説明

プロセス凝縮水を浄化するための方法

本発明は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じるプロセス凝縮水17の浄化方法に関する。プロセス凝縮水17を、浄化のための電極イオン化プロセス7に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じるプロセス凝縮水を浄化するための方法に関する。
【0002】
水蒸気改質プロセスでは、天然ガス、石油エーテル又はナフサのような、炭化水素を含む原料が、水蒸気と混合され、水蒸気改質装置内で反応して合成ガス、つまり主に一酸化炭素(CO)と水素(H)とから成るガス混合物になる。合成ガスからは、引き続く方法ステップにおける精製及び分別によって、CO,H又はオキソガス(H及びCOの特定の混合物)のような物質が得られ、生成物として放出される。
【0003】
前記炭化水素は、高度な変換度で反応することができる。このため、水蒸気改質プロセスは通常、水蒸気過剰で実施される。過剰な水を除去するためには、前記方法で発生された合成ガスが、水蒸気の露点未満に冷却される。その結果、水蒸気が凝縮して、主に水から成る、プロセス凝縮水と呼ばれるものを形成する。このプロセス凝縮水には一般に、メタノール、アンモニア、二酸化炭素、蟻酸及び酢酸等の不純物が含まれている。
【0004】
スチームクラッキングプロセスでは、ナフサ等の長鎖炭化水素のみならず、ブタン、プロパン及びエタン、又はガス油又はハイドロワックスのような、炭化水素を含む原料が、水蒸気と混合されて、短鎖炭化水素に熱的に分解される。その結果得られる粗ガスは、主に水素(H)、メタン(CH)、エチレン(C)及びプロピレン(C)である。粗ガスは、低温分別プロセスによって分別され、この場合実質的には、エチレン及びプロピレンが価値のある生成物として得られる。
【0005】
スチームクラッキングプロセスは通常、分解された短鎖炭化水素の凝集を避けるために、水蒸気過剰で実施される。粗ガスは、スチームクラッキングプロセス後に急冷され且つ乾燥される。その結果、主に水から成るプロセス凝縮水が得られ、このプロセス凝縮水には一般に、分解されていない長鎖炭化水素、芳香族炭化水素、又は別の重炭化水素を含む、クラッキングプロセスの副産物及び若干の短鎖炭化水素のような、種々様々な不純物が含まれている。
【0006】
本発明の枠内で、主に水から成り且つ水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じる凝縮水は、プロセス凝縮水と呼ばれる。
【0007】
従来の形式では、プロセス凝縮水は、外部からプロセスに慣例のように供給される脱イオン水と混合される。これにより形成された混合水は、次いで脱気されて、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスにおいて冷却される質量流にぶつかって蒸発させられる。冷却される排ガスにぶつかって水蒸気が過熱された後で、この水蒸気の一部(プロセス水蒸気)はプロセス内で使用されるのに対して、残りの部分(導出水蒸気)は水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス内では使用されないが、外部のプロセスで使用される。導出水蒸気の発生は、外部のプロセスにおいて、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスでは利用することのできない熱の利用を可能にし、且つ水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスの経済効率の増大を可能にする。
【0008】
しばしば、導出水蒸気のクオリティーに関する消費者の要求が高く、上で述べた方法で発生された導出水蒸気では、前記要求が満たされないことがある。例えば、復水タービンで利用される導出水蒸気の導電率は、0.3μS/cmを超えるべきではないが、この値は、プロセス凝縮水中に存在する不純物に基づいて、しばしば超過される。導出水蒸気の生成を維持するためには、プロセス凝縮水が脱イオン水と混合される前に、プロセス凝縮水を浄化する、複数のプロセスが存在する。
【0009】
プロセス凝縮水の浄化については、ストリッピングコラムにおけるストリッピングによって不純物を分離する、複数のプロセスが公知である。質量流(例えば天然ガス)のような場合のストリッピングガスとしては、含有空気又は炭化水素が使用される。
【0010】
別のプロセスにおいて、プロセス凝縮水は膨張され、次いで低圧の水蒸気、空気又は窒素を用いてスクラビングコラム内で脱気される。不純物及び剥離剤は、プラントの外へ放出される。発生される導出水蒸気の高純度要求を満たすためには、これらのプロセスが、相応の反応器内でのイオン交換による別の浄化ステップを提供する。
【0011】
水蒸気改質プロセスにおいて水蒸気を発生させるための択一的な1プロセスが、DE102006019100に記載されている。このDE102006019100に記載されたプロセス及び装置により、2つの水蒸気流が発生される。第1の水蒸気流(プロセス水蒸気)は、有利には完全に水蒸気改質プロセス内で使用されるのに対して、第2の水蒸気流(導出水蒸気)は、外部で利用され得る。導出水蒸気は、有利には脱気された脱イオン水(高純水)の蒸発によってのみ発生される。記載された当該プロセスは、極めて純粋で清浄な導出水蒸気の発生、延いては水蒸気改質プロセスのエネルギの良好な利用を可能にする。記載された当該プロセスの欠点は、第2の清浄な水蒸気流を発生させるために導入される脱イオン水用に、第2の水蒸気ドラムと第2の空気抜き器とが必要になることである。
【0012】
本発明の課題は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じるプロセス凝縮水の浄化に使用され得る、プロセス凝縮水を浄化するための択一的なプロセスを提供することにある。
【0013】
この課題は、プロセス凝縮水を電極イオン化プロセスに供給することにより解決される。
【0014】
本発明では、全く異なるプロセスが、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから得られるプロセス凝縮水の浄化のために使用される。電極イオン化プロセスは、水を浄化するための、電気化学的な膜をベースとしたプロセスである。このプロセスによって、電離可能な不純物が、電気的にアクティブな媒体と、イオン輸送に影響を及ぼすための電位とを用いて、液体から除去される。この電極イオン化プロセスによって、純水相と、電離された不純物を含む液相とが生ぜしめられる。
【0015】
獲得された清浄な水は、公知の方法で清浄な水蒸気を製造するために使用され得る。電極イオン化プロセスを使用することによる、プロセス凝縮水の本発明による浄化では、理論上0.06μS/cmの導電率を有する清浄な水蒸気が得られる。これは、復水タービンのための清浄な水蒸気の前記要求を大きく下回っている。本発明の思想に基づく電極イオン化プロセスを用いた反復テスト測定では、0.3μS/cmを下回る導電率が達成される。この導電率は、清浄な水蒸気の要求に足るものである。
【0016】
従って、本発明によるプロセスは、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じるプロセス凝縮水から、清浄な水蒸気を生成するための格別な方法である。
【0017】
本発明によるプロセスに付加的に必要とされる装置にかかるコストは、従来との比較において著しく低い。ストリッピングコラム用のコスト、又は第2の水蒸気発生回路を設置するためのコストは、簡単な電極イオン化装置よりも著しく高い。
【0018】
本発明の有利な1態様では、プロセス凝縮水は、水蒸気改質プロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生するか、ウォーターガスシフト反応(水性ガスシフト反応)プロセスの前の、水蒸気改質プロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生するか、又はスチームクラッキングプロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生する。水蒸気改質炉の下流側のプロセスガスは冷却される。これにより、混合相流が形成される。この混合相流は、少なくとも1つの分離器において、水蒸気改質プロセスの反応生成物を含む気相と、水性相、即ちプロセス凝縮水とに分離される。分離器の底部から得られるこのプロセス凝縮水は、本発明では電極イオン化プロセスによって処理される。水蒸気改質プロセスが、できるだけ多くの水素を生成するために設計されている場合、水蒸気改質炉から出るプロセスガスは、中間のウォーターガスシフト反応プロセスに送られる。ウォーターガスシフト反応プロセスにおいて、プロセスガス中の一酸化炭素が水と反応して、二酸化炭素(CO)と水素(H)を生成する。得られたプロセスガスは、上で説明した方法で冷却されて、メタノール及びエタノール含有量に関する若干の違いを除いては類似のプロセス凝縮水が生ぜしめられる。本発明では、得られたプロセス凝縮水が、電極イオン化プロセスに送られる。
【0019】
本発明の最も有利な態様では、電極イオン化プロセスの前に、プロセス凝縮水がプレフィルタ、熱交換器、機械的な浄化プロセス、化学的及び触媒前処理及び/又は逆浸透プロセスに送られる。この態様では、プロセス凝縮水は電極イオン化プロセスの上流側で前処理される。プロセス凝縮水は、個別に要求される複数の前浄化ステップから成る前浄化プロセスに送られる。プレフィルタ及び/又は機械的な浄化プロセスは、プロセス凝縮水中の粒子、凝集物又はその他の固形物の除去に役立つ。熱交換器によって、プロセス凝縮水の温度は、電極イオン化プロセスの最適な動作温度に有利に調節可能である。逆浸透プロセスは、プロセス凝縮水を前浄化するための、適当で簡単且つ廉価なプロセスである。ウォーターガスシフト反応の結果得られたプロセス凝縮水の場合は、化学的及び触媒前処理を任意に用いることも、プロセス凝縮水中のアルコールを有機酸に変換するために有利であり、この有機酸は、プロセス凝縮水中で簡単に分離するので、電極イオン化プロセスで処理され得る。本発明による電極イオン化プロセスの上流側の、上で述べた前処理プロセスのうちの全て又は少なくとも1つを使用することが有利である。
【0020】
有利には、電極イオン化プロセスにおいて得られる清浄なプロセス凝縮水は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス外で、清浄な水蒸気のために使用される。清浄なプロセス凝縮水は水蒸気ドラムに供給され、この水蒸気ドラムでは、水蒸気改質炉の熱が、水蒸気を発生させるために使用される。通常、所定量の脱イオン水が、水蒸気改質又はスチームクラッキング反応に基づく損失を相殺するために加えられる。本発明によるプロセスから得られる清浄なプロセス凝縮水は、不純物を含んではおらず、清浄な水蒸気の要求を満たしている。従って、清浄な水蒸気が水蒸気ドラムにおいて生成され且つ水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス外で、例えば復水タービンにおいて使用され得る。生成された清浄な水蒸気は、有利には、コジェネレーションユニット、背圧タービン又は復水タービン等の蒸気タービンを含む外部水蒸気回路でも使用され得る。このようなプロセス水蒸気回路は、大型水蒸気システムの信頼性を保証し且つ運転障害を避けるために、一般に所定の水蒸気クオリティーを必要とする。
【0021】
本発明の別の態様では、電極イオン化プロセスにおいて得られる清浄なプロセス凝縮水が、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスの供給水蒸気の一部として再循環される。水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス外の複数のプロセスのニーズ次第で、清浄なプロセス凝縮水の一部は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスのための水蒸気として使用され得る。本発明のこの態様において再循環されるプロセス凝縮水の量は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス外で必要とされる清浄な水蒸気の量に依存している。
【0022】
本発明は様々な利点を有している。本発明は、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスのプロセス凝縮水から生成される、極めて清浄な水蒸気を提供する。このようなプロセス凝縮水から清浄な水蒸気を生成するために必要とされる装置にかかる投資費用は、従来技術と比較して著しく削減される。電極イオン化プロセスのために必要とされる装置は、それぞれ供給回路を備えたストリッピングコラム又は第2の水蒸気ドラムよりも著しく簡単且つ廉価である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】水蒸気改質プロセスから生じるプロセス凝縮水を浄化するための、本発明の1実施形態を示した図である。
【図2】電極イオン化プロセスの択一的な前処理の1実施形態を詳細に示した図である。
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を図面につき詳しく説明する。
【0025】
図1には、水蒸気改質プロセスから生じるプロセス凝縮水を浄化するための、本発明による方法の1実施形態が示されている。炭化水素を含む供給原料2は、熱交換器10を介して、水蒸気改質炉11の予熱部11aに供給される。この水蒸気改質炉の予熱部11aで、炭化水素を含む供給原料は、プロセス水蒸気14と混合される。水蒸気と供給原料の混合物は、導管15を介して、水蒸気改質炉11の改質部11bに供給される。プロセスガスが、いくつかの容器16と、複数の直列の熱交換器10とを介して、分離器9に供給される。プロセスガスは、熱交換器10によって連続的に冷却され、これにより、2相の混合物が生ぜしめられる。この2相の混合物は分離器9内で、引き続き処理部5に供給されるガス状の生成物と、水性相17とに分離され、この水性相17は、分離器9の底部から集められる。水性相17が、浄化されるべきプロセス凝縮水である。プロセス凝縮水17は、電極イオン化プロセス7に供給される。この電極イオン化プロセスの生成物として、清浄なプロセス凝縮水18が得られる。清浄なプロセス凝縮水18は、水蒸気改質プロセスに基づく損失を補償するために、所定量の脱イオン水1と一緒に、空気抜き器8に供給される。空気抜き器8から得られる、空気抜きされた清浄な水相19は、熱交換器10を介して水蒸気ドラム12に供給され、この水蒸気ドラム12は、水蒸気改質炉11の予熱部11aにおける熱交換によって、導出部6のための清浄な水蒸気を発生させる。水蒸気改質炉11は、炭化水素を含む燃料4が空気3と一緒に燃焼することにより加熱される。煙道ガスは、排気筒13を介して大気に供給される。
【0026】
図2には、電極イオン化プロセス7の1実施形態が、全ての択一的な前処理と一緒に示されている。プロセス凝縮水17は、プレフィルタ20、熱交換器21、機械的な浄化22、化学/触媒処理23及び逆浸透プロセス24を介して、電極イオン化プロセス7に供給される。プレフィルタ20は、プロセス凝縮水17から固体粒子及び比較的大きな不純物を除去するために使用される。プロセス凝縮水17の温度は、熱交換器21内で、電極イオン化の最適な実施温度に調節される。機械的な浄化22に基づき、すす及びダスト等の不純物が除去される。化学/触媒前処理23において、アルコール等の不純物が有機酸に変換され、これらの有機酸は分離するので、後続の電極イオン化プロセスにより処理され得る。逆浸透プロセス24は、脱イオンされ且つ脱塩された水相を生ぜしめる。プロセス凝縮水17は最終的に、電極イオン化プロセス7により、清浄な水蒸気のための要求品質に浄化され、これにより、分離された有機酸又は炭酸イオンのような、残りの不純物が除去される。電極イオン化プロセス7から、清浄なプロセス凝縮水18が空気抜き器8に供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスから生じるプロセス凝縮水(17)を浄化するための方法において、プロセス凝縮水を、電極イオン化プロセス(7)に供給することを特徴とする、プロセス凝縮水を浄化するための方法。
【請求項2】
前記プロセス凝縮水(17)を、水蒸気改質プロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生させるか、ウォーターガスシフト反応プロセスの前の、水蒸気改質プロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生させるか、又はスチームクラッキングプロセスの結果生じるプロセスガスの乾燥過程において発生させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プロセス凝縮水(17)を、電極イオン化プロセス(7)の前に、プレフィルタ(20)、熱交換器(21)、機械的な浄化プロセス(22)、化学的及び触媒前処理(23)及び/又は逆浸透プロセス(24)に供給する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
電極イオン化プロセス(7)で得られた清浄なプロセス凝縮水(18)を、清浄な水蒸気(6)として水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセス外で、有利にはコジェネレーションユニット及び蒸気タービンを含む水蒸気回路において使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
電極イオン化プロセス(7)において得られる清浄なプロセス凝縮水(18)を、水蒸気改質プロセス又はスチームクラッキングプロセスのプロセス水蒸気(14)の一部として再循環させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−533418(P2012−533418A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520937(P2012−520937)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004329
【国際公開番号】WO2011/009565
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】