説明

プロピレン系樹脂成形体及びその製造方法

【課題】剛性及び衝撃強度に優れるプロピレン系樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記の要件(1)から要件(4)を満足するプロピレン系樹脂成形体とした。
要件(1)Lc/La≦1.50、要件(2)Lc≧10.0、要件(3)F1≧0.07、要件(4)F2≧0.06〔上記要件(1)から要件(4)において、Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、F1は、997cm-1で測定した赤外二色比により算出した配向度を示し、F2は、973cm-1で測定した赤外二色比により算出した配向度を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂成形体及びこのプロピレン系樹脂成形体の製造方法に関する。更に詳細には、剛性及び衝撃強度に優れるプロピレン系樹脂成形体及びこのプロピレン系樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロピレン系樹脂成形体は、自動車用部品や家電製品用部品等の工業材料として、多くの分野で使用されている。
例えば、特許文献1には、機械的特性、温度特性や硬度に優れたポリプロピレン樹脂成形体として、ポリプロピレン樹脂と核剤とを含有する組成物を成形して得られる成形体を、155〜170℃の範囲で、熱処理して製造されるポリプロピレン樹脂成形体が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、機械的特性、温度特性や硬度に優れたプロピレン共重合体として、α−オレフィン単位の含有量が0.5質量%〜10質量%であり、メルトフローレートが0.05g/10分〜50g/10分であるプロピレン共重合体を、(Tm−10℃)〜(Tm+5℃)の温度範囲(ここで、Tmはプロピレン共重合体の融点を表わす)で熱処理する方法によって製造されるプロピレン共重合体が記載されている。
【0004】
そして、特許文献3には、エチレン−プロピレンポリマー組成物の剛性と靭性を改良する方法として、前記ポリマー組成物を1時間〜100時間、75℃〜150℃で加熱する方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭62−256837号公報
【特許文献2】特開昭62−283111号公報
【特許文献3】国際公開01/81074号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1〜3に記載されているポリプロピレン樹脂成形体の剛性及び衝撃強度は、十分なものではなく、さらなる改良が求められている。
かかる状況の下、本発明の目的は、剛性及び衝撃強度に優れるプロピレン系樹脂成形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、プロピレン系樹脂の結晶構造及び分子鎖の配向度を制御しながらプロピレン系樹脂成形体を製造することにより、従来よりも短時間で、剛性及び衝撃強度を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、以下の発明である。
【0007】
本発明の第一の態様は、下記の要件(1)から要件(4)を満足するプロピレン系樹脂成形体である。
要件(1)Lc/La≦1.50
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
〔上記要件(1)から要件(4)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【0008】
また本発明の第二の態様は、下記の要件(2)から要件(5)を満足するプロピレン系樹脂成形体である。
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
要件(5)La≧8.5
〔上記要件(2)から要件(5)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【0009】
さらに本発明の第三の態様は、プロピレン系樹脂を、最大射出圧力がPである射出成形機の金型キャビティに充填する充填工程と、
前記金型キャビティに充填された前記プロピレン系樹脂を、前記最大射出圧力の15%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程と、を有するプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
ASTM D1238に準拠して測定した前記プロピレン系樹脂のメルトフローレートは、5g/10分以下であり、
前記プロピレン系樹脂成形体は、下記の要件(1)から要件(4)を満足するプロピレン系樹脂成形体の製造方法である。
要件(1)Lc/La≦1.50
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
〔上記要件(1)から要件(4)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【0010】
さらに本発明の第四の態様は、プロピレン系樹脂を、最大射出圧力がPである射出成形機の金型キャビティに充填する充填工程と、
前記金型キャビティに充填された前記プロピレン系樹脂を、前記最大射出圧力の15%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程と、を有するプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
ASTM D1238に準拠して測定した前記プロピレン系樹脂のメルトフローレートは、5g/10分以下であり、
前記プロピレン系樹脂成形体は、下記の要件(2)から要件(5)を満足するものであるプロピレン系樹脂成形体の製造方法である。
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
要件(5)La≧8.5
〔上記要件(2)から要件(5)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【0011】
ここで、本発明における「プロピレン系樹脂」とは、プロピレンの単独重合体だけではなく、後述するようなエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体も含まれる。また、「結晶ラメラ」とは、プロピレン系樹脂成形体において、プロピレン系樹脂を形成している重合体の分子鎖が、折りたたまれて形成された結晶をいう。
また「長周期間隔(Lp)」とは、結晶ラメラ−非晶領域−結晶ラメラの積層構造において、個々の結晶ラメラの重心間距離をいう。また、「結晶ラメラ間距離(La)」とは、上記積層構造における結晶ラメラ同士の距離、即ち非晶領域の厚さをいう。そして、「結晶ラメラの厚み(Lc)」とは、個々の結晶ラメラの厚さをいう。
また、「最大射出圧力」とは、充填工程において、使用する成形機が到達し得る射出圧力の最大値をいい、使用する射出成形機に固有の値である。具体的な数値は成形機の能力により異なるが、本発明ではこの最大射出圧力をPとする。また、「成形体前駆体」とは、保圧工程を経て形成された成形体、即ち熱処理工程を経る前の成形体をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来と比べて短時間でより高い剛性及び高い衝撃強度を有するプロピレン系樹脂成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔プロピレン系樹脂成形体〕
上述のように、本発明は少なくとも下記の要件(2)、要件(3)及び要件(4)を満足し、かつ、下記の要件(1)又は(5)のいずれか一方の要件を満足するプロピレン系樹脂成形体(以下、単に成形体ともいう)である。
要件(1)Lc/La≦1.50
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
要件(5)La≧8.5
〔上記要件(1)から要件(5)において、Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【0014】
上記要件(1)において、Lc/Laが、1.50を超えた場合、得られる成形体の衝撃強度が不十分なことがある。Lc/Laとして、好ましくは0.50〜1.50であり、より好ましくは0.55〜1.45であり、更に好ましくは0.60〜1.40である。
また、上記要件(2)において、結晶ラメラの厚み(Lc)が10.0nm未満の場合、得られる成形体の曲げ弾性率が不十分なことがある。結晶ラメラ厚み(Lc)として、好ましくは10.0nm〜25.0nmであり、より好ましくは10.5nm〜24.5nmであり、更に好ましくは11.0nm〜24.0nmである。
また、上記要件(3)において、配向度(F1)が0.07未満の場合、衝撃強度が不十分なことがある。配向度(F1)として、好ましくは0.07〜0.50であり、より好ましくは0.08〜0.50であり、更に好ましくは0.08〜0.40である。
また、上記要件(4)において、配向度(F2)が0.06未満の場合、衝撃強度が不十分なことがある。配向度(F2)として、好ましくは0.06〜0.50であり、より好ましくは0.07〜0.50であり、更に好ましくは0.07〜0.40である。
【0015】
また、上記要件(5)において、結晶ラメラ間距離(La)が8.5nm未満の場合、衝撃強度が不十分なことがある。結晶ラメラ間距離(La)として、好ましくは8.5nm〜15.5nmであり、より好ましくは8.7nm〜15.3nmであり、更に好ましくは8.9nm〜15.1nmである。
【0016】
上記要件(1)〜要件(5)において、長周期間隔、結晶ラメラ間距離、結晶ラメラの厚み、配向度は、公知の方法を用いて算出される。具体的には以下の通りである。
長周期間隔は、小角X線散乱プロファイルを測定し、得られたピークに対応する散乱角と、下記のBraggの式とを用いて算出される。
Lp(nm)=λ/2sinθ
〔式中、λは波長(本発明では0.154(nm)を用いる)、θは散乱角をそれぞれ表す。〕
結晶ラメラ間距離は、上記方法により算出した長周期間隔(Lp)と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度(χ)と、を下記の式に代入して求める。
La(nm)=Lp(1−0.01×χ)
そしてLcは、LpとLaの差に該当するため、上記の方法により算出したLpとLaより求める。
【0017】
結晶化度(χ)は、示差走査熱量分析により測定した融解熱量(ΔHm)と、下記の式より算出する。
χ(%)=ΔHm/ΔH0m×100
〔式中、結晶化度100%時の融解熱量(ΔH0m)は、W.R.KrigbaumらによってJounal Polymer Science,3,767(1965)に記載された値(208J/g)を用いる。〕
【0018】
また配向度(F1及びF2)は、顕微赤外分光光度計により測定した赤外二色比(D)と、下記の式より算出する。
F=(D−1)/(D+2)
なお、赤外二色比(D)は、偏光子を回転させ最大透過率と最小透過率の比(最大透過率/最小透過率)として算出する。本発明では波数997(cm-1)と波数973(cm-1)について、それぞれ赤外二色比(D)を測定し、997(cm-1)で測定したDより算出した配向度をF1と、973(cm-1)で測定したDより算出した配向度をF2とする。
【0019】
本発明に係る成形体を形成するプロピレン系樹脂としては、後述のようなプロピレン単独重合体、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンと、の共重合体が挙げられる。このプロピレン系樹脂は、本発明に係る成形体が上記要件(1)から要件(5)を満たすものとなるために、一般に射出成形体に用いられるプロピレン系樹脂よりも、低いメルトフローレートを有していることが好ましい。具体的には、ASTM D1238に従って測定したメルトフローレートが5g/10分以下であり、4g/10分以下であることがより好ましく、0.0001g/10分〜4g/10分であることがさらに好ましい。なお、一般に射出成形体に用いられるプロピレン系樹脂のメルトフローレートは10g/10分以上であり、好ましくは15g/10分以上である。
【0020】
本発明に係るプロピレン系樹脂成形体としては、射出成形体、ブロー成形体、プレス成形体等が挙げられ、好ましくは射出成形体又はプレス成形体であり、より好ましくは射出成形体である。
【0021】
〔プロピレン系樹脂成形体の製造方法〕
「本発明に係る成形体」の製造方法は、充填工程と保圧工程と、を有する。
ここで、「充填工程」とは、プロピレン系樹脂を金型に充填する工程をいう。充填工程におけるプロピレン系樹脂の形態は、溶融状態、パリソン状態、粉末状態等特に限定されるものではないが、成形体にしたときの、重合体の分子鎖の配向度(F1及びF2)を、より高くすることができる、という観点から、実質的に溶融状態であることが好ましい。ここで「実質的に溶融状態」とは、プロピレン系樹脂を形成している重合体の分子鎖の一部が熱運動をしていない状態も含まれ、全ての分子鎖が、激しく熱運動をしている状態のみをいうものではない。
【0022】
なお、得られる成形体の外観形状を良好なものとするために、充填の際に予め金型を加熱しておいてもよい。加熱温度としては、10℃〜70℃であることが好ましく、20℃〜60℃であることが好ましい。
【0023】
樹脂の充填方法は、所望の成形体の種類に応じて適宜選択される。例えば、射出成形体を得る場合には、射出成形機による充填方法を、ブロー成形体を得る場合には、ブロー成形機による充填方法を用いることが好ましい。中でも重合体の分子鎖の配向度(F1及びF2)を、より高くすることができるという観点から射出成形機による充填であることが好ましい。
射出成形体を形成する場合、プロピレン系樹脂は、実質的に溶融状態であり、最大射出圧力がPである射出成形機を用いて、当該射出成形機の金型内部の空間(以下、金型キャビティという)に充填される。最大射出圧力Pは、上述のように充填工程において、使用する成形機が到達し得る射出圧力の最大値をいい、使用する射出成形機に固有の値である。この最大射出圧力Pは、例えば1000kgf/cm2〜2500kgf/cm2であることが好ましいが、この範囲に限られるものではない。
【0024】
また、「保圧工程」とは、上記充填工程を経た金型に充填されたプロピレン系樹脂を、更に所定の圧力で加圧して保持する工程をいう。この保圧工程を設けることにより、成形体に形成する際に、重合体の分子鎖の配向度を高くすることが可能となる。これによって、成形体の剛性及び耐衝撃性を従来よりも短時間で向上させることが可能となる。
【0025】
保圧時の圧力は、使用する金型の大きさや、所望の成形体の種類によって異なる。例えば、射出成形体の場合、最大射出圧力Pの15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また、ブロー成形体を得る場合には、パリソンを金型中で膨らませる際の空気圧の15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが最も好ましい。
その他の成形体の場合には、充填時に金型にかかる圧力の最大値(最大充填圧力)の15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0026】
保圧時間としては、0.5秒〜60秒であることが好ましく、1秒〜50秒であることがより好ましい。また、保圧時の金型の温度としては10℃〜70℃であることが好ましく、20℃〜60℃であることが好ましい。
【0027】
保圧時の圧力の測定方法は、所望の成形体の種類によって異なるが、一般的には、成形機に設けられている圧力計を用いて測定する。
【0028】
本発明に係るプロピレン系樹脂成形体の製造方法は、上記保圧工程を経た後、得られた成形体前駆体に、加熱処理を施す工程を、更に有する。この加熱処理により、最終的に得られる成形体の機械的特性を向上させることが可能となる。加熱温度は、150℃〜170℃であり、150℃〜165℃であることが好ましく、150℃〜160℃であることが更に好ましい。加熱時間は、10分間〜400時間であり、10分間〜300時間であることが好ましく、10分間〜200時間であることが更に好ましい。
【0029】
加熱温度を150℃よりも高くすることにより、機械的特性、特に剛性を向上させることが可能となる。また加熱温度を170℃よりも低くすることにより、成形体の形状を安定化させることが可能となる。
そして加熱時間を10分間よりも長くすることにより、機械的特性、特に衝撃強度を向上させることが可能となる。また加熱時間を400時間よりも短くすることによりプロピレン系樹脂の分解を防ぎ、十分な機械的特性を付与することが可能となる。
【0030】
加熱方法としては、例えば、(1)成形体前駆体を金型から取り出さずに金型を直接150℃〜170℃に加熱する方法、(2)成形体前駆体を150℃〜170℃に保持したロール面や熱板面に接触させる方法、(3)150℃〜170℃の窒素、アルゴン、空気等が充満したオーブン内に成形体前駆体を配置する方法、(4)150℃〜170℃のシリコンオイル、水等の不活性液体が充填した浴槽内に成形体を浸漬する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂は、上述のように、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンと、の共重合体である(ただし、前記プロピレン単独重合体は、1.0質量%以下のエチレン又は炭素数4以上のα−オレフィンを含有していてもよい。なお、前記プロピレン単独重合体の全量を100質量%とする)。
このプロピレン系樹脂は、本発明に係る成形体が上記要件(1)から(5)を満たすものとなるために、一般に成形体に用いられるプロピレン系樹脂よりも、低いメルトフローレートを有していることが好ましい。具体的には、ASTM D1238に準拠して測定したメルトフローレートが5g/10分以下であり、4g/10分以下であることがより好ましく、0.0001g/10分〜4g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが5g/10分を超える場合には、得られる成形体の剛性及び衝撃強度を向上させることが困難となる傾向にある。
【0032】
ここで、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとの共重合体としては、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとからなるプロピレン系ランダム共重合体、又は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。(ただし、前記プロピレン単独重合体部分は、1.0質量%以下のエチレン又は炭素数4以上のα−オレフィンを含有していてもよい。なお、前記プロピレン単独重合体の全量を100質量%とする。)
【0033】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂は、好ましくはプロピレン単独重合体又はプロピレン系ランダム共重合体であり、より好ましくはプロピレン単独重合体である。
【0034】
剛性、耐熱性又は硬度を高めるという観点から、前記プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体、また、プロピレン系ブロック重合体の単独重合体部分の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率として、好ましくは0.94以上である。
【0035】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法(すなわち13C−NMRを用いる方法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後、発行されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。
【0036】
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の、全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって、英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0037】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂の固有粘度([η]、単位:dl/g)は、機械的特性を向上させるという観点、特に衝撃強度を向上させるという観点から、好ましくは1.0dl/g以上であり、より好ましくは1.5dl/g以上であり、更に好ましくは2.0dl/g以上である。
【0038】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))として、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜5である。
【0039】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
重合触媒としては、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(b)有機アルミニウム化合物と、(c)電子供与体成分とからなる触媒系が挙げられる。この触媒系としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報等に記載されているように、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物と必要に応じ、エステル化合物の存在下、一般式Ti(OR1a4-a(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0<a≦4の数字を表す。)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、四塩化チタンと必要に応じ、エステル化合物の存在下で処理することにより得られる三価のチタン化合物含有固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物と、を含有するα−オレフィン重合用触媒系が挙げられる。
【0040】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合法を任意に組合せてもよい。
【0041】
上記の重合法における(a)固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物及び(c)電子供与体成分の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めればよい。
【0042】
重合温度は、通常、−30℃〜300℃であり、好ましくは20℃〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2MPa〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いることができる。
【0043】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂の製造方法では、重合(本重合)を実施する前に、予備重合を行ってもよい。予備重合の方法としては、例えば、(a)固体触媒成分及び(b)有機アルミニウム化合物の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂には、必要に応じて、本発明で用いられるプロピレン系樹脂以外の樹脂や、各種添加剤を加えてもよい。
本発明で用いられるプロピレン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、エラストマー等が挙げられる。また、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
実施例及び比較例で用いた試験片の物性は、以下の方法に従って、測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ASTM D1238に準拠して測定した。測定温度230℃、荷重21Nの条件で測定した。
【0046】
(2)曲げ弾性率(単位:MPa)
ASTM D790に準拠し、射出成形により成形された3.2mm厚の試験片を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。
【0047】
(3)アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2
JIS−K−7110に準拠し、射出成形により成形された3.2mm厚の、成形後にノッチ加工を行った試験片を使用して、23℃におけるアイゾット衝撃強度を測定した。
【0048】
(4)固有粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dl、0.2g/dl及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。固有粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。ポリプロピレンについては、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で評価した。
【0049】
(5)結晶化度(χ、単位:%)
結晶化度(χ)は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量分析装置(mDSC(Q100))を用い、成形したアイゾット試験片中央をカッターでスライスすることによって作成した薄切片約6mgをアルミ製パンに封入した後、室温から10℃/分で−90℃まで降温させ、5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させ、昇温時の60℃〜180℃の間に観測されるヒートフロー曲線の融解ピークの面積(ΔHm)と、下記式[1]より算出した。
(測定時の変調条件は、±0.796℃、周期30秒で行った。)
χ(%)=ΔHm/ΔH0m×100・・・・式[1]
〔式中、結晶化度100%時の融解熱量(ΔH0m)は、W.R.KrigbaumらによってJounal Polymer Science,3,767(1965)に記載された値(208J/g)を用いた。〕
【0050】
(6)長周期間隔(Lp、単位:nm)
長周期間隔は、リガク製 NANO―Viewer(MicroMax−007)を用いて、試験片をThrough−View測定することによって小角X線散乱パターンを測定し、Braggの式に従って、下記式[2]によって算出した。
Lp(nm)=λ/2sinθ・・・・式[2]
〔式中、λは波長(0.154(nm))、θは散乱角をそれぞれ表す。〕
【0051】
(7)結晶ラメラ厚み(Lc、単位:nm)、結晶ラメラ間距離(La、単位:nm)
結晶ラメラ厚み(Lc)及び結晶ラメラ間距離(La)は、結晶化度(χ)と長周期間隔(Lp)から下記式[3]によって算出した。
La(nm)=Lp(1−0.01×χ)・・・・式[3]
【0052】
(8)配向度(F1及びF2、単位:−)
配向度(F1及びF2)は下記の手順によって求めた。
まず、ミクロトームによりMD(流動)方向に1mm、ND(厚み)方向に3mm、MD(幅)方向に6μmの薄片を作成した。
次いで、顕微赤外分光光度計(日本分光(株)製 IMV−400)を用いて、上記の薄片の表層(MD方向端面)から500μmの位置での赤外2色比(D)を求めた。赤外スペクトルの測定は、透過法にて、分解能4cm-1、積算回数16回、MCT検出器を用いて行った。赤外2色比(D)は光路中に設置された偏光子を回転させ最大透過率と最小透過率の比(最大透過率/最小透過率)として算出した。波数997(cm-1)と波数973(cm-1)についてそれぞれ赤外2色比(D)を測定した。
配向度(F1及びF2)は赤外2色比(D)から下記式[4]によって算出した。
F(−)=(D−1)/(D+2)・・・・式[4]
【0053】
(9)熱処理
[方法1]
熱処理は、試験片の上部から約3.0mmの部位に卓上ドリルを用いて直径1mmの穴を作成した試験片を用い、ギアオーブン中に吊るすことにより実施した。熱処理の温度、時間を表1に示した。
[方法2]
熱処理は、ギアオーブン中の、ステンレス製の縦20cm、横20cm、高さ2cmの容器の中に試験片を静置させ、縦22cm、横22cm、厚み0.5cmのステンレス製の板で蓋をした後、実施した。熱処理の温度、時間を表1に示す。
【0054】
プロピレン系樹脂は、特開平10−212319号公報記載の触媒を用いて製造された以下のプロピレン単独重合体(PP−3、PP−5、PP−6、PP−7)、プロピレン−エチレン共重合体(PP−1、PP−2)及び、PP−1にリン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムを溶融混練したPP−4を用いた。
【0055】
PP−1(プロピレン系樹脂)
固有粘度が2.9dl/gであり、MFRが0.5g/10分であり、エチレンを0.3wt%含有し、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.965であるプロピレン−エチレン共重合体。
【0056】
PP−2(プロピレン系樹脂)
固有粘度が2.2dl/gであり、MFRが1.3g/10分であり、エチレンを0.3wt%含有し、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.966であるプロピレン−エチレン共重合体。
【0057】
PP−3(プロピレン系樹脂)
固有粘度が2.0dl/gであり、MFRが3.0g/10分であり、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.975であるプロピレン単独重合体。
【0058】
PP−4(プロピレン系樹脂)
プロピレン系樹脂としてPP−1 100質量部に対し、0.2質量部のリン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(旭電化工業製 商品名:アデカスタブNA−11)を混合し、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmに設定した40mmの単軸押出機で溶融混練して得たプロピレン系樹脂。
【0059】
PP−5(プロピレン系樹脂)
固有粘度が1.5dl/gであり、MFRが8.0g/10分であり、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.980であるプロピレン単独重合体。
【0060】
PP−6(プロピレン系樹脂)
固有粘度が3.2dl/gであり、MFRが0.25g/10分であり、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.980であるプロピレン単独重合体。
【0061】
PP−7(プロピレン系樹脂)
固有粘度が3.9dl/gであり、MFRが0.06g/10分であり、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.980であるプロピレン単独重合体。
【0062】
〔実施例1〕
プロピレン系樹脂としてPP−1を使用し、射出成形機(東芝機械製 IS100EN 最大射出圧力2000(kgf/cm2)、最大射出率113(cm3/sec))を用いシリンダー温度260℃、金型温度50℃に設定し、試験片を成形した。その試験片を、ギアオーブンを使用して、155℃、24時間で熱処理(方法1)を行った。熱処理後の試験片を用いて、結晶化度χ、長周期間隔Lp、結晶ラメラ厚みLc、結晶ラメラ間距離La、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示した。
【0063】
〔実施例2〕
プロピレン系樹脂としてPP−1に替えPP−2を使用したこと以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0064】
〔実施例3〕
プロピレン系樹脂としてPP−1に替えPP−3を使用したこと、シリンダー温度を260℃に替え230℃と設定したこと以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0065】
〔実施例4〕
プロピレン系樹脂としてPP−1に替えPP−4を使用したこと以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示した。
【0066】
〔比較例1〕
実施例1において熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして行った。結果を表2に示した。
【0067】
〔比較例2〕
実施例2において熱処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして行った。結果を表2に示した。
【0068】
〔比較例3〕
実施例3において熱処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして行った。結果を表2に示した。
【0069】
〔比較例4〕
実施例4において熱処理を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして行った。結果を表2に示した。
【0070】
〔比較例5〕
プロピレン系樹脂としてPP−5を使用し、射出成形機(東芝機械製 IS100EN 最大射出圧力2000(kgf/cm2)、最大射出率113(cm3/sec))を用いシリンダー温度230℃、金型温度50℃に設定し、試験片を成形した。この試験片を用いて、結晶化度χ、長周期間隔Lp、結晶ラメラ厚みLc、結晶ラメラ間距離La、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を測定した。結果を表2に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
実施例5〜13
表3記載の内容で射出成形を行い、熱処理(方法2)を行った。試験片の外観は顕著なヒケ等無く良好であった。結果を表5、6に示す。
【0074】
比較例6〜8
表4記載の内容で射出成形を行い、熱処理(方法2)を行った。試験片の外観は顕著なヒケ等無く良好であった。結果を表7に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
以上の結果より、本発明に係るプロピレン系樹脂成形体は、剛性が高く、アイゾット衝撃強度に優れることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(1)から要件(4)を満足するプロピレン系樹脂成形体。
要件(1)Lc/La≦1.50
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
〔上記要件(1)から要件(4)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【請求項2】
下記の要件(2)から要件(5)を満足するプロピレン系樹脂成形体。
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
要件(5)La≧8.5
〔上記要件(2)から要件(5)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【請求項3】
ASTMD1238に準拠して測定したプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、5g/10分以下である請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂成形体。
【請求項4】
プロピレン系樹脂を、最大射出圧力がPである射出成形機の金型キャビティに充填する充填工程と、
前記金型キャビティに充填された前記プロピレン系樹脂を、前記最大射出圧力の15%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程と、を有するプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
ASTM D1238に準拠して測定した前記プロピレン系樹脂のメルトフローレートは、5g/10分以下であり、
前記プロピレン系樹脂成形体は、下記の要件(1)から要件(4)を満足するものであるプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
要件(1)Lc/La≦1.50
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
〔上記要件(1)から要件(4)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【請求項5】
プロピレン系樹脂を、最大射出圧力がPである射出成形機の金型キャビティに充填する充填工程と、
前記金型キャビティに充填された前記プロピレン系樹脂を、前記最大射出圧力の15%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程と、を有するプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
ASTMD1238に準拠して測定した前記プロピレン系樹脂のメルトフローレートは、5g/10分以下であり、
前記プロピレン系樹脂成形体は、下記の要件(2)から要件(5)を満足するものであるプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
要件(2)Lc≧10.0
要件(3)F1≧0.07
要件(4)F2≧0.06
要件(5)La≧8.5
〔上記要件(2)から要件(5)において、
Laは、小角X線散乱プロファイルから算出した長周期間隔と、示差走査熱量分析により測定した融解熱量を用いて算出した結晶化度と、を用いて算出した結晶ラメラ間距離(単位:nm)を表し、
Lcは、前記結晶ラメラ間距離と前記長周期間隔より算出した結晶ラメラの厚み(単位:nm)を示し、
1は、波数997cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示し、
2は、波数973cm-1で測定した赤外二色比より算出した配向度を示す。〕
【請求項6】
前記保圧工程を経て形成された成形体前駆体を熱処理する熱処理工程を更に有する請求項4又は5に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−7760(P2008−7760A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141545(P2007−141545)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】