説明

ヘテロサイクリックGPCRアゴニスト

式(I)の化合物:


またはその医薬的に許容可能な塩、はGPR119のアゴニストであり、満腹の調節、例えば肥満の治療および糖尿病の治療などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)アゴニストを対象とする。本発明は、特に、肥満の治療(例えば、満腹の調節、メタボリックシンドロームなど)および糖尿病の治療に有用であるGPR119のアゴニストを対象とする。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体の大きさに対する過剰な脂肪組織量を特徴とする。臨床的には、体脂肪量は、肥満度指数(BMI;体重(kg)/身長(m)2)、またはウェストの外周により評価される。BMIが30より大きく、過体重であるとの医学的結果が評価された場合は、その患者は肥満と見なされる。体重の増加、特に腹部体脂肪の結果としての増加は、糖尿病、高血圧、心疾患、ならびに関節炎、脳梗塞、胆嚢疾患、筋肉疾患、呼吸障害、背痛および特定の癌のような他の多くの健康上の合併症のリスクの増加に関係することは、これまで一般的に認められてきた医学的見解である。
【0003】
肥満治療の薬理学的なアプローチは、主に、エネルギーの摂取量と消費量の間のバランスを変えることにより脂肪量を減らすことに関係する。多くの研究により、肥満症およびエネルギー恒常性の調整に関与する脳回路の間の関連が明らかになった。直接的および間接的証拠により、多くの神経ペプチド経路(例えば、神経ペプチドYおよびメラノコルチン)に加えて、セロトニン作動性、ドーパミン作動性、アドレナリン作動性、コリン作動性、内在性カンナビノイド、オピオイド、およびヒスタミン作動性経路が、エネルギーの摂取量および消費量の集中管理に関わることが示唆された。視床下部中央はまた、体重および肥満の程度の維持に関与するインスリンおよびレプチンのような末梢ホルモン、および脂肪組織誘導ペプチドを感知することができる。
【0004】
インスリン依存性I型糖尿病および非-インスリン依存性II型糖尿病に関与する病態生理学を目的とする薬剤は、多くの副作用の可能性を有しており、患者の大部分において脂質代謝異常および高血糖に適切に対処しない。治療はしばしば、ダイエット、エクササイズ、血糖降下薬およびインスリンを用いることを必要とする個々の患者に焦点が当てられるが、新規な抗糖尿病薬、特に副作用が少なくて寛容性のよいものが、継続して求められる。
【0005】
同様に、メタボリックシンドローム(シンドロームX)は、人々を冠動脈疾患の高い危険にさらし、中心性肥満(腹部の過剰な脂肪組織)、耐糖能異常、高トリグリセリドおよび低HDLコレステロール、そして高血圧などのリスクファクターの群により特徴づけられる。心筋虚血および微小血管障害は、未治療のまたは管理不良のメタボリックシンドロームに関係する確立された病的状態である。
【0006】
新規な抗肥満薬および抗糖尿病薬、特にほとんど副作用を伴わず良好な耐用性を示す薬剤が継続的に要求される。
【0007】
GPR119(以前はGPR116と称された)は、ヒトおよびラットの両方の受容体を開示したWO00/50562でSNORF25として同定されたGPCRであり、米国特許第6,468,756号も、マウスの受容体を開示している(受け入れ番号:AAN95194(ヒト)、AAN95195(ラット)およびANN95196(マウス))。
【0008】
ヒトにおいて、GPR119は膵臓、小腸、大腸および脂肪組織で発現する。ヒトGPR119受容体の発現プロファイルは、肥満症および糖尿病の治療のターゲットとして潜在的な利用可能性を示唆している。
【0009】
国際特許出願WO 2005/061489、WO 2006/070208、WO 2006/067532には、GPR119受容体アゴニストとしてヘテロ環誘導体が開示される。国際特許出願WO2006/067531には、GPR119受容体アゴニストが開示される。国際特許出願WO2007/003960、WO2007/003961、WO2007/003962およびWO2007/003964(本願優先日の後公開)にもまたGPR119受容体アゴニストが開示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、糖尿病の治療および満腹の末梢制御剤(例えば肥満およびメタボリックシンドロームの治療などに対する)として有用なGPR119のアゴニストに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
式(I)の化合物:
【化1】

またはその医薬的に許容可能な塩は、GPR119のアゴニストであり、糖尿病の治療および満腹の末梢制御剤(例えば肥満およびメタボリックシンドロームなどの治療に対する)として有用である。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式(I):
【化2】

[式中、
Vは、O、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール環であり、該環はC1-4アルキルにより適宜置換されており;
Aは-CH=CH-または(CH2)nであり;
Bは(CH2)p-CH(C1-3アルキル)-(CH2)qであり、そのCH2基のひとつがO、NR5、S(O)m、C(O)、C(O)NR5、CH(NR5R55)、C(O)O、C(O)S、SC(O)またはOC(O)により置き換わっていてもよく;
nは独立して0、1、2または3であり;
mは独立して0、1または2であり;
p+qは0、1または2に等しく;
xは0、1、2または3であり;
yは1、2、3、4または5であり;
ただし、x+yは2、3、4または5であり;
GはCHR12またはNR2であり;
R1はフェニル、またはO、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5または6員ヘテロアリール基であり、そのいずれも、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C3-7シクロアルキル、アリール、OR6、CN、NO2、S(O)mR6、C(O)NR6R66、NR6R66、NR10C(O)R6、NR10SO2R6、SO2NR6R66、COR10、C(O)OR10、4〜7員ヘテロサイクリル基または5または6員ヘテロアリール基から選択される1以上の置換基により適宜置換されていてもよく;
R2はC(O)OR3、C(O)NR3R13、C1-4アルキレン-C(O)OR3、C(O)C(O)OR3、S(O)2R3、C(O)R3またはP(O)(O-Ph)2であるか;あるいは、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、そのどちらかがC1-4アルキル、C1-4アルコキシおよびハロゲンから選択される1または2つの基により適宜置換されていてもよく;
R3はC1-8アルキル、C2-8アルケニルまたはC2-8アルキニルであり、そのいずれも、1以上のハロ原子、NR4R44、OR4、C(O)OR4、OC(O)R4またはCN基により適宜置換されていてもよく、また、OまたはSにより置き換えられたCH2基を含むか;あるいは、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、C1-4アルキレン、C3-7シクロアルキル、C1-4アルキレンアリール、C1-4アルキレンヘテロサイクリルまたはC1-4アルキルヘテロアリールであり、そのいずれも、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、SO2Me、NO2またはC(O)OR4から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;
R4およびR44は独立して水素またはC1-4アルキルであるか;あるいは、R4およびR44は一緒になって、5または6員ヘテロサイクリック環を形成していてもよく;
R5およびR55は独立して水素またはC1-4アルキルを示し;
R6およびR66は独立して水素またはC1-4アルキルであり、該基はハロ(例えばフルオロ)、ヒドロキシ、C1-4アルキルオキシ-、C1-4アルキルチオ-、C3-7ヘテロサイクリルまたはN(R10)2により適宜置換されていてもよく;あるいは、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、該環状基はハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR9、CN、SO2CH3、N(R10)2およびNO2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;あるいは、R6およびR66は一緒になって、ヒドロキシ、C1-4アルキルまたはC1-4ヒドロキシアルキルにより適宜置換された5または6員ヘテロサイクリック環を形成していてもよく;あるいはR66はC1-4アルキルオキシ-であり;
R9は水素、C1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルであり;
R10は独立して水素またはC1-4アルキルであるか;あるいは、基N(R10)2はOおよびNR10から選択される更なるヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロサイクリック環を形成してもよく;
R12はC3-6アルキルであり;および、
R13は水素またはC1-4アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩に関する。
【0013】
式(I)の化合物の分子量は、望ましくは800より小さく、より望ましくは600より小さく、特に500より小さいことが望ましい。
【0014】
式(I)の化合物においてVは、望ましくは式:
【化3】

[式中、
W、XおよびYがヘテロ原子の位置を示すか、あるいはCHを示す]
のO、NおよびSから選択される最大3つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール環である。
【0015】
Vが表す特定のヘテロサイクリック環は、オキサジアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアジアゾール、チアゾールおよびピラゾールを含む。
望ましくは、W、XおよびYのうち2つはNであり、その他はOである。
Wは望ましくはNである。
Vは望ましくは、:
【化4】

である。
Aにおいて、nは望ましくは0、1または2、より望ましくは0である。
Bにおいて、p+qは望ましくは1または2であり、特に1が望ましい。
pは望ましくは0、qは望ましくは1である。
BにおけるCH2基のうちひとつが置き換えられている場合、望ましくはOまたはNR5により置き換えられており、より望ましくは0により置き換えられている。本発明の一態様において、BにおけるCH2基は置き換えられている。本発明の第二の態様において、BにおけるCH2基は置き換えられていない。
【0016】
本発明の一態様において、Bにおける-CH(C1-3アルキル)-基は-CH(CH3)-である。さらなる態様において、Bは-CH(CH3)-O-である。Bが-CH(CH3)-O-である化合物において、不斉炭素原子での絶対配置は、望ましくは(R)である。
【0017】
R1は、最大2つのN原子を含むフェニルまたは6員ヘテロアリール基であり、そのどちらかの環、特にフェニルが適宜置換されていることが望ましい。R1ヘテロアリール基の例として、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、ピラダジニルまたはピラジルが含まれる。R1の望ましい置換基はハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、CN、S(O)mR6、C(O)NR6R66、SO2NR6R66、COR10、C(O)OR10あるいは5または6員ヘテロアリール基; 特に、ハロ(例えばフルオロまたはクロロ)、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、CN、S(O)mR6、C(O)NR6R66またはSO2NR6R66あるいは5または6員ヘテロアリール基が望ましく;とりわけ、フルオロ、クロロ、メチル、S(O)mR6(例えば、mは1または2)、C(O)NR6R66またはSO2NR6R66が望ましい。
Gは望ましくはNR2である。
【0018】
本発明の一態様において、x+yは2、3、または4である。本発明の望ましい態様において、xおよびyは各々1を示す。本発明のより望ましい態様において、xおよびyは各々2を示す。
【0019】
R2は、C(O)OR3、C(O)NR3R13、C1-4アルキレン-C(O)OR3、C(O)C(O)OR3、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、S(O)2R3、C(O)R3またはP(O)(O-Ph)2が望ましく;特にC(O)OR3、C(O)NR3R13、C1-4アルキレン-C(O)OR3、ヘテロアリール、S(O)2R3またはC(O)R3が望ましく;とりわけ、C(O)OR3、C(O)NR3R13、ヘテロアリール、S(O)2R3またはC(O)R3であることが望ましい。より望ましくは、R2はC(O)OR3、C(O)NR3R13またはヘテロアリールである。R2はC(O)OR3であることが最も望ましい。R2がヘテロアリールである場合、該ヘテロアリール環は望ましくはピリミジニル、特にリミジン-2-イルであり、R2はオキサジアゾールであることがより望ましい。
【0020】
望ましくは、R3は、C1-8アルキル、C2-8アルケニルまたは1以上のハロ原子により適宜置換されたC2-8アルキニル、NR4R44、OR4、C(O)OR4、OC(O)R4またはCN基を示し、OまたはSにより置き換えられたCH2基を含んでいてもよく;あるいはC3-7シクロアルキル、アリールまたはC1-4アルキル、C3-7シクロアルキルを示し、そのいずれもがハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、NO2またはC(O)OC1-4アルキルから選択される1以上の置換基で置換されていても良い。より望ましくは、R3は、1以上のハロ原子またはCNにより適宜置換されたC1-8アルキル、C2-8アルケニルまたはC2-8アルキニルを示し、OまたはSにより置き換えられたCH2基を含んでいてもよく;あるいはC3-7シクロアルキルまたはアリールを示し、そのどちらかはハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、NO2またはC(O)OC1-4アルキルから選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。最も望ましいR3基は、1以上のハロ原子またはCNで適宜置換されたC3-5アルキルであり、OまたはSにより置き換えられたCH2基、またはC1-4アルキルにより適宜置換されたC3-5シクロアルキルを含んでいてもよい。本発明の一態様において、R3により示される基は置換されていない。
【0021】
R6およびR66は望ましくは適宜置換のC1-4アルキルか、または適宜置換のC3-7シクロアルキルである。
【0022】
基R6がスルフィニルまたはスルホニル基に結合している場合、R6は、望ましくは適宜置換C1-4アルキルまたは適宜置換C3-7シクロアルキル、さらに望ましくは適宜置換アルキル、例えばメチルまたはエチルである。基R6がC(O)Nに結合している場合、R6は望ましくは水素、適宜置換C1-4アルキルまたは適宜置換C3-7シクロアルキル、より望ましくは適宜置換C1-4アルキル、例えばメチルまたはエチルである。
【0023】
R9は望ましくはC1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルである。
【0024】
各々の可変基に対する望ましい基は、通常、各々の可変基について上記したものが挙げられるが、望ましい本発明の化合物には、式(I)のいくつかまたは各々の可変基が、各々の望ましい基、より望ましい基または特別に挙げられた基から選択されるものが含まれる。従って、本発明は、望ましい、より望ましいおよび特別に挙げられた基の全ての組み合わせを含むことを意図する。
【0025】
挙げられる本発明の特有の化合物は、例に含まれるもの、およびその医薬的に許容可能な塩である。
【0026】
特に指定のない限り、ここで用いられる“アルキル(alkyl)”並びに接頭語“alk”(例えば、アルケニル、アルキニル、など)を有する他の基は、直線状または分岐またはその組み合わせである炭素鎖を意味する。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-およびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどが含まれる。“アルケニル”、“アルキニル”および他の同類項としては、少なくともひとつの不飽和炭素-炭素結合を有する炭素鎖が含まれる。
【0027】
用語“フルオロアルキル”は、1以上のフッ素原子(例えばCH2F、CHF2およびCF3)により置換されたアルキル基を包含する。
【0028】
用語“シクロアルキル”は、ヘテロ原子を有しない炭素環を意味し、単環式および二環式、飽和および部分的飽和炭素環を包含する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが含まれる。部分的飽和シクロアルキル基の例としては、シクロヘキセンおよびインダンが含まれる。シクロアルキル基は通常、全部で3から10環炭素原子(例えば、3から6、または8から10)を含むであろう。
【0029】
用語“ハロ”はフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素原子を包む。
【0030】
用語“アリール”はフェニルおよびナフチル、とりわけフェニルを包む。
【0031】
他に指示のない限り、用語“ヘテロサイクリル”および“ヘテロサイクリック環”は、N、OおよびSから選択される最大3つのヘテロ原子を含む4〜10員単環式および二環式飽和環(例えば4〜7員単環式飽和環)、を包含する。ヘテロサイクリック環の例としては、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセパン、オキソカン、チエタン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、チエパン、チオカン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、[1,3]ジオキサン、オキサゾリジン、ピペラジン、などが含まれる。ヘテロサイクリック環の他の例としては、含硫黄環の酸化された形態が含まれる。従って、テトラヒドロチオフェン1-オキシド、テトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシド、テトラヒドロチオピラン1-オキシド、およびテトラヒドロチオピラン1,1-ジオキシドもまたヘテロサイクリック環であると考えられる。
【0032】
R2が表すヘテロサイクリック環の例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジンおよびピペラジンが含まれる。R2ヘテロサイクリル基もまたさらなるヘテロ原子(例えば、モルホリン)を含んでよい。
【0033】
他に指定のない限り、用語“ヘテロアリール”は、単環式および二環式5〜10員(例えば、単環式5または6員)、N、OおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を有するヘテロアリール環を包含する。そのようなヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラダジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびトリアジニルである。二環式ヘテロアリール基としては、5または6員ヘテロアリール環がフェニルまたは別のヘテロ芳香族基に縮合した二環式ヘテロ芳香族基が含まれる。そのような二環式ヘテロ芳香環の例としては、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンおよびプリンがある。
【0034】
ここに記載されている化合物は、1以上の不斉中心を含んでいてもよく、従って、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じ得る。本発明には、全てのかかる可能なジアステレオマーだけでなくラセミ体混合物、十分に純度の高い分割されたエナンチオマー、全ての可能な幾何異性体、およびその医薬的に許容可能な塩が含まれる。上記の式(I)は、いくつかの位置で明確な立体化学を示さずに表されている。本発明には、式(I)の全ての立体異性体およびその医薬的に許容可能な塩が含まれる。更に、立体異性体だけでなく単離された特定の立体異性体も含まれる。かかる化合物を製造するのに用いられる合成処置工程の間、または当業者に公知のラセミ化またはエピマー化工程を用いる際、かかる工程の生成物は立体異性体の混合物であり得る。
【0035】
式(I)の化合物の互変異性体が存在する場合、本発明は、特に他の記載がない限り、いかなる可能な互変異性体およびその医薬的に許容可能な塩、およびそれらの混合物をも含む。
【0036】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容される塩が溶媒和物または多形体で存在する場合、本発明はいかなる可能な溶媒和物および多形体も含む。溶媒和物を形成する溶媒の種類は、薬理学的に許容可能な溶媒である限り特に制限はない。例えば、水、エタノール、プロパノール、アセトンなどが用いられ得る。
【0037】
用語“医薬的に許容可能な塩”とは、医薬的に許容可能な無毒性の塩基または酸から調製された塩をいう。本発明の化合物が酸性の場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む医薬的に許容可能な無毒性塩基から容易に調製され得る。かかる無機塩基から得られた塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第一および第二)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が含まれる。特に望ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。医薬的に許容可能な有機無毒性塩基から得られる塩としては、第1、第2、第3アミン、並びに環状アミンおよび天然および人工的に置換されたアミンのような置換アミンの塩が含まれる。塩を形成できる他の医薬的に許容可能な有機無毒性塩基には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N',N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。
【0038】
本発明の化合物が塩基性の場合、その対応する塩は、無機酸および有機酸を含む医薬的に許容可能な無毒性酸から容易に調製できる。そのような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。
【0039】
式(I)の化合物は医薬的用途を目的としているので、十分に純度の高い形態で提供されるのが望ましく、例えば、少なくとも純度60%、より好ましくは少なくとも純度75%、特に好ましくは少なくとも純度98%である(%は重量%である)。
【0040】
式(I)の化合物は以下に記載のように製造でき、例示の式中、-V-は、化学式:
【化5】

の基として示され、R1、A、B、x、y、G、W、XおよびYは上記に記載の通りである。
【0041】
X=N、Y=OおよびW=Nの式(I)の化合物は、スキーム1に示される方法に従って調製される。式2のニトリルは、市販されているか、または周知の技術を用いて合成できる。式2の化合物は適切な溶媒(例えばエタノール-水)において、高温で、ヒドロキシルアミンで処理することにより、式3のアミドキシムを得る(アミドキシムの合成は、A.R.Martinら、J. Med. Chem.,2001,44,1560においてさらに説明される)。式3の化合物は続いて、市販されているかまたは周知の技術を用いて容易に合成できる式4の酸により縮合される。該縮合はまず、例えば混合無水物の形成により式4の化合物を活性化する。その場合、該酸は、適切な塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下で適切な溶媒(例えばTHFまたはトルエン)中において、クロロギ酸エステル(例えばクロロギ酸イソブチル)により処理して行う。その後、式3の化合物を添加する。別法として、式4の化合物を、例えば適切な溶媒(例;CH2Cl2-DMF)中の塩化オキサリルなどでの酸の処理により活性化し、酸ハロゲン化物へ変換する。式3のアミドキシムと式4の酸の縮合により生じる中間体を適切な溶媒(例えば、トルエンまたはキシレン)に溶解し、Dean-Stark装置または分子篩による水の同時除去とともに、還流下において熱し、式(I)のオキサジアゾールを形成する。別の方法として、式3のアミドキシムを、まず適切な溶媒中(例えばTHF)で適切な塩基(例えば水素化ナトリウム)で処理し、続いて式5のエステルで処理する。この混合物を熱することにより、式(I)のオキサジアゾールが生成される(この調整法は、R.H.Machら、Bioorg. Med. Chem.,2001,9,3113 においてさらに説明される)。
【化6】

【0042】
X=O、Y=NおよびW=Nの式(I)の化合物は、スキーム2で説明される方法に従って調製される。式6のニトリルは、市販されているかまたは周知の技術を用いて合成できる。これらは、上記のように、式7の対応するアミドキシムに変換され、続いて、市販されているかまたは当業者により容易に合成できる式8の酸と縮合される。この縮合はスキーム1に記載した方法と類似した方法で行われ、式(I)の対応するオキサジアゾールを得る。
【化7】

【0043】
X=N、Y=NおよびW=Oの式(I)の化合物は、スキーム3に説明されるように合成できる。式9の塩化アシルは、市販されているかまたは周知の方法を用いて合成される。式10の酸ヒドラジドは、例えば対応するエステルのエタノール溶液をヒドラジンで処理することにより容易に得ることができる(詳細はK.M.Kahnら、Bioorg. Med. Chem.、2003,11,1381を参照)。適切な溶媒(例えば、ピリジン)において式9の塩化アシルを式10の酸ヒドラジドで処理することにより式11の化合物を得た後(V.N.Kerr ら、J. Am. Chem. Soc.、1960,82,186においてさらに説明される)、高温で、POCl3により式(I)の化合物に変換される(この調整法はS-A. Chen ら、J. Am. Chem. Soc.、2001,123,2296においてさらに説明される)。同様に、X=Y=W=Nである式(I)の化合物は、10のアミドラゾン類似体を適当な活性化カルボン酸誘導体(例えば9)と縮合させて調製される。この反応において反応基が交換される。すなわち、式R1-A-C(=NH)NHNH2のアミドラゾンは、LGがハロゲンまたはオキシカルボニルである活性化カルボン酸誘導体LG-C(=O)-B-cycleとの縮合により式(I)の化合物を形成し得る(P. H. Olesen ら、J. Med. Chem.、2003,46,3333-3341)。
【化8】

【0044】
X=N、Y=N、およびW=Sである式(I)の化合物はまた、適切な溶媒(例えば、トルエンまたはアセトニトリル)においてローソン試薬(Lawesson's reagent)とともに熱することにより、式11の化合物からも調製できる(D. Alker ら、J. Med. Chem.、1989,32,2381-2388)。X=S、Y=NおよびW=Nである式(I)の化合物は、市販されているかまたは標準条件下で対応するカルボニル化合物およびローソン試薬(Lawesson's reagent)から容易に合成できる、式12の化合物(スキーム4)から形成される。式12の化合物を、適切な溶媒(例えばジクロロメタン)において、約20℃で、式13の化合物で処理することにより、式14の化合物を得ることができる。式13の化合物は、対応するジメチルアミドをメーヤワイン試薬(Meerwein's reagent)で処理することにより得ることができる(詳細はM. Brown US 3,092,637を参照)。式14の化合物は、次いで、適切な溶媒(例えばメタノール)中で塩基(例えば、ピリジン)の存在下において、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸により環化される(詳細は、A.MacLeod ら、J. Med. Chem.、1990,33.2052参照)。
【化9】

【0045】
X=N、Y=SおよびW=Nである式(I)の位置異性体誘導体は、該R1フラグメントがアセタール基を含有し、G含有環状フラグメントがチオカルボニルを含有するように、反応物質の官能基を逆転することによって、同様の方法で形成することができる。
【0046】
W=O、X=NおよびY=CHである式(I)の化合物は、式15の化合物から形成できる(スキーム5)。式15の化合物は市販されているかまたは周知の技術を用いて合成される。式16のクロリドは市販されているか、または標準的条件下で対応するケトンを塩素で処理することにより容易に形成できる(例えば、ケトンのメタノール溶液中を塩素ガスでバブリングするなど)(詳細はR.Gallucci & R. Going、 J. Org. Chem.、1981,46,2532参照)。式15の化合物を式16のクロリドと適切な溶媒(例えば、トルエン)中で、熱しながら(例えば、約100℃)混合することで、式(I)の化合物を得る(詳細は、A. Hassner ら、Tetrahedron、1989,45,6249参照)。W=O、X=CHおよびY=Nである式(I)の化合物は、R1フラグメントがハロケトン基を含有し、G含有環状フラグメントがC(O)NH2を含有するように、反応物質の官能基を逆転することによって、同様の方法で形成することができる。
【化10】

【0047】
あるいは、X=S、W=NおよびY=CHである式(I)の化合物は、式16の化合物から形成することもできる。式15の化合物を五硫化リンで熱し、続いて式16の化合物を添加し、その後さらに熱することで式(I)の化合物を得る(詳細は、R.Kurkjy & E.Brown、J. Am. Chem. Soc.、1952,74,5778参照)。X=CH、W=N および Y=Sである位置異性体化合物は、R1フラグメントがハロケトン基を含有し、G含有環状フラグメントがC(O)NH2を含有するように、反応物質の官能基を逆転することによって、同様の方法で形成することができる。
【0048】
W=N、X=OおよびY=CHである式(I)の化合物は、式15および式17の化合物から、スキーム5に関する説明と同様の条件下で形成できる(スキーム6)。W=S、X=NおよびY=CHである式(I)の化合物は、式15および式17の化合物から、上記に記載した五硫化リンを用いる条件により形成できる。
【化11】

【0049】
X=O、Y=N、W=CH、およびX=N、Y=O、W=CHである式(I)の化合物は、式20の化合物から形成できる(スキーム7)。Qがアルコキシドまたはクロリドである式19の化合物による式18の化合物のアシル化は、標準的条件下、例えば、適切な溶媒(例;テトラヒドロフラン)中における通常は低温での適切な塩基(例;リチウムジイソプロピルアミドまたはカリウムエトキシド)によるケトン18の脱プロトン化など、で生じる。式20の化合物を、溶媒(例えばエタノール)中で高温(例えば75℃)にて、ヒドロキシルアミンで処理することにより、イソキサゾールの位置異性体との混合として式(I)の化合物を得る。標準的な分離方法(例えば、シリカゲルによるクロマトグラフィー)を用いて、個々の異性体を分離する(詳細は、M.Rowley ら、J. Med. Chem.、1997,40,2374参照)。
【化12】

【0050】
X=S、Y=NおよびW=CHである式(I)の化合物は、適切な溶媒(例えばエタノール)において、X=O、Y=NおよびW=CHである式(I)の化合物の酸化白金による水素化により形成でき、続いて五硫化リンで熱することで、 X=S、Y=N および W=CHである式(I)の化合物を得る(詳細は、G.Wiegand ら、J. Med. Chem.、1971,14,1015参照)。X=N、Y=SおよびW=CHである位置異性体の合成の詳細についても、G.Wiegand の同書を参照する。
【0051】
X=N、Y=NおよびW=CHである式(I)の化合物は、式20の化合物から形成できる。適切な溶媒(例えばメタノール)中における、ヒドラジンによる式20の化合物の処理により、X=N、Y=N および W=CHである式(I)の化合物が生じるであろう(この調整法はR.Baker ら、J. Med. Chem.、1997,40,2374 においてさらに説明される)。
【0052】
X=CH、Y=NおよびW=Nである式(I)の化合物はスキーム8に記載のように合成できる。式23の臭化物は市販されているかまたは、対応するケトンから(例えば、ケトン水溶液をBr2およびHBrで処理することにより)合成される(J.Y.Becker ら、Tetrahedron Lett.、2001,42,1571による記載のように)。式22のアミジンは、周知の方法(例えば、適切な溶媒(例えばエタノール)における、対応する式21のアルキルイミデートのアンモニアによる処理)により合成される(D.A.Pearson ら、J. Med. Chem.、1996,39,1372 に詳述のように)。式21のイミデートは、例えば、適切な溶媒(例えばエタノール)における、対応するニトリルのHClによる処理により、順に生成される(詳細はJ. P. Lokensgard ら、J. Org. Chem.、1985,50,5609参照)。適切な溶媒(例えばDMF)における式22のアミジンと式23の臭化物との反応により、式(I)の化合物が得られる(N.J.Liverton ら、J. Med. Chem.、1999,42,2180において例示される)。
【化13】

【0053】
X=N、Y=CHおよびW=Nである位置異性体化合物は、R1フラグメントがアミジン基を含有し、R2フラグメントが臭化物を含有するように、反応物質の官能基を逆転することによって、同様の方法で形成することができる。
【0054】
X=CH、Y=CHおよびW=Nである式(I)の化合物は、スキーム9に例示のように合成できる。式25のジケトンは、例えば、適切な溶媒(例えばベンゼン)において適切な触媒を用いた、式23の臭化物と式24のケトン(市販されているかまたは周知の技術を用いて容易に合成できる)の縮合により容易に得られる。説明に役立つ実例は、O.G.Kulinkovich ら、Synthesis、2000, 9, 1259 に記述してある。パール-クノール反応(Paal-Knorr reaction)を用い、式25のジケトンを、例えば、適切な溶媒(例えばエタノール)中において高温で、炭酸アンモニウムで処理し(詳細はR.A.Jones ら、Tetrahedron、1996, 52, 8707 参照)、式(I)の化合物を得る。
【化14】

【0055】
R2がカルバメート基またはスルホンアミド基のいずれかを含有する式(I)の化合物が、スキーム10に記載のように合成される。Pが適切な保護基を表す式26の化合物(例えばtert-ブトキシカルボニル(Boc))は、上記のスキーム1〜9に説明のとおり合成される。まず、該保護基が適切な条件下において除去されることで式27の化合物が得られる。Boc基の場合、適切な溶媒(例えばCH2Cl2)において適切な酸(例えばトリフルオロ酢酸)による式26の化合物の処理により、式27の化合物が得られる。適切な溶媒(例えばCH2Cl2)において適切な塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下で、式27の化合物を式28のクロロギ酸エステル(通常は市販であるか容易に合成できる)により処理することで、式(I)の化合物が得られる。同様に、適切な溶媒(例えばCH2Cl2)において適切な塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下で、式27の化合物を式29のスルホニルクロリド(通常は市販であるか容易に合成できる)と反応させることで、式(I)の化合物が得られる。R2が尿素部分を含有する式(I)の化合物は、式27の化合物と式O=C=N-R3のイソシアネートの反応により調製される。さらに、R2がヘテロアリール基である式(I)の化合物は、適切なリガンドと塩基の存在下において、Pd(0)の触媒作用によるアミン27と適切なヘテロアリールクロリドまたは臭化物との反応により調製される(Urgaonkar、S.; Hu、J.-H.; Verkade、J. G. J. Org. Chem.、2003, 68, 8416-8423)。
【化15】

【0056】
R2がアミド基を含有する式(I)の化合物は、アミド結合形成反応において、式27の化合物および適切な酸(R3COOH)、またはその活性化誘導体から合成される。
【0057】
BがNR5基を含有し、そのR5が水素である式(I)の化合物は、当業者に周知の標準的手法を用いて、R5がC1-4アルキル基である式(I)の化合物にさらに変換される。
【0058】
R1がCNで適宜置換されたピラジルである式(I)の化合物は、Reissert反応により、対応する非置換のピリジンから調製される(Fife、W. K. J. Org. Chem.、1983, 48, 1375-1377)。同様の反応を、R1がハロゲンで適宜置換されたピラジルである化合物を調製するのに用いることができる(Walters、M. A.; Shay、J. J. Tetrahedron Lett.、1995, 36, 7575-7578)。R1がハロゲンで適宜置換されたピラジルである化合物は、遷移金属触媒クロスカップリング反応により、R1がC1-4アルキルで適宜置換されたピラジルである対応する化合物に変換される(Furstner、A.、ら、J. Am. Chem. Soc.、2002, 124, 13856-13863)。
【0059】
X=N、Y=N、U=NおよびW=CHである式(I)の化合物は以下のスキーム11に示されるように合成できる。説明に役立つ実例は、M. Meldal ら、J. Org. Chem.、2002、67(9)、3057-3064に記載されている。式30のアジドは市販されているかまたは、例えば周知の技術を用いた対応するハロゲン化物のアジドイオンによる置換から合成されるか;あるいは、酸性媒体における亜硝酸ナトリウムとの反応を介して対応するアミン誘導体から合成される。式31のアルキンは市販されているかまたは、例えばアセチリドイオンとボラン(J.Org.Chem.、1981、46(11) 2311-2314参照)またはアルデヒド、あるいはケトンとの反応といった周知の方法により合成される。
【化16】

【0060】
X=N、Y=CH、U=NおよびW=CHである式(I)の化合物は、スキーム12に示される通り、式33の1,3-ジカルボニル化合物(またはそれらの同等物、例えばエノールエーテル)と式32のヒドラジンの反応により合成できる。式32のヒドラジンは、市販されているかまたは、周知の方法、例えば対応するアミンと亜硝酸ナトリウムの反応、および結果として得られたジアゾニウム塩を還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム)と反応させることにより、合成される。
【化17】

【0061】
他の式(I)の化合物は、上記と類似の方法、またはそれ自体が周知である方法により調製される。
【0062】
式(I)の化合物の調製に関するさらなる詳細は実施例に記載する。
【0063】
式(I)の化合物は単独で、または少なくとも2、例えば5から1,000、より望ましくは10から100の式(I)の化合物を含有する化合物ライブラリーとして調製される。化合物ライブラリーは、当業者に周知の手順を用いて、“分割と混合(split and mix)”の組み合わせ方法、または溶液層または固層化学のいずれかを用いた多重(multiple)パラレル合成により調製される。
【0064】
式(I)の化合物の合成中において、中間体化合物(例えばヒドロキシ基、カルボキシ基およびアミノ基)中の不安定な官能基は、保護される。該保護基は、式(I)の化合物の合成におけるいずれかのステージで除去されるか、あるいは、最終的な式(I)の化合物に存在する。様々な不安定な官能基が保護される経路、および結果的に保護された誘導体を開裂する方法の包括的な考察が、例えばProtective Groups in Organic Chemistry、T.W. Greene および P.G.M. Wuts、(1991) Wiley-Interscience、New York、2nd editionにおいて与えられる。
【0065】
上記に定義の、いくつかの新規中間体は式(I)の化合物の合成に有用であり、それ故に、本発明の範囲内にもまた包含される。例えば、式(XXVII)の化合物:
【化18】

[式中、
基R1、A、V、B、xおよびyは式(I)の化合物について上記に定義の通りである。但し、R1が4-フルオロアルキルピリド-3-イルまたは4-フルオロアルキルピリミジン-5-イルでない。]
【0066】
US 2003/0162812は、殺虫剤としての4-フルオロアルキルピリド-3-イルおよび4-フルオロアルキルピリミジン-5-イル誘導体を開示する。
【0067】
前述の通り、式(I)の化合物は、例えば、肥満および糖尿病の治療および/または予防に対する、GPR119アゴニストとして有用である。式(I)の化合物のそのような使用においては、通常、医薬組成物の形態で投与されるであろう。
【0068】
本発明はまた、薬剤としての使用に関して、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0069】
本発明はまた、医薬的に許容可能な担体と組み合わせた、式(I)の化合物を含有する医薬組成物も提供する。
【0070】
該組成物は、医薬的に許容可能な担体および無毒で治療効果のある量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を含むことが望ましい。
【0071】
さらに、本発明はまた、GPR119の変調(modulating)がもたらす疾病の治療(肥満の予防薬または治療療法(例えば満腹の調節など)に到る)、あるいは糖尿病の治療のための、医薬的に許容可能な担体および無毒で治療効果のある量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を含有する、医薬組成物を提供する。
【0072】
該医薬組成物は、適宜、他の治療成分またはアジュバントを含む。どんな場合においても、有効成分が投与されるための最も適した経路は、個々の宿主、種、および病状に依存するであろうが、該組成物は、口腔、直腸、局所、および非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)投与に適した組成を含む。該医薬組成物は単位用量形態に容易に存在でき、薬学の分野では周知のいずれかの方法で調製される
【0073】
実際のところ、該式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩は、汎用的な製剤配合技術に従って、密な混合(intimate admixture)中の有効成分として医薬担体に結合される。該担体は、投与(例えば口腔または非経口(静脈内を含む))に望ましい製剤形態に依存して幅広い様々な形態をとる。
【0074】
従って、該医薬組成物は、例えば各々所定の量の有効成分を含むカプセル、オブラートまたは錠剤といった経口投与に適した個々の単位で存在し得る。さらに、該組成物は粉末、顆粒、溶液、水性液体中の懸濁液、非水性液体、水中油型乳剤、または油中水型乳濁液として存在し得る。上に示した一般的な投薬形態に加えて、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩はまた、放出手段および/または運搬手段を制御された状態で投与される。該組成物はいずれかの調剤方法で調製される。通常、そのような方法は1以上の必須成分を構成する有効成分と担体の会合をもたらすステップを有する。一般に、該組成物は、有効成分と液体担体または微粉化した固体担体あるいはその両方とを均一かつ密に混合することにより調製される。その後、該生成物は望ましい形状に都合良く仕上げられる。
【0075】
式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩はまた、1以上の他の治療に有効な化合物と結合した医薬組成物に含まれる。
【0076】
用いられる医薬担体は、例えば、固体、液体、または気体である。固体担体の例としては、ラクトース、白土(terra alba)、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、シュガーシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、および水である。気体担体の例としては、二酸化炭素および窒素が含まれる。
【0077】
経口投薬形態用の組成物の調製において、いくつかの便利な薬剤媒体(pharmaceutical media)が用いられる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香料添加剤、保存料、着色剤などが、経口液体製剤(例えば懸濁液、エリキシル剤および液剤など)を形成するために用いられる。;一方、デンプン、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などといった担体は、経口固体製剤(例えば粉末、カプセルおよび錠剤など)を形成するために用いられる。投与が容易であることから、錠剤およびカプセルは、固体医薬担体が用いられる望ましい経口投与単位である。適宜、錠剤は標準的な水性または非水性テクニックによりコーティングされる。
【0078】
本発明の組成物を含有する錠剤は、適宜1以上の副成分またはアジュバントを伴って圧縮または成形により、調製される。圧縮錠剤は、粉末または顆粒といった自由流動形態中の有効成分を適切な機械で圧縮することにより調製され、適宜、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合される。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することで作られる。各錠剤は、望ましくは約0.05mgから約5gの有効成分を含み、各オブラートまたはカプセルは、望ましくは約0.05mgから約5gの有効成分を含む。
【0079】
例えば、ヒトへの経口投与を目的とした形態は約0.5mgから約5gの活性薬剤を含み、適切でちょうど良い量(全組成の約5から約95パーセントで変化し得る)の担体材料で調合される。単位用量形態は通常、約1mgから約2gの有効成分、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mg、を含むであろう。
【0080】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、溶液または水における活性化合物の懸濁液として調製される。好ましい界面活性剤には、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどが含まれる。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその油中での混合物において調製される。さらに、保存料が微生物の有害な増殖を防ぐために入れられる。
【0081】
注入用に適した本発明の医薬組成物には、無菌水溶液または分散液が含まれる。さらに、該組成物は、そのような無菌注入溶液または分散液の即時調製のために無菌粉末の形態であり得る。全てのケースにおいて、最終注入形態は無菌でなくてはならず、また、容易に注入できるよう、十分に流動体でなければならない。該医薬組成物は製造および貯蔵条件下で安定でなければならない;従って、望ましくは、バクテリアおよび菌といった微生物の作用による汚染に対抗して保存されるべきである。該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含む、溶媒または分散媒である。
【0082】
本発明の医薬組成物は、例えばエアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤などといった、局所用に適した形態であり得る。さらに、該組成物は経皮的手段に適した形態であり得る。これらの形態は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を用いて、汎用的な加工方法を経て調製される。例として、クリームまたは軟膏は、望ましい硬度を有するように、親水性の物質と水を、約5wt%から約10wt%の化合物と一緒に混合することにより調製される。
【0083】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態であり得る。該混合物は単位用量の坐薬を形成することが望ましい。好ましい担体には、ココアバターおよび当分野で通常用いられる他の物質が含まれる。該坐薬は、まず該組成物と軟化または溶融された担体を混合し、続いて冷却して鋳型で成形することにより、容易に形成される。
【0084】
前述した担体成分に加えて、上記の製剤処方は、必要に応じて、1以上のさらなる担体成分(例えば、希釈剤、緩衝剤、香料添加剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存料(抗酸化剤を含む)など)を含む。さらに、他のアジュバントが、該処方を対象とするレシピエントの血液と等張の状態にするために入れられる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含有する組成物はまた、粉末または液体濃縮形態で調製される。
【0085】
通常、投与量としては、一日あたり体重に対しておよそ0.01mg/kgから約150mg/kg、または患者あたりおよそ0.5mgから約7gが、上記の疾病の治療において有用である。例えば、肥満は、約0.01〜50mgの化合物/体重1キログラム/日、または約0.5mg〜3.5g/患者/日、の投与により効果的に治療される。
【0086】
しかしながら、どんな患者に対する固有の投与量も、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食習慣、投与時間、投与経路、排出速度、薬物併用および治療中の特定の疾病の重篤性などの様々な要素に依存し得ると解されている。
【0087】
式(I)の化合物は、GPR119が関与する疾病または症状の治療に有用である。
【0088】
従って、本発明はまた、有効な量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を、対象に投与するステップを特徴とする、GPR119が関与する疾病または症状の治療方法を提供する。GPR119が関与する疾病または症状には肥満および糖尿病が含まれる。本出願の意味する範囲内において、肥満の治療は、肥満および過剰な食料摂取(例えば食欲および体重の減衰による)に関連する他の摂食障害などの疾病および症状の治療、減量の維持、およびリバウンドと糖尿病(1型および2型糖尿病、耐糖能障害、インスリン抵抗性および糖尿病性合併症(ニューロパシー、ネフロパシー、網膜症、白内障、心血管系合併症など)および脂質異常症を含む)の予防を包含することが意図されている。および、機能性消化不良を引き起こす、摂取脂質に対する異常な過敏性を有する患者の治療。本発明の化合物はまた、メタボリックシンドローム(シンドロームX)といった代謝障害、耐糖能障害、脂質異常症(高脂血症)、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL濃度および高血圧の治療に有用である。
【0089】
本発明はまた、有効な量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を対象に投与するステップを特徴とする、満腹の調節方法を提供する。
本発明はまた、有効な量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を対象に投与するステップを特徴とする、肥満の治療方法を提供する。
本発明はまた、有効な量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を患者に投与するステップを特徴とする、糖尿病(1型および2型糖尿病を含み、特に2型糖尿病)の治療方法を提供する。
本発明はまた、有効な量の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を患者に投与するステップを特徴とする、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、耐糖能障害、脂質異常症(高脂血症)、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL濃度または高血圧の治療方法を提供する。
【0090】
本発明また、上記に定義した症状の治療に有用な、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩を提供する。
本発明はまた、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の、上記の症状に対する治療用薬剤の製造における使用も提供する。
【0091】
本発明の方法において“治療”という用語は、治療療法および予防的治療の両方を包含する。
【0092】
式(I)の化合物は、既知のGPR119アゴニストに比べて有利な特性を示す(例えば、該化合物は、基Bが分岐していない化合物の場合、または溶解性の改善により吸収性や生物学的利用能が改善している場合、あるいは薬剤として用いられる化合物の他の有利な特性と比較した場合などに、改良特性を示す)。
【0093】
式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩は、単独で、あるいは1以上の治療に有効な他の化合物との組み合わせで投与される。他の治療に有効な化合物は、式(I)の化合物のように、同一の疾病または症状または異なる疾病または症状の治療である。治療に有効な(活性)化合物は、同時に、連続してまたは独立して投与される。
【0094】
式(I)の化合物は、肥満および/または糖尿病の治療に有効な他の化合物、例えばインスリンおよびインスリンアナログ、胃リパーゼ阻害剤、膵リパーゼ阻害剤、スルホニル尿素およびアナログ、ビグアニド、α2アゴニスト、グリタゾン、PPAR-γアゴニスト、PPAR-α/βアゴニスト混合、RXRアゴニスト、脂肪酸酸化阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、β-アゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、脂質異常症治療薬、グリコーゲン・ホスホリラーゼ阻害剤、抗肥満薬(例えば膵リパーゼ阻害剤)、MCH-1アンタゴニストおよびCB-1アンタゴニスト(または逆作動薬)、アミリンアンタゴニスト、リポキシナーゼ阻害剤、ソモスタチンアナログ、グルコキナーゼ活性剤、グルカゴンアンタゴニスト、インスリンシグナル伝達アゴニスト、PTP1B阻害剤、糖新生阻害剤、抗脂肪分解剤(antilypolitic→antilipolytic agent)、GSK阻害剤、ガラニン受容体アゴニスト、食欲抑制剤、CCK受容体アゴニスト、レプチン、セロトニン作用性/ドーパミン作用性肥満抑制剤、再取り込み阻害剤(例えばシブトラミン)、CRFアンタゴニスト、CRF結合タンパク質、甲状腺ホルモン様化合物、アルドース還元酵素阻害剤、糖質コルチコイド受容体アンタゴニスト、NHE-1阻害剤またはソルビトール脱水素酵素阻害剤とともに投与される。
【0095】
式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩、および少なくとも一つの他の抗肥満薬の投与を特徴とする併用療法は、本発明のさらなる態様を示す。
【0096】
本発明はまた、哺乳類(例えばヒト)における、有効な量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および別の抗肥満薬を必要とする哺乳類に投与することを含む、肥満の治療方法を提供する。
本発明はまた、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および別の抗肥満薬の、肥満の治療における使用を提供する。
本発明はまた、肥満の治療のために、別の抗肥満薬との併用で用いる薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0097】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および他の抗肥満薬は、共に投与されるか、続けて投与されるか、あるいは独立して投与される。
共投与には、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および他の抗肥満薬の両方を含む形態の投与、あるいは異なる形態の各薬剤の同時または独立投与が含まれる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および他の抗肥満薬の薬理学的特性がそれを可能とする場合には、2つの薬剤の共投与が望ましい。
【0098】
本発明はまた、肥満の治療用薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および別の抗肥満薬の使用を提供する。
本発明はまた、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および別の抗肥満薬、および医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を提供する。本発明はまた、上記の方法におけるかかる組成物の使用を包含する。
【0099】
GPR119アゴニストは、中枢作用性抗肥満薬との併用において特定使用される。
【0100】
本発明のこの態様に記載の併用療法における使用に関する他の抗肥満薬は望ましくは、CB-1調節因子(例えばCB-1アンタゴニストまたは逆作動薬)である。CB-1調節因子の例としては、SR141716(リモナバント)およびSLV-319((4S)-(-)-3-(4-クロロフェニル)-N-メチル-N-[(4-クロロフェニル)スルホニル]-4-フェニル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド)、;並びに、EP576357、EP656354、WO 03/018060、WO 03/020217、WO 03/020314、WO 03/026647、WO 03/026648、WO 03/027076、WO 03/040105、WO 03/051850、WO 03/051851、WO 03/053431、WO 03/063781、WO 03/075660、WO 03/077847、WO 03/078413、WO 03/082190、WO 03/082191、WO 03/082833、WO 03/084930、WO 03/084943、WO 03/086288、WO 03/087037、WO 03/088968、WO 04/012671、WO 04/013120、WO 04/026301、WO 04/029204、WO 04/034968、WO 04/035566、WO 04/037823 WO 04/052864、WO 04/058145、WO 04/058255、WO 04/060870、WO 04/060888、WO 04/069837、WO 04/069837、WO 04/072076、WO 04/072077、WO 04/078261およびWO 04/108728、およびそれらに記載の参考文献に開示されている化合物が含まれる。
【0101】
GPR119が関与すると示唆される他の疾病または症状には、WO 00/50562およびUS 6,468,756に記載の、例えば循環器疾患、高血圧、呼吸器疾患、妊娠異常、消化器疾患、免疫疾患、筋骨格系障害、うつ病、恐怖症、不安神経症、気分障害およびアルツハイマー病、が含まれる。
【0102】
これらに限定されないが、本明細書に引用される特許および特許出願に含まれるすべての公開は、十分に述べられた本明細書の引例によって引用されるために、各個々が、特異的に個々に示されるように、引用される。
本発明は、詳述する目的で以下の例に関して記載するが、本発明の範囲を限定する趣旨ではない。
【0103】
(実施例)
略記
t-Bu: tert-ブチル; DCM: ジクロロメタン; DMAP: 4-ジメチルアミノピリジン; DMF: N,N-ジメチルホルムアミド; DMSO: ジメチルスルホキシド; EDCI: 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩; EtOAc: 酢酸エチル; h: 時間; HOBt: 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物; HPLC: 高速液体クロマトグラフィー; mCPBA: 3-クロロペルオキシ安息香酸; IH: イソヘキサン; Me: メチル; min: 分; RP-HPLC: 逆相高速液体クロマトグラフィー; TFA: トリフルオロ酢酸; THF: テトラヒドロフラン。
【0104】
LCMSデータを以下のようにして得た。:Waters Atlantis C18、3μ (3.0×20mm、流速 0.85 ml/分)を用い、220nmでのUV検出で、0.1% v/v HCO2Hを含有するH2O-MeCNグラジエントで6.5分かけて溶離する。グラジエント情報: 0.0〜0.3 分 100% H2O; 0.3〜4.25 分: 10% H2O-90% CH3CNまでの勾配; 4.25 分〜4.4 分: 100% CH3CNまでの勾配; 4.4〜4.9 分: 100% MeCNで保持; 4.9〜5.0 分: 100% H2Oの戻す; 5.00〜6.50 分: 100% H2Oに保持。陽イオン(ESI+)または陰イオン(ESI-)モードにおいて、エレクトロスプレーイオン源を用いて、質量スペクトルを得た。1H nmr スペクトルは、Varian Mercury 400 spectrometer(400MHzで作動)を用いて記録した。化学シフトは、テトラメチルシラン(δ=0)に相対的なppmとして記録した。
【0105】
HPLCは、H2O-CH3CN溶液により、20mL/分、220nmUV検出で溶出するPhenomenexTM C18 カラム (210×21mm)を用いて行われた。標準的グラジエント: 0〜0.5分は10% CH3CN-90%H2O、; 0.5分〜10分で90% CH3CN-10% H2Oまでの勾配、90%CH3CN-10%H2Oで5分保持、; 15分〜16分で10% CH3CN-90% H2Oに戻す。
【0106】
3-tert-ブチル-5-クロロ-[1,2,4]オキサジアゾール: WO95/05368; 3,5-ジフルオロ-4-メチルスルファニルベンズアルデヒド: EP1251126; 4-(2-エトキシカルボニル-1-メチルエチル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル: WO04/092124; N-ヒドロキシ-4-メチルスルファニルベンズアミジン: Buu-Hoi; Lecocq J、Bull Soc. Chim. Fr. 1946、139; 1-(3-イソプロピル-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル)ピペリジン-4-オール: WO05/121121; 4-(2-メトキシカルボニルプロピル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル: WO98/07620; N-ヒドロキシイソニコチンアミジン: Martin A. R.ら、J. Med. Chem.、2001、44、1560; 2-メチルイソニコチノニトリル: Ashimori A.ら、Chem. Pharm. Bull.、1990、38、2446.
【0107】
調製 1: 4-(2-メトキシカルボニルプロピル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化19】

4-(2-メトキシカルボニルエチル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(780mg、2.88mmol)/無水THF(3mL)溶液を、アルゴン存在下、-78℃で、撹拌したリチウムジイソプロピルアミド(3.16mLの1M溶液/THF、3.16mmol)溶液に滴下添加した。1時間後、該混合物を、-78℃でカニューレを介してゆっくりと、メチルヨーダイド(360μL、5.76mmol)およびN,N’-ジメチルプロピレン尿素(1mL)/無水THF溶液(6mL)に添加した。撹拌した混合物を0℃に温め、4時間後、NH4Cl飽和水溶液(5mL)を加えることにより急冷した。エーテル(100mL)を加え、該有機相をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、蒸着させて油を得、次いで油をカラムクロマトグラフィー(IH-EtOAc 7:3)により精製して表題のエステルを得た。:δH(CDCl3) 1.01-1.13(m,2H)、1.15(d,3H)、1.25-1.32(m,1H)、1.35-1.44(m,1H)、1.45(s,9H)、1.58-1.71(m,3H)、2.52-2.60(m,1H)、2.66(br t,2H)、3.68(s,3H)、4.01-4.13(m,2H)。
【0108】
調製 2: 4-((S)-1-カルボキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化20】

撹拌した4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル (300mg、1.5mmol)/1,4-ジオキサン(4mL)溶液を、アルゴン雰囲気下において、水素化ナトリウム (239mgの60%分散/油、6mmol)で少量ずつ処理した。30分後、(R)-2-ブロモプロピオン酸(135μL、1.5mmol)/1,4-ジオキサン(2mL)溶液を加え、22時間撹拌し続けた。水(15mL)を加え、水相をエーテル(15mL)で洗浄し、次いで1M HClを用いてpH1まで酸性化した。該懸濁液をEtOAc(50mL)中に抽出し、乾燥させ(MgSO4)、蒸着して表題の酸を得た。:δH(CDCl3) 1.46(s,9H)、1.46(d,3H)、1.57(m,2H)、1.86(m,2H)、3.09(ddd,2H)、3.61(sept,1H)、3.82(m,2H)、4.16(q,1H)。
【0109】
表1に記載の酸が、調製2の記載と同様の方法で調製された。:
【表1】

【0110】
調製 8: 3,5-ジフルオロ-4-メチルスルファニルベンゾニトリル
【化21】

撹拌した3,5-ジフルオロ-4-メチルスルファニルベンズアルデヒド(1.0g、5.32mmol)/エタノール(12mL)溶液をNH2OH.HCl(778mg、11.2mmol)/水(5mL)で処理し、続いて即座にK2CO3(780mg、5.64mmol)/水(10mL)で処理した。1時間後、室温において真空下でエタノールを大部分除去し、水(30mL)を加えた。該混合物をEtOAc(150mL)中に抽出し、該有機相を分離し、乾燥(MgSO4)および、蒸着させた。該残留物をカラムクロマトグラフィー(IH-EtOAc-CH2Cl2 88:10:2)により精製し、3,5-ジフルオロ-4-メチルスルファニルベンズアルデヒド オキシムを得た。:δH(CDCl3)2.50(s,3H)、7.14(d,2H)、7.47(s,1H)、8.03(s,1H)。無水酢酸(45mL)を、該オキシムのサンプルに添加し(1.139g、5.6mmol)、続いて、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.066g、5.6mmol)を添加した。該混合物を還流下で20時間熱し、冷却し、そして余分な無水酢酸を真空下で除去した。水(50mL)を加え、Na2CO3飽和水溶液でpH8に調整し、次いでCH2Cl2(100mL)により用いて抽出した。該溶媒を除去し、該残留物をカラムクロマトグラフィー(IH-EtOAc 9:1)により精製し、表題のニトリルを得た。:δH(CDCl3)2.58(s,3H)、7.20(d,2H)。
【0111】
調製 9: 3-フルオロ-4-メチルスルファニルベンゾニトリル
【化22】

ナトリウム チオメトキシド(1.59g、22.6mmol)を無水DMF(35mL)に懸濁し、5℃まで冷却した。3,4-ジフルオロベンゾニトリル(3.0g、21.6mmol)を冷却DMF(25mL)に溶解した溶液を、カニューレを介して添加し、該混合物を1時間撹拌した。該DMFを蒸着させ、該残留物を脱水エーテルから再結晶化、ヘキサンでトリチュレートして、表題のニトリルを得た。:δH(CDCl3) 2.53(s,3H)、7.26(t,1H)、7.29(dd,1H)、7.43(dd,1H)。
【0112】
調製 10: 3-メチル-4-メチルスルファニルベンゾニトリル
【化23】

調製9に記載の手順を用いて、4-フルオロ-3-メチルベンゾニトリルを表題の化合物に変換した。:δH(CDCl3) 2.33(3H,s)、2.52(3H,s)、7.16(1H,d)、7.38(1H,s)、7.47(1H,d)。
【0113】
調製 11: 4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボニトリル
【化24】

撹拌したNa2CO3(9.8g、117mmol)/水(15mL)のスラリーを氷水と4-ヒドロキシピペリジンで冷却した。HCl(4.0g、29.2mmol)を添加した。臭化シアン(3.7g、35mmol)/CH2Cl2(90mL)溶液を少量ずつ5分間かけて添加し、1時間撹拌し続けた。該反応物をCH2Cl2(100mL)で希釈し、該有機相を分離して乾燥させ(MgSO4)、該溶媒を蒸発させて表題のシアナミドを得た。:δH(CDCl3) 1.65(ddt,2H)、1.91(ddt,2H)、2.17(br s,1H)、3.08(ddd,2H)、3.45(ddd,2H)、3.86(sept,1H)。
【0114】
調製 12: 4-シアノ-2-フルオロベンゼンスルホンアミド
【化25】

3-フルオロ-4-メチルスルファニルベンゾニトリル(1.5g、8.9mmol)をH2Cl2(75mL)に溶解し、水(15mL)を加えた。十分撹拌した混合物中で、塩素ガスを30分間やさしくバブルし、次いで該有機成分を分離し乾燥するまで蒸発させた。該残留物を塩化チオニル(30mL)に溶解し、還流下で6.5時間熱した。該混合物を乾燥するまで蒸発させてほぼ純粋な4-シアノ-2-フルオロベンゼンスルホニル クロリドを得た。:δH(CDCl3) 7.67(d,1H)、7.70(d,1H)、8.14(dd,1H)。スルホニル クロリド(1.53g、7mmol)のサンプルをCH2Cl2に溶解し、撹拌した溶液中でアンモニアをやさしくバブルした。10分後、該混合物を濾過し、該濾過物を蒸発させて該残留物をカラム クロマトグラフィー(IH-EtOAc 2:1)により精製して表題のスルホンアミドを得た。:δH(d6 DMSO) 7.88(dd,1H)、7.96(t,1H)、7.96(br s,2H)、8.12(dd,1H)。
【0115】
調製 13: 3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-スルファモイルベンズアミジン
【化26】

水(10mL)を、K2CO3(491mg、3.55mmol)とNH2OHの混合物に添加した。HCl(492mg、7.1mmol)および得られた溶液を、撹拌した4-シアノ-2-フルオロベンゼンスルホンアミド(710mg、3.55mmol)/エタノール(60mL)溶液に添加した。該混合物を還流下で18時間熱し、冷却し、EtOAc(250mL)と水(100mL)に分けた。該有機相を分離し、乾燥させ(MgSO4)て蒸発させ、該残留物をカラム クロマトグラフィー(EtOAc)により精製して表題の化合物を得た。:δH(d6 DMSO) 6.00(s,2H)、7.63(dd,1H)、7.66(dd,1H)、7.67(s,2H)、7.77(t,1H)、10.01(s,1H)。
【0116】
表2に記載のアミドキシムを調製13と同様の方法により調製した。
【表2】

【0117】
調製 21: 4-(1-カルボキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化27】

撹拌した4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(2g、9.94mmol)/無水ジオキサン(20mL)溶液を少量ずつNaH(828mgの60%分散/油、20mmol)で処理した。温度を65℃まで上げ、5分後、2-ブロモプロピオン酸(0.89mL、9.94mmol)/無水ジオキサン(20mL)溶液を、滴下方式(dropwise manner)で添加した。3時間後、該温度でさらにNaH(828mg)を添加し、18時間熱し続けた。冷却した反応物を、慎重に水(50mL)を添加することで急冷し、EtOAc(50mL)で洗浄した。該有機層を1MのNaOH水溶液(20mL)で抽出し、該水相を合わせて、濃縮HClでpH2まで酸性化した。EtOAcで抽出(3×50mL)後、該有機抽出物を合わせて、乾燥(MgSO4)、蒸発させて表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.48(3H,s)、1.57(2H,m)、1.86(2H,m)、3.09(2H,ddd)、3.61(1H,tt)、3.80(2H,m)、4.15(1H,q)。
【0118】
調製 22: 4-シアノ-2-フルオロ安息香酸 メチル エステル
【化28】

十分なメタノール(およそ10mL)を、撹拌した4-シアノ-2-フルオロ安息香酸(2g、12.11mmol)/トルエン(5mL)懸濁液に添加し、澄明な液体を得た。トリメチルシリルジアゾメタン(7.87mLの2M溶液/ヘキサン、15.75mmol)を、黄色が持続するまで滴下添加し、その後該溶液をさらに10分撹拌し、次いで、再び無色の液体になるまでAcOHを添加した。該反応混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、飽和水溶液Na2CO3(2×20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。溶媒を蒸発させることで、表題のエステルを得た。:δH(CDCl3) 3.98(3H,s)、7.47(1H,dd)、7.53(1H,dd)、8.06(1H,t)。
【0119】
調製 23: 1-(5-イソプロピル[1,2,4]オキサジアゾリル-3-yl)ピペリジン-4-オール
【化29】

イソ酪酸(360μL、3.9mmol)、4-N-ジヒドロキシピペリジン-1-カルボキサミジン(620mg、3.9mmol)およびHOBt(656mg、4.3mmol)を無水DMF(5mL)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(2.2mL、12.9mmol)を添加し、続いてEDCI(900mg、4.7mmol)を一度に添加し、該混合物を18時間撹拌した。水(20mL)を添加し、該混合物をEtOAc(150mL)で抽出した。該有機相を水(15mL)、Na2CO3飽和水溶液(15mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、次いで乾燥(MgSO4)および蒸発させて表題のオキサジアゾールを得た。:RT=2.45分;m/z(ES+)=212.0[M+H]+
【実施例】
【0120】
実施例1: 4-{2-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-yl]-1-メチル-エチル}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化30】

撹拌した3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-メチルスルファニルベンズアミジン(200mg、1mmol)/無水THF(10mL)溶液を、水素化ナトリウム(33.3mg、832μmol)で処理した。40分後、4-(2-エトキシカルボニル-1-メチルエチル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(249mg、832μmol)/無水THF(3mL)溶液を添加し、該混合物を還流下で18時間熱した。該溶媒を除去し、該残留物をカラム クロマトグラフィー(IH-EtOAc 4:1)により精製して表題のオキサジアゾールを得た。:δH(CDCl3) 0.99(d,3H)、1.22-1.31(m,2H)、1.39-1.45(m,1H)、1.47(s,9H)、1.68(br d,2H)、2.08(m,1H)、2.53(s,3H)、2.66(m,2H)、2.80(dd,1H)、3.00(dd,1H)、4.18(m,2H)、7.31(t,1H)、7.74(dd,1H)、7.84(dd,1H)。
【0121】
実施例 2: 4-{2-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]プロピル}-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化31】

実施例1と同様の手法を用いて、3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-メチルスルファニルベンズアミジンを4-(2-メトキシカルボニルプロピル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステルと反応させて、表題のオキサジアゾールを得た。:RT=4.45分;m/z(ES+)=436.1[M+H]+.
【0122】
実施例 3: 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]プロポキシ}-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化32】

4-(1-カルボキシプロポキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(167mg、580μmol)、EDCI(111mg、580μmol)およびHOBt(78mg、580μmol)を、無水THF(10mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(300μL、1.75mmol)を添加し、該混合物を15分間撹拌した。固体の3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-メチルスルファニルベンズアミジン(106mg、530mol)を一度に添加し、4時間撹拌し続けた。該反応混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、Na2CO3飽和水溶液(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、次いで乾燥(MgSO4)および蒸発させた。該残留物をトルエン(15mL)に溶解させ、該溶液を還流下で18時間熱した。該溶媒の除去、およびカラム クロマトグラフィー(IH-EtOAc 4:1)による残留物の精製により表題のオキサジアゾールを得た。:RT=4.42分;m/z(ES+)=452.1[M+H]+
【0123】
表3に記載の化合物は、実施例3に記載と同一の手法を用いて合成された。
【表3】


【表4】

【0124】
実施例 17: 1-(3-tert-ブチル-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル)-4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン
【化33】

4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(133mg、304μmol)を4M HCl/ジオキサン(10mL)に溶解した。30分撹拌後、該溶媒を除去し、HCl塩である4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジンを得た。:RT=2.69分;m/z(ES+)=338.0[M+H]+。この塩のサンプル(114mg、304μmol)および3-tert-ブチル-5-クロロ-[1,2,4]オキサジアゾール(73mg、456μmol)を無水DMF(10mL)に溶解し、K2CO3(63mg、456μmol)を添加した。18時間各反語、該溶媒を除去し、該残留物をEtOAc(20mL)に溶解させた。該有機相を2M NaOH(5mL)およびブラインで洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。該溶媒を除去することで表題のオキサジアゾールを得た。:RT=4.29分;m/z(ES+)=462.1[M+H]+
【0125】
実施例 18: 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルフィニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]プロポキシ}-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化34】

固体のmCPBA(69mgの78% w/w、310μmol)を、撹拌した4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]プロポキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(140mg、310μmol)/CH2Cl2(5mL)溶液に添加した。1時間後、該溶媒を除去し、EtOAc(10mL)を添加した。該溶液をNa2CO3(5mL)飽和水溶液、水(5mL)およびブライン(5mL)で洗浄し、次いで乾燥(MgSO4)、蒸発させた。該残留物をカラム クロマトグラフィー(IH-EtOAc 1:1→1:2)により精製し、表題のスルホキシドを得た。:RT=4.42分;m/z(ES+)=452.1[M+H]+。2つのmCPBA同等物を用いることで対応するスルホンを得た。
【0126】
表4の化合物は、実施例18の方法を用いた対応する硫化物の酸化により生成された。
【表5】


【表6】


【表7】


【表8】

【0127】
表5に記載の化合物は、実施例18に記載の方法を用いて、3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-スルファモイルベンズアミジンと対応する酸の反応、およびオキサジアゾールに環化することにより合成された。
【表9】

【0128】
実施例 39: 4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 イソプロピル エステル
【化35】

4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(89mg、190μmol)を、4M HCl/ジオキサン(5mL)に溶解し、1時間撹拌した。該溶媒を除去してHCl塩である4-{(R)-1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジンを得た。:RT=2.20分;m/z(ES+)=370.0[M+H]+。該物質をCH2Cl2(15mL)に溶解し、トリエチルアミン(65μL、460μmol)およびイソプロピルクロロフォーメイト(239μmol、の1M溶液/CH2Cl2、239 mmol)を添加した。30分撹拌後、該溶媒を除去し、該残留物をカラム クロマトグラフィー(IH-EtOAc 7:3)により精製して表題のカルバメートを得た。: RT=3.70分;m/z(ES+)=456.0[M+H]+.
【0129】
実施例 40: 4-{1-[3-(4-メタンスルホニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化36】

EDC(107mg、560μmol)およびHOBt (76mg、560μmol)を、4-(1-カルボキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(153mg、56μmol)/無水THF溶液に素早く添加した。得られた混合物をアルゴン下で10分撹拌し、次いで固体のN-ヒドロキシ-4-メタンスルホニルベンズアミジンを一度に添加し、18時間撹拌し続けた。該反応混合物をEtOAc(20 L)で希釈し、2M HCl溶液(2×10 mL)およびNa2CO3飽和水溶液(3×10mL)で洗浄し、次いで乾燥させた(MgSO4)。該溶媒を除去し、該残留物をトルエン(3mL)で溶解し、穏やかな還流下で14時間熱した。冷却した混合物をセライト(celite)により濾過し、該濾過物を乾燥するまで蒸発させ、該三流物をフラッシュクロマトグラフィー(IH-EtOAc 3:2)により精製して表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.61(2H,m)、1.69(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、3.11(3H,s)、3.13(2H,m)、3.67(1H,tt)、3.77(2H,m)、4.96(1H,q)、8.09(2H,d)、8.32(2H,d);RT=3.76分、m/z(ES+)=452.1[M+H]+
【0130】
実施例 41: 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化37】

実施例40の記載と同一の手順を用いて、3-フルオロ-N-ヒドロキシ-4-メチルスルファニルベンズアミジンを4-(1-カルボキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステルと反応させて表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.60(2H,m)、1.67(3H,d)、1.78(1H,m)、1.90(1H,m)、2.54(3H,s)、3.12(2H,m)、3.65(1H,tt)、3.77(2H,m)、4.92(1H,q)、7.32(1H,t)、7.76(1H,dd)、7.86(1H,dd);RT=4.27分、m/z(ES+)=438.1[M+H]+
【0131】
実施例 42: 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メトキシカルボニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化38】

実施例40の記載と同一の手順を用いて、2-フルオロ-4-(N-ヒドロキシカルバムイミドイル)安息香酸 メチル エステルを4-(1-カルボキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステルと反応させて表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.60(2H,m)、1.68(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、3.12(2H,m)、3.66(1H,tt)、3.77(2H,m)、3.98(3H,s)、4.95(1H,q)、7.90(1H,dd)、7.95(1H,dd)、8.07(1H,t);RT=4.17分、m/z(ES+)=450.0[M+H]+
【0132】
実施例 43: 4-{1-[3-(4-カルバモイル-3-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化39】

4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メトキシカルボニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(実施例42、430mg、958μmol)/MeOH(3mL)溶液を、1M NaOH溶液(2mL、2mmol)で処理した。3時間撹拌した後、該混合物をクエン酸で酸性化し、CH2Cl2(20mL)で希釈した。該有機成分を分離して乾燥させ(MgSO4)、蒸発させて4-{1-[3-(4-カルボキシ-3-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-yl]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステルを得た。:RT=3.69分、m/z(ES+)=436.1[M+H]+。該酸のサンプル(137mg、315μmol)、EDCおよびHOBtを無水THF(4mL)に溶解し、10分間撹拌した。アンモニア(1.89mLの0.5M溶液/ジオキサン、945μmol)溶液を入れ、該反応混合物を室温で4時間撹拌し、次いで1M NaOH溶液(5mL)とCH2Cl2(20mL)に分けた。該有機相を分離し、洗浄し、1M HCl溶液(5mL)、水(5mL)で洗浄、乾燥させた(MgSO4)。該溶媒を除去し、該残留物を再結晶化(EtOAc-IH)して表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.61(2H,m)、1.68(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、3.13(2H,m)、3.67(1H,tt)、3.77(2H,m)、4.95(1H,q)、5.84(1H,br s)、6.71(1H,br d)、7.91(1H,d)、8.03(1H,d)、8.27(1H,t);RT=3.29分、m/z(ES+)=435.0[M+H]+
【0133】
実施例 44: 4-{1-[3-(4-エチルカルバモイル-3-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化40】

実施例43に記載の手順を用いて、4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メトキシカルボニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステルを鹸化し、エチルアミンと反応させて表題の化合物を得た。:δH(CDCl3) 1.30(3H,t)、1.46(9H,s)、1.60(2H,m)、1.68(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、3.13(2H,m)、3.56(2H,pentet)、3.66(1H,tt)、3.76(2H,m)、4.95(1H,q)、6.74(1H,br t)、7.87(1H,d)、8.00(1H,d)、8.24(1H,t);RT=3.42分、m/z(ES+)=463.0[M+H]+
【0134】
実施例45および46: 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルホニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル および 4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メタンスルフィニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル
【化41】

固体のmCPBA(純度77%を140mg、63μmol)を、撹拌した4-{1-[3-(3-フルオロ-4-メチルスルファニルフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾリル-5-イル]エトキシ}ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル エステル(実施例41、183mg、420μmol)/CH2Cl2(3mL)溶液に一度に添加した。2時間後、Na2CO3飽和水溶液(15mL)を添加し、該混合物をCH2Cl2(3×20mL)で抽出した。該抽出物を合わせて、乾燥(MgSO4)、蒸発させ、該残留物をフラッシュクロマトグラフィー(IH-EtOAc 3:2)により精製し、最初にスルホン、:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.60(2H,m)、1.68(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、3.13(2H,m)、3.28(3H,s)、3.67(1H,tt)、3.77(2H,m)、4.95(1H,q)、8.01(1H,d)、8.06-8.16(2H,m);RT=3.90分、m/z(ES+)=470.0[M+H]+;次いでスルホキシドを得た。:δH(CDCl3) 1.46(9H,s)、1.60(2H,m)、1.68(3H,d)、1.79(1H,m)、1.90(1H,m)、2.89(3H,s)、3.13(2H,m)、3.67(1H,tt)、3.77(2H,m)、4.95(1H,q)、7.88(1H,dd)、8.01(1H,t)、8.15(1H,dd);RT=3.67分、m/z(ES+)=454.0[M+H]+
【0135】
本発明の化合物の生物活性を以下の測定系で検査した。:
【0136】
酵母レポーターアッセイ(Yeast Reporter Assay)
酵母細胞ベースレポーターアッセイ(yeast cell-based reporter assays)はこれまで、文献に記載されてきた(例えば、Miret J. J.ら、2002, J.Biol.Chem., 277:6881-6887; Campbell R.M.ら、1999、Bioorg. Med. Chem. Lett., 9:2413-2418; King K.ら、1990, Science, 250:121-123;WO 99/14344;WO 00/12704;およびUS 6,100,042 参照)。手短に言うと、酵母細胞は、内因性酵母G-アルファ(GPA1)を削除されて複合的な手法により構築されたGタンパク質キメラで置き換えるように改変されてきた。さらに、内因性酵母アルファ細胞GPCR、Ste3を欠失させて哺乳類のGPCRの相同的発現の選択を可能にした。酵母において、真核細胞に保存されているフェロモンシグナル伝達変換経路(pheromone signaling transduction pathway)(例えば、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路)の要素が、Fus1の発現を促進(drive)する。Fus1プロモーター(Fus1p)の制御下にβ-ガラクトシターゼ(LacZ)を置くことにより、アッセイ系を開発した。それにより、レセプターの活性化で酵素の読み出しを導く。
【0137】
酵母細胞を、Agatepらにより記載された酢酸リチウム法(Agatep Agatep, R.ら, 1998, Transformation of Saccharomyces cerevisiae by the lithium acetate/single-stranded carrier DNA/polyethylene glycol (LiAc/ss-DNA/PEG) protocol. Technical Tips Online、Trends Journals、Elsevier)を適応して形質転換した。手短に言うと、酵母細胞を酵母トリプトンプレート(yeast tryptone plates)(YT)で一晩培養した。キャリア一本鎖DNA(10μg)、2μgの各々2つのFus1p-LacZレポータープラスミド(ひとつはURA選択マーカーを有し、ひとつはTRP選択マーカーを有する)、酵母発現ベクター(2μg複製起点)中に2μgのGPR119(ヒトまたはマウス受容体)、および酢酸リチウム/ポリエチレングリコール/TEバッファーを、ピペットでエッペンドルフチューブに入れた。受容体あり/受容体なしコントロールを含有する酵母発現プラスミドは、LEUマーカーを有する。酵母細胞をこの混合物に植菌し、反応を30℃で60分間実施した。次いで、該酵母細胞は42℃で15分間、熱ショックを与えられた。その後、該細胞を洗浄し、セレクションプレートに播種した。該セレクションプレートは、LEU、URAおよびTRPマイナスの合成酵母培地(SD-LUT)である。30℃で2〜3日間培養した後、セレクションプレート(selection plate)上で増殖したコロニーをLacZアッセイで検査した。
【0138】
β-ガラクトシダーゼの蛍光酵素アッセイ(fluorimetric enzyme assay)を実施するために、ヒトまたはマウスGPR119受容体を有する酵母細胞を、不飽和の密集度(すなわち、細胞はさらに分割され、まだ静止期に達さない)まで、液体SD-LUT培地中で一晩培養した。それらを最適なアッセイ濃度になるように新鮮な培地で希釈し、90μLの酵母細胞を96-ウェルブラックポリスチレンプレート(Costar社)に添加する。DMSOに溶解し10%DMSO溶液で10倍希釈した化合物を、該プレートに添加し、該プレートを30℃で4時間静置した。4時間後、β-ガラクトシダーゼの基質を各ウェルに添加した。これらの実験には、フルオレセインを発して蛍光検出を可能にする酵素基質、フルオレセイン ジ(β-D-ガラクトピラノシド)を用いた(FDG)。500μM FDG/2.5% Triton X100を、各ウェル20μLずつ添加した(該界面活性剤は細胞に透過性を与えるために必要である)。該細胞を基質と60分間培養した後、1M 炭酸ナトリウムを各ウェル20μLずつ添加し、該反応を停止させ、蛍光シグナルを増大させた。次いで、該プレートを蛍光光度計により485/535nmで測定した。
【0139】
本発明の化合物は、バックグラウンドシグナル(すなわち、化合物を有しない1% DMSO存在下において得られるシグナル)の少なくとも〜1.5倍に蛍光シグナルに増大させる。本発明の化合物は少なくとも5倍の増大をもたらすことが望ましい。
【0140】
cAMPアッセイ
組み換えヒトGPR119を発現する安定した細胞株が確立され、この細胞株はサイクリックAMP(cAMP)の細胞内濃度における本発明の化合物の効果を調べるのに有用であった。該細胞単層を、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、37℃で30分間刺激バッファー添加1% DMSO中の様々な濃度の化合物で刺激した。その後、細胞は溶解され、cAMP含量がPerkin Elmer AlphaScreenTM (化学増幅型ルミネッセンス プロキシミティー ホモジニアスアッセイ)cAMP kitを用いて決定される。バッファーとアッセイ条件は、製造者の指図書に記載される通りであった。
【0141】
本発明の化合物は細胞内cAMP濃度の濃度依存的増大をもたらし、通常、<10μMのEC50を有する。cAMPアッセイにおいて1μM未満のEC50を示す化合物が望ましい。
【0142】
In vivo 給餌検討
体重および食餌および水の摂取における本発明の化合物の効果を、逆相照明(reverse-phase lighting)で飼育した、自由-摂食オスSprague-Dawleyラットで検査した。試験化合物と対照化合物を適切な投与経路(例えば、腹腔内または経口)により投与し、投与から24時間にわたって測定を行った。ラットは、金属グリッド床のポリプロピレンケージに、温度21±4℃および湿度55±20%で、個別に飼育された。ケージパッドを載せたポリプロピレントレイは各ケージの真下に設置し、食べこぼしを見つけられるようにした。動物は逆の明暗サイクル(9時30分から17時30分までの8時間、照明オフ)で飼育され、その間、部屋を赤色灯で照明した。2週間の順応期間中、動物は標準的なラット粉末餌および水道水(tap water)を自由に摂取した。餌はアルミニウム蓋つきのガラス給餌瓶に入れた。各蓋には3から4cmの穴があり、餌を摂取できるようにした。暗期の開始時に、動物、給餌瓶および水ボトルの重量を測定した(0.1g単位まで)。給餌瓶および水ボトルの重量は、続いて、本発明の化合物を投与してから1、2、4、6および24時間後に測定され、処置群は賦形剤処置コントロールと比べてベースラインに顕著な差があった。
【0143】
選択された本発明の化合物は、≦100 mg kg-1の1以上の投与時点で、統計的に優位な食欲促進(hypophagic)効果を示した。
【0144】
膵臓β細胞(HIT-T15)のin-vitroモデルにおける本発明の化合物の抗糖尿病効果
細胞培養
HIT-T15細胞(60継代)をATCCから入手し、10%ウシ胎仔血清および30nM亜セレン酸ナトリウムを添加したRPMI1640培地で培養した。全ての実験は、81以上の継代数の該細胞株の特性の変化について記載した文献(Zhang HJ、Walseth TF、Robertson RP. Insulin secretion and cAMP metabolism in HIT cells. Reciprocal and serial passage-dependent relationships. Diabetes. 1989 Jan;38(1):44-8)により、70継代未満の細胞で実施された。
【0145】
cAMPアッセイ
HIT-T15細胞を、標準的な培養培地で満たした96-ウェルプレートに、100,000細胞/0.1 mL/ウェルで播種し、24時間培養した後、培地を除去した。細胞を、100μLの刺激バッファー(ハンクス緩衝液(Hanks buffered salt solution)、5mM HEPES、0.5mM IBMX、0.1%BSA、pH7.4)とともに、15分間室温で培養した。これを除去し、活性化バッファー中、0.5%DMSO存在下、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μMの範囲の化合物希釈液に置き換えた。細胞を室温で30分間培養した。その後、ウェルあたり75μLの溶解バッファー(5mM HEPES、0.3%Tween-20、0.1%BSA、pH7.4)を添加し、プレートを900rpmで20分間振盪した。粒子状物質を3000rpmで5分間の遠心により除去し、次いで該サンプルを384-ウェルプレート2セットに移し、Perkin Elmer AlphaScreen cAMP assay kit 説明書に従って処理した。簡潔にいうと、8μLのサンプル、5μLのAcceptorビーズミックスおよび12μLのDetectionミックスを含む25μLの反応物を、最終反応成分の濃度がキットの説明書の規定と同じになるように調製した。反応物を室温で150分間インキュベートし、Packard Fusion instrumentを用いて該プレートを測定した。cAMPの測定結果は、既知のcAMP量の検量線(0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000nM)と比較して、測定値を絶対的cAMP量に変換した。データは、XLfit 3 ソフトウェアを用いて解析した。
【0146】
本発明の化合物の代表的なものは、EC50が10μM未満でcAMPを増大させることが見いだされた。cAMPアッセイにおいて、EC50が1μM未満を示す化合物が望ましい。
【0147】
インスリン分泌物アッセイ
HIT-T15細胞を、標準的な培養培地を入れた12-ウェルプレートに、106細胞/1ml/ウェルで播種し、3日間培養し、その後培地を除去した。細胞を、119mM NaCl、4.74mM KCl、2.54mM CaCl2、1.19mM MgSO4、1.19mM KH2PO4、25mM NaHCO3、10mM HEPES(pH7.4)および0.1% ウシ血清アルブミンを添加したKrebs-Ringerバッファー(KRB)で2回洗浄した。細胞を1ml KRBで37℃において30分間培養し、その後KRBは除去した。これに続いてKRBで30分間、2回目の培養を行い、回収して各ウェルの基礎インスリン分泌量の測定に用いた。その後、化合物の希釈液(0、0.1、0.3、1、3、10μM)をもう一つのウェルの1ml KRB中に添加し、5.6mMグルコースを補充した。37℃で30分インキュベーション後、サンプルをインスリン量の測定のために採取した。インスリンの測定はMercodia Rat insulin ELISA kitにより製造者の説明書に従って、既知のインスリン濃度の検量線を用いて行った。各ウェルのインスリン量は、グルコース無添加におけるプレ-インキュベーションからの基礎分泌量を減算することにより矯正した。
【0148】
本発明の化合物の代表的なものは、EC50が10μM未満でインスリン分泌を増大させることが見いだされた。インスリン分泌アッセイにおいてEC50が1μM未満を示す化合物が望ましい。
【0149】
経口ブドウ糖負荷試験
経口ブドウ糖(Glc)負荷における本発明の化合物の効果は、オスC57Bl/6またはオスob/obマウスで評価された。Glcを投与する5時間前に給餌を中止し、試験中ずっと与えなかった。マウスは試験中、水は自由に摂取した。動物の尾に切り傷をつけ、Glc負荷の投与前45分における基礎Glc量を測定するために、血液(20μL)を採取した。その後、マウスの重量を測定し、さらなる血液サンプル(20μL)採取およびGlc負荷(2〜5g kg-1 経口)処置の30分前に試験化合物または賦形剤(20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン水溶液または25%Gelucire44/14水溶液)を経口投与した。その後、血液サンプル(20μL)をGlc投与の25、50、80、120、および180分後に採取した。Glc量の測定用に、20μLの血液サンプルを尾の先端の切り傷からディスポーサブルマイクロピペット(Dade Diagnostics Inc.、Puerto Rico)に採取して、該サンプルを480マイクロLの溶血試薬(haemolysis reagent)に添加した。希釈溶血のさらに20μL アリコートを、96-ウェルアッセイプレートの180μLのTrinders glucose reagent(Sigma 酵素(Trinder)比色法)に添加した。混合した後、該サンプルを室温で30分放置し、その後、Glc標準(Sigma glucose/urea nitrogen combined standard set)を対照にして測定した。代表的な本発明の化合物は、投与量≦100 mg kg-1において、Glcエクスカーションを統計的に減少させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩:
【化1】

[式中、
VはO、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール環であり、該環はC1-4アルキルにより適宜置換されており;
Aは-CH=CH-または(CH2)nであり;
Bは(CH2)p-CH(C1-3アルキル)-(CH2)qであり、該CH2基のひとつがO、NR5、S(O)m、C(O)、C(O)NR5、CH(NR5R55)、C(O)O、C(O)S、SC(O)またはOC(O)により置き換わっていてもよく;
nは独立して0、1、2または3であり;
mは独立して0、1または2であり;
p+qは0、1または2に等しく;
xは0、1、2または3であり;
yは1、2、3、4または5であり;
ただし、x+yは2、3、4または5であり;
GはCHR12またはNR2であり;
R1は、フェニル、またはO、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5または6員ヘテロアリール基であり、そのいずれも、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C3-7シクロアルキル、アリール、OR6、CN、NO2、S(O)mR6、C(O)NR6R66、NR6R66、NR10C(O)R6、NR10SO2R6、SO2NR6R66、COR10、C(O)OR10、4〜7員ヘテロサイクリル基あるいは5または6員ヘテロアリール基から選択される1以上の置換基により適宜置換されていてもよく;
R2はC(O)OR3、C(O)NR3R13、C1-4アルキレン-C(O)OR3、C(O)C(O)OR3、S(O)2R3、C(O)R3またはP(O)(O-Ph)2であるか; あるいは、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、そのどちらかがC1-4アルキル、C1-4アルコキシおよびハロゲンから選択される1または2つの基により適宜置換されていてもよく;
R3はC1-8アルキル、C2-8アルケニルまたはC2-8アルキニルであり、そのいずれも、1以上のハロ原子、NR4R44、OR4、C(O)OR4、OC(O)R4またはCN基により適宜置換されていてもよく、また、OまたはSにより置き換えられたCH2基を含むか;あるいは、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、C1-4アルキレンC3-7シクロアルキル、C1-4アルキレンアリール、C1-4アルキレンヘテロサイクリルまたはC1-4アルキルヘテロアリールであり、そのいずれも、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、SO2Me、NO2またはC(O)OR4から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;
R4およびR44は独立して水素またはC1-4アルキルであるか;あるいは、R4およびR44は一緒になって、5または6員ヘテロサイクリック環を形成していてもよく;
R5およびR55は独立して水素またはC1-4アルキルを示し;
R6およびR66は独立して水素またはC1-4アルキルであり、該基はハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキルオキシ-、C1-4アルキルチオ-、C3-7ヘテロサイクリルまたはN(R10)2により適宜置換されていてもよく;あるいは、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、該環状基はハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR9、CN、SO2CH3、N(R10)2およびNO2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;あるいは、R6およびR66は一緒になって、ヒドロキシ、C1-4アルキルまたはC1-4ヒドロキシアルキルにより適宜置換された5または6員ヘテロサイクリック環を形成していてもよく;あるいはR66はC1-4アルキルオキシ-であり;
R9は水素、C1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルであり;
R10は独立して水素またはC1-4アルキルであるか;あるいは、基N(R10)2はOおよびNR10から選択される更なるヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロサイクリック環を形成してもよく;
R12はC3-6アルキルであり;および、
R13は水素またはC1-4アルキルである。]
【請求項2】
Vが下記式で示されるO、NおよびSから選択される最大3つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール環を示す、請求項1に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩:
【化2】

[式中、
W、XおよびYがヘテロ原子の位置を示すか、あるいはCHを示す。]
【請求項3】
W、XおよびYのうち2つがNで、他がOである、請求項2に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項4】
WがNである、請求項2または3に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項5】
Aにおいてnが0、1または2である、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項6】
Aにおいてnが0である、請求項6に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項7】
Bにおいてp+qが1または2である、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項8】
Bにおいてp+qが1である、請求項7に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項9】
Bが-CH(CH3)-O-である、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項10】
-CH(CH3)-O-の不斉炭素原子における絶対配置が(R)である、請求項9に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項11】
R1が、フェニルまたはO、NおよびSから選択される最大2つのヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール基である、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項12】
R1がフェニルである、請求項11に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項13】
GがNR2である、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項14】
xおよびyがそれぞれ1を示す、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項15】
xおよびyがそれぞれ2を示す、請求項1から13のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項16】
R2がC(O)OR3、C(O)NR3R13またはヘテロアリールである、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項17】
R2がC(O)OR3である、請求項16に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項18】
R3が、1以上のハロ原子またはCNにより適宜置換されたC1-8アルキル、C2-8アルケニルまたはC2-8アルキニルを示し、それらはOまたはSで置換され得るCH2基を含んでいてもよく;あるいはC3-7シクロアルキルまたはアリールであって、そのいずれもがハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、NO2またはC(O)OC1-4アルキルから選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、上記請求項のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項19】
R3が1以上のハロ原子またはCNで適宜置換されたC3-5アルキルであり、該基はOまたはSで置き換えられたCH2基を含んでいてもよく、あるいは、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR4、CN、NR4R44、NO2またはC(O)OC1-4アルキルにより適宜置換されたC3-5シクロアルキルである、請求項18に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項20】
実施例1から46に記載の式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩および医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の有効量を対象に投与する過程を含む、GPR119が関与する疾病または症状の治療方法。
【請求項23】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の有効量を対象に投与する過程を含む、満腹の調節方法。
【請求項24】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の有効量を対象に投与する過程を含む、肥満の治療方法。
【請求項25】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の有効量を対象に投与する過程を含む、糖尿病の治療方法。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかひとつに記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の有効量を患者に投与する過程を含む、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、耐糖能障害、脂質異常症(高脂血症)、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL濃度または高血圧の治療方法。
【請求項27】
式(XXVII)の化合物:
【化3】

[式中、
Vは、O、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール環であり、該環はC1-4アルキルにより適宜置換されており;
Aは-CH=CH-または(CH2)nであり;
Bは(CH2)p-CH(C1-3アルキル)-(CH2)qであり、そのCH2基のひとつがO、NR5、S(O)m、C(O)、C(O)NR5、CH(NR5R55)、C(O)O、C(O)S、SC(O)またはOC(O)により置き換わっていてもよく;
nは独立して0、1、2または3であり;
mは独立して0、1または2であり;
p+qは0、1または2に等しく;
xは0、1、2または3であり;
yは1、2、3、4または5であり;
ただし、x+yは2、3、4または5であり;
R1はフェニル、またはO、NおよびSから選択される最大4つのヘテロ原子を含む5または6員ヘテロアリール基であり、そのいずれも、ハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C3-7シクロアルキル、アリール、OR6、CN、NO2、S(O)mR6、C(O)NR6R66、NR6R66、NR10C(O)R6、NR10SO2R6、SO2NR6R66、COR10、C(O)OR10、4〜7員ヘテロサイクリル基あるいは5または6員ヘテロアリール基から選択される1以上の置換基により適宜置換されていてもよく、但しR1は4-フルオロアルキルピリド-3-イルまたは4-フルオロアルキルピリミジン-5-イルではなく;
R5およびR55は独立して水素またはC1-4アルキルを示し;
R6およびR66は独立して水素またはC1-4アルキルであり、ハロ、ヒドロキシ、C1-4アルキルオキシ-、C1-4アルキルチオ-、C3-7ヘテロサイクリルまたはN(R10)2により適宜置換されていてもよく;あるいは、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、該環状基はハロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、OR9、CN、SO2CH3、N(R10)2およびNO2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく;あるいは、R6およびR66は一緒に、ヒドロキシ、C1-4アルキルまたはC1-4ヒドロキシアルキルにより適宜置換された5または6員ヘテロサイクリック環を形成していてもよく;あるいはR66はC1-4アルキルオキシ-であり;および、
R10は独立して水素またはC1-4アルキルであるか;あるいは、基N(R10)2はOおよびNR10から選択される更なるヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロサイクリック環を形成してもよい。]

【公表番号】特表2009−532453(P2009−532453A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503668(P2009−503668)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050183
【国際公開番号】WO2007/116229
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(504326837)プロシディオン・リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Prosidion Limited
【Fターム(参考)】