説明

ヘッドユニットおよび液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配線基板の製造方法

【課題】ノズル群ごとの吐出量の変動に起因する液状体の吐出ムラを低減できるヘッドユニットおよび液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ヘッドユニット9は、複数(6個)の液滴吐出ヘッド50と、ヘッドプレート9aとを備えている。ヘッドプレート9aには、X軸方向から見て隣り合うノズル群としてのノズル列52aがY軸方向に1ノズルピッチをおいて連続するようにヘッドR1とヘッドR2、ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2をそれぞれ配置した。また、隣り合うノズル列52aの境界において、隣接ノズルの吐出量がほぼ同等となるように液滴吐出ヘッド50を配置した。また、隣り合うノズル列52aにおいて、吐出量分布の傾きの正負が異なるように液滴吐出ヘッド50を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体が吐出されるノズル群を有するヘッドユニットおよび液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体が吐出されるノズル群を有するヘッドユニットおよび液滴吐出装置としては、主走査方向における機能液滴吐出ヘッドの配列の長さ寸法が極力短くなるように、複数の機能液滴吐出ヘッドを集約的に配置したヘッドユニットおよび液滴吐出装置が知られている(特許文献1)。この場合、主走査とは機能液滴吐出ヘッドと被吐出物との相対移動の間に機能液(液状体)を吐出することを言い、主走査方向とはこの相対移動方向を指す。
【0003】
上記ヘッドユニットには、複数の機能液滴吐出ヘッドが、上記主走査方向と上記主走査方向に直交する副走査方向とにずらされて並列するように配置されている。また、上記主走査方向から見て機能液が吐出される複数のノズルからなるノズル群としてのノズル列が互いに連続するように配置されている。
【0004】
このようなノズル列を有する吐出ヘッドは、液状体の吐出量がノズルごとにバラツキを有している。これを改善するため、ノズル列を複数のグループに分けて吐出ヘッドを駆動することにより、ノズル間で吐出量を均一化することができるインクジェット式記録装置が知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−238821号公報
【特許文献2】特開2002−196127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図18は、従来の液状体の吐出方法を示す吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図である。同図(a)は吐出ヘッド間の吐出量の変動を示す図、同図(b)は吐出ヘッドのノズル列内での吐出量の変動を示す図である。より具体的には、吐出ヘッド1,2に対してワークを主走査方向に4回に渡って相対移動(パス)させる間に液状体を吐出したとき、各吐出ヘッド1,2の描画幅に対応して同一描画領域に吐出された液状体の吐出量を示すものである。各吐出ヘッド1,2ごとにノズル列を4つのグループに分け、グループごとに吐出量を仮に数値化した。
【0007】
図18(a)に示すように、例えば上記特許文献1のヘッドユニットにおいて、複数の吐出ヘッド1,2間の吐出量が変動していると、各吐出ヘッド1,2の配置に対応した吐出量の差が生じてしまう(この場合、一方の吐出量が4.04に対して他方が4.16)。
【0008】
また、図18(b)に示すように、例えばノズル列のグループごとに吐出量の分布が傾きを有している場合(この場合、吐出量が1.01から1.04に変動)、吐出ヘッド1と吐出ヘッド2との境界では、一方のノズル列のグループの吐出量が極大になったところで他方が極小となる。したがって、図18(a)に比べて液状体がより不均一な状態で吐出される。
【0009】
以上のような複数の吐出ヘッド1,2に跨る吐出量の変動は、特にノズル列の両端側において顕著な吐出ムラとなる。
【0010】
上記のような不具合に対して上記特許文献2のようにノズル列を複数のグループに分けて駆動することは、吐出ヘッドの数が増えるほど、駆動が複雑になるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、ノズル群ごとの吐出量の変動に起因する液状体の吐出ムラを低減できるヘッドユニットおよび液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のヘッドユニットは、液状体を液滴として吐出するノズルが一の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有するヘッドユニットであって、各ノズル群が、一の方向から見て上記間隔を置いて一の方向と交差する方向に配置され、一の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、一の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同等となるように複数のノズル群が配置されている。したがって、隣り合うノズル群の境において吐出量に差が生じにくい。ゆえに、一の方向に対して交差する方向に複数のノズル群が配置されていても、ノズル群ごとの吐出量の変動に起因する液状体の吐出ムラを低減できるヘッドユニットを提供することができる。なお、隣接ノズルとは、隣り合うノズル群の境で隣接する少なくとも2つのノズルである。また、ノズル群は、複数のノズルが直線上に配列したものに限定されず、千鳥に配列した複数のノズルを含むものである。
【0014】
上記ノズル群は、ノズルの配列を一方の軸としノズルから吐出される液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、隣り合うノズル群の傾きが異なるように配置されているとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、隣り合うノズル群の吐出量の分布の傾きが異なるようにノズル群が配置されている。したがって、隣り合うノズル群の境界において吐出量の変動が急峻でなく緩やかに変化することになり、吐出ムラが目立ちにくい。
【0016】
また、上記隣り合うノズル群の傾きの正負が異なるようにノズル群が配置されていることが好ましい。これによれば、隣り合うノズル群において、吐出量分布の傾きの正負が異なるので、ヘッドユニットを上記一の方向と交差する方向にずらして吐出すれば、互いの吐出量の分布における傾きを打ち消しあうように液状体を吐出することができる。すなわち、液状体の吐出分布を均一化することができる。
【0017】
また、隣り合うノズル群の傾きが一の方向から見て線対称となるようにノズル群が配置されていることがさらに好ましい。これによれば、ヘッドユニットを上記一の方向と交差する方向にずらして吐出することによって、液状体の吐出分布をより均一化することができる。
【0018】
さらに上記各ノズル群が一の方向に並列してヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、各ノズル群が一の方向に並列してヘッドユニットに配置されているので、ノズル群ごとの吐出量の変動を複数のノズル群により分散させて液状体を付与することができ、吐出量の変動による吐出ムラを目立ち難くすることができる。
【0019】
本発明の液滴吐出装置は、ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、各ノズル群が主走査の方向から見て上記間隔を置いて主走査の方向と交差する方向に配置され、主走査の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットを備え、ヘッドユニットとワークとを対向配置して相対移動させる主走査に同期して各ノズル群から液状体を液滴として吐出することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、主走査の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズル間において吐出量がほぼ同じであるため、主走査に同期して液状体を吐出したときに、隣り合うノズル群の境界において吐出量の差による吐出ムラが発生し難い。したがって、ノズル群ごとの吐出量の変動に起因する液状体の吐出ムラが低減された液滴吐出装置を提供することができる。
【0021】
上記ノズル群は、ノズルの配列を一方の軸としノズルから吐出される液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、隣り合うノズル群の上記傾きが異なるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることを特徴とする。これによれば、ノズル群の境界において吐出量の変動が急峻でなく緩やかに変化することになり、吐出ムラがより目立ちにくい液滴吐出装置を提供することができる。
【0022】
また、上記隣り合うノズル群の上記傾きの正負が異なるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、隣り合うノズル群において、吐出量分布の傾きの正負が異なるので、ヘッドユニットを上記交差する方向にずらして吐出すれば、互いの吐出量分布における傾きを打ち消しあうように液状体を吐出することができる。すなわち、液状体の吐出分布を均一化することができる。
【0023】
また、上記隣り合うノズル群の上記傾きが、主走査の方向から見て線対称となるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、ヘッドユニットを上記交差する方向にずらして吐出することによって、液状体の吐出分布をより均一化することができる。
【0024】
さらに上記各ノズル群が主走査の方向に並列してヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、各ノズル群が主走査の方向に並列してヘッドユニットに配置されているので、ノズル群ごとの吐出量の変動を複数のノズル群により主走査の方向に分散させて液状体を付与することができ、吐出量の変動による吐出ムラを目立ち難くすることができる。すなわち、ワーク上の所望の描画領域に液滴をより均一に付与することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0025】
本発明の液状体の吐出方法は、ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、各ノズル群が主走査の方向から見て上記間隔を置いて主走査の方向と交差する方向に配置され、主走査の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットと、ワークとを対向配置して相対移動させる主走査に同期して各ノズル群から液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、ワークの同一描画領域に対してn回の主走査を行って各ノズル群から液滴を吐出する吐出工程を備え、吐出工程では、先の主走査に対して、各ノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/nの長さで上記交差する方向にずれて配置されるようにワークに対してヘッドユニットを相対移動させ、当該各ノズル群から液滴を吐出する後の主走査を行うことを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、ノズル群ごとの吐出量の変動による液状体の吐出ムラを低減できるヘッドユニットを搭載した液滴吐出装置を用い、吐出工程では、ワークの同一描画領域に対してn回の主走査を行ってノズル列から液滴を吐出する。そして、n回の主走査において、先の主走査の各ノズル群の配置に対して、後の主走査では、各ノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/nの長さで主走査の方向と交差する方向にずれて配置される。したがって、最初の主走査の後、主走査ごとに同一描画領域に対してノズル群を有効長の1/nの長さで上記交差する方向にずらして液滴が付与される。よって、ノズル群を実質的にn個のグループに分け、同一描画領域に対して主走査ごとにノズル群を1グループ分ずらして液滴が付与される。すなわち、ノズル群ごとの吐出量の変動をn回の主走査において分散させ、より均一に液状体を付与することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0027】
上記吐出工程では、隣り合うノズル群のうち、先の主走査における一方のノズル群に対して、他方のノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/nの長さで上記交差する方向にずれて配置されるようにワークに対してヘッドユニットを相対移動させ、後の主走査を行うことを特徴とする。
【0028】
この方法によれば、同一描画領域に対して同じノズル群から連続して液滴を付与する主走査が低減される。したがって、ノズル群ごとの吐出量の変動をより分散させることができる。
【0029】
また、上記吐出工程では、n回の主走査のうち、少なくとも1回は、先の主走査に対して、各ノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/2の長さで上記交差する方向にずれて配置されるようにワークに対してヘッドユニットを相対移動させることが好ましい。これによれば、ノズル群が有効長の1/nの長さで規則的にずれる主走査と、有効長の1/2の長さでずれる主走査とを組み合わせることにより、吐出量の変動の分散性を変えることができる。
【0030】
本発明の他の液状体の吐出方法は、ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、各ノズル群が主走査の方向から見て上記間隔を置いて主走査の方向と交差する方向に配置され、主走査の方向から見て隣り合うノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットと、ワークとを対向配置して相対移動させる主走査に同期して各ノズル群から液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、ワークの同一描画領域に対してn回の主走査を行って各ノズル群から液滴を吐出する吐出工程を備え、吐出工程では、先の主走査に対して、各ノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/2の長さで上記交差する方向にずれて配置されるようにワークに対してヘッドユニットを相対移動させ、当該各ノズル群から液滴を吐出する後の主走査を行うことを特徴とする。
【0031】
この方法によれば、ノズル群ごとの吐出量の変動による液状体の吐出ムラを低減できるヘッドユニットを搭載した液滴吐出装置を用い、吐出工程では、ワークの同一描画領域に対してn回の主走査を行って各ノズル群から液滴を吐出する。そして、n回の主走査において、先の主走査の各ノズル群の配置に対して、後の主走査では、各ノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/2の長さで主走査の方向と交差する方向にずれて配置される。したがって、最初の主走査の後、主走査ごとに同一描画領域に対してノズル群を有効長の1/2の長さで主走査の方向と交差する方向にずらして液滴が付与される。よって、ノズル群を実質的に2つのグループに分けて、同一描画領域に対して主走査ごとにノズル群の異なるグループから液滴が付与される。すなわち、ノズル群ごとの吐出量の変動をn回の主走査において平均化し、より均一に液状体を付与することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0032】
また、上記吐出工程では、隣り合うノズル群のうち、先の主走査における一方のノズル群に対して、他方のノズル群が主走査の方向から見たノズル群の有効長の1/2の長さで上記交差する方向にずれて配置されるようにワークに対してヘッドユニットを相対移動させることが好ましい。これによれば、同一描画領域に対して同じノズル群から連続して液滴を付与する主走査が低減される。よって、ノズル群ごとの吐出量の変動をより分散させることができる。
【0033】
これらの発明の液状体の吐出方法において、上記ノズル群は、ノズルの配列を一方の軸としノズルから吐出される液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、隣り合うノズル群の上記傾きが異なるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることを特徴とする。これによれば、隣り合うノズル群の境界において吐出量の変動が急峻でなく緩やかに変化することになり、吐出ムラが目立ちにくいヘッドユニットが用いられる。したがって、ノズル群ごとの吐出量の変動を抑えて分散させることができる。すなわち、より吐出ムラを低減して液状体を付与することができる。
【0034】
また、上記隣り合うノズル群の上記傾きの正負が異なるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、ヘッドユニットを副走査方向に移動させることにより、隣り合うノズル群において吐出量分布の傾きの正負を打ち消しあうように吐出することができる。ゆえに、ノズル群ごとの吐出量の変動をより抑えて分散させることができる。
【0035】
また、隣り合うノズル群の上記傾きが、主走査の方向から見て線対称となるように各ノズル群がヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、ヘッドユニットを上記交差する方向にずらして吐出することによって、液状体の吐出分布をより均一化することができる。
【0036】
さらに上記各ノズル群が主走査の方向に並列してヘッドユニットに配置されていることが好ましい。これによれば、各ノズル群が主走査の方向に並列してヘッドユニットに配置されているので、ノズル群ごとの吐出量の変動を複数のノズル群により主走査の方向に分散させて液状体を付与することができ、吐出量の変動による吐出ムラを目立ち難くすることができる。すなわち、ワーク上の所望の描画領域に液滴をより均一に付与することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0037】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上において区画形成された複数の着色領域に、少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、複数の着色領域に着色層形成材料を含む少なくとも3色の液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を乾燥して少なくとも3色の着色層を形成する乾燥工程と、を備えたことを特徴とする。
【0038】
この方法によれば、描画工程では、より均一に液状体を付与することが可能な上記発明の液状体の吐出方法を用いて少なくとも3色の液状体を吐出描画する。そして、乾燥工程で吐出描画された液状体を乾燥すれば、液状体の吐出ムラに起因する色ムラが少ない着色層を有するカラーフィルタを製造することができる。
【0039】
本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上において区画形成された複数の発光層形成領域に有機EL発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、複数の発光層形成領域に少なくとも発光層形成材料を含む液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を乾燥して有機EL発光層を形成する乾燥工程と、を備えたことを特徴とする。
【0040】
この方法によれば、描画工程では、より均一に液状体を付与することが可能な上記発明の液状体の吐出方法を用いて発光層形成材料を含む液状体を吐出描画する。そして、乾燥工程で吐出描画された液状体を乾燥すれば、液状体の吐出ムラに起因する発光ムラや輝度ムラが少ない有機EL発光層を有する有機EL素子を製造することができる。
【0041】
本発明の配線基板の製造方法は、基板上に導電性材料からなる配線を有する配線基板の製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、基板上に導電性材料を含む液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を乾燥、焼成して配線を形成する乾燥焼成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0042】
この方法によれば、描画工程では、より均一に液状体を付与することが可能な上記発明の液状体の吐出方法を用いて導電性材料を含む液状体を吐出描画する。そして、乾燥焼成工程で吐出描画された液状体を乾燥・焼成すれば、液状体の吐出ムラに起因する膜厚ムラや電気抵抗バラツキが少ない配線を有する配線基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の実施形態は、液状体を液滴として吐出可能な吐出ヘッドが複数搭載されたヘッドユニット、このヘッドユニットを備えた液滴吐出装置、この液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配線基板の製造方法を例に説明する。説明に用いる図は、適宜縮小拡大している。
【0044】
(実施形態1)
<液滴吐出装置>
まず、本実施形態の液滴吐出装置について説明する。図1は液滴吐出装置の構造を示す概略斜視図である。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置10は、ワークWを主走査方向(X軸方向)に移動させるワーク移動機構20と、吐出ヘッドとしての液滴吐出ヘッド50(図2参照)を副走査方向(Y軸方向)に移動させるヘッド移動機構30とを備えている。
【0046】
ワーク移動機構20は、一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21に沿って移動する移動台22と、移動台22上に回転機構としてのθテーブル6を介して配設されたワークWを載置するセットテーブル5とを備えている。移動台22は、ガイドレール21の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する。セットテーブル5はワークWを吸着固定可能であると共に、θテーブル6によってワークW内の基準軸を正確に主走査方向、副走査方向に合わせることが可能となっている。
【0047】
ヘッド移動機構30は、一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31に沿って移動する移動台32とを備えている。移動台32には、回転機構7を介して吊設されたキャリッジ8が設けられている。キャリッジ8には、複数の液滴吐出ヘッド50が搭載された本発明の実施形態の1つであるヘッドユニット9が取り付けられている。また、液滴吐出ヘッド50に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、複数の液滴吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板(図示せず)とが設けられている。移動台32がキャリッジ8をY軸方向に移動させてヘッドユニット9をワークWに対して対向配置する。
【0048】
液滴吐出装置10は、上記構成の他にも、ヘッドユニット9に搭載された複数の液滴吐出ヘッド50のノズルの目詰まりの解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の液滴吐出ヘッド50を臨む位置に配設されているが図示省略した。
【0049】
図2は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図である。同図(a)は概略分解斜視図、同図(b)はノズル部の構造を示す断面図である。図2(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド50は、液滴Dが吐出される複数のノズル52を有するノズルプレート51と、複数のノズル52がそれぞれ連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有するキャビティプレート53と、複数のキャビティ55に対応する振動子59を有する振動板58とが、順に積層され接合された構造となっている。
【0050】
キャビティプレート53は、ノズル52に連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有すると共に、このキャビティ55に液状体を充填するための流路56,57を有している。流路57は、ノズルプレート51と振動板58とによって挟まれ、出来上がった空間が、液状体が貯留されるリザーバの役目を果たす。
【0051】
液状体は、液状体供給機構から配管を通じて供給され、振動板58に設けられた供給孔58aを通じてリザーバに貯留された後に、流路56を通じて各キャビティ55に充填される。
【0052】
図2(b)に示すように、振動子59は、ピエゾ素子59cと、ピエゾ素子59cを挟む一対の電極59a,59bとからなる圧電素子である。外部から一対の電極59a,59bに駆動電圧パルスが印加されることにより接合された振動板58を変形させる。これにより隔壁54で仕切られたキャビティ55の体積が増加して、液状体がリザーバからキャビティ55に吸引される。そして、駆動電圧パルスの印加が終了すると、振動板58は元に戻り充填された液状体を加圧する。これにより、ノズル52から液状体を液滴Dとして吐出できる構造となっている。ピエゾ素子59cへ印加される駆動電圧パルスを制御することにより、それぞれのノズル52に対して液状体の吐出制御を行うことができる。
【0053】
液滴吐出ヘッド50は、圧電素子(ピエゾ素子)を備えたものに限らない。振動板58を静電吸着により変位させる電気機械変換素子を備えたものや、液状体を加熱してノズル52から液滴Dとして吐出させる電気熱変換素子を備えたものでもよい。
【0054】
図3は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す平面図である。詳しくは、ワークWに対向する側から見た図である。
【0055】
図3に示すように、ヘッドユニット9は、複数の液滴吐出ヘッド50が配設されるヘッドプレート9aを備えている。ヘッドプレート9aには、3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の液滴吐出ヘッド50が搭載されている。この場合、ヘッド群50AのヘッドR1(液滴吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(液滴吐出ヘッド50)とは同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0056】
各液滴吐出ヘッド50は、略等しい間隔(およそ140μmのノズルピッチ)で配設された複数(180個)のノズル52からなるノズル群としてのノズル列52aを有している。ノズル52の径はおよそ20μmである。ノズル列52aの両端側に位置する各10個のノズル52から吐出される液状体の吐出量が他のノズル52に比べて変動しやすいので、各10個のノズル52を除いた160個のノズル52を有効として用いている。よって、1つの液滴吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52aの有効長とする。以降、ノズル列52aとは、有効な160個のノズル52から構成されるものを指す。
【0057】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル列52aが主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向に並列して配置されている。
【0058】
図4(a)〜(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出特性を示すグラフである。詳しくは、一方の軸を有効ノズルの番号とし、他方の軸をノズル52ごとに吐出される液滴の吐出量(Iw/ng)として、ノズル列52aにおける吐出量の分布を示したグラフである。
【0059】
図2(a)および(b)に示したように、複数のノズル52から吐出される液滴の吐出量は、キャビティ55、流路56,57の設計寸法やその加工精度によってキャビティ55ごとに流れる液状体の流動抵抗が異なることにより、ノズル52ごとに変動する。また、液状体が供給される供給孔58aが複数のキャビティ55に対してどのような位置に形成されたかにも影響される。さらには、キャビティ55ごとに設けられた振動子59の固有振動特性によっても影響される。すなわち、ノズル列52aから吐出される液滴の吐出量の分布が液滴吐出ヘッド50ごとに異なる場合がある。図4(a)〜(c)は、製造された複数の液滴吐出ヘッド50を用いて、吐出特性を調べたものである。具体的には、所定の駆動電圧を有する駆動波形を振動子59に与え、数千から1万程度の吐出数の液滴をノズル52から吐出させ、その液状体の重量を計測する。そして、計測された液状体の重量を上記吐出数で除して1滴あたりの重量を算出して液滴の吐出量とした。
【0060】
図4(a)〜(c)に示すように、その吐出特性の一つは、Iwアーチと呼ばれる曲線形状を示し、ノズル列52a(有効ノズル)の両端側に位置するノズル52から吐出される液滴の吐出量が他のノズル52に対して増加傾向を示す。そして、上記曲線を1次近似して直線化とすると、同図(a)に示すようなほぼ傾きがゼロとなるような直線Iw1、または同図(b)に示すような傾きが正の直線Iw2、あるいは同図(c)に示すような傾きが負の直線Iw3のいずれかに大別される。
【0061】
本実施形態のヘッドユニット9では、このような吐出特性を考慮して、液滴吐出ヘッド50ごとの吐出量の変動による吐出ムラが発生しにくいように、各液滴吐出ヘッド50をヘッドプレート9aに配置したものである。
【0062】
本実施形態では、同種の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50を配列するにあたり、ノズル列52aにおいて吐出量分布の傾きを有しているので、連続する2つのノズル列52aの境界を軸として上記傾きがほぼ線対称となるように液滴吐出ヘッド50を選定して配置した。すなわち、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル群の境界において、隣接ノズルの吐出量(Iw/ng)がほぼ同等となるように、且つ上記傾きの正負が異なるように液滴吐出ヘッド50を選定して配置した。
【0063】
次に液滴吐出装置10の制御系について説明する。図5は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。液滴吐出装置10の制御系は、上位コンピュータ11と、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20、ヘッド移動機構30等を駆動する各種ドライバを有する駆動部46と、駆動部46を含め液滴吐出装置10全体を統括制御する制御部4とを備えている。
【0064】
駆動部46は、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30の各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド50を吐出制御するヘッドドライバ48と、メンテナンス機構の各メンテ用ユニットを駆動制御するメンテナンス用ドライバ(図示省略)とを備えている。
【0065】
制御部4は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44とを備え、これらは互いにバス45を介して接続されている。ROM42は、CPU41で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域とを有している。
【0066】
RAM43は、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークWおよび液滴吐出ヘッド50の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、駆動部46の各種ドライバ等が接続されており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上位コンピュータ11からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス45に取り込むと共に、CPU41と連動して、CPU41等からバス45に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部46に出力する。
【0067】
そして、CPU41は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM43内の各種データ等を処理した後、P−CON44を介して駆動部46等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置10全体を制御している。例えば、CPU41は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30を制御して、液滴吐出ヘッド50とワークWとを対向配置させ、液滴吐出ヘッド50とワークWとの相対移動に同期して、各液滴吐出ヘッド50の複数のノズル52からワークWに液状体を液滴として吐出して描画を行う。この場合、X軸方向へのワークWの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、Y軸方向に複数の液滴吐出ヘッド50が搭載されたヘッドユニット9を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の液滴吐出装置10は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、液滴吐出ヘッド50に対して一方向へのワークWの移動に限らず、ワークWを往復させて行うこともできる。
【0068】
上記実施形態1の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態1のヘッドユニット9には、同種の液状体を吐出する2つの液滴吐出ヘッド50(例えば、ヘッドR1とヘッドR2)が、主走査方向から見て2つのノズル群としてのノズル列52aが1ノズルピッチを置いて副走査方向に連続するように配置されている。したがって、1つの液滴吐出ヘッド50により描画可能な描画幅L0の2倍の描画幅L1で同種の液状体を吐出描画することができる。さらには、異なる液状体を吐出可能なヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2が主走査方向に並列して配置されている。すなわち、3種の異なる液状体を描画幅L1で吐出描画することができる。
【0069】
(2)上記実施形態1のヘッドユニット9では、主走査方向から見て副走査方向に連続した2つのノズル群としてのノズル列52aが吐出量分布の傾きを有するので、連続した2つのノズル列52aの境界を軸として上記傾きがほぼ線対称となるように液滴吐出ヘッド50が配置されている。したがって、連続したノズル列52aの境界において、吐出量が緩やかに変動することになり、液滴吐出ヘッド50ごとの吐出量の変動が目立ち難い。
【0070】
(3)上記実施形態1の液滴吐出装置10は、上記ヘッドユニット9を備えているので、液滴吐出ヘッド50ごとの吐出量の変動が目立ち難く、ワークWに対して吐出ムラを低減して3種の異なる液状体を吐出描画することができる。
【0071】
(実施形態2)
<液状体の吐出方法>
次に上記実施形態1の液滴吐出装置10を用いた本実施形態の液状体の吐出方法について図6から図9を基に説明する。図6は実施例1の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図、図7は実施例2の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図、図8は実施例3の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図、図9は実施例4の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図である。なお、各図において、各液滴吐出ヘッド1,2を示す四角形の長辺の長さは、描画幅L0を示している。液滴吐出ヘッド1,2に対してワークWを主走査方向に4回に渡って主走査(パス)する間に液状体を吐出したとき、各液滴吐出ヘッド1,2が同一描画領域に吐出した液状体の吐出量を示すものである。各液滴吐出ヘッド1,2は上記実施形態1の液滴吐出ヘッド50であり、例えば、ヘッドユニット9に配置された同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2を指すものである。また、各液滴吐出ヘッド1,2はそれぞれノズル群としてのノズル列52aにおいて吐出量分布の傾きを有している。この傾きを数値化して、仮に、液滴吐出ヘッド1は1.01から1.04まで吐出量が変動し、液滴吐出ヘッド2は連続した2つのノズル列52aの境界を軸として液滴吐出ヘッド1に対してほぼ線対称の傾き(1.04から1.01)を有するものとした。吐出量は、描画幅L0を主走査の回数と同じ4グループに分けて主走査ごとに吐出された液状体の吐出量を合算することにより数値化した。したがって、実質的にノズル群としてのノズル列52aを4つのグループに分けたことになる。なお、この場合、同一描画領域とは液滴吐出ヘッド1,2から液状体の付与を主走査の回数と同じ回数受ける領域を言う。
【0072】
本実施形態の液状体の吐出方法は、液滴吐出ヘッド50の描画幅L0に対応するワークWの同一の描画領域に対してn回(4回)の主走査を行って液状体を吐出する吐出工程を備えた。そして、吐出工程では、各主走査に対応してヘッドユニット9を副走査することにより液滴吐出ヘッド50の配置を変えて液状体の吐出を行う方法である。
【0073】
(実施例1)
図6に示すように、実施例1の液状体の吐出方法は、ワークWの同一描画領域に対して4回の主走査(パス)を行って各液滴吐出ヘッド1,2から液滴を吐出する吐出工程を備え、吐出工程では、先の主走査に対して、各液滴吐出ヘッド1,2が主走査方向から見た描画幅L0の1/4の長さで主走査方向と直交する副走査方向にずれて配置されるようにワークWに対してヘッドユニット9を相対移動させ、各液滴吐出ヘッド1,2から液滴を吐出する後の主走査を行う。4回の主走査でワークWの全ての描画領域に液状体を吐出できない場合は、副走査方向に所謂改行を実施して、再び同様な4回の主走査(想像線で各液滴吐出ヘッド1,2の配置を示す)を実施すればよい。前述したように描画幅L0は、ノズル列52aの有効長と同じである。よって、ノズル群としてのノズル列52aを1/4ずつ副走査方向にずらして主走査を行っている。さらにこの場合、ヘッドユニット9には、主走査方向から見て隣り合うノズル列52aの吐出量分布の傾きがほぼ線対称となるように各液滴吐出ヘッド1,2が配置されている。したがって、隣り合うノズル列52aの境界における隣接ノズルの吐出量がほぼ同じであると共に、隣り合うノズル列52aの両端ノズルの吐出量もほぼ同じである。ゆえに、先の4回の主走査と後の4回の主走査における描画幅L0の境界では、ほぼ同量の液状体が付与される。
【0074】
実施例1の効果としては、ノズル列52aを1/4ずつ副走査方向にずらして主走査を行うので、液滴吐出ヘッド1,2ごとの吐出量分布の傾きを4回の主走査において分散させることができる。図18(b)に示した従来例の吐出量の変動が、4.04〜4.16であるのに対して、実施例1では、吐出量の変動が4.06〜4.14に縮小している。また、連続した液滴吐出ヘッド1,2の境界における吐出量の変動が緩やかになっている。すなわち、吐出ムラが目立ち難い状態となっている。
【0075】
(実施例2)
図7に示すように、実施例2の液状体の吐出方法は、実施例1に対して、3回目の主走査において、液滴吐出ヘッド1,2を描画幅L0の1/2の長さで副走査方向にずらして液状体の吐出を行う。これにより吐出量分布の傾きがほぼ線対称になるように配置された各液滴吐出ヘッド1,2で描画される領域の位置が実施例1に比べてずれる。すなわち吐出量分布の傾きの位相をずらした。
【0076】
実施例2の効果としては、3回目の主走査において上記傾きの位相のずらし量を1/4から1/2に変えることにより、隣り合うノズル列52aの吐出領分布における傾きの正負が互いに打ち消される程度が向上して、吐出量の変動が4.08〜4.12となった。ゆえに実施例1に比べて変動幅がより縮小された。また、吐出量が極大または極小となる領域の幅が広がった。すなわち、吐出量の変動がより緩やかとなった。なお、3回目の主走査に限定されず、2回目、4回目に液滴吐出ヘッド1,2(ヘッドユニット9)の副走査のずらし量を変えても同様な効果が得られる。
【0077】
(実施例3)
図8に示すように、実施例3の液状体の吐出方法は、吐出工程では、連続した2つの液滴吐出ヘッド1,2のうち、初回の主走査における一方の液滴吐出ヘッド1に対して、他方の液滴吐出ヘッド2が主走査方向から見た描画幅L0の1/4の長さで副走査方向にずれて配置されるようにワークWに対してヘッドユニット9を相対移動させ、2回目の主走査を行う。3回目の主走査では、先の主走査の液滴吐出ヘッド2に対して液滴吐出ヘッド1を描画幅L0の1/4の長さで副走査方向にずらして配置する。4回目の主走査は、2回目の主走査と同様に各液滴吐出ヘッド1,2を配置して主走査を行う。
【0078】
実施例3の効果としては、同一描画領域に対して同じ液滴吐出ヘッドから液滴が付与される主走査が低減される。したがって、液滴吐出ヘッド1,2ごとの吐出量分布の傾きを4回の主走査においてより分散させることができる。具体的には、実施例1に比べて吐出量の変動が緩やかである。また、実施例2の吐出量分布の傾きの位相をずらす場合とほぼ同等な効果が得られる。
【0079】
(実施例4)
図9に示すように、実施例4の液状体の吐出方法は、吐出工程では、先の主走査に対して、各液滴吐出ヘッド1,2が主走査方向から見た描画幅L0の1/2の長さで副走査方向にずれて配置されるようにワークWに対してヘッドユニット9を相対移動させ、当該各液滴吐出ヘッド1,2から液滴を吐出する後の主走査を行う。
【0080】
実施例4の効果としては、最初の主走査の後に行う主走査ごとに同一描画領域に対して各液滴吐出ヘッド1,2を描画幅L0の1/2の長さで副走査方向にずらして液滴が付与される。よって、吐出量分布の傾きを有するノズル群としてのノズル列52aを実質的に2つのグループに分けて、同一描画領域に対して主走査ごとにノズル列52aの異なるグループから液滴が付与される。すなわち、4回の主走査において各液滴吐出ヘッド1,2を1/2ずつ副走査方向にずらすことにより吐出量を平均化し、より均一に液状体を付与することができる。具体的には、同一描画領域において吐出量が4.1に平均化される。なお、実施例3の液状体の吐出方法の考え方と同様に、4回の主走査において、交互に異なる液滴吐出ヘッドを副走査方向に1/2ずつずらしながら配置して液状体を吐出するようにしても実施例4と同様な効果が得られる。
【0081】
なお、本実施形態では、主走査の回数(n)を4回として実施例1から実施例4を説明したが、nは2から始まる自然数であれば、同様な作用、効果を奏する。
【0082】
(実施形態3)
<カラーフィルタの製造方法>
次に、上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用したカラーフィルタの製造方法について図10から図12に基づいて説明する。図10は液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図、図11はカラーフィルタの製造方法を示すフローチャート、図12(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図である。
【0083】
まず、カラーフィルタが用いられた電気光学装置の一つである液晶表示装置について説明する。図10に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層としてのカラーフィルタ505を有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501,508によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501,508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0084】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に複数の着色領域をマトリクス状に区画するバンクとしての隔壁部504と、区画された複数の着色領域に複数種の着色層としてRGB3色のカラーフィルタ505R,505G,505Bとを備えている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、隔壁部504と隔壁部504によって区画されたカラーフィルタ505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505R,505G,505Bは後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されている。
【0085】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを備えている。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0086】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0087】
尚、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を一の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示省略した。また、上下偏光板514,515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0088】
図11に示すように、本実施形態のカラーフィルタ505の製造方法は、対向基板501の表面に隔壁部504を形成する工程(ステップS1)と、隔壁部504によって区画された着色領域を表面処理する工程(ステップS2)とを備えている。また、実施形態1の液滴吐出装置10を用いて表面処理された着色領域に着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を液滴として吐出描画する描画工程(ステップS3)と、描画された液状体を乾燥してカラーフィルタ505を成膜する乾燥・成膜工程(ステップS4)とを備えている。さらに隔壁部504とカラーフィルタ505とを覆うようにOC層506を形成する工程(ステップS5)と、OC層506を覆うようにITOからなる透明な対向電極507を形成する工程(ステップS6)とを備えている。
【0089】
図11のステップS1は、隔壁部504を形成する工程である。ステップS1では、図12(a)に示すように、まずブラックマトリクスとしての下層バンク502を対向基板501上に形成する。下層バンク502の材料は、例えば、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を用いることができる。下層バンク502の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜を対向基板501上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により開口部502a(図10参照)に対応する部分以外をレジストで膜を覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部502aを有する下層バンク502が形成される。
【0090】
次に上層バンク503を下層バンク502の上に形成する。上層バンク503の材料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、遮光性を有することが好ましい。上層バンク503の形成方法としては、例えば、下層バンク502が形成された対向基板501の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、着色領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを対向基板501と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク503を形成する方法が挙げられる。これにより対向基板501上に複数の着色領域Aをマトリクス状に区画する隔壁部504が形成される。そしてステップS2へ進む。
【0091】
図11のステップS2は、表面処理工程である。ステップS2では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、着色領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク503の表面(壁面を含む)が撥液処理される。そしてステップS3へ進む。
【0092】
図11のステップS3は、着色層としてのカラーフィルタ505の描画工程である。ステップS3では、図12(b)に示すように、表面処理された各着色領域Aのそれぞれに、対応する液状体80R,80G,80Bを付与してカラーフィルタ505を描画する。液状体80RはR(赤色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80GはG(緑色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80BはB(青色)の着色層形成材料を含むものである。各液状体80R,80G,80Bを付与する方法は、実施形態1の液滴吐出装置10を用い、液滴吐出ヘッド50に各液状体80R,80G,80Bを充填し、液滴として着色領域Aに着弾させる。各液状体80R,80G,80Bは、着色領域Aの面積に応じて必要量が付与され、着色領域Aに濡れ拡がり、表面張力によって盛り上がる。ステップS3では、3種の異なる液状体80R,80G,80Bを吐出することができる液滴吐出装置10を使用し、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いている。したがって、着色領域Aに各液状体80R,80G,80Bを吐出ムラを低減して付与することができる。そしてステップS4へ進む。
【0093】
図11のステップS4は、吐出描画された各液状体80R,80G,80Bを乾燥してカラーフィルタ505R,505G,505Bをそれぞれ成膜する工程である。ステップS4では、図12(c)に示すように、吐出描画された各液状体80R,80G,80Bを一括乾燥し、溶剤成分を除去してカラーフィルタ505R,505G,505Bを成膜する。乾燥方法としては、溶剤成分を均質に乾燥可能な減圧乾燥などの方法が望ましい。そしてステップS5へ進む。
【0094】
図11のステップS5は、OC層形成工程である。ステップS5では、図12(d)に示すように、カラーフィルタ505と上層バンク503とを覆うようにOC層506を形成する。OC層506の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層506は、カラーフィルタ505が形成された対向基板501の表面の凹凸を緩和して、後にこの表面に膜付けされる対向電極507を平担化するために設けられている。また、対向電極507との密着性を確保するために、OC層506の上にさらにSiO2などの薄膜を形成してもよい。そしてステップS6へ進む。
【0095】
図11のステップS6は、対向電極507を形成する工程である。ステップS6では、図12(e)に示すように、スパッタ法や蒸着法を用いてITOなどの透明電極材料を真空中で成膜して、OC層506を覆うように全面に対向電極507を形成する。
【0096】
このようにして出来上がった対向基板501のカラーフィルタ505は、各液滴吐出ヘッド50の吐出量の変動が分散されているので、吐出ムラによる色ムラの発生が低減されている。この対向基板501と画素電極510およびTFT素子511を有する素子基板508とを接着剤を用いて所定の位置で接着し、両基板501,508との間に液晶を充填すれば、色ムラ等が目立ちにくい、見映えのよい表示品質を有する液晶表示装置500が出来上がる。
【0097】
実施形態3の効果は、以下の通りである。
(1)カラーフィルタ505の製造方法において、描画工程では、対向基板501の着色領域Aに、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて3種の液状体80R,80G,80Bを吐出して、3種の着色層としてのカラーフィルタ505R,505G,505Bが描画されている。したがって、各液滴吐出ヘッド50の吐出量の変動が分散され、液滴吐出ヘッド50ごとの吐出ムラに起因するスジムラ等の色ムラを低減して歩留まりよくカラーフィルタ505を有する対向基板501を製造することができる。
【0098】
(2)液晶表示装置500は、上記カラーフィルタ505の製造方法を用いて製造されたカラーフィルタ505を有する対向基板501を備えているため、スジムラによる色ムラ等が目立ちにくい、見映えのよい表示品質を有する液晶表示装置500を提供することができる。
【0099】
(実施形態4)
次に上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用した他の実施形態として、有機EL素子の製造方法について説明する。
【0100】
まず、有機EL素子を有する有機EL表示装置について簡単に説明する。
図13は、有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図13に示すように、有機EL表示装置600は、有機EL素子としての発光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着された封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、有機EL発光層としての3色の発光層617R,617G,617Bがそれぞれの発光層形成領域Aに形成され、ストライプ状となっている。素子基板601は、3色の発光層617R,617G,617Bに対応する3つの発光層形成領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上にマトリクス状に配置されたものである。有機EL表示装置600は、発光素子部603からの発光が素子基板601側に出射するものである。
【0101】
封止基板620は、ガラス又は金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した水又は酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水又は酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤621は省略しても良い。
【0102】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の発光層形成領域Aを有するものであって、複数の発光層形成領域Aを区画する隔壁部618と、複数の発光層形成領域Aに形成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えている。また複数の発光層形成領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を備えている。隔壁部618は、下層バンク618aと発光層形成領域Aを実質的に区画する上層バンク618bとからなり、下層バンク618aは、発光層形成領域Aの内側に張り出すように設けられて、電極613と各発光層617R,617G,617Bとが直接接触して電気的に短絡することを防止するためにSiO2等の無機絶縁材料により形成されている。
【0103】
素子基板601は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板601上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。尚、半導体膜607には、ソース領域607a及びドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護膜606及び半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜608上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極609が形成され、ゲート電極609及びゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a,612bが形成されている。そして、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部602には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている。尚、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図13ではこれらの図示を省略している。
【0104】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔注入/輸送層617a、各発光層617R,617G,617B(総称して発光層617b)と、上層バンク618bと発光層617bとを覆うように積層された陰極604とを備えている。正孔注入/輸送層617aと発光層617bとにより発光が励起される機能層617を構成している。尚、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構成すれば、封止基板620側から発光する光を出射させることができる。
【0105】
有機EL表示装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソース領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ615のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、更に正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを介して陰極604に電流が流れる。発光層617bは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置600は、このような発光素子部603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また発光層617bが液滴吐出装置10を使用した液状体の吐出方法を用いて描画形成されているため、描画時の吐出ムラによる発光ムラ、輝度ムラ等の表示不具合の少ない高い表示品質を有している。
【0106】
<有機EL素子の製造方法>
次に本実施形態の有機EL素子としての発光素子部の製造方法について図14に基づいて説明する。図14(a)〜(f)は、発光素子部の製造方法を示す概略断面図である。なお、図14(a)〜(f)においては、素子基板601上に形成された回路素子部602は、図示を省略している。
【0107】
本実施形態の発光素子部603の製造方法は、素子基板601の複数の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する工程と、電極613に一部が掛かるように下層バンク618aを形成し、さらに下層バンク618a上に実質的に発光層形成領域Aを区画するように上層バンク618bを形成する隔壁部形成工程とを備えている。また上層バンク618bで区画された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体を付与して正孔注入/輸送層617aを吐出描画する工程と、吐出された液状体を乾燥して正孔注入/輸送層617aを成膜する工程とを備えている。また、正孔注入/輸送層617aが形成された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体を吐出描画する描画工程と、吐出された3種の液状体を乾燥して発光層617bを成膜する工程とを備えている。さらに、上層バンク618bと発光層617bを覆うように陰極604を形成する工程を備えている。各液状体の発光層形成領域Aへの付与は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて行う。よって、図3に示したヘッドユニット9における液滴吐出ヘッド50の配置を適用する。
【0108】
電極(陽極)形成工程では、図14(a)に示すように、回路素子部602がすでに形成された素子基板601の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITO等の透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成する方法が挙げられる。そして隔壁部形成工程へ進む。
【0109】
隔壁部形成工程では、図14(b)に示すように、素子基板601の複数の電極613の一部を覆うように下層バンク618aを形成する。下層バンク618aの材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸化珪素)を用いている。下層バンク618aの形成方法としては、例えば、後に形成される発光層617bに対応して、各電極613の表面をレジスト等を用いてマスキングする。そしてマスキングされた素子基板601を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてスパッタリングや真空蒸着することにより下層バンク618aを形成する方法が挙げられる。レジスト等のマスキングは、後に剥離する。尚、下層バンク618aは、SiO2により形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有していおり、後に正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが積層されても発光を阻害することはない。
【0110】
続いて、各発光層形成領域Aを実質的に区画するように下層バンク618aの上に上層バンク618bを形成する。上層バンク618bの材料としては、後述する発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理により撥液化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった有機材料が好ましい。上層バンク618bの形成方法としては、例えば、下層バンク618aが形成された素子基板601の表面に感光性の上記有機材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、発光層形成領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板601と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク618bを形成する方法が挙げられる。これにより下層バンク618aと上層バンク618bとを有する隔壁部618が形成される。そして、表面処理工程へ進む。
【0111】
発光層形成領域Aを表面処理する工程では、隔壁部618が形成された素子基板601の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極613の表面、下層バンク618aの張り出し部および上層バンク618bの表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。つぎにCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる上層バンク618bの表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、正孔注入/輸送層形成工程へ進む。
【0112】
正孔注入/輸送層形成工程では、図14(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を発光層形成領域Aに付与する。液状体90を付与する方法としては、図3のヘッドユニット9を備えた液滴吐出装置10を用いる。液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体90は、液滴として素子基板601の電極613に着弾して濡れ拡がる。液状体90は発光層形成領域Aの面積に応じて必要量が液滴として吐出され表面張力で盛り上がった状態となる。そして乾燥・成膜工程へ進む。
【0113】
乾燥・成膜工程では、素子基板601を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極613の下層バンク618aにより区画された領域に正孔注入/輸送層617aが形成される。本実施形態では、正孔注入/輸送層形成材料としてPEDOT(Polyethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。尚、この場合、各発光層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層617aを形成したが、後に形成される発光層617bに対応して正孔注入/輸送層617aの材料を発光層形成領域Aごとに変えてもよい。そして次の表面処理工程へ進む。
【0114】
次の表面処理工程では、上記の正孔注入/輸送層形成材料を用いて正孔注入/輸送層617aを形成した場合、その表面が、3種の液状体100R,100G,100Bに対して撥液性を有するので、少なくとも発光層形成領域Aの領域内を再び親液性を有するように表面処理を行う。表面処理の方法としては、3種の液状体100R,100G,100Bに用いられる溶媒を塗布して乾燥する。溶媒の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。そして発光層の描画工程へ進む。
【0115】
発光層の描画工程では、図14(d)に示すように、液滴吐出装置10を用いて複数の液滴吐出ヘッド50から複数の発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bを付与する。液状体100Rは発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは発光層617B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体100R,100G,100Bは、発光層形成領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。これらの液状体100R,100G,100Bを付与する方法としては、実施形態2の液状体の吐出方法を用いた。そして、乾燥・成膜工程へ進む。
【0116】
乾燥・成膜工程では、図14(e)に示すように、吐出描画された各液状体100R,100G,100Bの溶媒成分を乾燥させて除去し、各発光層形成領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R,617G,617Bが積層されるように成膜する。各液状体100R,100G,100Bが吐出描画された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすることが可能な、減圧乾燥が好ましい。そして陰極形成工程へ進む。
【0117】
陰極形成工程では、図14(f)に示すように、素子基板601の各発光層617R,617G,617Bと上層バンク618bの表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層617R,617G,617Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に発光層617R,617G,617Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0118】
このようにして出来上がった素子基板601は、各液状体100R,100G,100Bの吐出ムラが低減され、乾燥・成膜化後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する。
【0119】
上記実施形態4の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態4の発光素子部603の製造方法において、発光層617bの描画工程では、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて素子基板601の発光層形成領域Aに、各液状体100R,100G,100Bが液滴として吐出描画されている。ゆえに、吐出描画時の吐出ムラが少なく、乾燥・成膜後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bが得られる。
【0120】
(2)上記実施形態3の発光素子部603の製造方法を用いて製造された素子基板601を用いて有機EL表示装置600を製造すれば、各発光層617R,617G,617Bの膜厚がほぼ一定であるため、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗がほぼ一定となる。よって、回路素子部602により発光素子部603に駆動電圧を印加して発光させると、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が低減される。すなわち、吐出ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が少なく、見映えのよい表示品質を有する有機EL表示装置600を提供することができる。
【0121】
(実施形態5)
<配線基板の製造方法>
次に、上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用した配線基板の製造方法を説明する。
【0122】
図15は、配線基板を示す概略平面図である。図15に示すように、配線基板300は、半導体装置(IC)を平面実装する回路基板であり、ICの入出力電極(バンプ)に対応して配置された導電性材料からなる配線としての入力配線301および出力配線303と、絶縁膜307とにより構成されている。絶縁膜307は、入力端子部302および出力端子部304を避けると共に、実装領域305の内側に入力配線301と出力配線303のそれぞれ一部が露出するように複数の入力配線301および出力配線303を覆っている。配線基板300は、ワークとしての基板W上にマトリクス状に形成され、基板Wを分割することにより取り出される。基板Wは、絶縁基板としてリジットなガラス基板、セラミック基板、ガラスエポキシ樹脂基板の他、フレキシブルな樹脂基板を用いることができる。分割方法としては、スクライブ、ダイシング、レーザーカット、プレス等が基板Wの材料に応じて選択される。
【0123】
本実施形態では、上記液滴吐出装置10を用いた液滴吐出法により導電性材料からなる配線や絶縁材料からなる絶縁膜を形成した。そのねらいは、各材料の無駄を省いて配線や絶縁膜を形成することにある。また、フォトリソグラフィ法に比べてパターン形成するための露光用マスクや現像、エッチングなどの工程を必要としないので、基板Wのサイズによらず工程を簡略化できることにある。
【0124】
本実施形態の配線基板の製造方法は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用い、導電性材料を含む液状体を吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を乾燥、焼成して各配線301,303を形成する乾燥焼成工程とを備えている。そして、各配線301,303が形成された基板Wに絶縁材料を含む液状体を液滴吐出ヘッド50から吐出する工程と、吐出された液状体を乾燥して成膜する工程とを備えている。
【0125】
上記描画工程では、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて、導電性材料を含む液状体を各配線301,303のパターンに対応して吐出描画する。
【0126】
液状体に含まれる導電性材料としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上1.0μm以下であることが好ましい。1.0μmより大きいと液滴吐出ヘッド50のノズル52に目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0127】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0128】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法により液状体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、液状体のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル52先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板Wとの接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液状体の基板Wへの濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0129】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて液状体を液滴Dとして吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル52周辺部が液状体の流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。そして、乾燥・焼成工程へ進む。
【0130】
乾燥・焼成工程では、吐出された液状体を乾燥・焼成することにより固化させ、各配線301,303を形成する。乾燥・焼成方法は、乾燥炉内に基板Wを放置して所定の温度で乾燥・焼成するバッチ方式や乾燥炉内を通過させるインライン方式が挙げられる。熱源としては、ヒータや赤外線ランプなどが挙げられる。そして、絶縁材料を含む液状体を吐出する工程へ進む。
【0131】
絶縁材料を含む液状体を吐出する工程では、上記描画工程と同様に、上記実施形態2の液状体の吐出方法を採用し、絶縁膜形成領域306(図15参照)に絶縁材料を含む液状体を液滴として吐出描画する。
【0132】
絶縁材料としては、例えば、絶縁性を有するエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の高分子材料を用いることができる。溶媒としては、例えば、上記材料を溶解可能な炭化水素系溶媒が挙げられる。当該液状体の物性は、導電性材料を含む液状体の場合と同様に液滴吐出法に対応して調整される。そして、乾燥・成膜工程へ進む。
【0133】
乾燥・成膜工程では、吐出された液状体を乾燥することにより固化させ、絶縁膜307を形成する。なお、絶縁材料として感光性樹脂材料を用いることも可能である。その場合は、吐出された液状体に紫外線等を照射することにより固化させる。
【0134】
上記実施形態5の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態5の配線基板300の製造方法は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用い、導電性材料を含む液状体や絶縁材料を含む液状体を吐出描画しているので、吐出ムラが低減され、安定した膜厚を有する各配線301,303および絶縁膜307を形成することができる。すなわち、安定した電気特性(電気抵抗、絶縁性)を有する配線基板300を製造することができる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0136】
(変形例1)上記実施形態1のヘッドユニット9において、液滴吐出ヘッド50の配置は、これに限定されない。例えば、主走査方向(X軸方向)から見てノズル列52aが主走査方向から見たノズルピッチを置いて連続するように配置されていれば、液滴吐出ヘッド50を主走査方向に対して交差するように傾けて配置してもよい。すなわち、ノズル群としてのノズル列52aを主走査方向に対して交差する方向に配置してもよい。これによれば、描画幅L1が小さくなるものの、主走査方向から見た複数のノズル52の間隔(ノズルピッチ)が狭くなり、副走査方向(Y軸方向)により高精細に液滴を吐出することができる。また、このようにノズル列52aを主走査方向に対して交差する方向に配置した場合、上記実施形態2の液状体の吐出方法において、上記実施例1から上記実施例4では、上記交差する方向にノズル列52aをずらして液滴を吐出すれば、上記実施例1から上記実施例4の各効果を実現することができる。
【0137】
(変形例2)上記実施形態1のヘッドユニット9におけるノズル群としてのノズル列52aの配置は、これに限定されない。図16(a)〜(d)は変形例のノズル群の配置を示す模式図である。上記ヘッドユニット9では、図16(a)に示すように、隣り合うノズル群N1,N2において、隣接ノズルの吐出量がほぼ同じとなるように配置した。また、主走査方向から見て隣り合うノズル群N1,N2の吐出量分布の傾きがほぼ線対称となるように配置した。例えば、同図(b)に示すように、傾きの正負が異なれば必ずしも線対称でなくてもよい。ヘッドユニット9を副走査してから液状体を吐出する主走査を行えば、上記傾きの正負を打ち消し合うように液状体を吐出することができる。また、隣設ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じならば、同図(c)または(d)に示すように、ノズル群N1に対して吐出量分布の傾きが異なるノズル群N4、あるいはノズル群N5(傾きがほぼゼロ)を組み合わせて配置してもよい。さらには、同種の液状体を吐出する各ノズル群の配置は2つに限定されず、主走査方向から見て3つ以上のノズル群が副走査方向に連続するように配置してもよい。これによれば、同種の液状体を吐出ムラを低減して吐出可能な描画幅L1をより拡大することができる。
【0138】
(変形例3)上記実施形態1のヘッドユニット9において、液滴吐出ヘッド50のノズル群としてのノズル列52aは1列に限定されない。図17(a)および(b)は、変形例の液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルプレートを示す平面図である。例えば、同図(a)に示すように、液滴吐出ヘッド70は、2つの接続針72を有する液導入部71と、一対のコネクタ79を有するヘッド基板73とヘッド本体74と、複数のノズル78を有するノズルプレート76とを備えている。ノズルプレート76のノズル面76aには、ノズル群として多連(2連)のノズル列77が形成されている。同図(b)に示すように、ノズル列77は、ノズルピッチP1で配列した複数のノズル78が半ノズルピッチP2ずれた状態で千鳥状に形成されている。これによれば、主走査方向から見て副走査方向に複数のノズル78をより狭いピッチで配列させることができる。すなわち、より高精細に液状体を吐出することができる。なお、上記実施形態1の液滴吐出装置10によれば、キャリッジ8を回転させる回転機構7を備えているので、ヘッドユニット9における液滴吐出ヘッド50の配置をそのままにしてキャリッジ8を回転させても同様な効果が得られる。
【0139】
(変形例4)上記実施形態1のヘッドユニット9において、液滴吐出ヘッド50の配置は、これに限定されない。例えば、上記実施形態2の液状体の吐出方法における液滴吐出ヘッド1,2の副走査方向へのずらしを反映した液滴吐出ヘッド50の配置とすれば、すべて同種の液状体を吐出する場合には、実施例1〜4における液状体の吐出をより少ない主走査の回数で実現することができる。
【0140】
(変形例5)上記実施形態1のヘッドユニット9の構成は、ノズル群としてのノズル列52aを有する液滴吐出ヘッド50を複数配置することに限定されない。例えば、複数のノズル群が形成された共通のノズルプレートに、各ノズル群に対応したノズルを形成し、ノズルに連通する吐出室と、吐出室に充填された液状体を加圧するエネルギー発生素子とを個別に集積した構成としてもよい。これによれば、ノズル群の配置を高精度に制御することができる。
【0141】
(変形例6)上記実施形態1の液滴吐出装置10において、ヘッドユニット9を副走査する構成は、これに限定されない。例えば、ヘッドユニット9を描画位置で固定し、ワークWを主走査方向だけでなく副走査方向にも移動可能とする構成としてもよい。また、ヘッドユニット9を主走査方向に移動可能とし、ワークWを副走査方向に移動可能としてもよい。
【0142】
(変形例7)上記実施形態2の液状体の吐出方法は、ヘッドユニット9に搭載される液滴吐出ヘッド50が一つの場合であっても、実施例1、実施例2、実施例4の液状体の吐出方法を適用することができる。
【0143】
(変形例8)上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用可能な膜パターンの形成方法は、上記実施形態3のカラーフィルタの製造方法、上記実施形態4の有機EL素子の製造方法、上記実施形態5の配線基板の製造方法に限定されない。例えば、図10の液晶表示装置500において、液晶分子を所定の方向に配向させる配向膜や液晶を所定の領域に塗布する方法においても適用できる。また、図13の有機EL表示装置600において、正孔注入/輸送層617aを形成する方法においても適用できる。
【0144】
(変形例9)上記実施形態5の配線基板300の製造方法において、配線基板300は単層に限定されない。例えば、絶縁膜307上にさらに配線と絶縁膜を積層した多層配線基板の製造方法にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】液滴吐出装置の構造を示す概略斜視図。
【図2】(a)は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略分解斜視図、(b)はノズル部の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す平面図。
【図4】(a)〜(c)は液滴吐出ヘッドの吐出特性を示すグラフ。
【図5】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図6】実施例1の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図。
【図7】実施例2の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図。
【図8】実施例3の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図。
【図9】実施例4の液状体の吐出方法を示す液滴吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を表した図。
【図10】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図11】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図12】(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図13】有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図14】(a)〜(f)は発光素子部の製造方法を示す概略断面図。
【図15】配線基板を示す概略平面図。
【図16】(a)〜(d)は変形例のノズル群の配置を示す模式図。
【図17】(a)および(b)は変形例の液滴吐出ヘッドを示す概略図。
【図18】従来の吐出ヘッドの配置と吐出量との関係を示す図、(a)は吐出ヘッド間の吐出量の変動を示す図、(b)は吐出ヘッドのノズル列内での吐出量の変動を示す図。
【符号の説明】
【0146】
1…液滴吐出ヘッド、2…液滴吐出ヘッド、9…ヘッドユニット、9a…ヘッドプレート、10…液滴吐出装置、50…液滴吐出ヘッド、52…ノズル、52a…ノズル群としてのノズル列、80R,80G,80B…着色層形成材料を含む液状体、100R,100G,100B…発光層形成材料を含む液状体、300…配線基板、301,303…配線、505,505R,505G,505B…着色層としてのカラーフィルタ、603…有機EL素子としての発光素子部、617b,617R,617G,617B…有機EL発光層としての発光層、A…着色領域または発光層形成領域、D…液滴、W…ワークまたは基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を液滴として吐出するノズルが一の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有するヘッドユニットであって、
前記各ノズル群が、前記一の方向から見て前記間隔を置いて前記一の方向と交差する方向に配置され、
前記一の方向から見て隣り合う前記ノズル群の隣接ノズルから吐出される前記液滴の吐出量がほぼ同じであることを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記ノズル群は、前記ノズルの配列を一方の軸とし前記ノズルから吐出される前記液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した前記吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが異なるように前記ノズル群が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きの正負が異なるように前記ノズル群が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが前記一の方向から見て線対称となるように前記ノズル群が配置されていることを特徴とする請求項3に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
さらに前記各ノズル群が前記一の方向に並列して配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見て前記間隔を置いて前記主走査の方向と交差する方向に配置され、前記主走査の方向から見て隣り合う前記ノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットを備え、
前記ヘッドユニットとワークとを対向配置して相対移動させる前記主走査に同期して前記各ノズル群から液状体を液滴として吐出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
前記ノズル群は、前記ノズルの配列を一方の軸とし前記ノズルから吐出される前記液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した前記吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが異なるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きの正負が異なるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが、前記主走査の方向から見て線対称となるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
さらに前記各ノズル群が前記主走査の方向に並列して前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見て前記間隔を置いて前記主走査の方向と交差する方向に配置され、前記主走査の方向から見て隣り合う前記ノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットと、ワークとを対向配置して相対移動させる前記主走査に同期して前記各ノズル群から液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、
前記ワークの同一描画領域に対してn回の前記主走査を行って前記各ノズル群から前記液滴を吐出する吐出工程を備え、
前記吐出工程では、先の主走査に対して、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見た前記ノズル群の有効長の1/nの長さで前記交差する方向にずれて配置されるように前記ワークに対して前記ヘッドユニットを相対移動させ、当該各ノズル群から前記液滴を吐出する後の主走査を行うことを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項12】
前記吐出工程では、隣り合う前記ノズル群のうち、先の主走査における一方のノズル群に対して、他方のノズル群が前記主走査の方向から見た前記ノズル群の有効長の1/nの長さで前記交差する方向にずれて配置されるように前記ワークに対して前記ヘッドユニットを相対移動させ、後の主走査を行うことを特徴とする請求項11に記載の液状体の吐出方法。
【請求項13】
前記吐出工程では、n回の主走査のうち、少なくとも1回は、先の主走査に対して、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見た前記ノズル群の有効長の1/2の長さで前記交差する方向にずれて配置されるように前記ワークに対して前記ヘッドユニットを相対移動させることを特徴とする請求項11に記載の液状体の吐出方法。
【請求項14】
ノズルが主走査の方向から見て略等しい間隔で複数配列したノズル群を複数有し、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見て前記間隔を置いて前記主走査の方向と交差する方向に配置され、前記主走査の方向から見て隣り合う前記ノズル群の隣接ノズルから吐出される液滴の吐出量がほぼ同じであるヘッドユニットと、ワークとを対向配置して相対移動させる前記主走査に同期して前記各ノズル群から液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、
前記ワークの同一描画領域に対してn回の主走査を行って前記各ノズル群から前記液滴を吐出する吐出工程を備え、
前記吐出工程では、先の主走査に対して、前記各ノズル群が前記主走査の方向から見た前記ノズル群の有効長の1/2の長さで前記交差する方向にずれて配置されるように前記ワークに対して前記ヘッドユニットを相対移動させ、当該各ノズル群から前記液滴を吐出する後の主走査を行うことを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項15】
前記吐出工程では、前記隣り合う前記ノズル群のうち、先の主走査における一方のノズル群に対して、他方のノズル群が前記主走査の方向から見た前記ノズル群の有効長の1/2の長さで前記交差する方向にずれて配置されるように前記ワークに対して前記ヘッドユニットを相対移動させることを特徴とする請求項14に記載の液状体の吐出方法。
【請求項16】
前記ノズル群は、前記ノズルの配列を一方の軸とし前記ノズルから吐出される前記液滴の吐出量を他方の軸としてグラフ化した前記吐出量の分布を1次近似式で表した場合に傾きを有し、
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが異なるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項11ないし15のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法。
【請求項17】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きの正負が異なるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項16に記載の液状体の吐出方法。
【請求項18】
前記隣り合う前記ノズル群の前記傾きが、前記主走査の方向から見て線対称となるように前記各ノズル群が前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項17に記載の液状体の吐出方法。
【請求項19】
さらに前記各ノズル群が前記主走査の方向に並列して前記ヘッドユニットに配置されていることを特徴とする請求項11ないし18のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法。
【請求項20】
基板上において区画形成された複数の着色領域に、少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項11ないし19のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、前記複数の着色領域に着色層形成材料を含む少なくとも3色の液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を乾燥して少なくとも3色の前記着色層を形成する乾燥工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項21】
基板上において区画形成された複数の発光層形成領域に有機EL発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項11ないし19のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、前記複数の発光層形成領域に少なくとも発光層形成材料を含む液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を乾燥して前記有機EL発光層を形成する乾燥工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項22】
基板上に導電性材料からなる配線を有する配線基板の製造方法であって、
請求項11ないし19のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、前記基板上に導電性材料を含む液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を乾燥、焼成して前記配線を形成する乾燥焼成工程と、を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−94044(P2008−94044A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281140(P2006−281140)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】