにして、ティルトミラーデバイスを用いるプロジェクタも、上記のプロジェクタ100と同様にして、遮蔽物への投写光の供給を停止することができる。また、上記のプロジェクタ100は、光源部としてLEDを用いる場合に限らず、他の固体発光素子や超高圧水銀ランプ等のランプ、又はレーザ光源を用いても良い。また、上記プロジェクタ100は、単独の空間光変調装置110を有する、いわゆる単板式プロジェクタに限らず、複数の空間光変調装置を有するいわゆる3板式プロジェクタ等でも、上記のプロジェクタ100と同様にして、遮蔽物への投写光の供給を停止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るプロジェクタは、プレゼンテーションや動画を表示する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例1に係るプロジェクタの概略構成図。
【図2】プロジェクタによりスクリーンに画像を表示する状態の説明図。
【図3】空間光変調装置の要部断面構成図。
【図4】画素部及び画素部の周辺部の構成図。
【図5】投写光の振舞いの説明図。
【図6】投写光の振舞いの説明図。
【図7】空間光変調装置を駆動するための回路構成図。
【図8】画素回路の構成例を示す図。
【図9】画素回路の構成例を示す図。
【図10】本発明の実施例2に係る空間光変調装置の説明図。
【図11】投写光の振舞いの説明図。
【図12】実施例2の変形例に係る空間光変調装置の説明図。
【図13】実施例2の変形例に係る空間光変調装置の説明図。
【符号の説明】
【0053】
100 プロジェクタ、101R R光用光源装置、101G G光用光源装置、101B B光用光源装置、110 空間光変調装置、112 クロスダイクロイックプリズム、112a、112b ダイクロイック膜、115 ロッドインテグレータ、130 投写レンズ、140 スクリーン、LN レンズ、S 進入者、301 入射側防塵透明プレート、302 対向基板、303 ブラックマトリックス形成層、304 液晶層、305 TFT基板、306 射出側防塵透明プレート、311 開口部、312 遮光部、404 画素部、405 TFT素子、406 光スイッチ素子、407 画素電極、701 画素アレイ部、702 アドレス線駆動回路、703 データ線駆動回路、710 画素回路、Xm データ線、Yn アドレス線、802 保持容量用コンデンサ、803、804 フォトダイオード、806 抵抗部、808 対向電極、910 画素回路、1001 集光レンズ、1010 空間光変調装置、1201、1202 マイクロレンズ素子、1210 空間光変調装置、1301 集光レンズ、1310 空間光変調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を供給する光源部と、
複数の画素部を備え、前記光源部からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、
前記空間光変調装置からの光を、前記空間光変調装置と結像関係にある所定面に投写する投写レンズと、を有し、
前記空間光変調装置は、前記投写レンズから投写され、前記投写レンズと前記所定面との間の遮蔽物で反射された光を検出する光検出部を有し、
前記光検出部は、前記画素部に対応して設けられ、
前記空間光変調装置は、前記遮蔽物の位置に応じた前記光検出部が前記遮蔽物で反射された光を検出することにより、前記遮蔽物の位置に対応する前記画素部からの変調光の供給を停止することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記空間光変調装置は、前記複数の画素部どうしの間に設けられている遮光部を有し、
前記光検出部は、前記遮光部に対応する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記遮蔽物で反射され前記光検出部の方向へ進行する光を前記光検出部に集光する集光レンズをさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記光検出部は、光スイッチ素子であって、
前記光スイッチ素子は、前記遮蔽物で反射された光によってON/OFFが制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−30369(P2006−30369A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205931(P2004−205931)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】