説明

ヘッドメンテナンス方法

【課題】コストの無駄を招くことなく良好なスループットを維持しつつ高品質な印字を可能とするヘッドメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】印字ヘッド21のノズル形成面21aにヘッドキャップ63を密着させて吸引することによりインクノズルからインクを吸引し、その後、印字ヘッド21のノズル形成面21aをワイパ51によって払拭するクリーニング処理を行うヘッドメンテナンス方法であって、クリーニング処理とは別に、ノズル形成面21aをワイパ51によって払拭するワイピング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの印字ヘッドのノズル形成面を、ワイパを用いてクリーニングするヘッドメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタは、往復移動可能なキャリッジに装填された印字ヘッドが複数のノズルからインク液滴を所望の位置に噴射することによって印字を行うように構成されている。
ところで、印字ヘッドのノズル形成面には、印字の際にインクやごみ等の異物が付着することがあるため、適宜メンテナンスのため、印字ヘッドを印字領域外でクリーニングする必要がある。
【0003】
そこで、インクジェットプリンタにおいては、印字ヘッドによる印字領域から外れたメンテナンス領域に印字ヘッドの保守動作を行うヘッドメンテナンス機構を配置し、このヘッドメンテナンス機構によって、印字ヘッドに対してクリーニング処理を行うようになっている。
このメンテナンス機構には、印字ヘッドのノズル形成面を払拭するワイパ、印字ヘッドのノズル形成面に密着してインクノズルから吐出するインクを受け止めるヘッドキャップ及びヘッドキャップ内を吸引する吸引ポンプなどを備えている。
このメンテナンス機構によるクリーニングでは、印字ヘッドのノズル形成面にヘッドキャップを密着させて内部を吸引してインクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引処理及び印字ヘッドのノズル形成面の汚れをワイパによって払拭するワイピング処理が行われる。
また、上記メンテナンス機構を備えたインクジェットプリンタでは、印字ヘッドのインクノズルでのインクのメニスカスを形成するために、印字開始前などにてインクノズルから所定量のインクをヘッドキャップ内に吐出するフラッシング処理や、インクノズルの詰まりを防止するために印字休止後にて印字ヘッドのノズル形成面にヘッドキャップを密着させて保護するキャッピング処理も行うようにしている。
【特許文献1】特開平5−169668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノズル形成面にインクが付着した状態にて、印字終了後のキャッピング処理が繰り返されると、ノズル形成面とヘッドキャップとが離間する際に、これらの接触箇所にてインクが飛散し、この飛散したインクによって周辺が汚れたり、あるいはノズル形成面に飛散したインクがインクノズルに付着し、インクの吐出不良が生じ、印字品質の低下を招くという問題があった。
この場合、前述したクリーニングを頻繁に行うことにより、このクリーニングでのワイピング処理によってノズル形成面に付着したインクを払拭すれば良いが、クリーニングは、インク吸引処理などの他の処理も行われるため、スループットに影響を与えてしまう。また、クリーニングを頻繁に行うと、インク吸引処理によってインクが必要以上に吸引されて排出されてしまい、インクコストの無駄を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストの無駄を招くことなく良好なスループットを維持しつつ高品質な印字を可能とするヘッドメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のヘッドメンテナンス方法は、印字ヘッドのノズル形成面にヘッドキャップを密着させて吸引することにより前記インクノズルからインクを吸引し、その後、前記印字ヘッドの前記ノズル形成面をワイパによって払拭するクリーニング処理を行うヘッドメンテナンス方法であって、前記クリーニング処理とは別に、前記ノズル形成面を前記ワイパによって払拭するワイピング処理を行うことを特徴とする。
【0007】
このヘッドメンテナンス方法によれば、クリーニング処理とは別に、ノズル形成面をワイパによって払拭するワイピング処理を行うので、インク吸引を行うことなくノズル形成面を払拭することができる。これにより、必要以上にインクを排出することによるインクコストの無駄を招くことなく、良好なスループットを維持しつつ、ノズル形成面に付着したインクを払拭して高品質に印字を行うことができる。
【0008】
また、前記ヘッドキャップ内に印字ヘッドのインクノズルからインクを吐出させるフラッシング処理によって前記ヘッドキャップ内に貯留した排インクを前記ヘッドキャップから排除する排液処理時に、前記ワイピング処理を行うことが好ましい。
【0009】
このヘッドメンテナンス方法によれば、フラッシング処理によって溜まった排インクの排液時にワイピング処理を行うので、良好なスループットを維持しつつ高品質な印字性能を得ることができる。
【0010】
また、前記印字ヘッドの前記ノズル形成面に前記ヘッドキャップを密着させる休止動作時にて行われる前記排液処理時に、前記ワイピング処理を行うことが好ましい。
【0011】
このヘッドメンテナンス方法によれば、休止動作にて行われる排液処理時にワイピング処理を行うので、良好なスループットを維持しつつ高品質な印字性能を得ることができる。
【0012】
また、前記ヘッドキャップ内の排インク量が所定量以上である場合に、前記ワイピング処理を伴う前記排液処理が行われるのが好ましい。
【0013】
このヘッドメンテナンス方法によれば、排インク量が所定量以上である場合に、ワイピング処理が行われるので、ワイピング処理を伴う排液処理を必要最小限に抑えることができ、スループットをさらに良好に維持しつつ高品質な印字性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態に係るヘッドメンテナンス方法を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るヘッドメンテナンス方法を適用したインクジェットプリンタの外観斜視図、図2は図1に示したインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図、図3は図2に示したヘッドメンテナンス機構の全体斜視図、図4は図2に示したヘッドメンテナンス機構の分解斜視図、図5及び図6は図2に示したヘッドメンテナンス機構の要部斜視図である。
【0015】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、複数種のカラーインク液を使用してロール紙にカラー印刷するものであり、図1に示すように、プリンタ本体を覆うプリンタケース2の前面には、ロール紙カバー5及びインクカートリッジカバー7が開閉自在に装備されている。更に、プリンタケース2の前面には、電源スイッチ3と共にフィードスイッチやインジケータ等も配置されている。
【0016】
ロール紙カバー5を開くと、印刷用紙であるロール紙11を収容した用紙収容部13が開放状態になって、用紙の交換が可能になる。
また、インクカートリッジカバー7を開くと、カートリッジ装着部15が開放状態になり、このカートリッジ装着部15へのインクカートリッジ17の着脱が可能になる。
【0017】
インクカートリッジ17は、カートリッジケース内に複数個のカラーインクパックを収容したものである。本実施形態のインクジェットプリンタ1の場合は、インクカートリッジカバー7を開く動作に連動して、カートリッジ装着部15の前方にインクカートリッジ17が所定距離だけ引き出される構成になっている。
【0018】
インクカートリッジ17内の各インクパックは、インクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着した際に、カートリッジ装着部15側に装備されたインク供給針がインクパックのインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部15のインク供給針には、プリンタケース2内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。
インク供給チューブ33の他端は、キャリッジ23上に装備されたダンパユニット34に接続されている。このダンパユニット34は、インクジェット印字ヘッド21に接続された背圧調整ユニット35に接続されている。
【0019】
プリンタケース2内の用紙収容部13の上方には、図2に示すように、印字ヘッド21を搭載したキャリッジ23が装備される。キャリッジ23は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト26aとこの無端ベルト26aを駆動するキャリッジモータ26bとによって、印字領域であるプラテン28の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。
【0020】
図示のように、印字領域から外れたカートリッジ装着部15の上方が、往復移動するキャリッジ23の待機位置(メンテナンス領域)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ23の下面に露出する印字ヘッド21の保守動作を行うヘッドメンテナンス機構40が配置されている。
【0021】
本実施形態のヘッドメンテナンス機構40は、図3〜図6に示すように、印字ヘッド21のノズル形成面21aを封止するためのヘッドキャップ機構60と、このノズル形成面21aを払拭するためのワイパ機構50と、後述する捕捉部材24に付着している付着物を吸収する吸収部材100と、ヘッドキャップ機構60から残留インクを吸引するためのインク吸引機構70とを備えている。
【0022】
吸収部材100は、図6に示すように、ヘッドキャップ機構60におけるヘッドキャップ63の側方に設けられ、このヘッドキャップ機構60と伴にキャッピング位置に移動して上端縁101aが捕捉部材24に接触する略矩形板状の第1の吸収部材101と、ヘッドキャップ機構60の下方に設けられ、このヘッドキャップ機構60と伴にキャッピング位置から退避する退避位置に移動した第1の吸収部材101の当接部101bに接触可能な第2の吸収部材102と、を備えている。
【0023】
また、これらヘッドキャップ機構60、ワイパ機構50、第1の吸収部材101及びインク吸引機構70は、動力伝達機構80を介してポンプモータ81により駆動される。これらの各部分は、プリンタ本体に着脱可能なハウジング41に取り付けられている。
【0024】
図4に示すように、ワイパ機構50及びヘッドキャップ機構60と第1の吸収部材101は、キャリッジ23の往復動方向(図4中左右方向)に併設されており、インク吸引機構70は、ヘッドキャップ機構60のプリンタ後方側(図4中手前側)に併設されている。
そして、ヘッドキャップ機構60とワイパ機構50と第1の吸収部材101とインク吸引機構70とが連動可能なように動力伝達機構80が配設されている。
【0025】
即ち、動力伝達機構80は、複数の歯車からなる歯車列で構成され、ポンプモータ81からの駆動力によりヘッドキャップ機構60及び第1の吸収部材101とワイパ機構50を印字ヘッド21の往復動方向に対して直交する方向(図4中上下方向)に進退動させると共に、インク吸引機構70を動作させるように構成されている。
【0026】
インク吸引機構70は、チューブ72の一端がヘッドキャップ機構60と接続され、他端がインクカートリッジ17の廃インク導入部に接続されたチューブポンプであり、このインク吸引機構70が駆動されると、ヘッドキャップ機構60を介して印字ヘッド21のノズルからインクを吸引し、インクカートリッジ17の廃インク貯留室に排出される。
【0027】
動力伝達機構80を構成する歯車列の最終段(ワイパ51及びヘッドキャップ63側)には、円筒カム82が接続されている。
円筒カム82は、ハウジング41に垂設された支軸43に、下部カムホイール83及び上部カムホイール84と、間欠歯車85と、摩擦歯車86とを嵌装することにより構成されている。
【0028】
下部カムホイール83及び上部カムホイール84は、組み合わせ結合してなる外周面に、ワイパ機構50をスライドさせる為のカム溝と、ヘッドキャップ機構60をスライドさせる為のカム溝とが、それぞれ位相をずらして形成されている。
下部カムホイール83の底面には、ハウジング41の底面に形成された所定長さの円弧溝に係合する係合突起が突設されており、この下部カムホイール83を有限回転させる。
上部カムホイール84の上面には、間欠歯車85に形成された所定長さの円弧溝に係合する係合突起が突設されており、この上部カムホイール84を間欠歯車85に追従回転させる。
間欠歯車85の上方には、この間欠歯車85の上面に摩擦係合する摩擦歯車86が配置されており、この摩擦歯車86はコイルばね88により間欠歯車85側へ押圧付勢されている。
【0029】
ヘッドキャップ機構60のスライダ64には、円筒カム82のカム溝と係合するカムフォロア66が設けられ、ワイパ機構50のスライダ52には、円筒カム82のカム溝と係合するカムフォロア54が設けられている。
これにより、円筒カム82が回転することに伴い、ヘッドキャップ機構60のスライダ64とワイパ機構50のスライダ52は、それぞれ対応するカム溝に従ってスライドするようになっている。
【0030】
ヘッドキャップ機構60は、図3〜6に示すように、スライダ64と、キャップホルダ62に固定されたヘッドキャップ63とを備えている。スライダ64は、ケース状に形成されたもので、ガイド部材25と直交する方向、すなわち、印字ヘッド21のノズル形成面21aに対して接近又は離間する方向にスライドするように、嵌挿部65がハウジング41に垂設されたガイド軸42に支持されている。
【0031】
スライダ64の上端凹部には、先端部分にヘッドキャップ63が固定されたキャップホルダ62がスライダ64に対し進退移動できるように保持されている。このヘッドキャップ63は、印字ヘッド21のノズル形成面21aを封止可能な大きさの開口を有する箱型状のゴムで形成されたもので、その開口部分には、多層構造の吸収材が取付けられている。
【0032】
ワイパ機構50は、図3〜6に示すように、スライダ52と、ワイパ51とを備えている。スライダ52は、箱型状に形成されたもので、ヘッドキャップ機構60のスライダ64と同じ方向にスライドするように、スライド部53がハウジング41に設けられたガイド部44に支持案内されている。スライダ52の先端部分には、弾性材であるゴム製の板材からなるワイパ51が埋め込まれている。
【0033】
そして、スライダ52は、最もワイパ51がメンテナンス機構40の内側に引っ込んだ位置(退避位置)と、ワイパ51によってノズル形成面21aの汚れを払拭する処理を行うためのワイピング位置との間を移動できるようになっている。図7に示すように、ワイピング位置は、ワイパ51の先端がノズル形成面21aからはみ出し量s分印字ヘッド21側に移動した位置であり、印字ヘッド21のノズル形成面21aに対し接触して擦れるようになっている。これにより、ワイパ51はノズル形成面21aに付着しているインク等の異物を払拭することができる。尚、インクの種類によっては、ワイパ51を軟質のプラスチック等により形成しても良い。
【0034】
更に、図8に示すように、印字ヘッド21のノズル形成面21aよりもメンテナンス領域側(図8中右側)には、印字ヘッド21が印字領域側に移動する際にワイパ機構50のワイパ51に対して接触し、このワイパ51に付着している付着物を掻き取る捕捉部材24が設けられている。
【0035】
この捕捉部材24は、薄板状に形成されたものであり、先端部分にはワイパ51のヘッドキャップ機構60側の側面に当接可能な掻取部24aが突設されている。また、捕捉部材24の先端は、印字ヘッド21のノズル形成面21aよりも若干後退した位置に配置されている。これにより、捕捉部材24は、キャリッジ23が印字領域を移動する場合に、プラテン28上にあるロール紙11に接触しないようになっている。
【0036】
そして、上記インクジェットプリンタ1では、メンテナンス機構40によって印字ヘッド21のクリーニングが行われる。なお、このクリーニングは、予め設定された所定のタイミングあるいはユーザの操作時に行われるもので、印字ヘッド21のノズル形成面21aにヘッドキャップ63を密着させてインク吸引機構70によって内部を吸引して印字ヘッド21のインクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引処理及び印字ヘッド21のノズル形成面21aの汚れをワイパ51によって払拭するワイピング処理が行われる。
【0037】
また、上記メンテナンス機構40を備えたインクジェットプリンタ1では、印字ヘッド21のインクノズルでのインクのメニスカスを形成するために、印字開始前あるいは定期的に印字ヘッド21のインクノズルから所定量のインクをヘッドキャップ63内に吐出するフラッシング処理、インクノズルの詰まりを防止するために印字休止後にて印字ヘッド21のノズル形成面21aにヘッドキャップ63を密着させて保護するキャッピング処理を行う。
【0038】
また、メンテナンス機構40では、前述したフラッシング処理によってヘッドキャップ63内に溜まった排インクをインク吸引機構70によって吸引して排出するための空吸引処理(排液処理)が行われる。この空吸引処理は、インクジェットプリンタ1の起動時、定期的に行われる定期フラッシング処理時あるいは印字ヘッド21による印字を休止させる休止動作時に行われる。
【0039】
次に、上記インクジェットプリンタ1における印字ヘッド21の印字の休止動作について、図9に示すフローチャートに沿って説明する。
印字ヘッド21による印字の終了後あるいはロール紙11を自動的にカットする図示しないオートカット機構の作動後、所定時間が経過すると、休止動作が開始される。
【0040】
この休止動作が開始されると、フラッシング処理によってヘッドキャップ63内に貯留された排インクの量であるヘッドキャップ内フラッシング量が予め設定された所定値以上であるかが判断される(ステップS01)。なお、フラッシング量は、1回のフラッシング処理による排インクの量とフラッシング処理の回数から算出される。また、所定値は、ヘッドキャップ63内における排インクの許容貯留量から定められる。
【0041】
そして、このヘッドキャップ内フラッシング量が所定値以上と判断された場合は、空吸引処理が行われる(ステップS02)。
【0042】
空吸引処理後、フラッシング処理が行われ(ステップS03)、その後、印字ヘッド21のノズル形成面21aにヘッドキャップ63を密着させてノズル形成面21aを密閉して保護するキャッピングが行われる(ステップS04)。
なお、ヘッドキャップ内フラッシング量が所定値未満と判断された場合は、印字ヘッド21のノズル形成面21aにヘッドキャップ63を密着させてノズル形成面21aを密閉して保護するキャッピングが行われる(ステップS04)。
【0043】
次に、空吸引処理について、図10に示すフローチャートに沿って説明する。
インクジェットプリンタ1の電源を入れた際の初期化時、定期的に行われるフラッシング処理時あるいは前述した休止動作時に、空吸引処理が開始される。
この空吸引処理が開始されると、この空吸引処理が前述の休止動作により開始されたものであるかが判断される(ステップS11)。
【0044】
そして、この空吸引処理が休止動作により開始されたと判断された場合は、ワイピング処理(ステップS12〜S16)が行われる。
なお、空吸引処理が休止動作以外により開始されたと判断された場合は、空吸引動作(ステップS17,S18)へ移行する。
【0045】
ワイピング処理では、まず、印字ヘッド21を搭載したキャリッジ23がホームポジションへ移動される(ステップS12)。
次いで、退避位置のワイパ51を上昇させ、図7に示すように、印字ヘッド21のノズル形成面21aからはみ出し量s分だけ印字ヘッド21側に移動したワイピング位置まで移動させる(ステップS13)。
【0046】
次に、印字ヘッド21を印字領域側(図7における左側)へ向かって移動させ、印字ヘッド21を移動方向前方側端部にワイパ51が接触するワイピング開始位置へ配置させる(ステップS14)。
ワイピング開始位置にて印字ヘッド21を一旦停止させた後、印字ヘッド21を、印字ヘッド21の移動後方側端部がワイパ51を通過するワイピング終了位置まで印字領域に向かって移動させる(ステップS15)。
【0047】
このようにすると、ワイパ51は、図8に示すように、印字ヘッド21のノズル形成面21a上をはみ出し量sに応じた撓み量をもって摺動し、ノズル形成面21a上に付着したインクをワイパ51自体に転移させることによって払拭する。
ワイピング終了位置まで印字ヘッド21を移動させたら、ワイピング位置のワイパ51を退避位置まで下降させる(ステップS16)。
【0048】
その後、さらに、印字ヘッド21を印字領域側へ移動させたら、空吸引動作を開始させる(ステップS17)。
具体的には、インク吸引機構70を駆動させ、ヘッドキャップ63内に貯留した排インクを吸引し、インクカートリッジ17の廃インク貯留室に排出させ、ヘッドキャップ63内を空にする(ステップS18)。
【0049】
このように、上記実施形態に係るヘッドメンテナンス方法によれば、クリーニング処理とは別に、ノズル形成面21aをワイパ51によって払拭するワイピング処理を行うので、インク吸引を行うことなくノズル形成面21aを払拭することができる。これにより、必要以上にインクを排出することによるインクコストの無駄を招くことなく、良好なスループットを維持しつつ、ノズル形成面21aに付着したインクを払拭して高品質に印字を行うことができる。
【0050】
特に、休止動作時にて、フラッシング処理によって溜まった排インク量が所定量以上である場合に行われる空吸引処理時にワイピング処理を行うので、良好なスループットを維持しつつ高品質な印字性能を得ることができる。
しかも、空吸引処理時における空吸引動作(ステップS18)では、貯留したインクを吸引して排出するヘッドキャップ63との干渉を避けるために印字ヘッド21を印字領域へ移動させるが、この印字領域への移動の際にワイピング処理を行うので、ワイピング処理のために印字ヘッド21を移動させるような別の動作を付加する必要もなくすことができる。
【0051】
尚、上記実施形態では、ワイパ51を印字ヘッド21に対して近接離間方向へ移動させてワイピングを行う構成としたが、印字ヘッド21をワイパ51に対して近接離間方向へ移動させても良い。
また、上記ヘッドメンテナンス機構40に係るワイパ、捕捉部材、吸収部材、ヘッドキャップ等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッドメンテナンス方法を適用したインクジェットプリンタの外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図3】ヘッドメンテナンス機構の全体斜視図である。
【図4】ヘッドメンテナンス機構の分解斜視図である。
【図5】ヘッドメンテナンス機構の要部斜視図である。
【図6】ヘッドメンテナンス機構の要部斜視図である。
【図7】ヘッドメンテナンス機構の動作を説明する要部正面図である。
【図8】ヘッドメンテナンス機構の動作を説明する要部正面図である。
【図9】休止動作を説明するフローチャートである。
【図10】空吸引処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…インクジェットプリンタ、21…印字ヘッド、21a…ノズル形成面、51…ワイパ、63…ヘッドキャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドのノズル形成面にヘッドキャップを密着させて吸引することにより前記インクノズルからインクを吸引し、その後、前記印字ヘッドの前記ノズル形成面をワイパによって払拭するクリーニング処理を行うヘッドメンテナンス方法であって、
前記クリーニング処理とは別に、前記ノズル形成面を前記ワイパによって払拭するワイピング処理を行うことを特徴とするヘッドメンテナンス方法。
【請求項2】
前記ヘッドキャップ内に印字ヘッドのインクノズルからインクを吐出させるフラッシング処理によって前記ヘッドキャップ内に貯留した排インクを前記ヘッドキャップから排除する排液処理時に、前記ワイピング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のヘッドメンテナンス方法。
【請求項3】
前記印字ヘッドの前記ノズル形成面に前記ヘッドキャップを密着させる休止動作時にて行われる前記排液処理時に、前記ワイピング処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のヘッドメンテナンス方法。
【請求項4】
前記ヘッドキャップ内の排インク量が所定量以上である場合に、前記ワイピング処理を伴う前記排液処理が行われることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のヘッドメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−194981(P2008−194981A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33982(P2007−33982)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】