説明

プロテインキナーゼモジュレーターとしての3−アミノカルボニル置換縮合ピラゾロ誘導体

式(I)
【化1】


〔式中、残基は多様な意味を有する〕
の化合物、それらの医薬的使用、かかる化合物を含む医薬組成物、および製造方法、ならびにプロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸化合物、プロテインキナーゼ調節応答性疾患の処置のための、もしくは当該疾患の処置に有用な医薬組成物の製造におけるそれらの使用、前記化合物と薬学的に許容される担体を含むとりわけ前記疾患に有用な医薬製剤、とりわけ前記疾患に対する動物もしくは人体の処置方法、前記化合物を動物もしくはヒトに投与することを含む動物もしくは人体の処置方法、ならびに前記化合物の製造方法に関する。各々の場合において、化合物が記載されているとき、それはそれ自体として、および/または(好ましくは薬学的に許容される)塩形で存在していてもよい。
【背景技術】
【0002】
「プロテインキナーゼ」なる用語は、酵素的に活性なタンパク質群を定義し、これは受容体タイプキナーゼおよび非受容体タイプキナーゼ、ならびにチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼに区別することができる。それらの局在化によって、核、細胞質および膜関連キナーゼに区別することができる。多くの膜関連チロシンキナーゼは、同時に増殖因子の受容体である。
【0003】
それらの触媒活性のため、プロテインキナーゼ(PK)は細胞タンパク質の特定のセリン、スレオニンまたはチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素である。これらの基質タンパク質の翻訳後修飾は、細胞増殖、活性化および/または分化を調節する分子スイッチとして通常作用する。異常もしくは過剰の、またはより一般的に不適切なPK活性が良性および悪性増殖性障害を含む多様な疾患状態において観察される。多くの場合、PK阻害剤の使用により増殖性障害のような疾患をインビトロおよび多くの場合インビボで処置することができる。
【0004】
ここ数年、Eph受容体チロシンキナーゼおよびそれらのリガンドであるエフリンの基本的な役割が理解されてきた。いくつかの異なるEph受容体が取得され、リガンドに対するそれらの親和性に基づいてEphAまたはEphBサブクラスに分類されている。少なくとも8個のエフリンが同定されており、これらはグリセロホスファチジルイノシトール(GPI)−結合(エフリンA)タイプまたは膜貫通(エフリンB)タイプの膜タンパク質である。Eph受容体とそのリガンド間のシグナル伝達は、直接の細胞−細胞接触の部位に限定されているようである。該接触の結果、細胞間の相互二方向性事象が誘導される。エフリンおよびその受容体の特定の位置での発現は、組織パターニングおよび空間的に極めて限定された細胞座(loci)の形成に影響すると考えられる。細胞移動、接着および体節(somite)形成の修飾がそれらの影響に含まれる。
【0005】
EphB4(HTKとも称する)およびそのリガンドであるエフリンB2(HTKL)は、血管ネットワークの確立および決定に深く関与している。静脈上皮において、EphB4は特異的に発現するが、血管形成の初期段階において、エフリンB2は動脈内皮細胞で特異的かつ相互的に発現する。マウスにおける機能不全遺伝子は胚致死を生じ、そして当該胚はエフリンB2およびEphB4の何れかの欠陥で、毛細血管結合の形成に同一の欠陥を示す。いずれも胚形成における造血および血管発生の第1部位で発現する。適切な造血、内皮、血管芽細胞および原始中胚葉発生のための必須の役割は確立されている。EphB4欠損によって、胚幹細胞の中胚葉分化に変化が生じる。哺乳類組織におけるEphB4の異所性発現によって障害性構造、異常組織機能および悪性腫瘍の素因が生じる(例えばN. Munarini et al., J. Cell. Sci. 115, 25-37 (2002)参照)。これらおよび他のデータから、不適切なEphB4発現は悪性腫瘍の形成に関与しており、したがってEphB4の阻害は悪性腫瘍、例えばがん等制圧のツールとなると期待され得るとされている。
【0006】
細胞において見出されたチロシンキナーゼc−Srcの構造的に発現されたウイルス形態c−Src(ラウス肉腫ウイルス、レトロウイルス由来)は、Srcプロテインチロシンキナーゼの不適切な発現がどのように形質転換した細胞に基づく悪性腫瘍を導き得るかの例である。Srcプロテインチロシンキナーゼの阻害によって、形質転換した腫瘍細胞、例えば結合組織腫瘍の脱制御増殖の阻害を導き得る。したがって、ここでまた、c−Srcまたはその修飾形態もしくは変異形態の阻害は、増殖性疾患の処置において有益な効果を示すことが予期される。
【0007】
VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)は、血管形成の発現制御に関与していることが知られている。とりわけ固形腫瘍は良好な血液供給に依存しているので、VEGFR阻害、したがって血管形成の阻害は、かかる腫瘍の処置において臨床的研究が為されており、有望な結果を示している。VEGFはまた、白血病およびリンパ腫にも深く関与しており、多様な固形悪性腫瘍において高度に発現し、悪性疾患進行と良好な相関を示す。VEGFR−2(KDR)発現を有する腫瘍疾患の例は、肺がん、乳がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、悪性胸膜中皮腫および黒色腫である。この血管形成活性に加えて、VEGFRのリガンドであるVEGFは、腫瘍細胞における直接の生存支援効果によって腫瘍増殖を促進し得る。多様な他の疾患は、例えば下記のとおり、脱制御血管形成に関連している。
【0008】
ablプロトオンコジーンからオンコジーンへの変換が慢性骨髄性白血病(CML)を有する患者において観察されている。染色体転座は、第22染色体のbcr遺伝子を第9染色体のabl遺伝子に連結し、それによってフィラデルフィア染色体を形成する。その結果生じる融合タンパク質は、Ablチロシンプロテインキナーゼのカルボキシ末端と結合したBcrタンパク質のアミノ末端を有する。その結果、Ablキナーゼドメインは不適切な活性となり、骨髄において造血細胞クローンの過剰増殖を促進する。この融合タンパク質の阻害剤であるGleevec(商標)またはGlivec(登録商標)(Novartisの商標)の活性原理によるこのチロシンキナーゼの阻害は、CMLに対して高度に有効な処置であることが証明されている。こうして、Ablチロシンキナーゼの不十分な発現が悪性腫瘍、とりわけ白血病を治療し得るという一般的な概念が確認された。
【0009】
しかし、プロテインキナーゼの阻害剤として使用される多くの化合物は、今までのところ、特異性を欠き、とりわけ1種以上のプロテインキナーゼのタイプに対する望ましくない阻害特性によって生じ得る望ましくない副作用を有し、特異性が高すぎるために効果を欠き、特定の疾患に対してのみ有効であり、投薬中に抵抗性を生じ、および/または同等の望ましくない特性を有することを示している。
【0010】
このことが、本発明の課題を形成する:特に多数のプロテインキナーゼ阻害剤および増殖性および他のプロテインキナーゼ関連疾患の頻度に鑑み、そしてある種の治療に対する抵抗性の発現に鑑み、プロテインキナーゼ阻害剤として有用であり、したがってこれらのプロテインチロシンキナーゼ、例えばセリン/スレオニンおよび/または好ましくはPTK(プロテインチロシンキナーゼ)関連疾患の処置に有用である新規クラスの化合物がなおも必要とされている。新規クラスの薬学的に有用なプロテインキナーゼ、とりわけPTK阻害化合物、とりわけ高い親和性および/または限定されたグループまたは1個のプロテインキナーゼに対する選択性を有するもの、異なるクラスの化合物に抵抗性を生じているときにも活性を有するもの、あるグループのキナーゼに対して有用な親和性プロファイルを有するもの等が要求されている。すなわち、上記または他の課題に適合することができる新規クラスのプロテインキナーゼ阻害剤が必要とされている。
【0011】
ある4−置換ヒドラゾノピラゾロピリミジンは、例えば糖尿病およびTIE−2キナーゼ関連疾患の処置においてGSK3キナーゼ阻害剤としての使用について開示されている。WO 04/009602、WO 04/009596 または WO 04/009597参照。他方、あるアシル−もしくはアシルアミノ−置換アリールアミノ−ピラゾロピリミジンは、p38−阻害剤として記載されている。WO 03/099280参照。
【発明の概要】
【0012】
驚くべきことに、本発明において、栄養素によって介在されるシグナル伝達およびプロテインキナーゼの活性を含む疾患の兆候、例えば増殖性(例えば腫瘍)増殖に関与し得る多数のプロテインキナーゼ、とりわけプロテインチロシンキナーゼの代表例として、srcキナーゼのファミリーのキナーゼ、とりわけc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ、さらにablキナーゼ、とりわけv−ablまたはc−ablキナーゼ、b−raf(V599E)、EGF受容体キナーゼまたはEGFファミリーの他のキナーゼ、例えばHER−1またはc−erbB2キナーゼ(HER−2)、Flt−3、Ick、fyn、c−erbB3キナーゼ、c−erbB4キナーゼ;PDGF受容体チロシンプロテインキナーゼのファミリーのメンバー、例えばPDGF受容体キナーゼ、CSF−1受容体キナーゼ、Kit−受容体キナーゼ(c−Kit)、FGF受容体キナーゼ、例えばFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3、FGF−R4、c−Raf、カゼインキナーゼ(CK−1、CK−2、G−CK)、Pak、ALK、ZAP70、Jak1、Jak2、Axl、Cdk1、cdk4、cdk5、Met、FAK、Pyk2、Syk、Tie−2、インシュリン受容体キナーゼ(Ins−R)、インシュリン様増殖因子の受容体キナーゼ(IGF−1キナーゼ)、および/またはさらなるセリン/スレオニンキナーゼ、例えばプロテインキナーゼC(PK−C)、PK−B、EK−Bまたはcdcキナーゼ、例えばCDK1、ならびに(例えば構造的に活性化された)これらのいずれか1つ異常の変異型(例えばBcr−Abl、RET/MEN2A、RET/MEN2B、RET/PTC1−9またはb−raf(V599E))を、本発明の3−(置換アミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン化合物によって阻害することができることを見出した。これらおよび他のプロテインキナーゼは全て、ヒト細胞を含む哺乳類細胞において増殖制御および形質転換に関与している。とりわけ、細胞性Eph4Bキナーゼに対する高い効果を見出すことができる。
【0013】
これらの活性の観点から、本発明の化合物は、プロテインキナーゼ調節応答性疾病、例えばとりわけ、かかるタイプのキナーゼ、とりわけ上記のもの、最もとりわけ好ましいと記載したものの異常(例えば非制御、脱制御または構造的等)または過剰活性に関連する疾患の処置に使用することができる。
【0014】
1つの局面において、本発明は、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸誘導体および1,4−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸誘導体、例えば式
【化1】

〔式中、
R1は存在しないか、HまたはC1−7アルキルであり;
R2はH、C1−7アルコキシでモノもしくはジ置換されているか、または6個の環原子を有するN含有ヘテロシクリル(当該ヘテロシクリルは所望によりC1−7アルキルで置換されていてもよい)で置換されたフェニルであり、
R3はC1−7アルキル、または
−NH−CO−フェニルもしくは−CO−NH−フェニル(ここで、当該フェニルは非置換であるか、またはC1−7アルキル、ハロC1−7アルキル、C1−7アルコキシもしくはハロゲンで置換されている)であり、
nは0〜2である:
ただし、
R1が存在しないとき、点線は当該ピリミジン環のN1とC2およびC3とC4間の2個の二重結合を意味するか、または
R1が水素であるとき、点線は当該1,4−ジヒドロピリミジン環のC2とC3間の二重結合を意味する〕
の化合物を提供する。
【0015】
式Iの化合物において、好ましくはR1は存在しないか、またはHである。
式Iの化合物において、好ましくはR2は水素、C1−4アルコキシでモノもしくはジ置換されたフェニル、または6個の環原子と1または2個の窒素ヘテロ原子を有する飽和ヘテロシクリル(当該ヘテロシクリルは所望によりC1−4アルキルで置換されていてもよい)で置換されたフェニル、例えばメチルで置換されたピペラジルである。
【0016】
式Iの化合物において、より好ましくは、R2は水素、メチル−ピペラジン−1−イル−フェニル、例えば4−メチル−ピペラジン−1−イル−フェニル、例えば3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルまたはジメトキシフェニル、例えば3,4−ジメトキシフェニルである。
【0017】
式Iの化合物において、好ましくはnは1または2、例えば2である。
式Iの化合物において、好ましくはR3はC1−4アルキル、または
−NH−CO−フェニルもしくは−CO−NH−フェニル(ここで、当該フェニルは非置換であるか、またはC1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはハロゲンで置換されている)である。
【0018】
式Iの化合物において、より好ましくは、R3はメチル、または
−NH−CO−フェニルもしくは−CO−NH−フェニル(ここで、当該フェニルは非置換であるか、またはメチル、CF、メトキシもしくはハロゲン、例えばフルオロで置換されている)である。
【0019】
他の局面において、本発明はR2がHであり、他の基が上記定義のとおりである式Iの化合物を提供する。
【0020】
式Iの化合物において、定義の置換基の各1個の群は、置換基の好ましい群であってよく、例えば独立して互いに異なる置換基の群または1個の定義された置換基であってよい。式Iの化合物において、定義の各1個の置換基は、好ましい置換基であってよく、例えば独立して互いに異なる置換基の群または1個の定義された置換基であってよい。
【0021】
他の局面において本発明は、基R1、R2、R3およびnのいずれかが上記定義の意味を有するか、または上記定義の好ましい意味を有するか、または上記定義のより好ましい意味を有する式Iの化合物を提供する。
【0022】
他の局面において、本発明は、R1、R2、R3およびnが全て上記定義の好ましい、またはより好ましい意味を有する式Iの化合物を提供する。
【0023】
他の局面において、本発明は、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド、
4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
3−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミド、
3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミド、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド、および
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド
からなる群から選択される式Iの化合物を提供する。
【0024】
本明細書において用いる一般的な用語または記号は、本開示の文脈において、異なることが示されていない限り、好ましくは下記意味を有する:
「低級」または「C1−7−」なる用語は、最大7個まで、とりわけ最大4個までの炭素原子を有する、分枝(1回または複数回)または直鎖分枝を定義する。低級またはC1−7−アルキルは、例えばn−ペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチル、または好ましくはC−アルキル、とりわけメチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。低級アルケニルまたは低級アルキニルの場合、低級は、好ましくは「C2−7−」、より好ましくは「C2−4−」を意味する。
【0025】
ハロまたはハロゲンは、好ましくはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、最も好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモである。
【0026】
置換もしくは非置換ヘテロシクリルは、好ましくは6個の環原子を有し、不飽和、飽和もしくは部分飽和であるNヘテロ環式基であり、当該ヘテロ環式基(ヘテロシクリル)は、非置換であるか、またはC1−7アルキルで置換されている。好ましくは、当該Nヘテロシクリルは飽和である。好ましくはN−ヘテロシクリルはピペラジニルである。
【0027】
本発明によって提供される化合物を、本明細書において、「本発明の化合物」と称する。本発明の化合物は、あらゆる形態、例えば遊離形および共結晶形、例えば塩形、溶媒和物形および塩と溶媒和物の形態の化合物を含む。
【0028】
他の局面において、本発明は塩形の本発明の化合物を提供する。
かかる塩は好ましくは薬学的に許容される塩を含むが、薬学的に許容されない塩が、例えば製造/単離/精製の目的で含まれる。
【0029】
かかる塩は、少なくとも部分的に、例えばpH範囲4〜10の水性環境中で解離形態で存在することができ、塩形成基、例えば塩基性または酸性基が存在するか、または荷電基(例えば4級アンモニウム)が存在するとき形成することが可能で、特に固体形態で単離することができる場合があり−後者(荷電基)の場合アシル化塩を有機または無機酸のアニオンと形成する(例えば次の段落に定義のとおり)。
【0030】
かかる塩は、例えば、酸付加塩として、好ましくは有機もしくは無機酸と、塩基性窒素原子を有する式Iの化合物から、好ましくは薬学的に許容される塩として形成する。好適な無機酸は、例えば塩酸、硫酸またはリン酸のようなハロゲン酸である。好適な有機酸は、例えばカルボン酸、リン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸のようなアミノ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、またはアスコルビン酸のような他の有機プロトン性酸である。
【0031】
カルボキシまたはスルホのような負に荷電した基の存在下で、塩基との塩、例えば金属塩またはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは3級モノアミンのような好適な有機アミン、例えばトリエチルアミンもしくはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環式塩基、例えばN−エチル−ピペリジンもしくはN,N’−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩を形成することもできる。
【0032】
塩基性基および酸性基が同じ分子内に存在するとき、式Iの化合物は分子内塩を形成してもよい。
【0033】
単離または精製目的で、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を用いることも可能である。治療的使用のためには、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみが使用され(医薬製剤の形態で適用可能であるとき)、したがってこれらが好ましい。
【0034】
遊離形の本発明の化合物と、例えば化合物またはその塩の精製または同定における中間体として使用可能な塩を含むその塩形の密接な関係から、本明細書の「化合物群」または「化合物」、とりわけ式Iの化合物に関するあらゆる記載は、適当かつ便宜であるとき、そして異なることが明示的に記載されていない限り、遊離化合物の1種以上の塩またはその混合物(これらは各々、あらゆる溶媒和物、代謝前駆体、例えば式Iの化合物のエステルまたはアミド、またはこれらのいずれか1個以上の塩も含むことを意図する)についても記載されているものと理解される。異なる結晶形および溶媒和物を得ることができ、それらも含む。
【0035】
遊離形の本発明の化合物を塩形の対応する化合物に変換することができ、その逆も可能である。遊離形または塩形、および溶媒和物形の本発明の化合物を、非溶媒和物形の遊離形もしくは塩形の対応する化合物に変換することができ、その逆も可能である。
【0036】
本発明の化合物は、異性体およびそれらの混合物;例えば光学異性体、ジアステレオマー、cis/trans配座異性体の形態で存在していてもよい。本発明の化合物は、例えば不斉炭素原子を含んでいてもよく、したがってエナンチオマーまたはジアステレオマー、およびその混合物、例えばラセミ体の形態で存在していてもよい。本発明の化合物は、本発明の化合物のかかる不斉炭素原子での各置換基について、(R)、(S)または(R,S)立体配置で、好ましくは(R)または(S)立体配置で存在し得る。本発明の化合物は、かかる異性体の2種以上、例えばエナンチオマーの混合物、とりわけラセミ体、ならびに好ましくは純粋な異性体、とりわけ純粋なエナンチオマーまたはエナンチオマー的に富化した混合物を含んでいてもよい。
【0037】
異性体混合物は、適切に、例えば純粋な異性体を得るための方法によって、例えばそれと同様に、分離することができる。
【0038】
異性体混合物、例えばジアステレオマー混合物は、対応する異性体に、自体公知の方法によって適切な分離方法によって分離することができる。ジアステレオマー混合物は、例えばその個々のジアステレオマーに、分画結晶化、クロマトグラフィー、溶媒分配および類似の方法によって分離することができる。この分離は、ある出発化合物のレベルで、または式Iの化合物自体で行うことができる。エナンチオマーは、ジアステレオマー塩の形成によって、例えばエナンチオマー純粋なキラル酸との塩形成によって、またはクロマトグラフィー、例えばキラルリガンドを含むクロマトグラフ基質を用いたHPLCによって分離することができる。
【0039】
本発明は、いずれかの異性体形態およびいずれかの異性体混合物の本発明の化合物を含む。
本発明はまた、互変異性体が存在し得るとき、本発明の化合物の互変異性体も含む。
【0040】
他の局面において、本発明は本発明の化合物、例えば式Iの化合物の製造方法であって、下記工程:
a. 式
【化2】

の化合物または式
【化3】

〔式中、R2は上記定義のとおりである〕
の化合物を、式
【化4】

〔式中、R3は上記定義のとおりである〕
の化合物と反応させること、
b. 反応混合物から得られた式Iの化合物を単離すること、
そして所望により、式Iの化合物を異なる式Iの化合物に変換すること、得られた式Iの化合物の塩を遊離化合物または異なる塩に変換すること、得られた式Iの遊離化合物をその塩に変換することおよび/または得られた式Iの化合物の異性体混合物を個々の異性体に分離すること;
を含む方法を提供する。
【0041】
式V、V’またはVI(出発物質)の中間体において、存在するとき、官能基は所望により保護形態または塩形成基が存在するとき塩形であってもよい。所望により存在する保護基は、適切な段階で、例えば常套の方法によって、例えばそれと同様に除去することができる。
上記反応はカルボン酸アミド形成反応であり、そして適切に、例えば常套の方法と同様に行うことができる。
【0042】
式Iの化合物は、異なる式Iの化合物に変換することができる。
【0043】
少なくとも1個の塩形成基を有する式Iの化合物の塩は、自体公知の方法で製造することができる。例えば、酸性基を有する式Iの化合物の塩は、化合物を金属化合物で処理して形成することができ、例えば好適な有機カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば2−エチルヘキサン酸のナトリウム塩を、有機アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物、例えば対応するヒドロキシド、カルボネートまたは炭酸水素と、対応するカルシウム化合物と、またはアンモニアもしくは好適な有機アミンと、好ましくは使用する化学量論量またはわずかに過剰の塩形成剤と、形成することができる。式Iの化合物の酸付加塩を、常套の方法で、例えば式Iの化合物を酸または好適なアニオン交換剤で処理して得ることができる。酸性および塩基性塩形成基、例えば遊離カルボキシ基と遊離アミノ基を含む式Iの化合物の分子内塩を、例えば酸付加塩のような塩を、等電点に例えば弱塩基で中和して、またはイオン交換剤で処理して、形成することができる。
【0044】
式Iの化合物の塩を、常套の方法で、遊離化合物に変換することができ;金属塩またはアンモニウム塩を、例えば好適な酸で変換することができ、そして酸付加塩を例えば好適な塩基剤で処理して変換することができる。いずれの場合でも、好適なイオン交換剤を用いることができる。
【0045】
中間体および最終生成物を、標準的な方法によって、例えばクロマトグラフ法、分配法、(再)結晶化等によって、後処理し、および/または精製することができる。
【0046】
中間体(出発物質)は当該技術分野において既知であるか、商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において既知の方法によって、または本明細書に記載のとおりに製造することができる。具体的に記載されていなくとも、官能基を保護するために、適切な段階で保護基を導入および除去することができる。対応する反応工程において望ましくない反応、使用する保護基、それらの導入および除去方法は、本明細書に、例えば「一般的方法条件」に記載されている。当業者は保護基が有用または必要であるか、そしてどの保護基がそうであるかを決定することができる。
【0047】
出発物質においてR1、R2、R3、R4およびnを用いるとき、これらの記号は好ましくは、異なることが記載されているかまたは文脈によって示されていない限り、式Iの化合物について記載の意味を有する。
【0048】
出発物質は、例えば好ましくは、下記のとおりに製造することができる:
例えば、式
【化5】

〔式中、R2は上記定義のとおりである〕の化合物を、式
【化6】

〔式中、R2は上記定義のとおりである〕の化合物から、ジC1−7アルキルエトキシメチレンマロネートと、例えばYasuo Makisumi, Chem. Pharm. Bull. 1962, Vol10, pp620-26に記載の方法と同様に反応させて、製造することができる。
【0049】
式IIの物質を、例えばPOClでハロゲン化して、式
【化7】

〔式中、Halはハロゲン、とりわけクロロ、ヨードまたはブロモであるが、フルオロではなく、そしてR2は上記定義のとおりである〕
の出発物質を、例えばRobert H. Springer et al., J.Med. Chem. 1982, Vol 25, p235-42に記載の方法と同様にして、得ることができる。
【0050】

【化8】

の出発物質をそれぞれ鹸化して、式VまたはV’の出発物質をそれぞれ得ることができる。
【0051】
他の出発物質および上記中間体の出発物質として記載のものは、当該技術分野において既知であり、商業的に入手可能であり、そして/または標準的な方法によって、例えば実施例に記載の方法によってまたはそれと同様に、製造することができる。
【0052】
本明細書に記載のいずれかの化合物、例えば本発明の化合物および式II、II’、III、IV、IV’、VおよびV’の化合物を、適切に、例えば常套の方法、または例えば本明細書に記載のとおりに、例えばそれと同様に、製造することができる。
【0053】
下記は、一般に本明細書に記載の全てのプロセスにおいて適用されるが、本明細書に具体的に記載された反応条件が好ましい:
本明細書に記載のあらゆる反応において、適当または望まれるとき、具体的に記載されていなくとも、反応に参加することが意図されない官能基を保護するために保護基を用いることができ、それらを適切なまたは所望の段階で導入および/または除去することができる。保護基の使用を含む反応は、したがって、保護および/または脱保護の具体的な記載が存在しない反応を本明細書において記載しているときであっても、可能なものとして含まれる。
【0054】
この開示の範囲内において、文脈が異なることを示していない限り、式Iの具体的な所望の最終生成物の構成要素ではない容易に除去可能な基のみが、「保護基」を構成する。かかる保護基による官能基の保護、保護基それ自体、およびそれらの導入および除去に適した反応は、例えば標準的参考書、例えばJ. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973、 T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999、 “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981、 “Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974、H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982、および Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。保護基の特徴は、それらが容易に(すなわち望ましくない二次的反応を生じず)、例えば加溶媒分解、還元、光分解で、または生理的条件下で(例えば酵素的切断によって)除去され得ることである。
【0055】
全ての上記方法工程を、自体公知の反応条件下で、好ましくは具体的に記載のもので、溶媒または希釈剤なし、または通常はそれの存在下で(好ましくは溶媒または希釈剤は使用される試薬に対して不活性であり、それらを溶解させる)、触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換試薬、例えばH形態の例えばカチオン交換試薬なし、またはそれの存在下で、反応および/または反応物の性質に依存して、低温、常温または高温で、例えば約−100℃〜約190℃、例えば約−80℃〜約150℃、例えば−80〜−60℃、室温、−20〜40℃、または還流温度で、大気圧または加圧が適切であるとき密封容器内で、および/または不活性雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で行うことができる。
【0056】
いずれかの特定の反応に適している溶媒が選択され得る溶媒には、具体的に記載のもの、または例えば、水、エステル、例えば低級アルキル−低級アルカノエート、例えば酢酸エチル、エーテル、例えば脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテル、または環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、液体芳香族性炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエン、アルコール、例えばメタノール、エタノールまたは1−もしくは2−プロパノール、ニトリル、例えばアセトニトリル、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロホルム、酸アミド、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド、塩基、例えばヘテロ環式窒素塩基、例えばピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン、カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば無水酢酸、環状、直鎖または分枝鎖炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサンまたはイソペンタン、あるいはそれらの溶媒の混合物、例えば水溶液が、方法の記載にそれ以外が記載されていない限り、含まれる。かかる溶媒混合物は、後処理において、例えばクロマトグラフィーまたは分配に用いることもできる。
【0057】
本発明はまた、方法の任意の段階で中間体として得られる化合物を出発物質として用いて、残りの方法工程を行うか、または出発物質を反応条件下で形成させるか、または誘導体の形態で、例えば保護形態もしくは塩の形態で用いる方法の形態、あるいは本発明によって得られる化合物を当該方法条件下で製造し、さらにインサイチュで進行させる方法に関する。本発明の方法において、好ましいと記載されている式Iの化合物を得るために好ましくはこれらの出発物質を使用する。実施例に記載のものと同一または類似の反応条件が特に好ましい。
【0058】
例えば式Iの化合物を含む本発明の化合物は、薬理学的活性を示し、したがって医薬として有用である。例えば、本発明の化合物はプロテインキナーゼ活性を阻害することを見出す。
【0059】
プロテインキナーゼの調節における、とりわけその阻害剤としての本発明の化合物の有用性を、具体的かつ系統的に、好ましいと上記したプロテインキナーゼの試験系によって示すことができる:
下記典型的な例示的試験系において、下記略語は下記の意味を有する:DMSO=ジメチルスルホキシド;DTT=ジチオスレイトール;EDTA=エチレンジアミンテトラアセテート;MOI=感染多重度;PMSF=p−トルエンスルホニルフルオライド;Tris=tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン。「阻害剤」は、異なることが記載されていない限り、式Iの試験化合物である。
【0060】
本発明の化合物、例えば式Iの化合物の阻害剤またはエフリンB4受容体(EphB4)キナーゼとしての効果を、下記のとおりに示すことができる:
Bac−to−Bac(商標)(Invitrogen Life Technologies, Basel, Switzerland)GST融合発現ベクターの作成:EphBクラスの細胞血漿質性(cytoplasmatic)コーディング領域全体を、ヒト胎盤または脳由来のcDNAライブラリーからPCRによってそれぞれ増幅する。ヒトEphB4受容体(SwissProt Database、受託番号P54760)のアミノ酸領域566−987を発現する組換えバキュロウイルスを作成する。GST配列をpFastBac1(登録商標)ベクター(Invitrogen Life Technologies, Basel, Switzerland)にクローン化し、PCR増幅する。EphB4−受容体ドメインをそれぞれコード化するcDNAをGST配列のフレーム3’プライムにおいてこの修飾FastBac1ベクターにクローン化して、pBac−to−Bac(商標)ドナーベクターを作成する。形質転換から生じた1個のコロニーを播種して、小規模プラスミド作成のための一晩培養物を得る。プラスミドDNAの制限酵素分析は、予期したサイズの挿入を含む多様なクローンを示す。自動シークエンシングによって、隣接ベクター配列の挿入および約50bpを、両ストランドについて確認する。
【0061】
ウイルスの作成:各キナーゼのウイルスを、異なることが記載されていない限りGIBCOによって供給されたプロトコルに従って作成する。簡潔に言うと、キナーゼドメインを含むトランスファーベクターをDH10Bac細胞系(GIBCO)にトランスフェクトし、選択寒天プレートに播種する。融合配列がウイルスゲノム(バクテリアによって担持される)に挿入されていないコロニーは青色である。白色コロニー1個を採取し、ウイルスDNA(bacmid)を標準的なプラスミド精製方法によってバクテリアから単離する。Sf9細胞またはSf21細胞を25cmフラスコ中で、ウイルスDNAで、Cellfectin剤を用いて、当該プロトコルに従ってトランスフェクトする。
【0062】
GSTタグ化キナーゼの精製:遠心分離した細胞溶液を2mLのグルタチオンセファロースカラム(Pharmacia)にロードし、10mLの25mMのTris−HCl、pH7.5、2mMのEDTA、1mMのDTT、200mMのNaClで3回洗浄する。次いでGSTタグ化タンパク質を25mMのTris−HCl、pH7.5、10mMの還元グルタチオン、100mMのNaCl、1mMのDTT、10%グリセロールを10回(各1ml)適用して溶出し、−70℃で貯蔵する。
【0063】
プロテインキナーゼアッセイ:プロテインキナーゼの活性を、阻害剤の存在下または非存在下で、[γ33P]ATPから基質としてのグルタミン酸とチロシンのポリマー(ポリ(Glu,Tyr))への33Pの取り込みを測定することによってアッセイする。精製GST−EphB(30ng)を含む当該キナーゼアッセイを、20mMのTris−HCl、pH7.5、10mM MgCl、3−50mM MnCl、0.01mM NaVO、1% DMSO、1mM DTT、3μg/mL ポリ(Glu,Tyr)4:1(Sigma; St. Louis, Mo., USA)および2.0−3.0μM ATP(γ−[33P]−ATP 0.1μCi)を含む最終体積30μLで、周囲温度で15−30分間行う。当該アッセイを、20μLの125mM EDTAを加えて終了する。その後、40μLの反応混合物を予め5分間メタノールで浸漬したImmobilon-PVDF膜(Millipore, Bedford, MA, USA)に移し、水でリンスし、次いで0.5%HPOで5分間浸漬し、そして真空源を取り外した真空多岐管に設置する。全サンプルをスポットした後、真空源を接続し、各ウェルを200μLの0.5%HPOでリンスする。膜を除去し、シェイカー上で1%HPOで4回、そしてエタノールで1回洗浄する。周囲温度で乾燥し、Packard TopCount 96ウェルフレームに乗せ、10μL/ウェルのMicroscint(商標)(Packard)を加えた後、膜を測定する。IC50値を2連、4種の濃度で(通常0.01、0.1、1および10μM)各化合物の阻害率の線形回帰分析によって計算する。1ユニットのプロテインキナーゼ活性を、37℃で[γ33P]ATPから基質へと移動した33Pの1nmolタンパク質/分/mgタンパク質と定義する。本発明の化合物、例えば式Iの化合物は、1nMまでEphB4阻害を示し、好ましくは0.001〜10μMのIC50値を示す。
【0064】
あるいは、EphB4受容体の自己リン酸化を下記のとおりに測定することができる:
EphB4受容体の自己リン酸化の阻害を、恒久的にEphB4(SwissProt AccNo P54760)を発現するトランスフェクトA375ヒト黒色腫細胞(ATCC番号:CRL−1619)のような細胞でのインビトロ実験で確認することができ、6ウェル細胞培養プレート中の完全培養培地(10%胎児ウシ血清=FCS添加)に播種し、約90%のコンフルエンシーを示すまで37℃、5%CO下でインキュベートする。次いで、試験化合物を培養培地(FCS非存在、0.1%ウシ血清アルブミン添加)で希釈し、細胞に加える。(対照は試験化合物の非存在下での培地を含む)。リガンド誘導性自己リン酸化を、1μg/ml可溶性エフリンB2−Fc(s−エフリンB2−Fc:R&D Biosystems, CatNr 496-EB)および0.1μM オルトバナデートを加えて誘導する。さらに20分間37℃でインキュベーションした後、細胞を氷冷PBS(リン酸緩衝化食塩水)で2回洗浄し、速やかにウェルあたり200μlの溶解バッファーに溶解する。次いで溶解液を遠心分離して細胞核を除去し、上清のタンパク質濃度を商業的タンパク質アッセイ(PIERCE)を使用して測定する。次いで溶解液を即座に使用するか、または必要により、−20℃で保存することができる。
【0065】
サンドイッチELISAを行ってEphB4リン酸化の測定を行う:リン酸化EphB4タンパク質を捕捉するため、エフリンB2−Fc(s−エフリンB2−Fc:R&D Biosystems, CatNr 496-EB)100ng/ウェルをMaxiSorb(Nunc)ELISAプレートに不動化する。次いで、プレートを洗浄し、残余の遊離タンパク質結合部位をツイーン 20(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ICI/Uniquema)(PBST)を含むリン酸緩衝化食塩水中の3%TopBlock(登録商標)(Juro, カタログ番号TB232010)で飽和させる。次いで細胞溶解液(100μg/ウェルのタンパク質)を、これらのプレート中で1時間、室温でインキュベートする。ウェルをPBSで3回洗浄した後、アルカリホスファターゼと結合している抗ホスホチロシン抗体(PY 20 アルカリホスファターゼ結合型: ZYMED, Cat Nr03-7722)を加え、さらに1時間インキュベートする。プレートを再び洗浄し、そして捕捉リン酸化受容体に対する抗ホスホチロシン抗体の結合を示し、基質として10mM D−ニトロフェニルホスフェートを用い、0.5〜1時間後にOD405nmで測定して、定量する。
【0066】
陽性対照のシグナル(バナデートおよびs−エフリンB2−Fcで刺激する)と、陰性対照のシグナル(刺激しない)の差は、最大EphB4リン酸化に対応する(=100%)。試験物質の活性を最大EphB4リン酸化の阻害率として計算する。最大阻害の半分を誘導する物質の濃度をIC50(50%阻害のための阻害用量)と定義する。本発明の化合物、例えば式Iの化合物において、0.0005〜20μM、とりわけ0.0005〜10μMのIC50を示し得る。
【0067】
式Iの化合物はまた、他のチロシンプロテインキナーゼ、例えばとりわけヒト細胞を含む動物、とりわけ哺乳類細胞の増殖制御および形質転換に関与するc−Srcキナーゼを阻害し得る。適切なアッセイは、Andrejauskas-Buchdunger et al., Cancer Res. 52, 5353-8 (1992)に記載されている。この試験系を用いて、本発明、例えば式Iの化合物は、c−Srcの阻害について例えば0.001〜20μM、通常0.005〜10μMのIC50値を示し得る。
【0068】
KDRプロテインチロシンキナーゼ活性の阻害剤としての本発明の化合物の活性を下記のとおりに示すことができる:VEGF誘導性受容体自己リン酸化の阻害を、恒久的にヒトVEGF−R2(KDR)を発現するトランスフェクトCHO細胞のような細胞において確認することができる。当該細胞を6ウェル細胞培養プレート中の完全培養培地(10%胎児ウシ血清=FCS添加)に播種し、約80%のコンフルエンシーを示すまで37℃、5%CO下でインキュベートする。次いで、試験化合物を培養培地(FCS非存在、0.1%ウシ血清アルブミン添加)で希釈し、細胞に加える。対照は試験化合物の非存在下での培地を含む。37℃で2時間インキュベーションした後、組み換えVEGFを加え;最終VEGF濃度を20ng/mlとする。さらに5分間37℃でインキュベーションした後、細胞を氷冷PBS(リン酸緩衝化食塩水)で2回洗浄し、速やかに100μl/ウェルの溶解バッファーに溶解する。次いで溶解液を遠心分離して細胞核を除去し、上清のタンパク質濃度を商業的タンパク質アッセイ(BIORAD)を使用して測定する。次いで溶解液を即座に使用するか、または−20℃で保存することができる。このプロトコルを用いて、本発明、例えば式Iの選択的化合物は、好ましくはc−Ablチロシンキナーゼについての少なくとも1.5倍高い、より好ましくはEphB4チロシンキナーゼについてより2倍以上高い、KDRについてのIC50値を示すことを見出すことができる。一般に、本発明、例えば式Iの化合物に関するこの試験系において、IC50値は0.001〜20μM、より好ましくは0.005〜10μMの範囲である。
【0069】
本発明、例えば式Iの化合物はまた、他のプロテインキナーゼを阻害し得る。
本発明の化合物のc−Ablプロテインチロシンキナーゼ活性の阻害剤としての活性を下記のとおりに示すことができる:
インビトロ酵素アッセイを、Geissler et al.によるCancer Res. 1992; 52: 4492-4498に記載のフィルター結合アッセイとして、96ウェルプレート中で以下の変更を加えて行う。c−AblのHis標識キナーゼドメインをクローン化し、バキュロウイルス/Sf9系において、Bhat et al.によるJ.Biol. Chem. 1997; 272: 16170-16175に記載の通りに発現させる。37kDのタンパク質(c−Ablキナーゼ)をコバルト金属キレートカラムで、続いて陰イオン交換カラムでの2工程法で精製して、1〜2mg/LのSf9細胞を得る(Bhat et al.、上記文献)。c−Ablキナーゼの純度は、クーマシーブルー染色後にSDS−PAGEで判定すると、>90%である。アッセイは(全量30μL):c−Ablキナーゼ(50ng)、20mMのTris・HCl、pH7.5、10mMのMgCl、10μMのNaVO、1mMのDTTおよび0.06μCi/アッセイの[γ33P]−ATP(5μMのATP)を含み、1%DMSOの存在下で30μg/mlのポリ−Ala,Glu,Lys,Tyr−6:2:5:1(Poly-AEKY, Sigma P1152)を使用する。反応を250mMのEDTA 10μLを加えて終了させ、反応混合物30μLをImmobilon−PVDF膜(Millipore, Bedford, MA, USA)に移し、その後メタノールに5分間浸漬し、水でリンスし、0.5%HPOに5分間浸漬し、真空源を取り外した真空多岐管に設置する。全サンプルをスポットした後、真空源を接続し、各ウェルを200μLの0.5%HPOでリンスする。膜を除去し、シェイカー上で0.5%HPOで(4回)、そしてエタノールで1回洗浄する。周囲温度で乾燥させ、Packard TopCount 96ウェルフレームに乗せ、10μL/ウェルのMicroscint(商標)(Packard)を加えた後、膜を測定する。この試験系を使用すると、本発明、例えば式Iの化合物は、c−Abl阻害について0.002〜100μM、通常0.0025〜5μMのIC50値を示し得る。
【0070】
さらに、本発明、例えば式Iの化合物を用いてb−raf(V599E)を阻害することもできる。B−Raf−V599Eの活性を、阻害剤の存在下または非存在下で、[γ33P]ATPから(His)−IκBへの33Pの取り込みを測定することによってアッセイする。試験化合物をDMSO(10mM)に溶解させ、−20℃で貯蔵する。連続希釈をDMSOで新たに行い、さらに純水で希釈してDMSO中3倍濃縮試験溶液を得る。アッセイの最終体積(30μl)は、試験溶液(1%DMSO)10μl、アッセイ混合物(20mM Tris−HCl、pH7.5、3mM MnCl、3mM MgCl、1nM DTT、3μg/ml(His)−IκB10μl 1%DMSOおよび3.5μM ATP[γ33P]−ATP 0.1μCi)、および酵素希釈物(GST−B−Raf−V599E 600ng)10μlを含む。ピペッティング工程を、MultiPROBE Iix, MultiPROBE IILxまたはHamilton STARロボットで、96ウェルフォーマットで行うようにプログラムする。アッセイを文献に記載の通りに行い(C. Garcia-Echeverria et al., Cancer Cel. 5, 231-9(2004)参照)、125mM EDTA20μlを加えて終了する。フィルター結合法によるリン酸化ペプチドの捕捉を、下記の通りに行う:反応混合物40μLを、予め5分間メタノールに浸漬し、水でリンスし、5分間0.5% HPOに浸漬したImmobilon-PVDF膜に移し、真空源を取り外した真空多岐管にマウントする。全サンプルをスポットした後、真空源を接続し、各ウェルを0.5% HPO200μLでリンスする。自由膜を除去し、シェーカー上で1.0% HPOで4回、エタノールで1回洗浄する。膜を、周囲温度で乾燥させ、Packard TopCount 96ウェルフレームに乗せ、Microscint(商標)10μL/ウェルを加えた後、測定する。プレートを最終的にシールし、マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT, TopCount NXT HTS)で測定する。フラッシュプレート法の場合は、キナーゼ反応をポリスチレンベースのプラスチックプレート中で行い、60分後に125mM EDTA20μlを加えて停止する。捕捉のために(60分、RT)、ビオチニル化基質をNickel被覆フラッシュプレートに移す。該アッセイプレートをPBSで3回洗浄し、室温で乾燥させる。その後、プレートをシールし、マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT, TopCount NXT HTS)で測定する。4つの濃度(通常0.01、0.1、1および10μM)での、または10μMから開始してその後1:3希釈で8個のポイントのIC50として、各化合物の阻害率の直線回帰分析(2連)によってIC50値を計算する。b−raf阻害について、式Iの化合物は、0.05〜50μMのIC50値を示し得る。
【0071】
当該結果は、本発明、例えば式Iの化合物の有利な親和性プロファイルを示す。
【0072】
本発明、例えば式Iの化合物は、インビボで抗腫瘍活性を示す試験も存在する。例えば、式Iの化合物がインビボで血管形成を阻害するかを試験するために、VEGF、bFGF、S−1P、PDGFまたはIGF−1のような血管形成因子によって誘導される血管形成応答に対する効果を、マウスの増殖因子インプラントモデルにおいて試験する:増殖因子(2μg/ml ヒトVEGF)含有または非含有、ヘパリン(20単位/ml)を含む0.8%w/v寒天で充填した多孔質テフロンチャンバー(容積0.5mL)を、C57/C6マウスの背側面の皮下に埋め込む。当該マウスを試験化合物(例えば1日1回経口で、5、10、25、50または100mg/kg)またはビークルで、チャンバー埋め込みの日から処置を開始し、4日後まで続ける。処置の終了時にマウスを屠殺し、チャンバーを除去する。チャンバー周辺で増殖した血管化組織を注意深く採取し、秤量し、そして組織のヘモグロビン含有量を測定して血液含量を評価する(Drabkins法; Sigma, Deisenhofen, Germany)。内皮マーカーの物差しとしてのTie−2タンパク質レベルを特異的ELISAによって測定して、血管形成応答を定量する。これらの増殖因子がチャンバー周辺で増殖する(繊維芽および小血管を含むことが組織学的に特徴付けられている)この組織の重量および血液含量の増加を誘導すること、そしてこの応答がVEGFを特異的に中和する抗体によって阻止されることは、既に示されている(Wood JM et al., Cancer Res. 60(8), 2178-2189, (2000);およびSchlaeppi et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 125, 336-342, (1999)参照)。このモデルによると、上記濃度の本発明、例えば式Iの化合物の場合に阻害が示され得る。
【0073】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置について記された本明細書に記載の試験系において活性を示す。
【0074】
障害は、本明細書において使用するとき、疾患を含む。
【0075】
本発明の好ましい意味において、プロテインキナーゼ調節応答性障害は、プロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、とりわけ上記で好ましいとしたものの活性の調節、とりわけ阻害に、処置する個体に有益な方法で応答する障害であり、本発明の化合物を用いることができる場合、これは過増殖性状態を含む1種以上の増殖性疾患(プロテインキナーゼの(とりわけ不適切な)活性に基づくものを意味する)、例えば白血病、過形成、線維症(とりわけ肺の、あるいはまた他のタイプの線維症、例えば腎線維症)、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管における平滑筋増殖、例えば血管形成術後の狭窄または再狭窄である。さらに、本発明の化合物は、血栓症および/または強皮症の処置に使用することができる。
【0076】
腫瘍またはがん疾患、とりわけ好ましくは良性または悪性腫瘍またはがん疾患、より好ましくは固形腫瘍、例えば脳がん、腎臓がん、肝臓がん、副腎がん、膀胱がん、乳がん、胃がん(とりわけ胃の腫瘍)、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん(例えば小細胞または大細胞肺がん)、膣がん、甲状腺がん、肉腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫または消化器がん、とりわけ結腸がんまたは結腸直腸腺腫、または頸部および頭部の腫瘍、例えば頭部および頸部の扁平上皮がん、例えばとりわけ上皮性の新生物から選択される増殖性障害(とりわけこれは、プロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、とりわけ好ましいと記載のものの活性の調節、とりわけ阻害に応答性である)の治療(予防を含む)に、例えば哺乳類癌腫;上皮過増殖(がん以外)、とりわけ乾癬;前立腺過形成;または白血病の症例において、本発明の化合物の使用が好ましい。
【0077】
本発明の化合物またはその使用によって、腫瘍のほぼ退縮および/または腫瘍転移の形成および(微小)転移の増殖の予防を導くことが可能である。
【0078】
多様な、またはとりわけ1種類のプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、とりわけ好ましいと記載のものが関与している免疫系の障害の処置に本発明の化合物を使用することも可能であり;さらに、式Iの化合物はまた、少なくとも1種類のプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、とりわけ好ましいと記載のプロテインチロシンキナーゼから選択されるものによるシグナル伝達が関与する中枢または末梢神経系の疾患の処置において使用することもできる。
【0079】
慢性骨髄性白血病(CML)において、造血幹細胞(HSC)で相互平衡的染色体転座は、BCR−ABLハイブリッド遺伝子を生成する。後者はオンコジーンBcr−Abl融合タンパク質をコード化する。ABLは細胞増殖、接着およびアポトーシス制御に深く関与している緊密に制御されたプロテインチロシンキナーゼをコード化するが、BCR−ABL融合遺伝子は、HSCを形質転換して脱制御クローン増殖、骨髄間質への接着能の減少および変異原性刺激に対するアポトーシス応答の減少を示す表現型を作成する構造的に活性化されたキナーゼとしてコード化し、これは進行的により悪性な形質転換を蓄積し得る。得られた顆粒球は、成熟リンパ球に成長せずに循環系に放出されて、成熟細胞の不足および感染受容性の増加を導く。Bcr−AblのATP競合的阻害剤(または同等の変異形態)は、キナーゼをマイトジェン経路および抗アポトーシス経路(例えばP−3キナーゼおよびSTAT5)の活性化を防止して、BCR−ABL表現型細胞の死亡を導き、CMLに対する効果的な治療を提供することが記載されている。本発明においてBcr−Abl阻害剤として有用な式Iの3−(置換アミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン化合物は、したがって、過剰発現に関連した疾患、とりわけ白血病、例えばCMLまたはALLのような白血病の治療にとりわけ適切である。
【0080】
約1〜2mmの最大径を超えて増殖するこれらの腫瘍にとって血管形成は絶対的な前提条件であると考えられており;この限界までは、酸素および栄養素が分散によって腫瘍細胞に供給され得る。したがって、起源および原因に拘わらず、全ての腫瘍は、あるサイズに達した後のその増殖のためには、血管形成に依存する。3つの基本的な機構が腫瘍に対する血管形成阻害剤の活性において重要な役割を果たす:1)血管静止腫瘍における血管、とりわけ毛細血管の増殖の阻害(これによってアポトーシスと増殖によって得られるバランスによって実質的な腫瘍増殖が起こらない);2)腫瘍への、および腫瘍からの血流遮断による腫瘍細胞の移動の阻止;および3)内皮細胞増殖の阻害(これによって、通常血管を裏打ちする内皮細胞によって周囲組織において発揮されるパラクリン増殖刺激効果を回避する)。
【0081】
KDRおよびエフリン受容体キナーゼ、および可能であれば他のプロテインキナーゼを阻害し、したがって血管形成を調節する能力の観点から、本発明の化合物は、対応する受容体(好ましくはチロシン)キナーゼの不適切な活性、とりわけその過剰発現に関連する障害に使用することがとりわけ適切である。これらの障害のうち、とりわけ(例えば虚血性)網膜症、(例えば加齢性)黄斑変性、乾癬、肥満、血管芽腫、血管腫、炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症性疾患、とりわけ関節炎、例えばリウマチ性関節炎、または他の慢性炎症性障害、例えば慢性喘息、動脈もしくは移植後アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、およびとりわけ腫瘍性疾患、例えばいわゆる固形腫瘍(とりわけ胃腸管のがん、膵臓がん、乳がん、胃がん、頸部がん、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、肺がん、脳のがん、黒色腫、カポジ肉腫、頭部および頸部の扁平上皮がん、悪性胸膜中皮腫、リンパ腫または多発性骨髄腫)、およびさらに液性腫瘍(例えば白血病)がとりわけ重要である。
【0082】
本発明の化合物は、持続性の血管形成によって惹起される疾患、例えば再狭窄、例えばステント誘導性再狭窄;クローン病;ホジキン病;糖尿病性網膜症および新血管緑内障のような眼の疾患;糸球体腎炎のような腎臓の疾患;糖尿病性ネフロパシー;炎症性腸疾患;悪性腎硬化症;血栓性微小血管症候群;(例えば慢性)移植拒絶および糸球体症;肝硬変のような繊維性疾患;メサンギウム細胞増殖性疾患;神経組織外傷の予防または処置;および人工血管に使用するためのバルーンカテーテル処置後、または例えばステントのような血管を開いたままにしておく機械デバイスの挿入後の血管閉塞の阻害のため、免疫抑制剤として、傷跡の残らない創傷治癒の手段として、そして加齢性のしみおよび接触性皮膚炎を処置するために、とりわけ使用する。
【0083】
好ましくは、本発明は、本明細書に記載の固形腫瘍および/または本明細書に記載の液性腫瘍、例えば白血病の処置のための本発明の化合物の使用に関する。
【0084】
本発明は、本発明の化合物の使用であって、とりわけ動物または好ましくはヒトにおけるプロテインキナーゼ調節応答性障害、とりわけ「発明の概要」に記載の1種以上のプロテインチロシンキナーゼ(PTK)、よりとりわけsrcキナーゼのファミリー、とりわけc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼまたはエフリン受容体キナーゼ、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ、またはその変異(例えば構造的に活性化された、または部分的もしくは全体的に脱制御された他のもの)形態から選択される1種以上のPTKの阻害に応答する疾患の処置のための使用に関する。
【0085】
本発明はまた、前記障害の処置に有用な医薬製剤の製造における本発明の化合物の使用、とりわけ前記障害に有用な、本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬製剤、動物または人体のとりわけ前段に記載の障害の処置に使用するための本発明の化合物、動物または人体を処置する方法であって、かかる処置を必要とする動物またはヒト、とりわけ患者に本発明の化合物を前記障害の処置に有効な量で投与することを含む方法、ならびに本発明の化合物の製造方法に関する。
【0086】
化合物、塩、医薬製剤、疾患、障害等について複数形を用いるとき、これは1個の化合物、塩、医薬製剤、疾患等をも意味することを意図しており、“a”または“an”を用いるとき、これは不定冠詞または好ましくは「1個」を意味している。
【0087】
本発明の化合物は、有用な薬理学的特性を有し、かつプロテインキナーゼ、とりわけプロテインチロシンキナーゼ(とりわけ上記「発明の概要」に記載の1種以上のプロテインキナーゼ、最もとりわけc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ)調節応答性障害疾患の処置において有用である。ここで、調節は好ましくは阻害を意味し、応答は疾患の進行および/またはその症状が遅延、停止または逆転を意味し、完全な、または少なくとも一時的な治癒を含む。「処置」なる用語は、前記疾患、とりわけ下記疾患のいずれか1つ以上の、とりわけ予防的(例えば、疾患を発症しやすいかもしくはしやすい可能性があることを示す変異または変化が発見されている患者における予防を含む)または好ましくは治療的(緩和、治癒、症状改善、症状軽減、疾患もしくは症状抑制、進行遅延、キナーゼ制御および/またはキナーゼ阻害を含むが、これらに限定されない)処置を含む。
【0088】
「治療的」なる用語は、本明細書において使用するとき好ましくは、(とりわけ脱制御)受容体チロシンキナーゼ活性を含む進行中のエピソードの処置における効果を意味する。「予防的」なる用語は、好ましくは脱制御された受容体チロシンキナーゼ活性を含む疾患の発生または再発の予防を意味する。
【0089】
「進行の遅延」なる用語は、本明細書において使用するときとりわけ、処置する疾患の前段階または初期フェーズである患者に活性化合物を投与することを意味し、ここで当該患者において対応する疾患の例えば前形態が診断されるか、または当該患者が、または例えば処置を行わない場合は、対応する疾患が進行するか、または例えば転移が予期され得る、例えば医薬処置もしくは事故から生じる状態である。
【0090】
動物は好ましくは温血動物、より好ましくは哺乳類である。ヒト(これは一般に、「動物」なる一般用語に含まれる)は、とりわけ患者または上記または下記定義の疾患のリスクを有する傾向がある(例えば何らかの変異または他の特徴のため)ヒトである。
【0091】
本明細書において「使用」なる用語が(動詞または名詞として)(本発明の化合物の使用に関して)記載されるとき、これは(異なることが示されず、文脈によって異なることが示唆されない限り)本発明の下記態様のいずれか1個以上をそれぞれ含む(異なることが記載されていない限り):プロテイン(とりわけチロシン)キナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性疾患の処置における使用、プロテインキナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性疾患の処置用医薬組成物の製造のための使用、プロテインキナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性および/または増殖性疾患の処置のための1種以上の本発明の化合物の使用方法、1種以上の本発明の化合物を含む、当該プロテインキナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性疾患の処置用医薬製剤、ならびに当該プロテインキナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性疾患の処置における1種以上の本発明の化合物(適当かつ便宜であり、異なることが記載されていない限り)。とりわけ、処置する疾患、およびしたがって本発明の化合物の「使用」に好ましい疾患は、下記(とりわけチロシン)プロテインキナーゼ調節(とりわけ阻害)応答性疾患から選択される(「支持される」とはまた、「依存」だけでなく、疾患がプロテインキナーゼの調節、とりわけ阻害に応答する、すなわちプロテインキナーゼの活性が疾患の兆候を支持するかまたは引き起こしさえすることを意味する)。
【0092】
プロテインキナーゼが記載されているとき、これは何れかのタイプのプロテインキナーゼ、とりわけ「発明の概要」に定義のものの1つ、よりとりわけセリン/スレオニンおよび/またはプロテインチロシンキナーゼ、最も好ましくは、とりわけc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼからなる群から選択される、その変形もしくは変異型またはこれらのいずれかの対立遺伝子形態(例えば、プロトオンコジーンをオンコジーンに変換させるもの、例えば構造的に活性化された変異体、例えばBcr−Abl)の1種以上のチロシンプロテインキナーゼに関する。とりわけ、異常に高度に発現した形態、構造的に活性化された形態、または正常であるが、患者の他の制御機構との関係で過活動性の形態、および/または変異形態を含む。
【0093】
好ましい態様ならびに上記および下記態様のより一般的な範囲、あるいは特許請求の範囲において、いずれか1つ以上または全ての一般的な表現を、対応するより具体的な上記または下記定義に置き換えることができ、そうしてより強い、好ましい本発明の態様を得ることができる。
【0094】
本発明は、プロテインキナーゼ調節、とりわけ阻害応答性疾患、とりわけ上記疾患の1つ以上を処置する方法であって、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、かかる処置を必要とする動物またはヒトに投与することを含む方法に関する。
【0095】
他の局面において、本発明は
例えばプロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための、
− 医薬として使用するための本発明の化合物、
− 医薬としての本発明の化合物の使用
を提供する。
【0096】
医薬としての使用のために、1種以上の本発明の化合物を、例えば1つ、または2種以上の本発明の化合物の組合せを使用することができ、好ましくは本発明の化合物1種を使用する。
【0097】
本発明の化合物を、医薬組成物の形態で医薬として使用することができる。
【0098】
本発明はまた、本発明の式Iの(好ましくは新規)化合物を含む医薬組成物、治療(本発明のより広い局面において、予防)処置におけるその使用、または不適切なプロテイン(とりわけチロシン)キナーゼ活性、とりわけ上記好ましい障害または疾患を処置する方法、前記使用のための化合物、ならびにとりわけ前記使用のための医薬製剤およびそれらの製造に関する。より一般に、医薬製剤は本発明の化合物の場合に有用である。
【0099】
薬理学的に許容される本発明の化合物は、有効量の本発明の化合物と、またはそれと混合して、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば無機または有機、固体または液体の薬学的に許容される担体(担体物質)を含む医薬組成物中に存在するか、またはその製造のために使用することができる。
【0100】
本発明はまた、プロテインキナーゼ(とりわけチロシン)キナーゼ活性の阻害に応答する疾患の処置(これは、より広い本発明の局面において、その阻止(=予防)を含む)のために温血動物、とりわけヒト(または温血動物、とりわけヒト由来の細胞または細胞系、例えばリンパ球)に投与するのに好適な医薬組成物であって、好ましくは当該阻害に有効である量の本発明の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0101】
他の局面において本発明は、本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、例えば適切な担体および/または賦形剤、例えば増量剤、結合剤、崩壊剤、流動調節剤、滑沢剤、糖または甘味剤、風味剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節のための塩および/またはバッファーを含む医薬組成物を提供する。
【0102】
他の局面において、本発明は
− プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための本発明の医薬組成物。
− プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための本発明の医薬組成物の使用
を提供する。
【0103】
さらなる局面において、本発明は例えば上記障害を含むプロテインキナーゼ調節応答性障害を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に治療上有効量の本発明の化合物を、例えば医薬組成物の形態で投与することを含む方法を提供する。
【0104】
他の局面において、本発明は、プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための
− 医薬の製造のための本発明の化合物、
− 医薬の製造のための本発明の化合物の使用、
− 本発明の化合物
を提供する。
【0105】
本発明の医薬組成物は、温血動物(とりわけヒト)に経腸、例えば経鼻、直腸もしくは経口、または非経腸、例えば筋肉内もしくは静脈内投与するためのものであって、有効量の薬学的有効成分を単独で、または顕著な量の薬学的に許容される担体と共に含む。有効成分の用量は温血動物の種、体重、年齢および個体の状態、個体の薬物動態データ、処置する疾患および投与形態に依存する。
【0106】
本発明はまた、プロテイン(とりわけチロシン)キナーゼの不適切な活性に依存する疾患の阻害に応答する疾患を処置する方法であって;予防的またはとりわけ治療的有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、とりわけ上記疾患を有し、かかる処置を必要とする温血動物、例えばヒトに投与することを含む方法に関する。
【0107】
障害(疾患)の処置は、本明細書において使用するとき、予防(予防)を含む。
【0108】
かかる処置のために適切な投与量は、当然、例えば使用する本発明の化合物の化学的性質および薬物動態データ、個々の宿主、例えばかかる処置を必要とする対象の体重、年齢および個体の状態、投与形態ならびに処置する状態の重症度に依存して変化する。しかし一般に、大型哺乳類、例えばヒトにおける満足のいく結果のために、指示1日投与量は
− 約0.0001g〜5g、例えば0.001g〜1.5g;
− 約0.001mg/kg体重〜約60mg/kg体重、例えば0.01mg/kg体重〜20mg/kg体重
の範囲を含み、例えば1日4回までの分割用量で投与する。
通常、小児には成人用量の半分を投与することができる。
【0109】
本医薬組成物は、有効成分約1%〜約95%、好ましくは約20%〜約90%を含む。本発明の医薬組成物は、アンプル、バイアル、座薬、糖衣錠、錠剤またはカプセル剤のような例えば単位投与形態で投与することができる。
【0110】
本発明の化合物は、例えば医薬組成物の形態で、何れかの常套の経路、例えば経腸、例えば経鼻、頬側、直腸、経口投与;非経腸、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内輸液、経皮(無傷(intact)の皮膚を通過する拡散)、経粘膜(粘膜を通過する拡散)、吸入投与;局所;例えば皮膚上、鼻腔内、気管内投与;腹腔内(腹腔への輸液または注射);硬膜外(peridural)(硬膜外空間への注射または輸液);くも膜下腔内(脳脊髄液への注射または輸液);硝子体内(眼を介した投与);または例えば局所送達のための医薬デバイス、例えばステントを介して;
例えばコーティングもしくは非コーティング錠剤、カプセル剤、(注射)液、固体溶液、懸濁液、分散剤、固体分散剤の形態で;例えばアンプル、バイアルの形態で、クリーム、ゲル、ペースト、吸入粉末、泡、チンキ、リップスティック、ドロップ、スプレー、または座薬の形態で投与することができる。
【0111】
例えば目への投与を含む局所的使用について、満足のいく結果が、有効成分の濃度0.5−10%、例えば1−3%、1日複数回、例えば1日2〜5回の局所投与によって得ることができる。
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩形、または遊離形で;所望により溶媒和物形で投与することができる。塩および/または溶媒和物形の本発明の化合物は、遊離形の本発明の化合物と同程度の活性を示す。
【0112】
本発明の医薬組成物を、自体公知の方法によって、例えば常套の溶解、凍結乾燥、混合、造粒、またはコンフェクションプロセスによって製造することができる。
【0113】
有効成分の溶液および懸濁液、とりわけ等張水溶液または懸濁液を好ましくは使用し、例えば有効成分を単独でまたは担体、例えばマンニトールと共に含む、使用の前にかかる溶液または懸濁液を調製するための凍結乾燥組成物の場合も可能である。本医薬組成物は、滅菌することができ、そして/または賦形剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩および/またはバッファーを含んでいてもよく、そして自体公知の方法で、例えば常套の溶解または凍結乾燥プロセスによって製造する。前記溶液または懸濁液は、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンを含んでいてもよい。
【0114】
油中懸濁液は、油成分として注射用として慣用の植物油、合成油または半合成油を含む。とりわけ、酸成分として8〜22個、とりわけ12〜22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸またはリノレイン酸を、所望により抗酸化剤、例えばビタミンE、β−カロチンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンと共に含む、液体脂肪酸エステルを意味し得る。これらの脂肪酸エステルのアルコール成分は最大6個の炭素原子を有し、そしてモノ−またはポリ−ヒドロキシアルコール、例えばモノ−、ジ−またはトリ−ヒドロキシアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールあるいはそれらの異性体、とりわけグリコールおよびグリセロールである。したがって、下記脂肪酸エステルの例を意味する:オレイン酸エチルエステル、ミリスチン酸イソプロピルエステル、パルミチン酸イソプロピルエステル、“Labrafil M 2375”(ポリオキシエチレングリセロールトリオレエート、Gattefosse, Paris)、および/または“Miglyol 812”(C〜C12の鎖長を有する飽和脂肪酸のトリグリセリド、Huels AG, Germany)、とりわけ植物油、例えば綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、およびとりわけラッカセイ油。
【0115】
注射液または輸液組成物を、常套の方法で、滅菌条件下で製造する;これをまた、組成物のアンプルまたはバイアルに導入し、そして容器に封入する。
【0116】
経口投与用医薬組成物を、有効成分と固体担体を組み合わせて、所望により得られた混合物を造粒し、そして所望または必要により、適切な賦形剤を錠剤、糖衣錠コアまたはカプセルに加えて混合物を処理することによって得ることができる。有効成分を分散させ、所定の量で放出することができる可塑性担体中にそれらを取り込むことも可能である。
【0117】
好適な担体は、とりわけ増量剤、例えば糖、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸3カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、および結合剤、例えば、コーン、コムギ、コメまたはポテトのスターチを用いたデンプンペースト、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、および/または、所望により、崩壊剤、例えば上記デンプンおよび/またはカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。賦形剤は、とりわけ流動化剤および滑沢剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは、とりわけ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/またはチタンジオキシド、または好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物中のコーティング溶液、あるいは腸溶コーティングの製造のために、好適なセルロース製剤、例えばエチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液を含み得る濃縮糖溶液を使用して、好適な、所望により腸溶の、コーティングを施す。カプセルは、ゼラチンからなる乾燥充填カプセルおよびゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールからなる軟密封カプセルである。乾燥充填カプセル剤は、例えばラクトースのような増量剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような流動促進剤、および所望により安定化剤と共に有効成分を含んでいてもよい。軟カプセル中で、有効成分は好適な油性賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油、液性ポリエチレングリコール中に好ましくは溶解または懸濁しており、これはまた、安定化剤および/または抗菌剤を加えることができる。着色料または顔料を錠剤または錠剤コーティングまたはカプセル殻に、例えば区別するため、または有効成分の用量が異なることを示すために、加えることができる。
【0118】
本発明の化合物はまた、少なくとも1種の第2の薬剤物質、例えば生物学的に活性な薬剤、好ましくは他の抗増殖性薬剤との組合せで有利に使用することができる。かかる抗増殖性薬剤には、アロマターゼインヒビター、抗エストロゲン剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性化剤、アルキル化剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、細胞分化プロセスを誘導する化合物、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、MMP阻害剤、mTOR阻害剤、抗新生物代謝拮抗剤、プラチナ化合物、タンパク質もしくは脂質キナーゼ活性およびATPアーゼ活性を標的とし/減少する化合物、およびさらなる抗血管形成化合物、タンパク質もしくは脂質ホスファターゼの活性を標的とし、減少し、もしくは阻害する化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン剤、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、ビスホスホネート、生物学的応答調節剤、抗増殖性抗体、ヘパラナーゼ阻害剤、Rasオンコジーンアイソフォームの阻害剤、プロテアソーム阻害剤、血液学的悪性腫瘍の処置に使用する薬剤、Flt−3の活性を標的とし、減少し、もしくは阻害する化合物、Hsp90阻害剤、およびテモゾロミド(TEMODAL(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
「アロマターゼインヒビター」なる用語は、本明細書において使用するとき、エストロゲン生産を阻害し、すなわち基質のアンドロステンジオンおよびテストステロンのエストロンおよびエストラジオールへのそれぞれの変換を阻害する化合物に関する。かかる用語には、ステロイド、とりわけアタメスタン、エキセメスタンおよびホルメスタン、およびとりわけ非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ログレチミド、ピリドグルテチミド、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよび、レトロゾールが含まれるが、これらに限定されない。エキセメスタンは例えば、AROMASINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ホルメスタンは例えば、LENTARONの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ファドロゾールは例えば、AFEMAの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。アナストロゾールは例えば、ARIMIDEXの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。レトロゾールは例えば、FEMARAまたはFEMARの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。アミノグルテチミドは例えば、ORIMETENの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。アロマターゼインヒビターである化学療法剤を含む本発明の組合せ剤は、ホルモン受容体陽性腫瘍、例えば乳がんの処置にとりわけ有用である。
【0120】
「抗エストロゲン剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、エストロゲン受容体レベルでエストロゲンの効果と拮抗する化合物に関する。かかる用語には、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよびラロキシフェン塩酸塩が含まれるが、これらに限定されない。タモキシフェンは例えば、NOLVADEXの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ラロキシフェン塩酸塩は例えば、EVISTAの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。フルベストラントは、US 4,659,516に記載のとおりに製剤することができるか、または例えば、FASLODEXの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。抗エストロゲン剤である化学療法剤を含む本発明の組合せ剤は、エストロゲン受容体陽性腫瘍、例えば乳がんの処置にとりわけ有用である。
【0121】
「抗アンドロゲン剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、男性ホルモンの生物学的効果を阻害することができる何れかの物質に関する。これは、例えばUS 4,636,505に記載のとおりに製剤することができるビカルタミド(SASODEX)を含むが、これに限定されない。
【0122】
「ゴナドレリンアゴニスト」なる用語には、本明細書において使用するとき、アバレリクス、ゴセレリンおよびゴセレリン酢酸塩が含まれるが、これらに限定されない。ゴセレリンはUS 4,100,274に記載されており、例えばZOLADEXの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。アバレリクスは例えば、US 5,843,901に記載のとおりに製剤することができる。
【0123】
「トポイソメラーゼI阻害剤」なる用語には、本明細書において使用するとき、トポテカン、ギマテカン、イリノテカン、カンプトテシンおよびそのアナログ、9−ニトロカンプトテシンおよび巨大分子カンプトテシン結合PNU−166148(WO99/17804の化合物A1)が含まれるが、これらに限定されない。イリノテカンは例えば、CAMPTOSARの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。トポテカンは例えば、HYCAMTINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0124】
「トポイソメラーゼII阻害剤」なる用語には、本明細書において使用するとき、アントラサイクリン、例えばドキソルビシン(リポソーム製剤を含む、例えばCAELYX)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネムロビシン、アントラキノンミトキサントロンおよびロソキサントロン、およびポドフィロトキシン、エトポシド、およびテニポシドが含まれるが、これらに限定されない。エトポシドは例えば、ETOPOPHOSの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。テニポシドは例えば、VM 26−BRISTOLの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ドキソルビシンは例えば、ADRIBLASTINまたはADRIAMYCINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。エピルビシンは例えば、FARMORUBICINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。イダルビシンは例えば、ZAVEDOSの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ミトキサントロンは例えば、NOVANTRONの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0125】
「微小管活性化剤」なる用語は、微小管安定化剤および微小管脱安定化剤および微小管重合阻害剤に関し、タキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、とりわけビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン、とりわけビンクリスチン硫酸塩、ビノレルビン、ディスコデルモリド、コヒチン、ならびにエポチロンおよびその誘導体、例えばエポチロンBまたはその誘導体を含むが、これらに限定されない。パクリタキセルは例えば、TAXOLの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ドセタキセルは例えば、TAXOTEREの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ビンブラスチンは例えば、VINBLASTIN R.P.の商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ビンクリスチン硫酸塩は例えば、FARMISTINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ディスコデルモリドは例えば、US 5,010,099に記載のとおりに得ることができる。また、WO 98/10121、US 6,194,181、WO 98/25929、WO 98/08849、WO 99/43653、WO 98/22461 および WO 00/31247に記載のエポチロン誘導体を含む。とりわけ好ましくは、エポチロンAおよび/またはBである。
【0126】
「アルキル化剤」なる用語には、本明細書において使用するとき、これらに限定されないが、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファランまたはニトロソウレア(BCNUまたはGliadel)が含まれる。シクロホスファミドは例えば、CYCLOSTINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。イフォスファミドは例えば、HOLOXANの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0127】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」または「HDAC阻害剤」なる用語は、ヒストンデアセチラーゼを阻害し、抗増殖性活性を有する化合物に関する。これには、WO 02/22577に記載の化合物、とりわけN−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドおよびその薬学的に許容される塩を含み、さらにとりわけスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)が含まれる。
【0128】
「抗新生物代謝拮抗剤」なる用語には、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン、ゲムシタビン、DNA脱メチル化剤、たとえば5−アザシチジンおよびデシタビン、メトトレキセート、エダトレキセート、およびフォリン酸アンタゴニスト、例えばペメトレキセドが含まれるが、これらに限定されない。カペシタビンは例えば、XELODAの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ゲムシタビンは例えば、GEMZARの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。また、モノクローナル抗体であるトラスツズマブも含み、これは例えばHERCEPTINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0129】
「プラチナ化合物」なる用語には、本明細書において使用するとき、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンが含まれるが、これらに限定されない。カルボプラチンは例えば、CARBOPLATの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。オキサリプラチンは例えば、ELOXATINの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0130】
「タンパク質または脂質キナーゼ活性を標的とし/減少する化合物およびさらなる抗血管形成化合物」なる用語には、本明細書において使用するとき、プロテインチロシンキナーゼおよび/またはセリンおよび/またはスレオニンキナーゼ阻害剤または脂質キナーゼ阻害剤、例えば下記のものを含むが、これらに限定されない:
a)血小板由来増殖因子(PDGFR)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えばPDGFRの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、とりわけPDGF受容体を阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ、SU101、SU6668およびGFB−111;
b)繊維芽増殖因子受容体(FGFR)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;
c)インシュリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、とりわけIGF−IRを阻害する化合物、例えばWO 02/092599に記載の化合物;
d)Trk受容体チロシンキナーゼファミリーの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;
e)Axl受容体チロシンキナーゼファミリーの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;
f)c−Met受容体の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;
【0131】
g)c−Kit受容体チロシンキナーゼ(PDGFRファミリーの一部)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えばc−Kit受容体チロシンキナーゼファミリーの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、とりわけc−Kit受容体の活性を阻害する化合物、例えばイマチニブ;
h)c−Ablファミリーのメンバーおよびそれらの遺伝子融合生成物(例えばBCR−Ablキナーゼ)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えばc−AbIファミリーメンバーおよびそれらの遺伝子融合生成物の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ;PD180970;AG957;NSC 680410;またはParkeDavisのPD173955;
i)プロテインキナーゼC(PKC)およびセリン/スレオニンキナーゼのRafファミリー、MEK、SRC、JAK、FAK、PDKおよびRas/MAPKファミリーのメンバー、またはPI(3)キナーゼファミリー、またはPI(3)−キナーゼ−関連キナーゼファミリー、および/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバーの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、およびとりわけUS 5,093,330に記載のスタウロスポリン誘導体、例えばミドスタウリン;さらなる化合物の例には、例えばUCN−01、サフィンゴル、BAY43−9006、ブリオスタチン1、ペリフォシン;イルモフォシン;RO 318220およびRO 320432;GO 6976;Isis 3521;LY333531/LY379196;イソキノリン化合物、例えばWO 00/09495に記載のもの;FTIs;PD184352またはQAN697(P13K阻害剤)を含む;
【0132】
j)プロテインチロシンキナーゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えばイマチニブメシレート(GLIVEC/GLEEVEC)またはチルホスチン。チルホスチンは、好ましくは低分子量化合物(Mr<1500)またはその塩、とりわけベンジリデンマロニトリルクラスまたはS−アリールベンゼンマロニトリルもしくは二置換キノリンクラスの化合物から選択される化合物、よりとりわけ、チルホスチンA23/RG−50810;AG 99;チルホスチンAG 213;チルホスチンAG 1748;チルホスチンAG 490;チルホスチンB44;チルホスチンB44(+)エナンチオマー;チルホスチンAG 555;AG 494;チルホスチンAG 556、AG957およびアダホスチン(4−{[(2,5−ジヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}−安息香酸アダマンチルエステル;NSC 680410、アダホスチン)からなる群から選択される何れかの化合物である;および
k)受容体チロシンキナーゼの上皮増殖因子ファミリー(ホモまたはヘテロダイマーとしてのEGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4)の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、とりわけEGF受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバー、例えばEGF受容体、ErbB2、ErbB3およびErbB4を阻害するか、またはEGFまたはEGF関連リガンドと結合する化合物、タンパク質または抗体、およびとりわけ、WO 97/02266、例えば実施例39の化合物、またはEP 0 564 409、WO 99/03854、EP 0520722、EP 0 566 226、EP 0 787 722、EP 0 837 063、US 5,747,498、WO 98/10767、WO 97/30034、WO 97/49688、WO 97/38983 およびとりわけ、WO 96/30347(例えばCP 358774として知られている化合物)、WO 96/33980(例えば化合物ZD 1839)およびWO 95/03283(例えば化合物ZM105180)に一般的および具体的に記載の化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体;例えばトラスツズマブ(HerpetinR)、セツキシマブ、イレッサ、エルロチニブ(Tarceva(商標))、CI−1033、EKB−569、GW−2016、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3またはE7.6.3、およびWO 03/013541に記載の7H−ピロロ−[2,3−d]ピリミジン誘導体である。
【0133】
さらなる抗血管形成化合物は、その活性について他の機構を有する化合物、例えばタンパク質または脂質キナーゼ阻害に無関係な化合物、例えばサリドマイド(THALOMID)およびTNP−470を含む。
【0134】
タンパク質または脂質ホスファターゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、例えばホスファターゼ1、ホスファターゼ2A、PETNまたはCDC25の阻害剤、例えばオカダ酸またはその誘導体である。
【0135】
細胞分化プロセスを誘導する化合物は、例えばレチノイン酸、α−、β−またはδ−トコフェロールまたはα−、β−またはδ−トコトリエノールである。
【0136】
「シクロオキシゲナーゼ阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、例えばCOX−2阻害剤、5−アルキル置換2−アリールアミノフェニル酢酸および誘導体、例えばセレコキシブ(CELEBREX)、ロフェコキシブ(VIOXX)、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えば5−メチル−2−(2’−クロロ−6’−フルオロアニリノ)フェニル酢酸、ルミラコキシブを含む。
【0137】
「mTOR阻害剤」なる用語は、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害し、抗増殖性活性を有する化合物、例えばシロリムス(Rapamune(登録商標))、エベロリムス(Certican(商標))、CCI−779およびABT578に関する。
【0138】
「ビスホスホネート」なる用語には、本明細書において使用するとき、エトリドン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸が含まれるが、これらに限定されない。エトリドン酸は例えば、DIDRONELの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。クロドロン酸は例えば、BONEFOSの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。チルドロン酸は例えば、SKELIDの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。パミドロン酸は例えば、AREDIA(商標)の商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。アレンドロン酸は例えば、FOSAMAXの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。イバンドロン酸は例えば、BONDRANATの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。リセドロン酸は例えば、ACTONELの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。ゾレドロン酸は例えば、ZOMETAの商品名で、例えば市販されている形態で投与することができる。
【0139】
「ヘパラナーゼ阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、ヘパリン硫酸分解を標的とし、減少し、または阻害する化合物を意味する。該用語は、PI−88を含むがこれに限定されない。
【0140】
「生物学的応答調節剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、リンホカインまたはインターフェロン、例えばインターフェロンγを意味する。
【0141】
「Rasオンコジーンアイソフォーム(例えばH−Ras、K−RasまたはN−Ras)の阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、Rasのオンコジーン活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物、例えば「ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤」、例えばL−744832、DK8G557またはR115777(Zarnestra)を意味する。
【0142】
「テロメラーゼ阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、テロメラーゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物を意味する。テロメラーゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、とりわけテロメラーゼ受容体を阻害する化合物、例えばテロメスタチンである。
【0143】
「メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、メチオニンアミノペプチダーゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物を意味する。メチオニンアミノペプチダーゼの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、例えばベンガミドまたはその誘導体である。
【0144】
「プロテアソーム阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、プロテアソームの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物を意味する。プロテアソームの活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、例えばPS−341およびMLN341を含む。
【0145】
「マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤」または(「MMP阻害剤」)なる用語は、コラーゲンペプチド模倣物および非ペプチド模倣物阻害剤、テトラサイクリン誘導体、例えばヒドロキサメートペプチド模倣物阻害剤、バチマスタットおよびその経口的に生物学的に利用可能なアナログであるマリマスタット(BB−2516)、プリノマスタット(AG3340)、メタスタット(NSC 683551)BMS−279251、BAY 12−9566、TAA211、MMI270BまたはAAJ996を含むが、これらに限定されない。
【0146】
「血液学的悪性腫瘍の処置に使用する薬剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、FMS様チロシンキナーゼ阻害剤、例えばFlt−3の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;インターフェロン、1−b−D−アラビノフラノシルシトシン(ara−c)およびビスルファン;およびALK阻害剤、例えば未分化リンパ腫キナーゼを標的とし、減少し、または阻害する化合物を含むが、これらに限定されない。
【0147】
「Flt−3の活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物」なる用語は、とりわけFlt−3を阻害する化合物、タンパク質または抗体、例えばPKC412、ミドスタウリン、スタウロスポリン誘導体、SU11248およびMLN518である。
【0148】
「HSP90阻害剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、HSP90の内因性ATPアーゼ活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物;HSP90クライアントタンパク質をユビキチンプロテアソーム経路によって分解し、標的とし、減少し、または阻害する化合物を含むが、これらに限定されない。HSP90の内因性ATPアーゼ活性を標的とし、減少し、または阻害する化合物は、とりわけHSP90のATPアーゼ活性を阻害する化合物、タンパク質または抗体、例えば17−アリルアミノ,17−デメトキシゲルダナマイシン(17AAG)、ゲルダナマイシン誘導体;他のゲルダナマイシン関連化合物;ラジシコールおよびHDAC阻害剤である。
【0149】
「抗増殖性抗体」なる用語には、本明細書において使用するとき、これらに限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、トラスツズマブ−DM1、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、PRO64553(抗−CD40)および2C4抗体が含まれる。抗体は、例えば無傷の(intact)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、および所望の生物学的活性を示す抗体フラグメントを意味する。
【0150】
急性骨髄性白血病(AML)の処置のために、式Iの化合物を、標準的な白血病治療との組合せで、とりわけAMLの処置に使用される治療との組合せで使用することができる。とりわけ、式Iの化合物を例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはAMLの処置に有用な他の薬剤、例えばダウノルビシン、アドリアマイシン、Ara−C、VP−16、テニポシド、ミトキサントロン、イダルビシン、カルボプラチナムおよびPKC412との組合せで投与することができる。
【0151】
コード番号、一般名または商品名で同定されている活性剤の構造は、標準的な概説書「The Merck Index」の現行版、またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から得ることができる。
【0152】
本発明の化合物との組合せ剤において使用することができる上記化合物は、上記文献のような文献に記載のとおりに製造および投与することができる。
【0153】
本発明の化合物はまた、既知の治療方法、例えばホルモンまたはとりわけ放射線の投与との組合せにおいて有利に使用することができる。
【0154】
本発明の化合物は、とりわけ放射線増感剤として、とりわけ放射線療法に不良な感受性を示す腫瘍の処置のために使用することができる。
【0155】
本発明の化合物は、本発明に記載の何れかの方法または使用のために、単独で、または1種以上、少なくとも1種の他の第2の薬剤物質との組合せにおいて使用することができる。
【0156】
他の局面において、本発明は下記態様を提供する:
− 本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質の組合せ剤;
− 本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質を含む医薬組合せ剤;
− 本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質、そして1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物;
− 例えば本明細書に定義の何れかの方法に使用するための、例えば医薬組合せ剤または組成物の形態の、少なくとも1種の第2の薬剤物質と組み合わせた本発明の化合物。
【0157】
− 本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質を含む、医薬として使用するための組合せ剤、医薬組合せ剤または医薬組成物;
− 少なくとも1種の第2の薬剤物質との組合せにおける、例えば医薬組合せ剤または医薬組成物の形態の本発明の化合物の医薬としての使用;
− 第2の薬剤物質と組み合わせて使用するための医薬の製造のための、本発明の化合物の使用、
− プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のためにそれを必要とする対象における障害を処置する方法であって、治療上有効量の本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質を、例えば医薬組合せ剤または医薬組成物の形態で、同時的または逐次的に共投与することを含む方法;
− プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置用医薬の製造に使用するための、少なくとも1種の第2の薬剤物質との組合せにおける、例えば医薬組合せ剤または医薬組成物の形態の本発明の化合物。
【0158】
組合せ剤は、本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質が同じ製剤である固定された組合せ剤;本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質が別個の製剤で同じパッケージにおいて、例えば共投与のための指示書と共に提供されるキット;および本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤物質が別個にパッケージされているが、同時または逐次投与のための指示書が得られる自由な組合せ剤を含む。
【0159】
他の局面において、本発明は下記態様を提供する:
− 本発明の化合物である第1の薬剤物質と、少なくとも1種の第2の薬剤物質、そして組合せ投与のための指示書を含む、医薬パッケージ;
− 本発明の化合物と、少なくとも1種の第2の薬剤物質との組合せ投与のための指示書を含む、医薬パッケージ;
− 少なくとも1種の第2の薬剤物質と、本発明の化合物との組合せ投与のための指示書を含む、医薬パッケージ。
【0160】
本発明の組合せ剤による処置は、単剤処置と比較して、改善を提供し得る。
【0161】
他の局面において、本発明は下記態様を提供する:
− ある量の本発明の化合物と、ある量の第2の薬剤物質を含む医薬組合せ剤であって、前記量が相乗的治療効果を奏するのに適切なものである、医薬組合せ剤;
− 本発明の化合物の治療有用性を改善する方法であって、治療上有効量の本発明の化合物と第2の薬剤物質を例えば同時的または逐次的に、共投与することを含む方法。
− 第2の薬剤物質の治療有用性を改善する方法であって、治療上有効量の本発明の化合物と第2の薬剤物質を例えば同時的または逐次的に、共投与することを含む方法。
【0162】
本発明の組合せ剤と組合せ成分としての第2の薬剤物質を、何れかの常套の経路、例えば本発明の化合物について上記のものによって投与することができる。第2の薬剤は、適切な投与量で、例えば単剤処置で使用する量と同様の投与量範囲で、例えば相乗効果の場合、常套の範囲よりも低い投与量で、投与することができる。
【0163】
下記実施例は本発明を説明するが、その範囲を限定するものではない。
温度は摂氏度で測定する。異なることが記載されていない限り、反応はRTで行う。
TLCのR値は溶離剤前線が動いた距離に対する各物質が動いた距離の比を示す。TLCのR値は、5×10cm TLCプレート、シリカゲルF254、Merck, Darmstadt, Germanyで測定する。
【実施例】
【0164】
分析HPLC条件
系1
直線グラジエント 2−100% CHCN(0.1%TFA)およびHO(0.1% TFA)で7分+2分 100% CHCN(0.1%TFA);215nmで検出、流速1mL/分、30℃。カラム:Nucleosil 100-3 C18HD (125×4mm)
【0165】
略語
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
min 分
MS−ES 電子スプレー質量分析
TLCにおける前線比
RT 室温
TBME tert.ブチルメチルエーテル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
保持時間
UV 紫外線
【0166】
アニリン構造ブロックの一般的な合成方法
N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドについて説明する。
【化9】

化合物N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドを、対応するニトロ化合物(N−(4−メチル−3−ニトロ−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、(A))をラネーニッケルで、メタノール中、RTで水素化して得る。該生成物を高収率で得る。中間体ニトロ化合物(A)であるN−(3−ニトロ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドを、4−メチル−3−ニトロ−フェニルアミン(B)と3−トリフルオロメチル−ベンゾイルクロライド(C)をCHCl中トリエチルアミンの存在下、RTで反応させて得る。中間体(A)を良好な収率で得る。類似の異なるアニリンが本願前の文献および特許出願に記載されている(例えばCAS No. 30069-31-9)。カップリングのために、対応する酸クロライドを用いる。
【0167】
反転した3−アミノ−ベンズアミド誘導体である3−アミノ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミドを、一般的な方法と同様に、適切な出発物質を用いて合成する。
【0168】
実施例1
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド

【化10】

のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボニルクロライド化合物135mgを、5ml無水THFに溶解させ、得られた混合物を189mg N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドで、RTで処理する。完了後(1時間)、得られた黄色懸濁液を濾過し、5ml THFで洗浄する。得られた混合物から溶媒を蒸発させ、そして蒸発残渣をクロマトグラフィー(35g RS70-SiOH Chromabond, ISCO Sg-100;TBMEで溶出)に供する。ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミドを得て、これをMeOH中で結晶化させる。
融点222−224℃;MS(ESI+):m/z= 439.8 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.67 分 (System 1)。
【0169】
工程1.1
7−ヒドロキシ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステル
参考文献: Yasuo Makisumi; Chem.Pharm.Bull. 1962; Vol. 10; p. 620-626.
5.10g 2H−ピラゾール−3−イルアミンを120ml EtOHに溶解させ、得られた混合物を13.4g 2−エトキシメチレン−マロン酸ジエチルエステルの120ml EtOH溶液で、RTで処理する。得られた黄色溶液を還流温度で19時間撹拌する。得られた混合物に60ml酢酸を加え、還流温度で撹拌をさらに57時間続ける。白色懸濁液を得て、これをRTに冷却させる。固体が結晶化し、該結晶生成物を濾取し、乾燥させる。7−ヒドロキシ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを得る。融点81−81℃;MS(ESI+):m/z= 254.1 (M+H)+; HPLC: tRet = 4.71 分 (系 1)。
【0170】
工程1.2
7−クロロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステル
参考文献:Robert H. Springer; M. B. Scholten; Darrell E. O’Brien; Thomas Novinson; Jon P. Miller; and Roland K. Robins; J.Med.Chem. 1982; Vol. 25; p.235-242.
8.98g 7−ヒドロキシ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを100ml POClに懸濁し、11.76ml N,N−ジエチルアニリンをRTで加える。得られた淡黄色懸濁液をゆっくりと還流温度に加熱し、撹拌を2時間続ける。得られた混合物をRTに冷却させ、POClを減圧下で除去し、得られた油状残渣を氷水に注ぐ。得られた混合物をTBMEで抽出し、得られた有機相を飽和水性NaHCO溶液および水で洗浄し、乾燥させ、減圧下で濃縮する。得られた残渣をn−ヘプタンから結晶化する。7−クロロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを得る。
融点93−95℃;HPLC: tRet = 4.73 分 (系1)
【0171】
工程1.3:
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステル
2.05g 7−クロロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを100ml EtOHに溶解させ、得られた混合物に0.2g Pd/C 5%および734mg 無水酢酸ナトリウムを加える。得られた混合物をRT、大気圧で2.5時間水素化する。得られた混合物から触媒を除去し、溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残渣をクロマトグラフィー(120g Redisep, ISCO Sg-100;EtOAc:ヘキサン 1:1で溶出)に供する。ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルをEtOHから結晶化させる。
融点78−79℃;MS(ESI+):m/z= 191.9 (M+H)+; HPLC: tRet = 4.38 分 (系 1).
【0172】
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルに加えて、他の中間体、すなわち4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを反応混合物から結晶形(融点198−200℃; MS(ESI+):m/z= 194 (M+H)+; HPLC: tRet = 3.91 分 (系 1))で単離し、これは合成例3において有用である。
【0173】
工程1.4
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸
350mg ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを8ml 2N NaOHに懸濁し、得られた混合物をRTで1時間撹拌し、10ml 酢酸を加える。得られた混合物から溶媒を減圧下(高真空、30℃)で除去する。得られた残渣を水50mlで処理し、EtOAcで抽出する。得られた有機相を水で洗浄し、乾燥させ、減圧下で少量に濃縮する。ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸を結晶化し、濾取する。
融点228−233℃; MS(ESI+):m/z= 63.9 (M+H)+;HPLC: tRet = 3.39 分 (系1).
【0174】
工程1.5
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボニルクロライド
105mg ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸を2ml 塩化チオニルに懸濁し、得られた混合物を還流温度で45分間撹拌する(浴=90℃)。得られた混合物をRTに冷却させ、溶媒を減圧下で除去する。得られた残渣を5ml CHClで処理し、再び2回蒸発させる。ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボニルクロライドを得て、これをさらに精製することなく使用することができる。
【0175】
実施例2

【化11】

のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミドを、実施例1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を用いて製造する。
融点239−241℃; MS(ESI+):m/z= 439.9 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.55 分 (系1).
【0176】
実施例3

【化12】

の4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド
75mg 4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸エチルエステルを3ml DMFにRTで溶解させ、得られた混合物を134mg N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドで処理する。該混合物を0℃に冷却し、プロピルホスホン酸無水物(1.09g/ml)、0.318ml トリエチルアミンおよび22.7mg 4−ジメチルアミノピリジンを加える。得られた混合物を氷浴から除去し、撹拌を1時間、RTで続ける。得られた混合物を塩水に注ぎ、得られた混合物をEtOAcで抽出する。得られた有機相を飽和水性NaHCOおよび塩水で洗浄し、乾燥させる。得られた混合物を減圧下で濃縮し、残渣を5ml EtOAcで処理する。4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミドを結晶化し、該結晶生成物をさらにクロマトグラフィー(12g Redisep, ISCO Sg-100;CHCl:CHOH 95:5で溶出)に供する。
融点259−263℃; MS(ESI+):m/z= 442 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.35 分 (系 1).
【0177】
実施例4

【化13】

の3−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミドを、実施例1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。
融点227−229℃; MS(ESI+):m/z= 441.1 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.05 分 (系 1).
【0178】
3−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸を実施例1、工程1.1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。融点274−281℃; MS(ESI+):m/z= 338.1 (M+H)+; HPLC: tRet = 4.28 分 (系 1)。4−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−1H−ピラゾール−3−イルアミンの合成はWO2005/070431に記載されている。
【0179】
実施例5
3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミド
【化14】

を、実施例1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。
融点230−232℃; MS(ESI+):m/z= 403 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.63 分 (系 1).
【0180】
3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸を、実施例1、工程1.1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。
融点229−231℃; MS(ESI+):m/z= 300.0 (M+H)+; HPLC: tRet = 4.85 分 (系 1).
4−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−2H−ピラゾール−3−イルアミンの合成はWO2005/070431に記載されている。
【0181】
実施例6

【化15】

のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミドを、実施例1、工程1.1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。
融点267−269℃; MS(ESI+):m/z= 457.9 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.54 分 (系 1).
【0182】
実施例7

【化16】

のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミドを、実施例1に記載の方法と同様に、適切な出発物質を使用して製造する。
融点256−258℃; MS(ESI+):m/z= 469.9 (M+H)+; HPLC: tRet = 5.54 分 (系 1).
【0183】
実施例8
EphB4キナーゼ活性の阻害
一般的な記載に上記した試験系を用いて、実施例1および2の化合物を、それらのEphB4キナーゼ阻害能について試験する。とりわけ一般的な記載にある範囲のIC50値(μmol/l)が示される。
実施例1〜3の化合物の生物学的活性を上記方法(EphB4 ELISA)のとおりに試験すると、3つの化合物全てが0.1〜1.5μMのIC50値を示す。
【0184】
実施例9
式Iの化合物を含む軟カプセル剤
各々有効成分として実施例1〜7のいずれか1個に記載の式Iの化合物のいずれか1種0.05gを含む5000個の軟ゼラチンカプセルを、下記のとおり製造する:
組成
有効成分 250g
ラウログリコール 2リットル
製造方法:粉末状の有効成分をLauroglykol*(プロピレングリコールラウレート、Gattefosse S.A., Saint Priest, France)に懸濁し、湿潤摩砕機で摩砕して、約1〜3μmの粒子サイズとする。混合物0.419gを、カプセル充填機を用いて軟ゼラチンカプセルに充填する。
【0185】
実施例10
式Iの化合物を含む錠剤
有効成分として実施例1〜7のいずれか1個に記載の式Iの化合物のいずれか1種100mgを含む錠剤を下記組成で、表寿的な方法に従って製造する:
組成
有効成分 100mg
結晶ラクトース 240mg
Avicel 80mg
PVPPXL 20mg
Aerosil 2mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
--------------------
447mg
製造:有効成分を担体物質と混合し、打錠機(Korsch EKO、杵径10mm)で圧縮する。
Avicel(登録商標)は微結晶セルロース(FMC, Philadelphia, USA)である。PVPPXLは架橋ポリビニルピロリドン(BASF, Germany)である。Aerosil(登録商標)は二酸化ケイ素(Degussa, Germany)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A
【化1】

〔式中、
R1は存在しないか、HまたはC1−7アルキルであり;
R2はH、C1−7アルコキシでモノもしくはジ置換されているか、または6個の環原子を有するN含有ヘテロシクリル(当該ヘテロシクリルは所望によりC1−7アルキルで置換されていてもよい)で置換されたフェニルであり、
R3はC1−7アルキル、または
−NH−CO−フェニルもしくは−CO−NH−フェニル(ここで、当該フェニルは非置換であるか、またはC1−7アルキル、ハロC1−7アルキル、C1−7アルコキシもしくはハロゲンで置換されている)であり、
nは0〜2である:
ただし、
R1が存在しないとき、点線は当該ピリミジン環のN1とC2およびC3とC4間の2個の二重結合を意味するか、または
R1が水素であるとき、点線は当該1,4−ジヒドロピリミジン環のC2とC3間の二重結合を意味する〕
の化合物。
【請求項2】
R1が存在しないか、またはHであり、
R2が水素、C1−4アルコキシでモノもしくはジ置換されたフェニル、または6個の環原子と1または2個の窒素ヘテロ原子を有する飽和ヘテロシクリル(当該ヘテロシクリルは所望によりC1−4アルキルで置換されていてもよい)で置換されたフェニル、例えばメチルで置換されたピペラジルであり、
nは1または2であり、そして
R3はC1−4アルキル、または
−NH−CO−フェニルもしくは−CO−NH−フェニル(ここで、当該フェニルは非置換であるか、またはC1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシもしくはハロゲンで置換されている)である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド、
4,7−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
3−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミド、
3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸(2,6−ジメチル−フェニル)−アミド、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド、および
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
塩形の、請求項1〜3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1〜4の何れかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
プロテインキナーゼ調節応答性障害を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に治療上有効量の請求項1〜4の何れかに記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項8】
プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置用医薬の製造のための、請求項1〜4の何れかに記載の化合物。
【請求項9】
プロテインキナーゼ調節応答性障害の処置のための、請求項1〜4の何れかに記載の化合物。
【請求項10】
プロテインキナーゼ調節応答性障害が下記群から選択される、請求項7に記載の処置方法または請求項8もしくは9の何れかに記載の化合物:c−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼからなる群から選択される1種以上のプロテインチロシンキナーゼの阻害に応答する疾患。
【請求項11】
請求項1〜4の何れかに記載の化合物と、少なくとも1種の第2の薬剤物質の組合せ剤。
【請求項12】
医薬としての請求項11の組合せ剤の使用。
【請求項13】
請求項7または10の何れかに記載の方法における、請求項11の組合せ剤の使用。

【公表番号】特表2010−508324(P2010−508324A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535065(P2009−535065)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061618
【国際公開番号】WO2008/052964
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】