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ヘアライン加工特有の触感を備えるとともに、耐指紋性の機能を備えたヘアライン調加飾成形品
説明

ヘアライン加工特有の触感を備えるとともに、耐指紋性の機能を備えたヘアライン調加飾成形品

【課題】指で触ったときにヘアライン意匠特有のでこぼこした触感を得られるとともに、指で触っても指紋が付着しにくく、指紋が付着しても指紋が取れやすい加飾成形品を提供する。
【解決手段】複数の凸部を一方の面に備え、前記凸部の高さが1〜10μm、前記凸部の隣接頂点間距離が1〜100μmである成形品と、前記成形品の前記凸部が形成された面に形成される接着層と、前記接着層の上に形成され、前記接着層と接する面とは反対方向の面に微細凸部を備え、前記微細凸部の高さが0.1〜1μm、前記微細凸部の近接頂点間距離が0.1〜100μmである保護層とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアライン調の意匠を備えるヘアライン調加飾成形品に関し、特に、耐指紋性の機能を有するヘアライン調加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
転写シートを用いて、プラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は加飾する方法は従来から知られている。例えば、特許文献1には支持体である基体シートの面上に転写層が形成された転写シート、及びその転写シートを射出成形金型内に挿入し、インモールド射出成形して、装飾された射出成形体を得ることが記載されている。
【0003】
転写シートは、支持体である基体シートの上に転写層が設けられた構成からなり、この転写層が成形品の表面に転写される。成形品の表面に転写された転写層は樹脂や絵柄が層状に積層された積層体であり、成形品表面に保護被覆や装飾被覆を形成する。
【0004】
従来より、成形品に対する保護機能が重視される場合がある。この保護機能が重視される場合には、転写シートの最外側に保護層が設けられる。更に用途によっては、保護層がヘアラインの意匠を備えることが求められる。この場合、基体シートと保護層との間にヘアライン層が設けられる。ヘアライン層は、表面形状が凹凸形状となっており、この凹凸形状が保護層に写し取られることにより、保護層がヘアラインの意匠を備えるようになっている。
【0005】
図5を参照して、転写シートを使用して得られる加飾成形品500は、成形品510と、成形品510の表面を外傷から保護する保護層512と、保護層512と成形品510とを密着させる接着層511とから構成され、保護層512は、その表面に凸部513と凹部514を備えている。なお、凸部513と凹部514の高低差は、加飾成形品500がヘアライン加工製品に特有のでこぼこした触感を有するよう、できるだけ大きくなるよう構成されている。
【0006】
しかし、凸部513と凹部514の高低差が大きくなると、加飾成形品500を指600で触ったときに、指の油分(以下、指紋という)が保護層512の凹部分514に付着しやすくなり、一度付着すると、保護層512を布やペーパーなどで拭いても取れないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−58895
【特許文献2】特開2003−103673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、ヘアライン加工製品特有のでこぼこした触感を有するとともに、指で触っても指紋が付着しにくく、指紋が付着しても指紋が取れやすい加飾成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加飾成形品は、複数の凸部を一方の面に備え、前記凸部の高さが1〜10μmであり、前記凸部の隣接頂点間距離が1〜100μmである成形品と、前記成形品の前記凸部が形成された面に形成される接着層と、前記接着層の上に形成され、前記接着層と接する面とは反対方向の面に微細凸部を備え、前記微細凸部の高さが0.1〜1μmであり、前記微細凸部の近接頂点間距離が0.1〜100μmである保護層とを備える。
【0010】
ある一形態においては、前記保護層の表面における算術平均粗さ(Ra2)が、前記成形品と前記接着層との間における算術平均粗さ(Ra1)より小さい。
【0011】
ある一形態においては、前記成形品と前記接着層との間における算術平均粗さ(Ra1)が、0.1〜10μmである。
【0012】
ある一形態においては、前記保護層の表面における算術平均粗さ(Ra2)が、0.01〜1μmである。
【0013】
ある一形態においては、前記保護層と前記接着層との間に、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂のいずれかを少なくとも一種を含む絵柄層を備え、前記成形品が金属板であり、前記接着層が両末端にカルボキシル基を有するポリエステルとビスフェノール型エポキシ樹脂を、75/25〜90/10の重量比で反応させて得られる、ガラス転移温度30〜100℃及び分子量20000〜30000のエポキシ変性ポリエステル樹脂を含み、その厚みが5〜10μmである。
【0014】
ある一形態においては、前記接着層が、前記エポキシ変性ポリエステルに対して、重量比0.05〜0.1の量でコロイダルシリカを含有する。
【0015】
ある一形態においては、前記接着層が、硬化剤としてブロックイソシアネートを含有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加飾成形品は、複数の凸部を一方の面に備え、前記凸部の高さが1〜10μm、前記凸部の隣接頂点間距離が1〜100μmである成形品と、前記成形品の前記凸部が形成された面に形成される接着層と、前記接着層の上に形成され、前記接着層と接する面とは反対方向の面に微細凸部を備え、前記微細凸部の高さが0.1〜1μm、前記微細凸部の近接頂点間距離が0.1〜100μmである保護層とを備える。その結果、指で触ったときにヘアライン意匠特有のでこぼこした触感を得られるとともに、指で触っても指紋が付きにくく、指紋が付着しても指紋が取れやすい加飾成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の加飾成形品の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】図1の拡大図である。
【図4】本発明の加飾成形品の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の加飾成形品の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記で、本発明に係る実施形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例に記載した部位や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
加飾成形品
図1は、この発明の加飾成形品100を示した図である。図2は、図1のα領域における拡大図である。図3は、図1のβ領域における拡大図である。図1を参照して、本発明の加飾成形品100は、成形品1の上に接着層2、絵柄層3、保護層4が、この順番で形成されている。
【0020】
成形品
成形品は、絵柄層に形成された模様や色彩によって装飾が施される物品である。成形品の材質としては、各種合成樹脂、金属、ガラス、木、紙でなる部材、これらの塗装物などが挙げられる。成形品が、金属から構成される場合、成形品を構成する材料としては、例えば、鉄、ブリキ、ステンレス鋼、チタン、銅、アルミニウム等の金属、及びガラスなどが挙げられる。なお、これらの成形品の接着層などが形成される面にはあらかじめ易接着化処理等の表面処理が施されていてもよく、また各種プライマーなどが形成されていてもよい。
【0021】
図1、および図2を参照して、成形品1の接着層2などが形成される側の表面は、凹凸形状を有しており、その凹凸形状は、複数の凸部5と凹部6から構成されている。なお、凸部5の高さHと、隣接する凸部5の頂点間距離Aは、それぞれ1μm〜10μm、1〜100μmであることが好ましい。さらに、好ましくは、それぞれ1μm〜4μm、1μm〜10μmである。凸部5の高さHと、隣接する凸部5の頂点間距離Aが、上記範囲にあると、その凹凸形状でヘアラインの意匠を表現できるとともに、加飾成形品を指で触ったときに、加飾成形品からヘアライン加工特有のでこぼこした触感を得ることができるからである。
【0022】
なお、凸部5の高さHが1μm未満であると凹凸形状の高低差が小さすぎて、ヘアライン加工製品が本来備える模様が表現できないという問題が発生し、反対に10μmを越えると、一旦指紋などが保護層に付着すると、当該指紋などが除去されにくいという問題が発生する。
【0023】
また、上記頂点間距離Aが1μm未満であると隣り合う凸部が近過ぎて、ヘアライン加工製品が本来備えるヘアラインの立体的形状が表現できないという問題が発生し、反対に、100μmを越えると隣接する凸部間の距離が遠すぎて隙間が多く発生するので、ヘアライン加工製品が備える立体的形状が表現できないという問題が発生する。
【0024】
さらに、成形品1の凹凸形状の算術平均表面粗さ(Ra1)は、0.1μm〜10μmであることが好ましい。さらに、好ましくは0.1μm〜1.0μmである。算術平均表面粗さ(Ra1)が上記範囲であると、本来ヘアライン加工製品が備える立体的形状に起因した触感と、耐指紋性を備えたヘアライン意匠が実現できるためである。
【0025】
なお、算術平均表面粗さ(Ra1)が0.1μm未満であると凹凸形状の高低さが小さすぎて、本来ヘアライン加工製品が備える立体的形状に起因した触感が得られないという問題が発生し、反対に、10μmを越えると凹凸形状の高低さが大きすぎて、本来ヘアライン加工製品が備える立体的形状に起因した触感が得られないという問題が発生する。
【0026】
接着層
接着層は、成形品を絵柄層などの層と貼着するための層であり、成形品と絵柄層との間に形成される。接着層に用いる材料としては、成形品の種類に適した感熱性又は感圧性のある樹脂が選択される。
【0027】
特に成形品が、金属から構成される場合、接着層の構成材料としては、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルとビスフェノール型エポキシ樹脂を反応させて得られるエポキシ変性ポリエステル樹脂を使用するとよい。
【0028】
両末端にカルボキシル基を有するポリエステルは、二塩基酸および多価アルコールを縮合反応させることにより得られる。
【0029】
二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二塩基酸、ジフェノリック酸、これら芳香族二塩基酸の酸無水物および水添物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオイック酸などの飽和脂肪族二塩基酸およびその酸無水物、不飽和脂肪酸から誘導されたダイマー酸類などがあげられ、これらの二塩基酸は通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの二塩基酸のなかでは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸類、ジフェノリック酸などは人体に対する安全性に優れ、特に好適に使用しうる。
【0030】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環構造を有するジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイドの付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイドの付加物などの二価アルコールなどがあげられる。これらの多価アルコールのなかでは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコールなどは、人体に対する安全性に優れ、特に好適に使用しうる。
【0031】
前記二塩基酸および前記多価アルコールの配合割合は、通常二塩基酸のカルボキシル基/多価アルコールの水酸基の当量比が1.01/1〜2/1となるように調整される。かかる当量比が1.01/1よりも小さい場合には、得られるポリエステルの分子量が大きくなって粘度が大きくなりすぎ、エポキシ樹脂との反応性に乏しくなり、また2/1を超える場合には、未反応の二塩基酸が残存し、形成される接着層の接着性が低下する。
【0032】
両末端にカルボキシル基を有するポリエステルの数平均分子量(以下、Mnという)は、前記二塩基酸および前記多価アルコールの配合割合によって決定され、一般に300〜10000、好ましくは500〜8000である。Mnが300未満であると形成される接着層の接着性が低下し、10000を超えると、後述のエポキシ変性ポリエステルの粘度が大きくなるため、流動性が悪くなり、成形品1の凹凸部分に隙間無くエポキシ変性ポリエステルを形成するのが困難となる。
【0033】
両末端にカルボキシル基を有するポリエステルはガラス転移温度(Tg)が5〜60℃、好ましくは15〜45℃、より好ましくは25〜30℃である。Tgが5℃未満であると装飾被覆の硬度が低下し、60℃を超えると接着層の接着性が低下する。
【0034】
前記エポキシ樹脂としては、例えば脂肪族系ジエポキシドをはじめ、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらのエポキシ樹脂は通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらのエポキシ樹脂のなかでは、ビスフェノールAのポリグリシジリエーテル、いわゆるエピビス型エポキシ樹脂が人体に対する安全面で特に好ましい。
【0035】
前記エポキシ樹脂1分子中に含まれるエポキシ基の数は平均して1.1〜2個、特に好ましくは2個である。前記エポキシ基の数は1.1個よりも少ない場合には、ポリエステルとの反応性に乏しくなり、また2個を超える場合には、ポリエステルとの縮合反応時に反応系が高粘度となり、著しい場合にはゲル化するようになる。
【0036】
また、前記エポキシ樹脂のMnは、340〜20000、好ましくは350〜10000である。Mnが340未満であるとハードセグメントであるエポキシ樹脂による効果が充分に発現されなくなり、20000を超えると、後述のエポキシ変性ポリエステルの粘度が大きくなるため、流動性が悪くなり、成形品1の凹凸部分に隙間無くエポキシ変性ポリエステルを形成するのが困難となる。
【0037】
前記エポキシ樹脂はTgが40〜180℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは95〜100℃である。Tgが40℃未満であると装飾被覆の硬度が低下し、180℃を超えると接着層の接着性が低下するためである。
【0038】
ポリエステルと前記エポキシ樹脂との配合割合(重量比)は、50/50以上、好ましくは60/40〜95/5、より好ましくは75/25〜90/10である。この配合割合が50/50未満では接着層の接着性が低下し、95/5を超えると装飾被覆の硬度が低下するためである。
【0039】
前記ポリエステルとエポキシ樹脂の反応は、通常の溶液重合法によって行なうことができる。かかる溶液重合法の一例をあげれば、例えば所望量のポリエステルとエポキシ樹脂を調整し、これを溶剤に溶解し、例えばチッ素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で100〜200℃で30分〜6時間加熱する方法などがあげられる。前記溶剤としては、副反応をおこさないものが選ばれ、例えばシクロヘキサノン、キシレンなどがあげられる。なお、反応の際には、例えば3級アミンなどの塩基性触媒を適宜配合して反応を促進させてもよい。
【0040】
かくして得られるエポキシ変性ポリエステルのMnは、10000〜20000、好ましくは12000〜20000である。Mnが12000未満であると保護層の硬度が低下し、50000を超えると印刷適性が低下し、転写層の絵柄が存在しない部分の剥離が生じ易くなる。
【0041】
接着層は、硬化剤として、ブロックイソシアネートなどの熱硬化性を付与しうる化合物を適宜含有することが好ましい。これらの熱硬化性樹脂などの硬化剤を配合した場合には、加熱時にエポキシ変性ポリエステルとのあいだでいわゆる三次元網目構造を有する樹脂硬化物が形成される。
【0042】
前記硬化剤を配合する場合には、エポキシ変性ポリエステル100重量部に対して硬化剤を2〜50重量部、特に5〜30重量部配合することが好ましい。かかる硬化剤の配合量が前記範囲よりも少ない場合には、加熱ラミネート時に加熱による硬化剤を配合することによる効果、すなわち硬化反応速度があまり向上しなくなる傾向があり、また前記範囲よりも多い場合には、硬化剤の縮合時に生成した水、アルコールなどの量が多くなり、接着層の接着性が低下する。
【0043】
接着層には無機粒子を含有させてもよい。そうすることで、装飾被覆の硬度が更に向上する。接着層に無機粒子を含有させる場合、粒子はエポキシ変性ポリエステルに対して、重量比0.5以下、好ましくは0.05〜0.1になる量で使用される。無機粒子の量がエポキシ変性ポリエステルに対して、重量比0.5を超えると、接着層の接着性が低下する。
【0044】
無機粒子としては、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカ粒子は遊離シラノール基の量が1〜50(counts/nm2)である。遊離シラノール基の量が上記範囲であると反応性に富み、好ましい。コロイダルシリカ粒子は、一次粒子径が、通常1〜200nm、好ましくは10〜50nmである。この範囲にあると、箔バリ抑制の効果が発揮され、保護膜に透明性が失われることがない。また、粒子径が10〜20nm範囲のコロイダルシリカが市販されており、容易かつ安価に入手可能である。
【0045】
接着層の厚みは、15μm以下、好ましくは5〜10μmである。接着層の厚みが15μm以上であると、保護層の硬度が低下する。
【0046】
絵柄層
絵柄層は、成形品に絵柄などの装飾を施すための層であり、必要に応じて、保護層の上に形成される。絵柄層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。また、金属発色させる場合には、アルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料を用いることもできる。また、絵柄層は透過性であっても、遮光性であってもよい。
【0047】
保護層
保護層は、物品の表面に配置される層であり、保護層の下に配置される成形品などを物理的または化学的な外傷から保護する層である。
【0048】
図3を参照して、保護層4は、その表面に微細な凹凸形状を備えており、その凹凸形状は、複数の微細凸部7と、微細凹部8から構成されている。なお、上記微細凸部7の高さhと、隣接する微細凸部7の頂点間距離aは、それぞれ0.1μm〜1.0μm、0.1μm〜99μmであることが好ましい。さらに、好ましくは、0.1μm〜0.5μm、0.1μm〜1.0μmである。
【0049】
微細凸部7の高さhと、隣接する微細凸部7の頂点間距離aが上記範囲にあると、加飾成形品を指で触ったときに、指と保護層4とが接する面積が小さくなるので、加飾成形加成が指紋に付着する割合が小さくなる。
【0050】
さらに、微細凸部7の高さhと、隣接する微細凸部7の頂点間距離aが上記範囲にあると、指で保護層4を触っても、指紋が微細凹部8に浸入しづらくなる。その結果、保護層4に付いた指紋はペーパーなどで簡単に拭き取ることができる。
【0051】
なお、微細凸部7の高さが、0.1μm未満であると指紋が付着しやすいため耐指紋性の機能を発現できないという問題が発生し、反対に、1.0μmを越えると付着した指紋が除去しにくいという問題が発生する。
【0052】
さらに、隣接する微細凸部7の頂点間距離aが0.1μm未満であると指紋が付着しやすいため耐指紋性の機能を発現できないという問題が発生し、反対に、99μmを越えると付着した指紋が除去しにくいという問題が発生する。
【0053】
さらに、保護層4の微細凹凸形状の算術平均表面粗さ(Ra2)は、0.01〜1μmであることが好ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.50μmである。算術平均表面粗さ(Ra2)が上記範囲であると、保護層4上にニュートンリングが発生するのを抑制できるからである。
【0054】
さらに、保護層4の微細凹凸形状の算術平均表面粗さ(Ra2)は、成形品1の凹凸形状の算術平均表面粗さ(Ra1)より、小さいことが好ましい。上記のようであると、保護層4がフラクタル構造を形成するため耐指紋性能が発揮できるからである。
【0055】
保護層4の膜厚は、1μm〜20μmの範囲であることが好ましい。保護層4の膜厚が1μm未満の場合、薄すぎて保護機能を充分に発揮できなくなり、反対に保護層4の膜厚が20μmを超えると、成形時に保護層4にクラックが発生するため好ましくない。
【0056】
保護層4の材質としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリルもしくはメタクリルモノマーの単独共重合体もしくはこれらのモノマーを含む共重合体のアクリル系樹脂のほか、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることができる。
【0057】
具体的には、メラミン、アクリルメラミン、エポキシメラミン、アルキド、ウレタン、アクリルなどの一液硬化性及びこれらを混合した樹脂、またはイソシアネートなどの硬化剤との組み合わせによる二液硬化性の樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレートなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーやプレポリマーなどから構成される紫外線、電子線硬化樹脂などが使用できる。なお、紫外線硬化樹脂を用いるときは、光開始剤をさらに添加する。
【0058】
光開始剤としては、適宜選択できる。例えば、ベンゾインエーテル系、ケタール系、アセトフェノン系、チオキサントン系等のラジカル型光重合開始剤、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等や複合系のカチオン型光重合開始剤が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上が使用できる。
【0059】
加飾成形品の製造方法
図4は、加飾成形品の製造方法を示した図である。図4を参照して、加飾成形品は、基体シート10、保護層11、絵柄層12、接着層13からなる転写シート20を、成形品30に熱ロール転写することにより、得ることができる。熱ロール転写における加飾方法は、まず、転写シート20に存在する絵柄層12の位置を考慮して、成形品30の所望の位置に絵柄層12が配置されるように転写シート20の位置を決定する。次いで、転写シート20の内側(接着層13側)の面を成形品の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、転写シート20の基体シート10側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、転写シート20が成形品30の表面に接着し、成形品30の表面の加飾がなされる。
【0060】
基体シートの材質はPETフィルムなどから構成される。保護層、絵柄層、接着層、成形品は、上述の材料から構成される。なお、保護層、絵柄層、接着層は、上記順番でグラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷方法によって基体シートの上に形成される。
【0061】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」又は「%」で表される量は特に断りなき限り重量基準である。
【0062】
<実施例1>
【0063】
1.基材の製造
厚み0.8μmのアルミ板(住友軽金属株式会社製、商品名:A5052)を基材として用意した。この基材をヘアライン加工機にセットした後、ヘアライン加工を施して、この基材の表面に凹凸形状を形成した。基材に形成された凹凸形状を、拡大鏡(日本電子株式会社製、商品名:走査電子顕微鏡(SEM))で測定したところ、凹凸形状の凸部分の高さは、3.8μm、隣接する凸部の距離は9.8μmであった。さらに、基材に形成された凹凸形状の表面粗さ(Ra)を表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、商品名:サーフコム)で測定したところ、0.6μmであった。
【0064】
2.転写シートの製造
厚み50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基体シートとして用意した。この基体シートをヘアライン加工機にセットした後、ヘアライン加工を施して基体シートの表面に凹凸形状を形成した。基体シートに形成された凹凸形状を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名:走査電子顕微鏡(SEM))で測定したところ、凹凸形状の凸部分の高さは、0.47μm、隣接する凸部の距離は0.82μmであった。さらに、基体シートに形成された凹凸の表面粗さ(Ra)を表面粗さ測定機(株式会社東京精密社製、(商品名)サーフコム)で測定したところ、0.25μmであった。次に、基体シートを多色グラビア輪転印刷機にセットし、アクリレート系樹脂からなる紫外線硬化性材料を用いて、基体シートの凹凸形成された面に保護層を形成した。最後に、接着材料を用いて、保護層の上に接着層を形成し、転写シートを得た。
【0065】
なお、接着材料は、ガラス転移温度(Tg)が25〜30℃の両末端にカルボキシル基を有するポリエステルと、ガラス転移温度(Tg)が95〜100℃のビスフェノール型エポキシ樹脂とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社、商品名:MEK-ST)を表1に示す割合で配合、攪拌して作成した。なお、接着材料のガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量は表1の通りであり、接着材料は全体重量に対して、固形分が20%の割合で存在しているものを使用した。
【0066】
3.ヘアライン調加飾成形品の製造
上記で得られた転写シートと基材をロール転写機(ナビタス株式会社製、商品名:RH−300)を用いて貼合した。最後に貼合した成形品から基体シートを剥離して、ヘアライン調加飾成形品を得た。
【0067】
<実施例2〜3、比較例1〜3>
基材に形成する凹凸の幅、高さ、及び基体シートに形成する凹凸の幅、高さを変更したこと以外は、実施例1と同様にしてヘアライン調加飾成形品を作成した。
【0068】
実施例及び比較例は、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0069】
1.耐指紋性
(1)指紋除去容易性
加飾成形品におけるハードコート層の表面をJIS K2246に記載されている指紋除去性試験方法に準拠して実施した。なお、指紋が除去されたか否かの判断は、試験片の人工指紋液を付着させた部分の外観を三波長光源下にて20cm離して目視で観察することにより行い、評価は下記に従って行った。その結果を表1に示す。
【0070】
評価基準
○ :5回未満で加飾成形品の表面に付着した指紋を完全に除去できた。
△ :5回以上10回未満で加飾成形品の表面に付着した指紋を完全に除去できた。
× :加飾成形品の表面を10回以上拭いたが完全には指紋を除去できなかった。
【0071】
(2)指紋付着困難性
加飾成形品の表面を複数回接触させ、何回目で加飾成形品の表面に指紋が付着するかを試験した。指紋が付着したかどうかの判断は、試験片の指が接触した部分の外観を三波長光源下にて20cm離して目視で観察することにより行い、評価は下記に従って行った。その結果を表1に示す。
【0072】
評価基準
○ :10回以上、加飾成形品の表面に指を接触させても、加飾成形品の表面には指紋が付着しなかった。
△ :5回以上10回未満、加飾成形品の表面に指を接触させると、加飾成形品の表面に指紋が付着した。
× :1回加飾成形品の表面に指を接触させると、加飾成形品の表面に指紋が付着した。
【0073】
2.触感性
加飾成形品の表面を指でなぞり、加飾成形品にヘアライン加工製品特有のでこぼこした触感があるかどうか試験した。接触性の評価は、50人がヘアライン金属板(会社名 志摩鋼業株式会社 商品名 SUS304HL)と上記加飾成形品を、それぞれ触ったときに感じる触感の差異についてアンケート調査することにより行った。なお、触感性の評価基準は下記に示す通りである。その結果を表1に示す。
【0074】
評価基準
○ :50人中40人以上が、両者の触感に差異はないと回答した。
△ :50人中、25〜40未満の人が、両者の触感に差異はないと回答した。
× :50人中25人未満の人が、両者の触感に差異はないと回答した。
【0075】
3.意匠性
加飾成形品の意匠性について試験した。意匠性の評価は、50人がヘアライン金属(志摩鋼業株式会社 商品名 SUS304 HL)と上記加飾成形品を、それぞれ30cm離れた距離から観察したときに感じる意匠性の差異についてアンケート調査することにより行った。なお、意匠性の評価基準は下記に示す通りである。その結果を表1に示す。
【0076】
評価基準
○ :50人中40人以上が、両者の美感に差異はないと回答した。
△ :50人中、25〜40未満の人が、両者の美感に差異はないと回答した。
× :50人中25人未満の人が、両者の美感に差異はないと回答した。
【0077】
4.表面硬度
加飾成形品における、ハードコート層の表面硬度をJIS K5600−5−4に記載されている引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定した。なお、表面硬度の評価基準は下記に示す通りである。その結果を表1に示す。
【0078】
評価基準
○ :引っかき硬度(鉛筆硬度)がH〜2Hの範囲であった。
△ :引っかき硬度(鉛筆硬度)がHB〜Fの範囲であった。
× :引っかき硬度(鉛筆硬度)がB以下の範囲であった。
【0079】
5.接着性
加飾成形品における接着層と基材の接着性について測定した。接着性の測定方法は、JIS K5600−5−6に記載されているクロスカット法に準拠して行った。なお、接着性の評価基準は下記に示す通りである。その結果を表1に示す
【0080】
評価基準
○ :カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれが観察されなかった。
△ :カットの交差点における塗膜に小さな剥がれが確認でき、その剥がれは接着層と基材との間で発生していた。剥がれは、クロスカットを行った部分の5%未満であった。
× :カットの交差点における塗膜に小さな剥がれが確認でき、その剥がれは接着層と基材との間で発生していた。剥がれは、クロスカットを行った部分の5%以上であった。
【0081】
【表1】

【符号の説明】
【0082】
1…成形品、
2…接着層、
3…絵柄層、
4…保護層、
5…凸部、
6…凹部、
7…微細凸部、
8…微細凹部、
10…基体シート、
11…保護層、
12…絵柄層、
13…接着層、
20…転写シート、
30…成形品、
100…加飾成形品、
500…加飾成形品、
510…成形品、
511…接着層、
512…接着層、
513…保護層、
514…凸部、
515…凹部、
600…指、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアライン調の意匠を備える加飾成形品において、
複数の凸部を一方の面に備え、前記凸部の高さが1〜10μmであり、前記凸部の隣接頂点間距離が1〜100μmである成形品と、
前記成形品の前記凸部が形成された面に形成される接着層と、
前記接着層の上に形成され、前記接着層と接する面とは反対方向の面に微細凸部を備え、前記微細凸部の高さが0.1〜1μmであり、前記微細凸部の近接頂点間距離が0.1〜100μmである保護層と、
を備える加飾成形品。
【請求項2】
前記保護層の表面における算術平均粗さ(Ra2)が、前記成形品と前記接着層との間における算術平均粗さ(Ra1)より小さい請求項1の加飾成形品。
【請求項3】
前記成形品と前記接着層との間における算術平均粗さ(Ra1)が、0.1〜10μmである請求項1〜2の加飾成形品。
【請求項4】
前記保護層の表面における算術平均粗さ(Ra2)が、0.01〜1μmである請求項1〜3の加飾成形品。
【請求項5】
前記保護層と前記接着層との間に、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂のいずれかを少なくとも一種を含む絵柄層を備え、
前記成形品が金属であり、
前記接着層が両末端にカルボキシル基を有するポリエステルとビスフェノール型エポキシ樹脂を、75/25〜90/10の重量比で反応させて得られる、ガラス転移温度30〜100℃及び分子量20000〜30000のエポキシ変性ポリエステル樹脂を含み、その厚みが5〜10μmである請求項1〜4の加飾成形品。
【請求項6】
前記接着層が、前記エポキシ変性ポリエステルに対して、重量比0.05〜0.1の量でコロイダルシリカを含有する請求項1〜5の加飾成形品。
【請求項7】
前記接着層が、硬化剤としてブロックイソシアネートを含有する請求項1〜6の加飾成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91191(P2013−91191A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233447(P2011−233447)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】