説明

プローブホルダ及び走査型プローブ顕微鏡

【課題】作業者の手を煩わすことなく簡単且つ短時間でプローブの交換を行うことができ、小型の走査型プローブ顕微鏡にも適用可能であること。
【解決手段】試料Sに対向配置され、レバー部2aの先端に探針2bを有すると共に該レバー部の基端側が本体部2cに片持ち状態に支持されたプローブ2を複数固定するものであって、試料表面S1に対向する対向面10aを有し、該対向面に複数のプローブを、本体部を介してそれぞれ着脱自在に固定する固定板10と、該固定板を移動可能に支持するホルダ本体11と、固定板を移動させると共に複数のプローブのうち選択したいずれかのプローブを観察ポジションPに位置させる可動手段12とを備えているプローブホルダ3を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブを固定するプローブホルダ及び該プローブホルダを有する走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)に代表されるSPM(Scanning Probe Microscope;走査型プローブ顕微鏡)では、試料に応じて最適なプローブを使用するため、プローブを適宜交換する必要がある。また、仮に同一種類の試料を観察する場合であっても、プローブは消耗品であるので、やはり適宜交換する必要がある。
【0003】
この交換作業は、通常作業者自らが手作業で行うことが多いが、作業に手間がかかることから、自動化等により作業者の手を介さずに行う方法が提案されている。
例えば、その1つとして、予め複数のプローブ(カンチレバー)が整列された状態で保管されているカセットから、任意のプローブを任意のタイミングで探針装着部に着脱することができる走査型プローブ顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この走査型プローブ顕微鏡は、上記カセットが設置されるカセット設置ポートを有する試料台と、該試料台をZ方向に移動させるZステージと、該ZステージをXY方向に移動させるXYステージとを有するステージユニットを備えている。また、カセット設置ポートに設置されたカセットの中から、選択したプローブを探針装着部にピックアップ(例えば、吸引による)して、取り付け及び取り外しを行うピックアップ装置を備えている。
【0004】
この走査型プローブ顕微鏡によれば、人手を介さずにカセットの中に予め保管されているプローブを交換できるので、交換作業を効率良く行うことができると共に、作業者による交換ミスをなくすことができる。
【0005】
一方、SPMは、その誕生当初から真空中での測定が可能とされていたが、プローブを交換するために真空状態を一旦解除する必要があった。そのため、手間に加え、時間がかかる不都合があった。そこで、このような不都合をなくすため、真空状態を維持したままプローブを交換することができる走査型プローブ顕微鏡が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この走査型プローブ顕微鏡は、真空容器を2つのチャンバ(第1の室及び第2の室)に仕切るゲートバルブと、両チャンバ内をそれぞれ真空状態にする真空ポンプと、両チャンバ内にプローブや試料を載置するカルーセルと、一方のチャンバ内に設置されたプローブ支持台と、他方のカルーセルと一方のカルーセルとの間でプローブを受け渡し可能な第1の操作スチックと、一方のカルーセルとプローブ支持台との間でプローブを受け渡し可能な第2の操作スチックとを備えている。
【0006】
この走査型プローブ顕微鏡によりプローブを交換する場合には、まず、ゲートバルブを閉めて、一方のチャンバと他方のチャンバとの間を間仕切り、真空中で作業を行っている一方のチャンバから他方のチャンバを切り離す。次いで、他方のチャンバの蓋を開けて、内部に配されているカルーセル上に新しいプローブを載置する。次いで、他方のチャンバを閉め、内部を真空ポンプにより一方のチャンバと同じ真空状態にする。そして、ゲートバルブを開けて一方のチャンバと他方のチャンバとを連通させる。この間、一方のチャンバ内は、真空状態が常に維持されている。
【0007】
その後、第1の操作スチックを操作して、他方のチャンバ内のカルーセル上から一方のチャンバ内のカルーセルにプローブを移動させる。次いで、第2の操作スチックによって、プローブ支持台から古いプローブを一方のカルーセル上に取り降ろすと共に、新たに運ばれてきたプローブをプローブ支持台に移動させて取り付ける。
上述したように、この走査型プローブ顕微鏡によれば、真空状態を維持したままプローブを交換できるので、交換時間を大幅に短縮することができる。
【特許文献1】特開2002−323430号公報
【特許文献2】特開2001−235416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の装置ではまだ以下の課題が残されていた。
即ち、上記特許文献1に記載の装置では、カセットが設置されるカセット設置ポートを備えたステージユニットが必須の構成品とされている。ところが、このステージユニットは複雑な構成をしており、また、サイズが大きなものであるため、大型の走査型プローブ顕微鏡にしか搭載することができなかった。つまり、小型の走査型プローブ顕微鏡には適用することができなかった。従って、適用機種が限定されてしまい、使い難いものであった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の走査型プローブ顕微鏡では、ゲートバルブ、カルーセルや操作スチック等、多くの構成品が必要であり、装置全体が複雑且つ大型化せざるを得なかった。また、プローブの交換を行うには、作業者が真空容器の外から操作スチックを操作する必要があるので、煩雑となり手間がかかるものであった。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、作業者の手を煩わすことなく簡単且つ短時間でプローブの交換を行うことができ、小型の走査型プローブ顕微鏡にも適用することができるプローブホルダ、及び、該プローブホルダを有する走査型プローブ顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のプローブホルダは、試料に対向配置されたプローブを複数固定するプローブホルダであって、前記試料表面に対向する対向面を有し、該対向面に前記複数のプローブをそれぞれ着脱自在に固定する固定板と、該固定板を移動可能に支持するホルダ本体と、前記固定板を移動させると共に、複数の前記プローブのうち選択したいずれかのプローブを観察ポジションに位置させる可動手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係るプローブホルダにおいては、まず、固定板の対向面に予め複数のプローブ(例えば、STM探針や、レバー部の先端に探針を有すると共に基端側が本体部に支持されたプローブ等)が固定されている。また、この固定板は、ホルダ本体に対して移動(例えば、スライド移動や回転移動等)可能に支持されている。更に、複数のプローブのうち、いずれか1つのプローブは、観察を行うときの観察ポジションに位置した状態となっている。
ここで、観察ポジションに位置するプローブで試料の観察を行っている最中に該プローブを交換する場合、又は、試料の観察を行う前に新たなプローブに交換する場合には、可動手段により固定板を移動させる。これにより、固定板に複数固定されている他のプローブを、最初のプローブが位置していた観察ポジションまで移動させることができる。これにより、プローブを新たなもの、若しくは、他の種類のものに交換することができる。
【0013】
特に、可動手段で固定板を移動させるだけで、該固定板に固定されている複数のプローブの中から、任意に選択した他のプローブに交換することができる。従って、プローブの交換のために複雑な操作が必要であった従来のものとは異なり、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブの交換作業を行うことができる。
また、専用のステージ等の大掛かりな装置が必要であった従来のものとは異なり、単に固定板をホルダ本体に対して移動させるだけの構成であるので、構成のコンパクト化且つシンプル化を図ることができる。そのため、ステージ等を取り付けることが困難な小型の走査型プローブ顕微鏡であっても、問題なく適用することができる。そのため、汎用性が高く、使い易い。
【0014】
更に、複数のプローブが固定板に着脱自在に固定されているので、使用が予想されるプローブを予め自在に固定しておくことができる。よって、試料に応じて、若しくは、試料の観察方法に応じて、必要とされるプローブのみを自由に選択して、予め複数固定することができる。この点においても、使い易さに優れている。
【0015】
上述したように、本発明に係るプローブホルダによれば、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブの交換を行うことができる。また、小型の走査型プローブ顕微鏡であっても機種限定等を受けることなく適用することができる。
【0016】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のプローブホルダにおいて、前記ホルダ本体が前記固定板を回転軸回りに回転可能に支持していることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係るプローブホルダにおいては、可動手段により固定板を動かすと、該固定板が回転軸回りに回転し始める。つまり固定板は、回転軸を中心として周方向に回転しながら移動する。これにより、複数のプローブを次々と観察ポジションに位置させることができ、効率良く交換を行うことができる。特に、固定板を回転させる構成であるので、該固定板の可動範囲を極力抑えながら、複数のプローブを交換することができる。従って、設置スペースを抑えることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0018】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のプローブホルダにおいて、前記ホルダ本体が、前記試料表面に垂直なZ軸に対して前記回転軸が平行に配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係るプローブホルダにおいては、固定板を試料表面に垂直なZ軸回りに回転させることができる。即ち、固定板の対向面に固定された複数のプローブを、試料表面に平行な面内に沿って回転させることができる。よって、Z軸方向の高さを極力抑えることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0020】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のプローブホルダにおいて、前記ホルダ本体が、前記試料表面に垂直なZ軸に対して所定角度傾けた状態で前記回転軸が配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【0021】
この発明に係るプローブホルダにおいては、固定板を試料表面に垂直なZ軸に対して所定角度傾けた状態で回転させることができる。即ち、固定板の対向面に固定された複数のプローブを、試料表面に平行な面に傾けて斜め回転させることができる。この際、試料に最も近い位置に移動してきたプローブが観察ポジションに位置する。
このように斜め回転にすることで、観察ポジションに位置していないプローブ、即ち、観察に使用していない予備のプローブを試料表面より高い位置に退避させておくことができる。そのため、仮に試料のサイズが大きい場合であっても、観察していない予備のプローブが試料表面に接触する恐れがない。従って、試料サイズの自由度が高くなり、より多様な試料の観察に適用することができる。
【0022】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のプローブホルダにおいて、前記ホルダ本体が、前記試料表面に垂直なZ軸に対して直交した状態で前記回転軸が配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【0023】
この発明に係るプローブホルダにおいては、固定板を試料表面に垂直なZ軸に直交した状態で回転させることができる。即ち、固定板の対向面に固定された複数のプローブを、試料表面に平行な面に直交させて縦回転させることができる。この際、試料に最も近い位置に移動してきたプローブが観察ポジションに位置する。
このように縦回転にすることで、観察ポジションに位置していないプローブ、即ち、観察に使用していない予備のプローブを試料表面より高い位置に退避させておくことができる。そのため、仮に試料のサイズが大きい場合であっても、観察していない予備のプローブが試料表面に接触する恐れがない。従って、試料サイズの自由度が高くなり、より多様な試料の観察に適用することができる。
【0024】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のいずれかのプローブホルダにおいて、前記ホルダ本体と前記固定板との間に、該固定板の移動に一定の抵抗を加えると共に、選択したいずれかの前記プローブが前記観察ポジションに配置される毎に前記抵抗を一時的に低下させる、抵抗付加機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係るプローブホルダにおいては、抵抗付加機構を有しているので、固定板の移動に抵抗が加わっていると共に、選択したいずれかのプローブが観察ポジションに配置される毎にその抵抗が低下する。即ち、観察ポジションにプローブが配置される毎に、クリック感を得ることができる。これにより、例えば、可動手段を介して手動で固定板を移動させたとしても、クリック感を感じながら移動させることができる。そして、クリック感を感じる位置まで固定板を移動させたときに、いずれかのプローブが観察ポジションに確実に位置した状態となる。このように、抵抗の強弱によって、明確な操作性を得ることができると共に、プローブを正確に観察ポジションに位置させることができる。よって、プローブの交換を行い易い。
【0026】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のいずれかのプローブホルダにおいて、前記可動手段が前記固定板を任意の量だけ自動的に移動させるモータであることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係るプローブホルダにおいては、モータを駆動させることで、固定板を任意の量だけ確実且つ速やかに移動させることができる。よって、より短時間で確実に所望するプローブへの交換を行うことができる。
【0028】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のいずれかのプローブホルダにおいて、前記固定板と前記プローブとの間に、前記プローブを所定の周波数で振動させる加振源が設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係るプローブホルダにおいては、加振源を備えているので、観察ポジションに移動してきたプローブを所定の周波数で振動させることができる。よって、該プローブを用いて、試料を振動モードで観察することができる。このように、観察のバリエーションを増やすことができ、試料をより多角的に観察することができる。
【0030】
また、本発明のプローブホルダは、上記本発明のいずれかのプローブホルダにおいて、前記固定板には、前記複数のプローブのそれぞれに電気的に接続された接続端子が設けられ、前記ホルダ本体には、外部と電気的に接続可能な外部接続端子が設けられ、選択したいずれかの前記プローブが前記観察ポジションに配置される毎に、該プローブに対応した前記接続端子が前記外部接続端子に電気的に接続されることを特徴とするものである。
【0031】
この発明に係るプローブホルダにおいては、固定板を移動させて、選択したいずれかのプローブを観察ポジションに位置させると、該プローブに電気的に接続された接続端子が、ホルダ本体に設けられた外部接続端子に電気的に接続した状態になる。これにより、外部接続端子及び接続端子を介して、外部からプローブに電気的な接続を行うことができる。従って、試料に対して電流測定や電位測定等の電気的な測定も行うことができる。よって、観察のバリエーションをさらに増やすことができ、試料をさらに多角的に観察することができる。
【0032】
また、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明のいずれかのプローブホルダと、前記試料を載置する試料台と、前記プローブホルダによって前記観察ポジションに配置されたいずれかの前記プローブと前記試料台とを前記試料表面に平行なXY方向及び前記試料表面に垂直なZ方向に相対的に移動させる移動手段と、前記プローブの変位を測定する変位測定手段と、該変位測定手段による測定結果に基づいて前記移動手段を制御して、前記試料の観察データを採取する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡においては、まず、プローブホルダによって観察ポジションに選択したいずれかのプローブを位置させた後、移動手段により該プローブと試料台上に載置されている試料とを試料表面に平行なXY方向に相対的に移動させる。この際、制御手段は、変位測定手段による測定結果に基づいて、プローブの変位が一定(例えば、振動状態が一定、又は、撓みが一定)となるように移動手段をZ方向にフィードバック制御しながら走査させる。これにより、制御手段は、試料表面の観察データを採取することができ、試料の表面形状や各種の物性情報等を観察することができる。
【0034】
特に、構成がコンパクト化、シンプル化されたプローブホルダを有しているので、全体のサイズの小型化を図ることができる。また、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブの交換を行えるプローブホルダを有しているので、使い易さが向上すると共に、観察時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るプローブホルダによれば、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブの交換を行うことができると共に、小型の走査型プローブ顕微鏡であっても機種限定等を受けることなく適用することができる。
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡によれば、構成がコンパクト化、シンプル化されたプローブホルダを有しているので、全体のサイズの小型化を図ることができる。また、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブの交換を行えるプローブホルダを有しているので、使い易さが向上すると共に、観察時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るプローブホルダ及び走査型プローブ顕微鏡の一実施形態を、図1及び図2を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、先端に探針を有すると共に基端側が本体部に片持ち状態に支持されたものをプローブとして説明する。即ち、AFMを例に挙げて説明する。また、試料側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明する。
【0037】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、図1に示すように、試料Sに対向配置され、レバー部2aの先端に探針2bを有すると共に、該レバー部2aの基端側が本体部2cに片持ち状態に支持されたプローブ2を複数固定するプローブホルダ3と、試料Sを載置する試料台4と、プローブホルダ3によって観察ポジションPに配置されたプローブ2と試料台4とを、試料表面S1に平行なXY方向及び試料表面S1に垂直なZ方向に相対的に移動させる移動手段5と、プローブ2の変位(撓み)を測定する変位測定手段6と、該変位測定手段6による測定結果に基づいて移動手段5を制御して試料Sの観察データを採取する制御手段7とを備えている。
なお、本実施形態では、制御手段7が、プローブ2の撓みが一定となるように移動手段5を制御する場合を例にして説明する。
【0038】
上記プローブホルダ3は、試料表面S1に対向する対向面10aを有し、該対向面10aに複数のプローブ2を、本体部2cを介して着脱自在に固定する固定板10と、該固定板10を移動可能に支持するホルダ本体11と、固定板10を移動させると共に複数のプローブ2のうち、選択したいずれかのプローブ2を観察ポジションPに位置させるモータ(可動手段)12とを備えている。
【0039】
固定板10は、図1及び図2に示すように、回転軸Lを中心に円形状に形成された円板であり、対向面10aには上記プローブ2が載置される載置面13aを有したブロック13が複数取り付けられている。このブロック13は、例えば、回転軸Lを中心に45度毎に、固定板10の外縁付近に取り付けられている。即ち、本実施形態では、プローブ2は8個固定されている。そして、プローブ2は、本体部2cを介して、図示しないワイヤ等によりブロック13の載置面13aに着脱自在に固定されている。
また、固定板10の上面には、略中心に軸部10bが形成されている。この軸部10bは、モータ12の図示しない駆動軸に接続されている。
【0040】
ホルダ本体11は、試料Sの上方に位置するように、図示しない架台に取り付けられている。また、このホルダ本体11は、試料表面S1に垂直なZ軸に対して回転軸Lが平行に配されるように上記固定板10を支持している。
具体的には、上記固定板10の対向面10aが試料表面S1に平行とされた状態で該固定板10が収まる開口11aを有すると共に、軸部10bを挿通可能な貫通孔11bを有している。また、貫通孔11b内には、図示しない軸受部が取り付けられており、軸部10bを回転軸L回りに回転可能に支持している。また、ホルダ本体11の上面にはモータ12が取り付けられており、上述したように軸部10bがモータ12の駆動軸に接続されている。これにより、モータ12を駆動することで、固定板10を円周方向に向けて任意の量だけ自動的に移動させることができるようになっている。
【0041】
また、ホルダ本体11には、観察ポジションPにプローブ2が位置したときに、レバー部2aの図示しない反射面に向けて、後述するレーザ光Rを入射させると共に、反射面で反射したレーザ光Rを出射させる開口部11cが形成されている。
【0042】
上記試料台4はZスキャナ20上に載置されており、該Zスキャナ20はXYスキャナ21上に載置されている。これらZスキャナ20及びXYスキャナ21は、例えばピエゾ素子であり、それぞれZ駆動部22及びXY駆動部23から電圧を印加されて、それぞれの方向に微小移動するようになっている。即ち、これらZスキャナ20、XYスキャナ21、Z駆動部22及びXY駆動部23は、上記移動手段5を構成している。
【0043】
また、上記Zスキャナ20及びXYスキャナ21は、粗動機構35上に載置されている。この粗動機構35は、粗動機構駆動部36からの指示に基づいて駆動するようになっている。これによりZスキャナ20、XYスキャナ21、試料台4及び試料Sは、粗動機構35によってXY方向及びZ方向に向けて一体的に粗動移動するようになっている。
【0044】
また、ホルダ本体11の上方には、ミラー24を利用してレバー部2aの裏面に形成された図示しない反射面に向けてレーザ光Rを照射する光照射部25と、ミラー26を利用して反射面で反射されたレーザ光Rを受光する光検出部27とが設けられている。なお、光照射部25から照射されたレーザ光Rは、ホルダ本体11の開口部11cを通過しながら反射面に達し、反射面で反射された後、再度開口部11c内を通過して光検出部27に入射するようになっている。
【0045】
また、光検出部27は、例えばフォトディテクタであり、レーザ光Rの入射位置からレバー部2aの撓み変化を検出する。そして、光検出部27は、検出したレバー部2aの撓み変化をDIF信号としてプリアンプ28に出力している。即ち、これら光検出部27、ミラー24、26及び光検出部27は、上記変位測定手段6を構成している。
【0046】
また、光検出部27から出力されたDIF信号は、プリアンプ28によって増幅された後、Z電圧フィードバック回路30に送られる。Z電圧フィードバック回路30は、DIF信号が常に一定となるようにZ駆動部22をフィードバック制御する。これにより、移動手段5が走査を行ったときに、プローブ2と試料表面S1との距離を、レバー部2aの撓みが一定となるように制御することができる。
【0047】
また、Z電圧フィードバック回路30には制御部31が接続されており、該制御部31は、Z電圧フィードバック回路30により変化させる信号に基づいて試料Sの観察データ(例えば、試料表面S1の形状データや試料表面S1の物性データ等)を採取し、観察を行うことができるようになっている。即ち、これらZ電圧フィードバック回路30及び制御部31は、上記制御手段7を構成している。
なお、この制御手段7は、上記各構成品を総合的に制御する機能を有している。
【0048】
次に、このように構成されたプローブホルダ3及び走査型プローブ顕微鏡1により、試料Sの観察を行う場合について説明する。
まず初めに、観察を行うための初期設定を行う。即ち、作業者は、この観察で使用が予想されるプローブ2を予め固定板10に複数固定しておく。つまり、プローブ2の本体部2cをブロック13の載置面13aに載置した後、図示しないワイヤ等でプローブ2を固定しておく。次いで、モータ12を駆動させて固定板10を周方向に回転させて、複数のプローブ2の中から所望するプローブ2を観察ポジションPに位置させる。
次に、試料台4上に試料Sを載置した後、レバー部2aの反射面に確実にレーザ光Rが入射するように、また、反射したレーザ光Rが光検出部27に確実に入射するように、光照射部25及び光検出部27の位置を調整する。
【0049】
上述した初期設定が終了した後、試料Sの観察を行う。
まず、観察ポジションPに位置するプローブ2の探針2bが試料表面S1に接触するまで、若しくは、試料表面S1の近傍に位置するまで、粗動機構駆動部36により粗動機構35を駆動させて接近させる。次いで、Z駆動部22によりZスキャナ20を駆動して、レバー部2aの撓みが一定となるよう、試料表面S1とプローブ2との距離を制御する。そして、この状態を維持しながら、XY駆動部23よりXYスキャナ21を駆動し、試料Sの走査を行う。
【0050】
つまり、試料表面S1の凹凸に応じてレバー部2aが撓もうとするので、光検出部27に入射するレーザ光R(反射面で反射したレーザ光)の位置が変化する。光検出部27は、この変化に応じたDIF信号をプリアンプ28に出力する。出力されたDIF信号は、プリアンプ28によって増幅された後、Z電圧フィードバック回路30に送られる。
Z電圧フィードバック回路30は、DIF信号が常に一定となるように(つまり、レバー部2aの撓みが常に一定となるように)、Z駆動部22によりZスキャナ20をZ方向に微小移動させてフィードバック制御を行う。これにより、レバー部2aの撓みが一定となるように試料表面S1とプローブ2との距離を制御した状態で走査を行うことができる。
【0051】
また、制御部31は、Z電圧フィードバック回路30により変化させる信号に基づいて試料表面S1の形状データ等を採取し、表面形状を観察することができる。なお、表面形状だけでなく、各種の物性情報の観察も行うことができる。
【0052】
ここで、観察ポジションPに位置するプローブ2で上記観察を行っている最中に、該プローブ2を何らかの理由により交換する場合には、作業者は、固定板10に予め固定されている他のプローブ2の中から他のプローブ2を1つ選択して、該プローブ2が観察ポジションPに達するまでモータ12を駆動させる。これにより、プローブ2を新たなもの、若しくは、他の種類(例えば、レバー部2aの特性が異なるものや、探針2bの種類が異なるもの等)のものに交換することができる。
【0053】
特に、モータ12で固定板10を移動させるだけで、該固定板10に固定されている複数のプローブ2の中から、任意に選択した他のプローブ2に交換することができる。従って、プローブ2の交換のために複雑な操作が必要であった従来のものとは異なり、作業者の手を煩わせることなく、簡単且つ短時間でプローブ2の交換作業を行うことができる。
また、専用のステージ等の大掛かりな装置が必要であった従来のものとは異なり、単に固定板10をホルダ本体11に対して回転移動させるだけの構成であるので、構成のコンパクト化且つシンプル化を図ることができる。そのため、ステージ等を取り付けることが困難な小型の走査型プローブ顕微鏡であっても問題なく適用することができる。そのため、汎用性が高く、使いやすい。
【0054】
また、複数のプローブ2が固定板10に対して着脱自在であるので、初期設定時の段階で、使用が予想されるプローブ2のみ予め複数固定しておくことができる。この点においても、使い易さに優れている。
【0055】
上述したように、本実施形態のプローブホルダ3によれば、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブ2の交換を行うことができる。また、小型の走査型プローブ顕微鏡であっても機種限定等を受けることなく適用することができる。
特に、本実施形態では、固定板10を回転させることで複数のプローブ2を次々と観察ポジションPに位置させることができ、効率良く交換を行うことができる。また、このように固定板10を回転させる構成であるので、該固定板10の可動範囲を極力抑えながら複数のプローブ2を交換することができる。従って、設置スペースを抑えることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0056】
また、ホルダ本体11が、試料表面S1に垂直なZ軸に対して回転軸Lが平行に配されるように固定板10を支持しているので、固定板10の対向面10aに固定された複数のプローブ2を、試料表面S1に平行な面内に沿って回転させることができる。よって、Z軸方向の高さを極力抑えることができ、さらなる小型化を図ることができる。
更に、モータ12を駆動させることで、固定板10を任意の量だけ確実且つ速やかに周方向に回転させることができる。よって、より短時間で確実に所望するプローブ2への交換を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1によれば、上述したように、構成がコンパクト化、シンプル化されたプローブホルダ3を有しているので、全体のサイズの小型化を図ることができる。また、作業者の手を煩わすことなく、簡単且つ短時間でプローブ2の交換を行えるプローブホルダ3を有しているので、使い易さが向上すると共に、観察時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、ホルダ本体11が、試料表面S1に垂直なZ軸に対して回転軸Lが平行に配されるように固定板10を回転可能に支持した構成にしたが、この場合に限られるものではない。
例えば、図3に示すように、試料表面S1に垂直なZ軸に対して所定角度θ傾けた状態で回転軸Lが配されるように固定板10を回転可能に支持しても構わない。このように構成することで、固定板10の対向面10aに固定された複数のプローブ2を、試料表面S1に平行な面に傾けて斜めに回転させることができる。この際、試料Sに最も近い位置に移動してきたプローブ2が観察ポジションPに位置する。
【0060】
このように斜めに回転させる構成とすることで、観察ポジションPに位置していないプローブ2、即ち、観察に使用していない予備のプローブ2を、試料表面S1より高い位置に退避させておくことができる。そのため、図3に示すように、仮に試料Sのサイズが大きい場合であっても、観察していない予備のプローブ2が試料表面S1に接触する恐れがない。従って、試料Sのサイズの自由度が高くなり、より多様な試料の観察に適用することができる。
【0061】
更に、図4に示すように、試料表面S1に垂直なZ軸に対して直交した状態で回転軸Lが配されるように固定板10を回転可能に支持しても構わない。この場合には、固定板10の対向面10aに固定された複数のプローブ2を、試料表面S1に平行な面に直交させて縦回転させることができる。この際、試料Sに最も近い位置に移動してきたプローブ2が観察ポジションPに位置する。この場合においても、上述した斜め回転と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
また、上記実施形態において、固定板10とプローブ2との間に、プローブ2を所定の周波数で振動させる加振源を設けても構わない。
即ち、図5に示すように、各ブロック13と固定板10との間に、ブロック13を介してプローブ2を所定の周波数で振動させるピエゾ素子等の加振源40を設けても構わない。この加振源40は、加振電源41から印加された電圧に応じて振動するようになっている。
【0063】
このように加振源40を設けることで、例えばSPMの1つである振動モードAFMで試料の観察を行うことができる。なお、加振源40を設ける場合には、プリアンプ28とZ電圧フィードバック回路30との間に、プリアンプ28で増幅されたDIF信号を直流変換してZ電圧フィードバック回路30に出力する交流−直流変換回路29を設ける。
【0064】
振動モードAFMで測定を行う場合には、初めに加振電源41から加振源40に対して信号を出力して、加振源40を所定の振幅及び周波数で振動させる。これにより、観察ポジションPに位置したプローブ2が所定の周波数で振動する。そして、この状態で試料S上の走査を行う。なお、この場合には制御部31が、プローブ2の振動状態が一定となるように試料表面S1とプローブ2との距離をフィードバック制御すれば良い。その結果、振動モードAFMで試料Sの観察を行うことができる。
【0065】
また、上記実施形態では、モータ12を利用して固定板10を回転させたが、モータ12に限定されるものではない。例えば、固定板10の軸体10bに連結されると共に、指で把持可能な摘み部をモータ12の代わりに取り付け、該摘み部を可動手段としても構わない。この場合であっても、摘み部を指で回すだけで、簡単且つ短時間でプローブ2の交換を行うことができる。
特に、手動で行う場合には、図6に示すように、ホルダ本体11と固定板10との間に、固定板10の移動に一定の抵抗を加えると共に、選択したいずれかのプローブ2が観察ポジションPに配置される毎に抵抗を一時的に低下させる、抵抗付加機構45を設けると良い。
【0066】
この抵抗付加機構45は、固定板10の上面であって、各プローブ2に対向する位置に形成された複数の凹部46と、ホルダ本体11の下面であって、固定板10が観察ポジションPに位置したときに上記凹部46に対向するように形成された凹部47と、該凹部47の底部に固定されたコイルバネ48と、該コイルバネ48によって固定板10側に付勢されるボール49とを備えている。
上記複数の凹部46は、上記ボール49が嵌合可能な半球状に形成されている。また、上記凹部47は、プローブ2が観察ポジションPに位置したときに、複数の凹部46のそれぞれに対向配置するように複数形成されている。また、ボール49は、コイルバネ48によって常に固定板10側に付勢されており、固定板10を回転させると凹部46から抜け出て、固定板10の上面に接するようになっている。これにより、コイルバネ48が圧縮されるので、ボール49をより強い力で固定板10に押し付けた状態となる。その結果、作業者は、摘み部を回して固定板10を回転移動させたときに、一定の抵抗を感じるようになっている。
【0067】
一方、プローブ2が観察ポジションPに位置すると、図6に示すように、ボール49が半球状の凹部46内に嵌合するので、コイルバネ48の押し付け力が一時的に低下する。即ち、固定板10を回転移動させるときに感じていた抵抗が一時的に低下する。
よって、作業者は、手動で固定板10を回転させる際に、観察ポジションPにプローブ2が配置される毎にクリック感を得ることができる。また、言い換えると、クリック感を感じる位置まで固定板10を移動させると、いずれかのプローブ2が観察ポジションPに確実に位置した状態となる。このように、抵抗の強弱によって、明確な操作性を得ることができると共に、プローブ2を正確に観察ポジションPに位置させることができる。よって、プローブ2の交換を行い易い。
【0068】
更に、観察ポジションPに位置したプローブ2に対して電気的な接続を行っても構わない。例えば、図6に示すように、固定板10の上面に、複数のプローブ2のそれぞれに電気的に接続された接続端子50を複数設ける。この接続端子50は、プローブ2と電気的に接続されている。なお、この場合には、探針2bを導電性の探針とする。
また、ホルダ本体11には、外部と電気的に接続可能な外部接続端子51が設けられている。そして、選択したいずれかのプローブ2が観察ポジションPに配置される毎に、プローブ2に対応した接続端子50が外部接続端子51に電気的に接続するようになっている。
【0069】
このように構成することで、固定板10を回転移動させて、選択したいずれかのプローブ2を観察ポジションPに位置させると、該プローブ2に電気的に接続された接続端子50が外部接続端子51に電気的に接続した状態となる。これにより、外部接続端子51及び接続端子50を介して、外部からプローブ2に電気的な接続を行うことができる。従って、試料Sに対して電流測定や電位測定等の電気的な測定も行うことができる。よって、観察のバリエーションを増やすことができ、試料Sをさらに多角的に観察することができる。
【0070】
また、上述した抵抗付加機構45に代えて、図7に示すように位置決め機構55を設けても構わない。
この位置決め機構55は、固定板10の上面であって、各プローブ2に対向する位置に取り付けられた複数の第1の磁石56と、ホルダ本体11の下面であって、プローブ2が観察ポジションPに位置したときに複数の第1の磁石56に対向する位置に取り付けられた第2の磁石と57を備えている。また、第2の磁石57は、第1の磁石56とは反対の極性を有している。例えば第1の磁石56がN極、第2の磁石57がS極となっている。
【0071】
このように位置決め機構55を設けた場合には、固定板10が回転すると、観察ポジションPにプローブ2が位置する毎に、第1の磁石56と第2の磁石57とが磁力により吸着する。そのため、固定板10はその位置で安定した状態となり、位置ずれし難くなる。即ち、プローブ2を観察ポジションPに位置させた状態で、固定板10を位置決めすることができる。従って、固定板10を手動で回転させたとしても、プローブ2を正確に観察ポジションPに位置させることができ、プローブ2の交換を行い易い。
なお、位置決め機構55と上述した抵抗付加機構45とを、両方同時に設けても構わない。この場合には、プローブ2をさらに正確に観察ポジションPに位置させることができるので、より好ましい。
【0072】
また、上記実施形態では、固定板10を円板としたが、円板に限られず、多角形状に形成しても構わない。但し、この場合には、回転軸Lを中心とした軸対称の形状であることが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態では、固定板10を周方向に回転移動させたが、回転ではなくスライド移動させても構わない。
例えば、図8及び図9に示すように、固定板61を、所定の厚みを持った上面視長方形状に形成する。そして、固定板61の一方の辺に沿って、対向面61a側に一定間隔毎に複数のプローブ2を固定する。また、ホルダ本体11には、固定板61の他辺を移動可能に挟み込む抑え部材62が設けられている。
このように構成されたプローブホルダ60においては、回転移動時と同様に、図示しない可動手段により固定板61をスライド移動させるだけで、選択したいずれかのプローブ2を容易且つ短時間で観察ポジションPに位置させて、プローブ2の交換を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1及びプローブホルダ3(60)は、測定環境に影響を受けることはない。つまり、大気中や真空中で測定を行う場合は当然のこと、液中での測定や、各種の環境(ガス、温度、湿度等)を制御しながら測定を行う場合であっても、上述したのと同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
また上記実施形態では、プローブとして探針2b、レバー部2b及び本体部2cを有するプローブ2を例に挙げて説明したが、プローブホルダ3(60)は固定できるプローブの種類を問わない。例えばプローブとしてSTM(Scanning Tunneling Microscope:走査型トンネル顕微鏡)用の探針(以下、STM探針)を用いても構わない。この場合には、上述したように、外部接続端子51及び接続端子50により、外部とプローブとを電気的に接続するように構成すれば良い。
また、固定板10を斜めに回転させる場合には、STM探針(プローブ)が、観察ポジションPに位置したときに試料表面S1に対して垂直になる角度で固定板10に固定される構成とすれば良い。
【0076】
更に、固定板10とホルダ本体11との間を光学的に接続して、SNOM(Scanning Near Field Optical Microscope:走査型近接場光学顕微鏡)等に適用しても構わない。
【0077】
また、上記実施形態では、試料S側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明したが、この方式に限られず、プローブホルダ3(60)側を三次元方向に移動させるプローブスキャン方式にしても構わない。この場合においても、スキャン方式が異なるだけで、試料スキャン方式と同様の作用効果を奏することができる。なお、試料側及びプローブホルダ側を共に三次元方向に移動できるように構成しても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、ホルダ本体11に形成された開口部11cを介して、プローブ2にレーザ光Rを入射させると共に反射したレーザ光Rを出射させる構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、開口部11cを光学的に透明な材料(例えば、ガラス)で埋めた構成にしても構わないし、ホルダ本体11自体を光学的に透明な材料で構成して、開口部11cをなくしても構わない。
【0079】
更に、上記実施形態では、変位測定手段6が光てこ方式によりプローブ2の変位検出を行ったが、光てこ方式に限定されるものではない、例えば、カンチレバー自身に変位検出機能(例えば、ピエゾ抵抗素子等)を設けた自己検知方式を採用しても構わない。特に、図4に示すように、固定板3を縦回転させる構成にする場合には、光てこ方式ではなく、自己検知方式を採用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡及びプローブホルダの一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示すプローブホルダの上面図である。
【図3】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、回転軸が試料表面に対して所定角度傾いた状態で固定板が回転するプローブホルダの断面図である。
【図4】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、回転軸が試料表面に対して直交した状態で固定板が回転するプローブホルダの断面図である。
【図5】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、プローブを所定の振動振幅で振動させる加振源を有するプローブホルダを備えた、走査型プローブ顕微鏡の構成図である。
【図6】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、固定板に一定の抵抗を加えると共にプローブが観察ポジションに配置される毎に抵抗を一時的に低下させる抵抗付加機構を有するプローブホルダの断面図である。
【図7】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、固定板を位置決めして、プローブを観察ポジションに正確に位置させる位置決め機構を有するプローブホルダの断面図である。
【図8】本発明に係るプローブホルダの他の例を示す図であって、固定板をスライド移動させるプローブホルダの上面図である。
【図9】図8に示すプローブホルダの断面図である。
【符号の説明】
【0081】
L 回転軸
P 観察ポジション
S 試料
1 走査型プローブ顕微鏡
2 プローブ
2a レバー部
2b 探針事
2c 本体部
3、60 プローブホルダ
4 試料台
5 移動手段
6 変位測定手段
7 制御手段
10、61 固定板
10a、61a 対向面
11 ホルダ本体
12 モータ(可動手段)
40 加振源
45 抵抗付加機構
50 接続端子
51 外部接続端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対向配置されたプローブを複数固定するプローブホルダであって、
前記試料表面に対向する対向面を有し、該対向面に前記複数のプローブをそれぞれ着脱自在に固定する固定板と、
該固定板を移動可能に支持するホルダ本体と、
前記固定板を移動させると共に、複数の前記プローブのうち選択したいずれかのプローブを観察ポジションに位置させる可動手段とを備えていることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記固定板を回転軸回りに回転可能に支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記試料表面に垂直なZ軸に対して前記回転軸が平行に配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項4】
請求項2に記載のプローブホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記試料表面に垂直なZ軸に対して所定角度傾けた状態で前記回転軸が配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項5】
請求項2に記載のプローブホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記試料表面に垂直なZ軸に対して直交した状態で前記回転軸が配されるように前記固定板を支持していることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプローブホルダにおいて、
前記ホルダ本体と前記固定板との間に、該固定板の移動に一定の抵抗を加えると共に、選択したいずれかの前記プローブが前記観察ポジションに配置される毎に前記抵抗を一時的に低下させる、抵抗付加機構が設けられていることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプローブホルダにおいて、
前記可動手段は、前記固定板を任意の量だけ自動的に移動させるモータであることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のプローブホルダにおいて、
前記固定板と前記プローブとの間に、前記プローブを所定の周波数で振動させる加振源が設けられていることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のプローブホルダにおいて、
前記固定板には、前記複数のプローブのそれぞれに電気的に接続された接続端子が設けられ、
前記ホルダ本体には、外部と電気的に接続可能な外部接続端子が設けられ、
選択したいずれかの前記プローブが前記観察ポジションに配置される毎に、該プローブに対応した前記接続端子が前記外部接続端子に電気的に接続されることを特徴とするプローブホルダ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のプローブホルダと、
前記試料を載置する試料台と、
前記プローブホルダによって前記観察ポジションに配置されたいずれかの前記プローブと前記試料台とを前記試料表面に平行なXY方向及び前記試料表面に垂直なZ方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記プローブの変位を測定する変位測定手段と、
該変位測定手段による測定結果に基づいて前記移動手段を制御して、前記試料の観察データを採取する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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