説明

プロセス強化のための流体力学的キャビテーション反応装置を設計する方法

本発明は、均一系及び不均一系における物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中で過渡的若しくは安定又は両方である調整された活発キャビティを発生させることによって具体的な効果を得るための反応装置として用いられる流体力学的キャビテーションの装置を記載する。装置は、キャビティジェネレータ、キャビティダイバータ、及び乱流マニピュレータから成り、キャビティジェネレータ/キャビティダイバータは、種々の形状及びサイズの流れモジュレータである。特定の目標プロセス強化に必要な所望のタイプのキャビテーションを達成するために、キャビテーションの様相マップ及びそれを生成する方法が提示され、続いて、所定のプロセス強化を達成するように反応装置が設計される。様相マップは、キャビティジェネレータ内の最大流体速度を、キャビテーション係数と、装置のいくつかの幾何学的設計に関する活発及び特定のタイプのキャビティの割合とに関連付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中で調整されたキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置、及び該反応装置を設計する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「プロセス強化」は、エネルギー効率が良く環境に安全なプロセスを提供し、良品生産用の小型生産設備を使用し、廃棄物発生を最小化し、結果として実質的にコストを削減することによって先進技術の持続可能性を高めることを含む。
【0003】
キャビテーションは、周囲とほぼ同じ大量処理条件において局所的な高温(約14000K)及び高圧(約10000atm)状態を発生させる手段を提供するため、近年では重要性を増してきている。形成されたキャビティの崩壊又は内破により、低温液体中に短命の局所的なホットスポットが生じ、これは、化学反応の強化、反応装置内の音響流、及び搬送プロセス速度の向上を含む物理化学的プロセスの実行に効果的に利用することができる。
【0004】
概して、キャビテーションは、発生モードに基づいて4つのタイプに分類される。
音響キャビテーション−流体中の超音波の通過によって発生する。
流体力学的キャビテーション−流動流体中で圧力変動を作り出すことによって発生する。
光キャビテーション−液体中に高強度光の光子を通過させることによって発生する。
粒子キャビテーション−液体中の陽子又は中性子等の高エネルギー粒子の衝撃によって発生する。
【0005】
上述した種々のキャビテーション発生モードの中でも、流体力学的キャビテーションは、物理化学的プロセスの強化のために工業規模の大規模液体体積に適用され得る。
【0006】
Senthilkumar et al.(2000年)(非特許文献1)は、絞り弁、オリフィス板、ベンチュリ等の狭窄部に液体を通過させることによって流体力学的キャビテーションを発生させることができることを示している。Gogate et al.(2006年)(非特許文献2)は、トルエン、(o−/p−/m)−キシレン、メシチレン、(o−/m)−ニトロトルエン、及び(o−/p)−クロロトルエンの酸化等の化学的プロセスの強化のための流体力学的キャビテーションの使用を論じている。アルコールの使用による植物油のエステル交換が、Kelkar及びPandit(2005年)によって論じられている(非特許文献3)。アルコールを使用した脂肪酸のエステル化が、Kelkar et al.(2008年)によって論じられている(非特許文献4)。同様に、流体力学的キャビテーションは、飲用水の消毒のための微生物の破壊(Jyoti及びPandit、2002年)(非特許文献5)、細胞内酵素の放出のための細胞破壊(非特許文献6)、乳化(非特許文献7)、ナノ粒子合成(非特許文献8)に適用されている。
【0007】
流体力学的キャビテーションでは、反応装置内で生じているキャビテーションの強度は、キャビテーション係数によって全体的な動作条件に関連付けられる。キャビテーション係数は、以下のように数学的に表され得る。
【0008】
【数1】

【0009】
式中、Pは、キャビティジェネレータの下流の回復圧力、
は、動作温度での液体の蒸気圧、
は、キャビティジェネレータにおける液体の平均速度、
ρは、液体の密度である。
【0010】
キャビテーションの初生が起こるキャビテーション係数は、キャビテーション初生係数Cviとして知られている。理想的には、キャビテーション初生は、Cvi=1で起こり、1未満のC値で有意なキャビテーション効果がある。さらに、キャビティの動的挙動は、物理的及び化学的プロセスの強化において大きな役割を果たす。
【0011】
特定のタイプの変換のための流体力学的キャビテーション反応装置の性能は、反応装置内に生じているキャビテーション状態に応じて変わる。上述の研究はすべて、所与のプロセスのための流体力学的キャビテーションの適用に関する特定の条件を開示している。しかしながら、前掲の従来技術は、多様な媒質での所定のプロセス強化のための流体力学的キャビテーション反応装置の設計法については教示していない。
【0012】
流動流体中で流体力学的キャビテーションを発生させる装置及び方法は、従来技術において既知である。
【0013】
特許文献1は、自由分散系を得るための流体力学的キャビテーション装置を開示しており、この装置は、入口開口及び出口開口を有し、且つコントラクタ、バッフル体が設けられた流路、及びディフューザを内部に収容するハウジングを備え、コントラクタ、バッフル体が設けられた流路及びディフューザは、上記ハウジングの入口開口側から連続して取り付けられて互いに接続されている。バッフル体は、流路の少なくとも2つの部分で流れの局所的な狭窄を達成するために少なくとも2つの相互接続された要素を備える。流速は、出口における流速に対するこれらの部分における流速の比が少なくとも2.1であり、キャビテーションの程度が少なくとも0.5であるように維持される。キャビテーションの程度は、バッフル間の形状及び距離を変えることによって変えることができる。しかしながら、該特許による自由分散系は、液液系及び固液系に特に限定される。該特許は、発生し得るキャビテーションの程度の範囲を開示していない。該特許は、どのバッフル形状又はどのバッフル間隔がどの程度のキャビテーションをもたらすのかを開示していない。したがって、該特許は、多様な媒質での所定のプロセス強化のための流体力学的キャビテーション装置/反応装置を設計又は達成する方法を教示していない。
【0014】
特許文献2は、中央又は中央付近で単一のバッフル体を内部に収容しているか又は壁付近に配置された単一のバッフル体を内部に収容している流路を備える自由分散系を得るための流体力学的キャビテーション装置を開示している。キャビテーションの程度は、バッフル体の異なる形状によって、且つ縮流比(constriction ratio)の調節によって変えられるものとして特許請求されている。縮流比(flow constriction ratio)は0.8とすべきであり、収縮部における流速は少なくとも14m/sとすべきである。該特許で考慮されている自由分散系は、液液系及び固液系に特に限定される。バッフルの種々の形状が提示されてはいるものの、任意所与の幾何学的条件又は動作条件でキャビテーションの程度を向上させる形状又は低下させる形状に関する情報は与えられていない。少なくとも14m/sの流速を維持すること以外は、動作圧力及び分散系の温度の範囲に関する情報も、考慮される液体及び固体の物理化学的パラメータに関する情報も与えられていない。したがって、該特許は、多様な媒質での所定のプロセス強化のための流体力学的キャビテーション装置/反応装置を設計又は達成する方法を教示していない。
【0015】
特許文献3、特許文献4、及び特許文献5は、大規模の流体力学的キャビテーションを用いた音響化学反応を実行する方法及び装置を開示している。この装置は、壁体又はバッフルであり得る少なくとも1つの要素を内部に含む流通路を備え、上記要素は、流体力学的流れの局所的狭窄部を形成することにより該要素の下流にキャビテーション空洞を形成する。円形、楕円形、直角、多角形、及びスロットのような標準的な形状の壁体又はバッフルが提示されている。この装置は、再循環モードで動作し得る。これらの特許は、流体力学的キャビテーション装置と、以前に音響化学反応に分類されているような反応のみを実行する方法とを開示している。上記特許は、音響化学反応に有利なバッフル体の形状に関する情報を一切与えていない。上記特許は、所定の変換レベルでの特定の反応(音響化学反応に限らず任意の反応)のための流体力学的キャビテーション反応装置の設計に関する情報を一切与えていない。上記特許の教示は、事前決定された変換又はプロセス強化の程度で所定の物理化学的変換を実行する流体力学的キャビテーション反応装置の設計まで拡張も到達もすることができない。
【0016】
特許文献6、特許文献7、及び特許文献8は、流体力学的キャビテーションを発生させる装置及び方法を記載している。この装置は、上流部分及び下流部分を有する流通室を備え、下流部分は上流部分よりも大きな断面積を有し、流通室の壁は装置内に取り外し可能且つ交換可能に取り付けられる。バッフル要素は、種々の形状及びサイズを有することができ、バッフル要素の下流でキャビテーションを発生させるために流通室内に取り外し可能に取り付けられる。キャビテーションの程度は、バッフル要素の形状、サイズ、及び場所を変えることによって変えられると述べられている。しかしながら、上記特許は、必要であり且つ有用な変換に使用され得ると共に流体力学的キャビテーション反応装置の設計及び最適化に使用され得る反応装置内のキャビテーションの程度にこれらのパラメータが及ぼす効果については説明していない。上記特許の教示は、物理化学的変換を所定のレベルまで又は強化するように実行する流体力学的キャビテーション反応装置の設計まで拡張も到達もすることができない。
【0017】
特許文献9は、流体力学的キャビテーションに基づいた海水等の船舶バラスト水の消毒の装置及び方法を記載している。キャビテーション室には、流体の流れの方向に対して垂直に配置される1つ又は複数のキャビテーション要素が必須に設けられ、該キャビテーション要素は、均等又は不均等の間隔で互いに離間しており、上記キャビテーション要素はそれぞれ、1つ又は複数のオリフィスの形態で部分的開口部(fraction open area)を有する。しかしながら、キャビテーション状態のタイプの効果が消毒の程度に具体的に関連付けられていないため、この方法は、バラスト水の処理以外の変換のためのキャビテーション反応装置の設計に使用することができない。
【0018】
従来技術で述べられた上記装置及び方法はすべて、設計について十分に検討することなく特定のタイプの変換に使用された。これらのいずれも、装置内で発生するキャビテーションの状態/キャビテーションのタイプに関する情報を一切与えていない。上述の従来技術は、特定の物理化学的変換を実行するのに使用することができる、調整されたキャビテーション状態を用いる流体力学的キャビテーション反応装置を設計する方法も教示していない。特定の物理化学的変換に必要なキャビテーション状態のタイプは、従来技術を用いては到達することができず、当業者が過度の実験を行うことなくシームレスに拡張することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5,492,654号
【特許文献2】米国特許第5,810,052号
【特許文献3】米国特許第5,937,906号
【特許文献4】米国特許第6,012,492号
【特許文献5】米国特許第6,035,897号
【特許文献6】米国特許第6,502,979号
【特許文献7】米国特許第7,086,777号
【特許文献8】米国特許第7,207,712号
【特許文献9】国際公開第WO2007/054956号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】SenthilKumar, P., Sivakumar, M. & Pandit, A. B. Experimentalquantification of chemical effects of hydrodynamic cavitation. ChemicalEngineering Science, 55, 1633-1639, 2000.
【非特許文献2】Gogate, P. R. & Pandit, A. B. A review and assessment ofhydrodynamic cavitation as a technology for the future. UltrasonicSonochemistry, 12, 21-27, 2005.
【非特許文献3】Kelkar, M. A. & Pandit, A. B. Cavitationally Induced ChemicalTransformations. M. Chem. Engg. Thesis, University of Mumbai, 2005.
【非特許文献4】Kelkar, M. A., Gogate, P. R. & Pandit, A. B. Intensification ofesterification of acids for synthesis of biodiesel using acoustic andhydrodynamic cavitation. Ultrasonic Sonochemistry, 15, 188-194, 2008.
【非特許文献5】Jyoti, K. K. & Pandit, A. B. Studies in water disinfectiontechniques. Ph.D. (Tech) Thesis, University of Mumbai, 2002.
【非特許文献6】Balasundaram, B. & Harrison, S. T. L. Study of Physical andBiological Factors Involved in the Disruption of E. Coli by HydrodynamicCavitation
【非特許文献7】Gaikwad, S. G. & Pandit, A. B. Application of Ultrasound inHeterogeneous Systems. Ph.D. (Tech) Thesis, University of Mumbai, 2007.
【非特許文献8】Patil, M. N. & Pandit, A. B. Cavitation-A Novel Technique formaking stable nano-suspensions. Ultrasonics Sonochemistry, 14, 519-530, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主な目的は、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中で調整されたキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置を設計する方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、流体力学的キャビテーション反応装置内のデザイナキャビティ(designer cavity)(特定のサイズを有し、且つ事前決定された動的挙動を示す)によって流体力学的キャビテーション反応装置内で所定のタイプのキャビテーションを発生させる方法、及び該方法を用いて生成されるキャビテーション様相(regimes)のマップを提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、流体力学的キャビテーション反応装置の構造特徴及び動作条件を変えることによって、反応装置内のキャビティダイナミクス(すなわち、キャビティの発生、成長、振動、及び/又は崩壊)を調整する手段を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、キャビティ発生点の下流の乱流特性を変えることによって、キャビティの挙動を制御する方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、反応物の流路における流れモジュレータ及び該流れモジュレータの下流の格納部(containment)の幾何学的形状と、反応物の性質とを相乗的に組み合わせることによって、所定のキャビテーションを達成するように下流乱流を制御する手段を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、工業規模のプロセス強化のためのデザイナキャビティを有する流体力学的キャビテーション反応装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】キャビティジェネレータを通過する速度をキャビテーションのパーセント及びキャビテーション係数に対してプロットした、キャビテーション室の種々の設計のキャビテーション様相マップを示す。
【図2】液体密度の変化がキャビテーションの程度及びタイプに及ぼす効果を示す、非水系のキャビテーション様相マップを示す。
【図3】密度及び粘度の関数としての活発(active)キャビテーション及び安定(stable)キャビテーションの変動を示す。
【図4】本特許に含まれる実施例に関する数値評価したキャビテーション状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中で調整されたキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置の設計に関する。本発明では、流体力学的キャビテーション反応装置の構造特徴及び動作条件がキャビテーション状態(キャビティダイナミクス及びキャビテーションの強度)に及ぼす複数の効果の間の新規かつ有用かつ運用可能な関係が確立され、それに続いてその関係を使用して、物理的及び化学的プロセスの強化のために所定のキャビテーション状態を達成するように流体力学的キャビテーション反応装置が設計される。
【0029】
流体力学的キャビテーション反応装置は、キャビティジェネレータ、キャビティダイバータ、及び乱流マニピュレータを備え、キャビティジェネレータ/キャビティダイバータは、種々の形状及びサイズの流れモジュレータである。乱流マニピュレータは、キャビティを成長、振動、及び/又は崩壊させる乱流の規模及び強度を変えることで、望ましい物理化学的変換に最も適した振動キャビティ挙動、過渡的(transient)キャビティ挙動、又は多崩壊(multi-collapse)キャビティ挙動を得ることができるさまざまな幾何学的要素を含む。流れモジュレータは、円形又は矩形又は三角形又は任意の他の適当な形状を有する1つのオリフィス及び/又は複数のオリフィス(薄刃又は異形)であってもよく、又は適当な収束角度又は発散角度を有する収束部及び発散部を有するベンチュリであってもよい。
【0030】
したがって、本発明によれば、最初に、流れモジュレータの構成の種々の構造特徴及び動作条件の範囲のCFDシミュレーションが、RNG k−ε乱流モデルを用いたFLUENT6.2のような任意の市販CFDコードを使用して行われる。CFDシミュレーションから得られる静圧、乱流運動エネルギー、及び周波数のような流れ情報が、キャビティダイナミクスシミュレーションに使用される。キャビティダイナミクスシミュレーションは、Rayleigh−Plesset方程式及びTomita−Shima方程式のような気泡ダイナミクスモデルに基づく。
【0031】
システム内の最大圧力の少なくとも10倍の瞬間圧力を生むキャビティは、キャビテーション効果を生むことができ、活発キャビティと称され、活発キャビティの割合は、以下のように推定される。
【数2】

【0032】
発生するキャビテーション状態は、キャビテーション活動%として表され、安定又は過渡的崩壊挙動を示しており単純な溶解特性を示さないキャビティとして定義される。過渡的キャビテーション%は、全キャビテーション活動のうち何パーセントのキャビティが過渡的挙動を示すか(体積膨張・収縮の1サイクルで崩壊するか)を示し、同様に、安定キャビテーション%は、全キャビテーション活動のうち何パーセントのキャビティが振動挙動を示すか(体積膨張・収縮の1サイクルで崩壊するか)を示す。
【0033】
流れモジュレータの構成及び動作条件(表1)の変化が流体力学的キャビテーション反応装置内のキャビテーション状態に及ぼす効果は、水様流体に関して規定されるキャビテーション係数(図1)等の既定のパラメータに基づいてマッピングされる。(図1の)マップでの流れモジュレータにおける流速は、考慮される流れモジュレータの種々の構造特徴及び動作条件の範囲の効果を表している。本発明の一態様では、キャビテーション装置内で起こるキャビテーションの強度及びタイプと表1及び図1に示されるような範囲の幾何学的形状及び動作条件との間で関係が確立され、実証される。本発明の関連の態様では、図1と同様の様相マップを利用して、特定の目標プロセス強化に必要な所望のタイプのキャビテーションが同定され、続いて、所望且つ所定のプロセス強化を達成するように反応装置が設計される。
【0034】
図1は、特定の(異なる幾何学的構成及び動作条件で得られる同一のキャビテーション係数)キャビテーション係数(キャビテーションの程度)に関して、多様な物理的及び化学的プロセスの強化のために水性及び非水性媒質中で調整されたキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置の設計に使用され得る流体力学的キャビテーション反応装置内のキャビテーション状態(過渡的又は安定又は活発)に、定量化可能な差があることを立証している。
【0035】
図1を利用して、流れモジュレータが存在する結果としての、流体力学的キャビテーション反応装置の構造特徴及び流速で表わされる動作条件の効果が分かり得る。以下の実施例で示されるように、本発明で提案されるこの方法を使用することで、幾何学的形状及び動作条件に応じて変換のタイプと反応装置内で生じているキャビテーション状態との間に明確な関係が確立されており、これにより、変換を支える上記物理学的作用/化学的作用を促進及び/又は強化することができる。したがって、図1を使用して、特定の所望のタイプの変換に望ましいキャビテーション状態/キャビテーションのタイプを得るように、所定の範囲の動作条件のためのキャビテーション反応装置を設計することができる。
【0036】
例えば、キャビティジェネレータ内の流速がキャビテーション反応装置内に生じているキャビテーション状態に及ぼす効果。図1から、1.0の閾値キャビテーション係数から初めてキャビテーションの発生(活発キャビテーション)が始まることが分かり得る。キャビテーション係数がさらに減少すると、キャビテーション係数0.22までキャビテーション事象が増加する。キャビテーション係数をさらにそれ以上減少させても、キャビテーション事象は増加しない。これは、流体主成分として主に水を含む水系で主に見られた。
【0037】
図1から、キャビティジェネレータにおける液体速度を上昇させると、過渡的タイプのキャビテーションがますます優勢になることにより、生じているキャビテーション状態全体で安定タイプのキャビテーションの勢力を弱めることも分かり得る。しかしながら、0.22以下のキャビテーション係数では、過渡的キャビテーション及び安定キャビテーションの両方が、キャビテーション状態全体に等しく依存する(活発キャビティ%)。
【0038】
非水系に関するキャビテーションマップが図2に示されている。キャビテーション媒質に関する非水系は、本質的に、水と全く異なる密度、表面張力、及び粘度を特徴付けられる。本発明は、下記の範囲の物理化学的特性を有する任意の液体又は液体の混合物に関するキャビテーションシステムの設計について説明する。
密度:800kg/m〜1500kg/m(水:1000kg/m
粘度:1cP〜100cP(水:1cP)
表面張力:0.01N/m〜0.075N/m(水:0.072N/m)
蒸気圧:30℃で300N/m〜101325N/m(水:4200Pa)
【0039】
反応/変換用の媒質は、反応物に対する溶解性/分散能を有すると共に反応物と同じ範囲の物理化学的特性を有する任意の適当な溶媒から選択され得る。
【0040】
液体密度が高くなると(800kg/m〜1500kg/mの上記範囲で)、安定キャビテーションの程度が20%近く減少する(そして過渡的キャビテーションが増加する)ことが分かる。活発キャビティは、液体粘度が高くなると減少し、100cPを超えると存在しなくなる(図3)。0.01N/m〜0.075N/mの範囲の表面張力は、キャビテーション係数1及び0.37という2つの極端に異なる場合について、キャビテーションの程度又は性質を変えるのにそれほど大きな役割を果たさないことが分かった。無次元パラメータである「キャビテーション係数」は、液体の蒸気圧を考慮に入れたものであるため、蒸気圧の変動がキャビテーションマップに直接反映される。
【0041】
したがって、液体力学的キャビテーション反応装置は、キャビテーション係数が、
「Ven_ori」及び「Orifice」では安定キャビテーションのための0.5〜1.0、
「Venturi」、「NC_ven」、「Ven_step4」、「Stepped2」、「Ori_Ven」、「Stepped4」では過渡的キャビテーションのための0.22〜0.5、
「Ven_ori」及び「Orifice」ではキャビテーションの同時安定及び過渡的のための0.22〜0.5
の範囲から選択され、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように設計することができる。
【0042】
したがって、本発明によると、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法が、
それぞれ目標の物理的及び/又は化学的変換に必要な安定及び/又は過渡的キャビテーションを選択するステップであって、
過渡的キャビテーションは、均一系における化学的変換のために選択され、
安定キャビテーションは、不均一系における化学的変換及び均一系における物理的変換のために選択され、
安定キャビテーション及び過渡的キャビテーションの両方は、不均一系における物理的変換のために選択される、安定及び/又は過渡的キャビテーションを選択するステップと、
最初のステップにおいて選択された物理的又は化学的変換のための範囲からキャビテーション係数を選択するステップと、
選択されたキャビテーション係数での選択されたタイプのキャビテーションに関して活発キャビテーションを最大化するように、様相マップからキャビテーション室の幾何学的形状を選択するステップと、
処理すべき体積流量に関して上記選択された幾何学的形状及び上記キャビテーション係数の範囲内で、方程式3:
【数3】

を使用してキャビティジェネレータの面積を求めるステップであって、式中、面積はキャビティジェネレータの面積(m)、流量は体積流量(m/s)、Pはキャビティジェネレータの下流の圧力(Pa)、Pは動作温度での選択された変換のために処理すべき液体の蒸気圧(Pa)、ρは液体の密度(kg/m)、Cは選択されたキャビテーション係数である、求めるステップと、
を含み、任意選択的に、キャビテーション室の選択されたタイプの幾何学的形状がオリフィスである場合、穴の流れ面積に対する穴の周囲長さの比であるαが最大化され且つ複数の穴の流れ面積の合計が上記面積と等しくなるように、最小サイズの複数の穴を選択して、穴の最小サイズが不均一相中の最大の硬質/半硬質粒子の少なくとも50倍であるようにすることによって、活発キャビテーションを最大化するための最適化が行われ、穴の最小サイズは1mmまでに制限され、
先行する化学的変換を含む乳化ステップを伴う液液不均一系における場合、ウェーバー数の追加基準=4.7が選択され、
ウェーバー数(We)は、破壊に抵抗する界面張力に対する破壊に関与する慣性力の比
【数4】

として定義され、式中、dΕはエマルションのサイズ、v’は乱流変動速度、ρは液体の密度、σは界面張力であり、
上記キャビテーション室の幾何学的形状の選択されたタイプが多オリフィスキャビティジェネレータである場合、穴の間隔は、
【数5】

から得られ、式中、dは穴間の間隔(m)、dは穴の最小寸法(m)、Vはキャビティジェネレータにおける液体の速度(m/s)である。
【0043】
図1、図2、及び図4におけるような、キャビテーション室を通る流体又はスラリーの最大速度と、キャビテーション係数と、活発、過渡的、及び安定キャビテーションのパーセンテージとを相関させる様相マップが、
キャビティジェネレータ、流れモジュレータ、及び乱流モジュレータから成るキャビテーション室の幾何学的形状全体で、(P)液体における圧力、(u)表1に示す基準系に従ったx方向の速度成分、(v)表1に示す基準系に従ったy方向の速度成分、(w)表1に示す基準系に従ったz方向の速度成分、(k)乱流運動エネルギー、(ε)乱流エネルギー散逸速度、(ρ)液体密度、(σ)液体相の表面張力及び界面張力、(μ)液体粘度等の基本的な変数から成る適当な方程式を用いて、材料の連続性及び運動量収支、乱流運動量エネルギー、並びに乱流エネルギー散逸速度を確定するステップであって、
連続方程式は、
【数6】

であり、運動量収支方程式は、
【数7】

であり、乱流運動エネルギー方程式は、
【数8】

であり、乱流エネルギー散逸速度方程式は、
【数9】

であり、
【数10】

は重力加速度ベクトルであり、上記方程式を数値的に解いてP、k、及びεを得る、確定するステップと、
キャビテーション室を通るキャビティが辿る可能性のある経路の数「n」を得るステップであって、
nは、100よりも有意に大きく、
キャビティが辿る経路は、ラグランジュ方程式:
【数11】

から得られ、式中、uはキャビティ速度、F(u−u)はキャビティの単位質量あたりの牽引力、ρはキャビティの密度、gはx方向(表1)の重力であり、
ラグランジュ方程式を数値的に解いてキャビティの時間依存座標が得られ、
ラグランジュ方程式(8)から得られる上記座標における収支の解(solution of balances)からPBulk、k、及びε□が得られる、経路の数「n」を得るステップと、
キャビティによって感知される圧力振幅(Pamp)、圧力周波数(f)、及び瞬間圧力(P)の値を、関係式
【数12】

から得るステップと、
上記P、Pamp、fのデータを使用して、キャビティダイナミクスモデルからキャビティダイナミクス(時間の関数としてのキャビティ半径)を得るステップであって、
キャビティダイナミクスモデルは、Rayleigh−Plesset方程式族、例えば、
【数13】

として一般的に知られており、式中、tは時間、Rは任意の時点のキャビティの半径、σは液体表面張力、μは液体粘度、Pは気泡内の圧力である、キャビティダイナミクスを得るステップと、
以下の基準を使用して、キャビティを活発、安定、及び過渡的キャビテーションとして分類するステップであって、
キャビティ内の圧力がキャビテーション室の入口における圧力の10倍を超える場合、キャビティが活発であり、
最終圧力がキャビティの寿命の間の該キャビティ内の最大圧力と等しくない場合、活発キャビティが安定キャビティであり、
最終圧力がキャビティ内の最大圧力と等しい場合、活発キャビティが過渡的キャビティである、分類するステップと、
所与の速度、キャビテーション係数、キャビテーション室の選択された幾何学的形状(形状及びサイズ)に関して、
活発キャビティの数÷キャビティの総数×100として活発キャビテーションのパーセンテージ、
安定キャビティの数÷活発キャビティの総数×100として安定キャビテーションのパーセンテージ、
過渡的キャビティの数÷活発キャビティの総数×100として過渡的キャビテーションのパーセンテージ、
を計算するステップと、
を含むプロセスによって得られる。
【0044】
上記方法を使用して、以下のようなキャビテーション室のさまざまな幾何学的形状を調整した。
【0045】
i)「Venturi」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
キャビティジェネレータと称する最小断面積の上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及びキャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である、流れモジュレータと、
を備え、該「Venturi」は、流れの方向に連続して配置される3つの同軸部分から成る。
収束部は、
軸が直線であり、
断面積が全長にわたって円形であり、
導管の直径が流れ方向で0.93m/m〜1.06m/mの割合で減少し、
断面積がスロート部の断面積と等しくなると終端するようなものである。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分と等しいようなものである。
発散部は、
導管の軸が直線であり、
導管の断面積が全長にわたって円形であり、
導管の直径が流れ方向で0.35m/m〜0.44m/mの割合で減少し、
その長さが収束部の長さの2.64倍と等しいようなものである。
【0046】
ii)「Ven_step4」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
上記キャビティジェネレータの下流にある乱流モジュレータであって、流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて導管を形成する、キャビティジェネレータの最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備え、該「Ven_step4」は、流れの方向に連続して配置される3つの同軸部分から成る。
収束部は、
軸が直線であり、
断面積が全長にわたって円形であり、
導管の直径が流れ方向で0.93m/m〜1.06m/mの割合で減少し、
断面積がスロート部の断面積と等しくなると終端するようなものである。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分であるようなものである。
発散部は、複数のオリフィスを含み、
後続のオリフィス板それぞれが前のオリフィス板に接触しており、
各オリフィス板が穴を1つだけ有し、
オリフィス板の穴すべてが円形であり且つスロート部の軸と同軸であり、
各オリフィス板の厚さがスロート部の長さの2倍であり、
後続のオリフィス板の直径が各オリフィス板の厚さの0.35倍〜0.44倍増加し、
長さが収束部の長さの2.64倍と等しいようなものである。
【0047】
iii)「Stepped2」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
上記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、流れ面積が漸増する流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて流れ面積が漸増する導管を形成し、上流で52度〜56度の全平均角度を再び有すると共に下流で20度〜25度の全平均角度を有する、キャビティジェネレータの最大寸法の半分と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
を備え、該「Stepped2」は、流れの方向に連続して配置される3つの同軸部分から成る。
収束部は、複数のオリフィスを含み、
後続のオリフィス板それぞれが前のオリフィス板に接触しており、
各オリフィス板が穴を1つだけ有し、
オリフィス板の穴すべてが円形であり且つスロート部の軸と同軸であり、
各オリフィス板の厚さがスロート部の長さと等しく、
後続のオリフィス板の穴の直径が各オリフィス板の厚さの0.93倍〜1.06倍減少し、
穴の面積がスロート部の断面積と等しくなると終端するようなものである。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分であるようなものである。
発散部は、複数のオリフィスを含み、
後続のオリフィス板それぞれが前のオリフィス板に接触しており、
各オリフィス板が穴を1つだけ有し、
オリフィス板の穴すべてが円形であり且つスロート部の軸と同軸であり、
各オリフィス板の厚さがスロート部の長さに等しく、
後続のオリフィス板の直径が各オリフィス板の厚さの0.35倍〜0.44倍増加し、
長さが収束部の長さの2.64倍と等しいようなものである。
【0048】
iv)「Ori_Ven」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である流れモジュレータと、
を備え、該「Ori_Ven」は、流れの方向に連続して配置される2つの同軸部分から成る。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分と等しいようなものである。
発散部は、
導管の軸が直線であり、
導管の断面積が全長にわたって円形であり、
導管の直径が流れ方向で0.35m/m〜0.44m/mの割合で増加し、
その長さが液体流速(m/s)÷スロート部の面積(m)×0.001mと等しいようなものである。
【0049】
v)「Stepped4」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
上記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、流れ面積に関してそれぞれ漸減的及び漸増的に配置され、それぞれ20度〜25度及び52度〜56度の全平均角度を有する、上記キャビティジェネレータの最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分の組み立て体としての、乱流モジュレータと、
を備え、該「Stepped4」は、流れの方向に連続して配置される3つの同軸部分から成る。
収束部は、複数のオリフィスを含み、
後続のオリフィス板それぞれが前のオリフィス板に接触しており、
各オリフィス板が穴を1つだけ有し、
オリフィス板の穴すべてが円形であり且つスロート部の軸と同軸であり、
各オリフィス板の厚さがスロート部の長さの2倍であり、
後続のオリフィス板の穴の直径が各オリフィス板の厚さの0.93倍〜1.06倍減少し、
オリフィス板の穴の面積がスロート部の断面積と等しくなると終端するようなものである。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分であるようなものである。
発散部は、複数のオリフィスを含み、
後続のオリフィス板それぞれが前のオリフィス板に接触しており、
各オリフィス板が穴を1つだけ有し、
オリフィス板の穴すべてが円形であり且つスロート部の軸と同軸であり、
各オリフィス板の厚さがスロート部の長さの2倍であり、
後続のオリフィス板の直径が各オリフィス板の厚さの0.35倍〜0.44倍増加し、
長さが収束部の長さの2.64倍と等しいようなものである。
【0050】
vi)「Ven_Ori」は、
α値を最大化する任意の形状のキャビテーション室の最小断面積の一部であるキャビティジェネレータと、
キャビティジェネレータの上流に対して52度〜56度の角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備え、該「Ven_Ori」は、流れの方向に連続して配置される2つの同軸部分から成る。
収束部は、
軸が直線であり、
断面積が全長にわたって円形であり、
導管の直径が流れ方向で0.93m/m〜1.06m/mの割合で減少し、
断面積がスロート部の断面積と等しくなると終端するようなものである。
スロート部は、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分と等しいようなものである。
【0051】
vii)「Orifice」は、
α値を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータ、
を備える。
該Orificeは、
軸が直線であり、
導管の断面積が円形であり、
断面積が一定であり且つ方程式(3)から得られ、
長さがその直径の半分と等しいようなスロート部から成る。
【0052】
viii)「NC_ven」は、
α値を最大化する非円形のキャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及びキャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部であり、上記キャビティジェネレータの下流で同じか又は異なるが非円形の形状を維持する、流れモジュレータと、
を備える。
【0053】
次に、細菌の破壊による水の消毒、ローダミンの分解、トルエンの酸化、冷却塔内の生物付着、脂肪酸のエステル化、及び可溶性炭素の放出のような、特定の物理的、化学的、又は生物学的変換におけるプロセス強化に関与する流体力学的キャビテーションの使用のための反応装置の設計の非限定的な実施例を用いて、本発明を説明する。幾何学的形状、エネルギー消費、キャビテーション最適化の効果に関連する実施例も含まれている。
【実施例】
【0054】
設計特徴、動作条件、キャビテーション状態、及びこれらのキャビテーション状態が種々の変換に及ぼす効果を、表2aに示す。流体力学的キャビテーション反応装置の設計について、これらのキャビテーション装置(表2aに示すように最初にシミュレートされた異なる構成のオリフィス板)を製造して実験により試験し、図1を実証した。
【0055】
図1を実証し、続いて特定のプロセス強化を実行するように反応装置を設計すると共に上述のような図1の用途を説明するのに使用した。
【実施例1】
【0056】
キャビテーション室の幾何学的解析
代表的な液体流速2.5×10−4/s及びキャビテーション係数0.5に対応するように、キャビテーション室の種々の幾何学低形状を設計した。上記パラメータは、説明のために選択されているに過ぎないが、提示された手法及びそこで得られる設計を、これらの動作パラメータ及び設計パラメータの範囲で利用することができる。キャビティジェネレータの面積を、上述の代表的な液体流速(2.5×10−4/s)及び選択したキャビテーション係数(0.5)について方程式(3)から計算し、1.26×10−5を得た。本手法に基づき、キャビテーション装置のいくつかの形状を得ると共にキャビテーション挙動について解析した。
【0057】
種々の設計で予測される圧力低下を表3に示す。所与の液体流速では、最小圧力低下(0.475atm)がベンチュリで起こる一方で最大圧力低下(3.15atm)がオリフィスで起こることが分かる。「ori_ven」の場合の圧力低下(1.55atm)は、「ven_ori」の圧力低下(2.13atm)よりも小さい。
【0058】
表3は、種々の設計で注入される全キャビティのうちの活発キャビティのパーセントを示す。オリフィスのような急激な拡大ではなく、下流部が発散状である(ベンチュリ/段状)である場合に、活発キャビティのパーセントが高くなることが分かる。
【0059】
表3は、いくつかの設計で形成される活発及び過渡的キャビティの程度を詳述している。表3は、本発明から得られる単位圧力低下あたりの活発キャビティのパーセンテージ及び単位圧力低下あたりの過渡的キャビティのパーセントを示す。本手法を使用することで、キャビテーション装置のキャビテーション挙動を定量化することが可能となり、所与の物理化学的変換に関して最適化された幾何学的形状及び動作パラメータを達成することができる。
【0060】
種々の設計に関するキャビテーション様相マップを本手法に基づいて生成し、図1に示す。実線は活発キャビティの程度を示し、点線は安定キャビティの程度を示す。キャビテーション様相マップを使用して、キャビテーション要素の任意の設計に関して動作パラメータ(キャビテーション係数)を決定することができる。図1は、水様物質のキャビテーション様相マップを示しているが、上記で行った説明に基づいて、密度、粘度、表面張力、及び蒸気圧が実質的に異なる液体に関してキャビテーション様相マップを変更することができる(図2)。
【実施例2】
【0061】
流体力学的キャビテーションを使用した飲用水の消毒/細菌の破壊
水の消毒、排水の処理、生物付着の回避、酵素の回収等のいくつかの用途のために、微生物細胞の破壊を実行する。微生物細胞付近でキャビティが崩壊するか(過渡的キャビテーション)又は急速に体積振動する(安定キャビテーション)と、微生物細胞は破壊される。過渡的又は安定キャビテーションによって生じて加えられた応力が細胞強度よりも有意に大きければ、細胞壁が破壊される。したがって、両方のタイプのキャビテーションが、細胞破壊の程度を高める(assist)可能性が高い。微生物消毒は、不均一系におけるキャビテーションの物理的効果により起こる。したがって、安定及び過渡的キャビテーションの両方を微生物細胞の破壊のために最大化すべきである。図1に示す様相マップから、オリフィスに関して最大の安定キャビテーションを与える0.22〜0.5の範囲でキャビテーション係数を選択する。上記範囲から選択したキャビテーション係数0.28について、6.73×10−4/sの流量に関するオリフィスの穴の面積を方程式(3)から計算し、2.55×10−5を得た。この穴の面積は、直径5.70mmの単一の穴に相当する。選択したキャビテーション室はオリフィス板であったため、α値(開口面積に対する穴の周囲長さの比)を最大化する必要がある。最大のα値を与える制限値1mmを選択する。それに従って、直径1mmの穴を33個有するオリフィス板を設計し製造した。異なる入口圧力でのキャビテーション要素(オリフィス板)の性能特性を表2bに示す。表2aから、入口圧力の上昇に伴ってキャビテーションの強度(活発キャビティのパーセント)が高くなり、それに起因して消毒のパーセンテージも高くなることが分かり得る。入口圧力が4倍上昇すると(1.72バールから5.77バール)、活発キャビテーションが13倍増加し、それにより消毒は50%増加した。前述のように、キャビテーションのタイプ(過渡的又は安定)は、水の消毒に大きな影響を及ぼす。約14m/s(w−1)という低い液体速度で実行した水の消毒に関する研究では、過渡的キャビティがごく僅かしか存在しない結果として、振動(安定)キャビティから得られる実質的消毒が約60%であることが示された。さらに、過渡的キャビテーション量が53%増加すると、消毒に50%の増加が見られ、これは過渡的キャビテーション効果と消毒との間にほぼ一対一の対応があることを示す。したがって、図1及び図4に基づいて安定キャビテーション又は過渡的キャビテーションでキャビテーション装置を設計し動作させることによって、物理的変換に関して必要な効果が得られる。したがって、不均一系における微生物細胞の破壊用の調整キャビテーション反応装置は、安定及び過渡的キャビテーションで動作するように設計されており、該装置では、6.73×10−4/sの流量に関してキャビテーション係数が0.22〜0.5から、好ましくは0.28に選択され、オリフィスの穴の面積が、直径5.70mmの単一の穴に相当する2.55×10−5であり、最小穴径が、α値を最大化するように、但し穴径が1mmであるときの制限値まで最大化するように選択されることにより、33個の穴になると必要な総流れ面積が得られ、39%の活発キャビテーションが起こり、そのうち安定キャビテーションの程度は46%であり、結果として86%の細胞破壊が得られる。
【実施例3】
【0062】
流体力学的キャビテーションを使用したローダミンの分解
ローダミンは、繊維工業で一般に使用される芳香族アミン染料である。そのような汚染物質を含有する廃液流を脱色することが必要となる。キャビテーションは、そのような分子の発色団を破壊することで廃液流を脱色する。これは、均一系における物理的変換である。したがって、安定キャビテーションをこのような変換のために最大化すべきである。図1に示す様相マップから、キャビテーション係数は、オリフィスに関して最大の安定キャビテーションを与える0.5〜1.0の範囲にあるべきである。選択したキャビテーション係数範囲から、キャビテーション係数0.78を選択し、4.08×10−4/sの流量に関するオリフィスの開口面積を方程式(3)から計算し、2.59×10−5を得た。この開口面積は、直径5.7mmの単一の穴に相当する。選択したキャビテーション室はオリフィス板であったため、α値(開口面積に対する穴の周囲の比)を最大化する必要がある。最大のα値を与える制限値1mmを選択する。この幾何学的形状と共に、α値を変えた(2及び1.33)いくつかの他の設計のオリフィス板も設計し製造して、流体力学的キャビテーションを発生させる能力を比較した(詳細は表2aを参照)。同じ入口圧力での3つの異なるオリフィス板の性能特性を表2aに示す。表2bから、入口圧力が同じ場合、ローダミンの分解パーセンテージがキャビテーション要素の幾何学的形状によって変わることが分かり得る。分解パーセンテージは、α値(表2a)の増加と共に増加した。R−1及びR−2の比較(図4)は、活発キャビティが同量である場合、5%の過渡的キャビテーションの発生が分解を約50%高め得ることを示す。同様に、R−3及びR−2の構成の比較から、R−3の構成では活発キャビテーションの量が32%減少しているが(図4)、分解の減少は僅かである(1%)ことが判明する。これは、R−3の場合に過渡的キャビテーションの量が約25%増加することに起因し得る。これは、図4によって発生及び予測されると共にキャビテーション要素の構造特徴によって得られるタイプのキャビテーションが、分子結合の破壊に基づくローダミンの分解において重要な役割を果たすことで、発色団が破壊されて脱色が得られることを明らかに示す。上述の理由から、α値を最大にして所与の手法に基づいて設計されたオリフィス板が他の設計と比較して最大の変換度を与えることが分かる。したがって、ローダミンの分解用の調整キャビテーション反応装置は、安定キャビテーションで動作するように設計されており、該装置では、4.08×10−4/sの流量に関して最大の安定キャビテーションを達成するために、キャビテーション係数が0.5〜1.0から、好ましくは0.78に選択され、オリフィスの穴の面積が直径5.7mmの単一の穴に相当する2.59×10−5であり、最小穴径が、α値を最大化するように、但し穴径が1mmであるときの制限値まで最大化するように選択されることにより、33個の穴になると総流れ面積及び95%の安定キャビテーションが得られ、結果として17%のローダミンの分解が得られる。
【実施例4】
【0063】
流体力学的キャビテーションを使用したトルエンの酸化
対応するアリールカルボン酸へのアルキルアレーンの酸化は、工業的に重要なプロセスである。工業的に、そのような酸化は、高温及び高圧条件下で希硝酸又は空気を使用して実行される。これは、不均一系であり、反応物の十分な混合を達成するために高い撹拌速度を必要とする。流体力学的キャビテーションは、反応物の微細エマルションを生成し、アルキルアレーンの酸化のためのラジカルも生成する。流体力学的キャビテーションを使用して、トルエンの酸化を実行した。これは、不均一系における化学的変換である。したがって、安定キャビテーションをこのような変換のために最大化すべきである。図1に示す様相マップから、キャビテーション係数は、オリフィスに関して最大の安定キャビテーションを与える0.5〜1.0の範囲とすべきである。選択したキャビテーション係数範囲から、キャビテーション係数0.78を選択し、22.2×10−4/sの流量に関するオリフィスの開口面積を方程式(3)から計算し、11.3×10−5を得た。この開口面積は、直径12mmの単一の穴に相当する。選択したキャビテーション室はオリフィス板であったため、α値(開口面積に対する穴の周囲の比)を最大化する必要がある。α値を最大化するために、最小の穴を、不均一相中の最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍に、但し1mmの値までに制限して選択する。液液不均一系に関して説明した方法に従って、ウェーバー数の基準(Weber number criterion)(We=4.7)によって分散相の最大サイズを得る。2.5m/sの乱流変動速度に関して、ウェーバー数から得られる分散相のサイズは0.051mmである。したがって、穴の制限値は、(50×0.0051)2.51mmとなり、製造を容易にするために四捨五入して3mmとすべきである。したがって、直径3mmの16個の穴を有するオリフィスを設計し製造した。この設計と共に、α値が2であるもう1つの設計を製造して、性能を比較した。表2aは、使用した幾何学的形状及び動作条件の詳細を示す。T−2及びT−4の場合の比較から、活発(図4)キャビテーションの量が20%増加すると変換が26%増加することが判明する。この反応は、全体的な反応の進行及び強化のために物理的(振動キャビティにより制御される乳化)及び化学的(過渡的キャビティにより制御される酸化)効果を必要とするため、安定キャビティの役割が相関付けられる。液液不均一系におけるトルエンの酸化用の調整キャビテーション反応装置は、最大化された安定キャビテーションで動作するように設計されており、該装置では、22.2×10−4/sの流量に関して活発キャビテーションのパーセンテージを最大化するために、キャビテーション係数が0.5〜1.0から、好ましくはキャビテーション係数0.78に、より好ましくはキャビテーション係数0.5に選択され、オリフィスの穴の面積は、直径12mmの単一の穴に相当する11.3×10−5であり、任意選択的に、最小穴径が、α値を最大化するように、但し穴径が1mm又は最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍であるときの制限値まで最大化するように選択されることで、最小直径が約2.51mmの穴が得られることにより、直径3mmの16個の穴を有するオリフィス板になり、90.3%の安定キャビテーションが得られる結果として53%のトルエンの酸化が得られるか、又はキャビテーション係数0.4で80%の安定キャビテーションが得られる結果として54%のトルエンの酸化が得られる。
【実施例5】
【0064】
キャビテーションを使用した冷却塔内の生物付着の除去
冷却塔の水中における微生物成長(藻類/菌類)は、冷却塔及び関連の熱交換装置内の生物付着につながる。安定及び過渡的キャビテーションを微生物細胞破壊のために最大化すべきであり、したがって、キャビテーション室がこのような用途のために最大の活発キャビテーションを与えるべきである。そのため、上記方法に従って、圧力低下が最小のベンチュリで最大の活発キャビテーションを与えるように、キャビテーション係数を0.5〜1.0の範囲内で選択する。上記範囲から選択したキャビテーション係数0.8について、3.14×10−2/sの流量に関するベンチュリのスロートの面積を方程式(3)から計算し、12.57×10−4を得た。2.5atmの吐出圧力及び25m/sと等しい速度を維持することによって、キャビテーション係数を0.8に保った。上記動作パラメータでのキャビテーション室の選択された設計により、26%の活発キャビテーション及び10%の過渡的キャビテーションが発生する。表4は、冷却ループを循環している水から13日間で100000CFU/mlから0CFU/mlに細菌数が減ることを示す。
【0065】
したがって、不均一系における生物付着の除去用の調整キャビテーション反応装置は、安定及び過渡的キャビテーションで動作するように設計されており、該装置では、3.14×10−2/sの流量に関して、キャビテーション係数が0.5〜1から、好ましくは0.8に選択され、ベンチュリのキャビティジェネレータの面積が、直径40mmのキャビティジェネレータに相当する12.57×10−4であり、26%の活発キャビテーションが起こり、そのうち過渡的キャビテーションの程度は10%であり、結果として細菌数が100%減少する。
【実施例6】
【0066】
流体力学的キャビテーションを使用したC/C10脂肪酸のエステル化
流体力学的キャビテーションを使用して、メタノールで脂肪酸のエステル化を実行し、メチルエステルを生成した。不均一系におけるそのような化学的変換のための安定キャビテーションを、そのような変換のために最大化する必要がある。そのため、本方法に従って、キャビテーション係数は、オリフィスに関して最大の安定キャビテーションを与える0.5〜1.0の範囲とすべきである。選択したキャビテーション係数範囲から、キャビテーション係数0.78を選択し、22.2×10−4/sの流量に関するオリフィスの開口面積を方程式(3)から計算し、11.3×10−5を得た。この開口面積は、直径12mmの単一の穴に相当する。選択したキャビテーション室はオリフィス板であったため、α値(開口面積に対する穴の周囲の比)を最大化する必要があり、そのために、最小の穴を、不均一相中の最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍に、但し1mmの値までに制限して選択する。液液不均一系に関して説明した方法に従って、ウェーバー数の基準(We=4.7)によって分散相の最大サイズを得る。2.5m/sの乱流変動速度に関して、ウェーバー数から得られる分散相のサイズは0.051mmである。したがって、穴の制限値は、(50×0.0051)2.51mmとなり、製造を容易にするために四捨五入して3mmとすべきである。したがって、直径3mmの16個の穴を有するオリフィスに調整した。上述の方法に基づくオリフィス設計を動作させると、210分間で90%のC/C10脂肪酸がメチルエステルに変換される。
【0067】
液液不均一系におけるC/C10脂肪酸のエステル化用の調整キャビテーション反応装置は、最大化された安定キャビテーションモードで動作するように設計されており、該装置では、22.2×10−4/sの流量に関して活発キャビテーションのパーセンテージを最大化するために、キャビテーション係数が0.5〜1.0から、好ましくはキャビテーション係数0.78に、より好ましくはキャビテーション係数0.5に選択され、オリフィスの穴の面積は、直径12mmの単一の穴に相当する11.3×10−5であり、任意選択的に、最小穴径が、α値を最大化するように、但し穴径が1mm又は最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍であるときの制限値まで最大化するように選択されることで、最小直径が約2.51mmの穴が得られることにより、直径3mmの16個の穴を有するオリフィス板になり、90.3%の安定キャビテーションが得られる結果としてキャビテーション係数0.78で210分間で90%のC/C10脂肪酸がエステル化される。
【実施例7】
【0068】
流体力学的キャビテーションを使用した活性汚泥処理のための可溶性炭素の放出
流体力学的キャビテーションを用いて、系内の活性バイオマスの破壊からの活性汚泥処理のために可溶性炭素を得る。そのような用途では、可溶性炭素の放出を効率的に達成するために過渡的キャビテーションを最大化する必要がある。本方法に従って、圧力低下が最小であるベンチュリ(表3)に関して最大の過渡的キャビテーションを与える0.22〜0.5の範囲でキャビテーション係数を選択する。上記範囲のキャビテーション係数から選択したキャビテーション係数0.5及び2.23×10−4/sの流量について、オリフィスの穴の面積を方程式(3)から計算し、1.18×10−5を得た。この穴の面積は、ベンチュリのスロート直径3.88mm(約4mm)に相当する。本方法に基づいて調整されたベンチュリを動作させると、10分間の動作で2000ppmの可溶性炭素が放出される。
【0069】
したがって、図1及び図4に基づいて、過渡的キャビテーションでキャビテーション装置を設計し動作させることによって、物理的変換に関して必要な効果が得られる。したがって、不均一系におけるバイオマスの破壊からの可溶性炭素の放出用の調整キャビテーション反応装置は、過渡的キャビテーションで動作するように設計されており、該装置では、2.23×10−4/sの流量のベンチュリでキャビテーション係数が0.22〜0.5から、好ましくは0.55に選択され、ベンチュリのキャビティジェネレータの面積が、直径4mmのキャビティジェネレータに相当する1.18×10−5であり、30%の活発キャビテーションが起こり、そのうち過渡的キャビテーションの程度は96%であり、結果として破壊されたバイオマスから2000ppmの可溶性炭素が得られる。
【0070】
結論として、上記の実施例では、両方のタイプのキャビテーション、すなわち過渡的キャビテーション及び安定キャビテーションが、変換のメカニズムに応じて物理化学的変換を引き起こすことが分かる。微生物消毒(水の消毒)及びローダミン分解は、主に安定キャビテーションによって引き起こされるが、特に強力なキャビテーションが必要な場合(可溶性炭素の放出)及び分子レベルでの変化が必要な場合(トルエンの酸化)に、過渡的キャビテーションが必要である。キャビテーションは、所定の特定の最小変換エネルギーを必要とする特定の変換を達成するために調整することができ(デザイナキャビティ)、キャビテーション要素の幾何学的形状及び動作条件は、優勢な特定のタイプのキャビテーション、すなわち、キャビティのサイズ、キャビティの過渡的及び/又は安定挙動、並びに活発にキャビテーションが行われる事象の数をもたらすように調整することができる。実施例は、所定の物理化学的変換を達成するためのキャビテーション反応装置の設計のためのキャビテーションマッピングを容易にする本発明の力を明確に実証している。例えば、
0.5〜1の範囲のキャビテーション係数では、水状特性を有する流体中での物理的効果に主に関与する安定タイプのキャビテーションが優勢である。
0.5〜0.22の範囲のキャビテーション係数では、水様流体中での化学的効果に主に関与する過渡的タイプのキャビテーションがより優勢である。
0.22未満のキャビテーション係数では、過渡的タイプ及び安定タイプのキャビテーションの両方が等しい勢力を示し、水様流体中での全変換で物理的効果及び化学的効果の両方を必要とする変換に有用である。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置であって、キャビテーション係数が、
「Ven_ori」及び「Orifice」では安定キャビテーションのための0.5〜1.0、
「Venturi」、「NC_ven」、「Ven_step4」、「Stepped2」、「Ori_Ven」、「Stepped4」では過渡的キャビテーションのための0.22〜0.5、
「Ven_ori」及び「Orifice」では同時安定及び過渡的キャビテーションのための0.22〜0.5
の範囲から選択され、該装置は、「Ven_ori」、「Orifice」、「Venturi」、「NC_ven」、「Ven_step4」、「Stepped2」、「Ori_Ven」及び「Stepped4」の組み合わせを含み、
「Venturi」の幾何学的形状は、
穴の流れ面積に対する穴の周囲の値(α)を最大化する円形又は非円形のキャビテーション室の最大断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータと称する最小断面積の上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及び前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である、流れモジュレータと、
を備え、
「Ven_step4」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流にある乱流モジュレータであって、流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて導管を形成する、前記キャビティジェネレータの最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
前記キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備え、
「Stepped2」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、流れ面積が漸増する流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて流れ面積が漸増する導管を形成し、上流で52度〜56度の全平均角度を再び有すると共に下流で20度〜25度の全平均角度を有する、前記キャビティジェネレータの前記最大寸法の半分と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
を備え、
「Ori_Ven」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である流れモジュレータと、
を備え、
「Stepped4」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、前記流れ面積に関してそれぞれ漸減的及び漸増的に配置され、それぞれ20度〜25度及び52度〜56度の全平均角度を有する、前記キャビティジェネレータの前記最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分を有するアセンブリとしての、乱流モジュレータと、
を備え、
「Ven_Ori」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する任意の形状の前記キャビテーション室の最小断面積の一部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの上流に対して52度〜56度の角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備え、
「Orifice」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータ、
を備え、
「NC_ven」の幾何学的形状は、
前記α値を最大化する非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及び前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部であり、前記キャビティジェネレータの下流で同じか又は異なるが非円形の形状を維持する、流れモジュレータと、
を備える、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るための流体力学的キャビテーション反応装置。
【請求項2】
不均一系における微生物細胞の破壊用であり、安定及び過渡的キャビテーションで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、6.73×10−4/sの流量に関して0.22〜0.5から、好ましくは0.28に選択され、オリフィスの穴の面積は、直径5.70mmの単一の穴に相当する2.55×10−5であり、最小穴径が、前記α値を最大化するように、但し穴径が1mmであるときの制限値まで最大化するように選択されることにより、33個の穴になると必要な総流れ面積が得られ、39%の活発キャビテーションが起こり、そのうち安定キャビテーションの程度は46%であり、結果として86%の細胞破壊が得られる、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項3】
ローダミンの分解用であり、安定キャビテーションで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、4.08×10−4/sの流量に関して最大の安定キャビテーションを達成するために0.5〜1.0から、好ましくは0.78に選択され、オリフィスの穴の面積が直径5.7mmの単一の穴に相当する2.59×10−5であり、最小穴径が、前記α値を最大化するように、但し穴径が1mmであるときの制限値まで最大化するように選択されることにより、33個の穴になると総流れ面積及び95%の安定キャビテーションが得られ、結果として17%のローダミンの分解が得られる、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項4】
液液不均一系におけるトルエンの酸化用であり、最大化された安定キャビテーションで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、22.2×10−4/sの流量に関して活発キャビテーションのパーセンテージを最大化するために0.5〜1.0から、好ましくはキャビテーション係数0.78に、より好ましくはキャビテーション係数0.5に選択され、オリフィスの穴の面積が直径12mmの単一の穴に相当する11.3×10−5であり、任意選択的に、最小穴径が、前記α値を最大化するように、但し穴径が1mm又は最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍であるときの制限値まで最大化するように選択されることで、最小直径が約2.51mmの穴が得られることにより、直径3mmの16個の穴を有するオリフィス板になり、90.3%の安定キャビテーションが得られる結果として53%のトルエンの酸化、又はキャビテーション係数0.4で80%の安定キャビテーションが得られる結果として54%のトルエンの酸化が得られる、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項5】
不均一系における生物付着の除去用であり、安定及び過渡的キャビテーションで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、3.14×10−2/sの流量に関して0.5〜1から、好ましくは0.8に選択され、ベンチュリのキャビティジェネレータの面積が、直径40mmのキャビティジェネレータに相当する12.57×10−4であり、26%の活発キャビテーションが起こり、そのうち過渡的キャビテーションの程度は10%であり、結果として細菌数が100%減少する、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項6】
液液不均一系におけるC/C10脂肪酸のエステル化用であり、最大化された安定キャビテーションモードで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、22.2×10−4/sの流量に関して活発キャビテーションのパーセンテージを最大化するために0.5〜1.0から、好ましくはキャビテーション係数0.78に選択され、オリフィスの穴の面積が直径12mmの単一の穴に相当する11.3×10−5であり、任意選択的に、最小穴径が、前記α値を最大化するように、但し穴径が1mm又は最大の硬質/半硬質粒子のサイズの少なくとも50倍であるときの制限値まで最大化するように選択されることで、最小直径が約2.51mmの穴が得られることにより、直径3mmの16個の穴を有するオリフィス板になり、90.3%の安定キャビテーションが得られる結果としてキャビテーション係数0.78で210分間で90%のC/C10脂肪酸がエステル化される、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項7】
不均一系におけるバイオマスの破壊からの可溶性炭素の放出用であり、過渡的キャビテーションで動作するようになっており、前記キャビテーション係数は、2.23×10−4/sの流量のベンチュリで0.22〜0.5から、好ましくは0.5に選択され、ベンチュリのキャビティジェネレータの面積が直径4mm(約3.8mm)のキャビティジェネレータに相当する1.13×10−5であり、30%の活発キャビテーションが起こり、そのうち過渡的キャビテーションの程度は96%であり、結果として破壊されたバイオマスから2000ppmの可溶性炭素が放出される、請求項1に記載のキャビテーション反応装置。
【請求項8】
キャビテーション係数を通過する流体又はスラリーの最大速度と、活発及び/又は過渡的/安定キャビテーションのパーセンテージとを相関させる様相マップ(図1、図2、図4)を使用して、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法であって、
それぞれ目標の物理的及び/又は化学的変換に必要な安定及び/又は過渡的キャビテーションを選択するステップであって、
前記過渡的キャビテーションは、均一系における化学的変換のために選択され、
前記安定キャビテーションは、不均一系における化学的変換及び均一系における物理的変換のために選択され、
前記安定キャビテーション及び前記過渡的キャビテーションの両方は、不均一系における物理的変換に選択される、安定及び/又は過渡的キャビテーションを選択するステップと、
前記最初のステップにおいて選択された物理的又は化学的変換のための範囲から前記キャビテーション係数を選択するステップと、
前記選択されたキャビテーション係数での選択されたタイプのキャビテーションに関して前記活発キャビテーションを最大化するように、様相マップからキャビテーション室の幾何学的形状を選択するステップと、
処理すべき体積流量に関して前記選択された幾何学的形状及び前記キャビテーション係数の範囲内で、方程式3:
【数1】

を使用してキャビティジェネレータの面積を求めるステップであって、式中、面積は前記キャビティジェネレータの面積(m)、流量は体積流量(m/s)、Pは前記キャビティジェネレータの下流の圧力(Pa)、Pは動作温度での選択された変換のために処理すべき液体の蒸気圧(Pa)、ρは液体の密度(kg/m)、Cは前記選択されたキャビテーション係数である、求めるステップと、
を含み、任意選択的に、前記キャビテーション室の選択されたタイプの幾何学的形状がオリフィスである場合、穴の流れ面積に対する穴の周囲長さの比であるαが最大化され且つ複数の穴の前記流れ面積の合計が前記面積と等しくなるように、最小サイズの複数の穴を選択して、前記穴の最小サイズが不均一相中の最大の硬質/半硬質粒子の少なくとも50倍であるようにすることによって、前記活発キャビテーションを最大化するための最適化が行われ、前記穴の最小サイズは1mmまでに制限され、
先行する化学的変換を含む乳化ステップを伴う液液不均一系における場合、ウェーバー数の追加基準=4.7が選択され、
前記ウェーバー数(We)は、破壊に抵抗する界面張力に対する破壊に関与する慣性力の比
【数2】

として定義され、式中、dΕはエマルションのサイズ、v’は乱流変動速度、ρは液体の密度、σは界面張力であり、
前記キャビテーション室の幾何学的形状の選択されたタイプが複数のオリフィスである場合、前記穴の間隔は、
【数3】

から得られ、式中、dは前記穴間の間隔(m)、dは前記穴の最小寸法(m)、Vは前記キャビティジェネレータにおける液体の速度(m/s)である、物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項9】
前記キャビテーション係数は、
「Ven_ori」及び「Orifice」では安定キャビテーションのための0.5〜1.0、
「Venturi」、「NC_ven」、「Ven_step4」、「Stepped2」、「Ori_Ven」、「Stepped4」では過渡的キャビテーションのための0.22〜0.5、
「Ven_ori」及び「Orifice」では同時安定及び過渡的キャビテーションのための0.22〜0.5
の範囲から選択される、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項10】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータと称する前記最小断面積の上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及び前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である、流れモジュレータと、
を備える「Venturi」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項11】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流にある乱流モジュレータであって、流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて導管を形成する、前記キャビティジェネレータの最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
前記キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備える「Ven_step4」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項12】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、流れ面積が漸増する流れと平行な長軸に沿って配置され且つ繋ぎ合わせられて流れ面積が漸増する導管を形成し、上流で52度〜56度の全平均角度を再び有すると共に下流で20度〜25度の全平均角度を有する、前記キャビティジェネレータの前記最大寸法の半分と等しい複数の長さ(幅)の部分を有する、乱流モジュレータと、
を備える「Stepped2」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項13】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部である流れモジュレータと、
を備える「Ori_Ven」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項14】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの下流及び上流にある乱流モジュレータであって、前記流れ面積に関してそれぞれ漸減的及び漸増的に配置され、それぞれ20度〜25度及び52度〜56度の全平均角度を有する、前記キャビティジェネレータの前記最大寸法と等しい複数の長さ(幅)の部分を有するアセンブリとしての、乱流モジュレータと、
を備える「Stepped4」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項15】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する任意の形状の前記キャビテーション室の最小断面積の一部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの上流に対して52度〜56度の角度を有する平滑収束部である流れモジュレータと、
を備える「Ven_Ori」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項16】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する円形又は非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータ、
を備える「Orifice」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項17】
前記キャビテーション室の幾何学的形状は、
α値を最大化する非円形の前記キャビテーション室の最小断面積の一部又は全部であるキャビティジェネレータと、
前記キャビティジェネレータの上流で52度〜56度の全平均角度を有する平滑収束部、及び前記キャビティジェネレータの下流で20度〜25度の全平均角度を有する平滑発散部であり、前記キャビティジェネレータの下流で同じか又は異なるが非円形の形状を維持する、流れモジュレータと、
を備える「NC_ven」である、請求項8に記載の物理的及び化学的プロセスの強化のために、水性及び非水性媒質中でキャビテーション状態を得るように流体力学的キャビテーション反応装置を調整する方法。
【請求項18】
図1、図2、及び図4におけるような、キャビテーション室を通る流体又はスラリーの最大速度と、キャビテーション係数と、活発、過渡的、及び安定キャビテーションのパーセンテージとを相関させる、請求項8に記載の様相マップが、
キャビティジェネレータ、流れモジュレータ、及び乱流モジュレータから成るキャビテーション室の幾何学的形状全体で、(P)液体における圧力、(u)表1に示す基準系に従ったx方向の速度成分、(v)表1に示す基準系に従ったy方向の速度成分、(w)表1に示す基準系に従ったz方向の速度成分、(k)乱流運動エネルギー、(ε)乱流エネルギー散逸速度、(ρ)液体密度、(σ)液体相の表面張力及び界面張力、(μ)液体粘度等の基本的な変数から成る適当な方程式を用いて、材料の連続性及び運動量収支、乱流運動量エネルギー、並びに乱流エネルギー散逸速度を確定するステップであって、
連続方程式は、
【数4】

であり、運動量収支方程式は、
【数5】

であり、乱流運動エネルギー方程式は、
【数6】

であり、乱流エネルギー散逸速度方程式は、
【数7】

であり、前記方程式を数値的に解いてP、k、及びεを得る、確定するステップと、
前記キャビテーション室を通るキャビティが辿る可能性のある経路の数「n」を得るステップであって、
nは、100よりも有意に大きく、
キャビティが辿る経路は、ラグランジュ方程式:
【数8】

から得られ、式中、uはキャビティ速度、F(u−u)はキャビティの単位質量あたりの牽引力、ρはキャビティの密度、tは時間、gはx方向(表1)の重力加速度であり、
ラグランジュ方程式(L)を数値的に解いて前記キャビティの時間依存座標が得られ、
ラグランジュ方程式(L)から得られる前記座標における収支の解からP、k、及びε□が得られる、経路の数「n」を得るステップと、
前記キャビティによって感知される圧力振幅(Pamp)、圧力周波数(f)、及び瞬間圧力(P)の値を、関係式
【数9】

から得るステップと、
前記P、Pamp、fのデータを使用して、キャビティダイナミクスモデルからキャビティダイナミクス(時間の関数としてのキャビティ半径)を得るステップであって、
前記キャビティダイナミクスモデルは、Rayleigh−Plesset方程式族、例えば、
【数10】

として一般的に知られており、式中、tは時間、Rは任意の時点のキャビティの半径、σは液体表面張力、μは液体粘度、Pは気泡内の圧力である、キャビティダイナミクスを得るステップと、
以下の基準を使用して、前記キャビティを活発、安定、及び過渡的キャビテーションとして分類するステップであって、
前記キャビティ内の圧力がキャビテーション室の入口における圧力の10倍を超える場合、キャビティが活発であり、
最終圧力が前記キャビティの寿命の間の該キャビティ内の最大圧力と等しくない場合、活発キャビティが安定キャビティであり、
最終振動圧力が前記キャビティ内の前記最大圧力と等しい場合、活発キャビティが過渡的キャビティである、分類するステップと、
所与の速度、キャビテーション係数、前記キャビテーション室の選択された幾何学的形状(形状及びサイズ)に関して、
活発キャビティの数÷キャビティの総数×100として活発キャビテーションのパーセンテージ、
安定キャビティの数÷活発キャビティの総数×100として安定キャビテーションのパーセンテージ、
過渡的キャビティの数÷活発キャビティの総数×100として過渡的キャビテーションのパーセンテージ、
を計算するステップと、
を含むプロセスによって得られる、図1、図2、及び図4におけるような、キャビテーション室を通る流体又はスラリーの最大速度と、キャビテーション係数と、活発、過渡的、及び安定キャビテーションのパーセンテージとを相関させる、請求項8に記載の様相マップ。
【請求項19】
前記液体は、密度:850kg/m〜1500kg/m、粘度:1cP〜100cP、表面張力:0.01N/m〜0.075N/m、及び液体蒸気圧:300Pa〜101325Paを有する液体から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523372(P2011−523372A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509082(P2011−509082)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000280
【国際公開番号】WO2010/089759
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(510299905)エイチワイシーエー テクノロジーズ プライベート リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HYCA TECHNOLOGIES PVT. LTD.
【住所又は居所原語表記】176, Udyog Bhavan, Sonawala Road, Goregaon (E), Mumbai INDIA
【Fターム(参考)】