プロスタグランジンEおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の投与による創傷治癒の促進
患者における創傷治癒を促進する方法であって、(i)プロスタグランジンE(PGE)またはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)またはその誘導体を患者に投与することを含んでなる方法。患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を含んでなる、創傷包帯、包帯、またはフィブリノゲン接着剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は治療用組成物、方法および使用、特に創傷治癒のための方法および組成物に関する。
【0002】
創傷治癒のプロセスは、一般的に、炎症/浸出段階、増殖段階、そして分化段階の3段階からなると考えられる。およそ4日目まで続く最初の段階は、重要な意味を持ち、出血の防止、サイトカインおよび透過性エンハンサーの放出(局所浮腫をもたらす)、および細胞浸透を含む。最初に出現する主な細胞型はVEGFを分泌する血管形成好中球である(Gargett他, 2001; Mueller他, 2000)。主な好中球誘引剤CXCL8(IL−8)もまた、必ずしも直接的でないが血管形成に関与する(Strieter他, 1992; Strieter他, 1995)。血管形成は創傷修復に不可欠であり、血管新生は修復プロセスの後期と関連するが、CXCL8の遅発効果が必須と考えられる(Engelhardt他, 1998)。
【0003】
好中球浸潤はマクロファージ数のより長期的な増加を伴う。CCL2(MCP−1)の発現は、実験的創傷後、最初の24時間で上昇し、一旦損傷部位に出現した後マクロファージに分化する血中単球の流入と関連する(Engelhardt他, 1998)。これは、創傷修復が欠損したCCL2ノックアウトマウスで確認されている(Low他, 2001)。
【0004】
ケモカインCCL−3(MIP−1α)もまた、マウスモデルに見られたように創傷修復に重要な役割を果たすようである(DiPietro, 1998)が、ノックアウトマウスは修復になんら明白な欠損がなかった(Low他, 2001)。
【0005】
ケモカインCXCL7(NAP−2)、結合組織活性化ペプチドIII(CTAPIII)、およびβトロンボグロブリン(BTG)はそれぞれ共通前駆体、翻訳後タンパク質分解による血小板塩基性タンパク(PBP)に由来する。CXCL7およびCTAPIIIはいずれも創傷治癒の早期段階に関与し(Proudfoot他, 1997)、BTGは繊維芽細胞について走化性が高く、やはり創傷治癒に重要である(Senior他, 1983)。
【0006】
ケモカインは通常、前炎症性とみなされる。しかし、損傷への免疫応答において、ケモカインは関連する食細胞およびサイトカイン分泌細胞を誘発し、デブリドマンおよび創傷修復の両方において極めて重要な役割を果たす。プロスタグランジンE(PGE)は、好中球の組織内への誘引においてIL−8(CXCL8)と相乗作用するため、ケモカインとの相互作用において複数の役割を果たすようである。ケモカイン合成において、PGEはCCL3とCCL4のリポ多糖体誘発合成を抑制するとして報告されており(Jing他, 2004)、PGEはケモカイン合成において抑制作用を有すると期待されうる。
【0007】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)は、顆粒球とマクロファージ系列の成熟において重要な役割を持つ。GMCSFは治療薬とも治療の標的とも見なされてきた。組み換えヒトGMCSFは、いくつかの癌の治療、および骨髄移植後の造血再構成の促進に用いられてきた(Leukine(登録商標), Package Insert Approved Text, February 1998, and Buchsel et al, 2002)。一方、他の最近の報告では、GMCSFを、炎症性および免疫疾患(Hamilton, 2002)および喘息(Ritz他, 2002)の治療の潜在的標的とする記述もある。
【0008】
本発明者は以前、IL−10合成の刺激とIL−12の阻害における、GMCSFと、単球においてcAMPレベルを上昇させるプロスタグランジン、例えばPGEとの強制的な相乗作用を実証した(Grant et al, 2005; WO 2004/035083)。この相乗作用は、EP2および/またはEP4レセプターを介してcAMPレベルを上昇させるPGEの能力によるものであった。PGEとGMCSFの作用に応答して適切にプログラムされた単球/マクロファージによって提供された、IL−10が高くIL−12が低い環境は、免疫寛容を誘発する。加えて、本発明者は以前、免疫寛容を誘発するこのPGEとGMCSFの組み合わせは、幹細胞と共に様々な治療目的で使用できることを実証した(Grant et al, 2005; WO 2005/044298)。
【0009】
Sheibanie他(2004)は、樹状細胞におけるPGEとGMCSFとの相乗作用を報告し、関節リウマチといった自己免疫疾患に対する併用療法を提案した。この論文は、比較的新しく発見されたサイトカインであるが他の何よりもIL−12のように見えるIL−23との組み合わせの効果をテーマにしている。
【0010】
ヒトの精漿中にEシリーズのプロスタグランジンが多く含まれていることから、これらの物質は精液沈着後の女性生殖器官の細胞の免疫プログラミングへの重要な寄与因子らしいことが認識されてきた。明らかに精子は種の存続に重要であるゆえに、進化的圧力により、致死的な免疫応答がこれらの同種異系の侵入者に向けられることがないことが保証されたのだろう。実際、免疫認識と精子の受容はまた、栄養膜への侵入による母体の血管の十分なコロニー形成を容易にしうる(Robillard他, 1994)。精子の免疫学的受け入れは、進化のどこかの時点で、男性または女性生殖管のいずれかで慢性感染が現れたとき、または繰り返されたとき、特に困難であっただろう。(精液および他のどこかからの)プロスタグランジンのさらに微妙な作用は、上皮細胞と固有層(lamina propria)の細胞とによって引き起こされた、GMCSFとの相互作用に伴って生じる。精液沈着した場合、GMCSF合成は、ヒト精漿において高レベルで見られるTGFβの作用によってより良く刺激されうる(Robertson & Seamark, 1990)。
【0011】
この免疫学的受精試験の延長で、本発明者はヒト精漿(HSP)とGMCSFの組み合わせの、単球細胞モデル(ML1細胞)における32,800の遺伝子の発現に対する影響を調査した。予期せぬことに、本発明者は単球細胞からのケモカイン放出の顕著な刺激があることを発見した。驚くべきことに、発現が最も増加した3つの遺伝子はCXCL8、CCL2、およびpro−PBPであった(表2参照)。本発明者は、PGEとGMCSFを用いてマイクロアレイ発現試験を繰り返し、単球細胞からのケモカイン放出の刺激に類似パターンを発見した。この試験において、CXCL8、CCL2、およびpro−PBPは、発現レベルが上昇した上位8個の遺伝子に含まれた(表3参照)。CXCL8、CCL2、およびpro−PBPの発現増加は、PGEとGMCSFの相乗効果に起因するタンパク質放出試験とRT−PCRによって確認された(実施例1参照)。
【0012】
表2はまた、GMCSFとの組み合わせにおけるcAMP上昇剤ホルスコリンに対する応答の相対的欠如を示す(3列目、5列目参照)。よって、CXCL8、CCL2、およびpro−PBPの発現増加は、第一に細胞内cAMPの増加によるものではなく、したがって、pro−耐性サイトカインIL−10の発現増加を引き起こすものとは異なるメカニズムの結果であるように見える。
【0013】
PGEおよびGMCSFによるケモカイン誘発パターンは、創傷修復の第一段階の終期に似ているため、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが創傷修復の加速または促進に利用できることを、創傷治癒のラットモデルにおいて理解した。学説に縛られることなく、本発明者は、PGEとGMCSFは単球を、CXCL8、CCL2およびCXCL7放出の増加を特徴とするpro−創傷治癒表現型に極性化すると考える。加えて、PGEとGMCSFの効果は、これらの物質の除去後、延長および持続し、よって細胞は選択的に分化する。
【0014】
特に、治癒の遅い創傷、例えば血管新生に乏しい皮膚部分の創傷の治癒が、PGEとGMCSFの局所投与によって加速または促進されうる。また、老人など、CXCL8、CCL2およびCXCL7等のサイトカイン分泌能が最適でないため白血球を誘引せず、創傷組織から治癒誘発サイトカインが奪われる患者の創傷は、この治療が有益である。実際、それ以外は健康な患者において皮膚創傷および外科手術による創傷など、より広い範囲の用途で、創傷治癒の加速に適用されている。また、クローン病または潰瘍に関連するような胃腸障害での創傷修復を加速または促進できるとも考えられる。
【0015】
本発明者が認識する限り、PGEとGMCSFの組み合わせが、CXCL8、CCL2およびPBP−CXCL7の発現、および/または単球細胞での放出を刺激するために利用可能であるという示唆はこれまでに一度もなく、この組み合わせを用いてCXCL8、CCL2およびPBP−CXCL7を刺激する処方計画を示唆するものもなかった。
【0016】
さらに、本発明者が認識する限り、PGEとGMCSFの組み合わせが、創傷治癒に治療的に有用でありうるという示唆もこれまでなかった。
【0017】
また、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが、単球細胞においてCOX−2、CD14およびカルグラヌリンAおよびBの発現を増加することを示す。COX−2は、PGEおよびGMCSF除去後のpro−創傷治癒表現型の持続に関与すると考えられる一方で、CD14は分化マーカーであり、より分化した状態の証拠である。カルグラヌリン(S100タンパク質)はまた、天然の抗菌剤であり、天然の抗菌作用がうまく創傷治癒を助けると思われるため、創傷治癒に適切である。さらに、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが、いずれも創傷治癒プロセスの要素である血管形成とNotchシグナリングに関与する遺伝子の発現を促進するという証拠をここで提供する。
【0018】
本発明の第一の態様は、(i)プロスタグランジンE(PGE)またはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)またはその誘導体を患者に投与することを含んでなる、患者における創傷治癒を促進する方法を提供する。
【0019】
「創傷治癒を促進する」とは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの局所濃度または効果を増加する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体が、創傷の治癒を加速または促進する創傷部位においてサイトカイン環境を提供することを意味する。言い換えれば、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの局所濃度または効果を増加する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、創傷治癒の第一段階に必要なCXCL8、CCL2およびCXCL7といったサイトカインの放出を刺激し、よって創傷治癒を促進する。創傷治癒の第一段階は、およそ4日目まで続く。したがって、最初の4日目までに創傷治癒を加速することで、創傷治癒が促進される。
【0020】
さらに、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体の組み合わせによって誘引された白血球もさらにPGEに富んだ環境により分化され、好中球の低減または活性化の変化がもたらされ、これは創傷治癒に有利である。
【0021】
プロスタグランジンE(PGE)は、プロスタグランジンE1(PGE1)およびプロスタグランジンE2(PGE2)を意味する。PGE2は、例えばPharmacia and UpjohnからProstin E2として市販されている。
【0022】
PGEアゴニストは、そうである必要はないが、EP2またはEP4レセプター等のEPレセプターに結合するプロスタノイドであってよい。GMCSFと、アデニル・シクラーゼとタンパク質キナーゼA経路の刺激因子であるホルスコリンとの組み合わせは、表2に示すようにpro−創傷治癒サイトカインのレベルの上昇に全く役立たないので、PGEとGMCSFの効果は、cAMPレベルの上昇だけによるものではない。よって、PGEまたはそのアゴニストは、必ずしも、通常PGE類に用いられるレセプターであるEP2またはEP4レセプターを介して作用するわけではないだろう。学説に縛られることなく、本発明者は、PGEが一度に一以上のEPレセプター(EP1、EP2およびEP4レセプターを含む)に、または異なるプロスタグランジンレセプターを介して、または異なる経路を介してEP2またはEP4レセプターに作用しうると考える。
【0023】
PGEアゴニストとは、EP1、EP2、EP3またはEP4レセプターといった、プロスタグランジンEレセプターに対してPGEアゴニストとして作用する任意の化合物を意味する。好ましくは、PGEアゴニストはPGE2の類似体である。合成類似体は、メチル基の追加によって位置15または16で修飾されたもの、またはヒドロキシルが位置15から16に転位したものを含む。好ましくはPGEの類似体は、例えば16,16−ジメチルPGEおよび19−ヒドロキシPGE(19−OH PGE1および19−OH PGE2の両方)である。誤解を避けるために、PGEなる用語は、合成PGE類似体と同様に天然由来のPGE類も含む。
【0024】
適切なPGE類またはそのアゴニストとしては、ジノプロストン(欧州のFerringおよび米国のForestからPropessとして販売;PharmaciaからプロスチンE2として販売)、ミソプロストル(Searle and PharmaciaからCytotecとして販売)、アルプロスタジル(PharmaciaからCaverject、SchwarzからViridal、そしてAstraZenecaからMUSEとして販売)、およびリマプロストが挙げられる。
【0025】
ミソプロストルは、EP2およびEP3アゴニスト効果を持つPGE類似体である。その化学構造は(±)メチル11α,16−ジヒドロキシ−16−メチル−9−オクソプロスト−13−エノアートである。
【0026】
好適なPGEアゴニストはEP1097922およびEP1114816に記載されており、参照によりここに組み込む。他の適切なPGEアゴニストとしては、US特許第4,127,612号に記載の19−OH PGE類似体のいずれかが挙げられ、参照によりここに組み込む。
【0027】
PGEの局所濃度を上昇させる作用剤とは、例えば酵素活性またはPGE前駆体の局所濃度を上昇することでPGEの合成を増強する作用剤、PGEの異化を阻害する作用剤、またはPGEの創傷部位への誘引に役立つ作用剤を意味する。PGEの効果を増大する作用剤とは、例えばPGEレセプターの数を増加する作用剤である。
【0028】
PGEの合成を増強する適切な作用剤としては、シクロオキシゲナーゼ1および2のアクチベーター、および全てのプロスタグランジンの前駆体であるアラキドン酸を生成するホスホリパーゼのアクチベーターが挙げられる。PGEの異化を阻害する適切な作用剤としては、プロスタグランジン・デヒドロゲナーゼ(PGDHs)のインヒビターが挙げられる。作用剤はPGDHのインヒビターであることが好ましい。適切なPGDHのインヒビターとしては、上皮成長因子(EGF)(Mann他, 2006)およびペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)アゴニスト(Cho and Tai, 2002)がある。PPARアゴニストの創傷治癒への関与は最近立証された。特に、ピオグリタゾンが胃保護および潰瘍治癒特性を示すことが明らかとなった(Brzozowski他, 2005)。加えて、EGFは創傷治癒を加速することが実証され(Tanaka他, 2005)、足の糖尿病性壊疽の治癒を増強することが示された(Hong他, 2006)。
【0029】
「GMCSF」には、ヒトGMCSF遺伝子の遺伝子産物とその天然由来の変異体が含まれる。ヒトGMCSFのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Genbank登録番号NM_000758で見られ、図1(それぞれ配列番号:1および2)に示す。いくつかのGMCSF天然由来変異体もNM_000758に記載されている。GMCSFはまたコロニー刺激因子2(CSF2)としても知られる。
【0030】
本発明は、野生型GMCSFの生物活性を保持する、つまりそれらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こすGMCSF誘導体を使用することを含む。
【0031】
GMCSFの「誘導体」とは、その類似体のフラグメント、融合または修飾、またはそのフラグメントの融合または修飾を含む。
【0032】
GMCSFの「フラグメント」とは、それらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こす糖タンパク質のいずれかの部分を意味する。典型的には、フラグメントは、全長GMCSFの少なくとも30%の活性を有する。好ましくは、フラグメントは、全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、フラグメントは全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0033】
誘導体は、タンパク質化学技術を用いて、例えば部分的タンパク質分解によって、またはデノボ合成によって製造できる。あるいは、誘導体は組み替えDNA技術によって製造できる。核酸のクローニング、操作、修飾および発現、および発現したタンパク質の精製のための適切な技術は当業者にはよく知られており、例えばSambrook他 (2001) “Molecular Cloning, a Laboratory Manual”, 3rd edition, Sambrook他(編), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されており、参照によりここに組み込む。
【0034】
本発明はまた、それらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こす、全長GMCSFまたはそのフラグメントの修飾体を含む。
【0035】
このような修飾体は、糖タンパク質の完全または部分的な脱グリコシルを含む。他の修飾体は、天然由来のヒトGMCSFに見られるものと異なる糖鎖付加パターンを持つ、全長GMCSFまたはそのフラグメントを含む。
【0036】
全長GMCSFまたはそのフラグメントの他の修飾体は、一以上の位置での、保存的または非保存的なアミノ酸挿入、欠失、および置換を含む。こういった修飾体はGMCSFの類似体と呼ばれうる。「保存的置換」とは、Gly, Ala; Val,Ile, Leu; Asp, Glu; Asn, Gln; Ser, Thr; Lys, Arg;およびPhe, Tyrといった組み合わせを指す。このような修飾体は、Sambrook他, 2001, 上掲に記載のように、タンパク質工学法および部位特異的突然変異誘発法を利用して製造できる。好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFまたは各GMCSFフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を保持する。より好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFまたは各GMCSFフラグメントと少なくとも91%、92%、93%、94%、または95%の配列同一性を持ち、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を保持する。好適には、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFの少なくとも30%の活性を有する。好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0037】
本発明はまた、全長GMCSFまたはそのフラグメントの他の化合物への融合を使用することを含む。好ましくは、融合は全長GMCSFの活性の少なくとも30%を有する。より好ましくは、融合は全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、融合は全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0038】
GMCSFおよびその類似体は、以下の出版物に記載されており、それぞれを参照によりここに組み込む:US特許第5,229,496号(Deeley他);US特許第5,391,485 号(Deeley他);US特許第5,393,870号(Deeley他);US特許第5,602,007号(Dunn他);Wong他, 1985;Lee他, 1985;Cantrell他, 1985;およびMiyatake他, 1985。
【0039】
上述したようにGMCSFはヒトGMCSFであることが好ましいが、GMCSFとは他種由来のGMCSFも含む。GMCSFをヒト以外の対象に投与する場合、GMCSFはその対象と同種由来のものであることが好ましい。GMCSFがヒトを対象として投与される場合、そのGMCSFはヒトGMCSFまたはその誘導体であることが好ましい。
【0040】
本発明の実施に好適なGMCSFは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LL, カタログ番号300-03から入手可能である。
【0041】
本発明の実施に好適なGMCSFは、サルグラモスティム(sargramostim)、Immunex, Inc.により製造されLeukine(登録商標)の商品名で販売されている酵母由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。Leukine(登録商標)は、S.セレヴィシエ発現系で産生される組み換えヒトGMCSFである。Leukine(登録商標)は、19,500、16,800および15,500ダルトンの分子量を有する3プライマリー分子種を特徴とする127アミノ酸のグリコプロテインである。Leukine(登録商標)のアミノ酸配列は、位置23でロイシンに置換されて天然ヒトGMCSFと異なり、炭水化物成分が天然タンパク質と異なりうる。Leukine(登録商標)は、皮下または静脈投与に適している(Leukine(登録商標)Package Insert Approved Text, February 1998)。
【0042】
本発明の実施に適した他のGMCSFは、モルグラモスティム(molgramostim)、Leucomax(登録商標)(Schering-Plough)の商品名で販売されている大腸菌由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。Leucomax(登録商標)は、大腸菌発現系で産生される組み換えヒトGMCSFである。Leucomax(登録商標)は、水溶性の、14,477ダルトンの分子量を有する127アミノ酸の非グリコシル化タンパク質である。Leucomax(登録商標)のアミノ酸配列は、位置100でイソロイシンに置換されて天然ヒトGMCSFと異なる。Leucomax(登録商標)は、粉末として利用可能であり、一旦再構成されると皮下または静脈投与に適している(Leukomax(登録商標) Data Sheet, November 2002)。
【0043】
本発明の実施に適したさらなるGMCSFは、レグラモスティム(regramostim)、CHO由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。レグラモスティムは、サルグラモスティムより高くグリコシル化された127アミノ酸の組み換えヒトGMCSFである。
【0044】
典型的には、GMCSFまたはその誘導体が組み換え技術によって産生される場合、それは産生元の細胞から精製されてできる。よって、本発明の実施形態では、細胞が患者に投与されることはない、つまり創傷治癒を促進するために投与される治療用組成物に細胞は存在しない。
【0045】
GMCSFおよびその誘導体は、ポリペプチド(グリコシル化されているか否かは問わず)として患者に投与される。あまり好ましくない実施形態では、GMCSFまたはその誘導体は、GMCSFまたはその誘導体をコード化するポリヌクレオチドの形態で患者に投与してよい。あるいは、GMCSFまたはその誘導体は、GMCSFまたはその誘導体をコード化するポリヌクレオチドの形態で患者に投与されない。
【0046】
そうでないことを示さない限り、「GMCSF」なる用語を使用している場合、ここで定義したような誘導体が含まれる。
【0047】
投与するPGEまたはそのアゴニストの適切な用量は、典型的に0.01〜100μgの範囲である。好ましくは、PGEまたはそのアゴニストの量は、0.05〜50μgの範囲である。典型的には、0.1〜5μg、または5〜20μg、または20〜50μgが投与されうる。PGEの効果または局所濃度を増大する適切な用量の作用剤が医師により投与されてもよい。典型的には、その量は0.01〜100μgの範囲である。
【0048】
投与するGMCSFまたはその誘導体の適切な用量は、典型的に0.01〜400μgの範囲である。好ましくは、GMCSFまたはその誘導体の量は、0.05〜200μgの範囲である。典型的には、0.1〜5μg、または5〜50μg、または50〜200μgが投与されうる。
【0049】
好ましくは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体の一方または両方が、患者の創傷部位に局所投与される。より好ましくは、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体が患者の創傷部位に局所投与される。
【0050】
好適な実施形態で、治療する創傷は、無菌創傷である、つまり創傷は感染性でない。創傷が感染性である場合、例えば抗菌剤の投与によって殺菌できる。しかしながら、もちろん、無菌創傷の治療でも感染を防ぐために抗菌剤を使用できる。
【0051】
よって、典型的には、本方法はさらに、患者に抗菌剤を投与することを含んでなってよい。ある実施形態で、抗菌剤は患者の創傷部位に局所投与される。適切な抗菌剤には、当業者には周知のように、抗バクテリア剤、抗真菌剤、および抗ウイルス剤が含まれる。抗バクテリア剤としては、例えば、天然および合成ペニシリンおよびセファロスポリン、スルホンアミド、エリスロマイシン、カナマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシンが挙げられ、および、ゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシ−メチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、塩酸バカンピシリン、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、塩酸タランピシリン、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、セフピロム、ラタモキセフジソジウム、アズトレオナム、グリシルサイクリン系のもの、塩酸クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンナトリウム、塩酸デメクロシジン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、硫酸フラマイセチン、硫酸ネオマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、フピロシン、硫酸ポリミキシンB、スペクチノマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、スルファルオキサートカルシウム(calcium sulphaloxate)、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファウレア、カプレオマイシン、メトロニダソール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、硫酸コリスチン(colistimethate)、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、シクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジンアミド、メロペネム、イミペネムなどを含み;抗真菌剤としては、例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、ニスタチンなどが挙げられ;そして、抗ウイルス剤としては、アシクロビア、AZT、ddI、塩酸アマンタジン、イノシンプラノベクス、ビダラビンなどが挙げられる。
【0052】
本方法はまた、患者の創傷部位に、鎮痛剤または麻酔剤を局所投与することを含みうる。適切な鎮痛剤としては、サルチル酸メチル、サリチル酸、ジクロニン、およびアロエベラがある。適切な局所麻酔剤としては、ベンゾカイン、リドカイン、キシロカイン、またはブタンベンピクラート(butamben picrate)がある。
【0053】
好適な実施形態において、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、ここで記述した他の任意の活性剤のいずれかと共に、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤(その組み合わせを含む)を含む医薬組成物として投与される。担体、希釈剤、または賦形剤は、本発明の活性作用剤と適合し、受容体に有害でないという意味で「許容可能」でなくてはならない。典型的に、担体は無菌で発熱物質のない生理食塩水または水である。治療的に使用する許容可能な担体または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, 2005, ISBN: 0-7817-4673-6)に記載されている。医薬担体、賦形剤、または希釈剤は、意図する投与ルートおよび標準的な薬務を考慮して選択できる。
【0054】
医薬組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適切なバインダー(類)、潤滑剤(類)、懸濁化剤(類)、コーティング剤(類)、または可溶化剤(類)からなってよい。保存料、安定剤、染料、および着香料でさえ医薬組成物の形態で提供されうる。保存料としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびパラオキシ安息香酸エステル類がある。抗酸化剤および懸濁化剤も使用できる。
【0055】
典型的に、本方法は、外傷の治癒の促進に使用できる。
【0056】
当該実施形態で、本方法はさらに、患者の創傷部位に皮膚透過性エンハンサーを局所投与することを含んでなってよい。皮膚透過性エンハンサーとは、活性剤(類)の経皮トランスファー、デリバリー、または浸透の増加を可能にする作用剤、または分散剤を意味する。適切な皮膚透過性エンハンサーは、ジメチル・スルホキシド(DMSO)などである。適切な皮膚透過性エンハンサーは、PGEまたはそのアゴニストおよび/または、GMCSFまたはその誘導体と適合するもの(例えばその溶剤)である。
【0057】
本発明の実施形態においては、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体、および任意で、抗菌剤および/または鎮痛剤および/または麻酔剤および/または皮膚透過性エンハンサーを、創傷治癒の促進のための単独活性剤として投与する。
【0058】
通常、上述した活性剤のいずれかまたは全て(PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体、および任意の皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および麻酔剤)を創傷治癒および健常な皮膚発生のために局所投与することができる。活性剤は、スプレー、泡、粉末、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、または溶剤として、選択された組織に直接または間接的に任意の手段によって局所投与されうる。ローション、クリーム、ゲル、およびペーストなる用語には、粘性の塗り広げることができる組成物および軟膏、例えば多くの場合皮膚に直接適用されるもの、または包帯や創傷包帯に塗り広げられるもの、が含まれる。活性剤は、皮膚被覆材または創傷包帯に共有結合しているか、安定的に吸収されているか、そうでなければ塗布されていてよい。外科手術後の治癒を容易にするために、活性剤は標的組織または人工器官に直接適用されてもよい。組成物は、泡または霧状で他の薬剤と共に皮膚または創傷に直接エアロゾル投与できる。
【0059】
医薬剤形でのPGEまたはそのアゴニストの適切な濃度は、典型的には0.01〜100μg/mlの範囲である。好ましくは、PGEまたはそのアゴニストの濃度は0.05〜50μg/mlの範囲である。より好ましくは、0.1〜1μg/ml、または1〜10μg/ml、または10〜20μg/mlの濃度が採用されうる。PGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の適切な濃度は、典型的には0.01〜100μg/mlの範囲である。
【0060】
医薬剤形でのGMCSFまたはその誘導体の適切な濃度は、典型的には0.01〜50μg/mlの範囲である。好ましくは、GMCSFまたはその誘導体の濃度は0.05〜25μg/mlの範囲である。より好ましくは、0.1〜1μg/ml、または1〜10μg/ml、または10〜20μg/mlの濃度が採用されうる。
【0061】
スプレー、泡、粉末、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、および溶剤の薬剤調製は当業者に極めて周知である(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, 2005, ISBN: 0-7817-4673-6参照)。
【0062】
US特許第6,251,423号(Smith & Nephew)には、患者に局所適用、または包帯または創傷包帯の表面に塗布できる殺菌可能なペーストまたはクリーム剤形が記載されている。
【0063】
適切な創傷包帯は当業者に極めて周知で、いくつかが例えばUS特許第6,191,335号;5,792,089号;5,662,924号および4,460,369号(Smith & Nephew)に記載されており、それぞれを参照によりここに組み込む。創傷包帯は、例えばHarvey 2005;Vermeulen他, 2005;Menaker, 2004;およびLionelli & Lawrence (2003)にて確認され、それぞれを参照によりここに組み込む。
【0064】
他の実施形態において、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、他の任意の活性剤のいずれかと共に、フィブリン接着剤などの組織シーラントの成分として投与されうる。フィブリン接着剤は一般的に:(1)フィブロネクチン、XIII因子、およびフォン・ヴィレブランド因子を含む濃縮フィブリノゲン;(2)乾燥ヒトまたはウシトロンビン;および(3)カルシウムイオンから調製される。市販のフィブリン接着剤は多くはウシ成分を含みうる。濃縮フィブリノゲンは、寒冷沈降反応とその後の分画によって血漿から調製でき、トロンビンおよびカルシウムイオンといったトロンビンアクチベーターと混合してシーラントまたは血栓を形成する組成物を産出する。濃縮フィブリノゲンおよびトロンビンは、凍結乾燥の形態で調製され、使用直前に塩化カルシウム溶液と混合される。混合後、当該成分が組織に適用されると、組織表面上で凝固し、架橋フィブリンを含む血栓を形成し、よってPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を創傷部位に保持する。フィブリン接着剤や添加フィブリン接着剤を含む適切な組織シーラント組成物は、当業者に極めて周知で、Spotnitz & Prabhu (2005)、MacGillivray (2003)、Clark (2003)、およびAlbala (2003)で確認され、それぞれを参照によりここに組み込む。
【0065】
他の実施形態において、一または複数の活性剤が、典型的には活性剤の放出制御のために、活性剤(類)を創傷に送達する埋め込み型装置で投与されうる。適切な埋め込み型装置は当業者に周知で、例えばUS特許出願第2004/0034357号(Smith & Nephew)に記載されている。活性剤、特にPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体は、ミクロスフィアに内包でき、活性剤の同時放出制御のために投与できる。
【0066】
さらなる実施形態において、一または複数の活性剤は注射によって投与される。
【0067】
好ましくは、任意の二つ以上の活性剤が同時に投与される。
【0068】
また、好ましくは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、同一ルートで投与される。
【0069】
本方法は、内部外科創傷の治癒促進にも使用できる。しかしながら、他の創傷治癒治療の形態と異なって、本方法は、創傷ができる前に治癒促進環境をもたらすのに役立つ。よって、本方法は手術を受けようとする患者に局所的な治癒促進環境をもたらすのに有用である。手術中または完了後の投与の継続がさらに効果的であろう。
【0070】
特定の患者に治療の有効性が見込めるか否かは、医師によって決定されうる。
【0071】
本方法はまた、クローン病に関連するような胃腸障害または潰瘍と闘うことに有用であるのが好ましい。特定の疾患または状態と「闘う」とは、その特定の疾患または状態の症状を治療、予防または改善することを含む。
【0072】
このような実施形態において、経口で、特に放出制御製剤で投与されてよい。あるいは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体の一方または両方は、坐薬またはカプセルとして投与されてもよい。座薬またはカプセルは、患者の腸で活性剤が放出されるように腸溶コーティングされていてよい。
【0073】
妊娠は、本発明に禁忌でありうる。実際に、妊娠は、ミソプロストールを含むいくつかのプロスタグランジンに禁忌である。サイトテック(Cytotec)(ミソプロストール)は、低血圧を引き起こさないが、本発明の方法によって起こりうるリスクである。
【0074】
特定の実施形態において、本発明は、皮膚幹細胞といった幹細胞を患者に投与することを含まない。
【0075】
別の特定の実施形態において、本発明は、GMCSFを発現するように遺伝子組み換えされた複数の脊椎動物細胞と;固体基質と関連するPGE1またはPGE2と;複数のマイクロキャリアとを含むコラーゲン基質を含んでなる固体基質の形態で、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を投与することを含まない。
【0076】
また別の特定の実施形態において、本発明は、GMCSFを発現するように遺伝子組み換えされた複数の脊椎動物細胞と;複数のマイクロキャリアと;PGE1またはPGE2とを含んでなる組成物の形態で、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を投与することを含まない。
【0077】
本発明の第二の態様は、患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを提供する。よって、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、患者に投与する前に同一の薬剤に混合されていてよい。
【0078】
本発明の第三の態様は、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、GMCSFまたはその誘導体を使用することを提供する。よって、患者は、GMCSFまたはその誘導体の投与前に既にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されていてもよく、またはGMCSFまたはその誘導体と同時にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されてもよく、またはGMCSFまたはその誘導体の投与後にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されてもよい。
【0079】
本発明の第四の態様は、GMCSFまたはその誘導体が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤を使用することを提供する。よって、患者は、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の投与前に既にGMCSFまたはその誘導体が投与されていてもよく、またはPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤と同時にGMCSFまたはその誘導体が投与されてもよく、またはPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の投与後にGMCSFまたはその誘導体が投与されてもよい。
【0080】
本発明の第二、第三、第四の態様について、PGE、そのアゴニスト、およびPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の選択、GMCSFおよびその誘導体の選択、投与ルート、用量などは、本発明の第一の態様に関して上記で定義されたとおりである。
【0081】
好ましくは、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤もまた、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤を含んでなっていてよい。さらに好ましくは、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤は、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤が投与された患者の創傷治癒を促進するためのものであってよい。皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤は、本発明の第一の態様について上述したように選択される。
【0082】
好適には、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤は、患者の創傷部位に局所投与するために調剤される。薬剤は、上述したようにゲル、クリーム、ローション、ペースト、パッチ、またはスプレーの形態で調剤されてよい。あるいは、薬剤は、上述したように創傷包帯、包帯、または組織シーラントの形態で形成されてよい。さらには、薬剤は注射によって投与されるように調剤されてよい。
【0083】
薬剤は、外傷または内部外科創傷の治癒の促進に適しうる。
【0084】
薬剤はまた、クローン病に関連する創傷または潰瘍といった内部創傷の治癒の促進にも適しうる。よって、本発明は、クローン病または潰瘍と闘う薬剤の調製において、本発明の第二、第三、第四の態様において定義した(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体、および、任意で上述した他の活性剤のいずれかを使用することを含む。この実施形態において、薬剤は、上述したように経口投与用に、または坐薬またはカプセルとして調剤されてよい。
【0085】
本発明の第五の態様は、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を含んでなる創傷包帯、包帯、または組織シーラントを提供する。
【0086】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0087】
ある実施形態では、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物はさらに、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤のいずれか一または複数を含んでなる。皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0088】
典型的には、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物は、上述したように、外傷への適用に適している。別の実施形態では、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物は、上述したように、内部外科創傷への適用に適していてよい。
【0089】
本発明の第六の態様は、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、(ii)GMCSFまたはその誘導体、および(iii)抗菌剤、鎮痛剤および麻酔剤から選択された少なくとも一のさらなる作用剤を含んでなるゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーを提供する。
【0090】
PGEまたはそのアゴニスト、PGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、および麻酔剤は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0091】
ある実施形態において、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、抗菌剤、鎮痛剤、および麻酔剤のいずれか二つまたは複数を含んでなる。
【0092】
ある実施形態において、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーはさらに、本発明の第一の態様について上記で定義したような皮膚透過性エンハンサーを含んでなる。
【0093】
典型的には、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、外傷への適用に適している。別の実施形態では、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、内部外科創傷への適用に適していてよい。
【0094】
本発明者は、PGEおよびGMCSFが、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBP−CXCL7の発現を増進することを示した。「マクロファージ/単球系列の細胞」には、単球前駆体由来の細胞が含まれ、マクロファージおよび単球が含まれる。
【0095】
本発明の第七の態様は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を増進または刺激する方法を提供し、当該方法は、細胞に(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を投与することを含んでなる。
【0096】
本発明はまた、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を投与することによって、マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を増進または刺激する方法を含む。
【0097】
本方法は、インビトロまたはエクスビボで実施できる。あるいは、本方法はインビボで実施してもよい。
【0098】
本発明の当該態様は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を増進または刺激するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを含む。
【0099】
同様に、本発明は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を増進または刺激するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを含む。
【0100】
ここで参照した文献の全てを、参照により完全にここに組み込む。
【0101】
本明細書での公開済みの文献の列挙または考察は、必ずしも、その文献が最新技術の一部または一般的な常識であるとの認識として捉えられるべきではない。
【0102】
本発明は、これより、以下の図および実施例を用いてより詳細に説明する。
【0103】
実施例1:サイトカイン誘発に対するプロスタグランジンE/GMCSFの相乗作用
要約
ヒト単球モデル系における、ヒト精漿(HSP)およびGMCSF、およびPGEおよびGMCSFを用いた遺伝子発現アレイ試験の結果は、サイトカイン遺伝子発現の予期せぬパターンを示した。HSP/GMCSF処方計画を用いた第一のアッセイでは、いくつかのケモカイン(走化性サイトカイン)の発現に千倍の増加が見られ、コントロールと比べて最も多く増加した3つのmRNAはケモカインであった。ケモカインの発現はcAMP非依存性であるように見えた。HSP/GMCSFおよびPGE/GMCSF処方計画を用いた第二のアッセイでは、いくつかのケモカインの発現に数百倍の増加が見られた。コントロールと比べて最も多く増加した8つのmRNAのうち4つがケモカインであり、これには第一のアッセイでの上位3つが含まれた。HSP/GMCSFおよびPGE/GMCSFに応答してのケモカインパターンは、創傷治癒の第一段階で見られたパターンと非常に類似していた。これらの結果は、局所投与したPGEまたはその局所濃度を増大する作用剤と、GMCSFの介入は、創傷治癒に治療的に有用であることを示唆する。
【0104】
実験の詳細
遺伝子発現アレイ
U937またはML1(ヒト単球細胞株)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories)を添加したRPMI(PAA Laboratories)培地で増殖させた。第一のアッセイについては、添加物なし、5ng/mlのGMCSFを加えたホルスコリン(25μM)または細菌ろ過した(0.22μM)1%ヒト精漿(HSP)で細胞を48時間処理した(結果を表2に示す)。第二組のアレイは、複製の点で異なる。この第二のアッセイは、2つの複製コントロール培養物、10−6M PGE+5ng/ml GMCSFで処理した2つの培養物、そして1%HSP+5ng/ml GMCSFで処理した4つを含んだ(表3の結果は複製の平均値である)。
【0105】
細胞をペレットし、mRNAをTri試薬(Sigma, Poole, UK)で抽出した。クロロホルムを添加し、それに続くイソプロパノール沈殿によって全RNAを採取した。32,800の遺伝子からなるABI/Celeraアレイを用いてサンプルを分析した。
【0106】
全RNAの濃度と質を、分光光度法(Nanodrop)およびバイオアナライザー(Agilent)で評価した。続いて、全てのサンプルについて、Applied Biosystems Chemiluminescent RT-IVTナノアンプ(1サイクル)ラベリングプロトコルに従ってRT−IVTを実施した。cRNAサンプルに対してQCプロシージャ(NanodropおよびAgilentバイオアナライザー)を実施し、cRNAの質と量を確認した。サンプルを断片化し、続いて16時間、Applied BiosystemsのHuman Genome Survey Microarray(Version 2)にハイブリダイズした。ハイブリダイズ後、アレイを染色し、Applied BiosystemsのChemiluminescence検出キットを用いて洗浄した。最後に、Applied BiosystemsのChemiluminescent Microarray Anlyzerを用いてアレイをスキャンした。MRC Gene-services, Cambridge, UKでアレイ試験を実施した。
【0107】
最初のアッセイで、発現した遺伝子(処理した細胞からのシグナルをコントロール細胞からのシグナルで除算)を順位付けし、最も多く発現した32の遺伝子を表2に載せた。第二のアッセイで、発現した遺伝子(処理した細胞からのシグナルをコントロール細胞からのシグナルで除算)を順位付けし、最も多く発現した32の遺伝子を表3に載せた。第二のアッセイは、統計分析を行い、コントロールに対する増進確率に従って遺伝子を順位付けした(遺伝子が異なって発現する確率の対数[塩基2]に相当するB値により特定)。4を超えるB値を有する遺伝子だけを表5および6に記載した。遺伝子発現を、遺伝子発現の増加(対数[塩基2]増加を「M」として示す)で順位付けした。また、異なって発現した遺伝子が関与した経路を表7に記載した。Geneservice Ltd(Cambridge UK)が独自に開発したプログラムを用いて経路分析を行った。
【0108】
サイトカイン発現測定のためのRT−PCR
順位の高い遺伝子を、さらにABI Taqmanシステムを用いた定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって試験した。IL−8および複数の他の分子の増幅および検出のためのプローブとプライマーを、Primer Express(Applied Biosystems)を用いて設計した。これらの試験において、細胞のインキュベーションは上記と同一であり、純粋なPGEの効果を決定し、ヒト精漿で見られた効果と同じであることがわかった。
【0109】
特定の遺伝子についてのmRNAを、プローブにFAM/TAMRA染色を用いて40サイクル、Taqman 7700装置で増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて、同一の反応チューブで内在性コントロールとしてリボソーム(18S)RNAを増幅および検出した(VIC/TAMRA染色を使用)。40サイクルの後、FAMおよび18S(VIC)についてCt(シグナル出現のサイクル数に関連)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて相対定量を行った。ここでΔは、各実行に含まれる標準的なコンパレータに関連するFAMおよびVICシグナルの間の差異である。
【0110】
使用したプライマーは以下のとおりである:
Pro−PBP(CXCL7)登録番号NM_002704
フォワード:5’-CCAAAAACATCCAAAGTTTGGAA-3’
(配列番号3)
リバース:5’-CAGTGTGGCTATCACTTCGACTTG-3’
(配列番号4)
プローブ:5’-TGATCGGGAAAGGAACCCATTGCA-3’
(配列番号5)
COX−2(登録番号D28235)
フォワード:5’-GTGTTGACATCCAGATCACATTTGA-3’
(配列番号6)
リバース:5’-GAGAAGGCTTCCCAGCTTTTGTA-3’
(配列番号7)
プローブ:5’-TGACAGTCCACCAACTTACAATGCTGACTATGG-3’
(配列番号8)
CXCL8(CCL8,IL−8)(登録番号NM_000584)
フォワード:5’-CTGGCCGTGGCTCTCTTG-3’
(配列番号9)
リバース:5’-TTAGCACTCCTTGGCAAAACTG-3’
(配列番号10)
プローブ:5’-CCTTCCTGATTTCTGCAGCTCTGTGTGAA-3’
(配列番号11)
IL−10
フォワード:5’-CTACGGCGCTGTCATCGAT-3’
(配列番号12)
リバース:5’-TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA-3’
(配列番号13)
プローブ:5’-CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC-3’
(配列番号14)
【0111】
サイトカイン放出測定のためのELISA
培地を細胞から除去し、ELISAで分析した。モノクローナル捕捉抗体を96ウェルプレートにコーティングし、各ウェルに培養培地を添加した。組み換えタンパク質を用いて検量線を作成した。インキュベーションおよび洗浄の後、ビオチンで標識したモノクローナル抗体を添加した。さらなるインキュベーションおよび洗浄の後、ペルオキシダーゼで標識したストレプトアビジンを添加した。洗浄後、テトラメチル・ベンジジン基質を加えて、元のサンプル/スタンダードのサイトカインの濃度に比例して発色させた。プレート光度計(Labsystems, Multiskan)を用いて色度を読み取った。
【0112】
下記の表1に示すように、CD14、CXCL8(IL−8)、およびCCL2(MCP−1)について対を成す抗体および組み換えスタンダードをR&D Systems Ltd, Abingdon UKから得て、IL−10について抗体をPharmingen(BD Bioscience, Erembodegem, Belgium)から得た。
表1
【0113】
結果
表2は、コントロールと比較して発現の増加が最も高レベルであった32の遺伝子を示す。3列目はコントロールの発現レベル;4列目はHSPおよびGMCSFでの処理後の発現レベル;5列目は3列目のレベルに対する4列目のレベルの比率である。ケモカインを太字で示す。
【0114】
表3のデータは、PGE+GMCSFで刺激された遺伝子のパターンはHSP+GMCSFで刺激されたものと僅かに異なるが、依然としてケモカイン刺激が優位であることを示す。コントロール(3列目)に対するPGE+GMCSF(4列目)のシグナル強度によって順位付けした遺伝子の上位29個の中に10のケモカインがランクインした。ケモカインPBP−CXCL7、CCL2およびCXCL8は全て、上位8つの中に入っている。
【0115】
これらの結果が、ML1細胞の異なるバッチと異なる処方計画を用いた、32,000の遺伝子に対する発現試験から導き出されたことを考慮すると、PGE+GMCSF(表3)で誘発される発現とHSP+GMCSF(表2)で誘発される発現との間には非常に高い相関関係がある。
【0116】
このデータの別の見方は、PGE+GMCSF/コントロール(表3より)から最も高い順位の32の遺伝子を取り出して、それらをPGE+GMCSF/コントロールの総強度に基づいて順位付けすることである。このデータを表4に示す。これにより、増加率は高いがコントロールでは全く発現しない遺伝子の重要度が排除される。この分析は、ケモカインだけでなくカルグラニュリンの重要度も明らかにする。実際、この順位付けによると、上位13個の遺伝子のうち7つがケモカインである。
【0117】
データを分析するさらなる方法は、統計的問合せ(statistical interrogation)により、コントロールに対する倍増の対数であるM値に従って、コントロールと比べて上方に異なって発現した遺伝子を順位付けすることである。4を超えるβ値を持つ遺伝子だけが含まれた。ここでβ値とは、遺伝子が異なって発現した確率の対数[塩基2]である。このデータを、HSP+GMCSFおよびPGE+GMCSFで処理した細胞についてそれぞれ表5および6に示す。データは、PGE+GMCSFで刺激された遺伝子のパターンはHSP+GMCSFで刺激されたものと僅かに異なるが、PBP−CXCL7が各処理で第一位に位置する遺伝子であり依然としてケモカイン刺激が優位であることを示す。
【0118】
図2は、処理グループGMCSF+PGE[処理1]およびコントロール(グループ2−グループ1);GMCSF+HSP[処理2]およびコントロール(グループ3−グループ1);GMCSF+HSP[処理2]およびGMCSF+PGE[処理1](グループ3−グループ2)の間で異なって発現する遺伝子の重複を表すベン図である。コントロールと比べてGMCSF+PGEで処理したML1細胞で異なって発現した遺伝子の殆ど(746遺伝子のうち712)は、コントロールと比べてGMCSF+HSPで処理したML1細胞でも異なって発現した。実際、2つの処理グループGMCSF+PGEとGMCSF+HSPで異なって発現したのは98の遺伝子のみで、そのうち40の遺伝子はコントロールで処理した場合と異なって発現した。総合すると、これらの観察結果は、GMCSF+HSPとGMCSF+PGEの両方の処理で誘発される発現プロファイルに高い同一性があることを明確に示す。
【0119】
表7は、表5および6で特定した上方に異なって発現する遺伝子が関与する経路を、有意性によって順位付けしたリストである。この表は、GMCSF+HSPとGMCSF+PGEの両方の処理について、炎症性ケモカインおよびサイトカインシグナル伝達が、異なって発現する遺伝子が関与していた最も有意な経路であることを示す。さらに、GMCSF+PGEで処理した細胞で異なって発現する遺伝子が関与する13の経路のうち12に、GMCSF+HSPで処理した細胞で同定した異なって発現する遺伝子も同様に関与し、このこともまた2つの処理間の発現プロファイルの同一性を明らかにする。
【0120】
図3は、CXCL8(CCL8、IL−8)でGMCSFと組み合わせたときの、PGEおよびヒト精漿の両方のCXCL8(CCL8、IL−8)に対する相乗作用を示すグラフである。CCL8 mRNA発現と、48時間にわたる細胞からのCCL8タンパク質の放出が、この相乗作用を示す。
【0121】
図4は、ヒト精漿(HSP)およびGMCSFの低分子量分画の、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフである。ヒト精漿の低分子量分画は、タンパク質を欠失するが、高レベルの可溶CD14を含む。このことは、HSP分画のみで処理した後、比較的高レベルのCD14が測定されたことを説明する。
【0122】
図5は、PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球U937細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフである。GMCSFおよびPGEに応答してのケモカインCXCL8およびCCL2の放出は、ヒト精漿によるGMCSFの相乗効果がPGEによって再現されることを示す。GMCSFおよびPGEはまた、可溶CD14およびIL−10の放出に対して相乗効果を持つ。IL−10(サイトカイン合成阻害タンパク質としても知られる)は、それが「阻害」サイトカインであり、例えばマスト細胞から放出されるヒスチミンなどの不要な興奮性物質の抑制が見込まれる点で関連性がある。CD14はマクロファージ系列のマーカーである。
【0123】
図6は、PGEおよびGMCSFによる前処理の、ML1細胞におけるIL−8およびCOX−2の発現に対する効果を示すグラフである。細胞を、GMCSFと共にPGEを添加してまたは添加なしで、48時間インキュベートした。前処理物を取り除き、細胞を洗浄し、その後3つのさらなる処理物:コントロール、PGEおよびGMCSF、およびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA、単球の安定した分化作用剤)を加えた。さらに48時間インキュベーションを続けた。PGEおよびGMCSFによる前処理の効果は、PMAに露出した後4日間の最後の時点で持続している。COX−2の発現は、これがさらなるPGEを産生し、比較的不安定なPGEへの露出を持続させる点で関連性がある。
【0124】
図7は、PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのpro−PBP遺伝子の発現に対する相乗作用を示すグラフである。(図6では、pro−PBPを、その遺伝子産物の一つであるCXCL7と称している。)GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、発現アレイにおいて見られた効果が本当の相乗効果であることを表す。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、コントロールの3725倍増加した。GMCSFおよびPGEはまた、IL−10発現に対しても相乗効果を持つが、pro−PBPの場合よりも程度が低い。
【0125】
考察
どの遺伝子が、GMCSFおよびPGEに応じて変化する発現レベルを有しているのかを同定するために、本発明者がアレイ実験を行ったところ、いくつかの予期せぬ発見があった。本発明者は、単球細胞モデル(ML1細胞)におけるヒト精漿(HSP)およびGMCSFの組み合わせの効果を試験し、最大限に発現する遺伝子を調べた(表2)。表2は、32,800の遺伝子のうち、HSPおよびGMCSFでの処理後、発現が最も増加した32の遺伝子を示す。
【0126】
本発明者は以下のことを発見した:
●HSPおよびGMCSFは、いくつかのケモカインのmRNAレベルの大きな上昇を誘発する。
●HSPおよびホルスコリンの効果は、両者を別々にGMCSFと組み合わせると異なり、これは発現の増大が必ずしもcAMPレベルに依存するわけではないことを示す。
●PGEおよびGMCSFは、HSPおよびGMCSFと同様に、いくつかのケモカインのmRNAレベルの大きな上昇を誘発する。
●追跡調査は、ケモカインmRNAの誘発とタンパク質の放出が、EシリーズのプロスタグランジンとGMCSFの真の相乗作用であることを示す。
【0127】
驚くべきことに、HSPおよびGMCSFに応答して遺伝子発現が増大した上位3つは、CXCL8/IL−8(1549倍の増加)、CCL2/MCP−1(1071倍の増加)、およびPBP CXCL7/NAP−2(918倍の増加)であった。これらの結果は、続く定量PCRと、PGEおよびGMCSFを別々ではなく共に使用する、真の相乗効果を示唆するタンパク質放出試験で再現された。mRNAでの増大は、タンパク質放出の増加に反映される。ケモカイン発現におけるこれらの増加は、pro−耐性サイトカインIL−10について見られた増加に付随して起こる。
【0128】
アレイ試験は、PGEへの全応答が、細胞内cAMPレベルの上昇によってのみ介されるわけではないことを示し、よってPGEそのもの、または16,16−ジメチルPGEといったそのアゴニストの重要性を示唆する。cAMPレベルの上昇は、IL−10の刺激における主な経路であると思われるため、PGEおよびGMCSFの作用の重要な部分である。リポソーム、IV型ホスホジエステラーゼ・インヒビター、がPGEおよびGMCSFに誘発されるIL−8放出を増進することが示されたので、cAMPレベルは、単球からのケモカイン放出において何らかの役割を果たしうる。
【0129】
PGEおよびGMCSFによるケモカイン誘発パターンは、創傷修復の第一段階の終期に似ており、よって、こういった組み合わせは創傷修復の加速に利用されうる。
【0130】
例えば、血管新生に乏しい皮膚部分の創傷や老人の創傷など、治癒の遅い創傷の治癒が、PGEまたはそのアゴニスト、およびGMCSFまたはその誘導体の局所投与によって加速または促進されうる。実際、この組み合わせは、それ以外は健康な患者の皮膚創傷および外科手術による創傷など、より広い範囲の用途で、創傷治癒の加速または促進に治療的に有用でありうる。この組み合わせはまた、クローン病に関連するような胃腸障害での創傷修復でも有用でありうる。
【0131】
pro−血小板塩基性タンパク(pro−PBP)遺伝子の発現は、HSP+GMCSFに応答した三番目に高い上昇(表2)と、PGE+GMCSFに応答した最も高い上昇(表3)を示し、これは図7のRT−PCRデータで裏付けられた。pro−PBP遺伝子は、CXCL7(NAP−2)、結合組織活性化ペプチドIII(CTAPIII)、およびβトロンボグロブリンを含む複数のポリペプチドの前駆体である血小板塩基性タンパク(PBP)をコード化する。Proudfoot他(1997)は、CXCL7およびCTAPIIIの両方が創傷治癒の早期段階に関与することを記述しており、BTGは繊維芽細胞について走化性が高く、やはり創傷治癒に重要である(Senior他, 1983)。これは、PGEおよびGMCSFへの応答がpro−創傷治癒応答であることを強調する。ケモカインCXCL7レベルの上昇は、創傷治癒の促進に非常に重要であろう。いずれにせよ、学説に縛られることなく、本発明者は、CXCL7、CTAPIII、およびBTGのそれぞれのレベルが、PGEおよびGMCSFに応答して上昇することは蓋然性が高いと考える。
【0132】
CCL2(MCP−1)とCXCL8(IL−8)はどちらも創傷治癒に関連性があることで知られている。図8は、好中球と単球の、治療中の組織への到達を示す。これは、創傷治癒に重要であるIL−8(好中球を誘引)とMCP−1(単球を誘引)の産生と一致する。また、創傷治癒における血管形成の要素もあり、文献中にはこのプロセスにおけるIL−8とMCP−1の役割がよく説明されている。IL−8の文献:(Koch他, 1992;Sunderkotter他, 1994;Arenberg他, 1996)およびMCP−1の文献:(Goede他, 1999;Kim他, 2005)。
【0133】
GMCSFは複数の作用を有し、最も重要かつ明瞭なのは、造血促進能力、白血球の増大である。これは、概して骨髄で起こる。他の作用としては、白血球の分化と不明瞭な走化性作用がある。GMCSFは、特に潰瘍の創傷治癒の促進に関連する(Siddiqui他, 2000)。この効果は、好中球および単球の組織への誘導に関与するようであるが、白血球の血中濃度とは無関係であると思われる(Jyung他, 1994)。ここでは、GMCSFについてほど一貫性はないが、PGEと創傷治癒について時折言及されている。Mirio他(2005)には、PGE1は潰瘍の治癒を促進するが、この効果は、PGEの血管作用性およびVEGF生成特性によるものだと考えていることが示されている。
【0134】
一方、本発明者は、GMCSFは、CXCL8およびCCL2といった走化性サイトカインの刺激によって間接的に走化性であると考える。この場合、PGEとBMCSF間の相乗作用は非常に重要であろう、というのは、これら2つの物質を局所用製剤として加えることによってその相乗作用を最大限に引き出すことは、白血球誘引の速度と効果を増大し、よって確実に創傷治癒を加速することになるからである。
【0135】
単球細胞は、比較的分化の乏しい組織に進入する。組織内でのサイトカイン環境は、単球の分化に深く関与する。本発明者は、治療後の創傷部位にPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体のリザーバを構築することが特に有用で、これにより、創傷内に移入するよう誘引された細胞をPGEおよびGMCSFによって調節することが可能になる。特に効果的であろう一つのPGEアゴニストは、16,16−ジメチルPGEであり、これは主な異化酵素15−ヒドロキシ・プロスタグランジン・デヒドロゲナーゼに耐性を示す(Ohno他, 1978)。この化合物は、全ての周知のPGEレセプターを活性化すると報告されている。
【0136】
また、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体の相乗的混合に応答して単球により産生される走化性サイトカインは、それ自体がPGEと相乗的に作用し、よって白血球の侵入を促進する(Foster他, 1989;Colditz, 1990)。さらに、走化性シグナルに応答して組織に進入する白血球は、比較的分化が乏しく、PGEの影響下で成熟し、これは好中球による遊離基の放出を減少させ、よって創傷治癒促進環境をもたらす。
【0137】
ケモカインシグナル伝達に加えて、表7の経路分析は、血管形成およびノッチ経路を、GMCSFおよびPGEに応答しての識別的遺伝子発現パターンの有効成分として同定した。これらはまた、いずれも創傷治癒に関係がある。血管形成は、創傷修復に絶対不可欠であり、炎症細胞とサイトカインの損傷部位への浸潤を容易にし、ノッチシグナル伝達もまた、最近、創傷治癒に関連し、上皮細胞の分化に関与するとされた(Thelu他, 2002)。
【0138】
さらに、表2で遺伝子発現の増大レベルが7番目と9番目に高い遺伝子は、いずれもカルグラヌリンである。これらは、天然の抗菌剤であるため、創傷治癒に非常に関係がある。天然の抗菌剤であれば創傷治癒に大きく役立つ。
【0139】
実施例2:創傷治癒のラットモデルへのPGEおよびGMCSFの影響
要約
創傷治癒のラットモデルで行った実験から得られた結果は、創傷治癒の加速におけるPGEアナログとGMCSF間の相乗作用を示した。創傷面積および創傷の色をモニターして創傷治癒を評価した。PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせの投与によって、手術後3日までに創傷面積が有意に縮小したが、いずれか一方のみを投与する処理では有意な差異は見られなかった。さらに、創傷の色の観察では、10日目にPGEアナログとGMCSF間の相乗作用が示された。これらの結果は、PGEおよびGMCSFの局所投与がラットにおける創傷治癒の加速に有用であることを裏付ける。
【0140】
実験の詳細
使用した動物
体重250〜300gの雄のSD(Sprague Dawley)ラットを創傷治癒モデルとして使用し、PGEおよびGMCSFの効果を評価した。コントロールと処理グループの間での統計比較に十分なデータを提供するために各処理グループにつき6匹のラットを分析した。合計24匹の動物を使用した(6匹のラットを4グループ)。4つのグループとは、コントロール、16,16−ジメチルPGE、GMCSF、および16,16−ジメチルPGE+GMCSFのグループである。動物は処理するまでグループ毎に飼育し、その後、(寝床と糞便が、開いた創傷部位に入るのを防ぐため)スチール製上床を備えたマイクロアイソレータ・ポリカーボネート展示ボックスケージで、(動物が互いの創傷を舐めたり噛んだりしないように)一匹ずつ飼育した。各動物に2箇所の創傷を作り、その結果、1グループあたりの創傷の数「n」は12となった。
【0141】
プロトコル
環境順化(5〜6日)後、ラットに、グリコピロレート(0.02mg/mLで0.01mg/kg)、一回分量0.5mL/kgを皮下注射し、ケタミン(40mg/kg)/キシラジン(5mg/kg)の混合物を45mg/mL(ケタミン)および5mg/mL(キシラジン)、一回分量0.88mL/kgで腹腔内投与して麻酔した。手術開始前に足指をつねって十分な麻酔深度を確かめ、何らかの動きが認められた場合はその動物に麻酔を足した。手術は、動物が十分に麻酔されてから開始した。一旦麻酔が完全にかかると、背面部を6×8cmの広さでした。剃毛後、剃毛部分に除毛剤(Nair)を適用し、約5分間皮膚上に放置した。この後、Nairを切れないヘラで皮膚から優しくすくい取り、脱イオン化した蒸留水で皮膚を洗い流し、ガーゼのスポンジで拭き取ることで残留物を全て取り除いた。その後、剃毛部分をクロルヘキシジンとアルコールで消毒し、手術に備えた。
【0142】
続いて、ラットをうつ伏せにし、肢がリラックスして脊椎が真っ直ぐになるように置いた。T字形の鋳型を、T字の軸が脊椎に沿い、T字の横木が肩甲骨の下角に沿うように背に当てた。ラットの右側に逆さまの「L」が現れ、動物の左側に逆さまで反転した「L」が現れるようにT字の内側の縁をシャーピーペンでなぞった。これらは、各創傷の頭側縁を肩甲骨角の後方約3cmに指定し、各創傷の内側縁を正中線から約0.25cmに指定するものである。
【0143】
創傷鋳型を作成するために、コーニング15ml円錐管のキャップの縁をその部分に置き、殺菌した手術用マーカーでなぞって上述した逆さまのLの一つの内側に2cmの円を作った。各円の内側縁に#10手術用メスで最初の切開を施した。皮筋を通って皮下疎性結合組織層を切開した。深筋膜層を傷つけないように注意しながら、鉗子とメッツェンバウム曲剪刀を使用して円の全周に沿って切開を続けた。皮膚を取り除き円形の創傷を作った。必要に応じて、無菌ガーゼで圧迫し止血を行った。
【0144】
試験物質、またはコントロールとしてビヒクルを、創傷床の3箇所の異なる部位に投与した。各処理での一回量のレベルとグループの割り当ては表8に詳述したとおりである。一回量のレベルは体重に基づいた。
表8
【0145】
創傷は、いかなる種類の包帯も付けなかった。覚醒(胸を地面につけて腹ばいになる姿勢および正常な動きで判断)後、約30分してから、動物にブプレノルフィン(0.1mg/kg)を皮下注射し、ステンレスのスチール製上床を備えた個別のケージに移した。必要に応じて6〜8時間毎にブプレノルフィンを追加投与し、その後72時間、必要に応じて6〜12時間毎に0.05mg/kgを投与した。
【0146】
創傷の感染およびストレスの表れについて動物を常にモニターするとともに、食欲減退、活性低下、だらりとした外観、および正常な水分補給ができないかしたがらないなど、いかなる疼痛および/または苦痛の表れについても動物をモニターした。不断給餌および給水した。
【0147】
手術後3、7および10日目にイソフルランで動物を麻酔し、創傷の幅および長さをカリパスで測定した。その後、測定した幅と長さを乗じて創傷面積を算出し、各処理ついて平均創傷面積と平均値の標準誤差を決定した。創傷治癒の、コントロールでの処理との有意な差異を調べるために、二元配置分散分析(ANOVA)試験を平均創傷面積に実施した。創傷面積に加えて、毎日創傷の色を観察して創傷治癒を評価した。創傷を、赤、茶、2つの事例で黒、または2つの事例でかさぶたの黄、のいずれかとして採点した。ここで、赤は茶よりも治癒の程度が低い。
【0148】
10日目に創傷を評価した後、安楽死溶液(Beuthanasia solution)(150mg/kg)を心臓注射して安楽死させた。創傷部位を収集し、10%中性緩衝ホルマリンで24時間保存し、その後80%エタノールに移した。
【0149】
結果
表9は、手術後3、7および10日後の、各処理グループについての平均創傷面積を示す。同じデータを図8にグラフで示す。二元配置ANOVA試験を用いたデータの分析によって、PGEアナログおよびGMCSFの、創傷治癒への相乗作用が明らかとなった(表10)。PGEアナログ(16,16−ジメチルPGE)およびGMCSFの組み合わせによる処理を受けて、創傷面積は術後3日目でコントロールに比べて有意に縮小した。創傷をPGEアナログまたはGMCSF単独で処理した場合、創傷面積に有意な差異は観察されなかった。
【0150】
図9は、4つの処理のそれぞれについての手術後3日目の創傷面積の差異を示す。二元配置ANOVA分析によって決定したように、PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせの結果のみが、創傷面積が有意に縮小した。
【0151】
図10は、4つの処理物のそれぞれを投与したラットについて、創傷の色を毎日観察した結果を示す。PGEアナログ、GMCSF、またはアナログおよびGMCSFの組み合わせを投与した場合、全て創傷治癒が加速され、3〜5日目はコントロールで処理した場合に比べてより一貫して茶の採点が多かった。さらに、PGEアナログおよびGMCSF間の相乗作用が、9および10日目に明らかになった。9および10日目は、グループ3(=3)およびグループ1および2(=2)と比較して処理グループ4(=9)において、より一貫性のある茶の採点が見られた。
【0152】
表9
創傷治癒の経過における、処理の比較。平均創傷面積および標準誤差を、3、7および10日目に測定し、各処理について一覧にした。使用したPGEアナログは16,16−ジメチルPGEである。
【0153】
表10
PGEアナログ、GMCSF、またはPGEアナログとGMCSFの組み合わせのそれぞれを創傷に投与したとき、コントロールと比べて創傷治癒の進行に何らかの有意な差異があるか調査する、表9の平均創傷面積の二元配置分散分析(ANOVA)による分析結果。3、7および10日目の創傷面積のコントロールとの差異、ANOVA分析からのt値、およびその結果に対応する有意性を、各処理について一覧にした。
【0154】
考察
PGEおよびGMCSFがインビボで創傷治癒に与える影響を決定するために、本発明者は、創傷治癒のラットモデルに実験を行った。本発明者は、異なる処方、つまりPGEアナログ(16,16−ジメチルPGE)、GMCSF、およびPGEアナログおよびGMCSFの組み合わせを創傷に投与したときの効果を調査し、手術後3、7および10日目にコントロールと比較して創傷面積を検討した。また、創傷の色を赤または茶として毎日採点し、赤い創傷は茶色の創傷よりも治癒の程度が低い。
【0155】
本発明者は、3日目にPGEアナログとGMCSF間に著しい相乗作用があり、コントロールと比べて創傷面積に有意な縮小が見られることを発見した。PGEアナログまたはGMCSFを単独で使用した場合、創傷面積に有意な差異は見られなかった。手術後7または10日目のいずれかでは、コントロールと比べて創傷面積に有意な差異は観察されなかった。使用したモデルは健常なラットの創傷治癒モデルであったため、7および10日目には非処理ラットの創傷治癒が十分に進み、いかなる差異も隠れてしまったものだろうと本発明者は考える。一方、3日目、創傷治癒の第一段階の間、PGEおよびGMCSFで処理した創傷の治癒プロセスは、通常のラットのそれと比較してはるかに進行が早く、創傷面積に有意な差異が見られた。
【0156】
同様に、本発明者の色の観察による創傷治癒の評価においても、創傷治癒の加速におけるPGEアナログおよびGMCSF間の相乗作用が示された。特に、手術後9および10日目に、PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせを投与された創傷は、より一貫した茶の採点を受け、したがって、いずれかの処理物のみで処理された創傷よりも治癒の程度が高かった。
【0157】
総合すると、これらの結果は、創傷へのPGEおよびGMCSFの組み合わせの投与が治癒プロセスを加速することを裏付ける。本発明者は、PGEおよびGMCSFの投与は、実施例1で実証したように創傷修復の第一段階に似たケモカイン誘引によって構築される創傷治癒促進環境を作り出すことによって、創傷治癒を加速すると考える。
【0158】
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Wong他 (1985), “Human GMCSF: molecular cloning of the complementary DNA and purification of the natural and recombinant proteins” Science 228 (4701): 810-815.
【0159】
表2
何の処理も受けなかったコントロールmRNAで、1%ヒト精漿(HSP)+GMCSFで処理したML1細胞からのmRNAを除した、発現の順位付け。32,800の遺伝子のうち上位32の遺伝子を順に示す。ケモカインは太字で記す。
3列目の発現「F」は、ホルスコリン+GMCSFの存在下での発現である。4列目の「コントロール」は、処理なしでの発現である。5列目の「処理」とは、HSP+GMCSFでの処理である。8列目の「種類」は、ケモカインの種類である。9列目の「α種類」とは、αケモカインの種類である。
【0160】
表3
コントロール(処理なしのmRNA発現)で、PGE+GMCSFおよび1%HSP+GMCSFで処理したML1細胞からのmRNAを除した、発現の順位付け。32,800の遺伝子を、PGE+GMCSF/コントロールによって順位付けした上位32の遺伝子を示す。ケモカインは太字で記す。
3列目の「コントロール」は処理なしでの発現である。4列目の処理「P」は、PGE+GMCSFで処理したときの平均的な発現である。5列目の処理「H」は、HSP+GMCSFで処理したときの平均的な発現である。6列目の比率「P」は、処理PGE/コントロールである。7列目の比率「H」は、処理HSP/コントロールである。9列目の「種類」は、ケモカインの種類である。10列目の「α種類」とは、αケモカインの種類である。
【0161】
表3に示したデータと同じであるが、PGE+GMCSFで処理した後の発現レベルによって順位付けした。
【0162】
表5
ヒト精漿およびGMCSFで処理したML1細胞において上方に異なって発現した遺伝子。一覧に挙げた遺伝子は全て、16から4の間のB値(異なって発現する確率の対数)を有する。遺伝子を、コントロールに対する対数[塩基2]の倍増によって順位付けした。ケモカインは太字にしている。
【0163】
表6
PGEおよびGMCSFで処理したML1細胞において上方に異なって発現した遺伝子。一覧に挙げた遺伝子は全て、16から4の間のB値(異なって発現する確率の対数)を有する。遺伝子を、コントロールに対する対数[塩基2]の倍増によって順位付けした。ケモカインは太字にしている。
【0164】
表7
処理1対コントロール、処理2対コントロール、および処理1対処理2に関する、ML細胞において上方に異なって発現した遺伝子が関与する経路。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】Genbank登録番号NM_000758から取得したcDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ図1A(配列番号1)および図1B(配列番号2))。
【図2】GMCSF+PGE[処理1]およびコントロール(グループ2−グループ1)と、GMCSF+HSP[処理2]およびコントロール(グループ3−グループ1)と、GMCSF+HSP[処理2]およびGMCSF+PGE[処理1](グループ3−グループ2)の処理間で異なって発現した遺伝子における重複を示すベン図。
【図3】GMCSFと組み合わされたときのPGEおよびヒト精漿の両方のCXCL8(IL−8)に対する相乗作用を示すグラフ。CXCL8(CCL8)mRNA発現と、48時間にわたる細胞からのCXCL8タンパク質の放出が、この相乗効果を示す。
【図4】ヒト精漿(HSP)およびGMCSFの低分子量分画の、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフ。
【図5】PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球U937細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフ。GMCSFおよびPGEに応答してのケモカインCXCL8およびCCL2の放出は、ヒト精漿によるGMCSFの相乗効果がPGEによって再現されることを示す。GMCSFおよびPGEはまた、可溶CD14およびIL−10の放出に対して相乗効果を持つ。
【図6】PGEおよびGMCSFによる前処理の、ML1細胞におけるIL−8およびCOX−2の発現に対する効果を示すグラフ。細胞を、GMCSFと共にPGEを添加してまたは添加なしで、48時間インキュベートした。前処理物を取り除き、細胞を洗浄し、その後3つのさらなる処理物:コントロール、PGEおよびGMCSF、およびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA、単球の安定した分化作用剤)を加えた。さらに48時間インキュベーションを続けた。PGEおよびGMCSFによる前処理の効果は、PMAに露出した後4日間の最後の時点で持続している。
【図7】PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球ML1細胞でのpro−血小板塩基性タンパク(PBP)遺伝子(CXCL−7と称する)の発現に対する相乗作用を示すグラフ。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、発現アレイにおいて見られた効果が本当の相乗効果であることを表す。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、コントロールの3725倍増加した。GMCSFおよびPGEはまた、IL−10発現に対しても相乗効果を持つが、pro−PBPの場合よりも程度が低い。
【図8】ヒトの創傷における創傷治癒の特徴としての好中球および単球の両方の出現を示すEngelhardt他(1998)に基づくグラフ。
【図9】創傷治癒のラットモデルにおいて、手術後3、7および10日に4つの異なる処理物を投与したときの創傷面積の測定結果を示すグラフ。
【図10】創傷治癒のラットモデルにおいて、手術後3日に4つの異なる処理物を投与したときの創傷面積の測定結果を示すグラフ。アステリスクは、コントロールで処理したラットと比較して、PGEおよびGMCSFの組み合わせで処理したラットにおいて創傷面積が有意に縮小したことを示す。PGEまたはGMCSFがいずれか一方が投与されたラットにおいては、有意な縮小は見られなかった。
【図11】4つの処理物のそれぞれを投与したラットにおける創傷の一日毎の色観察結果を示す表。創傷は赤(R)、茶(B)、黒またはかさぶたの黄(Y)のいずれかで採点され、ここで、赤は茶より治癒の程度が低いことを示す。この表は、9および10日目のPGEおよびGMCSF(処理4)の効果を示し、コントロールで処理したラット(処理1)、またはPGEまたはGMCSFのいずれか一方が投与されたラットよりも、茶の採点が多かった。
【発明の開示】
【0001】
本発明は治療用組成物、方法および使用、特に創傷治癒のための方法および組成物に関する。
【0002】
創傷治癒のプロセスは、一般的に、炎症/浸出段階、増殖段階、そして分化段階の3段階からなると考えられる。およそ4日目まで続く最初の段階は、重要な意味を持ち、出血の防止、サイトカインおよび透過性エンハンサーの放出(局所浮腫をもたらす)、および細胞浸透を含む。最初に出現する主な細胞型はVEGFを分泌する血管形成好中球である(Gargett他, 2001; Mueller他, 2000)。主な好中球誘引剤CXCL8(IL−8)もまた、必ずしも直接的でないが血管形成に関与する(Strieter他, 1992; Strieter他, 1995)。血管形成は創傷修復に不可欠であり、血管新生は修復プロセスの後期と関連するが、CXCL8の遅発効果が必須と考えられる(Engelhardt他, 1998)。
【0003】
好中球浸潤はマクロファージ数のより長期的な増加を伴う。CCL2(MCP−1)の発現は、実験的創傷後、最初の24時間で上昇し、一旦損傷部位に出現した後マクロファージに分化する血中単球の流入と関連する(Engelhardt他, 1998)。これは、創傷修復が欠損したCCL2ノックアウトマウスで確認されている(Low他, 2001)。
【0004】
ケモカインCCL−3(MIP−1α)もまた、マウスモデルに見られたように創傷修復に重要な役割を果たすようである(DiPietro, 1998)が、ノックアウトマウスは修復になんら明白な欠損がなかった(Low他, 2001)。
【0005】
ケモカインCXCL7(NAP−2)、結合組織活性化ペプチドIII(CTAPIII)、およびβトロンボグロブリン(BTG)はそれぞれ共通前駆体、翻訳後タンパク質分解による血小板塩基性タンパク(PBP)に由来する。CXCL7およびCTAPIIIはいずれも創傷治癒の早期段階に関与し(Proudfoot他, 1997)、BTGは繊維芽細胞について走化性が高く、やはり創傷治癒に重要である(Senior他, 1983)。
【0006】
ケモカインは通常、前炎症性とみなされる。しかし、損傷への免疫応答において、ケモカインは関連する食細胞およびサイトカイン分泌細胞を誘発し、デブリドマンおよび創傷修復の両方において極めて重要な役割を果たす。プロスタグランジンE(PGE)は、好中球の組織内への誘引においてIL−8(CXCL8)と相乗作用するため、ケモカインとの相互作用において複数の役割を果たすようである。ケモカイン合成において、PGEはCCL3とCCL4のリポ多糖体誘発合成を抑制するとして報告されており(Jing他, 2004)、PGEはケモカイン合成において抑制作用を有すると期待されうる。
【0007】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)は、顆粒球とマクロファージ系列の成熟において重要な役割を持つ。GMCSFは治療薬とも治療の標的とも見なされてきた。組み換えヒトGMCSFは、いくつかの癌の治療、および骨髄移植後の造血再構成の促進に用いられてきた(Leukine(登録商標), Package Insert Approved Text, February 1998, and Buchsel et al, 2002)。一方、他の最近の報告では、GMCSFを、炎症性および免疫疾患(Hamilton, 2002)および喘息(Ritz他, 2002)の治療の潜在的標的とする記述もある。
【0008】
本発明者は以前、IL−10合成の刺激とIL−12の阻害における、GMCSFと、単球においてcAMPレベルを上昇させるプロスタグランジン、例えばPGEとの強制的な相乗作用を実証した(Grant et al, 2005; WO 2004/035083)。この相乗作用は、EP2および/またはEP4レセプターを介してcAMPレベルを上昇させるPGEの能力によるものであった。PGEとGMCSFの作用に応答して適切にプログラムされた単球/マクロファージによって提供された、IL−10が高くIL−12が低い環境は、免疫寛容を誘発する。加えて、本発明者は以前、免疫寛容を誘発するこのPGEとGMCSFの組み合わせは、幹細胞と共に様々な治療目的で使用できることを実証した(Grant et al, 2005; WO 2005/044298)。
【0009】
Sheibanie他(2004)は、樹状細胞におけるPGEとGMCSFとの相乗作用を報告し、関節リウマチといった自己免疫疾患に対する併用療法を提案した。この論文は、比較的新しく発見されたサイトカインであるが他の何よりもIL−12のように見えるIL−23との組み合わせの効果をテーマにしている。
【0010】
ヒトの精漿中にEシリーズのプロスタグランジンが多く含まれていることから、これらの物質は精液沈着後の女性生殖器官の細胞の免疫プログラミングへの重要な寄与因子らしいことが認識されてきた。明らかに精子は種の存続に重要であるゆえに、進化的圧力により、致死的な免疫応答がこれらの同種異系の侵入者に向けられることがないことが保証されたのだろう。実際、免疫認識と精子の受容はまた、栄養膜への侵入による母体の血管の十分なコロニー形成を容易にしうる(Robillard他, 1994)。精子の免疫学的受け入れは、進化のどこかの時点で、男性または女性生殖管のいずれかで慢性感染が現れたとき、または繰り返されたとき、特に困難であっただろう。(精液および他のどこかからの)プロスタグランジンのさらに微妙な作用は、上皮細胞と固有層(lamina propria)の細胞とによって引き起こされた、GMCSFとの相互作用に伴って生じる。精液沈着した場合、GMCSF合成は、ヒト精漿において高レベルで見られるTGFβの作用によってより良く刺激されうる(Robertson & Seamark, 1990)。
【0011】
この免疫学的受精試験の延長で、本発明者はヒト精漿(HSP)とGMCSFの組み合わせの、単球細胞モデル(ML1細胞)における32,800の遺伝子の発現に対する影響を調査した。予期せぬことに、本発明者は単球細胞からのケモカイン放出の顕著な刺激があることを発見した。驚くべきことに、発現が最も増加した3つの遺伝子はCXCL8、CCL2、およびpro−PBPであった(表2参照)。本発明者は、PGEとGMCSFを用いてマイクロアレイ発現試験を繰り返し、単球細胞からのケモカイン放出の刺激に類似パターンを発見した。この試験において、CXCL8、CCL2、およびpro−PBPは、発現レベルが上昇した上位8個の遺伝子に含まれた(表3参照)。CXCL8、CCL2、およびpro−PBPの発現増加は、PGEとGMCSFの相乗効果に起因するタンパク質放出試験とRT−PCRによって確認された(実施例1参照)。
【0012】
表2はまた、GMCSFとの組み合わせにおけるcAMP上昇剤ホルスコリンに対する応答の相対的欠如を示す(3列目、5列目参照)。よって、CXCL8、CCL2、およびpro−PBPの発現増加は、第一に細胞内cAMPの増加によるものではなく、したがって、pro−耐性サイトカインIL−10の発現増加を引き起こすものとは異なるメカニズムの結果であるように見える。
【0013】
PGEおよびGMCSFによるケモカイン誘発パターンは、創傷修復の第一段階の終期に似ているため、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが創傷修復の加速または促進に利用できることを、創傷治癒のラットモデルにおいて理解した。学説に縛られることなく、本発明者は、PGEとGMCSFは単球を、CXCL8、CCL2およびCXCL7放出の増加を特徴とするpro−創傷治癒表現型に極性化すると考える。加えて、PGEとGMCSFの効果は、これらの物質の除去後、延長および持続し、よって細胞は選択的に分化する。
【0014】
特に、治癒の遅い創傷、例えば血管新生に乏しい皮膚部分の創傷の治癒が、PGEとGMCSFの局所投与によって加速または促進されうる。また、老人など、CXCL8、CCL2およびCXCL7等のサイトカイン分泌能が最適でないため白血球を誘引せず、創傷組織から治癒誘発サイトカインが奪われる患者の創傷は、この治療が有益である。実際、それ以外は健康な患者において皮膚創傷および外科手術による創傷など、より広い範囲の用途で、創傷治癒の加速に適用されている。また、クローン病または潰瘍に関連するような胃腸障害での創傷修復を加速または促進できるとも考えられる。
【0015】
本発明者が認識する限り、PGEとGMCSFの組み合わせが、CXCL8、CCL2およびPBP−CXCL7の発現、および/または単球細胞での放出を刺激するために利用可能であるという示唆はこれまでに一度もなく、この組み合わせを用いてCXCL8、CCL2およびPBP−CXCL7を刺激する処方計画を示唆するものもなかった。
【0016】
さらに、本発明者が認識する限り、PGEとGMCSFの組み合わせが、創傷治癒に治療的に有用でありうるという示唆もこれまでなかった。
【0017】
また、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが、単球細胞においてCOX−2、CD14およびカルグラヌリンAおよびBの発現を増加することを示す。COX−2は、PGEおよびGMCSF除去後のpro−創傷治癒表現型の持続に関与すると考えられる一方で、CD14は分化マーカーであり、より分化した状態の証拠である。カルグラヌリン(S100タンパク質)はまた、天然の抗菌剤であり、天然の抗菌作用がうまく創傷治癒を助けると思われるため、創傷治癒に適切である。さらに、本発明者は、PGEとGMCSFの組み合わせが、いずれも創傷治癒プロセスの要素である血管形成とNotchシグナリングに関与する遺伝子の発現を促進するという証拠をここで提供する。
【0018】
本発明の第一の態様は、(i)プロスタグランジンE(PGE)またはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)またはその誘導体を患者に投与することを含んでなる、患者における創傷治癒を促進する方法を提供する。
【0019】
「創傷治癒を促進する」とは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの局所濃度または効果を増加する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体が、創傷の治癒を加速または促進する創傷部位においてサイトカイン環境を提供することを意味する。言い換えれば、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの局所濃度または効果を増加する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、創傷治癒の第一段階に必要なCXCL8、CCL2およびCXCL7といったサイトカインの放出を刺激し、よって創傷治癒を促進する。創傷治癒の第一段階は、およそ4日目まで続く。したがって、最初の4日目までに創傷治癒を加速することで、創傷治癒が促進される。
【0020】
さらに、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体の組み合わせによって誘引された白血球もさらにPGEに富んだ環境により分化され、好中球の低減または活性化の変化がもたらされ、これは創傷治癒に有利である。
【0021】
プロスタグランジンE(PGE)は、プロスタグランジンE1(PGE1)およびプロスタグランジンE2(PGE2)を意味する。PGE2は、例えばPharmacia and UpjohnからProstin E2として市販されている。
【0022】
PGEアゴニストは、そうである必要はないが、EP2またはEP4レセプター等のEPレセプターに結合するプロスタノイドであってよい。GMCSFと、アデニル・シクラーゼとタンパク質キナーゼA経路の刺激因子であるホルスコリンとの組み合わせは、表2に示すようにpro−創傷治癒サイトカインのレベルの上昇に全く役立たないので、PGEとGMCSFの効果は、cAMPレベルの上昇だけによるものではない。よって、PGEまたはそのアゴニストは、必ずしも、通常PGE類に用いられるレセプターであるEP2またはEP4レセプターを介して作用するわけではないだろう。学説に縛られることなく、本発明者は、PGEが一度に一以上のEPレセプター(EP1、EP2およびEP4レセプターを含む)に、または異なるプロスタグランジンレセプターを介して、または異なる経路を介してEP2またはEP4レセプターに作用しうると考える。
【0023】
PGEアゴニストとは、EP1、EP2、EP3またはEP4レセプターといった、プロスタグランジンEレセプターに対してPGEアゴニストとして作用する任意の化合物を意味する。好ましくは、PGEアゴニストはPGE2の類似体である。合成類似体は、メチル基の追加によって位置15または16で修飾されたもの、またはヒドロキシルが位置15から16に転位したものを含む。好ましくはPGEの類似体は、例えば16,16−ジメチルPGEおよび19−ヒドロキシPGE(19−OH PGE1および19−OH PGE2の両方)である。誤解を避けるために、PGEなる用語は、合成PGE類似体と同様に天然由来のPGE類も含む。
【0024】
適切なPGE類またはそのアゴニストとしては、ジノプロストン(欧州のFerringおよび米国のForestからPropessとして販売;PharmaciaからプロスチンE2として販売)、ミソプロストル(Searle and PharmaciaからCytotecとして販売)、アルプロスタジル(PharmaciaからCaverject、SchwarzからViridal、そしてAstraZenecaからMUSEとして販売)、およびリマプロストが挙げられる。
【0025】
ミソプロストルは、EP2およびEP3アゴニスト効果を持つPGE類似体である。その化学構造は(±)メチル11α,16−ジヒドロキシ−16−メチル−9−オクソプロスト−13−エノアートである。
【0026】
好適なPGEアゴニストはEP1097922およびEP1114816に記載されており、参照によりここに組み込む。他の適切なPGEアゴニストとしては、US特許第4,127,612号に記載の19−OH PGE類似体のいずれかが挙げられ、参照によりここに組み込む。
【0027】
PGEの局所濃度を上昇させる作用剤とは、例えば酵素活性またはPGE前駆体の局所濃度を上昇することでPGEの合成を増強する作用剤、PGEの異化を阻害する作用剤、またはPGEの創傷部位への誘引に役立つ作用剤を意味する。PGEの効果を増大する作用剤とは、例えばPGEレセプターの数を増加する作用剤である。
【0028】
PGEの合成を増強する適切な作用剤としては、シクロオキシゲナーゼ1および2のアクチベーター、および全てのプロスタグランジンの前駆体であるアラキドン酸を生成するホスホリパーゼのアクチベーターが挙げられる。PGEの異化を阻害する適切な作用剤としては、プロスタグランジン・デヒドロゲナーゼ(PGDHs)のインヒビターが挙げられる。作用剤はPGDHのインヒビターであることが好ましい。適切なPGDHのインヒビターとしては、上皮成長因子(EGF)(Mann他, 2006)およびペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)アゴニスト(Cho and Tai, 2002)がある。PPARアゴニストの創傷治癒への関与は最近立証された。特に、ピオグリタゾンが胃保護および潰瘍治癒特性を示すことが明らかとなった(Brzozowski他, 2005)。加えて、EGFは創傷治癒を加速することが実証され(Tanaka他, 2005)、足の糖尿病性壊疽の治癒を増強することが示された(Hong他, 2006)。
【0029】
「GMCSF」には、ヒトGMCSF遺伝子の遺伝子産物とその天然由来の変異体が含まれる。ヒトGMCSFのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Genbank登録番号NM_000758で見られ、図1(それぞれ配列番号:1および2)に示す。いくつかのGMCSF天然由来変異体もNM_000758に記載されている。GMCSFはまたコロニー刺激因子2(CSF2)としても知られる。
【0030】
本発明は、野生型GMCSFの生物活性を保持する、つまりそれらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こすGMCSF誘導体を使用することを含む。
【0031】
GMCSFの「誘導体」とは、その類似体のフラグメント、融合または修飾、またはそのフラグメントの融合または修飾を含む。
【0032】
GMCSFの「フラグメント」とは、それらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こす糖タンパク質のいずれかの部分を意味する。典型的には、フラグメントは、全長GMCSFの少なくとも30%の活性を有する。好ましくは、フラグメントは、全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、フラグメントは全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0033】
誘導体は、タンパク質化学技術を用いて、例えば部分的タンパク質分解によって、またはデノボ合成によって製造できる。あるいは、誘導体は組み替えDNA技術によって製造できる。核酸のクローニング、操作、修飾および発現、および発現したタンパク質の精製のための適切な技術は当業者にはよく知られており、例えばSambrook他 (2001) “Molecular Cloning, a Laboratory Manual”, 3rd edition, Sambrook他(編), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されており、参照によりここに組み込む。
【0034】
本発明はまた、それらの前駆細胞から顆粒球およびマクロファージの産生を刺激し、そしてPGEの存在下で相乗的に単球のCXCL−8(IL−8)発現を引き起こす、全長GMCSFまたはそのフラグメントの修飾体を含む。
【0035】
このような修飾体は、糖タンパク質の完全または部分的な脱グリコシルを含む。他の修飾体は、天然由来のヒトGMCSFに見られるものと異なる糖鎖付加パターンを持つ、全長GMCSFまたはそのフラグメントを含む。
【0036】
全長GMCSFまたはそのフラグメントの他の修飾体は、一以上の位置での、保存的または非保存的なアミノ酸挿入、欠失、および置換を含む。こういった修飾体はGMCSFの類似体と呼ばれうる。「保存的置換」とは、Gly, Ala; Val,Ile, Leu; Asp, Glu; Asn, Gln; Ser, Thr; Lys, Arg;およびPhe, Tyrといった組み合わせを指す。このような修飾体は、Sambrook他, 2001, 上掲に記載のように、タンパク質工学法および部位特異的突然変異誘発法を利用して製造できる。好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFまたは各GMCSFフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を保持する。より好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFまたは各GMCSFフラグメントと少なくとも91%、92%、93%、94%、または95%の配列同一性を持ち、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を保持する。好適には、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFの少なくとも30%の活性を有する。好ましくは、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは、全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、修飾GMCSFまたは修飾GMCSFフラグメントは全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0037】
本発明はまた、全長GMCSFまたはそのフラグメントの他の化合物への融合を使用することを含む。好ましくは、融合は全長GMCSFの活性の少なくとも30%を有する。より好ましくは、融合は全長GMCSFの活性の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、さらに好適には少なくとも90%を有する。最も好適には、融合は全長GMCSFの100%かそれ以上の活性を有する。
【0038】
GMCSFおよびその類似体は、以下の出版物に記載されており、それぞれを参照によりここに組み込む:US特許第5,229,496号(Deeley他);US特許第5,391,485 号(Deeley他);US特許第5,393,870号(Deeley他);US特許第5,602,007号(Dunn他);Wong他, 1985;Lee他, 1985;Cantrell他, 1985;およびMiyatake他, 1985。
【0039】
上述したようにGMCSFはヒトGMCSFであることが好ましいが、GMCSFとは他種由来のGMCSFも含む。GMCSFをヒト以外の対象に投与する場合、GMCSFはその対象と同種由来のものであることが好ましい。GMCSFがヒトを対象として投与される場合、そのGMCSFはヒトGMCSFまたはその誘導体であることが好ましい。
【0040】
本発明の実施に好適なGMCSFは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LL, カタログ番号300-03から入手可能である。
【0041】
本発明の実施に好適なGMCSFは、サルグラモスティム(sargramostim)、Immunex, Inc.により製造されLeukine(登録商標)の商品名で販売されている酵母由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。Leukine(登録商標)は、S.セレヴィシエ発現系で産生される組み換えヒトGMCSFである。Leukine(登録商標)は、19,500、16,800および15,500ダルトンの分子量を有する3プライマリー分子種を特徴とする127アミノ酸のグリコプロテインである。Leukine(登録商標)のアミノ酸配列は、位置23でロイシンに置換されて天然ヒトGMCSFと異なり、炭水化物成分が天然タンパク質と異なりうる。Leukine(登録商標)は、皮下または静脈投与に適している(Leukine(登録商標)Package Insert Approved Text, February 1998)。
【0042】
本発明の実施に適した他のGMCSFは、モルグラモスティム(molgramostim)、Leucomax(登録商標)(Schering-Plough)の商品名で販売されている大腸菌由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。Leucomax(登録商標)は、大腸菌発現系で産生される組み換えヒトGMCSFである。Leucomax(登録商標)は、水溶性の、14,477ダルトンの分子量を有する127アミノ酸の非グリコシル化タンパク質である。Leucomax(登録商標)のアミノ酸配列は、位置100でイソロイシンに置換されて天然ヒトGMCSFと異なる。Leucomax(登録商標)は、粉末として利用可能であり、一旦再構成されると皮下または静脈投与に適している(Leukomax(登録商標) Data Sheet, November 2002)。
【0043】
本発明の実施に適したさらなるGMCSFは、レグラモスティム(regramostim)、CHO由来の組み換えヒトGMCSFの正式名称、である。レグラモスティムは、サルグラモスティムより高くグリコシル化された127アミノ酸の組み換えヒトGMCSFである。
【0044】
典型的には、GMCSFまたはその誘導体が組み換え技術によって産生される場合、それは産生元の細胞から精製されてできる。よって、本発明の実施形態では、細胞が患者に投与されることはない、つまり創傷治癒を促進するために投与される治療用組成物に細胞は存在しない。
【0045】
GMCSFおよびその誘導体は、ポリペプチド(グリコシル化されているか否かは問わず)として患者に投与される。あまり好ましくない実施形態では、GMCSFまたはその誘導体は、GMCSFまたはその誘導体をコード化するポリヌクレオチドの形態で患者に投与してよい。あるいは、GMCSFまたはその誘導体は、GMCSFまたはその誘導体をコード化するポリヌクレオチドの形態で患者に投与されない。
【0046】
そうでないことを示さない限り、「GMCSF」なる用語を使用している場合、ここで定義したような誘導体が含まれる。
【0047】
投与するPGEまたはそのアゴニストの適切な用量は、典型的に0.01〜100μgの範囲である。好ましくは、PGEまたはそのアゴニストの量は、0.05〜50μgの範囲である。典型的には、0.1〜5μg、または5〜20μg、または20〜50μgが投与されうる。PGEの効果または局所濃度を増大する適切な用量の作用剤が医師により投与されてもよい。典型的には、その量は0.01〜100μgの範囲である。
【0048】
投与するGMCSFまたはその誘導体の適切な用量は、典型的に0.01〜400μgの範囲である。好ましくは、GMCSFまたはその誘導体の量は、0.05〜200μgの範囲である。典型的には、0.1〜5μg、または5〜50μg、または50〜200μgが投与されうる。
【0049】
好ましくは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体の一方または両方が、患者の創傷部位に局所投与される。より好ましくは、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体が患者の創傷部位に局所投与される。
【0050】
好適な実施形態で、治療する創傷は、無菌創傷である、つまり創傷は感染性でない。創傷が感染性である場合、例えば抗菌剤の投与によって殺菌できる。しかしながら、もちろん、無菌創傷の治療でも感染を防ぐために抗菌剤を使用できる。
【0051】
よって、典型的には、本方法はさらに、患者に抗菌剤を投与することを含んでなってよい。ある実施形態で、抗菌剤は患者の創傷部位に局所投与される。適切な抗菌剤には、当業者には周知のように、抗バクテリア剤、抗真菌剤、および抗ウイルス剤が含まれる。抗バクテリア剤としては、例えば、天然および合成ペニシリンおよびセファロスポリン、スルホンアミド、エリスロマイシン、カナマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシンが挙げられ、および、ゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシ−メチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、塩酸バカンピシリン、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、塩酸タランピシリン、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、セフピロム、ラタモキセフジソジウム、アズトレオナム、グリシルサイクリン系のもの、塩酸クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンナトリウム、塩酸デメクロシジン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、硫酸フラマイセチン、硫酸ネオマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、フピロシン、硫酸ポリミキシンB、スペクチノマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、スルファルオキサートカルシウム(calcium sulphaloxate)、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファウレア、カプレオマイシン、メトロニダソール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、硫酸コリスチン(colistimethate)、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、シクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジンアミド、メロペネム、イミペネムなどを含み;抗真菌剤としては、例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、ニスタチンなどが挙げられ;そして、抗ウイルス剤としては、アシクロビア、AZT、ddI、塩酸アマンタジン、イノシンプラノベクス、ビダラビンなどが挙げられる。
【0052】
本方法はまた、患者の創傷部位に、鎮痛剤または麻酔剤を局所投与することを含みうる。適切な鎮痛剤としては、サルチル酸メチル、サリチル酸、ジクロニン、およびアロエベラがある。適切な局所麻酔剤としては、ベンゾカイン、リドカイン、キシロカイン、またはブタンベンピクラート(butamben picrate)がある。
【0053】
好適な実施形態において、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、ここで記述した他の任意の活性剤のいずれかと共に、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤(その組み合わせを含む)を含む医薬組成物として投与される。担体、希釈剤、または賦形剤は、本発明の活性作用剤と適合し、受容体に有害でないという意味で「許容可能」でなくてはならない。典型的に、担体は無菌で発熱物質のない生理食塩水または水である。治療的に使用する許容可能な担体または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, 2005, ISBN: 0-7817-4673-6)に記載されている。医薬担体、賦形剤、または希釈剤は、意図する投与ルートおよび標準的な薬務を考慮して選択できる。
【0054】
医薬組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適切なバインダー(類)、潤滑剤(類)、懸濁化剤(類)、コーティング剤(類)、または可溶化剤(類)からなってよい。保存料、安定剤、染料、および着香料でさえ医薬組成物の形態で提供されうる。保存料としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびパラオキシ安息香酸エステル類がある。抗酸化剤および懸濁化剤も使用できる。
【0055】
典型的に、本方法は、外傷の治癒の促進に使用できる。
【0056】
当該実施形態で、本方法はさらに、患者の創傷部位に皮膚透過性エンハンサーを局所投与することを含んでなってよい。皮膚透過性エンハンサーとは、活性剤(類)の経皮トランスファー、デリバリー、または浸透の増加を可能にする作用剤、または分散剤を意味する。適切な皮膚透過性エンハンサーは、ジメチル・スルホキシド(DMSO)などである。適切な皮膚透過性エンハンサーは、PGEまたはそのアゴニストおよび/または、GMCSFまたはその誘導体と適合するもの(例えばその溶剤)である。
【0057】
本発明の実施形態においては、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体、および任意で、抗菌剤および/または鎮痛剤および/または麻酔剤および/または皮膚透過性エンハンサーを、創傷治癒の促進のための単独活性剤として投与する。
【0058】
通常、上述した活性剤のいずれかまたは全て(PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体、および任意の皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および麻酔剤)を創傷治癒および健常な皮膚発生のために局所投与することができる。活性剤は、スプレー、泡、粉末、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、または溶剤として、選択された組織に直接または間接的に任意の手段によって局所投与されうる。ローション、クリーム、ゲル、およびペーストなる用語には、粘性の塗り広げることができる組成物および軟膏、例えば多くの場合皮膚に直接適用されるもの、または包帯や創傷包帯に塗り広げられるもの、が含まれる。活性剤は、皮膚被覆材または創傷包帯に共有結合しているか、安定的に吸収されているか、そうでなければ塗布されていてよい。外科手術後の治癒を容易にするために、活性剤は標的組織または人工器官に直接適用されてもよい。組成物は、泡または霧状で他の薬剤と共に皮膚または創傷に直接エアロゾル投与できる。
【0059】
医薬剤形でのPGEまたはそのアゴニストの適切な濃度は、典型的には0.01〜100μg/mlの範囲である。好ましくは、PGEまたはそのアゴニストの濃度は0.05〜50μg/mlの範囲である。より好ましくは、0.1〜1μg/ml、または1〜10μg/ml、または10〜20μg/mlの濃度が採用されうる。PGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の適切な濃度は、典型的には0.01〜100μg/mlの範囲である。
【0060】
医薬剤形でのGMCSFまたはその誘導体の適切な濃度は、典型的には0.01〜50μg/mlの範囲である。好ましくは、GMCSFまたはその誘導体の濃度は0.05〜25μg/mlの範囲である。より好ましくは、0.1〜1μg/ml、または1〜10μg/ml、または10〜20μg/mlの濃度が採用されうる。
【0061】
スプレー、泡、粉末、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、および溶剤の薬剤調製は当業者に極めて周知である(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, 2005, ISBN: 0-7817-4673-6参照)。
【0062】
US特許第6,251,423号(Smith & Nephew)には、患者に局所適用、または包帯または創傷包帯の表面に塗布できる殺菌可能なペーストまたはクリーム剤形が記載されている。
【0063】
適切な創傷包帯は当業者に極めて周知で、いくつかが例えばUS特許第6,191,335号;5,792,089号;5,662,924号および4,460,369号(Smith & Nephew)に記載されており、それぞれを参照によりここに組み込む。創傷包帯は、例えばHarvey 2005;Vermeulen他, 2005;Menaker, 2004;およびLionelli & Lawrence (2003)にて確認され、それぞれを参照によりここに組み込む。
【0064】
他の実施形態において、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、他の任意の活性剤のいずれかと共に、フィブリン接着剤などの組織シーラントの成分として投与されうる。フィブリン接着剤は一般的に:(1)フィブロネクチン、XIII因子、およびフォン・ヴィレブランド因子を含む濃縮フィブリノゲン;(2)乾燥ヒトまたはウシトロンビン;および(3)カルシウムイオンから調製される。市販のフィブリン接着剤は多くはウシ成分を含みうる。濃縮フィブリノゲンは、寒冷沈降反応とその後の分画によって血漿から調製でき、トロンビンおよびカルシウムイオンといったトロンビンアクチベーターと混合してシーラントまたは血栓を形成する組成物を産出する。濃縮フィブリノゲンおよびトロンビンは、凍結乾燥の形態で調製され、使用直前に塩化カルシウム溶液と混合される。混合後、当該成分が組織に適用されると、組織表面上で凝固し、架橋フィブリンを含む血栓を形成し、よってPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を創傷部位に保持する。フィブリン接着剤や添加フィブリン接着剤を含む適切な組織シーラント組成物は、当業者に極めて周知で、Spotnitz & Prabhu (2005)、MacGillivray (2003)、Clark (2003)、およびAlbala (2003)で確認され、それぞれを参照によりここに組み込む。
【0065】
他の実施形態において、一または複数の活性剤が、典型的には活性剤の放出制御のために、活性剤(類)を創傷に送達する埋め込み型装置で投与されうる。適切な埋め込み型装置は当業者に周知で、例えばUS特許出願第2004/0034357号(Smith & Nephew)に記載されている。活性剤、特にPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体は、ミクロスフィアに内包でき、活性剤の同時放出制御のために投与できる。
【0066】
さらなる実施形態において、一または複数の活性剤は注射によって投与される。
【0067】
好ましくは、任意の二つ以上の活性剤が同時に投与される。
【0068】
また、好ましくは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、同一ルートで投与される。
【0069】
本方法は、内部外科創傷の治癒促進にも使用できる。しかしながら、他の創傷治癒治療の形態と異なって、本方法は、創傷ができる前に治癒促進環境をもたらすのに役立つ。よって、本方法は手術を受けようとする患者に局所的な治癒促進環境をもたらすのに有用である。手術中または完了後の投与の継続がさらに効果的であろう。
【0070】
特定の患者に治療の有効性が見込めるか否かは、医師によって決定されうる。
【0071】
本方法はまた、クローン病に関連するような胃腸障害または潰瘍と闘うことに有用であるのが好ましい。特定の疾患または状態と「闘う」とは、その特定の疾患または状態の症状を治療、予防または改善することを含む。
【0072】
このような実施形態において、経口で、特に放出制御製剤で投与されてよい。あるいは、PGEまたはそのアゴニスト、またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体の一方または両方は、坐薬またはカプセルとして投与されてもよい。座薬またはカプセルは、患者の腸で活性剤が放出されるように腸溶コーティングされていてよい。
【0073】
妊娠は、本発明に禁忌でありうる。実際に、妊娠は、ミソプロストールを含むいくつかのプロスタグランジンに禁忌である。サイトテック(Cytotec)(ミソプロストール)は、低血圧を引き起こさないが、本発明の方法によって起こりうるリスクである。
【0074】
特定の実施形態において、本発明は、皮膚幹細胞といった幹細胞を患者に投与することを含まない。
【0075】
別の特定の実施形態において、本発明は、GMCSFを発現するように遺伝子組み換えされた複数の脊椎動物細胞と;固体基質と関連するPGE1またはPGE2と;複数のマイクロキャリアとを含むコラーゲン基質を含んでなる固体基質の形態で、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を投与することを含まない。
【0076】
また別の特定の実施形態において、本発明は、GMCSFを発現するように遺伝子組み換えされた複数の脊椎動物細胞と;複数のマイクロキャリアと;PGE1またはPGE2とを含んでなる組成物の形態で、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体を投与することを含まない。
【0077】
本発明の第二の態様は、患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを提供する。よって、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、患者に投与する前に同一の薬剤に混合されていてよい。
【0078】
本発明の第三の態様は、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、GMCSFまたはその誘導体を使用することを提供する。よって、患者は、GMCSFまたはその誘導体の投与前に既にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されていてもよく、またはGMCSFまたはその誘導体と同時にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されてもよく、またはGMCSFまたはその誘導体の投与後にPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されてもよい。
【0079】
本発明の第四の態様は、GMCSFまたはその誘導体が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製において、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤を使用することを提供する。よって、患者は、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の投与前に既にGMCSFまたはその誘導体が投与されていてもよく、またはPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤と同時にGMCSFまたはその誘導体が投与されてもよく、またはPGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の投与後にGMCSFまたはその誘導体が投与されてもよい。
【0080】
本発明の第二、第三、第四の態様について、PGE、そのアゴニスト、およびPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の選択、GMCSFおよびその誘導体の選択、投与ルート、用量などは、本発明の第一の態様に関して上記で定義されたとおりである。
【0081】
好ましくは、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤もまた、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤を含んでなっていてよい。さらに好ましくは、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤は、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤が投与された患者の創傷治癒を促進するためのものであってよい。皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤は、本発明の第一の態様について上述したように選択される。
【0082】
好適には、本発明の第二、第三、第四の態様において上述された薬剤は、患者の創傷部位に局所投与するために調剤される。薬剤は、上述したようにゲル、クリーム、ローション、ペースト、パッチ、またはスプレーの形態で調剤されてよい。あるいは、薬剤は、上述したように創傷包帯、包帯、または組織シーラントの形態で形成されてよい。さらには、薬剤は注射によって投与されるように調剤されてよい。
【0083】
薬剤は、外傷または内部外科創傷の治癒の促進に適しうる。
【0084】
薬剤はまた、クローン病に関連する創傷または潰瘍といった内部創傷の治癒の促進にも適しうる。よって、本発明は、クローン病または潰瘍と闘う薬剤の調製において、本発明の第二、第三、第四の態様において定義した(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体、および、任意で上述した他の活性剤のいずれかを使用することを含む。この実施形態において、薬剤は、上述したように経口投与用に、または坐薬またはカプセルとして調剤されてよい。
【0085】
本発明の第五の態様は、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を含んでなる創傷包帯、包帯、または組織シーラントを提供する。
【0086】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、およびGMCSFまたはその誘導体は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0087】
ある実施形態では、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物はさらに、皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤のいずれか一または複数を含んでなる。皮膚透過性エンハンサー、抗菌剤、鎮痛剤および/または麻酔剤は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0088】
典型的には、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物は、上述したように、外傷への適用に適している。別の実施形態では、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物は、上述したように、内部外科創傷への適用に適していてよい。
【0089】
本発明の第六の態様は、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、(ii)GMCSFまたはその誘導体、および(iii)抗菌剤、鎮痛剤および麻酔剤から選択された少なくとも一のさらなる作用剤を含んでなるゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーを提供する。
【0090】
PGEまたはそのアゴニスト、PGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、および麻酔剤は、本発明の第一の態様について上記で定義したように選択される。
【0091】
ある実施形態において、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、抗菌剤、鎮痛剤、および麻酔剤のいずれか二つまたは複数を含んでなる。
【0092】
ある実施形態において、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーはさらに、本発明の第一の態様について上記で定義したような皮膚透過性エンハンサーを含んでなる。
【0093】
典型的には、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、外傷への適用に適している。別の実施形態では、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーは、内部外科創傷への適用に適していてよい。
【0094】
本発明者は、PGEおよびGMCSFが、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBP−CXCL7の発現を増進することを示した。「マクロファージ/単球系列の細胞」には、単球前駆体由来の細胞が含まれ、マクロファージおよび単球が含まれる。
【0095】
本発明の第七の態様は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を増進または刺激する方法を提供し、当該方法は、細胞に(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を投与することを含んでなる。
【0096】
本発明はまた、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を投与することによって、マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を増進または刺激する方法を含む。
【0097】
本方法は、インビトロまたはエクスビボで実施できる。あるいは、本方法はインビボで実施してもよい。
【0098】
本発明の当該態様は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を増進または刺激するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを含む。
【0099】
同様に、本発明は、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を増進または刺激するための薬剤の調製において、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を使用することを含む。
【0100】
ここで参照した文献の全てを、参照により完全にここに組み込む。
【0101】
本明細書での公開済みの文献の列挙または考察は、必ずしも、その文献が最新技術の一部または一般的な常識であるとの認識として捉えられるべきではない。
【0102】
本発明は、これより、以下の図および実施例を用いてより詳細に説明する。
【0103】
実施例1:サイトカイン誘発に対するプロスタグランジンE/GMCSFの相乗作用
要約
ヒト単球モデル系における、ヒト精漿(HSP)およびGMCSF、およびPGEおよびGMCSFを用いた遺伝子発現アレイ試験の結果は、サイトカイン遺伝子発現の予期せぬパターンを示した。HSP/GMCSF処方計画を用いた第一のアッセイでは、いくつかのケモカイン(走化性サイトカイン)の発現に千倍の増加が見られ、コントロールと比べて最も多く増加した3つのmRNAはケモカインであった。ケモカインの発現はcAMP非依存性であるように見えた。HSP/GMCSFおよびPGE/GMCSF処方計画を用いた第二のアッセイでは、いくつかのケモカインの発現に数百倍の増加が見られた。コントロールと比べて最も多く増加した8つのmRNAのうち4つがケモカインであり、これには第一のアッセイでの上位3つが含まれた。HSP/GMCSFおよびPGE/GMCSFに応答してのケモカインパターンは、創傷治癒の第一段階で見られたパターンと非常に類似していた。これらの結果は、局所投与したPGEまたはその局所濃度を増大する作用剤と、GMCSFの介入は、創傷治癒に治療的に有用であることを示唆する。
【0104】
実験の詳細
遺伝子発現アレイ
U937またはML1(ヒト単球細胞株)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories)を添加したRPMI(PAA Laboratories)培地で増殖させた。第一のアッセイについては、添加物なし、5ng/mlのGMCSFを加えたホルスコリン(25μM)または細菌ろ過した(0.22μM)1%ヒト精漿(HSP)で細胞を48時間処理した(結果を表2に示す)。第二組のアレイは、複製の点で異なる。この第二のアッセイは、2つの複製コントロール培養物、10−6M PGE+5ng/ml GMCSFで処理した2つの培養物、そして1%HSP+5ng/ml GMCSFで処理した4つを含んだ(表3の結果は複製の平均値である)。
【0105】
細胞をペレットし、mRNAをTri試薬(Sigma, Poole, UK)で抽出した。クロロホルムを添加し、それに続くイソプロパノール沈殿によって全RNAを採取した。32,800の遺伝子からなるABI/Celeraアレイを用いてサンプルを分析した。
【0106】
全RNAの濃度と質を、分光光度法(Nanodrop)およびバイオアナライザー(Agilent)で評価した。続いて、全てのサンプルについて、Applied Biosystems Chemiluminescent RT-IVTナノアンプ(1サイクル)ラベリングプロトコルに従ってRT−IVTを実施した。cRNAサンプルに対してQCプロシージャ(NanodropおよびAgilentバイオアナライザー)を実施し、cRNAの質と量を確認した。サンプルを断片化し、続いて16時間、Applied BiosystemsのHuman Genome Survey Microarray(Version 2)にハイブリダイズした。ハイブリダイズ後、アレイを染色し、Applied BiosystemsのChemiluminescence検出キットを用いて洗浄した。最後に、Applied BiosystemsのChemiluminescent Microarray Anlyzerを用いてアレイをスキャンした。MRC Gene-services, Cambridge, UKでアレイ試験を実施した。
【0107】
最初のアッセイで、発現した遺伝子(処理した細胞からのシグナルをコントロール細胞からのシグナルで除算)を順位付けし、最も多く発現した32の遺伝子を表2に載せた。第二のアッセイで、発現した遺伝子(処理した細胞からのシグナルをコントロール細胞からのシグナルで除算)を順位付けし、最も多く発現した32の遺伝子を表3に載せた。第二のアッセイは、統計分析を行い、コントロールに対する増進確率に従って遺伝子を順位付けした(遺伝子が異なって発現する確率の対数[塩基2]に相当するB値により特定)。4を超えるB値を有する遺伝子だけを表5および6に記載した。遺伝子発現を、遺伝子発現の増加(対数[塩基2]増加を「M」として示す)で順位付けした。また、異なって発現した遺伝子が関与した経路を表7に記載した。Geneservice Ltd(Cambridge UK)が独自に開発したプログラムを用いて経路分析を行った。
【0108】
サイトカイン発現測定のためのRT−PCR
順位の高い遺伝子を、さらにABI Taqmanシステムを用いた定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって試験した。IL−8および複数の他の分子の増幅および検出のためのプローブとプライマーを、Primer Express(Applied Biosystems)を用いて設計した。これらの試験において、細胞のインキュベーションは上記と同一であり、純粋なPGEの効果を決定し、ヒト精漿で見られた効果と同じであることがわかった。
【0109】
特定の遺伝子についてのmRNAを、プローブにFAM/TAMRA染色を用いて40サイクル、Taqman 7700装置で増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて、同一の反応チューブで内在性コントロールとしてリボソーム(18S)RNAを増幅および検出した(VIC/TAMRA染色を使用)。40サイクルの後、FAMおよび18S(VIC)についてCt(シグナル出現のサイクル数に関連)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて相対定量を行った。ここでΔは、各実行に含まれる標準的なコンパレータに関連するFAMおよびVICシグナルの間の差異である。
【0110】
使用したプライマーは以下のとおりである:
Pro−PBP(CXCL7)登録番号NM_002704
フォワード:5’-CCAAAAACATCCAAAGTTTGGAA-3’
(配列番号3)
リバース:5’-CAGTGTGGCTATCACTTCGACTTG-3’
(配列番号4)
プローブ:5’-TGATCGGGAAAGGAACCCATTGCA-3’
(配列番号5)
COX−2(登録番号D28235)
フォワード:5’-GTGTTGACATCCAGATCACATTTGA-3’
(配列番号6)
リバース:5’-GAGAAGGCTTCCCAGCTTTTGTA-3’
(配列番号7)
プローブ:5’-TGACAGTCCACCAACTTACAATGCTGACTATGG-3’
(配列番号8)
CXCL8(CCL8,IL−8)(登録番号NM_000584)
フォワード:5’-CTGGCCGTGGCTCTCTTG-3’
(配列番号9)
リバース:5’-TTAGCACTCCTTGGCAAAACTG-3’
(配列番号10)
プローブ:5’-CCTTCCTGATTTCTGCAGCTCTGTGTGAA-3’
(配列番号11)
IL−10
フォワード:5’-CTACGGCGCTGTCATCGAT-3’
(配列番号12)
リバース:5’-TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA-3’
(配列番号13)
プローブ:5’-CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC-3’
(配列番号14)
【0111】
サイトカイン放出測定のためのELISA
培地を細胞から除去し、ELISAで分析した。モノクローナル捕捉抗体を96ウェルプレートにコーティングし、各ウェルに培養培地を添加した。組み換えタンパク質を用いて検量線を作成した。インキュベーションおよび洗浄の後、ビオチンで標識したモノクローナル抗体を添加した。さらなるインキュベーションおよび洗浄の後、ペルオキシダーゼで標識したストレプトアビジンを添加した。洗浄後、テトラメチル・ベンジジン基質を加えて、元のサンプル/スタンダードのサイトカインの濃度に比例して発色させた。プレート光度計(Labsystems, Multiskan)を用いて色度を読み取った。
【0112】
下記の表1に示すように、CD14、CXCL8(IL−8)、およびCCL2(MCP−1)について対を成す抗体および組み換えスタンダードをR&D Systems Ltd, Abingdon UKから得て、IL−10について抗体をPharmingen(BD Bioscience, Erembodegem, Belgium)から得た。
表1
【0113】
結果
表2は、コントロールと比較して発現の増加が最も高レベルであった32の遺伝子を示す。3列目はコントロールの発現レベル;4列目はHSPおよびGMCSFでの処理後の発現レベル;5列目は3列目のレベルに対する4列目のレベルの比率である。ケモカインを太字で示す。
【0114】
表3のデータは、PGE+GMCSFで刺激された遺伝子のパターンはHSP+GMCSFで刺激されたものと僅かに異なるが、依然としてケモカイン刺激が優位であることを示す。コントロール(3列目)に対するPGE+GMCSF(4列目)のシグナル強度によって順位付けした遺伝子の上位29個の中に10のケモカインがランクインした。ケモカインPBP−CXCL7、CCL2およびCXCL8は全て、上位8つの中に入っている。
【0115】
これらの結果が、ML1細胞の異なるバッチと異なる処方計画を用いた、32,000の遺伝子に対する発現試験から導き出されたことを考慮すると、PGE+GMCSF(表3)で誘発される発現とHSP+GMCSF(表2)で誘発される発現との間には非常に高い相関関係がある。
【0116】
このデータの別の見方は、PGE+GMCSF/コントロール(表3より)から最も高い順位の32の遺伝子を取り出して、それらをPGE+GMCSF/コントロールの総強度に基づいて順位付けすることである。このデータを表4に示す。これにより、増加率は高いがコントロールでは全く発現しない遺伝子の重要度が排除される。この分析は、ケモカインだけでなくカルグラニュリンの重要度も明らかにする。実際、この順位付けによると、上位13個の遺伝子のうち7つがケモカインである。
【0117】
データを分析するさらなる方法は、統計的問合せ(statistical interrogation)により、コントロールに対する倍増の対数であるM値に従って、コントロールと比べて上方に異なって発現した遺伝子を順位付けすることである。4を超えるβ値を持つ遺伝子だけが含まれた。ここでβ値とは、遺伝子が異なって発現した確率の対数[塩基2]である。このデータを、HSP+GMCSFおよびPGE+GMCSFで処理した細胞についてそれぞれ表5および6に示す。データは、PGE+GMCSFで刺激された遺伝子のパターンはHSP+GMCSFで刺激されたものと僅かに異なるが、PBP−CXCL7が各処理で第一位に位置する遺伝子であり依然としてケモカイン刺激が優位であることを示す。
【0118】
図2は、処理グループGMCSF+PGE[処理1]およびコントロール(グループ2−グループ1);GMCSF+HSP[処理2]およびコントロール(グループ3−グループ1);GMCSF+HSP[処理2]およびGMCSF+PGE[処理1](グループ3−グループ2)の間で異なって発現する遺伝子の重複を表すベン図である。コントロールと比べてGMCSF+PGEで処理したML1細胞で異なって発現した遺伝子の殆ど(746遺伝子のうち712)は、コントロールと比べてGMCSF+HSPで処理したML1細胞でも異なって発現した。実際、2つの処理グループGMCSF+PGEとGMCSF+HSPで異なって発現したのは98の遺伝子のみで、そのうち40の遺伝子はコントロールで処理した場合と異なって発現した。総合すると、これらの観察結果は、GMCSF+HSPとGMCSF+PGEの両方の処理で誘発される発現プロファイルに高い同一性があることを明確に示す。
【0119】
表7は、表5および6で特定した上方に異なって発現する遺伝子が関与する経路を、有意性によって順位付けしたリストである。この表は、GMCSF+HSPとGMCSF+PGEの両方の処理について、炎症性ケモカインおよびサイトカインシグナル伝達が、異なって発現する遺伝子が関与していた最も有意な経路であることを示す。さらに、GMCSF+PGEで処理した細胞で異なって発現する遺伝子が関与する13の経路のうち12に、GMCSF+HSPで処理した細胞で同定した異なって発現する遺伝子も同様に関与し、このこともまた2つの処理間の発現プロファイルの同一性を明らかにする。
【0120】
図3は、CXCL8(CCL8、IL−8)でGMCSFと組み合わせたときの、PGEおよびヒト精漿の両方のCXCL8(CCL8、IL−8)に対する相乗作用を示すグラフである。CCL8 mRNA発現と、48時間にわたる細胞からのCCL8タンパク質の放出が、この相乗作用を示す。
【0121】
図4は、ヒト精漿(HSP)およびGMCSFの低分子量分画の、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフである。ヒト精漿の低分子量分画は、タンパク質を欠失するが、高レベルの可溶CD14を含む。このことは、HSP分画のみで処理した後、比較的高レベルのCD14が測定されたことを説明する。
【0122】
図5は、PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球U937細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフである。GMCSFおよびPGEに応答してのケモカインCXCL8およびCCL2の放出は、ヒト精漿によるGMCSFの相乗効果がPGEによって再現されることを示す。GMCSFおよびPGEはまた、可溶CD14およびIL−10の放出に対して相乗効果を持つ。IL−10(サイトカイン合成阻害タンパク質としても知られる)は、それが「阻害」サイトカインであり、例えばマスト細胞から放出されるヒスチミンなどの不要な興奮性物質の抑制が見込まれる点で関連性がある。CD14はマクロファージ系列のマーカーである。
【0123】
図6は、PGEおよびGMCSFによる前処理の、ML1細胞におけるIL−8およびCOX−2の発現に対する効果を示すグラフである。細胞を、GMCSFと共にPGEを添加してまたは添加なしで、48時間インキュベートした。前処理物を取り除き、細胞を洗浄し、その後3つのさらなる処理物:コントロール、PGEおよびGMCSF、およびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA、単球の安定した分化作用剤)を加えた。さらに48時間インキュベーションを続けた。PGEおよびGMCSFによる前処理の効果は、PMAに露出した後4日間の最後の時点で持続している。COX−2の発現は、これがさらなるPGEを産生し、比較的不安定なPGEへの露出を持続させる点で関連性がある。
【0124】
図7は、PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのpro−PBP遺伝子の発現に対する相乗作用を示すグラフである。(図6では、pro−PBPを、その遺伝子産物の一つであるCXCL7と称している。)GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、発現アレイにおいて見られた効果が本当の相乗効果であることを表す。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、コントロールの3725倍増加した。GMCSFおよびPGEはまた、IL−10発現に対しても相乗効果を持つが、pro−PBPの場合よりも程度が低い。
【0125】
考察
どの遺伝子が、GMCSFおよびPGEに応じて変化する発現レベルを有しているのかを同定するために、本発明者がアレイ実験を行ったところ、いくつかの予期せぬ発見があった。本発明者は、単球細胞モデル(ML1細胞)におけるヒト精漿(HSP)およびGMCSFの組み合わせの効果を試験し、最大限に発現する遺伝子を調べた(表2)。表2は、32,800の遺伝子のうち、HSPおよびGMCSFでの処理後、発現が最も増加した32の遺伝子を示す。
【0126】
本発明者は以下のことを発見した:
●HSPおよびGMCSFは、いくつかのケモカインのmRNAレベルの大きな上昇を誘発する。
●HSPおよびホルスコリンの効果は、両者を別々にGMCSFと組み合わせると異なり、これは発現の増大が必ずしもcAMPレベルに依存するわけではないことを示す。
●PGEおよびGMCSFは、HSPおよびGMCSFと同様に、いくつかのケモカインのmRNAレベルの大きな上昇を誘発する。
●追跡調査は、ケモカインmRNAの誘発とタンパク質の放出が、EシリーズのプロスタグランジンとGMCSFの真の相乗作用であることを示す。
【0127】
驚くべきことに、HSPおよびGMCSFに応答して遺伝子発現が増大した上位3つは、CXCL8/IL−8(1549倍の増加)、CCL2/MCP−1(1071倍の増加)、およびPBP CXCL7/NAP−2(918倍の増加)であった。これらの結果は、続く定量PCRと、PGEおよびGMCSFを別々ではなく共に使用する、真の相乗効果を示唆するタンパク質放出試験で再現された。mRNAでの増大は、タンパク質放出の増加に反映される。ケモカイン発現におけるこれらの増加は、pro−耐性サイトカインIL−10について見られた増加に付随して起こる。
【0128】
アレイ試験は、PGEへの全応答が、細胞内cAMPレベルの上昇によってのみ介されるわけではないことを示し、よってPGEそのもの、または16,16−ジメチルPGEといったそのアゴニストの重要性を示唆する。cAMPレベルの上昇は、IL−10の刺激における主な経路であると思われるため、PGEおよびGMCSFの作用の重要な部分である。リポソーム、IV型ホスホジエステラーゼ・インヒビター、がPGEおよびGMCSFに誘発されるIL−8放出を増進することが示されたので、cAMPレベルは、単球からのケモカイン放出において何らかの役割を果たしうる。
【0129】
PGEおよびGMCSFによるケモカイン誘発パターンは、創傷修復の第一段階の終期に似ており、よって、こういった組み合わせは創傷修復の加速に利用されうる。
【0130】
例えば、血管新生に乏しい皮膚部分の創傷や老人の創傷など、治癒の遅い創傷の治癒が、PGEまたはそのアゴニスト、およびGMCSFまたはその誘導体の局所投与によって加速または促進されうる。実際、この組み合わせは、それ以外は健康な患者の皮膚創傷および外科手術による創傷など、より広い範囲の用途で、創傷治癒の加速または促進に治療的に有用でありうる。この組み合わせはまた、クローン病に関連するような胃腸障害での創傷修復でも有用でありうる。
【0131】
pro−血小板塩基性タンパク(pro−PBP)遺伝子の発現は、HSP+GMCSFに応答した三番目に高い上昇(表2)と、PGE+GMCSFに応答した最も高い上昇(表3)を示し、これは図7のRT−PCRデータで裏付けられた。pro−PBP遺伝子は、CXCL7(NAP−2)、結合組織活性化ペプチドIII(CTAPIII)、およびβトロンボグロブリンを含む複数のポリペプチドの前駆体である血小板塩基性タンパク(PBP)をコード化する。Proudfoot他(1997)は、CXCL7およびCTAPIIIの両方が創傷治癒の早期段階に関与することを記述しており、BTGは繊維芽細胞について走化性が高く、やはり創傷治癒に重要である(Senior他, 1983)。これは、PGEおよびGMCSFへの応答がpro−創傷治癒応答であることを強調する。ケモカインCXCL7レベルの上昇は、創傷治癒の促進に非常に重要であろう。いずれにせよ、学説に縛られることなく、本発明者は、CXCL7、CTAPIII、およびBTGのそれぞれのレベルが、PGEおよびGMCSFに応答して上昇することは蓋然性が高いと考える。
【0132】
CCL2(MCP−1)とCXCL8(IL−8)はどちらも創傷治癒に関連性があることで知られている。図8は、好中球と単球の、治療中の組織への到達を示す。これは、創傷治癒に重要であるIL−8(好中球を誘引)とMCP−1(単球を誘引)の産生と一致する。また、創傷治癒における血管形成の要素もあり、文献中にはこのプロセスにおけるIL−8とMCP−1の役割がよく説明されている。IL−8の文献:(Koch他, 1992;Sunderkotter他, 1994;Arenberg他, 1996)およびMCP−1の文献:(Goede他, 1999;Kim他, 2005)。
【0133】
GMCSFは複数の作用を有し、最も重要かつ明瞭なのは、造血促進能力、白血球の増大である。これは、概して骨髄で起こる。他の作用としては、白血球の分化と不明瞭な走化性作用がある。GMCSFは、特に潰瘍の創傷治癒の促進に関連する(Siddiqui他, 2000)。この効果は、好中球および単球の組織への誘導に関与するようであるが、白血球の血中濃度とは無関係であると思われる(Jyung他, 1994)。ここでは、GMCSFについてほど一貫性はないが、PGEと創傷治癒について時折言及されている。Mirio他(2005)には、PGE1は潰瘍の治癒を促進するが、この効果は、PGEの血管作用性およびVEGF生成特性によるものだと考えていることが示されている。
【0134】
一方、本発明者は、GMCSFは、CXCL8およびCCL2といった走化性サイトカインの刺激によって間接的に走化性であると考える。この場合、PGEとBMCSF間の相乗作用は非常に重要であろう、というのは、これら2つの物質を局所用製剤として加えることによってその相乗作用を最大限に引き出すことは、白血球誘引の速度と効果を増大し、よって確実に創傷治癒を加速することになるからである。
【0135】
単球細胞は、比較的分化の乏しい組織に進入する。組織内でのサイトカイン環境は、単球の分化に深く関与する。本発明者は、治療後の創傷部位にPGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体のリザーバを構築することが特に有用で、これにより、創傷内に移入するよう誘引された細胞をPGEおよびGMCSFによって調節することが可能になる。特に効果的であろう一つのPGEアゴニストは、16,16−ジメチルPGEであり、これは主な異化酵素15−ヒドロキシ・プロスタグランジン・デヒドロゲナーゼに耐性を示す(Ohno他, 1978)。この化合物は、全ての周知のPGEレセプターを活性化すると報告されている。
【0136】
また、PGEまたはそのアゴニストおよびGMCSFまたはその誘導体の相乗的混合に応答して単球により産生される走化性サイトカインは、それ自体がPGEと相乗的に作用し、よって白血球の侵入を促進する(Foster他, 1989;Colditz, 1990)。さらに、走化性シグナルに応答して組織に進入する白血球は、比較的分化が乏しく、PGEの影響下で成熟し、これは好中球による遊離基の放出を減少させ、よって創傷治癒促進環境をもたらす。
【0137】
ケモカインシグナル伝達に加えて、表7の経路分析は、血管形成およびノッチ経路を、GMCSFおよびPGEに応答しての識別的遺伝子発現パターンの有効成分として同定した。これらはまた、いずれも創傷治癒に関係がある。血管形成は、創傷修復に絶対不可欠であり、炎症細胞とサイトカインの損傷部位への浸潤を容易にし、ノッチシグナル伝達もまた、最近、創傷治癒に関連し、上皮細胞の分化に関与するとされた(Thelu他, 2002)。
【0138】
さらに、表2で遺伝子発現の増大レベルが7番目と9番目に高い遺伝子は、いずれもカルグラヌリンである。これらは、天然の抗菌剤であるため、創傷治癒に非常に関係がある。天然の抗菌剤であれば創傷治癒に大きく役立つ。
【0139】
実施例2:創傷治癒のラットモデルへのPGEおよびGMCSFの影響
要約
創傷治癒のラットモデルで行った実験から得られた結果は、創傷治癒の加速におけるPGEアナログとGMCSF間の相乗作用を示した。創傷面積および創傷の色をモニターして創傷治癒を評価した。PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせの投与によって、手術後3日までに創傷面積が有意に縮小したが、いずれか一方のみを投与する処理では有意な差異は見られなかった。さらに、創傷の色の観察では、10日目にPGEアナログとGMCSF間の相乗作用が示された。これらの結果は、PGEおよびGMCSFの局所投与がラットにおける創傷治癒の加速に有用であることを裏付ける。
【0140】
実験の詳細
使用した動物
体重250〜300gの雄のSD(Sprague Dawley)ラットを創傷治癒モデルとして使用し、PGEおよびGMCSFの効果を評価した。コントロールと処理グループの間での統計比較に十分なデータを提供するために各処理グループにつき6匹のラットを分析した。合計24匹の動物を使用した(6匹のラットを4グループ)。4つのグループとは、コントロール、16,16−ジメチルPGE、GMCSF、および16,16−ジメチルPGE+GMCSFのグループである。動物は処理するまでグループ毎に飼育し、その後、(寝床と糞便が、開いた創傷部位に入るのを防ぐため)スチール製上床を備えたマイクロアイソレータ・ポリカーボネート展示ボックスケージで、(動物が互いの創傷を舐めたり噛んだりしないように)一匹ずつ飼育した。各動物に2箇所の創傷を作り、その結果、1グループあたりの創傷の数「n」は12となった。
【0141】
プロトコル
環境順化(5〜6日)後、ラットに、グリコピロレート(0.02mg/mLで0.01mg/kg)、一回分量0.5mL/kgを皮下注射し、ケタミン(40mg/kg)/キシラジン(5mg/kg)の混合物を45mg/mL(ケタミン)および5mg/mL(キシラジン)、一回分量0.88mL/kgで腹腔内投与して麻酔した。手術開始前に足指をつねって十分な麻酔深度を確かめ、何らかの動きが認められた場合はその動物に麻酔を足した。手術は、動物が十分に麻酔されてから開始した。一旦麻酔が完全にかかると、背面部を6×8cmの広さでした。剃毛後、剃毛部分に除毛剤(Nair)を適用し、約5分間皮膚上に放置した。この後、Nairを切れないヘラで皮膚から優しくすくい取り、脱イオン化した蒸留水で皮膚を洗い流し、ガーゼのスポンジで拭き取ることで残留物を全て取り除いた。その後、剃毛部分をクロルヘキシジンとアルコールで消毒し、手術に備えた。
【0142】
続いて、ラットをうつ伏せにし、肢がリラックスして脊椎が真っ直ぐになるように置いた。T字形の鋳型を、T字の軸が脊椎に沿い、T字の横木が肩甲骨の下角に沿うように背に当てた。ラットの右側に逆さまの「L」が現れ、動物の左側に逆さまで反転した「L」が現れるようにT字の内側の縁をシャーピーペンでなぞった。これらは、各創傷の頭側縁を肩甲骨角の後方約3cmに指定し、各創傷の内側縁を正中線から約0.25cmに指定するものである。
【0143】
創傷鋳型を作成するために、コーニング15ml円錐管のキャップの縁をその部分に置き、殺菌した手術用マーカーでなぞって上述した逆さまのLの一つの内側に2cmの円を作った。各円の内側縁に#10手術用メスで最初の切開を施した。皮筋を通って皮下疎性結合組織層を切開した。深筋膜層を傷つけないように注意しながら、鉗子とメッツェンバウム曲剪刀を使用して円の全周に沿って切開を続けた。皮膚を取り除き円形の創傷を作った。必要に応じて、無菌ガーゼで圧迫し止血を行った。
【0144】
試験物質、またはコントロールとしてビヒクルを、創傷床の3箇所の異なる部位に投与した。各処理での一回量のレベルとグループの割り当ては表8に詳述したとおりである。一回量のレベルは体重に基づいた。
表8
【0145】
創傷は、いかなる種類の包帯も付けなかった。覚醒(胸を地面につけて腹ばいになる姿勢および正常な動きで判断)後、約30分してから、動物にブプレノルフィン(0.1mg/kg)を皮下注射し、ステンレスのスチール製上床を備えた個別のケージに移した。必要に応じて6〜8時間毎にブプレノルフィンを追加投与し、その後72時間、必要に応じて6〜12時間毎に0.05mg/kgを投与した。
【0146】
創傷の感染およびストレスの表れについて動物を常にモニターするとともに、食欲減退、活性低下、だらりとした外観、および正常な水分補給ができないかしたがらないなど、いかなる疼痛および/または苦痛の表れについても動物をモニターした。不断給餌および給水した。
【0147】
手術後3、7および10日目にイソフルランで動物を麻酔し、創傷の幅および長さをカリパスで測定した。その後、測定した幅と長さを乗じて創傷面積を算出し、各処理ついて平均創傷面積と平均値の標準誤差を決定した。創傷治癒の、コントロールでの処理との有意な差異を調べるために、二元配置分散分析(ANOVA)試験を平均創傷面積に実施した。創傷面積に加えて、毎日創傷の色を観察して創傷治癒を評価した。創傷を、赤、茶、2つの事例で黒、または2つの事例でかさぶたの黄、のいずれかとして採点した。ここで、赤は茶よりも治癒の程度が低い。
【0148】
10日目に創傷を評価した後、安楽死溶液(Beuthanasia solution)(150mg/kg)を心臓注射して安楽死させた。創傷部位を収集し、10%中性緩衝ホルマリンで24時間保存し、その後80%エタノールに移した。
【0149】
結果
表9は、手術後3、7および10日後の、各処理グループについての平均創傷面積を示す。同じデータを図8にグラフで示す。二元配置ANOVA試験を用いたデータの分析によって、PGEアナログおよびGMCSFの、創傷治癒への相乗作用が明らかとなった(表10)。PGEアナログ(16,16−ジメチルPGE)およびGMCSFの組み合わせによる処理を受けて、創傷面積は術後3日目でコントロールに比べて有意に縮小した。創傷をPGEアナログまたはGMCSF単独で処理した場合、創傷面積に有意な差異は観察されなかった。
【0150】
図9は、4つの処理のそれぞれについての手術後3日目の創傷面積の差異を示す。二元配置ANOVA分析によって決定したように、PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせの結果のみが、創傷面積が有意に縮小した。
【0151】
図10は、4つの処理物のそれぞれを投与したラットについて、創傷の色を毎日観察した結果を示す。PGEアナログ、GMCSF、またはアナログおよびGMCSFの組み合わせを投与した場合、全て創傷治癒が加速され、3〜5日目はコントロールで処理した場合に比べてより一貫して茶の採点が多かった。さらに、PGEアナログおよびGMCSF間の相乗作用が、9および10日目に明らかになった。9および10日目は、グループ3(=3)およびグループ1および2(=2)と比較して処理グループ4(=9)において、より一貫性のある茶の採点が見られた。
【0152】
表9
創傷治癒の経過における、処理の比較。平均創傷面積および標準誤差を、3、7および10日目に測定し、各処理について一覧にした。使用したPGEアナログは16,16−ジメチルPGEである。
【0153】
表10
PGEアナログ、GMCSF、またはPGEアナログとGMCSFの組み合わせのそれぞれを創傷に投与したとき、コントロールと比べて創傷治癒の進行に何らかの有意な差異があるか調査する、表9の平均創傷面積の二元配置分散分析(ANOVA)による分析結果。3、7および10日目の創傷面積のコントロールとの差異、ANOVA分析からのt値、およびその結果に対応する有意性を、各処理について一覧にした。
【0154】
考察
PGEおよびGMCSFがインビボで創傷治癒に与える影響を決定するために、本発明者は、創傷治癒のラットモデルに実験を行った。本発明者は、異なる処方、つまりPGEアナログ(16,16−ジメチルPGE)、GMCSF、およびPGEアナログおよびGMCSFの組み合わせを創傷に投与したときの効果を調査し、手術後3、7および10日目にコントロールと比較して創傷面積を検討した。また、創傷の色を赤または茶として毎日採点し、赤い創傷は茶色の創傷よりも治癒の程度が低い。
【0155】
本発明者は、3日目にPGEアナログとGMCSF間に著しい相乗作用があり、コントロールと比べて創傷面積に有意な縮小が見られることを発見した。PGEアナログまたはGMCSFを単独で使用した場合、創傷面積に有意な差異は見られなかった。手術後7または10日目のいずれかでは、コントロールと比べて創傷面積に有意な差異は観察されなかった。使用したモデルは健常なラットの創傷治癒モデルであったため、7および10日目には非処理ラットの創傷治癒が十分に進み、いかなる差異も隠れてしまったものだろうと本発明者は考える。一方、3日目、創傷治癒の第一段階の間、PGEおよびGMCSFで処理した創傷の治癒プロセスは、通常のラットのそれと比較してはるかに進行が早く、創傷面積に有意な差異が見られた。
【0156】
同様に、本発明者の色の観察による創傷治癒の評価においても、創傷治癒の加速におけるPGEアナログおよびGMCSF間の相乗作用が示された。特に、手術後9および10日目に、PGEアナログおよびGMCSFの組み合わせを投与された創傷は、より一貫した茶の採点を受け、したがって、いずれかの処理物のみで処理された創傷よりも治癒の程度が高かった。
【0157】
総合すると、これらの結果は、創傷へのPGEおよびGMCSFの組み合わせの投与が治癒プロセスを加速することを裏付ける。本発明者は、PGEおよびGMCSFの投与は、実施例1で実証したように創傷修復の第一段階に似たケモカイン誘引によって構築される創傷治癒促進環境を作り出すことによって、創傷治癒を加速すると考える。
【0158】
参考文献
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【0159】
表2
何の処理も受けなかったコントロールmRNAで、1%ヒト精漿(HSP)+GMCSFで処理したML1細胞からのmRNAを除した、発現の順位付け。32,800の遺伝子のうち上位32の遺伝子を順に示す。ケモカインは太字で記す。
3列目の発現「F」は、ホルスコリン+GMCSFの存在下での発現である。4列目の「コントロール」は、処理なしでの発現である。5列目の「処理」とは、HSP+GMCSFでの処理である。8列目の「種類」は、ケモカインの種類である。9列目の「α種類」とは、αケモカインの種類である。
【0160】
表3
コントロール(処理なしのmRNA発現)で、PGE+GMCSFおよび1%HSP+GMCSFで処理したML1細胞からのmRNAを除した、発現の順位付け。32,800の遺伝子を、PGE+GMCSF/コントロールによって順位付けした上位32の遺伝子を示す。ケモカインは太字で記す。
3列目の「コントロール」は処理なしでの発現である。4列目の処理「P」は、PGE+GMCSFで処理したときの平均的な発現である。5列目の処理「H」は、HSP+GMCSFで処理したときの平均的な発現である。6列目の比率「P」は、処理PGE/コントロールである。7列目の比率「H」は、処理HSP/コントロールである。9列目の「種類」は、ケモカインの種類である。10列目の「α種類」とは、αケモカインの種類である。
【0161】
表3に示したデータと同じであるが、PGE+GMCSFで処理した後の発現レベルによって順位付けした。
【0162】
表5
ヒト精漿およびGMCSFで処理したML1細胞において上方に異なって発現した遺伝子。一覧に挙げた遺伝子は全て、16から4の間のB値(異なって発現する確率の対数)を有する。遺伝子を、コントロールに対する対数[塩基2]の倍増によって順位付けした。ケモカインは太字にしている。
【0163】
表6
PGEおよびGMCSFで処理したML1細胞において上方に異なって発現した遺伝子。一覧に挙げた遺伝子は全て、16から4の間のB値(異なって発現する確率の対数)を有する。遺伝子を、コントロールに対する対数[塩基2]の倍増によって順位付けした。ケモカインは太字にしている。
【0164】
表7
処理1対コントロール、処理2対コントロール、および処理1対処理2に関する、ML細胞において上方に異なって発現した遺伝子が関与する経路。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】Genbank登録番号NM_000758から取得したcDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ図1A(配列番号1)および図1B(配列番号2))。
【図2】GMCSF+PGE[処理1]およびコントロール(グループ2−グループ1)と、GMCSF+HSP[処理2]およびコントロール(グループ3−グループ1)と、GMCSF+HSP[処理2]およびGMCSF+PGE[処理1](グループ3−グループ2)の処理間で異なって発現した遺伝子における重複を示すベン図。
【図3】GMCSFと組み合わされたときのPGEおよびヒト精漿の両方のCXCL8(IL−8)に対する相乗作用を示すグラフ。CXCL8(CCL8)mRNA発現と、48時間にわたる細胞からのCXCL8タンパク質の放出が、この相乗効果を示す。
【図4】ヒト精漿(HSP)およびGMCSFの低分子量分画の、培養物における48時間後の単球ML1細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフ。
【図5】PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球U937細胞からのケモカイン/タンパク質放出に対する相乗作用を示すグラフ。GMCSFおよびPGEに応答してのケモカインCXCL8およびCCL2の放出は、ヒト精漿によるGMCSFの相乗効果がPGEによって再現されることを示す。GMCSFおよびPGEはまた、可溶CD14およびIL−10の放出に対して相乗効果を持つ。
【図6】PGEおよびGMCSFによる前処理の、ML1細胞におけるIL−8およびCOX−2の発現に対する効果を示すグラフ。細胞を、GMCSFと共にPGEを添加してまたは添加なしで、48時間インキュベートした。前処理物を取り除き、細胞を洗浄し、その後3つのさらなる処理物:コントロール、PGEおよびGMCSF、およびホルボールミリスチン酸アセテート(PMA、単球の安定した分化作用剤)を加えた。さらに48時間インキュベーションを続けた。PGEおよびGMCSFによる前処理の効果は、PMAに露出した後4日間の最後の時点で持続している。
【図7】PGEおよびGMCSFの、培養物における48時間後の単球ML1細胞でのpro−血小板塩基性タンパク(PBP)遺伝子(CXCL−7と称する)の発現に対する相乗作用を示すグラフ。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、発現アレイにおいて見られた効果が本当の相乗効果であることを表す。GMCSFおよびPGEに応答してのpro−PBP発現は、コントロールの3725倍増加した。GMCSFおよびPGEはまた、IL−10発現に対しても相乗効果を持つが、pro−PBPの場合よりも程度が低い。
【図8】ヒトの創傷における創傷治癒の特徴としての好中球および単球の両方の出現を示すEngelhardt他(1998)に基づくグラフ。
【図9】創傷治癒のラットモデルにおいて、手術後3、7および10日に4つの異なる処理物を投与したときの創傷面積の測定結果を示すグラフ。
【図10】創傷治癒のラットモデルにおいて、手術後3日に4つの異なる処理物を投与したときの創傷面積の測定結果を示すグラフ。アステリスクは、コントロールで処理したラットと比較して、PGEおよびGMCSFの組み合わせで処理したラットにおいて創傷面積が有意に縮小したことを示す。PGEまたはGMCSFがいずれか一方が投与されたラットにおいては、有意な縮小は見られなかった。
【図11】4つの処理物のそれぞれを投与したラットにおける創傷の一日毎の色観察結果を示す表。創傷は赤(R)、茶(B)、黒またはかさぶたの黄(Y)のいずれかで採点され、ここで、赤は茶より治癒の程度が低いことを示す。この表は、9および10日目のPGEおよびGMCSF(処理4)の効果を示し、コントロールで処理したラット(処理1)、またはPGEまたはGMCSFのいずれか一方が投与されたラットよりも、茶の採点が多かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)プロスタグランジンE(PGE)またはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)またはその誘導体を患者に投与することを含んでなる、患者における創傷治癒を促進する方法。
【請求項2】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、PGE1、PGE2、19−ヒドロキシPGE1、19−ヒドロキシPGE2、16,16−ジメチルPGE、ジノプロストン、ミソプロストル、アルプロスタジル、およびリマプロストのいずれかであり、そしてPGEの局所濃度を増大する作用剤が、上皮成長因子(EGF)、またはペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)アゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GMCSFが、図1に定義したアミノ酸配列を有するヒトGMCSF、またはその天然由来変異体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
GMCSFが、サルグラモスチムまたはモルグラモスチムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の一方または両方を患者の創傷部位に局所投与する、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の両方を患者の創傷部位に局所投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一の抗菌剤を患者に投与することをさらに含んでなる、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
抗菌剤が、抗バクテリア剤、抗真菌剤、または抗ウイルス剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗バクテリア剤が、ゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシ−メチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、塩酸バカンピシリン、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、塩酸タランピシリン、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、セフピロム、ラタモキセフジソジウム、アズトレオナム、グリシルサイクリン系のもの、塩酸クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンナトリウム、塩酸デメクロシジン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、硫酸フラマイセチン、硫酸ネオマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、フピロシン、硫酸ポリミキシンB、スペクチノマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、スルファルオキサートカルシウム(calcium sulphaloxate)、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファウレア、カプレオマイシン、メトロニダソール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、硫酸コリスチン(colistimethate)、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、シクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジンアミド、メロペネム、およびイミペネムから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗真菌剤が、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、およびニスタチンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
抗ウイルス剤が、アシクロビア、AZT、ddI、塩酸アマンタジン、イノシンプラノベクス、およびビダラビンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
抗菌剤を患者の創傷部位に局所投与する、請求項7ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
鎮痛剤または麻酔剤を患者の創傷部位に局所投与することをさらに含んでなる、請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
鎮痛剤が、サルチル酸メチル、サリチル酸、ジクロニン、およびアロエベラから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
局所麻酔剤が、ベンゾカイン、リドカイン、キシロカイン、およびブタンベンピクラート(butamben picrate)から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
内部外科創傷の治癒のための請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
外傷の治癒のための請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
患者の創傷部位に皮膚透過性エンハンサーを局所投与することをさらに含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
皮膚透過性エンハンサーが、DMSOである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーの形態で局所投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、フィブリン接着剤といった組織シーラントの形態で局所投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、創傷包帯または包帯の形態で投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、注射によって投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの任意の二つ以上を、同時に投与する、請求項20ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の両方を、同一の投与ルートで投与する、請求項20ないし24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
クローン病に関連する胃腸障害または潰瘍と闘うための、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数を、経口投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数を、座薬またはカプセルとして投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
座薬またはカプセルが、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数が患者の腸で放出されるように腸溶コーティングされている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項31】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項32】
GMCSFまたはその誘導体が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の使用。
【請求項33】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項30ないし32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項30ないし33のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
薬剤が、抗菌剤をさらに含んでなる、請求項30ないし34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
患者が、抗菌剤を投与されている患者である、請求項30ないし34のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項35または36に記載の使用。
【請求項38】
薬剤が、患者の創傷部位への局所投与用に調剤されている、請求項30ないし37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
薬剤が、鎮痛剤または麻酔剤をさらに含んでなる、請求項30ないし38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
患者が、鎮痛剤または麻酔剤を投与されている患者である、請求項30ないし38のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項39または40に記載の使用。
【請求項42】
内部外科創傷を治癒するための薬剤の調製における、請求項30ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
外傷を治癒するための薬剤の調製における、請求項30ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
薬剤が、皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
患者が、皮膚透過性エンハンサーを投与されている患者である、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項44または45に記載の使用。
【請求項47】
薬剤が、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーとして調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項48】
薬剤が、フィブリン接着剤といった組織シーラントとして調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項49】
薬剤が、創傷包帯または包帯として調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項50】
薬剤が、注射によって投与されるように調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項51】
クローン病に関連する胃腸障害または潰瘍と闘うための薬剤の調製における、請求項30ないし37のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
薬剤が、経口投与用に調剤されている、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
薬剤が、座薬またはカプセルとして調剤されている、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
座薬またはカプセルが、腸内で溶けて放出するようコーティングされている、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を含んでなる、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項56】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項55に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項57】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項55または56に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項58】
抗菌剤をさらに含んでなる、請求項55ないし57のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項59】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項58に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項60】
鎮痛剤または麻酔剤をさらに含んでなる、請求項55ないし59のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項61】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項60に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項62】
内部外科創傷への適用に適した、請求項55ないし61のいずれかに記載の創傷包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項63】
皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項55ないし61のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項64】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項63に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項65】
外傷への適用に適した、請求項55ないし61、63または64のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項66】
組織シーラントが、フィブリン接着剤を含んでなる、請求項55ないし65のいずれかに記載の組織シーラント組成物。
【請求項67】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、(ii)GMCSFまたはその誘導体、および(iii)抗菌剤、鎮痛剤または麻酔剤を含んでなる、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項68】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項67に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項69】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項67または68に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項70】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項67ないし69のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項71】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項67ないし70のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項72】
内部外科創傷への適用に適した、請求項67ないし71のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項73】
皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項77ないし71のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項74】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項73に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項75】
外傷への適用に適した、請求項67ないし71、73または74のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項76】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を細胞に投与することを含んでなる、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8(IL−8)、CCL2(MCP−1)、およびPBPの発現を刺激または増進する方法。
【請求項77】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を細胞に投与することを含んでなる、マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7(NAP−2)の分泌を刺激または増進する方法。
【請求項78】
インビトロで実施する、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
インビボで実施する、請求項76または77に記載の方法。
【請求項80】
マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を刺激または増進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項81】
マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を刺激または増進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項1】
(i)プロスタグランジンE(PGE)またはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)またはその誘導体を患者に投与することを含んでなる、患者における創傷治癒を促進する方法。
【請求項2】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、PGE1、PGE2、19−ヒドロキシPGE1、19−ヒドロキシPGE2、16,16−ジメチルPGE、ジノプロストン、ミソプロストル、アルプロスタジル、およびリマプロストのいずれかであり、そしてPGEの局所濃度を増大する作用剤が、上皮成長因子(EGF)、またはペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)アゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GMCSFが、図1に定義したアミノ酸配列を有するヒトGMCSF、またはその天然由来変異体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
GMCSFが、サルグラモスチムまたはモルグラモスチムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の一方または両方を患者の創傷部位に局所投与する、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の両方を患者の創傷部位に局所投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一の抗菌剤を患者に投与することをさらに含んでなる、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
抗菌剤が、抗バクテリア剤、抗真菌剤、または抗ウイルス剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗バクテリア剤が、ゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシ−メチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、塩酸バカンピシリン、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、塩酸タランピシリン、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、セフピロム、ラタモキセフジソジウム、アズトレオナム、グリシルサイクリン系のもの、塩酸クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンナトリウム、塩酸デメクロシジン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、硫酸フラマイセチン、硫酸ネオマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、フピロシン、硫酸ポリミキシンB、スペクチノマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、スルファルオキサートカルシウム(calcium sulphaloxate)、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファウレア、カプレオマイシン、メトロニダソール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、硫酸コリスチン(colistimethate)、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、シクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジンアミド、メロペネム、およびイミペネムから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗真菌剤が、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、およびニスタチンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
抗ウイルス剤が、アシクロビア、AZT、ddI、塩酸アマンタジン、イノシンプラノベクス、およびビダラビンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
抗菌剤を患者の創傷部位に局所投与する、請求項7ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
鎮痛剤または麻酔剤を患者の創傷部位に局所投与することをさらに含んでなる、請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
鎮痛剤が、サルチル酸メチル、サリチル酸、ジクロニン、およびアロエベラから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
局所麻酔剤が、ベンゾカイン、リドカイン、キシロカイン、およびブタンベンピクラート(butamben picrate)から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
内部外科創傷の治癒のための請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
外傷の治癒のための請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
患者の創傷部位に皮膚透過性エンハンサーを局所投与することをさらに含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
皮膚透過性エンハンサーが、DMSOである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーの形態で局所投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、フィブリン接着剤といった組織シーラントの形態で局所投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、創傷包帯または包帯の形態で投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの一または複数を、注射によって投与する、請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、抗菌剤、鎮痛剤、麻酔剤、および皮膚透過性エンハンサーの任意の二つ以上を、同時に投与する、請求項20ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の両方を、同一の投与ルートで投与する、請求項20ないし24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
クローン病に関連する胃腸障害または潰瘍と闘うための、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数を、経口投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数を、座薬またはカプセルとして投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
座薬またはカプセルが、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、GMCSFまたはその誘導体、および抗菌剤の一または複数が患者の腸で放出されるように腸溶コーティングされている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項31】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項32】
GMCSFまたはその誘導体が投与されている患者の創傷治癒を促進するための薬剤の調製における、PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤の使用。
【請求項33】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項30ないし32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項30ないし33のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
薬剤が、抗菌剤をさらに含んでなる、請求項30ないし34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
患者が、抗菌剤を投与されている患者である、請求項30ないし34のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項35または36に記載の使用。
【請求項38】
薬剤が、患者の創傷部位への局所投与用に調剤されている、請求項30ないし37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
薬剤が、鎮痛剤または麻酔剤をさらに含んでなる、請求項30ないし38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
患者が、鎮痛剤または麻酔剤を投与されている患者である、請求項30ないし38のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項39または40に記載の使用。
【請求項42】
内部外科創傷を治癒するための薬剤の調製における、請求項30ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
外傷を治癒するための薬剤の調製における、請求項30ないし41のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
薬剤が、皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
患者が、皮膚透過性エンハンサーを投与されている患者である、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項44または45に記載の使用。
【請求項47】
薬剤が、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレーとして調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項48】
薬剤が、フィブリン接着剤といった組織シーラントとして調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項49】
薬剤が、創傷包帯または包帯として調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項50】
薬剤が、注射によって投与されるように調剤されている、請求項30ないし46のいずれかに記載の使用。
【請求項51】
クローン病に関連する胃腸障害または潰瘍と闘うための薬剤の調製における、請求項30ないし37のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
薬剤が、経口投与用に調剤されている、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
薬剤が、座薬またはカプセルとして調剤されている、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
座薬またはカプセルが、腸内で溶けて放出するようコーティングされている、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を含んでなる、創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項56】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項55に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項57】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項55または56に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項58】
抗菌剤をさらに含んでなる、請求項55ないし57のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項59】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項58に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項60】
鎮痛剤または麻酔剤をさらに含んでなる、請求項55ないし59のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項61】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項60に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項62】
内部外科創傷への適用に適した、請求項55ないし61のいずれかに記載の創傷包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項63】
皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項55ないし61のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項64】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項63に記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項65】
外傷への適用に適した、請求項55ないし61、63または64のいずれかに記載の創傷包帯、包帯、または組織シーラント組成物。
【請求項66】
組織シーラントが、フィブリン接着剤を含んでなる、請求項55ないし65のいずれかに記載の組織シーラント組成物。
【請求項67】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、(ii)GMCSFまたはその誘導体、および(iii)抗菌剤、鎮痛剤または麻酔剤を含んでなる、ゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項68】
PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤が、請求項2に記載のものである、請求項67に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項69】
GMCSFまたはその誘導体が、請求項3または4に記載のものである、請求項67または68に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項70】
抗菌剤が、請求項8ないし11のいずれかに記載のものである、請求項67ないし69のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項71】
鎮痛剤および麻酔剤が、請求項14または15に記載のものである、請求項67ないし70のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項72】
内部外科創傷への適用に適した、請求項67ないし71のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項73】
皮膚透過性エンハンサーをさらに含んでなる、請求項77ないし71のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項74】
皮膚透過性エンハンサーが、請求項19に記載のものである、請求項73に記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項75】
外傷への適用に適した、請求項67ないし71、73または74のいずれかに記載のゲル、クリーム、ローション、ペースト、またはスプレー。
【請求項76】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を細胞に投与することを含んでなる、マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8(IL−8)、CCL2(MCP−1)、およびPBPの発現を刺激または増進する方法。
【請求項77】
(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体を細胞に投与することを含んでなる、マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7(NAP−2)の分泌を刺激または増進する方法。
【請求項78】
インビトロで実施する、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
インビボで実施する、請求項76または77に記載の方法。
【請求項80】
マクロファージ/単球系列の細胞でCXCL8、CCL2、およびPBPの発現を刺激または増進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【請求項81】
マクロファージ/単球系列の細胞からのCXCL8、CCL2、およびCXCL7の分泌を刺激または増進するための薬剤の調製における、(i)PGEまたはそのアゴニストおよび/またはPGEの効果または局所濃度を増大する作用剤、および(ii)GMCSFまたはその誘導体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−517374(P2009−517374A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541825(P2008−541825)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004404
【国際公開番号】WO2007/060453
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504171433)メディカル リサーチ カウンシル (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004404
【国際公開番号】WO2007/060453
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504171433)メディカル リサーチ カウンシル (16)
【Fターム(参考)】
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