説明

プロトン伝導性電解質膜および膜電極接合体及びそれを用いた固体高分子形燃料電池

【課題】安価で、イオン伝導度が高く、かつ、優れた耐水性を有するために水中での面積方向の寸法変化小さい電解質膜を作製し、高出力,高耐久性の固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池用複合電解質膜1は、ポリビニルカルバゾールを含有するプロトン伝導性電解質膜であり、特に、下記化学式1に示したポリビニルカルバゾールとポリビニルスルホン酸のブロック共重合体からなる。


(式中、m,nはいずれも整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低コストで、イオン伝導度が高く、かつ、耐水性に優れ、水中での面方向の寸法変化が小さい高分子電解質膜,膜電極接合体及びそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池に用いられている固体高分子電解質膜としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製),Aciplex(登録商標、旭化成株式会社製),フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などの高いイオン伝導度を有するフッ素系電解質膜が知られているが、フッ素系電解質膜は非常に高価である。また、廃棄時に消却するとフッ酸が発生する。さらに、高温ではイオン伝導度が低下するため、高温では使用できないといった課題がある。また、直接メタノール型燃料電池(以下、DMFC)の電解質膜として使用した場合、メタノールクロスオーバーにより電圧低下や発電効率低下などの課題がある。
【0003】
固体高分子形燃料電池用の固体高分子電解質膜としては、フッ素系電解質膜の他にイオン交換基を有する芳香族系電解質膜なども使用されている。特許文献1や特許文献2には、スルホン基を有するポリエーテルスルホン系ブロックとスルホン酸基を有しないポリエーテルスルホン系ブロックからなるブロック共重合体やスルホン酸基を有するポリエーテルケトン系ブロックとスルホン酸基を有しないポリエーテルケトン系ブロックからなるブロック共重合体が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には重量平均分子量が5×105以上のポリオレフィンからなる多孔性薄膜の空孔中にイオン交換樹脂を充填した固体高分子電解質複合膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−31232号公報
【特許文献2】特開2006−512428号公報
【特許文献3】特開昭64−22932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2等のポリエーテルスルホン系ブロック共重合体やポリエーテルケトン系ブロック共重合体を用いた電解質膜を用いただけでは、十分な耐水性を得ることが難しいため、水中での面積方向の寸法変化が大きく、耐久性に問題を有し、またイオン伝導度の向上への効果が小さかった。
【0007】
一方、特許文献3のように補強材により電解質膜を補強する方法があるが、この固体高分子電解質複合膜ではイオン伝導度が低くなるという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、安価で、イオン伝導度が高く、かつ、優れた耐水性を有するために水中での面積方向の寸法変化小さい電解質膜を作製し、高出力,高耐久性の固体高分子形燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の状況に鑑み、高いプロトン伝導度を有する電解質膜の開発を行った。本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、分子構造中にポリビニルカルバゾールを含むことで耐水性の高い電解質膜を得ることができ、本発明に至った。
【0010】
さらに、前記電解質膜の分子構造中にプロトン伝導性を発現させるイオン交換部位としてスルホン酸を分子構造中に含むことで耐水性とプロトン伝導度を両立できる電解質膜を得ることができることが判明した。
【0011】
さらに、分子構造中にポリビニルカルバゾール部位とポリビニルスルホン酸部位とを含むポリマーのなかでも、ポリビニルカルバゾールとポリビニルスルホン酸とのブロック共重合体からなる電解質膜が、上記電解質膜よりもより低膨潤性でかつ高イオン伝導性を有していることが判明した。
【0012】
前記電解質膜においてイオン交換容量が1.0〜3.0の時、特に優れたプロトン伝導性を示すことが判明した。
【0013】
また、前記電解質膜はポリオレフィンなどの高分子微多孔材料へ含浸,乾燥することでより強度に優れた電解質膜が得られることが判明した。
【0014】
また、前記同様、ポリオレフィン,ポリエステル,アラミドやセルロース等からなる不織布へ含浸,乾燥することでイオン伝導率を余り低下させること無く引っ張り強度に優れた複合電解質膜を得ることができた。
【0015】
これまで述べてきた電解質膜に対して、酸化ガスを還元するカソード触媒層、および水素を酸化するアノード触媒層が電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体を提供するものである。
【0016】
さらに前述した膜電極接合体を用いた固体高分子が燃料電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡便な手法で制御されたブロック共重合体を得ることができ、この電解質材料を製膜し得られた電解質膜は高イオン伝導性を有すると同時に寸法変化が小さく物理的な安定性に優れており、この電解質膜からなる電解質膜電極接合体(MEA)を用いた燃料電池は出力と寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】合成したネオペンチルエテンスルホネートの1H−NMRスペクトルチャート。
【図2】合成したネオペンチルエテンスルホネートの13C−NMRスペクトルチャート。
【図3】小型発電セルの内部構造モデル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明においてプロトン伝導性を有する燃料電池用複合電解質膜において、電解質樹脂構造中にポリビニルカルバーゾールを化学的に結合した状態で含有していることを特徴とするプロトン伝導性電解質膜である。化学的に結合させる手法としては特に限定しないが、ラジカル重合法,イオン重合法,付加重合法,縮合重合法などにより合成することができる。
【0021】
また、プロトン伝導性を発現させるイオン交換基としては、カチオン性のイオン交換基であれば良くスルホン酸基,リン酸基,カルボン酸基などが挙げられる。特に、イオン交換基としてはスルホン酸基が好ましく、スルホン酸を分子構造中に導入するために原料としてビニルスルホン酸誘導体を用いることができる。ビニルスルホン酸誘導体としては、ビニルスルホン酸エステル類であり、CH2=CH−SO3−Rで示され、Rは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的には上記炭素原子数1〜20の炭化水素基などが挙げられる。これらのうちn−ブチル基,ネオペンチル基,テトラヒドロフルフリル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロヘキシルメチル基,アダマンチルメチル基,ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、さらにはネオペンチル基が好ましい。ビニルスルホン酸エステル類の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
ポリビニルカルバゾールとポリビニルスルホン酸のブロック共重合体の合成は特に限定しないが、リビングラジカル重合を用いて合成した方が分子量が大きくより好ましい。この理由としてリビングアニオン重合やリビングカチオン重合は水分や酸素による影響を受け停止反応や副反応を生じやすい。これに対してリビングラジカル重合では比較的水分や酸素に対して安定であり重合反応が進行しやすい。特にビニルスルホン酸やビニルスルホン酸誘導体は吸湿しやすく、反応系からの完全な水分除去は困難である。本発明においてはリビングラジカル重合の一種である、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT:Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer)重合を用いて合成した。この重合法は適応できるモノマーや重合条件が幅広いのが特徴である。
【0024】
本発明では重合条件や組成比を制御し、イオン交換容量を1.0〜3.0に制御した。1.0よりも小さい場合はイオン伝導度が小さく、燃料電池として使用した場合、電解質膜のイオン伝導度低下により、燃料電池セルの抵抗が大きくなり、発電性能が低下する。一方、イオン交換容量が3.0よりも大きい場合、発電環境下での電解質膜吸湿による膨潤が大きく、電極周辺部において電解質膜の破損が生じ、水素ガスや空気のクロスリークが生じやすく、燃料電池の耐久性が大幅に低下する。
【0025】
電解質膜の耐久性を向上させるため、膨潤低減や引っ張り強度向上を目的に、ポリオレフィン系微多孔材料やポリオレフィン,ポリエステル,アラミドやセルロース等からなる不織布を用いた複合電解質膜を提供する。ポリオレフィン系微多孔材料のサイズとしては、一例として平均細孔径が約0.3μm、気孔率が約60%、膜厚が約30μm程度のものを使用することができる。
【0026】
また、この電解質膜に対し、酸化ガスを還元するカソード触媒層、および水素を酸化するアノード触媒層電解質膜を挟むように配置することで、電解質膜電極接合体を作製した。電極の形成方法は、特に限定しないが、あらかじめ各触媒層のみを基材上に形成し、電解質膜を挟むようにアノードとカソードを配置した状態でホットプレスする方法や、電解質膜上に直接印刷する方法や、電解質膜上にスプイレーによって触媒ペーストを吹きつけ乾燥するスプレー法などがある。
【0027】
本発明において、上記のブロック共集合体を電解質膜に用いて各種形態の燃料電池を提供できる。例えば、電解質膜の主面の片面が酸素極、他の片面が水素極で挟持された前記の高分子電解質膜電極接合体の酸素極側及び水素極側に夫々別個にガス拡散シートが密着して設けられ、該ガス拡散シートの外側表面に前記酸素極及び前記水素極へのガス供給通路を有する導電性セパレータからなる固体高分子型燃料電池単セルを形成することができる。また、ケース内に、上記の燃料電池本体と、該燃料電池本体に供給する水素を貯蔵する水素ボンベを有するポータブル電源を提供できる。更に、水素を含むアノードガスに改質する改質器と、前記アノードガスと酸素を含むカソードガスとから発電する燃料電池と、改質器をでた高温のアノードガスと改質器に供給する低温の燃料ガスとの間で熱を交換する熱交換器とを備える燃料電池発電装置を提供できる。また、電解質膜の主面の片面が酸素極、他の片面がメタノール極で挟持された前記の高分子電解質膜/電極接合体の酸素極側及びメタノール極側に夫々別個にガス拡散シートが密着して設けられ、該ガス拡散シートの外側表面に前記酸素極及び前記メタノール極へのガス及び液体供給通路を有する導電性セパレータからなる直接メタノール形燃料電池単セルを形成することができる。
【0028】
〔実施例〕
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の趣旨とするところはここに開示した実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
ポリビニルカルバゾールの合成はビニルカルバゾールと連鎖移動剤であるO−エチル−S−(1−フェニルエチル)ジチオカーボネートと開始剤であるAIBN(2,2−アゾビス(イソブチロニトリル))を100:2:1のモル比で重合管に入れ、60℃,8時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた白色粉末の分子量は20,000g/molであった。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
ネオペンチルエテンスルホネートの合成は2,2−ジメチル−1−プロパノールと2−クロロエタンスルホニルクロライドをトルエン中、ピリジン存在下、室温で1時間反応させることで目的とするビニルスルホン酸誘導体を得た。
【0030】
三口ナスフラスコに2,2−ジメチル−1−プロパノールのジクロロメタン溶液を入れ、室温で攪拌しながら2−クロロエタンスルホニルクロライドを加えた。ここに、ピリジンをアイスバスで冷やしながら滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、蒸留水で1回で分液を行った。有機層を抽出し、溶媒を減圧除去した後に、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=60/40)にて精製を行い、薄黄色の液体を得た。構造確認は1H NMRおよび13C NMRにより行った。図1に1H NMRのスペクトルチャート、図2に13C NMRのスペクトルチャートを示す。
(3)ブロック共重合体Aの合成
(1)で合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤、(2)で合成したネオペンチルエテンスルホネートをビニルスルホン酸誘導体とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:80のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は28,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Aの作製とその特性
前記(3)で得られたブロック共重合体Aを20重量%の濃度になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解する。この溶液をガラス上に流延塗布,加熱乾燥し、次いで硫酸および水に浸漬,乾燥して膜厚40μmの高分子電解質膜Aを得た。この高分子電解質膜Aを80℃の温水中に8hr浸漬させた後の面積方向への寸法変化率は5%であり、80℃90RH%で4端子交流インピーダンス法により測定した10KHzにおけるイオン伝導度は、0.2S/cmであった。さらにポリエチレン微多孔膜やアラミドペーパーを用いて共重合体Aの溶液を含浸し、乾燥させることで複合膜も作製した。
(5)膜電極接合体(MEA)Aの作製
炭素担体上に白金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と5wt%のポリパーフルオロスルホン酸の1−プロパノール,2−プロパノール,水の混合溶媒のスラリーを調整してスクリーン印刷法でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート状に厚さ約20μm,幅30mm,長さ30mmのアノード電極を作製した。
【0031】
次に、炭素担体上に50wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末とポリパーフルオロスルホン酸の1−プロパノール,2−プロパノールと水の混合溶媒をバインダとして水/アルコール混合溶媒のスラリーを調整してスクリーン印刷法でPTFEシート上に厚さ約20μm,幅30mm,長さ30mmのカソード電極を作製した。
【0032】
前記(4)で作製した高分子電解質膜Aの両面をアノード電極及びカソード電極ではさみ、120℃,13MPaでホットプレスすることにより、高分子電解質膜Aの両面にアノード,カソード電極を形成した膜電極接合体(MEA)Aを作製した。アノード電極とカソード電極は、互いに重なるように位置を合わせて接合した。
(6)燃料電池(PEFC)の発電性能
図3に示す水素を燃料とする小型単電池セルを用いて前記MEA(A)およびカーボンクロスから成る拡散層を組み込んで電池性能を測定した。図3において、1…高分子電解質膜、2…アノード電極、3…カソード電極、4…アノード拡散層、5…カソード拡散層、6…極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)の燃料流路、7…セパレータの空気導路、8…水素+水、9…水素、10…空気+水、11…空気である。小型単電池セルを恒温槽に設置し、セパレータ内に挿入した熱電対(図示していない)による温度が70℃になるよう恒温槽の温度を制御した。アノード及びカソードの加湿は外部加湿器を用い、加湿器出口付近の露点が70℃になるように加湿器の温度を70〜73℃の間で制御した。露点は露点計による計測の他、加湿水の消費量を常時計測し、反応ガスの流量,温度,圧力から求められる露点が所定の値であることを確認している。負荷電流密度を250mA/cm2とし、水素利用率を70%、空気利用率を40%で発電した。MEA(A)を用いたPEFCは0.74V以上の出力を示し、安定であった。
【0033】
(実施例2)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
実施例1の(1)で合成したものを使用した。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
実施例1の(2)で合成したものを使用した。
(3)ブロック共重合体Bの作製
実施例1の(3)と同様の方法で、(1)合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:50のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は30,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Bの作製とその特性
実施例1の(4)と同様の方法で(3)で得られたブロック共重合体Bから高分子電解質膜Bを得た。この高分子電解質膜Bを80℃の温水中に8hr浸漬させた後の面積方向への寸法変化率は4%であり、80℃90RH%で4端子交流インピーダンス法により測定した10KHzにおけるイオン伝導度は、0.14S/cmであった。
【0034】
(実施例3)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
実施例1の(1)で合成したものを使用した。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
実施例1の(2)で合成したものを使用した。
(3)ブロック共重合体Cの作製
(1)合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:40のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は31,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Cの作製とその特性
実施例1の(4)と同様の方法で(3)で得られたブロック共重合体Cから高分子電解質膜Cを得た。この高分子電解質膜Cを80℃の温水中に8hr浸漬させた後の面積方向への寸法変化率は3%であり、80℃90RH%で4端子交流インピーダンス法により測定した10KHzにおけるイオン伝導度は、0.12S/cmであった。
【0035】
(実施例4)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
実施例1の(1)で合成したものを使用した。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
実施例1の(2)で合成したものを使用した。
(3)ブロック共重合体Dの作製
(1)合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:30のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は33,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Dの作製とその特性
実施例1の(4)と同様の方法で(3)で得られたブロック共重合体Dから高分子電解質膜Dを得た。この高分子電解質膜Dを80℃の温水中に8hr浸漬させた後の面積方向への寸法変化率は1%であり、80℃90RH%で4端子交流インピーダンス法により測定した10KHzにおけるイオン伝導度は、0.10S/cmであった。
【0036】
(比較例1)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
実施例1の(1)で合成したものを使用した。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
実施例1の(2)で合成したものを使用した。
(3)ブロック共重合体Eの作製
(1)合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:100のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は26,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Eの作製とその特性
実施例1の(4)と同様の方法で(3)で得られたブロック共重合体Eから高分子電解質膜Eを得た。この高分子電解質膜Eを80℃の温水中に8hr浸漬させた結果、膨潤が大きく、一部破断していた。
【0037】
(比較例2)
(1)ポリビニルカルバゾールの合成
実施例1の(1)で合成したものを使用した。
(2)ネオペンチルエテンスルホネートの合成
実施例1の(2)で合成したものを使用した。
(3)ブロック共重合体Fの作製
(1)合成したポリビニルカルバゾールをマクロ連鎖移動剤とし、開始剤であるAIBNとマクロ連鎖移動剤とビニルスルホン酸誘導体とを0.5:1:20のモル比で重合管に入れ、60℃,24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られた粉末を乾燥後2−ブタノン中に溶解させ、臭化リチウムを添加し、フラスコを過熱してリフラックス状態にて24時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール中に投じ、白色粉末を得た。得られたブロック共重合体の分子量は33,000g/molであった。
(4)高分子電解質膜Fの作製とその特性
実施例1の(4)と同様の方法で(3)で得られたブロック共重合体Fから高分子電解質膜Fを得た。この高分子電解質膜Fを80℃の温水中に8hr浸漬させた後の面積方向への寸法変化率は1%であり、80℃90RH%で4端子交流インピーダンス法により測定した10KHzにおけるイオン伝導度は、0.07S/cmであった。
【0038】
表1に実施例1〜4と比較例1,2で作製した高分子電解質膜A〜Fの膜物性を示す。
【0039】
【表1】

【符号の説明】
【0040】
1 高分子電解質膜
2 アノード電極
3 カソード電極
4 アノード拡散層
5 カソード拡散層
6 極室分離と電極へのガス供給通路の役割を兼ねた導電性のセパレータ(バイポーラプレート)の燃料流路
7 セパレータの空気導路
8 水素+水
9 水素
10 空気+水
11 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性を有する燃料電池用複合電解質膜であって、ポリビニルカルバゾールを含有することを特徴とするプロトン伝導性電解質膜。
【請求項2】
プロトン伝導性を発現させるイオン交換基がスルホン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のプロトン伝導性電解質膜。
【請求項3】
下記化学式1に示したポリビニルカルバゾールとポリビニルスルホン酸のブロック共重合体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロトン伝導性電解質膜。
【化1】

(式中、m,nはいずれも整数を表す。)
【請求項4】
イオン交換容量が1.0〜3.0であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導性複合電解質膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導性電解質を高分子多孔体へ含浸したことを特徴とする、プロトン伝導性複合電解質膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導性電解質不織布へを含浸したことを特徴とする、プロトン伝導性複合電解質膜。
【請求項7】
酸化ガスを還元するカソード触媒層、および水素を酸化するアノード触媒層が、請求項1〜6のいずれかに記載のプロトン伝導性電解質膜を挟むように配置されることを特徴とする電解質膜電極接合体。
【請求項8】
請求項7に記載の膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−282730(P2010−282730A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132661(P2009−132661)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】