説明

プロポフォールを含む水性麻酔剤組成物

本発明は、注射時の痛みの発生が低減した、非経口投与に適したオートクレーブ滅菌した安定な水性麻酔剤プロポフォール組成物を開示する。前記組成物は、プロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び局所麻酔剤、リグノカインを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非経口投与に適した水性麻酔剤組成物に関する。特に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(以下、HPBCDという)と複合体を形成したプロポフォールの水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポフォールは、麻酔の誘導と維持だけでなく鎮静にも用いられる静脈内麻酔剤である。それは、麻酔の速やかな誘導と麻酔からの速やかな回復をもたらす望ましい性質を有する。
好ましい麻酔剤であるにもかかわらず、プロポフォールの水不溶性には重大な問題点がある。最初に、それは可溶化剤としてポリエトキシル化ヒマシ油を含有する水溶液として配合されたが、このことは一部の患者においてアナフィラキシー様反応のために許容し得ないことがわかった。続いて、プロポフォールは、大豆油と精製卵ホスファチドの混合物を用いた水中油型エマルジョンとして再配合された。しかしながら、これらの脂質ベースのエマルジョンは、なおいくつかの制限を持った。特に、著しい数の患者において注射時に、特に小静脈に注射した場合に、その製剤は痛みを引き起こす。該エマルジョンは、また、微生物増殖を特に受けやすく、抗菌防腐剤が用いられる場合でさえ厳しい無菌技術が維持されなければならない。該エマルジョンは、また、物理的安定性が不十分であり、塞栓症が可能であり、脂肪負荷が増大する。
これらの問題点、特に注射時に痛みを引き起こすプロポフォールエマルジョンの傾向により、水性プロポフォール製剤を改善する多くの試みがなされた。水相におけるプロポフォールの存在が注射時の痛みの原因であると考えられる。それ故、プロポフォールの多くをエマルジョンの非水相へ移行させるように、用いられる製剤の薬物動態及び薬力学を変える多くの試みがなされた。
注射時の知覚された痛みを低減させるように局所麻酔剤をエマルジョンに添加する可能性も研究された。しかしながら、局所麻酔剤又は他の電解液の添加は、水中油型エマルジョンを不安定にし、油相の凝集や凝結が生じることがわかった。このように、水中油型プロポフォールエマルジョンと局所麻酔剤を含有する予め混合された製剤は医薬的に許容され得ないことがわかった。それ故、必要とみなされる場合、局所麻酔剤の個別注射による領域の前処理が現在好ましい。
水中油型エマルジョンを用いることに代わるものとして、プロポフォールを可溶化するためにシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を用いる可能性がいくつかの実験によって研究された。シクロデキストリンは、親水性外面と疎水性内面を有し、且つ封入複合体形成によってプロポフォールのような疎水性化合物を可溶化するために作用する6〜8個のグルコピラノース単位を含む環状化合物である。一般的に言って、注射時にシクロデキストリンが複合体形成疎水性化合物から血流へ解離する傾向だけでなく、シクロデキストリンが好ましくは細胞膜成分と相互作用する傾向のために、シクロデキストリン誘導体が好ましい。
【0003】
シクロデキストリン誘導体の一つは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。G. Trapene at al (J Pharm. Science, 1998, 84(4) (514〜518))には、HPBCD:プロポフォールの生理化学的性質と麻酔特性が述べられ、安定な水溶液が、1:1モル比のHPBCD:プロポフォールで達成され得ることが示されている。国際出願公開第96/32135号にもプロポフォール: 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体の使用が開示され、プロポフォールとHPBCDとのモル比1:1.5〜1:2.5が安定なプロポフォール水溶液を得ることが示された。
インド特許第187686号に記載されるように、約1:30〜約1:60のプロポフォールとHPBCDとの比の使用により水性プロポフォール製剤が得られ、これはオートクレーブ処理時に安定なままであり、この明細書の内容は本願明細書に含まれるものとする。しかしながら、これにはこの組成物における痛みの低減は示されていない。
他のシクロデキストリン誘導体は、スルホブチルエーテルシクロデキストリン(以下、SBECDという)である。国際出願公開第02/074200号には、プロポフォールを可溶化するためのSBECDの使用が述べられている。それは、SBECD:プロポフォール溶液と混合される局所麻酔剤のリストも挙げられているが、提唱されるものの一部(例えば、ベンゾカイン、テトラカイン)が静脈内に注入される場合には、全身毒性が生じる点で驚くべきことである。
しかしながら、SBECDを含有する製品が市販されていないように、SBECDの臨床使用はまだ安全に確立されてない。
従って、簡単な一回限りの投与を容易にするプロポフォールと痛みを低減する安全な局所麻酔剤との安定な単一注射用組成物を有することが長年にわたって求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、プロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び安全な局所麻酔剤を含む非経口投与に適した安定な水性麻酔剤組成物を提供することである。
本発明の目的のさらなる側面は、プロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)、及び安全な局所麻酔剤を含む、非経口投与に適した水性麻酔剤組成物を製造するのに適した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び局所麻酔剤リグノカイン又はその酸との塩を含む非経口投与に適した水性麻酔剤組成物を提供する。
非経口投与に適した水性麻酔剤組成物を製造する方法であって、緩衝剤、及び/又は塩酸、又はリン酸のような酸、及び/又は水酸化ナトリウムのようなアルカリを用いてpH 4 - 7のプロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び局所麻酔剤リグノカイン又はその酸との塩の水溶液を形成することを含む、前記方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
現在、プロポフォール注射とリグノカイン注射は、別個に利用可能である。それらは、投与直前に混合される。既存のエマルジョン製品は、リグノカインと混合後に保持する際に不安定であるので。本発明は、ここで、初めてプロポフォールを局所麻酔剤、リグノカインと共に投与してプロポフォールの注射時に痛みを低減させる単回注射を与える。
局所麻酔剤は、神経細胞膜を通過して浸透するとともにナトリウムイオンポンプの細胞内側面と可逆的に錯体を形成し、それによってナトリウムイオンに対する神経細胞の浸透性を低下させ、従って、神経刺激の透過を阻止することによって感覚神経刺激の伝導を阻止する。局所麻酔剤の化学構造は、3つの基、化合物が神経細胞膜通過して浸透することを可能にする親油性基(通常、ベンゼン環を含む)、中間鎖(通常、エステル又はアミドの結合を含む)、及び麻酔剤が神経細胞の内外の水性環境において可溶化されることを可能にするイオン化性基(通常、第三級アミン)を含む。
局所麻酔剤は、その塩基の形で用いることができる。それをフェノール性(即ち、酸性)プロポフォールと反応させることができ、それ故、酸性pHは、このような反応を防止するとともに痛みを低減させるために塩基を遊離の形に保持するのに有効である。リグノカイン塩基は、水溶液として又は酸性溶液として又はその水溶性塩として用いることができる。炭酸を含む塩基の溶液として用いることもできる。一般的には、局所麻酔剤、リグノカインをその塩酸塩の形で使用することが好ましい。
この考えによって、ここで、我々は、プロポフォール、HPBCD及びリグノカイン又はその酸との塩が酸性pHにおいて安定な水性組成物を与えるように製造され得ることを見出した。酸性pHは、さらに、組成物の長期投与の間、微生物増殖を制御するのを援助する。
組成物のpHは、好ましくは7未満、より好ましくは4 - 7の範囲、最も好ましくは範囲4.5〜6.5である。
組成物は、さらに、酸性化剤及び/又はアルカリ化剤及び/又は抗酸化剤及び/又は緩衝剤を含む。
抗酸化剤は、EDTA又はその塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、又はアスコルビン酸より選ばれる。好ましくは、抗酸化剤はエデト酸二ナトリウムである。
【0007】
本発明の組成物は、医薬的に許容され得る酸性化剤及び/又はアルカリ化剤及び/又は溶液のpHを調整し安定化するための緩衝剤を含有することができる。酸性化剤は、無機酸及び/又は有機酸及び/又は無機塩及び/又は有機塩を含むことができる。アルカリ化剤としては、無機塩基及び/又は有機塩基及び/又は無機塩及び/又は有機塩が含まれてもよい。酸性化剤の例としては、塩酸、炭酸、リン酸、ヒスチジンHCl、グリシンHCl、クエン酸であるのがよいが、これらに限定されない。アルカリ化剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トロメタミン、ヒスチジンであるのがよいが、これらに限定されない。
緩衝剤の使用は、pHを維持するとともに組成物の安定性を高めるのを援助する。緩衝剤は、あらゆる医薬的に許容され得る緩衝系、例えば、一般に用いられる化合物、又は化合物の混合物のいずれかを含有するクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン又はグリシン緩衝液、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グリシン、ヒスチジン、ヒスチジンHCl、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムより選ばれるのがよい。
等張希釈剤は、医薬的に許容され得る希釈剤、例えば、デキストロース、塩化ナトリウム及びマンニトールより選ばれるのがよい。しかしながら、グリセロール又は他のポリオールは好ましくない。
理論によって縛られないが、我々は、ポリオール、例えば、低分子量のグリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールが、プロポフォールのための共存溶媒として作用し、水相中の遊離プロポフォールを増大させ且つ注射時の痛みを増大させると考える。それ故、このようなポリオールの使用は、これらの組成物には好ましくない。
組成物のプロポフォール:HPBCDの質量比は、好ましくは1:14 - 1:60である。プロポフォール:HPBCDの質量比は、より好ましくは1:14 - 1:30、最も好ましくは1:20 - 1:30である。
組成物は、さらに、抗酸化剤、緩衝剤、等張希釈剤又はそれらの組合わせを含む。
本発明における溶液のプロポフォール含量は、好ましくは1mg/ml - 20mg/ml、より好ましくは1mg/ml - 10mg/ml、最も好ましくは約10mg/mlである。
本発明の組成物に用いられる局所麻酔剤は、リグノカイン塩基及び/又はその酸との塩である。リグノカイン塩基として表される組成物におけるその含量は、0.5mg/ml - 1.5mg/mlである。より好ましくは、本発明の組成物におけるリグノカインの含量は、約1mg/mlである。
【0008】
ここで、我々は、1:14 - 1:60の比のプロポフォールとHPBCD及びpH 4 - 7の組成物のリグノカイン塩基0.5 - 1.5mg/mlとして表されるリグノカイン又はその酸性塩を含む本発明の水性組成物がオートクレーブ処理の際に安定であることを見出した。
本発明の組成物は、以下により製造される
1.*HPBCDを必要量の水に又は適切な緩衝液に溶解する。
2.*リグノカインをそれだけで又は保存溶液としてHPBCD溶液に添加し、撹拌することによって溶解し、必要とされる場合には、溶液のpHを酸性化剤/アルカリ化剤で4.5 - 7.0に調整する。
3.プロポフォールを添加し、窒素の覆いの下で撹拌することによって溶解する。
4.抗酸化剤、等張化剤のような医薬的に許容され得る添加剤をそれだけで又は保存溶液としてプロポフォール-リグノカイン-HPBCD溶液に添加し、撹拌することによって混合する。
5.次に、得られた溶液を必要とされた容積に希釈し、0.45及び/又は0.22μフィルタでろ過する。
6.次に、ろ過した溶液をガラス容器に充填し、容器のヘッドスペースを密封の前に窒素ガスでパージし、オートクレーブにかけることによって滅菌する。
*工程1、及び工程2は、以下の通り代替方法で行われてもよい:
代替方法として、プロポフォールとHPBCDとの複合体を形成した後に、リグノカインをそれだけで又は酸性pHの保存溶液として添加することができ又は
HPBCDの添加の前に、リグノカインを酸性pHの水へ添加することができる。
従って、一般的には、非経口投与に適した水性麻酔剤組成物を製造する方法は、緩衝剤、及び/又は塩酸又はリン酸のような酸、及び/又は水酸化ナトリウムのようなアルカリを用いてpH 4 - 7のプロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び局所麻酔剤リグノカイン又はその酸との塩の水溶液を形成することを含む。

【0009】
ここで、本発明を例によって具体的に説明する。例は、例示のためだけのものであり、決して本発明の範囲を限定しない。
例において用いられる材料と装置:
プロポフォールは、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.)規格にする、
インド薬局方(I.P.)規格に適合する塩酸リグノカイン(塩酸リドカイン)を用いる。
米国薬局方(USP)規格に適合するリグノカイン(リドカイン)を用いる。
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)、医薬品グレードは、M/s.Wacker Chemie製である。
例I:
0.1%リグノカイン(HClとして)を有する脂質を含まない1%プロポフォール
以下の組成物を以下の手順によって調製した:
成分
a) プロポフォール lg
b) 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 30g
c) リグノカイン塩基と当量のその塩酸塩 0.1g
d) エデト酸二ナトリウム 0.0059g
e) 注射用水 100m1にする量
手順:
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(30g)を、55mlの注射用水に溶解した。リグノカインHCl(0.1234g)を、HPBCD溶液に添加し、撹拌することによって溶解した。次に、プロポフォールをHPBCD溶液に撹拌しながら徐々に添加した。この溶液を中程度の速度で3時間撹拌してプロポフォールとHPBCDとの複合体形成を引き起こした。
水中のエデト酸二ナトリウム溶液を撹拌しながら上記の溶液に添加した。容積を水で100mlにした。得られた透明な溶液をO.2μフィルタでろ過し、窒素下でガラスバイアルに充填し、密封し、オートクレーブ処理した。
組成物は、pH 5.82を有した。
例II:
例Iの組成物の麻酔活性の臨床前評価。例Iの麻酔剤組成物を投与した後の誘導と回復の時間を、スイスアルビノマウスにおいて市販のプロポフォール水中油型エマルジョンと比較して評価した。
結果は、表1に示される通りである:
【0010】
表1

【0011】
結果から、例Iの組成物の導入と回復の時間がプロポフォール水中油型エマルジョンに匹敵し、二つの医薬的に異なる組成物が同様の薬物動態学的と薬力学的プロファイルを示したことがわかる。
例III: マウスにおける例Iの組成物の急性毒性
例Iで得られた組成物を、マウスにおいて急性毒性実験に供した。適切には、例Iの組成物を5%デキストロース注射液で希釈し、静脈内に投与した。プロポフォールを30mg/kg、35mg/kg及び40mg/kg体重の用量で、それぞれのグループが10匹の動物からなる、3つの異なるグループの動物に投与した。
動物を、14日間の観察下に保ち、3日目と7日目の終わりに死亡率を記録した。
異なる用量で見られる死亡率を表2に示す:
【0012】
表2

【0013】
例IV: 例Iの組成物の安定性実験
例Iで得られた組成物を、25℃で安定性実験に供した。安定性データを表3に示す:
【0014】
表3
貯蔵条件: 25℃

*全例の終わりに方法を示す。
【0015】
上記から25℃で保存される場合にいかなる分解も受けずに例Iで得られる組成物においてプロポフォールとリグノカイン(HClとして)が安定であることは明らかである。
例V: 0.1%リグノカイン(塩基として)を有する脂質を含まない1%プロポフォール
以下の組成物を以下の手順によって調製した:
成分
a) プロポフォール lg
b) 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 30g
c) リグノカイン塩基 0.1g
d) エデト酸二ナトリウム 0.005g
e) 塩酸(0.1N) 2.0ml
f) 注射用水 100m1にする量
手順:
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを、55mlの注射用水に溶解した。リグノカイン塩基を、HPBCD溶液に添加し、撹拌によって溶解した。次に、プロポフォールをHPBCD溶液に撹拌しながら徐々に添加した。この溶液を中程度の速度で3時間撹拌してプロポフォールとHPBCDとの複合体を形成させた。
エデト酸二ナトリウム溶液を上記の溶液に添加し、容積を水で100mlにした。得られた透明な溶液をO.2μフィルタでろ過し、窒素下でガラスバイアルに充填し、密封し、オートクレーブにかけた。
組成物は、pH 6.00を有した。
例Vの組成物の麻酔活性の臨床前評価。
例Vの麻酔剤組成物を投与した後の誘導と回復の時間を、スイスアルビノマウスにおいて市販のプロポフォール水中油型エマルジョンと比較して評価した。
結果を表4に示す:
【0016】
表4

【0017】
例Vの組成物の導入と回復の時間がプロポフォール水中油型エマルジョンに匹敵し、二つの医薬的に異なる組成物が同様の薬物動態学的と薬力学的プロファイルを示した。
例Vの組成物を、25℃で安定性実験に供した。3ヶ月の終わりのデータを表5に示す:
【0018】
表5

*全例の終わりに方法を示す。
【0019】
上記データから、例Vで得られた組成物におけるプロポフォールとリグノカイン(塩基として)が25℃で保存される場合にいかなる有意な分解も受けずに安定であることは明らかである。
本発明の他の組成物を表6、表7及び表8に示す。
【0020】
表6

【0021】
表7

【0022】
表8

【0023】
表6、表7及び表8に示される組成物を以下に示される手順によって調製した。
例VI: 表6に示された量で成分を用いて例Vの手順を行うことによって組成物を調製した。緩衝化塩やリン酸が存在する場合にはいつもリグノカインを添加する前にHPBCD溶液に水溶液として添加した。
例VIII、XI及びXIII: 表6と表7に示された量で成分を用いて例Vの手順を行うことによって組成物を調製した。
例VII、X及びXII: 表6と表7に示された量で成分を用いて例Iの手順を行うことによって組成物を調製した。
例IX: ろ過前の終わりにデキストロースを添加する例Iの手順を行うことによって組成物を調製した。
プロポフォール含量、分解産物及びリグノカイン含量の測定方法:
1. プロポフォールと分解産物の含量: プロポフォールと分解産物の含量をHPLCによって求めた。詳細は、以下の通りである:
カラム - Hypersil ODS
検出器 - 紫外吸光検出器
検出波長 - 270nm
移動相 - 60:15:25アセトニトリル:メタノール:10mMリン酸カリウム緩衝液
試料濃度 - 0.2mg/ml
流量 - 1ml/分
2.リグノカイン含量:
カラム - Hypersil ODS
検出器 - 紫外吸光検出器
検出波長 - 235nm
移動相 - 60:15:25アセトニトリル:メタノール:10mMリン酸カリウム緩衝液
試料濃度 - 0.02mg/ml
流量 - 1ml/分
本発明の利点:
本発明は、エマルジョン製剤の欠点を克服する透明な滅菌麻酔剤組成物を提供する。本発明の組成物は、多くの利点を有し、その一部は以下の通りである:
1.組成物は、注射時の痛みがより少ない。
2.組成物は、透明であり、投与前に目視で調べることができ、オンライン微生物フィルタを用いて投与することができる。
3.組成物は、リン脂質を含有しない。それ故、血漿リン脂質は、組成物の非経口投与に影響されない。
4.組成物は、トリグリセリドクリアランスのいかなる変化も生じない。
5.組成物は、投与前に一般に用いられる希釈剤のいずれかと混合することができる。
6.組成物の酸性pHは、長期投与の間、微生物増殖を制御するのを援助する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口投与に適した水性麻酔剤組成物であって、プロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び局所麻酔剤リグノカイン又はその酸との塩を含む、前記組成物。
【請求項2】
リグノカインの酸との塩が塩酸リグノカインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物のpHが7未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物がpH 4-7を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗酸化剤、緩衝剤、等張希釈剤又はそれらの組合わせをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
プロポフォールとHPBCDとの質量比が1:14 - l:60である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
プロポフォールとHPBCDとの質量比が1:14 - l:30である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
プロポフォールとHPBCDとの質量比が1:20 - l:30である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物のプロポフォール含量が1mg/ml - 20mg/mlである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物のプロポフォール含量が約l0mg/mlである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
リグノカイン塩基として表される組成物のリグノカイン又はその酸との塩の含量が0.5mg/ml - 1.5mg/mlである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
リグノカイン塩基として表される組成物のリグノカイン又はその酸との塩の含量が約1mg/mlである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
プロポフォールが約1gであり; 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが約30gであり; リグノカイン塩基と当量のその塩酸塩が約0.1gであり; エデト酸二ナトリウムが約0.006gであり; 注射用水が100mlにする量であり、pH 4 - 7を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
プロポフォールが約1gであり; 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが約30gであり; リグノカイン塩基が約0.1gであり; エデト酸二ナトリウムが約0.005gであり; 塩酸0.1Nが約2mlであり、注射用水が100mlにする量であり、pH 4 - 7を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項の1〜14のいずれか1項に記載の非経口投与に適した水性麻酔剤組成物を製造する方法であって、緩衝剤、及び/又は塩酸、又はリン酸のような酸、及び/又は水酸化ナトリウムのようなアルカリを用いてpH 4 - 7のプロポフォール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)及び局所麻酔剤リグノカイン又はその酸との塩の水溶液を形成することを含む、前記方法。
【請求項16】
本質的に本明細書において本文並びに例I及び例V〜XIIIに記載される水性麻酔剤組成物。
【請求項17】
本質的に本明細書において本文並びに例I及びV〜XIIIに記載される水性麻酔剤組成物を製造する方法。

【公表番号】特表2009−504634(P2009−504634A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525726(P2008−525726)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000299
【国際公開番号】WO2007/052295
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508037050)ブハラット セルムズ アンド ヴァクシンズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】