説明

プローブ

【課題】 バイパスコンデンサの本来の働きを低下させることなく、被試験デバイスの電源ラインに効率よくノイズ信号を注入することが可能なプローブを提供する。
【解決手段】 プローブ1を構成するプローブ本体10は、対となって、被試験デバイスの電源端子とグランド端子とにノイズ信号を印加する信号用接触子11及び接地用接触子12と、信号用接触子11と入力端が接続され、所定の周波数帯域のノイズ信号の通過を選択的に阻止するバンドエリミネーションフィルタ15と、一端がバンドエリミネーションフィルタ15の出力端と接続され、他端が接地用接触子12と接続された、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサ16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式のプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電子デバイスで構成された電子機器の電磁環境適合性(EMC:Electro Magnetic Compatibility)を評価するEMC試験の一つとして、電磁妨害に対する耐性を評価するイミュニティ試験が知られている。イミュニティ試験では、例えば、ICなどの被試験デバイスの電源ラインに高周波信号(以下「ノイズ信号」という)を注入し、被試験デバイスが正常に動作するか否かを判定することにより、電磁妨害に対する耐性を評価する。
【0003】
ところで、一般的に、デジタルICの電源ラインには、ICが瞬間的に消費する電荷を急速に供給するためにバイパスコンデンサが取り付けられている。そのため、ノイズ信号がICの電源ラインに印加されたときに、印加されたノイズ信号の大部分がバイパスコンデンサを通ってグランドに流れてしまう。しかしながら、バイパスコンデンサを取り外すとICが正常に動作しない場合があるため、バイパスコンデンサを含めた状態でイミュニティ試験を行う必要がある。そのため、十分なパワーのノイズ信号をICに注入したい場合には、アンプ等を利用して、よりハイパワーのノイズ信号を印加する必要があった。
【0004】
ここで、特許文献1には、バイパスコンデンサとグランドとの間に抵抗を挿入、すなわち、バイパスコンデンサと直列に抵抗を接続し、電源−グランド間のインピーダンスを増大させることにより、ICにかかる電圧を増加させる技術が開示されている。この技術によれば、ノイズ信号の注入効率が改善されるため、注入するために必要なノイズ信号のパワーを下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−85477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に開示されている技術によれば、ノイズ信号の注入効率を改善することができる。しかしながら、バイパスコンデンサとグランドとの間に抵抗が挿入されることで、バイパスコンデンサ本来の働きであるICへの電荷供給能力(ICから流れる高周波電流のリターン)が低下する。これに伴い、ICのイミュニティ耐性が変化するおそれがあるため、バイパスコンデンサと直列に抵抗が挿入された状態では、正確なイミュニティ評価ができているとは言い難い。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、バイパスコンデンサの本来の働きを低下させることなく、被試験デバイスの電源ラインに効率よくノイズ信号を注入することが可能なプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプローブは、対となって、被試験デバイスの電源端子とグランド端子とにノイズ信号を印加する信号用接触子及び接地用接触子と、信号用接触子と入力端が接続され、所定の周波数帯域の電気信号の通過を選択的に阻止するバンドエリミネーションフィルタと、一端がバンドエリミネーションフィルタの出力端と接続され、他端が接地用接触子と接続されたコンデンサとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプローブによれば、例えば、バンドエリミネーションフィルタにより通過が阻止される電気信号の周波数帯域を、被試験デバイスに印加されるノイズ信号の周波数と同一に設定しておくことにより、印加されるノイズ信号が、コンデンサを介してグランドに流れることを防止できる。よって、ノイズ信号を効率よく被試験デバイスに注入することができる。一方、バンドエリミネーションフィルタにより通過が阻止される電気信号の周波数帯域を、被試験デバイスの駆動により発生する高周波電流が持つ周波数帯域と異なるように設定しておくことにより、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの電荷供給能力への影響を排除することができる。そのため、イミュニティ試験を行う際に、バンドエリミネーションフィルタと接地用接触子との間に挿入されるコンデンサとして、バイパスコンデンサと同じ特性を有するものを用いることにより、バイパスコンデンサの本来の働きを低下させることなく、被試験デバイスの電源ラインに効率よくノイズ信号を注入することが可能となる。なお、イミュニティ試験を行う際には、被試験デバイスに取り付けられているバイパスコンデンサは取り外される(又は実装されない)。
【0010】
本発明に係るプローブは、バンドエリミネーションフィルタにより阻止される電気信号の周波数帯域を変更する阻止周波数可変手段をさらに備えることが好ましい。このようにすれば、バンドエリミネーションフィルタにより阻止される電気信号の周波数帯域を変更することにより、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。よって、同一のプローブで印加するノイズ信号の周波数を変更することができるため、イミュニティ試験を効率よく行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係るプローブでは、バンドエリミネーションフィルタが複数のバンドエリミネーションフィルタ回路を有し、防止周波数可変手段が、複数のバンドエリミネーションフィルタ回路を択一的に切り換えることが好ましい。このようにすれば、複数のバンドエリミネーションフィルタ回路が択一的に切り換えられることにより、バンドエリミネーションフィルタにより阻止されるノイズ信号の周波数帯域を変更すること、すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。
【0012】
本発明に係るプローブでは、バンドエリミネーションフィルタが、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び/又は可変コイルを含んで構成されており、阻止周波数可変手段が、阻止するノイズ信号の周波数帯域に応じて、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルの内、少なくともいずれか1つの値を変更することが好ましい。このようにすれば、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルの内、少なくともいずれか1つの値を変更することにより、バンドエリミネーションフィルタにより阻止されるノイズ信号の周波数帯域を変更すること、すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。
【0013】
本発明に係るプローブでは、バンドエリミネーションフィルタが、着脱して交換可能に構成されていることが好ましい。この場合、エリミネーションフィルタを着脱して交換することにより、バンドエリミネーションフィルタにより阻止されるノイズ信号の周波数帯域を変更すること、すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。
【0014】
本発明に係るプローブは、コンデンサの特性を変更する特性可変手段をさらに備えることが好ましい。このようにすれば、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの特性(例えば電荷供給能力)を変化させた試験ができるため、より詳細なイミュニティ評価を実施することが可能となる。
【0015】
本発明に係るプローブでは、上記コンデンサが、特性の異なる複数のコンデンサからなり、特性可変手段が、複数のコンデンサを択一的に切り換えてバンドエリミネーションフィルタと接続することが好ましい。このようにすれば、複数のコンデンサを択一的に切り換えることにより、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの特性を変更することができる。
【0016】
本発明に係るプローブでは、コンデンサが、可変コンデンサであり、特性可変手段が、ユーザの操作に応じて、可変コンデンサの容量を調節することが好ましい。このようにすれば、ユーザの操作に応じて、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの容量を変更することができる。
【0017】
本発明に係るプローブでは、コンデンサが、着脱して交換可能に構成されていることが好ましい。この場合、コンデンサを着脱して交換することにより、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの特性を変更することができる。
【0018】
本発明に係るプローブは、一端が信号用接触子及びバンドエリミネーションフィルタと接続されるとともに、他端がノイズ信号を発生する信号発生器と接続され、被試験デバイスの電源端子から入力される直流成分を遮断するDCカットコンデンサをさらに備えることが好ましい。このようにすれば、被試験デバイスから信号発生器側へ伝わる直流(DC)成分を遮断することができるため、信号発生器を保護することが可能となる。また、DCカットコンデンサが、バンドエリミネーションフィルタと信号発生器との間に挿入されているため、バンドエリミネーションフィルタに接続されている、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの特性に影響を与えることがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バイパスコンデンサの本来の働きを低下させることなく、被試験デバイスの電源ラインに効率よくノイズ信号を注入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るプローブの全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るプローブを構成するプローブ本体の構成を示す図である。
【図3】バンドエリミネーションフィルタの例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るプローブの動作を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るプローブの動作を説明するための図である。
【図6】イミュニティ試験でのプローブの動作を説明するための模式的な図である。
【図7】第2実施形態に係るプローブを構成するプローブ本体の構成を示す図である。
【図8】第3実施形態に係るプローブを構成するプローブ本体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
[第1実施形態]
まず、図1及び図2を用いて、第1実施形態に係るプローブ1の構成について説明する。図1は、プローブ1の全体構成を示す図である。また、図2は、プローブ1を構成するプローブ本体10の構成を示す図である。
【0023】
プローブ1は、ICなどの被試験デバイスの電源ラインに対するイミュニティ試験などで用いられるノイズ信号注入用の接触式のプローブである。プローブ1は、ノイズ信号を被試験デバイスに印加するプローブ本体10と、プローブ本体10に接続された同軸ケーブル20と、同軸ケーブル20に接続され、ノイズ信号を発生させる信号発生器などの測定器の出力に接続するための同軸コネクタ30とを備えている。
【0024】
プローブ本体10は、絶縁性樹脂材料などにより、ユーザが把持しやすい形状に形成されている。プローブ本体10の先端部には、互いに並列するようにして、一対の信号用接触子11及び接地用接触子12が突設されている。信号用接触子11及び接地用接触子12それぞれは、導電性を有する金属材料で形成されたピン状(針状)の接触子である。
【0025】
図2に示されるように、信号用接触子11は、信号線13を通して、プローブ本体10の後端部に設けられた信号端子18と接続されている。この信号端子18は、同軸ケーブル20の中心導体21(詳細は後述する)とハンダ付けされて電気的に接続されている。一方、接地用接触子12は、グランド線14を通して、プローブ本体10の後端部に設けられたグランド端子19と接続されている。このグランド端子19は、同軸ケーブル20の外部導体22(詳細は後述する)とハンダ付けされて電気的に接続されている。
【0026】
イミュニティ試験では、信号用接触子11が、デジタルICなどの被試験デバイスの電源端子(又は電源ライン)に接触され、接地用接触子12が、被試験デバイスのグランド端子(又はグランドライン)に接触され、ノイズ信号が被試験デバイスに印加される。
【0027】
信号線13とグランド線14との間(すなわち、信号用接触子11と接地用接触子12との間)には、バンドエリミネーションフィルタ(帯域阻止フィルタ)15と、該バンドエリミネーションフィルタ15と直列に接続されたコンデンサ16とが接続されている。より具体的には、バンドエリミネーションフィルタ15の入力端が、信号線13(すなわち信号用接触子11)と接続され、バンドエリミネーションフィルタ15の出力端が、コンデンサ16の一端と接続されている。コンデンサ16の他端はグランド線14(すなわち接地用接触子12)と接続されている。
【0028】
バンドエリミネーションフィルタ15は、所定の周波数帯域の電気信号だけを減衰させ、それ以外の周波数帯域の電気信号を通過させるフィルタである。ここで、図4に示されるように、バンドエリミネーションフィルタ15によって通過が阻止される周波数帯域の電気信号は、グランド端子19側には流れず、信号端子18から信号用接触子11の方向、又はその逆方向に流れる。
【0029】
一方、バンドエリミネーションフィルタ15を通過する周波数帯域の電気信号は、一般的に被試験デバイスや測定器のインピーダンスが高いため、図5に示されるように、信号用接触子11からコンデンサ16を介して接地用接触子12に、又は信号端子18からコンデンサ16を介してグランド端子19に流れる。よって、イミュニティ試験に用いる際には、バンドエリミネーションフィルタ15は、被試験デバイスに印加されるノイズ信号の通過を阻止し、被試験デバイスの駆動により生じる高周波電流を通過させるように設定される。
【0030】
バンドエリミネーションフィルタ15としては、公知のバンドエリミネーションフィルタを用いることができる。例えば、図3(a)に示されるような、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)から構成されるπ型バンドエリミネーションフィルタや、同図(b)に示されるようなT型バンドエリミネーションフィルタなどが好適に用いられる。なお、これらのバンドエリミネーションフィルタは例示であり、適用できるバンドエリミネーションフィルタはこれらの例には限られない。
【0031】
コンデンサ16は、被試験デバイスの電源ラインに取り付けられているバイパスコンデンサとして機能するものであり、該バイパスコンデンサと同一特性のコンデンサが用いられる。なお、イミュニティ試験を行う際には、被試験デバイスの電源ラインにバイパスコンデンサが実装されていない基板を用いる。また、被試験デバイスの電源ラインにバイパスコンデンサが既に取り付けられている場合には、そのバイパスコンデンサを取り外す。
【0032】
バンドエリミネーションフィルタ15の入力端と、信号端子18との間には、信号線13を流れる直流成分を遮断するDCカットコンデンサ17が設けられている。このDCカットコンデンサ17によって、被測定デバイスの電源端子からノイズ信号を発生する信号発生器側へ伝達される直流成分がカットされる。
【0033】
同軸ケーブル20は、セミリジットタイプ(又はリジットタイプ)の同軸ケーブルである。同軸ケーブル20は、単線で形成された内部導体21と、内部導体21の周囲を覆う絶縁体と、絶縁体の周囲を覆う外部導体22と、外部導体22の周囲を覆う樹脂性の被覆とを有して構成されている。同軸ケーブル20の一端は、プローブ本体10と接続されている。より詳細には、同軸ケーブル20の中心導体21が、プローブ本体10の信号端子18と接続され、外部導体22が、グランド端子19と接続される。
【0034】
また、同軸ケーブル20の他端は、同軸コネクタ30と接続されている。この同軸コネクタ30は、信号発生器の信号出力端子に直接又は他の同軸ケーブル(延長ケーブル)を介して接続される。
【0035】
次に、図6を参照しつつ、イミュニティ試験を行う場合を例にして、プローブ1の動作を説明する。なお、図6は、イミュニティ試験でのプローブ1の動作を説明するための模式的な図である。
【0036】
被試験デバイスとしてのIC200のイミュニティ試験が行われる際には、まず、IC200の電源端子210に取り付けられているバイパスコンデンサが基板から取り外される。次に、同軸コネクタ30が、信号発生器100の出力端子に結合される。続いて、信号用接触子11がIC200の電源端子210(又は電源ライン)に接触されるとともに、接地用接触子12がIC200のグランド端子220(又はグランドライン)に接触される。
【0037】
このように接続された後、信号発生器100の信号源110で、評価したい周波数のノイズ信号(図6の例では1MHz)が生成され、生成されたノイズ信号がIC200の電源端子210に注入される。そして、IC200の動作を確認しながらノイズ信号の出力レベルを徐々に増大し、IC200が誤動作するかどうかを試験することにより、IC200のイミュニティを評価する。
【0038】
ここで、図6に示された例では、信号発生器100から1MHzのノイズ信号が出力される。一方、バンドエリミネーションフィルタ15は、1MHzの電気信号の通過を選択的に阻止するように設定されている。そのため、信号発生器100から出力されたノイズ信号はグランドに落ちることなく、信号用接触子11を通して、IC200の電源端子210に印加される。
【0039】
また、IC200は100MHzで動作している。ここで、バンドエリミネーションフィルタ15は、上述したように、1MHzの電気信号の通過を選択的に阻止するよう設定されているため、IC200から生じる100MHzの高周波電流はバンドエリミネーションフィルタ15を通過することができる。よって、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサ16からの電荷供給は妨げられない。なお、IC200の電源端子210からプローブ1に入力される直流成分は、DCカットコンデンサ17により遮断されため、信号発生器100側には伝達されない。
【0040】
本実施形態によれば、バンドエリミネーションフィルタ15で通過を阻止する電気信号の周波数帯域を、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数に設定しておくことにより、信号発生器から出力されたノイズ信号が、コンデンサ16を介してグランドに流れることを防止できる。よって、ノイズ信号を効率よく被試験デバイスに注入することができる。一方、バンドエリミネーションフィルタ15で通過を阻止する電気信号の周波数帯域を、被試験デバイスの駆動により生じる高周波電流が持つ周波数帯域と異なるように設定しておくことにより、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサ16の電荷供給能力への影響を排除することができる。そのため、イミュニティ試験を行う際に、バンドエリミネーションフィルタ15と接地用接触子11との間に挿入されるコンデンサ16として、バイパスコンデンサと同じ特性を有するものを用いることにより、バイパスコンデンサの本来の働き(電荷供給能力)を低下させることなく、被試験デバイスの電源ラインに効率よくノイズ信号を注入することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態によれば、被試験デバイスから信号発生器側へ伝わる直流成分がDCカットコンデンサ17により遮断されるため、信号発生器を保護することが可能となる。また、DCカットコンデンサ17が、バンドエリミネーションフィルタ15と信号発生器との間に挿入されているため、バンドエリミネーションフィルタ15に接続されている、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサ16の特性に影響を与えることがない。
【0042】
[第2実施形態]
次に、図7を用いて、第2実施形態に係るプローブの構成について説明する。図7は、本実施形態に係るプローブを構成するプローブ本体50の構成を示す図である。なお、その他の構成は、上述した第1実施形態と同一であるので、図示を省略した。また、図7において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0043】
本実施形態に係るプローブは、プローブ本体10に代えて、バンドエリミネーションフィルタを変更可能なプローブ本体50を備えている点で、上述したプローブ1と異なる。プローブ本体50は、例えば3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15c、及び、これらのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cを択一的に切り換える切換スイッチ40を有している点で、上述したプローブ本体10と異なっている。なお、切換スイッチ40は、特許請求の範囲に記載の阻止周波数可変手段に相当する。その他の構成は上述したプローブ本体10と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cそれぞれは、通過を阻止する電気信号の周波数帯域が異なる。なお、プローブ本体50が有するバンドエリミネーションフィルタ回路の数は3つには限られない。バンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cそれぞれは、一端が信号線13(信号用接触子11)に接続されており、他端が切換スイッチ40の選択端子に接続されている。切換スイッチ40の共通端子はコンデンサ16に接続されている。
【0045】
切換スイッチ40は、ユーザの操作に基づいて、3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cの中から所望の阻止周波数帯域を有するバンドエリミネーションフィルタ回路を択一的に選択するスイッチである。切換スイッチ40としては、例えば、機械式のスイッチの他、電気的にスイッチングを行う半導体スイッチ等を用いることができる。なお、本実施形態では、切換スイッチ40を、バンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cとコンデンサ16との間に配置したが、信号線13とバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cとの間に配置する構成としてもよい。
【0046】
イミュニティ試験を行う際に、ユーザは、切換スイッチ40を操作することによって、3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cの中から、印加するノイズ信号の周波数帯域と一致する阻止周波数帯域を有するバンドエリミネーションフィルタ回路を選択する。
【0047】
本実施形態によれば、複数のバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cを択一的に切り換えることにより、バンドエリミネーションフィルタにより阻止される電気信号の周波数帯域を変更することができる。すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数帯域を変更することができる。よって、同一のプローブで印加するノイズ信号の周波数を変更することができるため、イミュニティ試験を効率よく行うことが可能となる。
【0048】
本実施形態では、切換スイッチ40を用いて3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cを切換えたが、バンドエリミネーションフィルタ15が、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び/又は可変コイルを含んで構成されており、阻止するノイズ信号の周波数帯域に応じて、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルの内、少なくともいずれか1つの値を変更する構成としてもよい。ここで、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルは公知のものを用いることができる。例えば、回転軸を回すことで抵抗値を可変できる可変抵抗器、静電容量を可変できる可変コンデンサ、インダクタンスを可変できる可変コイルを用いることができる。また、制御電圧を調節することにより抵抗値を可変できる電圧制御型の可変抵抗器や、制御電圧によって容量が変わる可変コンデンサなどを用いてもよい。なお、この場合、回転軸の駆動機構や制御電圧を生成する電気回路等が、特許請求の範囲に記載の阻止周波数可変手段として機能する。
【0049】
このようにすれば、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルの内、少なくともいずれか1つの値を変更することにより、バンドエリミネーションフィルタ15により阻止されるノイズ信号の周波数帯域を変更すること、すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。
【0050】
また、切換スイッチ40を用いて3つのバンドエリミネーションフィルタ回路15a,15b,15cを切換える構成に代えて、バンドエリミネーションフィルタ15が、着脱して交換可能に構成されていてもよい。この場合、エリミネーションフィルタ15を着脱して交換することにより、バンドエリミネーションフィルタ15により阻止されるノイズ信号の周波数帯域を変更すること、すなわち、被試験デバイスに印加するノイズ信号の周波数を変更することができる。
【0051】
[第3実施形態]
次に、図8を用いて、第3実施形態に係るプローブの構成について説明する。図8は、本実施形態に係るプローブを構成するプローブ本体50の構成を示す図である。なお、その他の構成は、上述した第1実施形態と同一であるので、図示を省略した。また、図8において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0052】
本実施形態に係るプローブは、プローブ本体10に代えて、コンデンサ16を変更可能なプローブ本体60を備えている点で、上述したプローブ1と異なる。プローブ本体60は、例えば3つのコンデンサ16a,16b,16c、及び、これらのコンデンサ16a,16b,16cを択一的に切り換えてバンドエリミネーションフィルタ16と接続する切換スイッチ41を有している点で、上述したプローブ本体10と異なっている。なお、切換スイッチ41は、特許請求の範囲に記載の特性可変手段に相当する。その他の構成は上述したプローブ本体10と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0053】
3つのコンデンサ16a,16b,16cそれぞれは、電荷供給能力などの特性が異なる。なお、プローブ本体50が有するコンデンサの数は3つには限られない。コンデンサ16a,16b,16cそれぞれは、一端がグランド線14(接地用接触子12)に接続されており、他端が切換スイッチ41の選択端子に接続されている。切換スイッチ41の共通端子はバンドエリミネーションフィルタ15の出力端に接続されている。
【0054】
切換スイッチ41は、ユーザの操作に基づいて、3つのコンデンサ16a,16b,16cの中から所望の特性を有するコンデンサを択一的に選択するスイッチである。切換スイッチ41としては、例えば、機械式のスイッチの他、電気的にスイッチングを行う半導体スイッチ等を用いることができる。なお、本実施形態では、切換スイッチ41を、バンドエリミネーションフィルタ15とコンデンサ16a,16b,16cとの間に配置したが、グランド線14とコンデンサ16a,16b,16cとの間に配置する構成としてもよい。
【0055】
イミュニティ試験を行う際に、ユーザは、切換スイッチ41を操作することによって、3つのコンデンサ16a,16b,16cの中から、所望する特性を有するコンデンサを選択する。
【0056】
本実施形態によれば、複数のコンデンサ16a,16b,16cを択一的に切り換えることにより、コンデンサの特性を変更することができる。よって、バイパスコンデンサとして機能するコンデンサの特性を変化させた試験ができるため、より詳細なイミュニティ評価を実施することが可能となる。
【0057】
本実施形態では、切換スイッチ41を用いて3つのコンデンサ16a,16b,16cを切換えたが、コンデンサ16が、可変コンデンサであり、ユーザの操作に応じて、可変コンデンサの静電容量を調節する構成としてもよい。ここで、可変コンデンサは公知のものを用いることができる。例えば、回転軸を回すことで静電容量を可変できる可変コンデンサ、又は、制御電圧を調節することにより静電容量を可変できる可変コンデンサなどを用いてもよい。なお、この場合、回転軸の駆動機構や制御電圧を生成する電気回路等が、特許請求の範囲に記載の特性可変手段として機能する。このようにすれば、ユーザの操作に応じて、コンデンサ16の容量を変更することができる。
【0058】
また、切換スイッチ41を用いて3つのコンデンサ16a,16b,16cを切換える構成に代えて、コンデンサ16が、着脱して交換可能に構成されていてもよい。この場合、コンデンサ16を着脱して交換することにより、コンデンサ16の容量などの特性を変更することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上述した、第2実施形態と第3実施形態とを組合せ、バンドエリミネーションフィルタ15とコンデンサ16とを組み合わせて変更可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 プローブ
10,50,60 プローブ本体
11 信号用接触子
12 接地用接触子
13 信号線
14 グランド線
15 バンドエリミネーションフィルタ
15a,15b,15c バンドエリミネーションフィルタ回路
16 コンデンサ
16a,16b,16c コンデンサ
17 DCカットコンデンサ
18 信号端子
19 グランド端子
20 同軸ケーブル
30 同軸コネクタ
40,41 切換スイッチ
100 信号発生器
200 被試験デバイス(IC)
210 電源端子
220 グランド端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となって、被試験デバイスの電源端子とグランド端子とにノイズ信号を印加する信号用接触子及び接地用接触子と、
前記信号用接触子と入力端が接続され、所定の周波数帯域の電気信号の通過を選択的に阻止するバンドエリミネーションフィルタと、
一端が前記バンドエリミネーションフィルタの出力端と接続され、他端が前記接地用接触子と接続されたコンデンサと、を備えることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記バンドエリミネーションフィルタにより阻止される電気信号の周波数帯域を変更する阻止周波数可変手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記バンドエリミネーションフィルタは複数のバンドエリミネーションフィルタ回路を有し、
前記阻止周波数可変手段は、前記複数のバンドエリミネーションフィルタ回路を択一的に切り換えることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記バンドエリミネーションフィルタは、可変抵抗器、可変コンデンサ、及び/又は可変コイルを含んで構成されており、
前記阻止周波数可変手段は、阻止するノイズ信号の周波数帯域に応じて、前記可変抵抗器、可変コンデンサ、及び可変コイルの内、少なくともいずれか1つの値を変更することを特徴とする請求項2に記載のプローブ。
【請求項5】
前記バンドエリミネーションフィルタは、着脱して交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
前記コンデンサの特性を変更する特性可変手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記コンデンサは、特性が異なる複数のコンデンサからなり、
前記特性可変手段は、前記複数のコンデンサを択一的に切り換えて前記バンドエリミネーションフィルタと接続することを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
前記コンデンサは、可変コンデンサであり、
前記特性可変手段は、ユーザの操作に応じて、前記可変コンデンサの容量を調節することを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項9】
前記コンデンサは、着脱して交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項10】
一端が前記信号用接触子及び前記バンドエリミネーションフィルタと接続されるとともに、他端が前記ノイズ信号を発生する信号発生器と接続され、前記被試験デバイスの電源端子から入力される直流成分を遮断するDCカットコンデンサをさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のプローブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−179930(P2011−179930A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43554(P2010−43554)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】