説明

ヘルニアパッチ

【課題】組織接着特性を有しながら、自己接着せずに巻かれ得る、ヘルニア修復のための移植物を提供すること。
【解決手段】生体適合性基材120;および少なくとも1つのグリップ部材130であって、第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間での変形が可能である、少なくとも1つのグリップ部材、を備える、外科手術用移植物110が提供される。ある実施形態において、上記グリップ部材は、上記生体適合性基材120と織り混ぜられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年3月25日に出願された米国仮特許出願番号61/317,339の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、移植可能なヘルニア修復デバイスに関し、そしてより特定すると、生体適合性材料のシート、および形状記憶ポリマーから作製されたグリップ部材を備える、移植可能なヘルニアパッチに関する。
【背景技術】
【0003】
ヘルニアとは、組織または器官を通常は収容している筋肉組織または膜の損傷部を通しての、この組織または器官の一部分の突出である。ヘルニアは、原理的には、脱出した組織を押し戻し、すなわち、「適正部位へ戻し」、次いで、損傷した筋肉組織における欠損部を、例えば、ヘルニアパッチなどの移植物によって補強することによって、修復される。この移植物は、欠損部を覆って配置されても(前修復)、欠損部の下側に配置されても(後修復)、いずれでもよい。
【0004】
このような欠損部を修復するために有用な移植物は、組織接着特性を有し得る。この組織接着特性は、例えば、接着コーティングによって、または差し込まれたナップによって、提供され得る。腹腔鏡手順において使用される場合、組織接着特性を有する移植物は、カニューレを通しての送達のために巻かれるかまたは潰される場合に、この移植物自体に接着する傾向を有し得、これによって、絡まり、そして移植の部位で広げることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組織接着特性を有しながら、自己接着せずに巻かれ得る、ヘルニア修復のための移植物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
生体適合性基材;および
少なくとも1つのグリップ部材であって、第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間での変形が可能である、少なくとも1つのグリップ部材、
を備える、外科手術用移植物。
(項目2)
上記グリップ部材が上記生体適合性基材と織り混ぜられている、上記項目に記載の外科手術用移植物。
(項目3)
上記グリップ部材が形状記憶材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目4)
上記形状記憶材料が、上記第一の構成から上記第二の構成へと、約20℃〜約40℃で変形する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目5)
上記形状記憶材料が、ポリマーおよび金属合金からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目6)
上記形状記憶ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(スチレン-ブタジエン)ブロックコポリマー、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ乳酸、オリゴ(p-ジオキサノン)ジオール、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール、ポリトリメチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目7)
上記形状記憶ポリマーが、ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート-ポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(ε−カプロラクトン)ジオール-ポリ(p-ジオキサノン)ジオール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目8)
上記形状記憶材料が光活性化形状記憶ポリマーを含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目9)
上記形状記憶材料が熱活性化形状記憶材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目10)
上記形状記憶材料が電気活性化形状記憶材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目11)
上記形状記憶金属合金が、銅-亜鉛-アルミニウム-ニッケル合金、銅-アルミニウム-ニッケル合金、亜鉛-銅-金-鉄合金、およびニッケル-チタン(NiTi)合金からなる群より選択される合金を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目12)
上記生体適合性基材が、発泡体、フィルム、組織足場、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目13)
上記生体適合性基材が軟部組織修復デバイスを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目14)
上記生体適合性基材が外科手術用メッシュを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目15)
生物活性剤をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目16)
上記グリップ部材の上記第一の非グリップ構成が、上記生体適合性基材の長手方向軸に対して実質的に平行に配置される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目17)
上記グリップ部材の上記第二のグリップ構成が、上記生体適合性基材の長手方向軸から実質的に垂直に延びる、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目18)
上記第二のグリップ構成が、ほぼL字型のグリップ部材を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目19)
上記第二のグリップ構成が、ほぼJ字型のグリップ部材を構成する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用移植物。
(項目20)
外科手術用移植物を作製する方法であって、
第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間で変形するように、少なくとも1つのグリップ部材を条件付けする工程;および
該少なくとも1つのグリップ部材を生体適合性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
(項目21)
上記少なくとも1つのグリップ部材を条件付けする工程が、該グリップ部材を加熱する工程、該グリップ部材を非グリップ構成に変形させる工程、および該グリップ部材を冷却する構成を包含する、上記項目に記載の方法。
(項目22)
上記少なくとも1つのグリップ部材を生体適合性基材に組み込む工程が、編成、製織、編組、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目23)
上記少なくとも1つのグリップ部材が形状記憶材料を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目24)
上記形状記憶材料が、約20℃〜約40℃での温度変形を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目25)
上記形状記憶材料が、形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目26)
上記生体適合性基材が、発泡体、フィルム、組織足場、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目27)
上記生体適合性基材が外科手術用メッシュを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
生体適合性基材および少なくとも1つのグリップ部材を備える外科手術用移植物であって、これらのグリップ部材は、第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間で変形可能である。
【0008】
(要旨)
本開示は、生体適合性基材および少なくとも1つのグリップ部材を備える外科手術用移植物(例えば、ヘルニアパッチ)を記載し、これらのグリップ部材は、第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間で変形可能である。
【0009】
ある実施形態において、この少なくとも1つのグリップ部材は、形状記憶材料から作製され得る。刺激への曝露の際に、これらのグリップ部材は、2つの異なる構成(第一の非グリップ構成および第二のグリップ構成)の間で変形する。ある実施形態において、この生体適合性基材は、外科手術用メッシュである。
【0010】
組織接着特性を有する外科手術用移植物を作製する方法もまた、記載される。
【0011】
本開示の種々の実施形態は、選択された実施形態および添付の図面と組み合わせて、以下でより詳細に議論される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、組織接着特性を有しながら、自己接着せずに巻かれ得る、ヘルニア修復のための移植物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、本開示によるヘルニアパッチの1つの実施形態の斜視図を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aに示される実施形態の側面図を示す。
【図1C】図1Cは、本開示によるヘルニアパッチの別の実施形態の斜視図を示す。
【図1D】図1Dは、グリップ部材が第二の構成にある、図1Cの実施形態の側面図を示す。
【図2A】図2Aは、本開示によるヘルニアパッチの別の実施形態の側面図を示す。
【図2B】図2Bは、本開示によるヘルニアパッチの別の実施形態の側面図を示す。
【図3A】図3Aは、本開示によるヘルニアパッチのなお別の実施形態の斜視図を示す。
【図3B】図3Bは、図3Aに示される実施形態の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に従う移植物は、生体適合性基材、および形状記憶ポリマーから作製された少なくとも1つのグリップ部材を備え、このグリップ部材は、特定の構成において、この基材の表面から突出する。
【0015】
この生体適合性基材は、組織の欠損部のための強化材として働くために充分な強度、および1つ以上のグリップ部材を支持する能力を有する、任意の形態であり得る。生体適合性基材の適切な形態としては、多孔性フィルムまたは非多孔性フィルム、ゲルシートまたは繊維構造体(例えば、編成シート、製織シートもしくは不織シート)が挙げられる。これらの種々の形態は、単独で使用されても、互いに組み合わせて使用されてもよい。従って、例えば、この基材は、フィルム、ゲルおよび/または繊維構造体のうちの1つ以上からなる複合体であり得る。組織欠損部の一時的な支持(すなわち、堅さ)が必要とされる場合、吸収性材料が、この基材の全体または一部分を形成するために使用され得る。組織の欠損部の永続的な支持が必要とされる場合、生体適合性基材は、全体的にかまたは部分的に、非吸収性材料から作製されるべきである。
【0016】
特定の実施形態において、この生体適合性基材は、メッシュシートである。本明細書中に記載されるメッシュ基材は、織り混ぜられたフィラメントから形成された多孔性布を備え得る。これらのフィラメントは、交差部を作製する様式で水平および垂直に延び得、これらの交差部において、これらのフィラメントが互いに重なり合って、共通の交点を形成する。これらのフィラメントは、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよく、そしてある実施形態において、複数のマルチフィラメントが組み合わせられて糸を形成し得る。このメッシュシートは、ヘルニア修復のために適切な任意のサイズおよび/または形状に構成され得ることが想定される。これらのフィラメントは、コア/シース構成を含み得る。
【0017】
本明細書中に記載されるメッシュ基材は、任意の生体適合性の吸収性材料または非吸収性材料から作製されたフィラメントから製造され得る。メッシュ基材のフィラメントを形成するために使用される吸収性材料のいくつかの非限定的な例としては、グリコリド、グリコール酸、ラクチド、乳酸、カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネートおよびジメチルトリメチレンカーボネートから作製された吸収性ポリマーが挙げられる。メッシュ基材のフィラメントを形成するために使用される非吸収性材料としては、ナイロン、絹、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルなどの材料が挙げられ得るが、これらに限定されない。コポリマー(ブロックコポリマーまたはランダムコポリマー)、ならびにこのような生体適合性ポリマー材料またはコポリマー材料の混合物およびブレンドもまた、有用であり得る。
【0018】
メッシュ基材は、任意の適切な方法を使用して形成され得る。例えば、メッシュ基材は、織られ得るか、不織であり得るか、編まれ得るか、または編組され得る。ある実施形態において、メッシュ基材は、たて編み機で、トリコットまたはラッセル型で、複数のフィラメントまたは糸で、多数の案内棒を用いて編まれ得る。メッシュ基材は、生体適合性であり得、かつまた滅菌が可能であり得る、任意の布から作製され得る。
【0019】
ある実施形態において、メッシュ基材は、たて編み機で二次元の布を編むことによって、形成され得る。いくつかの例は、米国特許第7,331,199号(その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。他の実施形態において、メッシュ基材は、三次元の布を編み機で編むことによって、形成され得る。三次元メッシュ基材のいくつかの例は、米国特許第7,021,086号;米国特許第6,596,002号;および米国特許第7,331,199号(これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0020】
本開示に従う移植物は、生体適合性基材の表面から突出する、少なくとも1つのグリップ部材をさらに備える。このグリップ部材は、少なくとも1つのフィラメントから作製され得る。このグリップ部材は、この生体適合性基材の表面から、ほぼ垂直な方向に突出し得る。ある実施形態において、複数のグリップ部材が、この生体適合性基材の表面全体にわたって配置され得る。他の実施形態において、複数のグリップ部材は、この生体適合性基材の表面の一部分のみにわたって配置され得る。なお他の実施形態において、これらのグリップ部材は、この生体適合性基材の1つより多くの表面から突出し得る。
【0021】
グリップ部材は、任意の適切な形状記憶材料から作製され得る。適切な形状記憶材料としては、形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金が挙げられる。本移植物のグリップ部材として有用なフィラメントに形成され得る、種々の形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金としては、本明細書中に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
有用な形状記憶ポリマーのうちでもとりわけ、2つの別々の相または3つの別々の相を使用して条件付けされ得るものである。二相形状記憶ポリマーとは、現在の形状(一時的)と保存された形状(永続的)との両方を有するポリマーであり得る。一旦、保存された形状が任意の従来の方法により製造されると、このポリマーは、このポリマーを加熱、変形、および冷却により加工することにより、一時的形状に変化する。冷却後、このポリマーは、このポリマーが所定の外部刺激により活性化されるまで、一時的形状を維持する。温度変化に加えて、形状記憶ポリマーはまた、電場もしくは磁場、光、および/またはpHの変化によって、活性化され得る。活性化の際に、このポリマーの形状は、変形して永続的形状に戻る。
【0023】
いくつかの実施形態において、グリップ部材は、丸まった状態で製造されたポリマーモノフィラメントからなり得る。すなわち、この形状記憶モノフィラメントの永続的形状は、一般に丸まっている。この丸まったポリマーモノフィラメントは、このポリマーのガラス転移温度(Tg)より高温で加熱され得、これにより、このポリマーが柔らかくなり、可撓性になり、そして形作ることがより容易になる。Tgより高温にある間に、これらの丸まったポリマーモノフィラメントは、真っ直ぐにされ得る。次いで、この真っ直ぐにされたポリマーモノフィラメントは、このポリマーのTg未満で冷却されて、このモノフィラメントをこの真っ直ぐにされた一時的形状に維持し得る。このような実施形態において、この真っ直ぐにされたポリマーモノフィラメントは、適切な外部刺激(例えば、所定のポリマーのTgより高い温度への変化)への曝露の際に、その永続的形状(すなわち、丸まった形状)に戻るように条件付けされ得る。
【0024】
ポリマーモノフィラメントとして具体的に記載されるが、グリップ部材はまた、複数のモノフィラメント、マルチフィラメント、および複数のマルチフィラメントから形成された糸から形成され得ることが想定される。さらに、形状記憶ポリマーは、グリップ部材を形成するために、任意の種々の生体適合性材料と合わせられ得る。
【0025】
ポリマーグリップ部材は、生体適合性シートの存在下または非存在下で、形状記憶ポリマーとして条件付けされ得ることが想定される。ある実施形態において、これらのグリップ部材は、生体適合性シートに組み込まれる前に条件付けされ得る。他の実施形態において、これらのグリップ部材は、生体適合性シートに組み込まれた後に条件付けされ得る。なお他の実施形態において、これらのグリップ部材は、別の布(例えば、フラップメッシュシート)に取り付けられ得、そしてこの別の布(グリップ部材を備える)が、生体適合性シートに、任意の適切な方法(接着剤および縫い付けが挙げられるが、これらに限定されない)によって取り付けられ得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、グリップ部材を形成するために使用される形状記憶ポリマーは、約20℃〜約40℃の範囲のTgを示し得る。このような実施形態において、これらのグリップ部材は、この範囲の温度(例えば、体温)に曝露されると、その一時的形状から永続的形状へと変形する。
【0027】
グリップ部材を形成するために使用され得る適切なポリマー材料のいくつかの非限定的な例としては、ビニルポリマー(ホスホリルコリン、ヒドロキサメート、ビニルフラノン、およびこれらのコポリマーが挙げられる);第四級アンモニウム;アルキレンオキシドとラクトンとのコポリマー;アルキレンオキシドとオルトエステルとのコポリマー;アルキレンオキシドとヒドロキシブチレートとのコポリマー;ポリウレタン;およびポリノルボルネンなどの合成材料が挙げられる。代表的な天然生分解性ポリマーとしては、多糖類(例えば、アルギネート、デキストラン、キチン、ヒアルロン酸、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、フカン、グリコサミノグリカン、およびこれらの化学的誘導体(化学基(例えば、アルキル、アルキレン)の置換および/または付加、ヒドロキシル化、酸化、ならびに当業者により慣用的になされる他の修飾));およびタンパク質(例えば、アルブミン、カゼイン、ゼイン、絹)、ならびにこれらのコポリマーおよびブレンド(単独または合成ポリマーとの組み合わせ)が挙げられる。
【0028】
合成により修飾された天然ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン)が挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、「セルロース」と称される。
【0029】
代表的な合成分解性ポリマーとしては、ラクトンモノマー(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、ε−カプロラクトン、バレロラクトン、およびδ−バレロラクトン)から調製されたポリヒドロキシ酸、ならびにプルロニック、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン)、ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。これらから形成されるポリマーとしては、ポリラクチド;ポリ(乳酸);ポリグリコリド;ポリ(グリコール酸);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(ラクチド−co−(ε−カプロラクトン));ポリ(グリコリド−co−(ε−カプロラクトン));ポリカーボネート;ポリ(偽アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリアルキレンオキサレート;ポリオキサエステル;ポリ酸無水物;ポリオルトエステル;ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせが挙げられる。
【0030】
ある実施形態において、分解性材料と非分解性材料との両方の組み合わせ(形状記憶特徴を有するものが挙げられる)が利用され得る。
【0031】
ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、異なる熱特性を有する2つの成分のコポリマー(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレートとアクリル酸ブチル(ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート−ポリ(アクリル酸n−ブチル)が挙げられる)、またはジオールエステルとエーテル−エステルジオール(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー))であり得る。これらのマルチブロックオリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマーは、線状の鎖に一緒に連結された2つのブロックセグメント(すなわち、「ハード」セグメントおよび「スイッチ」セグメント)を有する。このような材料は、例えば、Lendlein,「Shape Memory Polymers−Biodegradable Sutures」,Materials World,第10巻,第7号,29−30頁(2002年7月)に開示されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0032】
他の実施形態において、生体吸収性材料のブレンドが利用され得、これらとしては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはこれらのコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
適切な形状記憶ポリマーならびにこれらを用いて永続的形状および一時的形状を形成するための手段の他の例は、Lendleinら,「Shape Memory Polymers as stimuli−sensitive implant materials」,Clinical Hemorheology and Microcirculation,32(2005)105−116、Lendleinら,「Biodegradable, Elastic Shape Memory Polymers for Potential Biomedical Applications」,Science,第269巻(2002)1673−1676、ならびにLendleinら,「Shape−Memory Polymers」,Angew.Chem.Int.Ed.,41(2002)2035−2057に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0034】
以下の表1は、形状記憶効果を示す組成物をさらに説明する。各組成物のブロックコポリマーは、アニーリングされたワイヤの形式であり、示されるソフトセグメントおよびハードセグメントを有し、ガラス転移温度(T)は、示差走査熱量分析により、TTransに等しいと測定された。
【0035】
【表1】

表1のコポリマーは、Tに近付く場合に部分的なシフトを起こし得、そしてTTransは、これらの材料が水溶液中にある場合に低下し得る。これらのポリマーは水の吸収およびバルク加水分解により分解するので、ポリマーマトリックスに浸入する水分子が可塑剤として働き得、乾燥空気中においてよりも低温で、ソフトセグメントを軟化させ得る。従って、水溶液中でTTrans低下を示すポリマーは、乾燥状態での温度偏差(例えば、輸送中および保存中)によって一時的形状を維持し得る。そして移植の際に、体温でその永続的形状に形状シフトし得る。
【0036】
従って、ある実施形態において、この形状記憶ポリマーは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在する。他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このトリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在し得る。
【0037】
Transは、ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメントを形成させる時間を変化させることによって、調整され得ることが想定される。ある実施形態において、TTransは、種々の量のソフトセグメントの低分子量オリゴマーを、このコポリマーにブレンドすることにより調整され得る。このようなオリゴマーは、TTransの下方シフトを起こすための可塑剤として働き得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、グリップ部材は、第一のほぼ真っ直ぐな構成を、約20℃未満の温度において有し得、そして第二のほぼ丸まった構成を、約20℃〜約40℃の範囲の温度に曝露される場合に有し得る。特定の実施形態において、形状記憶ポリマーは、約37℃、すなわち、体温の転移温度を示す。これらのグリップ部材は、真っ直ぐな形から湾曲した形へと変形するように主として開示されるが、多数の異なる形状および寸法に変形し得るグリップ部材を備えることは、充分に本開示の範囲内である。例えば、これらのグリップ部材は、グリップ構成から非グリップ構成へと、メッシュの除去または再配置の際に変形し得る。これらのグリップ部材が変形し得る2つの異なる構成は、形状記憶ポリマーの条件付けの時点で決定され得る。ある実施形態において、これらのグリップ部材は、組織接着特性をパッチに提供するのに適した任意の形状を呈し得る。例えば、これらのグリップ部材は、一時的な真っ直ぐな構成から、永続的なL字型の構成へと変形し得る。最も一般的な場合において、刺激への曝露の際に、これらのグリップ部材は、2つの異なる構成(第一の非グリップ構成および第二のグリップ構成)の間で変形する。
【0039】
他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、光活性化形状記憶ポリマーであり得る。光活性化形状記憶ポリマー(LASMP)は、光架橋および光切断のプロセスを使用して、ガラス転移温度(Tg)を変化させ得る。光架橋は、1つの波長の光を使用することにより達成され得、一方で、第二の波長光は、この光架橋した結合を可逆的に切断する。達成される効果は、この材料がエラストマーと硬質ポリマーとの間で可逆的に切り替えられ得ることであり得る。光は温度を変化させないかもしれないが、材料内での架橋密度を変化させ得る。例えば、シンナム基を含むポリマーは、UV光照射(>260nm)によって所定の形状に固定され得、次いで、異なる波長(<260nm)のUV光に曝露されると、その元の形状を回復する。感光性スイッチの非限定的な例としては、ケイ皮酸およびシンナミリデン酢酸が挙げられる。
【0040】
グリップ部材を形成するために使用され得るフィラメントに紡糸され得る適切な形状記憶合金としては、ニチノール(NiTi)、CuZnAl、CuAlNiおよびFeNiAlが挙げられるが、これらに限定されない。形状記憶合金から繊維を形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。
【0041】
組織の支持および組織の内方成長を提供することに加えて、これらのパッチは、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性剤が、シート、グリップ部材、または両方と合わせられ得る。これらの剤は、シートまたはグリップ部材を形成するために使用される生体適合性材料と物理的に混合され得るか、シートまたはグリップ部材にコーティングされ得るか、あるいはシートまたはグリップ部材を形成するために使用される生体適合性材料に任意の種々の化学結合を介して繋留され得る。これらの実施形態において、本移植物はまた、生物活性剤の送達のためのビヒクルとして働き得る。
【0042】
この移植物は、さらなる生物活性剤でコーティングされ得るか、またはさらなる生物活性剤を含有し得る。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤;組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;接着防止化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物;または1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物であり得る。この生物活性剤は、任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)でこの移植物に付けられ得ることが想定される。
【0043】
上記のように、マルチアームPEGまたはPEGスターを含む実施形態において、生物活性剤は、PEGのコア、PEGのアーム、またはこれらの組み合わせに組み込まれ得る。ある実施形態において、生物活性剤は、PEG鎖内の反応性基に付着し得る。生物活性剤は、共有結合で結合しても非共有結合(すなわち、静電結合、チオール媒介結合もしくはペプチド媒介結合、またはビオチン−アビジン化学の使用など)で結合してもよい。
【0044】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝結因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0045】
接着防止薬剤は、移植物と、標的組織に対向する周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために利用され得る。さらに、接着防止薬剤は、コーティングされた移植可能な医療デバイスと、任意の包装材料との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの薬剤のいくつかの例としては、親水性ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
生物活性薬剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性薬剤として含有され得る。
【0047】
生物活性剤として含有され得る他の生物活性剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0048】
移植物に含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、ならびに活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0049】
ここで図1A〜図1Dの例示的な実施形態を参照すると、外科手術用移植物110は、生体適合性基材120および複数のグリップ部材130を備える。外科手術用移植物110は、ほぼ平坦であり得、そして複数の細孔140を備え得る。生体適合性基材120は、編まれたフィラメントから形成されたメッシュ布として示される。図1Bにおいて、グリップ部材130が、非グリップ位置で基材120の上表面に沿って配置されているのが示されている。非グリップ位置において、グリップ部材130は、ほぼ真っ直ぐな様式で、基材120の長手方向軸(A)に対して平行に配置される。グリップ部材は、基材120の軸に対して実質的に平行に延びるので、グリップ部材130は、移植の際に周囲組織に貫入し得ず、基材120の他の部分にも貫入し得ない。非グリップ位置において、グリップ部材130は、基材120の他の部分に付着し得ず、そしてまた、移植の際に周囲組織に付着し得ない。基材120の長手方向軸(A)に対してほぼ平行であるように図示されているが、グリップ部材130は、必ずしもほぼ平行である必要はない。ある実施形態において、これらのグリップ部材は、この基材の長手方向軸に対して、これらのグリップ部材が組織および/または基材の他の部分に付着することを防止するのに適切であり得る、任意の位置にあり得る。
【0050】
図1Cに示されるように、グリップ部材130を非グリップ構成において備える移植物110は、管状構成に巻かれ得、この場合、基材120のいくつかの異なる部分が互いに重なり、グリップ部材130は、基材120の細孔140内に絡まらない。腹腔鏡手順中に、移植物110は、移植前にこの巻かれた構成で、カニューレ(図示せず)に通され得、そして移植の部位において広げられ得る。なぜなら、グリップ部材130は、非グリップ構成において基材120に付着しないからである。
【0051】
移植後、移植物110は、身体によって20℃より高い温度に温められ得る。この時点で、グリップ部材130(約20℃より高温で変形するように条件付けられた形状記憶材料から作製されている)は、非グリップ構成からグリップ構成へと変形する(図1Dを参照のこと)。図1Dのグリップ構成において、グリップ部材130は、ほぼ平坦な真っ直ぐな構成から、ほぼ丸まったグリップ構成へと変形している。形状記憶材料は、特定の温度(例えば、体温(約37℃))で変形するように条件付けまたは製造され得ることが理解されるべきである。
【0052】
図2Aおよび図2Bにおいて、外科手術用移植物210が、移植の部位で、実質的に平坦な位置で、創傷組織の近接させられた第一の部分225aおよび第二の部分225bに隣接して示されている。グリップ部材230は、所定の刺激への曝露の前には、非グリップ位置にある。例えば、この基材は、約20℃以下の温度に維持され得る。
【0053】
図2Bに示されるように、損傷組織の開口部は、損傷組織の第一の側225aを損傷組織の第二の側225bと近接させることによって、閉じられ得る。グリップ部材230は、刺激への曝露(例えば、20℃〜40℃の温度への上昇)後に、非グリップ構成からグリップ構成へと変形する。図2Bに図示されるように、グリップ部材230は、ほぼL字型の構成を形成し得、この構成において、グリップ部材230の基部230aは、基材220の一部分の内部に位置し、そしてグリップ部材230のアーム部材230bは、基材220の長手方向軸からほぼ垂直に延びて、基材220を組織225a、225bに付着させる。
【0054】
他の実施形態において、グリップ部材330は、基材320の第一の部分320aを基材320の第二の部分320bにしっかりと繋留するために利用され得る。図3Aおよび図3Bにおいて、移植物310は、複数の細孔340を作製する様式で織り混ぜられたフィラメントから作製された、メッシュ基材320を備える。メッシュ基材320はまた、スリット360を備え、このスリットは、一般に、メッシュ基材320の中心からメッシュ基材320の外縁部380まで延びる。基材320の第一の部分320aは、継ぎ目350を介して基材320に取り付けられ得、そして基材320の第二の部分320bと重なることが意図され得る。第一の部分320aは、複数のグリップ部材330を備える。グリップ部材330は、本明細書中に記載されるような所定の刺激への曝露の際に、非グリップ構成(図3A)からグリップ構成(図3B)へと変形するように条件付けられる。
【0055】
図3Bにおいて、移植物310が側面図で示されており、第一の部分320aが、基材320の第二の部分320b上に配置され、ここでグリップ部材330は、グリップ構成に変形している。グリップ部材330は、基材320の長手方向軸に対して平行な、ほぼ真っ直ぐな構成から、図3Bに図示されるようなほぼJ字型の構成へと変形している。ほぼJ字型のグリップ部材330は、基材320内に配置された基部330aを備え、この基部は、基材320の長手方向軸からほぼ垂直に延びるアーム部材330bと接続されている。アーム部材330bは、基材320の細孔340に貫入するように設計される。アーム部材330bの最遠位の部分は、丸まった端部330cを備える。丸まった端部330cは、基材320のフィラメントのうちの少なくとも1つと係合して、基材320の第一の部分320aを第二の部分320bに隣接させて保持するように設計される。
【0056】
形状記憶グリップ部材を備える基材は、グリップ部材を備えても備えなくてもよい他の基材と組み合わせられ得る。例えば、グリップ部材を有するメッシュが、グリップ部材を有さない別のメッシュと組み合わせて使用され得る。
【0057】
組織接着特性を有するヘルニアパッチを作製する方法が開示される。この方法は、生体適合性シートから延びるグリップ部材を、第一の非グリップ構成を呈するように、そして刺激への曝露の際に第二のグリップ構成を呈するように、条件付けする工程を包含する。
【0058】
種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、ある実施形態において、移植物は、パッチの一部分への接着の形成を防止するために、さらなる材料の層(例えば、抗菌コーティング層)またはフィルムを備え得る。従って、当業者は、特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0059】
110 外科手術用移植物
120 生体適合性基材
130 グリップ部材
140 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性基材;および
少なくとも1つのグリップ部材であって、第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間での変形が可能である、少なくとも1つのグリップ部材、
を備える、外科手術用移植物。
【請求項2】
前記グリップ部材が前記生体適合性基材と織り混ぜられている、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項3】
前記グリップ部材が形状記憶材料を含有する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項4】
前記形状記憶材料が、前記第一の構成から前記第二の構成へと、約20℃〜約40℃で変形する、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項5】
前記形状記憶材料が、ポリマーおよび金属合金からなる群より選択される、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項6】
前記形状記憶ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(スチレン-ブタジエン)ブロックコポリマー、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ乳酸、オリゴ(p-ジオキサノン)ジオール、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール、ポリトリメチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の外科手術用移植物。
【請求項7】
前記形状記憶ポリマーが、ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート-ポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(ε−カプロラクトン)ジオール-ポリ(p-ジオキサノン)ジオール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の外科手術用移植物。
【請求項8】
前記形状記憶材料が光活性化形状記憶ポリマーを含有する、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項9】
前記形状記憶材料が熱活性化形状記憶材料を含有する、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項10】
前記形状記憶材料が電気活性化形状記憶材料を含有する、請求項3に記載の外科手術用移植物。
【請求項11】
前記形状記憶金属合金が、銅-亜鉛-アルミニウム-ニッケル合金、銅-アルミニウム-ニッケル合金、亜鉛-銅-金-鉄合金、およびニッケル-チタン(NiTi)合金からなる群より選択される合金を含有する、請求項5に記載の外科手術用移植物。
【請求項12】
前記生体適合性基材が、発泡体、フィルム、組織足場、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項13】
前記生体適合性基材が軟部組織修復デバイスを備える、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項14】
前記生体適合性基材が外科手術用メッシュを備える、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項15】
生物活性剤をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項16】
前記グリップ部材の前記第一の非グリップ構成が、前記生体適合性基材の長手方向軸に対して実質的に平行に配置される、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項17】
前記グリップ部材の前記第二のグリップ構成が、前記生体適合性基材の長手方向軸から実質的に垂直に延びる、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項18】
前記第二のグリップ構成が、ほぼL字型のグリップ部材を構成する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項19】
前記第二のグリップ構成が、ほぼJ字型のグリップ部材を構成する、請求項1に記載の外科手術用移植物。
【請求項20】
外科手術用移植物を作製する方法であって、
第一の非グリップ構成と第二のグリップ構成との間で変形するように、少なくとも1つのグリップ部材を条件付けする工程;および
該少なくとも1つのグリップ部材を生体適合性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのグリップ部材を条件付けする工程が、該グリップ部材を加熱する工程、該グリップ部材を非グリップ構成に変形させる工程、および該グリップ部材を冷却する構成を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのグリップ部材を生体適合性基材に組み込む工程が、編成、製織、編組、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのグリップ部材が形状記憶材料を含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記形状記憶材料が、約20℃〜約40℃での温度変形を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記形状記憶材料が、形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記生体適合性基材が、発泡体、フィルム、組織足場、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記生体適合性基材が外科手術用メッシュを備える、請求項20に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−200654(P2011−200654A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66771(P2011−66771)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】