説明

プロテインホスファターゼ2C活性化剤

【課題】 抗癌剤などとして有用な新規なプロテインホスファターゼ2C活性化剤を提供すること。
【解決手段】 下記の構造式(5)で表されるピシフェルジオール(Pisiferdiol)またはその薬学的に許容される塩などを有効成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤などとして有用な新規なプロテインホスファターゼ2C活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、癌の原因が分子レベルで明らかにされ、癌遺伝子、癌抑制遺伝子と呼ばれる正常細胞の増殖調節に関わる遺伝子類の異常がその原因とされている。その中で、DNA損傷チェックポイント、即ち、DNAが何らかの損傷を受けた際にその損傷を修復しきれない場合、アポトーシスにより強制的に異常な細胞を殺すことで癌細胞の増殖を防ぐ機能の異常が癌化の原因の一つと考えられている。アポトーシスが癌に対して有効に作用することはよく知られた事実であり、実際、既存の抗癌剤であるアドリアマイシンなどの多くの臨床薬が癌細胞にアポトーシスを誘導することが知られている。しかしながら、これらの臨床薬は副作用が強い。よって、副作用が少ないアポトーシス誘導剤が求められている。いくつか存在するアポトーシスメカニズムの中で、Badというタンパク質がアポトーシスを引き起こすことが知られている。Badは、リン酸化されたBadがセリン・スレオニンホスファターゼの1種であるプロテインホスファターゼ2C(PP2C)により脱リン酸化されることで活性化されて機能を発揮する(図2)(非特許文献1)。従って、PP2Cを活性化する物質は、リン酸化されたBadの脱リン酸化を促し、結果的に癌細胞にアポトーシスを誘導して抗癌効果を示すことが考えられる。
【0003】
また、2型糖尿病は、インシュリンの働きの低下が原因であることから、インシュリンと同じ働きをする物質は、新たな2型糖尿病予防・治療剤として期待できる。インシュリンが関わるグルコースの代謝には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)とグリコーゲンシンターゼ(GS)という酵素の脱リン酸化による活性化が重要であるが、PP2Cはインシュリンと同じようにGSの脱リン酸化を行うことが知られている(非特許文献2)。また、インシュリンはホスファチジルイノシトール3リン酸キナーゼ(PI3K)を活性化し、PI3Kはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)の9番目のセリンをリン酸化することでこの酵素を阻害し、その結果GSが活性化される。同じく、PP2CはPI3Kを活性化する結果、GSK-3βを阻害し、その結果GSが活性化される。GSK-3を直接的に阻害する物質は2型糖尿病予防・治療剤となることから、現在各種の阻害剤が研究されているが、PP2Cを活性化する物質も、間接的にGSK-3を阻害するので2型糖尿病予防・治療剤になりうる(図3)。
【0004】
さらに、アルツハイマー病の原因は、未だ完全には解明されてはいないが、タウタンパク質のリン酸化が脳の萎縮や神経原繊維変化を引き起こすことから、そのリン酸化酵素(GSK-3)の阻害剤が新たなアルツハイマー病予防・治療剤として期待されている(非特許文献3)。前述したように、PP2Cを活性化する物質は、間接的にGSK-3を阻害するので、当該物質はアルツハイマー病予防・治療剤になりうる(図4)。
【0005】
以上のように、PP2Cを活性化する物質は、癌、2型糖尿病、アルツハイマー病といった疾患の予防や治療に有効であると考えられるが、当該物質についての報告はそれほど多くはなく、PP2Cを活性化する物質として知られているのは、例えば、脂肪酸の1種であるオレイン酸(非特許文献4)、イチョウ葉に含まれるアレルギー物質であるギンコール酸(非特許文献5)、D-chiro-Inositol-Galactosamine(非特許文献6)などがあるに過ぎない。
【非特許文献1】S. Klumpp, et al., Neurochem. Int., 42, 555-560 (2003)
【非特許文献2】A. Hiraga, et al., Eur. J. Biochem., 119, 503-510 (1981)
【非特許文献3】H. Eldar-Finkelman, Trends Mol Med., 8, 126, 132 (2002)
【非特許文献4】S. Klumpp., et al., FEBS Lett., 437, 229-232 (1998)
【非特許文献5】B. Ahlemeyer., et al., Eur. J. Pharmacol., 430, 1-7 (2001)
【非特許文献6】D. L. Brautigan., et al., Biochemistry, 44, 11067-11073, (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、抗癌剤などとして有用な新規なPP2C活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を行った結果、例えば、P. Ofek, et al., J. Biol. Chem., 278, 14299-14305 (2003)に記載の、PP2Cと、基質としてFLRTpSCGを用いた反応を行い、遊離したリン酸をマラカイトグリーンで染色してその吸光度を測定するアッセイ系を参考に、基質をα-カゼインにかえたアッセイ系を利用し、サワラ、松、コウヤマキといった植物からPP2C活性化作用を有するいくつかの物質を見出した。
【0008】
上記の知見に基づいてなされた本発明のPP2C活性化剤は、請求項1記載の通り、下記の一般式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とする。
【0009】
【化5】

【0010】
[式中、R1、R4、R5、R6、R7、R9は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R4とR5は、一緒になって結合を形成してもよい。R2、R3は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R8は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0011】
また、本発明のPP2C活性化剤は、請求項2記載の通り、下記の一般式(2)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とする。
【0012】
【化6】

【0013】
[式中、R11、R12、R13は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R14、R15、R17は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R16は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0014】
また、本発明のPP2C活性化剤は、請求項3記載の通り、下記の一般式(3)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とする。
【0015】
【化7】

【0016】
[式中、R21、R22、R24は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R23は、-(CH2)n-A(Aは窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択される1〜4個の異種原子を有する複素環式基または-CH=C(CH3)-CH=CH2であり、nは1〜3の整数である)を示す。R25、R26は、同一または異なって、それぞれ、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0017】
また、本発明のPP2C活性化剤は、請求項4記載の通り、下記の一般式(4)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
【化8】

【0019】
[式中、R31、R32、R33は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R34、R35は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基のいずれかを示す。]
【0020】
また、本発明の抗癌剤は、請求項5記載の通り、請求項1〜4のいずれかに記載のPP2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とする。
また、本発明の2型糖尿病予防・治療剤は、請求項6記載の通り、請求項1〜4のいずれかに記載のPP2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とする。
また、本発明のアルツハイマー病予防・治療剤は、請求項7記載の通り、請求項1〜4のいずれかに記載のPP2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とする。
また、本発明の請求項1〜4のいずれかに記載のPP2C活性化剤の調製方法は、請求項8記載の通り、サワラ、松、コウヤマキから選択される少なくとも1種の植物からの抽出操作により単離取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、抗癌剤などとして有用な新規なPP2C活性化剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明によって提供されるPP2C活性化剤の有効成分は、以下の4種類に大別される。
(1)下記の一般式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【0023】
【化9】

【0024】
[式中、R1、R4、R5、R6、R7、R9は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R4とR5は、一緒になって結合を形成してもよい。R2、R3は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R8は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0025】
(2)下記の一般式(2)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【0026】
【化10】

【0027】
[式中、R11、R12、R13は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R14、R15、R17は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R16は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0028】
(3)下記の一般式(3)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【0029】
【化11】

【0030】
[式中、R21、R22、R24は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R23は、-(CH2)n-A(Aは窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択される1〜4個の異種原子を有する複素環式基または-CH=C(CH3)-CH=CH2であり、nは1〜3の整数である)を示す。R25、R26は、同一または異なって、それぞれ、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【0031】
(4)下記の一般式(4)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【0032】
【化12】

【0033】
[式中、R31、R32、R33は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R34、R35は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基のいずれかを示す。]
【0034】
ここで、低級アルキル基とは、炭素数が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
低級アルケニル基とは、炭素数が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味し、具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基などが挙げられる。
低級アルコキシ基とは、炭素数が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基を意味し、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられる。
低級アシルオキシ基とは、炭素数が2〜6の直鎖または分岐鎖のアシルオキシ基を意味し、具体的には、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
低級アルコキシカルボニル基とは、その低級アルコキシ部が上記と同義のアルコキシカルボニル基を意味し、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択される1〜4個の異種原子を有する複素環式基としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、フラニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリジノチアゾリル基、ピペリジニル基などが挙げられる。
【0035】
上記の一般式(1)で表される化合物の内、代表的な化合物としては、下記の構造式(5)で表されるピシフェルジオール(Pisiferdiol)や下記の構造式(6)で表される1β-ヒドロキシイソピシフェリン(1β-Hydroxyisopisiferin)が挙げられる。これらの化合物はサワラに含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であるが(必要であればM. Yatagai, et al., Mokuzai Gakkaishi, 24, 267-269 (1978)やS. Hasegawa, et al., Phytochemistry, 24, 1545-1551 (1985)を参照のこと)、その薬理作用としてPP2C活性化作用を有することは報告されていない。
【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
上記の一般式(2)で表される化合物の内、代表的な化合物としては、下記の構造式(7)で表されるピシフェリン酸(Pisiferic acid)や下記の構造式(8)で表されるデヒドロアビエチン酸(Dehydroabietic acid)が挙げられる。ピシフェリン酸はサワラに含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であり(必要であればM. Yatagai, et al., Mokuzai Gakkaishi, 24, 267-269 (1978)やS. Hasegawa, et al., Phytochemistry, 24, 1545-1551 (1985)を参照のこと)、デヒドロアビエチン酸は松に含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であるとともに(必要であればT. Minami, et al., J. Nat. Prod., 65, 1921-1923 (2002)を参照のこと)、市販もされているが、その薬理作用としてPP2C活性化作用を有することは報告されていない。
【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
上記の一般式(3)で表される化合物の内、代表的な化合物としては、下記の構造式(9)で表されるトランス-オジック酸(trans-Ozic acid)や下記の構造式(10)で表されるトランス-コミュニック酸(trans-Communic acid)や下記の構造式(11)で表されるランベルチアニック酸(Lambertianic acid)が挙げられる。トランス-オジック酸はサルビアなどに含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であり(必要であればA. A. Hussein, et al., J. Nat. Prod., Published on Web 01/27/2007を参照のこと)、トランス-コミュニック酸とランベルチアニック酸はコウヤマキに含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であるが(必要であればM. Sumimoto, et al., Tetrahedron, 19, 643-655 (1963)やW. G. Dauben, et al., Tetrahedron, 22, 679-683 (1966)やS. Hasegawa, et al., Phytochemistry, 24, 2041-2046 (1985)を参照のこと)、その薬理作用としてPP2C活性化作用を有することは報告されていない。
【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
上記の一般式(4)で表される化合物の内、代表的な化合物としては、下記の構造式(12)で表されるピマール酸(Pimaric acid)が挙げられる。ピマール酸は松に含まれるジテルペノイド化合物として既に公知であるとともに(必要であればH. T. Cheung, et al., Arzneimittelforschung, 44, 17-25 (1994)を参照のこと)、市販もされているが、その薬理作用としてPP2C活性化作用を有することは報告されていない。
【0046】
【化20】

【0047】
上記の一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物をサワラ、松、コウヤマキといった植物資源から単離精製する場合、その操作は、一般的な天然有機化合物の単離精製方法、例えば、アルコール(メタノールやエタノールなど)、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒や水を用いた抽出操作、イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂、ゲルろ過クロマトグラフィー、活性炭やアルミナやシリカゲルなどの吸着剤によるクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを用いた分離操作の他、結晶化操作、減圧濃縮操作、凍結乾燥操作などの各種操作を単独または適宜組み合わせて行えばよい。なお、これらの化合物は、自体公知の有機合成化学手法で合成することもできる(例えばランベルチアニック酸の合成についてはR. A. Bell, et al., Can. J. Chem., 50, 3749-3760 (1972)を参照のこと)。また、これらの化合物は、複数の不斉炭素を有するので、種々の立体異性体や光学異性体が存在し得るが、本発明はそのいずれをも権利範囲に包含するものである。
【0048】
上記の一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物が塩の形態をとりえる場合、その薬学的に許容される塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどとの無機塩、低級アルキルアミン、低級アルコールアミンなどとの有機塩、リジン、アルギニン、オルニチンなどとの塩基性アミノ酸塩の他、アンモニウム塩などの公知のものが挙げられる。
【0049】
上記の一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、PP2C活性化剤の有効成分として用いることができる。医薬品としてヒトや動物に対して投与する場合の投与方法は、経口的な投与方法であってもよいし、非経口的な投与方法であってもよい。非経口的な投与方法としては、例えば、静脈注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、経皮投与、経肺投与、経鼻投与、経腸投与、口腔内投与、経粘膜投与などが挙げられ、この場合、本発明のPP2C活性化剤は、これらの投与方法に適した形態に自体公知の方法で製剤化されて投与される。製剤形態としては、例えば、注射剤、坐剤、エアゾール剤、経皮吸収テープ、点眼剤、点鼻剤などが挙げられる。注射剤を調製する場合、適宜、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添加して注射剤とする。経口投与製剤としては、例えば、錠剤(糖衣錠、コーティング錠、バッカル錠を含む)、散剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、顆粒剤(コーティングしたものを含む)、丸剤、トローチ剤、液剤、これらの製剤学的に許容され得る徐放化製剤などが挙げられる。液剤には、懸濁剤、乳剤、シロップ剤(ドライシロップを含む)、エリキシル剤などを含む。例えば、錠剤は、公知の製剤学的製造法に準じ、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤などとともに調製することができる。この場合、担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末などを用いることができる。結合剤としては、例えば、デンプン、トラガントゴム、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどを用いることができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴールなどを用いることができる。着色剤としては、医薬品に添加することが許容されているものを用いることができる。錠剤や顆粒剤は、必要に応じ、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、メタアクリル酸重合体などで被膜してもよいし、2層以上の層で被膜してもよい。さらにエチルセルロースやゼラチンなどを用いてカプセル化してもよい。
【0050】
本発明のPP2C活性化剤が有効に作用する疾患は、例えば、癌、2型糖尿病、アルツハイマー病である。本発明のPP2C活性化剤をこれらの疾患に対する予防・治療剤として患者に投与する場合、その投与量は、患者の年齢や体重、症状の程度、健康状態などの条件によって適宜設定すればよいが、標準的には、成人1日当たり約10mg〜約10gを、経口的または非経口的に1日1回〜数回にて投与すればよい。点眼剤の場合、有効成分の濃度が0.003〜5(w/v)%の点眼剤を、1日数回、1回数滴投与すればよい。
【0051】
また、本発明のPP2C活性化剤は、種々の形態の食品(サプリメントを含む)に、PP2C活性化作用を発揮するに足る有効量を添加して食してもよい(体重1kg当たり0.1mg〜100mgの摂取が標準的である)。
【0052】
また、本発明のPP2C活性化剤は、研究試薬として利用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【0054】
参考例1:PP2C活性化作用のアッセイ系の詳細
基質溶液は、PP2C Buffer(50 mM Tris-HCl, pH 7.0, 0.1 mM EGTA)10 ml にα-カゼイン 0.1 gを溶解し、それをフィルター(0.45 μm)に通した後、HiTrapTMDesaltingを用いて遊離のリン酸を除いた。染色液は、0.045 % Malachite Green 90 mlに、4 M HCl 30 mlにAmmonium molybdate 1.26 gを溶解した溶液を加え、30分スターラーを用いて撹拌した後、フィルター(0.45 μm)で濾過した。濾過した染色液は、使用直前にTween 20を0.01 %となるよう加えて用いた。また同じく染色液として、市販のBIOMOL GREENTM AK-111を用いた。マウスPP2Cα酵素の調製は、文献に従い行った(K. Kusuda, et al., Biochem. J., 332, 243-250 (1998))。PP2C反応は、基質であるα-カゼイン20 μg、マウスPP2Cα酵素を0.8 μg、メタノールに溶解した10 mg/mlの被検サンプルを2 μl混合し、PP2C Assay Buffer(0.1 M Tris-HCl, pH 7.5, 20 mM MgCl2)を用いて総量を50 μlとした後、96 wellマイクロプレートの各ウェルにて37 ℃で1時間反応させることにより行った。反応終了後、各ウェルに染色液100 μlを加え、室温で15分静置し、650 nmの吸光度を測定した。また、アッセイ系でマウスPP2Cα酵素を除いたものをブランクとした。
【0055】
実施例1:サワラからのPP2C活性化物質の単離精製(その1)
サワラ(球果)86.3 gをメタノール抽出した後、濾過し、その濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。得られたメタノール抽出物(12.66 g)をメタノール126.6 mlに溶解した後、分液ロート中でMQ水873.4 mlを加え、続いて酢酸エチル1000 mlと混合し、酢酸エチル抽出を行った。酢酸エチル層を三角フラスコに採り、残った水層に酢酸エチル1000 mlを加えて行う抽出操作を3回行った。以上の操作によって得られた酢酸エチル層を合わせ、エバポレーションにより濃縮乾固し、酢酸エチル抽出物6.28 gを得た。これを少量のクロロホルムに溶解し、シリカゲル220 gを充填した83φ×600 mmのカラムにチャージした。CHCl3:MeOHが、100:0、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5、93:7、90:10、80:20、70:30、60:40、0:100の溶媒をそれぞれ400 ml、順次カラムに流し、それぞれのフラクションを回収し、エバポレーションにより濃縮乾固した。得られたそれぞれの乾固物を濃度が2.5 mg/mlとなるようメタノールに溶解し、前述のアッセイ系で活性測定を行った。その結果、CHCl3:MeOHが95:5のフラクション(乾固物として1310 mg)に活性が認められた。その後、このフラクションからHPLC分取を行い、分取液を凍結乾燥することで、リテンションタイムの早い順より3種類のPP2C活性化物質として成分A(393.7 mg)、成分B(17.8 mg)、成分C(91.7 mg)を得た。各種の物理化学データの測定結果から、これらの3成分は、成分Aがピシフェルジオール、成分Bが1β-ヒドロキシイソピシフェリン、成分Cがピシフェリン酸であることがわかった。
【0056】
成分A:ピシフェルジオールの物理化学データ
White amorphous powder;[α]D24+34.8°(c 0.2, EtOH);UV (MeOH) λmax (log ε) 282 (3.53);1H and 13C NMR data (表1参照:左が実測値で右が文献値を表す);HR-EI-MS m/z 318.2191 [M]+(calcd for C20H30O3, 318.2195)
【0057】
成分B:1β-ヒドロキシイソピシフェリンの物理化学データ
White amorphous powder;[α]D24-152.2°(c 0.2, EtOH); UV (MeOH) λmax (log ε) 220 (4.45), 262 (4.29), 301 (4.45);HR-EI-MS m/z 300.2089 [M]+(calcd for C20H28O2, 300.2086)
【0058】
成分C:ピシフェリン酸の物理化学データ
White amorphous powder;[α]D24 +151.5°(c 0.2, EtOH);UV (MeOH) λmax (log ε) 286 (3.51);HR-EI-MS m/z 316.2044 [M]+ (calcd for C20H28O3, 316.2038)
【0059】
【表1】

【0060】
実施例2:松からのPP2C活性化物質の単離精製
赤松葉255.7 gをメタノール抽出した後、濾過し、その濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。得られたメタノール抽出物(55.4 g)を少量のメタノールに溶解した後、大過剰の水を加え、酢酸エチル抽出を2回行い、得られた酢酸エチル層を合わせ、エバポレーションにより濃縮乾固した。以上の操作によって得られた酢酸エチル抽出物(22.9 g)を、少量のヘキサンに溶解し、シリカゲル200 gを充填した43φ×500 mmのカラムにチャージした。そして、ヘキサン:酢酸エチルが3:1の溶媒をカラムに流すことで分取を行った後、試験例1と同様にして活性測定を行い、PP2C活性化物質を含むフラクションを得た(乾固物として1.2g)。最終的に、逆相HPLC(Senshu Pak PEGASIL ODS 10φ×250 mm, 90 % MeOH, 3 ml/min)により分取を行い、PP2C活性化物質としてデヒドロアビエチン酸(61.7 mg)、トランス-オジック酸(39.9 mg)、ピマール酸(58.1 mg)を得た。
【0061】
デヒドロアビエチン酸の物理化学データ
White amorphous powder;UV (MeOH) λmax 247;HR-EI-MS m/z 300.2086 [M]+(calcd for C20H28O2, 300.2089)
【0062】
トランス-オジック酸の物理化学データ
Colorless oil;UV (MeOH) λmax 231;HR-EI-MS m/z 302.2255 [M]+ (calcd for C20H30O2, 302.2246)
【0063】
ピマール酸の物理化学データ
White amorphous powder;UV (MeOH) λmax 246;HR-EI-MS m/z 302.2242 [M]+(calcd for C20H30O2, 302.2245)
【0064】
実施例3:コウヤマキからのPP2C活性化物質の単離精製
乾燥したコウヤマキ葉148.6 gをメタノール抽出した後、濾過し、その濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。得られたメタノール抽出物(26.1 g)をヘキサン抽出し、エバポレーションにより濃縮乾固してヘキサン抽出物9.5 gを得た。これを少量のヘキサン:酢酸エチルが10:1の溶媒に溶解し、シリカゲル200 gを充填した43φ×500 mmのカラムにチャージした。そして、ヘキサン:酢酸エチルが4:1の溶媒をカラムに流すことで分取を行った後、試験例1と同様にして活性測定を行い、PP2C活性化物質を含むフラクションを得た(乾固物として1.2g)。最終的に、逆相HPLC(CAPCELL Pak C18 20φ×250 mm, 80 % MeOH, 7.5 ml/min)により分取を行い、PP2C活性化物質としてランベルチアニック酸(526.6 mg)とトランス-コミュニック酸(48.9 mg)を得た。
【0065】
ランベルチアニック酸の物理化学データ
White amorphous powder;[α]D24+47.7°(c 0.5, EtOH);HR-EI-MS m/z 316.2039 [M]+(calcd for C20H28O3, 316.2038)
【0066】
トランス-コミュニック酸の物理化学データ
Corless oil;[α]D24 +30.7°(c 0.5, EtOH);HR-EI-MS m/z 302.2251 [M]+(calcd for C20H30O2, 302.2246)
【0067】
試験例1:癌細胞毒性試験
実施例1〜実施例3で得られた8種類のPP2C活性化物質の癌細胞毒性作用を次のようにして評価した。ヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562)とヒト前立腺癌細胞(LNCaP)を、RPMI Medium 1640培地(10 % FBS, Penicillin (50 units/ml), Streptomycin (50 μg/ml))を用いて、K562は25 cm2/Tissueのフラスコで、LNCaPは75 cm2/Tissueのフラスコでそれぞれ培養した(5 % CO2, 37 ℃, 4 day)。LNCaPはTrypsin-EDTAで細胞を剥がした後、25 mlの培地に8×104 cells/mlを植え継いだ。K562(5×104 cells/ml)とLNCaP(1×105cells/ml)それぞれ100 μlを96 wellプレートの各ウェルに移し、メタノールに溶解した各濃度の被検サンプルを5 μl加え、さらに培養した(5 % CO2, 37 ℃, 4 day)。その後、MTT kit(CHEMICON International, Inc.)のreagent A、Bを10 μlずつ加え再び培養し(5 % CO2, 37 ℃, 4 h)、更にMTT kitのreagent C 100 μlを加え、ピペッティングでよく撹拌した後、570 nmの吸光度を測定することで、被検サンプルの癌細胞毒性作用を評価した。それぞれの被検サンプルの結果(IC50)を、参考例1のアッセイ系で測定した200 μMでのPP2C活性化作用とともに表2に示す。表2から明らかなように、実施例1〜実施例3で得られた8種類のPP2C活性化物質は、優れた癌細胞毒性作用を示し、抗癌剤として有用であることがわかった。
【0068】
【表2】

【0069】
試験例2:DNA断片化作用(アポトーシス誘導作用)
K562を1×106cells/mlに調整し、12 well プレートの各ウェルに990 μl移した。そこに被検サンプルである各種濃度のピシフェルジオールまたはポジティブコントロールとして抗癌剤であるカンプトテシンを10 μl(終濃度8 μM)加え(溶媒はメタノールを使用)、培養することで(5 % CO2, 37 ℃, 28 h)、K562に対してアポトーシス誘導した。その後、細胞をマイクロチューブにて遠心し(6000 rpm, 10 min)、ISOPLANT(ニッポンジーン)を用いてDNAを抽出した。抽出したDNAをTE Buffer(pH 8.0)20 μlに溶解し、RNase(1/2)1 μlを加えて37 ℃で30分間反応させたものを評価サンプルとした。電気泳動直前に評価サンプルにBPBを2 μl加え、電気泳動用DNAサンプルとした。同時にマーカー(1 kb DNA 10 μl, TE Buffer 150 μl, BPB 40μl)を調製した。TBE Buffer(50 ml)にアガロース(1.0 g)を加え、電子レンジで加温溶解させた後、泳動槽内でアガロースゲルを作製した。その後、アガロースゲルが沈むようにTBE Bufferを注いだ後、DNAサンプル12 μlを各ウェルに入れ、一つのウェルにはマーカー(1 kbp)10 μlを入れた。50 Vで泳動を開始し、マーカー色素(黄色, 約30 bp)が先端を通過した時を終了とした。100 mlのエチジウムブロマイド(0.5 μg/ml)に泳動が終了したゲルを入れ約2時間染色した。その後、ゲルをTBE Bufferで約1時間脱色を行い、撮影を行った。結果を図1に示す。なお、図1において、レーン1はマーカー(1 kbp)、レーン2はピシフェルジオール(30 μM)、レーン3はピシフェルジオール(40 μM)、レーン4はピシフェルジオール(50 μM)、レーン5はカンプトテシン(8 μM)を意味する。図1から明らかなように、ピシフェルジオールは濃度依存的にK562に対してアポトーシス誘導することがわかった。
【0070】
製剤例1:注射剤
ピシフェルジオール1.5gを可溶化剤としてエタノールを含有する生理食塩水100 mlに溶解し(合計1.5 g/100 ml)、バイアルに充填した後、加熱殺菌を行って、静注用注射剤を製造した。
【0071】
製剤例2:錠剤
以下の組成で各成分を混合し、打錠して、ピシフェルジオールを50 mg含む500 mgの錠剤400個を製造した。
ピシフェルジオール ・・・ 20 g
馬鈴薯澱粉 ・・・ 6 g
ステアリン酸タルク ・・・ 4 g
6 % HPC乳糖 ・・・ 170 g
(合計200 g)
【0072】
製剤例3:顆粒剤
以下の組成で各成分を混合し、圧縮成形し、粉砕し、整粒して、20〜50メッシュの5 %顆粒剤を製造した。
ピシフェルジオール ・・・ 10 g
乳糖 ・・・ 187 g
ステアリン酸マグネシウム ・・・ 3 g
(合計200 g)
【0073】
製剤例4:カプセル剤
以下の組成で各成分をよく混合し、混合物を1号カプセルに充填して、カプセル剤300個を製造した。
ピシフェルジオール ・・・ 5 g
乳糖 ・・・ 40 g
馬鈴薯澱粉 ・・・ 50 g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース ・・・ 3.5 g
ステアリン酸マグネシウム ・・・ 1.5 g
(合計100 g)
【0074】
製剤例5:点眼剤
以下の各成分を滅菌精製水100 mlに溶解し、常法により点眼剤を製造した。
ピシフェルジオール ・・・ 5 g
塩化ナトリウム ・・・ 0.9 g
塩化ベンザルコニウム ・・・ 微量
1 N 水酸化ナトリウム ・・・ 適量
1 N 塩酸 ・・・ 適量
エタノール ・・・ 適量
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、抗癌剤などとして有用な新規なPP2C活性化剤を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例におけるピシフェルジオールのアポトーシス誘導作用を示す写真である。
【図2】PP2Cの活性化と抗癌効果(アポトーシス)との関係を示す図である。
【図3】同、2型糖尿病の予防・治療との関係を示す図である。
【図4】同、アルツハイマー病の予防・治療との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とするプロテインホスファターゼ2C活性化剤。
【化1】

[式中、R1、R4、R5、R6、R7、R9は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R4とR5は、一緒になって結合を形成してもよい。R2、R3は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R8は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【請求項2】
下記の一般式(2)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とするプロテインホスファターゼ2C活性化剤。
【化2】

[式中、R11、R12、R13は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R14、R15、R17は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アシルオキシ基のいずれかを示す。R16は、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【請求項3】
下記の一般式(3)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とするプロテインホスファターゼ2C活性化剤。
【化3】

[式中、R21、R22、R24は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R23は、-(CH2)n-A(Aは窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択される1〜4個の異種原子を有する複素環式基または-CH=C(CH3)-CH=CH2であり、nは1〜3の整数である)を示す。R25、R26は、同一または異なって、それぞれ、水素原子または低級アルキル基を示す。]
【請求項4】
下記の一般式(4)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とするプロテインホスファターゼ2C活性化剤。
【化4】

[式中、R31、R32、R33は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基のいずれかを示す。R34、R35は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基のいずれかを示す。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロテインホスファターゼ2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とする抗癌剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロテインホスファターゼ2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とする2型糖尿病予防・治療剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロテインホスファターゼ2C活性化剤を有効成分としてなることを特徴とするアルツハイマー病予防・治療剤。
【請求項8】
サワラ、松、コウヤマキから選択される少なくとも1種の植物からの抽出操作により単離取得することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロテインホスファターゼ2C活性化剤の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−214252(P2008−214252A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53142(P2007−53142)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】