説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】良好なノイズ耐性を安定的に維持することが可能なヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】ヘッドマウントディスプレイ(HMD)1は、接眼光学系102に対して液晶装置101を移動させることによって、使用者が視認する画像のピントを合わせる。液晶装置101と制御基板20とは、フレキシブルプリント基板(FPC)31によって接続している。液晶装置101が制御基板20に近接した場合、FPC31は左右から押されることによって撓み、延設部分311が上方に大きく湾曲し、中筐体12と右筐体13とに近接する。FPC31のうち中筐体12および右筐体13に近接する面に導電性フィルム51が設けられている。導電性フィルム51は、中筐体12と右筐体13との間の隙間121から筐体2内部に侵入する静電気ノイズが、FPC31に電気的な影響をおよぼすことを抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板を備えたヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者に画像を認識させるヘッドマウントディスプレイの駆動方式として、様々な方式が提案されている。例えば特許文献1には、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)に表示した画像を、ハーフミラーを介して使用者に視認させる方式が提案されている。本方式のヘッドマウントディスプレイを着用した使用者は、外界景色に、LCDに表示された画像を重ねて認識することができる。また本方式では、LCDの位置を変化させることによって、使用者とLCDとの間の光学的距離を変化させることができる。これによってヘッドマウントディスプレイは、使用者に対して、LCDに表示した画像によって示される対象物が近づいたり離れたりしているかのように見せることができる。また、使用者が画像を視認する場合のピントを合わせることができる。
【0003】
LCDを制御する制御基板とLCDとの間は、通常、フレキシブルプリント基板(Flexible printed circuits、FPC)によって接続される。ここで特許文献1に記載された方式にFPCを適用した場合、LCDの位置の変化に伴い、FPCの状態も変化する。具体的には、制御基板とLCDとの間の距離が離間した場合には、FPCは伸びた状態になり、制御基板とLCDとの間の距離が近接した場合には、FPCは制御基板とLCDとの間で曲がりくねった状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−16099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FPC、制御基板およびLCDは、通常、筐体に収納される。ヘッドマウントディスプレイは使用者の頭部に固定されるので、その筐体は小さい方が望ましい。このためFPCは、筐体が大きい場合と比較して、状態の変化によって筐体に近接し易くなる。ここで一般的に、筐体外部からのノイズに対して、筐体内部且つ筐体近傍の電子部品は影響を受け易い。従って筐体内部のFPCの状態によっては、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性が悪化する場合がある。以上の理由から、LCDの位置の変化に応じてFPCの状態が変化することによって、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性が変化し、ノイズ耐性を安定的に維持できないという問題点がある。特に、制御基板とLCDとの間の距離が近接してFPCが曲がりくねり、筐体にFPCが近接した場合、筐体外部からのノイズがFPCに影響を及ぼし易くなるので、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性が悪化するという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、良好なノイズ耐性を安定的に維持することが可能なヘッドマウントディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヘッドマウントディスプレイは、使用者に視認させる画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部に画像を形成させるための制御を行う制御部と、前記制御部が前記画像形成部を制御するための電気信号を、前記制御部および前記画像形成部の間で伝達するフレキシブルプリント基板と、前記画像形成部に形成された前記画像の光を、前記使用者の眼に導く光学系と、前記制御部および前記光学系に対して前記画像形成部を相対移動させる移動制御部と、前記フレキシブルプリント基板の少なくとも一方の面に設けられ、導電性を有するフィルム状の部材であって、前記フレキシブルプリント基板よりも剛性の小さい導電部材と、前記導電部材を接地に接続する接続部とを備えている。
【0008】
本発明によれば、接続部によって接地に接続された導電部材をフレキシブルプリント基板に設けることによって、フレキシブルプリント基板に及ぶ外部ノイズの影響を小さくすることができる。これによって、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性を向上させることができる。また、画像形成部および制御部との間の距離が変化した場合でも、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性を安定的に維持することができる。なお、導電部材の剛性はフレキシブルプリント基板の剛性よりも小さいので、画像形成部および制御部の位置関係が変化し、フレキシブルプリント基板の状態が変化した場合に、画像形成部および制御部に不要な力が加わることを抑止できる。これによって、画像形成部および制御部をスムーズに移動させることができる。
【0009】
本発明において、前記画像形成部および前記制御部のうち少なくとも一方の周囲を覆うことによって、前記画像形成部および前記制御部のうち少なくとも一方を外部から電気的に遮蔽する第一筐体を備えていてもよい。前記接続部は、前記導電部材および前記第一筐体を電気的に接続する第一接続部を備えていてもよい。これによって、画像形成部および制御部のうち少なくとも一方に対して外部から及ぶノイズの影響を小さくすることができる。従って、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性を更に向上させることができる。また、導電部材にノイズが加わった場合、このノイズを、第一接続部を介して第一筐体に逃すことができる。これによって、フレキシブルプリント基板に対して外部から及ぶノイズの影響を更に小さくすることができる。従って、ヘッドマウントディスプレイのノイズ耐性を更に向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記第一筐体は、前記制御部を電気的に遮蔽し、前記画像形成部を遮蔽しなくてもよい。これによって、制御部のノイズ耐性を特に高めることができる。従って、制御部が画像形成部を誤制御することを防止できる。また、固定された制御部を第一筐体で覆うので、構造をシンプルにすることができる。また、移動可能な画像形成部は遮蔽されないので、画像形成部を軽量化することができる。従って、移動制御部による画像形成部の移動をスムーズに行うことができる。
【0011】
本発明において前記第一接続部は、前記第一筐体の内壁面と前記導電部材との間に設けられ、前記制御部は、前記導電部材のうち前記第一接続部と近接する側と反対側に、前記フレキシブルプリント基板を挟んで設けられてもよい。前記第一接続部と前記制御部との間に前記導電部材が挟持されることによって前記導電部材および前記第一接続部が電気的に接続し、前記第一接続部のうち前記導電部材と接触する側と反対側の部分で、前記第一筐体の内壁面および前記第一接続部が電気的に接続することによって、前記導電部材および第一筐体が電気的に接続してもよい。これによって、ヘッドマウントディスプレイの製造時、制御部と第一筐体との間に第一接続部を押し詰めることにより、導電部材と第一筐体とを電気的に容易に接続させることができる。
【0012】
本発明において、前記接続部は、前記第一筐体を接地に接続する第二接続部を備えていてもよい。前記第一接続部および前記第二接続部によって、前記第一筐体を介して前記導電性部材を接地に接続してもよい。これによって、導電部材に加わったノイズを、接地された第一筐体に逃がし易くすることができるので、フレキシブルプリント基板に対して外部から及ぶノイズの影響を更に小さくすることができる。
【0013】
本発明において、前記導電部材は、前記フレキシブルプリント基板のうち一方の面のみに設けられていてもよい。導電部材がフレキシブルプリント基板の両面に設けられた場合、対向する導電部材に発生する寄生容量によって、フレキシブルプリント基板を伝達する信号の高周波成分がフィルタリングされる場合がある。これに対して本発明では、導電部材はフレキシブルプリント基板のうち一方の面にのみ設けられるので、両面に設けられた場合と比較して、発生する寄生容量成分を抑えることが可能になる。これによって、フレキシブルプリント基板を伝達する信号を正確に伝達することができる。
【0014】
本発明において、前記画像形成部、前記制御部、および前記フレキシブルプリント基板を覆う第二筐体を備えてもよい。前記導電部材は、前記フレキシブルプリント基板の面のうち、前記第二筐体に近接する面に設けられてもよい。これによって、第二筐体外部からのノイズが、フレキシブルプリント基板に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0015】
本発明において、前記導電部材は、前記フレキシブルプリント基板のうち、前記第二筐体に設けられた隙間の近傍に設けられもよい。これによって、第二筐体外部から、隙間を通って第二筐体内部に侵入するノイズが、フレキシブルプリント基板に及ぼす影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HMD1の斜視図である。
【図2】HMD1の平面図である。
【図3】図2のI−I線矢視方向断面図である。
【図4】図2のI−I線矢視方向断面図である。
【図5】制御基板20および右ケース42の上部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD)1について、図面を参照して説明する。以下説明において、図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向が、夫々、HMD1の上下方向、前方向、後ろ方向、右方向、左方向である。
【0018】
HMD1の概要について説明する。HMD1の表示形式は光学透過型である。使用者の眼前の景色の光は、ハーフミラー8(図1参照、後述)を透過することによって使用者の眼に直接導かれる。HMD1の投影形式は虚像投影型である。HMD1が備える液晶装置101(図3参照、後述)に表示した画像の光は、ハーフミラー8を反射することによってユーザの眼に導かれる。これらによってHMD1は、眼前の景色に、作成した画像を重ねて使用者に認識させることができる。
【0019】
図1に示すように、HMD1は筐体2を備える。筐体2は、眼鏡型フレーム91に着脱可能に取り付けられる。眼鏡型フレーム91は使用者の頭部に装着される。眼鏡型フレーム91は、左フレーム部92、右フレーム部93、中央フレーム部94、およびHMD支持部96を備えている。左フレーム部92は使用者の左耳に掛けられる。右フレーム部93は使用者の右耳に掛けられる。中央フレーム部94は、左フレーム部92の前端部と、右フレーム部93の前端部との間に設けられている。中央フレーム部94は、長手方向中央部に一対の鼻当て部95(図1では一方のみ図示)を備えている。HMD支持部96は、中央フレーム部94の上面右端側(使用者側から見て左端側)に設けられている。HMD支持部96は下方延出部98を備えている。下方延出部98は上下方向に延びている。下方延出部98には、ノコギリ状の凹凸を有する歯部(図示略)が上下方向に複数設けられている。
【0020】
筐体2の面のうち眼鏡型フレーム91に対向する面に、被保持部49が設けられている。図2に示すように、被保持部49は、上下方向に沿ったU字溝49Aを備える。U字溝49Aには下方延出部98が嵌められる。U字溝49Aの底部には板バネ49Bが設けられている。板バネ49Bは、下方延出部98に設けられた歯部の何れかに係止する。これによって、HMD1の上下方向の位置決めが可能となる。
【0021】
図1および図2を参照し、HMD1の筐体2について説明する。筐体2は四角筒状であり、平面視L字型に形成されている。筐体2は、左右略中央から右端までの部分が上下方向に突出している。筐体2の材料は樹脂である。筐体2は、左側から右側に向かって順に、ミラーホルダ5、左筐体11、中筐体12、および右筐体13を備えている。
【0022】
ミラーホルダ5は、左筐体11の左端に固定されている。ミラーホルダ5は上下一対の挟み板6,7を備えている。挟み板6,7はハーフミラー8を上下方向から保持する。ハーフミラー8は、挟み板6,7によって保持されている部分を軸として揺動する。使用者は、眼の位置に応じてハーフミラー8の角度を調整することができる。
【0023】
左筐体11および中筐体12は、其々、左右方向に延びる筒体である。左筐体11と中筐体12とは、対向する端部同士が接触した状態で、同軸上に固定されている。左筐体11の上面は、左右方向中央から右斜め上方に傾斜して一段高くなっている。左筐体11の下面は、左右方向中央から右斜め下方に傾斜して一段低くなっている。左筐体11の前面且つ右端側に、切り欠き状のスリット部9Aが設けられている。左筐体11の後面且つ右端側に、切り欠き状のスリット部9Bが設けられている。スリット部9A、9Bは、アジャスタ16の一部を外部に露出させている。アジャスタ16は、上下に回転させることができる。使用者は、アジャスタ16を回転させることによって、視認する画像のピントを調整することができる。
【0024】
右筐体13は、蓋状のカバー部材である。右筐体13は、中筐体12の開口する右端側を閉塞するように固定される。右筐体13の後端部は後方に突出している。突出した部分に、通信線(図示外)が接続される。後述する制御基板20(図3参照)は、通信線を介して接続する外部機器から画像データを取得することができる。外部機器として、例えば、周知のPersonal Computer(PC)を使用することができる。通信線として、例えば、Universal Serial Bus(USB)ケーブルを使用することができる。
【0025】
図3および図4を参照し、筐体2の内部について説明する。左筐体11および中筐体12内に、投影ユニット10が格納されている。右筐体13内に、制御基板20およびフレキシブルプリント基板(Flexible printed circuits、FPC)31が格納されている。
【0026】
投影ユニット10について説明する。投影ユニット10は、左側から右側に向かって順に、レンズホルダ15、液晶ホルダ17、および液晶装置101を備えている。レンズホルダ15は略筒状である。レンズホルダ15は、筒状内部の左右略中央から左側部分に接眼光学系102を保持する。レンズホルダ15の左右略中央から右側部分は空洞になっている。接眼光学系102は、複数のレンズ(図示略)を備えている。複数のレンズの光軸は、筒状内部の中心を左右方向に延びる軸線上に配置されている。複数のレンズは左右方向に並べられ、レンズホルダ15に固定されている。
【0027】
液晶ホルダ17は筒状の周壁部171を備えている。周壁部171の右端に、開口を閉塞する右壁部172が設けられている。右壁部172の中心に、開口窓173が設けられている。右壁部172の右面に液晶装置101が保持されている。液晶装置101は、左面の中心部分に液晶表示部103を備えている。液晶表示部103には、ユーザの眼前の景色に重ねる画像が表示される。液晶表示部103に表示された画像の光は、開口窓173を左側に通過し、レンズホルダ15の筒状内部を左方向に向かって進み、接眼光学系102を通過してハーフミラー8に到達する。ハーフミラー8は、画像の光を後方(使用者側の方向)に向けて反射する。反射された画像の光は、使用者の眼に入射する。同時に、使用者の眼前の景色の光は、ハーフミラー8を前方から後方に向けて透過する。透過された景色の光は、使用者の眼に入射する。これによって使用者は、眼前の景色に、HMD1によって作成された画像が重ねられた状態で双方を同時に視認することができる。
【0028】
液晶ホルダ17の周壁部171の外周面に、カム溝85が設けられている。カム溝85は螺旋状に設けられている。カム溝85の周囲に輪状のアジャスタ16が設けられている。アジャスタ16は筐体2に対して位置決めされており、固定された位置で回転する。アジャスタ16の内周面に突起部(図示外)が設けられている。突起部は、液晶ホルダ17のカム溝85に嵌っている。アジャスタ16の回転によって、突起部が回転する。突起部は、カム溝85に沿って移動するが、アジャスタ16は左左筐体11のスリット部9A及びによって位置決めされているために右方向に動かないので、突起部は螺旋状のカム溝85の壁面を左右方向に付勢する。これによって、液晶ホルダ17は左右方向に移動する。
【0029】
使用者は、HMD1の前側にあるスリット部9A(図1参照)から露出するアジャスタ16を指で上下方向に回動する。アジャスタ16の回動量に応じて、液晶ホルダ17の左右方向の位置は変化する。使用者は、アジャスタ16の回動量を調節することによって、液晶装置101と接眼光学系102との離間距離を調整できる。例えば図3に示すように、アジャスタ16を回動することによって、液晶ホルダ17をレンズホルダ15に近接させることができる。これによって、液晶装置101と接眼光学系102とは近接する。この場合、使用者が視認する虚像のピントは、相対的に近くなる。一方、図4に示すように、アジャスタ16を回動することによって、液晶ホルダ17を図3の状態から右方向に移動させることができる。これにより液晶装置101と接眼光学系102とは離間する。この場合、使用者が視認する虚像のピントは、相対的に遠くなる。このようにHMD1は、液晶装置101と接眼光学系102との間の距離を調整することによって、液晶装置101の液晶表示部103に表示された画像を使用者が視認する場合のピントを調整することができる。
【0030】
制御基板20及びFPC31について説明する。制御基板20は、第一制御基板21および第二制御基板22を備えている。第一制御基板21は、通信線(図示外)を介して外部機器と通信を行う基板である。第二制御基板22は、液晶装置101の制御を司る基板である。第一制御基板21および第二制御基板22は、左右に並べて配置されている。左側に第一制御基板21が配置され、右側に第二制御基板22が配置されている。第一制御基板21および第二制御基板22は、間に設けられたコネクタ23によって電気的に接続している。
【0031】
制御基板20を覆うシールドケース40が、制御基板20の周囲に設けられている。シールドケース40は、制御基板20を外部から電気的にシールドする。シールドケース40の材料は導電性材料である。シールドケース40の材料として、鉄、ステンレス、銅等を使用することができる。シールドケース40は、左ケース41および右ケース42を備えている。左ケース41および右ケース42は蓋状である。左ケース41は、第一制御基板21を左側から覆っている。右ケース42は、第二制御基板22を右側から覆っている。左ケース41および右ケース42は、下端部分で接触している。右ケース42は、右筐体13に接続した通信線(図示外)のグランド端子と、リングターミナル43、端子台44、および配線(図示外)を介して電気的に接続している。通信線のグランド端子は、接地に接続されている。これによってシールドケース40は接地されている。シールドケース40の上部は開口している。後述するFPC31は、上部の開口を通っている。
【0032】
FPC31は、液晶装置101と第二制御基板22との間に設けられている。FPC31は、液晶装置101を制御するための電気信号を、第二制御基板22から液晶装置101に向けて伝達する。FPC31の左端は、液晶装置101の上端に接続されている。FPC31の右端は、第二制御基板22の右面且つ下端に、コネクタ32によって接続されている。
【0033】
第一制御基板21は、通信線を介して外部機器から受信した画像データを、コネクタ23を介して第二制御基板22に対して伝達する。第二制御基板22は、コネクタ23を介して受信した画像データに基づき、液晶装置101に画像を表示させるための制御信号を作成する。制御信号は、FPC31を介して第二制御基板22から液晶装置101に伝達される。液晶装置101は、受信した制御信号に基づき、液晶表示部103に画像を表示する。
【0034】
図3に示すように、液晶ホルダ17が左方向に移動してレンズホルダ15に近接した状態では、液晶装置101は制御基板20から離間する。FPC31は、液晶装置101に接続する左端から右方向に、伸張した状態で略水平に延び、第二制御基板22の上端に当接して下方に曲折し、第二制御基板22と右ケース42との間の隙間を下方に延びている。以下、FPC31のうち第二制御基板22の上端に当接する部分を、当接部分312という。FPC31のうち液晶装置101に接続する左端から当接部分312までの部分を、延設部分311という。FPC31のうち当接部分312から、コネクタ32によって第二制御基板22と接続する右端までの部分を、延設部分313という。延設部分311は伸張しているので、中筐体12および右筐体13と延設部分311とは離間している。
【0035】
一方、図4に示すように、液晶ホルダ17が右方向に移動してレンズホルダ15から離間した状態では、液晶装置101は制御基板20に近接する。図3の場合とは異なり、FPC31の延設部分311は左右から押されて撓み、上方に大きく湾曲する。中筐体12および右筐体13と延設部分311とは近接する。
【0036】
FPC31の上面側、且つ、延設部分311、当接部分312、および、延設部分313のうち当接部分312に近い部分に、導電性フィルム51が設けられている。導電性フィルム51として、FPCよりも剛性の小さい柔らかな材料が使用される。例えば導電性フィルム51として、銅箔テープが使用される。導電性フィルム51は、筐体2の外部に印加された静電気ノイズがFPC31に及ぼす影響を小さくするために設けられている。
【0037】
図3〜図5に示すように、FPC31と右ケース42との間の隙間にガスケット55が設けられている。ガスケット55は、弾力性を有する導電性の材料である。ガスケット55として、ウレタン表面に金属メッシュを巻回した周知の導電性ガスケットを使用することができる。ガスケット55は、FPC31のうち当接部分312および延設部分313と、右ケース42との間の隙間を埋めるように、上方から下方に向けて詰め込まれている。ガスケット55は、延設部分313のうち当接部分312に近い部分を、第二制御基板22に押し付けている。同時にガスケット55は、FPC31に設けられた導電性フィルム51、および、右ケース42の内壁面と強く接触する。ガスケット55は導電性を有しているので、導電性フィルム51と右ケース42とは電気的に接続する。
【0038】
HMD1に対して筐体2の外部から静電気ノイズが印加された場合について説明する。通常、静電気ノイズは、電気機器の筐体の隙間を通って筐体内部に侵入することが多い。また、隙間内部の近傍に電子デバイス等が配置している場合、この電子デバイスが静電気ノイズを誘導するため、この隙間は他の隙間と比較して特に静電気ノイズが侵入し易い状態になる。なお筐体内部に侵入した静電気ノイズは、電子デバイスに電気的な影響を及ぼし、電気機器の正常動作を妨げる可能性がある。
【0039】
ここでHMD1の筐体2には、左筐体11、中筐体12、および右筐体13の間に継ぎ目が存在する。このため、継ぎ目の隙間を通って筐体2の外部から内部に静電気ノイズが侵入し易くなっている。また図4に示すように、液晶ホルダ17が右方向に移動して液晶装置101と制御基板20とが近接した場合、FPC31の延設部分311は上方に大きく曲折し、中筐体12と右筐体13との間の継ぎ目に形成された隙間121に延設部分311が近接する。隙間121の内部に電子デバイスが配置されていることになるので、隙間121は特に静電気ノイズが侵入し易い状態になっている。またFPC31には、微細な信号線が並走しており、静電気ノイズの影響を受け易くなっている。従って、隙間121から筐体2の内部に静電気ノイズが侵入した場合、静電気ノイズがFPC31に影響を及ぼし、HMD1の正常動作を妨げる可能性が高い。
【0040】
これに対して本実施形態では、FPC31の上面側、且つ、延設部分311、当接部分312、および、延設部分313のうち当接部分312に近い部分に、導電性フィルム51が設けられている。FPC31のうち隙間121に近接する面、且つ、隙間121に近接する部分に、静電気ノイズを吸収することが可能な導電性フィルム51が設けられていることになる。従って導電性フィルム51は、筐体2の外部からの静電気ノイズが隙間121を通って内部に侵入した場合も、静電気ノイズを効果的に吸収することによって、静電気ノイズがFPC31に及ぼす影響を小さくできる。これによって、HMD1のノイズ耐性を向上させ、HMD1の誤動作を抑制することができる。使用者がアジャスタ16を操作して液晶ホルダ17の位置を移動させ、液晶装置101と制御基板20との間の距離が変化した場合でも、HMD1は、変化の前後でノイズ耐性を安定的に維持することができる。
【0041】
また、導電性フィルム51として、FPC31よりも剛性の小さい導電性フィルムが使用される。このため図4に示すように、FPC31の延設部分311が撓んで大きく湾曲した場合であっても、導電性フィルム51が元の伸長した状態に戻ろうとする不要な力が液晶装置101および制御基板20に加わらない。これによって、液晶装置101および制御基板20をスムーズに移動させることができると同時に、導電性フィルム51が元の伸長した状態に戻ろうとする力によって液晶装置101および制御基板20が傾斜してしまうことを抑止できる。
【0042】
またHMD1では、シールドケース40で制御基板20を覆うことによって、筐体2の隙間を通って内部に侵入した静電気ノイズが制御基板20に及ぼす影響を小さくできる。これによって、制御基板20の誤動作が抑制されるので、HMD1のノイズ耐性を更に向上させることができる。なおシールドケース40は、リングターミナル43、端子台44、および配線(図示外)を介して、接地された状態の通信線(図示外)のグランド端子と電気的に接続している。これによってシールドケース40は接地されるので、電気的に安定な状態となる。このためシールドケース40は、制御基板20に及ぼす静電気ノイズの影響を効果的に抑制することができる。さらに、ガスケット55によって導電性フィルム51とシールドケース40は電気的に接続しているので、導電性フィルム51が吸収した静電気ノイズを、ガスケット55を介してシールドケース40に逃すことができる。またシールドケース40は通信線(図示外)のグランド端子と電気的に接続しているので、シールドケース40に伝わった静電気ノイズを、通信線を介して外部機器側の接地に逃すことができる。これによって、導電性フィルム51は静電気ノイズを効率良く吸収することができるので、HMD1のノイズ耐性を更に向上させることができる。
【0043】
またHMD1は、FPC31と右ケース42との間にガスケット55を詰め込むことによって、導電性フィルム51とガスケット55、および、右ケース42の内壁面とガスケット55とを密着させ、電気的に接続させている。これによってHMD1の製造時、導電性フィルム51と右ケース42との電気的な接続を容易且つ確実に行うことができる。また、アジャスタ16の操作によって液晶ホルダ17の位置が移動し、液晶装置101と制御基板20との間の距離が変化した場合、FPC31に加わる力も変化する。しかしながら、FPC31と右ケース42との間に弾力性のあるガスケット55を詰め込むことによって、FPC31に加わる力をガスケット55が効果的に吸収できる。従って、導電性フィルム51とガスケット55、および、右ケース42とガスケット55とを継続して確実に密着させ、電気的に接続した状態を維持できる。
【0044】
なおHMD1では、固定された制御基板20がシールドケース40によって覆われるのに対し、左右に移動可能な液晶ホルダ17および液晶装置101はシールドケースによって覆われない。理由は次のとおりである。液晶ホルダ17および液晶装置101がシールドケースによって覆われた場合、左右に移動可能な部分の重量が大きくなる。このため、使用者がアジャスタ16の操作によって液晶ホルダ17および液晶装置101を容易に移動させることができなくなる。これに対しHMD1では、固定された制御基板20のみシールドケース40によって覆い制御基板20に対する静電気ノイズの影響を抑制しつつ、液晶ホルダ17および液晶装置101を軽量化している。従って、使用者は液晶ホルダ17および液晶装置101をスムーズに移動できるようになる。また、筐体2の内部の構造がシンプルになるので、HMD1の製造上の利便性を向上させることができる。
【0045】
導電性フィルム51がFPC31の両面に設けられる場合、対向する導電部材に寄生容量が発生し易くなるので、FPC31を伝達する電気信号の高周波成分がフィルタリングされる場合がある。これに対して本実施形態では、導電性フィルム51はFPC31のうち一方の面にのみ設けられるので、両面に導電性フィルム51が設けられる場合と比較して、発生する寄生容量成分を抑えることが可能になる。これによって、FPC31を伝達する電気信号が劣化してしまうことを抑止し、電気信号を正確に伝達することができる。
【0046】
なお、液晶装置101が本発明の「画像形成部」に相当する。制御基板20が本発明の「制御部」に相当する。FPC31が本発明の「フレキシブルプリント基板」に相当する。接眼光学系102が本発明の「光学系」に相当する。アジャスタ16およびカム溝85が本発明の「移動制御部」に相当する。導電性フィルム51が本発明の「導電部材」に相当する。シールドケース40が本発明の「第一筐体」に相当する。ガスケット55が本発明の「第一接続部」に相当する。端子台43およびリングターミナル44が本発明の「第二接続部」に相当する。ガスケット55、端子台43、および、リングターミナル44が本発明の「接続部」に相当する。筐体2が本発明の「第二筐体」に相当する。
【0047】
なお本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。導電性フィルム51の代わりに、他の導電性部材を使用しても良い。例えば、網状の導電布を使用してもよい。本発明は、制御基板20だけでなく液晶装置101がシールドケースによって電気的にシールドされてもよい。同一のシールドケースによって、液晶装置101と制御基板20とを覆ってもよい。導電性フィルム51は、FPC31の両面に設けられてもよい。ガスケット55の代わりに導線を使用し、導電性フィルム51とシールドケース40とを導線で繋ぐことによって、導電性フィルム51とシールドケース40とを電気的に接続させてもよい。導電性フィルム51は、FPC31のうち中筐体12および右筐体13に近接する側の面に一様に設けられても良いし、特に静電気ノイズの影響を受けやすい部分、例えば、信号線や電子デバイスが設けられている部分に集中的に設けられてもよい。ガスケット55として、周知の導電性ガスケットの代わりに、網状の導電布を巻回したものを使用してもよい。導電性フィルム51は、通信線のグランド端子に直接接続してもよい。外部機器は、筐体2を制御する専用の制御ボックスであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 HMD
2 筐体
16 アジャスタ
20 制御基板
31 FPC
40 シールドケース
51 導電性フィルム
55 ガスケット
85 カム溝
101 液晶装置
102 接眼光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に視認させる画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に画像を形成させるための制御を行う制御部と、
前記制御部が前記画像形成部を制御するための電気信号を、前記制御部および前記画像形成部の間で伝達するフレキシブルプリント基板と、
前記画像形成部に形成された前記画像の光を、前記使用者の眼に導く光学系と、
前記制御部および前記光学系に対して前記画像形成部を相対移動させる移動制御部と、
前記フレキシブルプリント基板の少なくとも一方の面に設けられ、導電性を有するフィルム状の部材であって、前記フレキシブルプリント基板よりも剛性の小さい導電部材と、
前記導電部材を接地に接続する接続部と
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記画像形成部および前記制御部のうち少なくとも一方の周囲を覆うことによって、前記画像形成部および前記制御部のうち少なくとも一方を外部から電気的に遮蔽する第一筐体を備え、
前記接続部は、
前記導電部材および前記第一筐体を電気的に接続する第一接続部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記第一筐体は、前記制御部を電気的に遮蔽し、前記画像形成部を遮蔽しないことを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記第一接続部は、前記第一筐体の内壁面と前記導電部材との間に設けられ、前記制御部は、前記導電部材のうち前記第一接続部と近接する側と反対側に、前記フレキシブルプリント基板を挟んで設けられ、
前記第一接続部と前記制御部との間に前記導電部材が挟持されることによって前記導電部材および前記第一接続部が電気的に接続し、前記第一接続部のうち前記導電部材と接触する側と反対側の部分で、前記第一筐体の内壁面および前記第一接続部が電気的に接続することによって、前記導電部材および第一筐体が電気的に接続することを特徴とする請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記接続部は、前記第一筐体を接地に接続する第二接続部を備え、
前記第一接続部および前記第二接続部によって、前記第一筐体を介して前記導電性部材を接地に接続することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記導電部材は、前記フレキシブルプリント基板のうち一方の面のみに設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記画像形成部、前記制御部、および前記フレキシブルプリント基板を覆う第二筐体をを備え、
前記導電部材は、
前記フレキシブルプリント基板の面のうち、前記第二筐体に近接する面に設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記導電部材は、
前記フレキシブルプリント基板のうち、前記第二筐体に設けられた隙間の近傍に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46177(P2013−46177A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182003(P2011−182003)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】