説明

プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法

プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法において、前記触媒固定床の温度を経時的に高くしかつ前記気相部分酸化を少なくとも1暦年毎に1回中断しそして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペン、分子酸素および少なくとも1種の希釈用不活性ガスを含んで成る出発反応ガス混合物を触媒の活性組成物がモリブデンおよび/またはタングステン元素およびまたビスマス、テルル、アンチモン、スズおよび銅元素の中の少なくとも1種も含有する少なくとも1種の多金属酸化物であるような触媒が入っている触媒固定床の中に高温で導きそして前記触媒固定床の失活に対抗する目的で前記触媒固定床の温度を経時的に高くすることによってプロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法に関する。
【0002】
アクロレインは特に中間体、例えばプロペンに2段階の不均一系触媒による部分気相酸化を受けてアクリル酸を生じさせる時などの中間体として重要な反応性単量体である。アクリル酸はそのままか或はそれのアルキルエステルの形態でとりわけ例えば接着剤または水吸収性材料などとして用いられ得る重合体の製造で用いるのに適切である。
【0003】
アクロレインの産業的規模の製造はプロペン、分子酸素および少なくとも1種の希釈用不活性ガスを含んで成る出発反応ガス混合物を触媒の活性組成物がモリブデンおよび/またはタングステン元素およびまたビスマス、テルル、アンチモン、スズおよび/または銅元素の中の少なくとも1種も含有する少なくとも1種の多金属酸化物であるような触媒が入っている触媒固定床の中に高温で導くことによってプロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化方法で実施可能であることは公知である(例えばEP−A 990636、EP−A 1106598、EP−A 169449、EP−A 700714、DE−A 3300044およびDE−A 19948623を参照)。
【0004】
また、そのようなプロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化方法は同じ1種の触媒固定床を用いて長期間に渡って実質的に連続的に実施可能であることも公知である。しかしながら、前記触媒固定床はそのような稼働時間過程中に品質を失う。一般に、それの活性と目標生成物をもたらす選択性の両方が悪化する(本資料における目標生産量はアクロレインと2番目の価値の有る生成物としていくらか生じるアクリル酸の総量を指す)。
【0005】
それにも拘らず、そのような触媒固定床の製造および交換は比較的不便でありかつ費用がかかることから、それが仕込まれている反応槽の稼働時間ができるだけ長くなるようにする目的で、従来技術では、それらの老化過程に対抗する多種多様な方法が試みられている。
【0006】
EP−A 990 636(例えば8頁の13行および15行)およびEP−A 1 106 598(例えば13頁の43から45行)に、反応ガス混合物を触媒固定床の中に1回通した時のプロペン変換率が実質的に保持されるようにする目的で前記触媒固定床の温度を他の稼働条件は実質的に一定にしながら稼働時間過程中に徐々に高くすることで前記触媒固定床の品質の低下を実質的に補うことが提案されている。
【0007】
これに関連して、前記触媒固定床の温度は、化学反応が理論的に存在しない(即ち反応熱の影響がない)こと以外は部分酸化工程を実施する時の当該触媒固定床の温度を指す。このことはまた本資料にも当てはまる。それとは対照的に、本資料における触媒固定床の有効温度は、部分酸化の反応熱を考慮に入れた触媒固定床の実際の温度を指す。本資料において触媒固定床の温度がその触媒固定床に沿って一定ではない場合(即ち、温度が複数のゾーンの場合)の用語「触媒固定床の温度」は当該触媒固定床に沿った温度の(数値的)平均を意味する。
【0008】
上述した文脈において、反応ガス混合物が当該触媒固定床を通る時にそれの温度(従ってまた触媒固定床の有効温度)が最大値(ホットスポット値として知られる)を通過することは明らかなことである。ホットスポット値とホットスポット値の場所の触媒固定床の間の温度の差をホットスポットエクスパンションと呼ぶ。
【0009】
EP−A 990 636およびEP−A 1 106 598に推奨されている手順の欠点は、その触媒固定床の温度を高くすると老化過程が加速される点にある(例えば触媒内の特定の移動過程が老化過程をより速める一因になる)。これは、また、特に、一般に触媒固定床の温度が高くなるにつれてホットスポットエクスパンションが大きくなる速度の方が通常は触媒固定床自身の温度が上昇する速度よりも急速であることが理由でも起こる(例えばEP−A 1 106 598の12頁の45から48行およびEP−A 990 636の8頁の11から15行を参照)。従って、ホットスポット領域の中では一般に触媒固定床の有効温度が過度に高くなり、それによって追加的に触媒固定床の老化が速まる。
【0010】
従って、通常は触媒固定床が最大温度値に到達した時点で触媒固定床の完全な交換が実施される。
【0011】
しかしながら、そのような完全な交換の欠点は、比較的高価でありかつ不便である点にある。アクリル酸製造工程を長期間に渡って中断する必要がありかつ触媒調製費用も同様にかなりになる。
【0012】
従って、プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化方法では、その反応槽内の触媒固定床の稼働時間をできるだけ長くするに有用な稼働様式が望まれている。
【0013】
これに関して、DE−A 102 32 748では、触媒固定床の完全な交換を行う代わりにそれの一部のみを新しい触媒仕込みと交換することを推奨している。
【0014】
そのような提案の欠点は、その触媒固定床の一部を交換したとしてもそれに伴ってかなりの費用および不便さを伴う点にある。
【0015】
EP−A 169 449では、触媒固定床を数年間稼働させることに付随してそれの温度を15℃以上高くし、そしてその後に部分酸化工程を中断しそして触媒固定床の温度を380から540℃にして実質的に空気で構成させたガスをその中に導きそしてその後に部分酸化を継続することによって触媒固定床の稼働時間を長くすることを推奨している。EP−A 339 119でも同様な稼働様式を用いて酸素と水蒸気を含んで成るガスを用いることを推奨している。
【0016】
これに関連して、本資料で触媒固定床の中に特定の条件下で導くガス混合物の中の不活性ガスは、それを触媒固定床の中に導いた時にそれの少なくとも95モル%、好適には少なくとも98モル%、最も好適には少なくとも99モル%または99.5モル%が変化しないままであるガスを指す。本発明に従って用いるべきガス混合物Gに関して、水蒸気は用語「不活性ガス」に含めるべきでない。しかしながら、EP−A 169 449に示されている手順の欠点は、部分酸化を中断する時点まで触媒固定床の老化が継続して起こりかつ老化の進行が妨げられない点にある。同じことがまたEP−A 614 872にも当てはまる。
【0017】
本発明の目的は、プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法を提供することにあり、ここでは、経時的ホットスポットエクスパンションの度合が従来技術の方法のそれよりも低くなるような様式で触媒の老化に対抗する。
【0018】
我々は、プロペン、分子酸素および少なくとも1種の希釈用不活性ガスを含んで成る出発反応ガス混合物を触媒の活性組成物がモリブデンおよび/またはタングステン元素およびまたビスマス、テルル、アンチモン、スズおよび銅元素の中の少なくとも1種も含有する少なくとも1種の多金属酸化物であるような触媒が入っている触媒固定床の中に高温で導きそして前記触媒固定床の失活に対抗する目的で前記触媒固定床の温度を経時的に高くすることによってプロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法に前記気相部分酸化を少なくとも1暦年毎に1回中断しそして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃(好適には300℃から500℃、より好適には350℃から450℃、または300から400℃、または300から360℃)にして導入することを含めると本目的が達成させることを見いだした。
【0019】
本発明に従う方法を用いると、プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行うことが可能になり、それによって、経時的ホットスポットエクスパンションの度合が従来技術の方法の時よりも低くなることは驚くべきことである。好適なケースでは、ホットスポットエクスパンションの度合は経時的に一定であるか或は低くなりさえする。加えて、目標生成物の生成選択率も実質的に経時的に一定のままであり、好適なケースでは高くなりさえする。
【0020】
本発明に従い、前記気相部分酸化を少なくとも9カ月毎または6カ月毎に1回、より好適には少なくとも3暦月毎に1回、最も好適には少なくとも2連続暦月毎に1回、最良では少なくとも1暦月毎に1回中断しそして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入するのが好適である。
【0021】
しかしながら、前記気相部分酸化を本発明に従って中断する前に一般にそれを少なくとも1暦週の間連続的に稼働させる。
【0022】
言い換えれば、本発明に従う方法では、前記ガス混合物Gを前記触媒固定床の中に触媒固定床の温度を250から550℃にして通すことを部分酸化の稼働時間が7500または7000時間内、または6500または6000時間内に少なくとも1回、好適には5500または5000時間内に少なくとも1回、最も好適には4000、または3000もしくは2000、または1500、または1000、または500時間内に少なくとも1回実施する。本発明に従う方法を頻繁に実施すると有利な効果が得られる。
【0023】
本発明に従い、本発明に従う方法を実施している過程中に前記ガス混合物Gを中に導く前記触媒固定床の温度を好適にはT値に保持するが、これは、実質的に、本発明に従って前記ガス混合物Gを前記触媒固定床の中に導入する目的で部分酸化の稼働を中断する前の稼働中の触媒固定床の温度Tに相当する。
【0024】
言い換えれば、本発明に従い、有利にはT=T±50℃、またはT=T±20℃、非常に特に有利にはT=T
【0025】
は通常は250から450℃の範囲、しばしば300から400℃の範囲であろう。
【0026】
本発明に従う方法で前記ガス混合物Gを前記触媒固定床の中に導く時間tは一般に少なくとも2時間、しばしば6時間から120時間、多くの場合12時間から72時間、しばしば20時間から40時間であろう。しかしながら、それはまた10日以上であってもよい。この時間tは通常は前記ガス混合物が前記触媒固定床から出る時のそれの酸素含有量と前記ガス混合物Gが前記触媒固定床の中に入る時のそれの酸素含有量が異ならなくなるほどの時間である。前記ガス混合物Gの酸素含有量が低い時には結果として一般に時間tをより長くする。本発明に従って前記ガス混合物Gの酸素含有量を高くする方が有利である。
【0027】
本発明に従う方法では、前記ガス混合物Gの酸素含有量を少なくとも1体積%または少なくとも2体積%、好適には少なくとも3体積%、より好適には少なくとも4体積%にするのが活用の観点から適切である。しかしながら、前記ガス混合物Gの酸素含有量を一般に≦21体積%にする。言い換えれば、可能なガス混合物Gは空気である。別の可能なガス混合物Gは希薄空気である。これは酸素が欠乏している空気である。
【0028】
本発明に従い、酸素含有量が3から10体積%、好適には4から6体積%で残りが窒素分子である希薄空気が有利である。本発明に従い、前記ガス混合物Gに水蒸気を実質的に含有させないのが適切である。しかしながら、本発明に従って用いるガス混合物Gに水蒸気を0.1体積%以下、または0.5体積%以下、または1体積%以下ならば含有させても構わない。前記ガス混合物Gの水蒸気含有量を通常は≦75体積%にする。前記ガス混合物Gの不活性ガス含有量を一般に≦95体積%、通常は≦90体積%にする。
【0029】
従って、本発明に従う適切なガス混合物Gは、例えば分子酸素含有量が3から20体積%で水蒸気含有量が0から5体積%で残りが不活性ガスであるガス混合物であり得る。好適な不活性ガスはNおよびCOである。本発明に従う方法で用いるに有用なガス混合物Gは、特に、EP−A 169 449およびEP−A 339 119に推奨されているガス混合物の全部である。同様に、EP−A 169 449に推奨されている再生条件の全部を本発明に従う方法で用いてもよい。
【0030】
本発明に従う方法で触媒固定床の中に導くガス混合物Gの量は、5もしくは100から5000Nl/l・時、好適には20もしくは200から3000Nl/l・時であってもよい。その基準は当該触媒固定床全体の体積、即ち排他的に不活性材料で構成されている使用部分のいずれも包含する全体の体積である。ガス混合物Gの1時間当たりの空間速度を高くする方が有利であることを確認した。
【0031】
本発明に従う方法で用いるに適した多金属酸化物活性組成物は特にMo、BiおよびFeを含んで成る活性多金属酸化物である。それらは特にDE−A 103 44 149およびDE−A 103 44 264に開示されているMo、BiおよびFeを含有する多金属酸化物組成物である。
【0032】
また、それらは特にDE−A 199 55 176に示されている一般式Iで表される多金属酸化物活性組成物、DE−A 199 48 523に示されている一般式Iで表される多金属酸化物活性組成物、DE−A 10101695に示されている一般式I、IIおよびIIIで表される多金属酸化物活性組成物、DE−A 19948248に示されている一般式I、IIおよびIIIで表される多金属酸化物活性組成物、およびDE−A 19955168に示されている一般式I、IIおよびIIIで表される多金属酸化物活性組成物、およびまたEP−A 700714に示されている多金属酸化物活性組成物である。
【0033】
また、本発明に従って用いる触媒固定床では、資料DE−A 10046957、DE−A 10063162、DE−C 3338380、DE−A 19902562、EP−A 15565、DE−C 2380765、EP−A 807465、EP−A 279374、DE−A 3300044、EP−A 575897、US−A 4438217、DE−A 19855913、WO 98/24746、DE−A 19746210(一般式IIで表されるそれら)、JP−A 91/294239、EP−A 293224およびEP−A 700714に開示されているMo、BiおよびFeを含んで成る多金属酸化物触媒も適切である。これは特に前記資料に示されている典型的な態様に当てはまり、とりわけ、EP−A 15565、EP−A 575897、DE−A 19746210およびDE−A 19855913が参考になる。これに関連して、特にEP−A 15565の実施例1cに従う触媒およびまた相当する様式で調製された触媒であるが活性組成Mo12Ni6.5ZnFeBi0.00650.06Ox・10 SiOで表される触媒も強調する。また、DE−A 19855913の連続番号3を有する例(化学量:Mo12CoFeBi0.60.08Si1.6Ox)も担持されていない5mmx3mmx2mmまたは5mmx2mmx2mm(各々外径x高さx内径)の形状を有する中空円筒形触媒として強調しかつまたDE−A 19746210の実施例1に従う担持されていない多金属酸化物II触媒も強調する。また、US−A 4438217に示されている多金属酸化物触媒も挙げるべきであろう。後者は特にそれが5.5mmx3mmx3.5mmまたは5mmx2mmx2mmまたは5mmx3mmx2mmまたは6mmx3mmx3mmまたは7mmx3mmx4mm(各々外径x高さx内径)の寸法の中空円筒形状を有する時に当てはまる。同様に、DE−A 10101695またはWO 02/062737に示されている多金属酸化物触媒および形状も適切である。
【0034】
また、DE−A 10046957の実施例1(化学量:[Bix2WO0.5・[Mo12Co5.6Fe2.94Si1.590.08)も担持されていない5mmx3mmx2mmまたは5mmx2mmx2mm(各々外径x高さx内径)の形状を有する中空円筒(環)状触媒として適切であり、そしてまたDE−A 10063162に示されている被覆触媒1、2および3(化学量:Mo12Bi1.0FeCOSi1.60.08)も5mmx3mmx1.5mmまたは7mmx3mmx1.5mm(各々外径x高さx内径)の形状を有する担体環に付着している適切な被膜厚の環状被覆触媒であることを除いて適切である。
【0035】
本発明に従う方法に必要な触媒固定床の触媒に適切な多数の多金属酸化物活性組成物が下記の一般式Iに包含され得る:
Mo12BiFe (I)
[式中、前記変数の各々の定義は下記の通りである:
=ニッケルおよび/またはコバルト、
=タリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、
=亜鉛、リン、ヒ素、ホウ素、アンチモン、スズ、セリウム、鉛および/またはタングステン、
=ケイ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウム、
a=0.5から5、
b=0.01から5、好適には2から4、
c=0から10、好適には3から10、
d=0から2、好適には0.02から2、
e=0から8、好適には0から5、
f=0から10、および
n=Iの中の酸素以外の元素の原子価および頻度で決まる数]。
【0036】
それらは本質的に公知の様式(例えばDE−A 4023239を参照)で入手可能であり、通常は未希釈状態で成形して球、環または円筒形にするか、或は被覆された触媒の形態で用いる、即ち前以て成形しておいた不活性担体を活性組成物で被覆する。それらをまた粉末形態の触媒として用いることも可能であることは理解されるであろう。
【0037】
前記一般式Iで表される活性組成物の調製は、原則として、それらの元素成分の適切な源からそれらの化学量に相当する組成を有する非常に密な好適には微細な乾燥混合物を得た後にそれに焼成を350から650℃の温度で受けさせることによる簡潔な様式で実施可能である。前記焼成は不活性ガス下または酸化雰囲気下、例えば空気(不活性ガスと酸素の混合物)およびまた還元性雰囲気(例えば不活性ガス、NH、COおよび/またはHの混合物)下で実施可能である。その焼成を実施する時間は数分から数時間であり得るが、典型的には温度に伴って短くする。
【0038】
そのような多金属酸化物活性組成物Iに含める元素成分に有効な源は、既に酸化物である化合物および/または熱によって少なくとも酸素の存在下で酸化物に変化し得る化合物である。
【0039】
そのように有用な出発化合物には、酸化物に加えて、特にハロゲン化物、硝酸塩、蟻酸塩、しゅう酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン錯体、アンモニウム塩および/または水酸化物が含まれる[追加的にNHOH、(NHCO、NHNO、NHCHO、CHCOOH、NHCHCOおよび/またはしゅう酸アンモニウム(分解を起こしそして/または遅くとも後の焼成時に分解を起こして気体形態で放出される化合物を生じる)のような化合物を前記密な乾燥混合物の中に混合してもよい]。
【0040】
そのような多金属酸化物活性組成物Iを調製する時に用いる出発化合物を乾燥または湿った形態で密に混合してもよい。それらを乾燥形態で混合する時には、そのような出発化合物を有利には微細な粉末として用いて、それらに焼成を受けさせた後、混合しそして場合により圧縮してもよい。しかしながら、密な混合を湿った形態で行う方が好適である。通常は、前記出発化合物を水溶液および/または懸濁液の形態で互いに混合する。特に、前記出発材料が排他的に溶解形態の元素成分源である時に、その記述した混合工程で密な乾燥混合物が得られる。使用する溶媒は好適には水である。次に、その得た水性組成物を乾燥させた後、好適には、その水性混合物の噴霧乾燥を流出温度が100から150℃になるように行うことで乾燥工程を実施する。
【0041】
本発明に従う方法に必要な触媒固定床では、典型的に、前記一般式Iで表される多金属酸化物乾燥組成物を粉末形態で用いないで、むしろ、特定の触媒形状に成形するが、その成形を行う時期は最終的な焼成を行う前または後であってもよい。例えば、粉末形態の前記活性組成物または未焼成および/またはある程度焼成を受けさせた前駆体組成物に圧縮を場合により補助剤、例えば滑剤としてのグラファイトまたはステアリン酸および/または成形補助および補強剤、例えばガラス、アスベスト、炭化ケイ素またはチタン化カリウムなどの微細繊維を添加して受けさせることで所望の触媒形状にする(例えば錠剤化または押出し加工などで)ことなどで、担持されていない触媒を生じさせてもよい。担持されていない適切な触媒形状の例には、外径および長さが2から10mmの固形円柱または中空円筒が含まれる。中空円筒の場合には壁厚を1から3mmにするのが有利である。そのような担持されていない触媒の形状を球形にすることも可能でありかつ球の直径を2から10mmにしてもよいことは理解されるであろう。
【0042】
特に有利な中空円筒形状は、特に担持されていない触媒の場合には5mmx3mmx2mm(外径x高さx内径)である。
【0043】
また、粉体の活性組成物または焼成および/またはある程度の焼成を更に受けさせるべき粉体の前駆体組成物を前以て成形しておいた不活性触媒担体に付着させることでそれの成形を行うことも可能であることは理解されるであろう。そのように担体に被覆を受けさせて被覆触媒を生じさせる被覆を一般的には適切な回転槽、例えばDE−A 2909671、EP−A 293859またはEP−A 714700などに開示されている回転槽を用いて実施する。その担体に被覆を受けさせる時に付着させる粉末組成物を有利に湿らせそして付着させた後に例えば熱風などで再び乾燥させる。その担体に付着させる粉末組成物の被膜厚をこれが有利には10から1000μmの範囲、好適には50から500μmの範囲、より好適には150から250μmの範囲内になるように選択する。
【0044】
有用な担体材料は通常の多孔質もしくは無孔性の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素またはケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムなどである。それらは一般に本発明に従う方法の1番目の反応段階の基になる目標反応に関して実質的に不活性に挙動する。そのような担体の形状は規則的または不規則的であってもよいが、明確な表面粗さを有する規則的形状の担体、例えば球または中空円筒形などの担体が好適である。ステアタイト(例えばCeramTecのステアタイトC220)で出来ていて表面が粗い実質的に無孔性の球形担体の使用が適切であり、それの直径を1から8mm、好適には4から5mmにする。しかしながら、適切な担体には、また、長さが2から10mmで外径が4から10mmの円柱も含まれる。本発明に従う担体として用いるに適した環の場合、また、その壁厚を典型的には1から4mmにする。本発明に従い、長さが2から6mmで外径が4から8mmで壁厚が1から2mmの環状担体の使用が好適である。特に、7mmx3mmx4mmまたは5mmx3mmx2mm(外径x高さx内径)の形状の環が本発明に従う担体として用いるに適する。そのような担体の表面に付着させるべき触媒活性のある酸化物組成物の微細度を所望の被膜厚に適合させるべきであることは理解されるであろう(EP−A 714 700を参照)。
【0045】
本発明に従う方法の触媒固定床の触媒に適した多金属酸化物活性組成物は、また、一般式II
[Y'Y'O'][Y'Y'Y'Y'Y'Y'O'] (II)
[式中、前記変数の各々の定義は下記の通りである:
=ビスマスのみまたはビスマスとテルル、アンチモン、スズおよび銅元素の中の少なくとも1種、
=モリブデンまたはモリブデンとタングステン、
=アルカリ金属、タリウムおよび/またはサマリウム、
=アルカリ土類金属、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、スズ、カドミウムおよび/または水銀、
=鉄または鉄とクロムおよびセリウム元素の中の少なくとも1種、
=リン、ヒ素、ホウ素および/またはアンチモン、
=希土類金属、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、トリウムおよび/またはウラン、
a’=0.01から8、
b’=0.1から30、
c’=0から4、
d’=0から20、
e’=>0から20、
f’=0から6、
g’=0から15、
h’=8から16、
x’,y’=IIの中の酸素以外の元素の原子価および頻度で決まる数、および
p,q=p/q比が0.1から10になる数]
で表される組成物であり、これは、化学組成Y'Y'O'で表される三次元領域を含んで成るが、この三次元領域の範囲は、これらの組成がこれらの局所的環境のそれらから異なる結果としてこれらの局所的環境から限定されており、かつこれらの最大直径[この領域の中心を通りかつこの領域の表面(接触面)上の2つの地点をつなげている最も長い線]は1nmから100μm、しばしば10nmから500nm、または1μmから50もしくは25μmである。
【0046】
特に有利な多金属酸化物組成物IIは、Yがビスマスのみである組成物である。
【0047】
同様に、とりわけ、一般式III
[Bia”b”x”p”[Z12c”d”Fee”f”g”h”y”q” (III)
[式中、前記変数の各々の定義は下記の通りである:
=モリブデンまたはモリブデンとタングステン、
=ニッケルおよび/またはコバルト、
=タリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、
=リン、ヒ素、ホウ素、アンチモン、スズ、セリウムおよび/または鉛、
=ケイ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウム、
=銅、銀および/または金、
a”=0.1から1、
b”=0.2から2、
c”=3から10、
d”=0.02から2、
e”=0.01から5、好適には0.1から3、
f”=0から5、
g”=0から10、
h”=0から1、
x”,y”=IIIの中の酸素以外の元素の原子価および頻度で決まる数、
p”,q”=p”/q”比が0.1から5、好適には0.5から2になる数]
で表される組成物が好適であり、Zb”=(タングステン)b”およびZ12=(モリブデン)12の組成物IIIが非常に特に好適である。
【0048】
また、本発明に従う適切な多金属酸化物組成物II(多金属酸化物組成物III)では、本発明に従う適切な多金属酸化物組成物II(多金属酸化物組成物III)の中の[Ya’b’x’([Bia”b”x”p”)の全比率の少なくとも25モル%(好適には少なくとも50モル%、より好適には少なくとも100モル%)が化学組成Ya’b’x’[Bia”b”x”]を有する三次元領域の形態であり、前記三次元領域の範囲が、これらの組成がこれらの局所的環境のそれらから異なる結果としてこれらの局所的環境から限定されておりかつこれらの最大直径が1nmから100μmの範囲であるのも有利である。
【0049】
形状に関して、多金属酸化物I触媒に関して行った記述が多金属酸化物II触媒にも当てはまる。
【0050】
そのような多金属酸化物IIの活性組成物の調製は例えばEP−A 575897およびまたDE−A 19855913、DE−A 10344149およびDE−A 10344264に記述されている。
【0051】
本発明に従う方法の活用の観点から、プロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化を、例えばEP−A 700 714またはDE−A 4 431 949またはWO 03/057653またはWO 03/055835またはWO 03/059857またはWO 03/076373などに記述されているように、前記固定式床用触媒を仕込んでおいた管束反応槽を用いて適切に実施することができる。
【0052】
言い換えれば、最も簡潔な様式では、本発明に従う方法で用いるべき触媒固定床を管束反応槽の中の均一に仕込んでおいた金属管の中に位置させ、そして加熱用媒体(1ゾーン方法)、一般的には塩溶融物を前記金属管の回りに導く。塩溶融物(加熱用媒体)と反応ガス混合物を簡単な並流もしくは向流で導いてもよい。しかしながら、また、反応槽全体の上から見た時に存在する流れが反応ガス混合物が流れる方向に対して並流もしくは向流のみであるように、その加熱用媒体(塩溶融物)を反応槽の上から見て蛇行様式で前記管束の回りに導くことも可能である。その加熱用媒体(熱交換用媒体)の体積流量を、典型的には、その熱交換用媒体が反応槽の入り口点から反応槽の出口点に向かう時に起こす温度上昇(反応の発熱によって引き起こされる)が0から10℃、頻繁に2から8℃、しばしば3から6℃であるような流量にする。その熱交換用媒体が管束反応槽の中に入る時の温度(本資料におけるそれは触媒固定床の温度に相当する)を一般に250から450℃、しばしば300から400℃または300から380℃にする。適切な熱交換用媒体は特に流動する加熱用媒体である。特に硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムおよび/または硝酸ナトリウムなどのような塩の溶融物または低融点金属、例えばナトリウム、水銀およびまたいろいろな金属の合金などの使用が適切である。また、イオン性液体を用いることも可能である。
【0053】
適切には、そのような反応ガス混合物を必要な反応温度になるように前以て加熱しておいた固定式床の触媒仕込み物に供給する。
【0054】
特に、触媒固定床上の最終的なプロペンの1時間当たりの空間速度を高くする(例えば≧140Nl/l・時または≧160Nl/l・時であるが、一般に≦600Nl/l・時)ことが望まれる場合には、本発明に従う方法を適切に2ゾーンの管束反応槽を用いて実施する(しかしながら、それを1ゾーンの管束反応槽を用いて実施することも同様に可能である)。本発明に従う本目的で使用可能な2ゾーンの管束反応槽の好適な変形がDE−C 2830765に開示されている。しかしながら、また、DE−C 2513405、US−A 3147084、DE−A 2201528、EP−A 383224およびDE−A 2903582に開示されている2ゾーンの管束反応槽の使用も適切である。
【0055】
言い換えれば、最も簡単な様式では、本発明に従って用いるべき触媒固定床を管束反応槽の中の均一に仕込まれた金属管の中に位置させそして実質的に空間的に離れて存在する2種類の加熱用媒体、一般的には塩溶融物を前記金属管の回りに導く。その個々の塩浴液が占める管部分が温度もしくは反応ゾーンに相当する。
【0056】
例えば、塩浴液Aを好適にはプロペンの酸化的変換(1回通過)を40から80モル%の範囲の変換値が達成されるまで進行させる管部分(反応ゾーンA)の回りに流しそして塩浴液Bを好適には続いて起こさせるプロペンの酸化的変換(1回パス)を一般に少なくとも90モル%の変換値が達成されるまで進行させる管部分(反応ゾーンB)の回りに流す(必要ならば、反応ゾーンA、Bの後にさらなる反応ゾーンを設けてもよく、それらのゾーンを個々の温度に保持する)。
【0057】
原則として、そのような塩浴液を個々の温度帯内に1ゾーン方法の場合と同様に導く。その塩浴液Bの流入温度を通常は前記塩浴液Aの温度より少なくとも5から10℃高くする。そのようにしないと、その流入温度が1ゾーン方法の場合に推奨した流入温度の温度範囲内になってしまう可能性がある。
【0058】
さもなければ、そのような2ゾーンの高負荷方法を例えばDE−A 10308836、EP−A 1106598に記述されているようにか、或はWO 01/36364またはDE−A 19927624またはDE−A 19948523、DE−A 10313210、DE−A 10313213に記述されているようにか、或はDE−A 19948248に記述されているように実施することも可能である。
【0059】
従って、本発明に従う方法は、触媒固定床上のプロペンの1時間当たりの空間速度を≧70Nl/l・時、≧90Nl/l・時、≧110Nl/l・時、≧130Nl/l・時、≧140Nl/l・時、≧160Nl/l・時、≧180Nl/l・時、≧240Nl/l・時、≧300Nl/l・時[しかしながら、通常は≦600Nl/l・時]にした時に適切である。ここで(即ち、一般に、本資料におけるプロペンの1時間当たりの空間速度の場合)、本資料に示す基準から逸脱する時の1時間当たりの空間速度は、排他的に不活性材料で構成されている使用部分のいずれも排除した触媒固定床の体積が基になっている。
【0060】
そのような仕込み用ガス混合物で用いる不活性ガスを構成する窒素分子の量を例えば≧20体積%、または≧30体積%、または≧40体積%、または≧50体積%、または≧60体積%、または≧70体積%、または≧80体積%、または≧90体積%、または≧95体積%にしてもよい。
【0061】
そのような不活性な希釈用ガスをまた例えば2から35または20重量%のHOと65から98体積%のNなどで構成させることも可能である。
【0062】
しかしながら、本発明に従う方法で前記触媒固定床上のプロペンの1時間当たりの空間速度を250Nl/l・時より高くする時には、不活性な希釈用ガス、例えばプロパン、エタン、メタン、ブタン、ペンタン、CO、CO、水蒸気および/または貴ガスなどの使用を推奨する。しかしながら、そのようなガスをプロペンの1時間当たりの空間速度がより低い時にも用いることができることは理解されるであろう。
【0063】
本発明でプロペンに気相部分酸化を受けさせている過程で用いる作業圧力は、大気圧以下(例えば0.5バールまで)または大気圧以上のいずれであってもよい。プロペンに気相部分酸化を受けさせている時の作業圧力を典型的には1から5バール、しばしば1から3バールの値にする。
【0064】
本発明のプロペン部分酸化では反応圧力を通常は100バール以下にする。
【0065】
本発明に従う方法では、前記触媒固定床の中に導く出発反応ガス混合物の中のO:プロペンのモル比を通常は≧1にする。この比率を典型的には≦3の値にする。本発明に従い、上述した仕込みガス混合物の中のO:プロペンのモル比をしばしば1:2から1:1.5にする。多くの場合、本発明に従う方法を出発反応ガス混合物中のプロペン:酸素:不活性ガス(水蒸気を包含)の体積比[Nl]が1:(1から3):(3から30)、好適には1:(1.5から2.3):(10から15)になるようにして実施する。
【0066】
前記出発反応ガス混合物中のプロペンの分率を例えば4または7から20体積%、しばしば5または7から15体積%または5または7から12体積%または5から8体積%の値にしてもよい(各場合とも総体積を基準)。
【0067】
そのような出発反応ガス混合物の典型的な組成(選択する1時間当たりの空間速度とは関係なく)は例えば下記の成分を下記の含有量で含有する組成である:
プロペンを6から6.5体積%、
Oを3から3.5体積%、
COを0.3から0.5体積%、
COを0.8から1.2体積%、
アクロレインを0.025から0.04体積%、
を10.4から10.7体積%、および
窒素分子を残りとして100%になる量、または
プロペンを5.4体積%、
酸素を10.5体積%、
COを1.2体積%、
を81.3体積%、および
Oを1.6体積%。
【0068】
しかしながら、また、そのような出発反応ガス混合物に下記の組成を持たせることも可能である:
プロペンを6から15体積%、
水を4から30体積%(しばしば6から15体積%)、
プロペン、水、酸素および窒素以外の成分を≧0から10体積%(好適には≧0から5体積%)、
分子酸素を存在するプロペン分子に対する存在する分子酸素のモル比が1.5から2.5になるに充分な量、および
窒素分子を残りとして総量の100体積%になる量。
【0069】
別の可能な出発反応ガス混合物組成物は下記を含有する組成物であり得る:
プロペンを6.0体積%、
空気を60体積%、および
Oを34体積%。
【0070】
別法として、また、EP−A 990 636の実施例1に従う組成、またはEP−A 990 636の実施例2に従う組成、またはEP−A 1 106 598の実施例3に従う組成、またはEP−A 1 106 598の実施例26に従う組成、またはEP−A 1 106 598の実施例53に従う組成を有する出発反応ガス混合物を用いることも可能である。
【0071】
本発明に従う適切なさらなる出発反応ガスは、下記の組成枠内に入るガス混合物であり得る:
プロペンが7から11体積%、
水が6から12体積%、
プロペン、水、酸素および窒素以外の成分が≧0から5体積%、
分子酸素が存在するプロペン分子に対する存在する分子酸素のモル比が1.4から2.2であるに充分な量、および
窒素分子が残りとして総量の100体積%になる量。
【0072】
そのような出発反応ガス混合物で用いるプロペンは、特に、例えばDE−A 10232748に記述されているような重合体品質のプロペンまたは化学品質のプロペンである。
【0073】
使用する酸素源は通常は空気である。
【0074】
本発明に従う方法で触媒固定床を生じさせる時に用いることができる触媒体は多金属酸化物活性組成を有する適切な形状の触媒またはさもなければ多金属酸化物活性組成を有する成形された触媒体と多金属酸化物活性組成を持たないで不均一系触媒による部分気相酸化に関して実質的に不活性な挙動を示す(そして不活性な材料で構成されている)成形体(成形された希釈用物体)の実質的に均一な混合物である。そのような成形された不活性な物体として用いるに有用な材料は、原則として、本発明に従う適切な被覆触媒用の担体材料として用いるにも適した物体の全部である。そのような有用な材料は、例えば多孔質もしくは無孔性の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムなど、または既に挙げたステアタイト(例えばCeramTecのステアタイトC220)などである。
【0075】
そのような成形した不活性な希釈用物体に持たせる形状は原則として望まれる通りであり得る。言い換えれば、それらは例えば球形、多角形、固形円柱または他の環などであってもよい。本発明に従い、その選択する成形された不活性な希釈用物体は、好適には、これらで希釈する成形された触媒体の形状に相当する形状を有する物体である。
【0076】
使用する活性組成物の化学的組成が触媒固定床全体に渡って変わらないのが一般に好ましい。言い換えれば、成形された個々の触媒体で用いる活性組成物はMoおよび/またはW元素およびまたBi、Fe、Sb、SnおよびCu元素の中の少なくとも1種も含んで成るいろいろな多金属酸化物の混合物であってもよく、その上、有利には、その同じ混合物を触媒固定床の中の成形された触媒体の全部で用いるべきである。
【0077】
好適には、当該触媒固定床内の比体積(即ち体積単位に対して正規化した)活性が通常は出発反応ガス混合物が流れる方向に連続的にか、突然にか或は段階的に高くなるようにする。
【0078】
例えば、均一な様式で調製した基本量の成形触媒体を成形した希釈用物体で均一に希釈することなどによる簡潔な様式で比体積活性を低くすることができる。その選択する成形された希釈用物体の分率を高くすればするほど活性組成物の量が少なくなる、即ち固定床の体積を一定にした時の触媒活性が低くなる。
【0079】
従って、触媒固定床の全体に渡って反応ガス混合物が流れる方向に比体積活性が少なくとも一度高くなる状態を、例えば、本発明に従う方法で1種類の成形された触媒体を用いてそれを基準にした成形された不活性な希釈用物体の分率が高い床で始めた後にその成形された希釈用物体の分率を流れ方向に連続的にか或は1回または2回以上突然(例えば段階的)に低くしていくことなどによる簡潔な様式で達成することができる。しかしながら、また、例えば成形された被覆触媒体の形状および活性組成物の種類を一定にして当該担体に付着させる活性組成物層の厚みを厚くして行くか或は活性組成物の形状は同じであるが重量比率が異なる被覆触媒の混合物の中の活性組成物の重量比が高い方の成形された触媒体の分率を高くして行くことなどでも、比体積活性を高くして行くことができる。別法として、また、例えば活性組成物を調製している過程で不活性な希釈用材料、例えば激しい焼成を受けさせておいた二酸化ケイ素などを焼成を受けさせるべき出発化合物の乾燥混合物に混合することなどで活性組成物自身を希釈することも可能である。希釈用材料の添加量を変えると自然に結果として活性も変わる。結果としてもたらされる活性は添加する希釈用材料の量を多くすればするほど低くなるであろう。また、例えば担持されていない触媒と被覆触媒(同じ活性組成を有する)の混合物に含めるそれらの混合比を適切に変えることなどでも同様な効果を達成することができる。また、この記述した変法を組み合わせて用いることも可能であることは理解されるであろう。
【0080】
勿論、活性組成が化学的に異なりそしてそのように組成が異なる結果として活性が異なる触媒の混合物を触媒固定床で用いることも可能である。そのような混合物を不活性な希釈用物体で希釈することも同様に可能である。
【0081】
活性組成を有する触媒固定床部分の上流および/または下流に不活性材料(例えば成形された希釈用物体のみ)(本資料では用語の目的でそれらを特に明記しない限り触媒固定床に含める)で排他的に構成させた床を位置させることも可能である。それらも同様に前記触媒固定床の温度にもっていってもよい。そのような不活性な床で用いる成形された希釈用物体に持たせる形状は活性組成を有する触媒固定床部分で用いる成形された触媒体の形状と同じであってもよい。しかしながら、また、そのような不活性床で用いる成形された希釈用物体の形状を上述した成形された触媒体に持たせる形状と異ならせることも可能である(例えば環状の代わりに球形)。
【0082】
そのような不活性床で用いる成形体に持たせる形状はしばしば7mmx7mmx4mm(外径x長さx内径)の環状または直径d=4−5mmの球形である。
【0083】
本発明に従う方法では、多くの場合、そのような触媒固定床の活性組成部分の構造を反応ガス混合物の流れる方向に下記のような構造にする。
【0084】
各々が活性組成を有する触媒固定床仕込み部分の長さ全体の最初の10から60%、好適には10から50%、より好適には20から40%、最も好適には25から35%の長さ(即ち、例えば0.70から1.50m、好適には0.90から1.20mの長さ)まで、成形された触媒体と成形された希釈体(好適には両方に実質的に同じ形状を持たせた)の1種類の均一な混合物または連続的に位置する2種類の均一な混合物(希釈率が低くなっていく)[成形された希釈体の重量比(成形された触媒体の質量密度と成形された希釈体の質量密度の差は一般に若干のみである)を一般に5から40重量%、好適には10から40重量%または20から40重量%、より好適には25から35重量%にする]を位置させる。次に、そのような1番目のゾーンの下流に、しばしば有利には、活性組成を有する触媒固定床部分の長さ(即ち例えば2.00から3.00m、好適には2.50から3.00mの長さ)方向の末端に至るまで、希釈度合が僅かのみ(1番目のゾーンよりも低い)の成形された触媒体の床、または最も好適には、また1番目のゾーンでも用いた成形触媒体と同じ触媒体単独の床を位置させる。
【0085】
特に、触媒固定床で用いる成形された触媒体が担持されていない触媒環または被覆された触媒環(特に本資料に好適であるとして挙げた触媒環)の時に前記が当てはまる。上述した構造にする目的で、本発明に従う方法では、前記成形された触媒体またはこれらの担体環と成形された希釈体の両方に実質的に持たせる環形状を有利には5mmx3mmx2mm(外径x長さx内径)にする。
【0086】
また、成形された希釈用の不活性体の代わりに活性組成物の含有量が成形かつ被覆された触媒体の活性組成物含有量に比べて2から15重量%低い成形かつ被覆された触媒体を触媒固定床の末端部で用いる時にも前記が当てはまる。
【0087】
反応ガス混合物が流れる方向において触媒固定床の最初の一般に約1または5から20%(触媒固定床の全長を基準)の長さに渡って純粋に不活性な材料の床を存在させる。それを通常は反応ガス混合物を加熱するためのゾーンとして用いる。
【0088】
前記管束反応槽の中の触媒用管は典型的にフェライト鋼製であり、それの壁厚は典型的に1から3mmである。それらの内径は一般に(均一に)20から30mm、しばしば21から26mmである。前記管束反応槽の中に入れる触媒用管の数を少なくとも5000、好適には少なくとも10000にするのが活用の観点から適切である。前記反応槽に入れる触媒用管の数をしばしば15000から30000にする。触媒用管の数が40000を超える管束反応槽は一般に例外的である。そのような触媒用管を槽内に通常はそれらが均一に分布するように配置するが、そのような分布を適切には直ぐ隣りに位置する触媒用管の中心中軸の分離(触媒用管ピッチとして知られる)が35から45mmになるように選択する(例えばEP−B 468290を参照)。
【0089】
本発明に従う方法では、反応用ガス混合物が触媒固定床(ここでは、純粋に不活性な部分を排除)上で示す1時間当たりの空間速度を典型的には1000から10000Nl/l・時、通常は1000から5000Nl/l・時、しばしば1500から4000Nl/l・時にする。
【0090】
本発明に従う方法を実施する時、新鮮な触媒固定床に条件付けを受けさせた後、通常は、出発反応ガス混合物の組成を決定しかつその出発反応ガス混合物が触媒固定床上で示す1時間当たりの空間速度を決定した後に触媒固定床の温度(または加熱用媒体が管束反応槽の加熱ゾーンの中に入る流入温度)を前記反応ガス混合物を前記触媒固定床の中に1回通した時のプロペンの変換率CPROが少なくとも90モル%になるように調節するような様式で稼働を実施する。好適な触媒を用いた時のCPRO値は≧92モル%、または≧93モル%、または≧94モル%、または≧96モル%であり、しばしば、また、それより高い値も可能である。
【0091】
プロペンからアクロレインが生じそしてある場合にはまたアクリル酸も生じる不均一系触媒による部分酸化を連続的に実施する時、前記出発反応ガス混合物の組成およびこの出発反応ガス混合物が触媒固定床上で示す1時間当たりの空間速度を実質的に一定に保持する(必要ならば1時間当たりの空間速度を流動的な市場の要求に適合させる)。そのような生産条件下では触媒固定床の活性が経時的に低下するが、それに対抗する目的で、通常は、前記反応ガス混合物を1回通した時のプロペン変換率が所望の目標範囲内に保持されるように(即ちCPROが≧90モル%、または≧92モル%、または≧93モル%、または≧94モル%、または≧96モル%になるように)前記触媒固定床の温度(加熱用媒体が管束反応槽の温度ゾーンの中に入る流入温度)を時々高くする(通常は同様に加熱用媒体の流量を実質的に一定に保持する)ことが行われる。しかしながら、そのような手順を用いるとそれに付随して本資料の冒頭に記述した欠点が生じる。
【0092】
従って、本発明に従う手順は、有利に、分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入する目的で前記気相部分酸化を少なくとも1暦年毎に1回中断する手順である。その後、工程条件を実質的に維持しながら部分酸化を継続し(プロペンの1時間当たりの空間速度を遅くして例えばDE−A 10337788に記述されている如き値に戻すのが好適である)そして触媒固定床の温度をプロペンの変換率が所望の目標値を達成するように調整する。変換率を同じにした場合のそのような温度値は一般に部分酸化を中断しそしてガス混合物Gを用いた本発明の処理を受けさせる前の触媒固定床の温度よりいくらか低い値であろう。そのような触媒固定床の温度値から出発して、残りの条件を実質的に保持しながら部分酸化を継続し、そして触媒固定床の活性が経時的に降下した時には、同様に、前記触媒固定床の温度を時々高くすることでそれに適切に対抗する。本発明に従い、ガス混合物Gを本発明の様式で触媒固定床の中に導く目的で部分酸化を中断する回数も同様に1暦年内に少なくとも1回である。その後、部分酸化を有利には本発明に従って記述したように再び始動させる、等々。
【0093】
プロペンからアクロレインが生じかつある場合にはアクリル酸が生じる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を本発明に従う方法で実施するとホットスポットエクスパンションの度合が従来技術の方法に比べてより好ましい機能を示すことは驚くべきことである。従って、本発明に従う方法を用いると、一方では、反応槽内の触媒固定床の部分的または完全な交換を行う必要性が生じるまでの稼働時間がより長くなり得る。他方、経時的に達成される統合的プロペン変換率もまた高くなり、かつ目標生成物の生成選択率も同様に助長される。それに貢献する1つの要因は、本発明に従う方法ではホットスポットの場所が反応ガス混合物が触媒固定床の中に入る入り口点の方向において固定状態のままか或は通常は移行することによる。そのように、反応ガス混合物が示すホットスポットは次第にアクロレイン含有量がまだあまり顕著ではない領域に移行する。それによって、ある程度ではあるが、既に生じたアクロレインがホットスポット温度の影響下で望まれない完全な燃焼を起こす可能性が低下する。本発明に従う方法における管束反応槽内のホットスポット温度の測定は、例えばEP−A 873 783、WO 03−076373およびEP−A 1 270 065に記述されているような熱管を用いることなどで実施可能である。そのような熱管を1個の管束反応槽の中に入れる数は適切には4から20である。それらを有利にはそれらが管束内に均一に分布するように配置する。
【0094】
本発明に従う方法における触媒固定床の温度上昇を、しばしば、前記反応混合物を触媒床の中に1回通した時のプロペン変換率が90モル%以上、または92モル%以上、または93モル%以上、または94モル%以上、または96モル%以上、または97モル%以上になるような様式で実施する。言い換えれば、触媒固定床の温度を通常は部分酸化稼働時間が達成する時間が7500時間または7000時間になるまでに、通常は6000時間になるまでに、多くの場合、5000または4000時間になるまでに少なくとも1回上昇させる。
【0095】
最後に、特に好ましい触媒(例えば本資料で推奨する触媒)を用いた本発明に従う方法では触媒固定床の温度の経時的上昇を好適には生成物ガス混合物中のプロペン含有量の値が10000ppm重量以下、好適には6000ppm重量以下、より好適には4000または2000ppm重量以下になるように実施する(通常は実質的に連続的に)ことを強調すべきであろう。加えて、生成物ガス混合物中の残存酸素が一般に少なくとも1体積%、好適には少なくとも2体積%、より好適には少なくとも3体積%になるようにすべきである。
【0096】
本発明に従う方法を触媒固定床上のプロペンの1時間当たりの空間速度が≧120Nl/l・時、または≧130Nl/l・時、または≧140Nl/l・時になるように実施するのが特に有利である。最後に、本発明に従う方法はイソブテン、t−ブタノールのメチルエーテルおよび/またはt−ブタノールからメタアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働でも相当する様式で用いるに適することを強調すべきであろう(特に同じ触媒系を用いた時、しかしながら、WO 03/039744に示されている工程条件および触媒系もまた有用である)。一般に、新しく仕込む触媒床の構造配置を、EP−A 990636およびEP−A 1106598に記述されているように、ホットスポットの発生およびそれの温度感受性の両方が非常に低くなるような構造配置にする。その上、最初の始動時の場合および本発明に従う方法を実施した後の再開時の場合の両方とも定常状態の稼働が達成されるまでは触媒固定床上でプロペンが示す1時間当たりの空間速度が有利に≦100Nl/l・時の値のままであるように実施する。
【0097】
実施例
A)使用する触媒の調製
下記の化学量:
[Bi・2WO0.5[Mo12Co5.5Fe2.94Si1.590.06
を有する活性多金属酸化物IIの担持されていない環状触媒の調製
【0098】
1. 出発組成物1の調製
硝酸ビスマスを硝酸に入れることで生じさせた水溶液(775kg、Biが11.2重量%で遊離硝酸が3から5重量%で質量密度が1.22から1.27g/ml)を25℃で撹拌しながらこれに209.3kgのタングステン酸(Wが72.94重量%)を分割して入れた。次に、その結果として得た水性混合物を25℃で更に2時間撹拌した後、噴霧乾燥を実施した。
【0099】
噴霧乾燥を向流の回転式ディスクスプレータワー内で気体流入温度が300±10℃で気体流出温度が100±10℃になるように実施した。その噴霧の結果として得た粉末(粒径が30μmで実質的に均一)が示した強熱減量(600℃の空気下で3時間強熱)は12重量%であり、それを次に混練り機で水を16.8重量%(前記粉末を基準)用いてペーストに変え、そして押出し加工機(回転モーメント:≦50Nm)で押出し加工して直径が6mmの押出し加工品を生じさせた。これらを6cmの断片に切断し、3ゾーンのベルトドライヤーを用いて温度が90−95℃(ゾーン1)、125℃(ゾーン2)および125℃(ゾーン3)の空気下で滞留時間を120分にして乾燥させた後、それらに熱処理を780から810℃の範囲の温度で受けさせた[焼成を回転式管型オーブン内でそれに空気(容量1.54m、1時間当たり200m(標準状態)の空気)を流し込ませながら受けさせた]。その焼成の温度を正確に調節しようとする時には焼成製品に望まれる相組成の方向に向かうようにすることが必須である。所望の相はWO(単斜晶)およびBiであり、γ−BiWO(ラセライト)の存在は望ましくない。従って、焼成後のx線粉末回折図の中の反射角2θ=28.4゜(CuKa放射)の所の反射で化合物γ−BiWOがまだ検出される場合には調製を繰り返し、そして焼成温度を指定温度範囲内で高くするか或は焼成温度を一定にして滞留時間を長くすることで最終的に前記反射の消失を達成する。そのようにして得た前以て成形しておいた焼成混合酸化物に粉砕を結果としてもたらされる粒径のX50値[Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版(1998)Electronic Relsase、3.1.4章またはDIN 66141を参照]が5mmになるように受けさせた。次に、その粉砕を受けさせた材料を1重量%(前記粉砕を受けさせた材料を基準)の量の微細SiO[DegussaのSipernat(商標)タイプ(かさ密度:150g/l;SiO粒子が示したX50値は10μmであり、BET表面積は100m/gであった]と一緒に混合した。
【0100】
2. 出発組成物2の調製
600 lの水を60℃で撹拌しながらこれに213kgの七モリブデン酸アンモニウム四水和物(MoOが81.5重量%)を溶解させそしてその結果として生じた溶液を60℃に維持しつつ撹拌しながら0.97kgの水酸化カリウム水溶液(KOHが46.8重量%)(20℃)と混合することで溶液Aの調製を実施した。
【0101】
262.9kgの硝酸コバルト(II)水溶液(Coが12.4重量%)に60℃で116.25kgの硝酸鉄(III)水溶液(Feが14.2重量%)を導入することで溶液Bの調製を実施した。その後、溶液Bを60℃に維持しながら最初に仕込んでおいた溶液Aの中に30分かけて連続的にポンプ輸送した。その後、その混合物を60℃で15分間撹拌した。次に、その結果として得た水性混合物にDupontのLudoxシリカゲル(SiOが46.80重量%、密度:1.36から1.42g/ml、pH:8.5から9.5、最大アルカリ含有量:0.5重量%)を19.16kg加えた後、その混合物を60℃で更に15分間撹拌した。
【0102】
その後、前記混合物に噴霧乾燥を向流の回転式ディスクスプレータワー(気体流入温度:400±10℃、気体流出温度:140±5℃)内で受けさせた。その噴霧の結果として得た粉末が示した強熱減量(600℃の空気下で3時間強熱)は約30重量%であり、かつ粒径は30μmで実質的に均一であった。
【0103】
3. 多金属酸化物活性組成物IIの調製
刃付き頭部が備わっている混合装置の中で前記出発組成物1と出発組成物2を下記の化学量:
[Bi・2WO0.5[Mo12Co5.5Fe2.94Si1.590.08
の多金属酸化物活性組成物が生じるに要する量で均一に混合した。Timcal AG(サンアントニオ、米国)のTIMREX P44タイプの微細グラファイト(ふるい分析:最低50重量%が<24mm、最高10重量%が≧24μmから≦48μm、最高5重量%が>48μm、BET表面積:6から13m/g)を上述した全体的組成を基にして追加的に1重量%の量で入れて均一に混合した。次に、その結果として得た混合物を凹型溝付きの滑らかなロールが備わっているK200/100圧縮装置タイプの圧縮装置(Hosokawa Bepex GmbH、D−74211 Leingarten)の中に運んだ(溝幅:2.8mm、ふるい幅:1.0mm、下方の粒径ふるい幅:400μm、目標圧縮力:60kN、スクリュー回転速度:1分当たり65から70回転)。その結果として得た圧縮品の硬度は10Nであり、粒径は400μmから1mmであり、実質的に均一であった。
【0104】
次に、前記圧縮品をこれの重量を基準にして更に2重量%の同じグラファイトと一緒に混合した後、KilianのRx73タイプのKilian回転式製錠用プレスであるD−50735 Cologneを用いて窒素雰囲気下で圧縮することで、5mmx3mmx2mm(外径x長さx内径)の形状を有していて側面破砕強度が19N±3Nの環形状触媒前駆体(担持されていない)を得た。
【0105】
本資料における側面破砕強度は、担持されていない環形状の触媒前駆体を円柱面に対して直角(即ち環開口面に対して平行)に圧縮した時の破砕強度を指す。
【0106】
本資料に示す側面破砕強度は全部Zwick GmbH & Co.のZ2.5/TS1Sタイプの材料試験機(D−89079 Ulm)を用いた測定に関する。前記材料試験機は単一推進力、固定式、動的または可変プロファイルの準静的応力に適するように考案されている。それは引張り、圧縮および曲げ試験に適する。A.S.T.(D−01307 Dresden)の製造番号が03−2038のKAF−TCタイプの取り付けられている力変換器に較正をDIN EN ISO 7500−1に従って受けさせた後、1−500Nの測定範囲に渡って使用可能であった(相対的測定不確定要素:±0.2%)。
【0107】
下記のパラメーターを用いて測定を実施した:
初期力:0.5N
初期力速度:10mm/分
試験速度:1.6mm/分
最初に上方のダイスを前記担持されていない環形状の触媒前駆体の円柱表面の直ぐ上に到達するまでゆっくり下げた。次に、その上方のダイスを停止させた後、更に降下させるに必要な最小限の初期力で明確により遅い試験速度で下げた。
【0108】
担持されていない成形された触媒前駆体が亀裂形成を示す時の初期力が側面破砕強度(SCS)である。
【0109】
最終的な熱処理では、担持されていない成形された触媒前駆体を各場合とも1000g用いて、それをマッフル炉の中に入れて、その中に空気(容量60 l、担持されていない成形された触媒前駆体1g当たり1 lの空気/時)を流しながら最初は180℃/時の加熱速度で室温(25℃)から190℃になるまで加熱した。その温度を1時間保持した後、60℃/時の加熱速度で210℃にまで上昇させた。今度は210℃の温度を1時間保持した後、60℃/時の加熱速度で230℃にまで上昇させた。その温度を同様に1時間保持した後、再び60℃/時の加熱速度で265℃にまで上昇させた。その後、265℃の温度を同様に1時間保持した。その後、前記炉を最初に室温になるまで冷却し、このようにして分解段階を実質的に完了した。次に、前記炉を180℃/時の加熱速度で465℃にまで加熱した後、この焼成温度を4時間保持した。
【0110】
前記担持されていない成形された環形状の触媒前駆体から担持されていない環状触媒を得た。
【0111】
その結果として得た担持されていない環状触媒が示した比表面積S、全細孔容積V、孔径dmax(これが全細孔容積に最も貢献する)および全細孔容積の中の直径が>0.1から≦1μmの孔径のパーセントは下記の通りであった:
S=7.6cm/g
V=0.27cm/g
max[μm]=0.6
0.11−%=79
加えて、真の質量密度ρに対する見かけ質量密度の比率R(EP−A 1340538に定義されているように)は0.66であった。
【0112】
産業規模では、同じ環状触媒の調製をDE−A 10046957の実施例1に記述されているようなベルト式焼成装置[床の高さを分解時(チャンバ1から4)には有利にチャンバ1個当たりの滞留時間が1.46時間になるように44mmにしそして焼成時(チャンバ5から8)には有利に滞留時間が4.67時間になるように130mmにした以外は]を用いた熱処理で実施し、前記チャンバの表面積(チャンバの長さを均一に1.40mにして)を1.29m(分解)および1.40m(焼成)にし、そして回転式排気装置で吸引させた供給空気を粗いメッシュのベルトに通して下方から75m(標準状態)/時で流し込んだ。前記チャンバ内の温度が目標値からの一時的および局所的に変動する度合を常に≦2℃にした。それ以外の手順はDE−A 10046957の実施例1に記述されている通りであった。
【0113】
B)部分酸化の実施
I. 一般的工程条件の説明
使用した熱交換用媒体:硝酸カリウムが60重量%で亜硝酸ナトリウムが40重量%の塩溶融物
触媒用管の材料:フェライト鋼
触媒用管の寸法:
長さ:3200mm;
内径:25mm;
外径:30mm(壁厚:2.5mm)
管束の中の触媒用管の数:25500
反応槽:
直径が6800mmの円筒形槽;中心に自由空間部を有するように環状に配置した管束
中心の自由空間部の直径:1000mm。最も外側の触媒用管から槽壁までの距離:150mm。管束の中に触媒用管が均一に分布(触媒用管1個当たりに等距離に隣接して位置する管の数:6)
触媒用管のピッチ:38mm
末端部が厚み125mmの触媒用管用の板で密封されそして開口部各々の上方または下方末端部が前記槽につながっているフードの中に開放されるように触媒用管を固定。
熱交換用媒体を前記管束に供給:
等距離に位置する4つの(各々730mm)縦方向部分(ゾーン)の中に向かって縦方向に前記触媒用管用の板と板の間に連続的に取り付けた3枚の偏向板(各々の厚みが10mm)で前記管束を分割した。
【0114】
最も上方の偏向板と最も下方の偏向板の形状を環状にし、その環の内径を1000mmにしそして環の外径をそれが槽壁に対して密封されるような大きさにした。前記触媒用管が前記偏向板に対して固定されることも密封されることもないようにした。むしろ、前記塩溶融物の横方向の流量が1ゾーン内で実質的に一定であるように隙間幅が<0.5mmの隙間が残るようにした。
【0115】
中央の偏向板を円形にしそしてそれが管束の中の最も外側の触媒用管にまで伸びるようにした。
【0116】
2個の塩用ポンプを用いてこれらの各々で塩溶融物を管束の縦方向半分の各々に供給することでそれの再循環をもたらした。
【0117】
ポンプを用いて前記塩溶融物を圧縮して反応槽のジャケットを取り巻くように下部に配置した環状通路の中に入らせそして前記塩溶融物が槽の周囲全体に渡って分割されるようにした。前記塩溶融物は反応槽ジャケットの中の窓を通って最も下方に位置する縦方向部分の管束に到達する。次に、その塩溶融物は前記偏向板で導かれるように下部から上部に向かって槽の上方から見て実質的に蛇行様式で下記の順で流れた:
− 外側から内側、
− 内側から外側、
− 外側から内側、
− 内側から外側。
塩溶融物を反応槽の周囲の最も上方の縦方向部分の中に取り付けた窓に通して反応槽のジャケットの回りに上部に取り付けた環状通路の中に集め、それを元々の流入温度になるまで冷却した後、それをポンプで圧縮して下方の環状通路の中に戻した。
【0118】
出発反応ガス混合物(空気、化学品質のプロピレンおよびサイクルガスの混合物)の組成は稼働時間の間下記の枠内であった:
化学品質のプロペンが5から7体積%、
酸素が10から14体積%、
COが1から2体積%、
Oが1から3重量%、および
が少なくとも80体積%。
反応槽への仕込み:
塩溶融物と反応ガス混合物を反応槽の上から見て向流で導いた。前記塩溶融物を下部から入らせ、前記反応ガス混合物を上部から入らせた。
前記塩溶融物の流入温度を開始時に337℃にした(触媒固定床の条件付けが終了した時点)。
それに関連した開始時の塩溶融物の流出温度は339℃であった。
ポンプの出力を塩溶融物が1時間当たり6200mであるようにした。
出発反応ガス混合物を300℃の温度で前記反応槽に供給した。
触媒固定床へのプロペンの導入:90から120Nl/l・時
触媒固定床を用いた時の触媒用管の仕込み(上部から下部):
ゾーンA:50cm
形状が7mmx7mmx4mm(外径x長さx内径)のステアタイト製環の予備的床
ゾーンB:100cm
形状が5mmx3mmx2mm(外径x長さx内径)のステアタイト製環が30重量%で担持されていない調製した環状触媒が70重量%の均一な混合物を用いた触媒仕込み物
ゾーンC:170cm
担持されていない調製した環状触媒[5mmx3mmx2mm=外径x長さx内径]を用いた触媒仕込み物
熱管(数は10であり、これらを前記管束の中心領域の中に均一に分布させた)の構造配置および仕込みは下記の通りであった(これらを用いてホットスポット温度を測定し、これは、10個の熱管を用いた個別の測定値の数学的平均である)。
【0119】
前記10個の熱管の各々に40個の温度測定点数を有する中心のサーモウエルを持たせた(即ち、熱管の各々に40個の熱電素子を含有させて、それらをいろいろな長さで一体化させてサーモウエルにすることで多熱電素子を形成させ、それを用いて、熱管内のいろいろな高さの所の温度を同時に測定できるようにした)。
【0120】
各場合とも40個の温度測定点の中の少なくとも13個および多くて30個を触媒固定床の活性部分の最初の1m(反応ガス混合物が流れる方向に)の領域の中に置いた。
【0121】
前記熱管の内径は27mmであった。その壁厚および管の材料を実用管の場合と同じにした。
【0122】
前記サーモウエルの外径を4mmにした。
【0123】
調製した担持されていない環状触媒を熱管に仕込んだ。加えて、担持されていない環状触媒から生じた最長寸法が0.5から5mmの触媒破片も前記熱管の中に仕込んだ。
【0124】
前記反応ガス混合物が前記熱管の中を通る時の圧力降下が前記反応ガス混合物を実用管の中に通した時のそれに相当するような様式で前記触媒破片をこれらが前記個々の熱管の触媒固定床の活性部分全体に渡って均一に分布するように仕込んだ[この目的で、前記熱管の中の触媒固定床の中の活性部分(即ち不活性部分を排除)を基準にした必要な触媒破片の量は5から20重量%であった]。それと同時に、実用管および熱管の中の活性部分と不活性部分の個々の全充填高も同じにし、かつ管の熱交換表面積に対する管内に存在する活性組成物の総量の比率も実用管と熱管で実質的に同じ値になるように設定した。
【0125】
II. 長期稼働(結果)
プロペンを前記反応ガス混合物を前記触媒固定床の中に1回通した時に起こる変換の目標変換率を97.5モル%に設定した。
【0126】
本方法を連続的に実施する時に前記塩溶融物の流入温度を連続的に高くしていくと前記変換値を経時的に維持することができた。
【0127】
部分酸化を1暦月毎に1回中断し、最後に用いた塩溶融物の流入温度を保持し、そしてO含有量が6体積%でN含有量が95体積%のガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床上の1時間当たりの空間速度が30Nl/l・時になるように24時間から48時間の時間tの間導いた。
【0128】
前記塩溶融物の流入温度およびホットスポット温度およびまたアクロレインの生成と副生成物であるアクリル酸の生成の選択率SAC+AAは下記のようにであった[温度のデータ(開始時とは別)は全てのケースで各場合とも部分酸化を中断して触媒固定床をガス混合物Gで処理する直前の時間に関係している]:
開始時:
塩溶融物の流入温度=318℃
ホットスポット温度=368℃
AC+AA=94.6モル%
稼働時間1年後:
塩溶融物の流入温度=322℃
ホットスポット温度=371℃
AC+AA=94.8モル%
稼働時間2年後:
塩溶融物の流入温度=326℃
ホットスポット温度=373℃
AC+AA=95.0モル%
稼働時間3年後:
塩溶融物の流入温度=332℃
ホットスポット温度=377℃
AC+AA=95.4モル%
稼働時間4年後:
塩溶融物の流入温度=339℃
ホットスポット温度=379℃
AC+AA=95.6モル%
稼働時間5年後:
塩溶融物の流入温度=345℃
ホットスポット温度=385℃
AC+AA=95.6モル%
2003年の10月29日付けで出願した米国仮特許出願番号60/515,114は文献を引用することによって本出願に組み入れられる。
【0129】
上述した教示を参照することで本発明のいろいろな変形および本発明からの逸脱が可能になる。従って、添付請求項の範囲内ならば本発明を本明細書に具体的に記述した方法とは別の方法で実施してもよいと考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペン、分子酸素および少なくとも1種の希釈用不活性ガスを含んで成る出発反応ガス混合物を、活性組成物がモリブデンおよび/またはタングステン元素の中の少なくとも1種およびまたビスマス、テルル、アンチモン、スズおよび銅元素の中の少なくとも1種も含有する少なくとも1種の多金属酸化物である状態の触媒の高められた温度にある触媒固定床の中に導き、そして前記触媒固定床の失活に対抗するべく前記触媒固定床の温度を経時的に高くすることによってプロペンからアクロレインを生じさせる不均一系触媒による気相部分酸化の長期稼働を行う方法であって、前記気相部分酸化を少なくとも1暦年毎に1回中断し、そして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記気相部分酸化を少なくとも3暦月毎に1回中断しそして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記気相部分酸化を少なくとも1暦月毎に1回中断し、そして分子酸素、不活性ガスおよび場合により水蒸気で構成させたガス混合物Gを前記触媒固定床の中に前記触媒固定床の温度を250から550℃にして導入する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ガス混合物Gを前記触媒固定床の中に導く時間が2時間から120時間である、請求項1から3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記触媒固定床の中に導く前記ガス混合物Gの酸素含有量を少なくとも4体積%にする、請求項1から4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
管束反応槽内で実施する、請求項1から5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
前記触媒の活性組成物がMo、BiおよびFeを含有する多金属酸化物である請求項1から6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
前記触媒の活性組成物が一般式I
Mo12BiFe (I)
[式中、前記変数の各々の定義は下記の通りである:
=ニッケルおよび/またはコバルト、
=タリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、
=亜鉛、リン、ヒ素、ホウ素、アンチモン、スズ、セリウム、鉛および/またはタングステン、
=ケイ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウム、
a=0.5から5、
b=0.01から5、好適には2から4、
c=0から10、好適には3から10、
d=0から2、好適には0.02から2、
e=0から8、好適には0から5、
f=0から10、および
n=Iの中の酸素以外の元素の原子価および頻度で決まる数]で表される少なくとも1種の多金属酸化物である、請求項1から7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
前記触媒固定床上のプロペンの1時間当たりの空間速度が≧90Nl/l・時である、請求項1から8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
前記触媒固定床上のプロペンの1時間当たりの空間速度が≧130Nl/l・時である、請求項1から8のいずれか記載の方法。
【請求項11】
前記触媒固定床の温度を経時的に上昇させることを前記反応ガス混合物を前記触媒固定床の中に1回通した時のプロペンの変換率が93モル%以上になるように実施する、請求項1から10のいずれか記載の方法。
【請求項12】
前記触媒固定床の温度を経時的に上昇させることを生成物ガス混合物の中のプロペン含有量が10000ppm重量以下になるように実施する、請求項1から10のいずれか記載の方法。
【請求項13】
前記出発反応ガス混合物のプロペン含有量が7から15体積%である、請求項1から12のいずれか記載の方法。

【公表番号】特表2007−509867(P2007−509867A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537118(P2006−537118)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011638
【国際公開番号】WO2005/047224
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】