説明

ヘルペスウイルス感染を阻害するペプチド組成物および方法

本発明は、少なくとも1つのヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質B(HCMV-gB)配列セグメントを含むアミノ酸残基配列を有する単離ペプチドを提供する。各HCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1の残基146から315、残基476から494に由来するか、または配列番号:1の残基146から315もしくは476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有するその変種配列に由来する、連続する少なくとも8つのかつ60を超えないアミノ酸残基から成る。本発明のペプチドは、対象におけるヘルペスウイルス(例えば単純疱疹ウイルス-1、ヒトサイトメガロウイルスなどの)感染の治療、予防または阻止に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、米国仮特許出願61/280,112(2009年10月30日出願)(引用によりその全体が本明細書に含まれる)について優先権を主張する。
政府の支援に関する記載
本発明は、ルイジアナ州のために地域開発局(Office of Community Development)が管理する、米国住宅および都市開発(U.S. Housing and Urban Development(HUD))の地域開発ブロックグラント(Community Development Block Grant(CDBG)(PL 109-148))に基づきコントラクト番号RCEEP-06(2007-10)により政府の支援を受けて達成された。合衆国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、ヒトヘルペスウイルス(HHV)感染、例えばヒトサイトメガロウイルス(HCMV;HHV-5)、単純疱疹ウイルス1(HSV-1;HHV-1)、単純疱疹ウイルス2(HSV-2;HHV-2)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV;HHV-3)、エプスタイン-バーウイルス(EBV;HHV-4)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)またはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV;HHV-8)感染を治療、予防または阻止するペプチド組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトヘルペスウイルスは、エンベロープ保有ウイルスで構成される多様性を有する1ファミリーに属し、前記ウイルスは、免疫抑制、ストレスまたはその他のきっかけによりウイルスが再活性化するまで潜伏期を維持することによって生涯にわたってそれらの宿主に感染する。ヘルペスウイルスは、脅威とならないものから極めて重篤な症状まで多数の疾患を引き起こす。ヘルペスウイルスの非限定例には、HCMV、HSV-1、HSV-2、EBV、VZV、HHV-6、HHV-7およびKSHVが含まれる。 HCMVは遍在性で日和見的な病原体であり、ベータヘルペスウイルス科(Betaherpesviridae)に属する。この病原体の病毒性は、その宿主の免疫状態に直接関係する。HCMVの初感染は、免疫応答能力を有する個体では一般的に無症状である。HCMVの初感染後、このウイルスは宿主の内部で生涯にわたって潜伏期を確立し、さらに周期的に再活性化しながらほとんど病理学的な結果をもたらさない。対照的に、免疫不全患者(例えばエイズ患者並びに充実器官移植および異質遺伝子型幹細胞移植のレシピエント)のHCMV感染は重篤な疾患を引き起こす(1)。HCMVはまた、妊娠中または妊娠直前の母親の初感染からもっとも高い頻度で生じる先天性ウイルス感染の主要な原因であり、偶発的流産、早産、子宮内発育制限(IUGR)または子癇前症をもたらす。血清陰性の母親の初感染のリスクは1から4%であり、前記は30から40%の先天性感染リスクを有する(2,3)。先天的に感染した新生児の大半は出生時に無症状で、10から17%がその後聴力不全または神経発育に関する続発症を発する(4)。
【0004】
HCMVは約165の遺伝子をコードする約235kbの二本鎖DNAゲノムを有する(5)。前記ウイルスは、ほぼ全ての器官系に感染し得る非常に広い細胞向性を有する。広範囲の細胞タイプに進入するHCMVの能力は、ウイルスエンベロープの糖タンパク質といくつかの宿主細胞表面レセプターとの間の非常に複雑な相互作用を必要とする。ヘルペスウイルスの宿主細胞への進入は複雑であり、まだほとんど理解されていない。HCMVのビリオンエンベロープはウイルスによりコードされる少なくとも20の糖タンパク質を含み、これらは細胞への付着および侵入に必要である(6)。これらのうちで糖タンパク質B(gB)はHCMVエンベロープのもっとも豊富な糖タンパク質であり(7)、ヘルペスウイルスファミリーで高度に保存されている。糖タンパク質BはHCMV進入プロセスで必須の役割を果たす。このプロセスでは、最初にgM/gN(糖タンパク質MおよびNの複合体)と併せてgBが、ビリオンと宿主細胞表面のヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との連結に必要とされる。HCMVビリオンとHSPGとのこの短い相互作用の後に、1つまたは2つ以上のウイルス細胞レセプター(すなわちEGFR(9)、PDGFR(10)およびTLR-2(11))によるより安定な相互作用が続く。gBはまたインテグリンαvβ3(HCMV進入を強化する補助レセプター)と相互作用する(12)。インテグリンは他のレセプターと同様にEGFRと相乗作用して、シグナルトランスダクション経路を活性化することが知られている(13−15)。進入プロセスを完了させるためにウイルス膜および細胞膜の両方が融合し、それによってビリオンがコードする外被およびキャプシドタンパク質が細胞質内へ放出される。宿主細胞へのウイルス進入のこの最後の工程は、gBおよび糖タンパク質H/糖タンパク質L複合体を要求する(16−19)。
【0005】
HCMV感染は、当該ウイルスを保持し周期的に当該ウイルスを放出する宿主間での効率的な伝播により集団内に深く広がっている。HCMVは、感染体の分泌物(唾液、尿および乳汁を含む)への直接的暴露により伝播される。感染後、HCMVは血流に入り、多様な器官(腎、肝、脾、心臓、脳、網膜、食道、内耳、肺、結腸および唾液腺を含む)に拡散する(20)。HCMVのこの極めて多様な細胞タイプへの感染力は、高レベルの細胞外ウイルスが血漿中に存在するためではなく、主として単核食細胞(もしかするとマクロファージまたは樹状突起細胞の前駆細胞)と未感染組織間の細胞対細胞伝播の結果である(21)。
HCMV gBに対する抗体はビリオンの細胞内侵入を阻止するだけでなく、細胞対細胞感染を制限することが示され、gBは、ビリオンの細胞内侵入、細胞から細胞へのウイルス伝播の他に感染細胞の融合において役割を果たすことが推量された(18,22)。最近、Isaacsonと共同研究者らは遺伝的補完を用いて、ウイルス膜と細胞膜の融合、ウイルスの進入およびHCMVの細胞から細胞への拡散にgBが必要であることを確認した(23)。
HCMVおよび他のヘルペスウイルスはヒトで生涯にわたって潜伏期を確立するので、ウイルスの進入を阻止する抗ウイルス療法が、既存の治療薬剤に代わるものとして役立つ可能性がある。我々は、HCMV感染を予防する新規なアプローチとして、HCMVと宿主細胞膜との融合を特異的に阻止してウイルス感染および/または複製を阻止するペプチドの設計および開発の特徴を報告する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の糖タンパク質B(gB)の一部分(ビリオンと細胞膜との融合で必要とされる)に対して高度な配列類似性を有する配列を含むペプチドを提供する。HCMV gBは配列番号:1のアミノ酸配列を有する(図1A)。これらのペプチドはビリオン:細胞膜融合を阻止する。ビリオン:細胞膜融合は未感染細胞の感染に必要であるので、ウイルスが外部供給源由来かまたは既存の休眠感染のアウトブレークに由来するかにかかわらず、本発明のペプチドは細胞レベルにおける感染阻止に有用である。結果として、本発明のペプチドは、未感染細胞へのウイルスの拡散の阻止により、既に存在するヘルペスウイルス感染の治療およびアウトブレークの治療に有用であり、予防的に投与される場合には、新規なヘルペスウイルス感染の阻止および休眠感染のアウトブレークの阻止に有用である。ある実施態様では、本発明は、少なくとも1つのウィムリーホワイト界面疎水性規準(Wimley White Interfacial Hydrophobicity Scale)(WWIHS)プラスのヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質B(HCMV-gB)配列セグメントを含む単離ペプチドを提供する。前記ペプチドの各WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1の残基146から315(前記はgBの融合ドメイン領域を含む)に由来するか、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する変種配列に由来する、連続する少なくとも8つのアミノ酸残基かつ60を超えないアミノ酸残基から成る。WWIHSプラスセグメントに加えて、前記ペプチドは、所望の場合は各WWIHSプラスセグメントのN末端および/またはC末端に追加のアミノ酸残基を含むことができる。
【0007】
好ましい実施態様では、ペプチドのアミノ酸残基配列は以下の(a)−(f)から成るHCMV-gB配列セグメントを含む:(a)配列番号:1の残基146から315に由来するか、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から315の配列変種に由来する連続残基;(b)配列番号:1の残基174から200に由来するか、または配列番号:1の残基174から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基174から200の配列変種に由来する連続残基;(c)配列番号:1の残基233から263に由来するか、または配列番号:1の残基233から263に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基233から263の配列変種に由来する連続残基;(d)配列番号:1の残基264から291に由来するか、または配列番号:1の残基264から291に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基264から291の配列変種に由来する連続残基;(e)配列番号:1の残基297から315に由来するか、または配列番号:1の残基297から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基297から315の配列変種に由来する連続残基;および(f)配列番号:1の残基476から494に由来するか、または配列番号:1の残基476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基476から494の配列変種に由来する連続残基。好ましくは、HCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1またはその変種の前記列挙残基の連続する少なくとも15の残基から成る。前記ペプチド変種のアミノ酸残基配列は、好ましくは配列番号:1の前記列挙残基中に保存的置換のみを含む。
【0008】
いくつかの好ましい実施態様では、前記ペプチドは、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に対して少なくとも70%の配列同一性(好ましくは少なくとも90%の配列同一性)を有する(好ましくは保存的置換によってのみこれらの配列と相違する)配列変種から成る群から選択されるアミノ酸残基配列を有するHCMV-gB配列セグメントを含む。
他の特徴では、本発明は、ヘルペスウイルスに曝露された対象に本発明のペプチドの治療的に有効な量を投与することによって、ヘルペスウイルス感染(HCMV、HSV-1、HSV-2、EBV、VZV、HHV-6、HHV-7またはKSHV感染などを含むがただしこれらに限定されない)を治療、予防、或いは阻止する方法を提供する。いくつかのペプチドは他のペプチドよりも特定のヘルペスウイルス感染に対してより有効であることは理解されよう。配列番号:1の残基146から315、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から315の配列変種の部分を含む本発明のペプチドは、HCMV感染を特に免疫不全対象において治療、予防または阻止するために有用である。同様に、配列番号:1の残基476から494、または配列番号:1の残基476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基476から494の配列変種の部分を含む本発明のペプチドは、HSV-1感染の治療に特に有用である。前記ペプチドは、単独でまたは1つもしくは2つ以上の他の治療薬剤(例えば別の抗ウイルス薬剤)と併用して投与できる。前記ペプチドは、好ましくは医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤(例えば生理学的pHの緩衝剤)中で投与される。
【0009】
本発明はまた、医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤と一緒に本発明のペプチドを含む医薬組成物を提供する。前記医薬組成物はまた、賦形剤、保存料および他の医薬的に有用な物質を、例えば前記組成物に保存安定性を提供するためにまたは所望の物理的特性を付与するために含むことができる。本発明の医薬組成物は、所望の場合は他の治療薬剤(例えば抗ウイルス薬剤)とともに処方することができる。
本発明はまた、ヘルペスウイルス感染(特にHCMV感染)を治療、予防または阻止するために前記ペプチドの使用を提供するとともに、ヘルペスウイルス感染阻止用医薬組成物を調製するために前記ペプチドの使用を提供する。
本発明のペプチド、医薬組成物および方法は、有益に用いてヘルペスウイルスに感染したかまたはヘルペスウイルス感染もしくはそのアウトブレークのリスクがある任意の患者を治療することができる。本発明のペプチド、医薬組成物および方法は、免疫不全患者(網膜炎患者、移植患者、異質遺伝子型幹細胞移植レシピエント)に特に有用であるとともに、妊婦でウイルス負荷を軽減させ、それによって胎盤およびその後の胎児へのヘルペスウイルスの拡散を減少させるために有用である。さらにまた、これらのペプチド、医薬組成物および方法はまた、CMV感染新生児の治療に用いて知覚神経性聴力喪失の発生リスクを軽減することができる。
本発明の方法で対象にペプチドを投与するための投薬レベルは、治療的に有用な結果(例えばヘルペスウイルスアウトブレークの抑制、ヘルペスウイルスへの暴露が判明した後の活発な感染の予防など)を提供するために十分な量であろう。本発明のペプチドの治療的に有効な量の決定はまた医業および薬業者の通常の技術レベルの範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パネルAはHCMV gBのアミノ酸配列を提供する。パネルBはHCMV gBのWWIHS図表を示す。下線部分は、細胞膜の脂質表面と相互作用する性向が高い(すなわち疎水性の正のスコアを有する)gB内ペプチド領域を表す。
【図2A】ウイルス感染を阻止するHCMV gBペプチドの能力を示す。パネルIは、表示ペプチド(すなわちHCMV gBのペプチド174−200(配列番号:3))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示す。パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印で指し示されている。パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図2B】ウイルス感染を阻止するHCMV gBペプチドの能力を示す。パネルIは、表示ペプチド(すなわちHCMV gBのペプチド233−263(配列番号:4))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示す。パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印で指し示されている。パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図2C】ウイルス感染を阻止するHCMV gBペプチドの能力を示す。パネルIは、表示ペプチド(すなわちHCMV gBのペプチド264−291(配列番号:5))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示す。パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印で指し示されている。パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図2D】ウイルス感染を阻止するHCMV gBペプチドの能力を示す。パネルIは、表示ペプチド(すなわちHCMV gB のペプチド297−315(配列番号:6))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示す。パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印で指し示されている。パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図3A】3ウイルス感染に対するHCMV gBペプチド累積効果を示す。各図において、パネルIは、表示のペプチド組み合せ(すなわちペプチド233−263(配列番号:4)と組み合わせたペプチド174−200(配列番号:3))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示し、一方、パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印によって指し示されている。各パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図3B】ウイルス感染に対するHCMV gBペプチド累積効果を示す。各図において、パネルIは、表示のペプチド組み合せ(すなわちペプチド297−315(配列番号:6)と組み合わせたペプチド264−291(配列番号:5))の存在下でプレインキュベートしたHCMV(Towne GFP株)にヒト包皮線維芽細胞(HFF)を曝露した後で認められる緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞の数のグラフを示し、一方、パネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメントのおよその配置が矢印によって指し示されている。各パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
【図4】ウイルス感染を阻止するHCMV gBペプチド233−263(配列番号:4)の能力を示す。パネルA−Bは、HCMVのTowne GFP株に感染させたHFF細胞のそれぞれ蛍光顕微鏡像および白色光顕微鏡像を示す。パネルC−Dは、100μMの濃度のペプチド233−263(配列番号:4)とプレインキュベートしたTowne GFP株をMOI 0.5で感染させたHFF細胞の典型的な蛍光および白色光画像を示す。
【図5】HSV-1 gB阻害性ペプチド(Akkarawongsa et al.)およびHCMV gB阻害性ペプチドの比較を提供する(前記2つのタンパク質のリボン状構造における配置が示される)。
【図6】HCMV gBペプチドによるHSV-1感染阻止を示す。新規に設計したHCMV gB特異的ペプチドのHSV-1感染阻止能力を評価するために、ある濃度範囲の4つの異なる合成ペプチドとともに37℃で約90分間プレインキュベートしたHSV-1(McIntyre株;MOI = 0.001)にVero細胞を約90分間室温で感染させた。各処置におけるプレート像が図に示されている。各処置はトリプリケートで実施された;A=培養液、B=HSV-1(MOI:0.001)、C=100μMのペプチドおよびウイルス、D=50μMのペプチドおよびウイルス、E=25μMのペプチドおよびウイルス、F=10μMのペプチドおよびウイルス、G=5μのペプチドおよびウイルス、H=2.5μMのペプチドおよびウイルス。ドメインII内のHCMV gBペプチド(ペプチド174−200(配列番号:3)、ペプチド233−263(配列番号:4)、およびペプチド264−291(配列番号:5))はHSV-1感染に対して阻害性であった。ペプチド476−494(配列番号:7)はHCMV gBのトリマー化ドメインに対応し、前記ドメインは、HCMVビリオンと宿主細胞の脂質膜との融合時にHCMV gBホモトリマー形成に重要な伸長αへリックスを含む。オーバーラップする阻害性HSV-1ペプチドが、HSV-1 gBの496−510領域および501−515領域(配列番号:8)にわたって広がり、HCMV gBペプチド476−494(配列番号:7)に類似する。
【図7】ヘルペスウイルス1のgBのアミノ酸残基配列を提供する。
【図8】本発明のペプチドの例を提供する。
【図9】本発明のペプチドの例を提供する。
【図10】本発明のペプチドの例を提供する。
【図11】本発明のペプチドの例を提供する。
【図12】本発明のペプチドの例を提供する。
【図13】HCMV TRpMIAに対するペプチド174−200の阻止データを提供する。
【図14】HCMV TRpMIAに対するペプチド233−263の阻止データを提供する。
【図15】HCMV TRpMIAに対するペプチド264−291の阻止データを提供する。
【図16】HCMV TRpMIAに対するペプチド233−263.9の阻止データを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、ビリオンと細胞膜の融合に関与するヒトサイトメガロウイルス(HCMV)糖タンパク質B(gB)の一部分と高い配列類似性を有するアミノ酸残基配列を含むペプチドを提供する。HCMV gBは配列番号:1のアミノ酸配列を有する(National Center for Biotechnology Information Database EMBL Accession No. DAA00160)。ある好ましい実施態様では、本ペプチドは、少なくとも1つのウィムリーホワイト界面疎水性規準(WWIHS)プラスのヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質B(HCMV-gB)配列セグメントを含むアミノ酸残基配列を有する。各WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1の残基146から315に由来するか、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%(例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または98%)の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から315の変種配列に由来する、連続する少なくとも8つ(例えば少なくとも8、10または15)のかつ60を超えない(例えば60、50、45、40または35を超えない)アミノ酸残基から成る。いくつかの実施態様では、前記変種は、配列番号:1の対応する部分と1つまたは2つ以上の保存的置換のみにより相違する。好ましくは、WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1またはその変種の前記列挙残基の連続する少なくとも15の残基から成る。
【0012】
別の好ましい実施態様では、本発明は、少なくとも1つのHCMV-gB配列セグメントを含むペプチドを提供し、さらに前記ペプチドの各HCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1の残基174から200、配列番号:1の残基233から263、配列番号:1の残基264から291、配列番号:1の残基297から315、配列番号:1の残基476から494、または配列番号:1の前記規定部分に対して少なくとも70、75、80、85、90、95または98%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する前記の変種配列に由来する、連続する少なくとも8つ(好ましくは少なくとも15)のかつ好ましくは60を超えない残基から成る。
別の実施態様では、ペプチドは、配列番号:1の残基146−200、前記に対して少なくとも70%の配列同一性を有するその配列変種の少なくとも1つの連続する部分(例えば連続する8から54の残基)を含む。
本明細書で用いられるように、“WWIHS-プラス”という用語は、正の自由エネルギー(ΔG)値(好ましくは1、2、3または4kcal/molより大きいΔG値)により算出されるWWIHSスコア(例えば本明細書記載のまたは本明細書引用の方法およびコンピュータプログラム(例えばMPExプログラム)によって決定される)を有するアミノ酸残基配列を指す。好ましくは、WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントは、配列番号:1またはその変種の前記列挙残基に由来する、連続する少なくとも10、または少なくとも15のアミノ酸残基(かつ好ましくは45、40、35、30または20を超えない連続するアミノ酸残基)を含む。
【0013】
本発明のペプチドは、本明細書記載の配列番号:1の規定されたHCMV-gB配列セグメントの1つと同一であるか、または1つまたは2つ以上の置換(好ましくは保存的置換)により前記HCMV-gBと相違する変種であるアミノ酸残基配列を含むことができる。好ましくは、HCMV-gB配列セグメント中の唯一の置換は保存的置換である。1つまたは2つ以上のL-アミノ酸の1つまたは2つ以上のD-アミノ酸による置換、および/または1つまたは2つ以上のシステイン残基の1つまたは2つ以上のアラニン残基による置換もまた適切な置換であり、本発明および添付の特許請求の範囲に関しては保存的置換とみなすことができる。
本発明のペプチドは、HCMV-gB配列セグメントを含む部分にフランキングする他のアミノ酸配列を(例えばHCMV-gB配列セグメントのアミノおよび/またはカルボキシル末端で)含むことができる。そのような追加の配列を配列番号:1のセグメント内の置換と同様に用い、ヘルペスウイルス感染を阻止する医薬組成物で使用するために本発明のペプチドの物理的、生理学的または化学的特徴を改変または最適化することができる。例えば追加の配列または置換は、生理学的条件下でペプチドを安定化させることができ、または好ましいデリバリービヒクルまたは担体とのペプチドの適合性強化に用いることができる。
本発明のペプチドは、ビリオン:細胞膜融合の阻止に有用であり、したがって本明細書でさらに詳細に記述するようにヘルペスウイルスによる感染の阻止または予防に有用である。
【0014】
本明細書で用いられるように、“保存的置換”という用語およびその文法的変形は、HCMV-gBの野生型残基と異なるが同じクラスのアミノ酸であるアミノ酸残基がペプチド配列に存在することを指す。この点について、保存的置換には、非極性(疎水性)アミノ酸残基の非極性アミノ酸残基による置換、芳香族アミノ酸残基の芳香族アミノ酸残基による置換、または極性(親水性)アミノ酸残基の極性アミノ酸残基による置換(例えば極性非荷電残基の極性非荷電残基による置換、荷電残基の荷電残基による置換、極性非荷電残基(例えばAsnまたはGln)の荷電残基(例えばAspまたはGlu)による置換、または荷電残基の極性非荷電残基による置換)が含まれる。さらにまた、保存的置換は、置換される天然(野生型)のアミノ酸残基と同じ符号および一般的には類似の規模の界面ハイドロパシー値をもつ残基によって天然のアミノ酸残基が置換されるペプチドを包含する。システイン残基のアラニンまたはメチオニン残基による置換(例えば望ましくない環化またはシステイン残基の他の副反応を防止する)もまた、本発明のペプチドの関係では保存的置換とみなすことができる。
【0015】
本明細書で用いられるように、“非極性非荷電残基”(時には疎水性残基とも称される)という用語は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンおよび芳香族残基を指し、“芳香族アミノ酸残基”という用語は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンを指し、“極性アミノ酸残基”(時には親水性残基とも称される)という用語は、極性非荷電残基(例えばセリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギンおよびグルタミン)とともに荷電残基、例えば陰性荷電(酸性)アミノ酸残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)および陽性荷電(塩基性)アミノ酸残基(リジン、アルギニンおよびヒスチジン)を指す。グリシンは、保存的置換に関しては極性または非極性アミノ酸残基に含めることができる。
1つまたは2つ以上のリジン残基がHCMV-gBセグメント中で代用されるペプチド変種もまた本発明の範囲内に包含される。そのようなリジン代用変種は、例えば本ペプチドのウイルス阻害活性の増強に有用であり得る。
【0016】
表1は、本発明のペプチドのHCMV-gB配列セグメントにおけるいくつかの例示的置換の非制限的な例を提供する。これらの置換は、本ペプチドのヘルペスウイルス感染阻止活性を所望のレベルに維持するHCMV-gB配列セグメントの変種を提供する。全ての置換が配列番号:1の対応する残基番号に関して示されている。本明細書で考察するように、他の置換(好ましくは保存的置換)も、表1に示す置換に加えてHCMV-gB配列セグメントにおいて実施することができる(例えばD-アミノ酸異性体、リジン置換など)。好ましくは、配列番号:1の残基174−200、233−263、264−291および297−315を含むHCMV-gB配列セグメントの変種は、当該セグメントの正のWWIHSスコアを維持または増加させる置換を含む。
表2は、WimleyとWhiteが1996年に報告した膜界面のタンパク質のウィムリーホワイト界面疎水性規準(Wimley White Interfacial Hydrophobicity Scale)を示す。この疎水性またはハイドロパシー規準は、ペプチド残基を疎水性二重膜界面から水相へ輸送するために必要な自由エネルギー変化を基準にする。表2に示される規準では、正の残基自由エネルギー(ΔGresidue)(キロカロリー/モル)は疎水性残基を示す(すなわち疎水性の膜から疎水性残基を水に移行させるためにエネルギーが添加されねばならない)。同様に、負の自由エネルギーは親水性残基を示す。
【0017】
表1:選択されるペプチド残基置換
【表1】

【0018】
表2:二重層界面から水へAcWL-X-LLペプチドを輸送する自由エネルギー
【表2】

【0019】
本発明のペプチドはN末端、C末端またはその両方で誘導体化することができる。例えば、N末端のアミノ基はアセチル基、疎水性基(例えば、脂質、例えばC3からC22カルボキシル基(例えばミリスチン酸)、C3からC22アルキル基、C3からC22アルキルアリール基、アリールアルキル基、コレステロール基またはアリール基)、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基または巨大分子基(例えばポリ(エチレングリコール)基または炭水化物基(例えばグリコシル基))と結合させることができ、および/またはC末端のカルボキシル基がアミンと結合している場合(例えばアミド基を形成する)、疎水基(例えばC3からC22アルコキシ基、C3からC22アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはアリールオキシ基)または巨大分子基と結合させることができる。さらにまた、本発明のペプチドは場合によって、隣接するアミノ酸残基と連結する1つまたは2つ以上の非ペプチド結合を含むことができ(例えばこの実施態様の特に好ましい特徴では、非ペプチド結合はイミド、エステル、ヒドラジン、セミカルバゾイドまたはアゾ結合)、および/または1つまたは2つ以上のアミノ酸残基はD-異性体構造である。
【0020】
本発明のペプチドは、HCMV-gB配列セグメントまたはその変種のN末端および/またはC末端に追加のアミノ酸残基配列(好ましくは機能的配列)を含むことができる。例えばペプチドは以下の配列を含むことができる:ペプチドの細胞膜貫通輸送を補助する配列(例えば細胞侵入ペプチド)、ペプチドのin vivo半減期を延長する配列、製造時にペプチドの単離を補助する配列、および/または所望される任意の他の特性をペプチドに付与する配列。そのような機能的ペプチド配列の例には以下が含まれる:例えば細胞侵入を高めるためのアルギニン富裕配列、例えばポリアルギニン(RRRRRRRRR、配列番号:9)またはHIV-tatペプチド(例えばGRKKRRQRRRP、配列番号:10);例えばペプチドの単離を促進するためのヒスチジン富裕ペプチド配列、例えばHis6-タグペプチド;例えばペプチドの血中安定性を改善するためのヒト血清アルブミン(HAS);例えば可溶性を高めるためのC末端Ser-Lys交互出現ペプチド(例えばASKSKSKSK、配列番号:11);1つまたは2つ以上の改変アミノ酸残基(例えばヒドロキシプロリン)など。本発明のペプチドはまた、本明細書に記載の2つまたは3つ以上のHCMV-gB配列セグメントを含むことができ、前記セグメントは、天然のHCMV-gB配列とは異なる連結ペプチド配列によって互いに結合される。
【0021】
前記に加えてまたは前記とは別に、本発明のペプチド、そのHCMV-gB配列セグメントは環状形であってもよい。例えば、ペプチドは隣接しない2つのCys残基間で形成されるジスルフィド結合により環化するか、またはホモデティック態様のペプチド結合(すなわちN末端対C末端ペプチド結合)もしくはヘテロデティック態様の結合(すなわちC末端またはN末端と内部アミノ酸側鎖とのアミド結合(例えばC末端カルボキシル対Lys側鎖アミド結合;N末端アミノ対AspまたはGlu側鎖アミド結合;Lys側鎖対AspまたはGly側鎖アミド結合など)によって環化することができる。
図8、9、10、11および12は、配列番号:1の残基146から315の領域に由来する本発明のペプチドの多数の具体的な非限定例を提供する。前記には、太字で示す単離アミノ酸残基によって表示される置換(例えば保存的置換)を含むいくつかのペプチドが含まれている。さらにまた非gB誘導基を有する誘導体も含まれている。それらは、例えばN-ミリストイル(ミリスチン酸)誘導体、ヒト血清アルブミン融合タンパク質、ヒドロキシプロリン誘導体(“P*”と標識)、多様な輸送タンパク質との融合タンパク質(非gB残基は太字で示されている)、コレステロールエステル誘導体、ヘテロデティック環状ペプチド誘導体(“**”と標識)(前記は2つのシステイン残基のチオール側鎖間のジスルフィド結合によって環化される)およびポリ(エチレングリコール)エステル(PEG)誘導体である。ホモデティックな環状ペプチド誘導体(例えば図8、9、10、11および12に示す配列の最初の残基と最後の残基の間にペプチド結合を有する環状型)もまた本発明のウイルス阻害ペプチドの範囲内に包含される。
【0022】
本発明はまた、ヘルペスウイルス感染またはアウトブレークの治療に有用な、医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤(例えば生理学的に許容できるpH(例えばpH7から8.5)の水性緩衝液)、ポリマー系ナノ粒子のビヒクル、リポソームなどと組み合わせて少なくとも1つの本発明のペプチドを含む医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は任意の適切な投薬形、例えば液体、ゲル、固体、クリームまたはペースト投薬形でデリバーすることができる。ある実施態様では、組成物は前記ペプチドを持続的に放出するように調製することができる。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、経口、直腸用、鼻用、局所用(頬側および舌下用を含む)、経皮、膣用または非経口(筋肉内、皮下および静脈内を含む)投与に適した形態、吸入もしくは注入による投与または羊水への注射に適した形態の投薬形を含むが、ただしこれらに限定されない。適切な場合には、本組成物は、便利にはそれぞれ分離した投薬ユニットとして提供される。本発明の医薬組成物は、製薬業界で周知の方法のいずれかによって調製できる。いくつかの好ましい投与態様には、静脈内(iv)、局所、皮下投与および羊水への注射が含まれる。
【0023】
経口投与に適した医薬処方物にはカプセル、カシェ剤または錠剤が含まれ、前記は各々予め定めた量の1つまたは2つ以上のペプチドを散剤または顆粒として含む。別の実施態様では、経口組成物は溶液、懸濁液または乳液である。或いは、本ペプチドは、ボーラス、舐剤またはペーストとして提供してもよい。経口投与用錠剤およびカプセルは、通常の賦形剤(例えば結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香料、保存料または湿潤剤)を含むことができる。錠剤は、所望の場合は当業界で周知の方法にしたがって被覆することができる。経口液体調製物には、例えば水性または油性懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルが含まれる。或いは、組成物は、使用前に水または別の適切なビヒクルで構成される乾燥製品として提供してもよい。そのような液体調製物は、通常の添加物、例えば懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含むことができる)、保存料などを含むことができる。典型的には、添加物および賦形剤などは、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で経口投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0024】
非経口投与用(例えばボーラス注射または持続的輸液による)または羊水への注射用の医薬組成物は、アンプル中のユニットドース形、充填済み注射筒、小量輸液として、またはマルチドース容器で提供され、好ましくは添加された保存料を含むことができる。非経口投与用組成物は懸濁液、溶液または乳液であってもよく、賦形剤、例えば懸濁剤、安定化剤および分散剤を含むことができる。或いは、ペプチドは散剤形で提供され、無菌的固体の無菌的単離によって、または溶液の凍結乾燥によって入手でき、前記は使用前に適切なビヒクル(例えば無菌的で発熱物質を含まない水)により構成される。典型的には、添加物、賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で非経口投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約100ミリモル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約10ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0025】
本ペプチドの表皮(粘膜または皮膚表面)への局所投与用医薬組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ゲルまたは経皮絆創膏として処方できる。そのような経皮絆創膏は、侵入強化剤、例えばリナロール、カルバクロール、チモール、シトラール、メンソール、t-アネソールなどを含むことができる。軟膏およびクリームは、例えば水性または油性基剤を適切な膨張剤、ゲル化剤、着色剤などの添加と併せて含むことができる。ローションおよびクリームは水性または油性基剤含むことができ、典型的には1つまたは2つ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、膨張剤、着色剤などもまた含むことができる。ゲルは好ましくは水性担体基剤を含み、さらにゲル化剤、例えば架橋ポリアクリル酸ポリマー、誘導多糖類(例えばカルボキシメチルセルロース)などを含む。例えばそのようなゲルは、ヘルペスウイルス感染の性交伝播を予防または阻止するために、本ペプチドを含み、さらに場合によって1つまたは2つ以上の他の抗ウイルス剤を含む身体用潤滑剤組成物で用いることができる。さらにまた、本発明のペプチドを含むローション、クリームおよびゲルは、ヘルペスウイルスのアウトブレークに由来する病巣に局所的に塗布するために利用することができる。典型的には、添加物および賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で表皮への局所投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0026】
口内の局所投与(例えば頬側または舌下投与)に適した医薬組成物には、芳香性基剤(例えばショ糖、アラビアゴムまたはトラガカントゴム)中に本ペプチドを含むロゼンジ;不活性基剤(例えばゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアラビアゴム)中に本ペプチドを含むトローチ;および適切な液体担体中に活性な成分を含む口内洗浄液が含まれる。口内局所投与用医薬組成物は、所望の場合は侵入強化薬剤を含むことができる。典型的には、添加物および賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で局所経口投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0027】
直腸投与に適した医薬組成物は、本発明のペプチドを固体または半固体(例えばクリームまたはペースト)の担体またはビヒクルと一緒に含む。例えば、そのような直腸用組成物はユニットドース座薬として提供できる。適切な担体またはビヒクルにはカカオ脂および当分野で通常的に用いられる他の物質が含まれる。典型的には、添加物および賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で直腸投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0028】
ある実施態様にしたがえば、膣投与に適した本発明の医薬組成物は、本発明のペプチドを当分野で公知の担体と一緒に含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーとして提供される。或いは、膣投与に適した組成物は液体または固体投薬形でデリバーすることができる。典型的には、添加物および賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で膣投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0029】
鼻内投与に適した医薬組成物もまた本発明に包含される。そのような鼻内組成物は、ビヒクル中の本発明のペプチドおよび液体スプレー、分散性粉末または点鼻薬をデリバーするために適切な投与装置を含む。点鼻薬は、水性または非水性基剤(1つまたは2つ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁剤をまた含む)を用いて処方できる。液体スプレーは、便利には加圧パック、注入器、ネブライザー、またはペプチドを含むエーロゾルをデリバーする他の便利な手段からデリバーされる。加圧パックは、適切な発射薬、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または当分野で周知の適切な他のガスを含む。エーロゾル投薬はバルブを提供することによって制御し、計測量のペプチドをデリバーすることができる。或いは、吸入または注入投与用医薬組成物は、乾燥粉末組成物、例えばペプチドと適切な粉末基剤(例えばラクトースまたはデンプン)のパウダーミックスの形で提供することができる。そのような粉末組成物は、ユニット投薬形(例えばカプセル、カートリッジ、ゼラチンパックまたはブリスターパックで)で提供することができ、それらから吸入装置または注入装置により粉末を投与できる。典型的には、添加物および賦形剤などが、それらの意図される使用または組成物での機能に適した濃度範囲(前記は製薬業界で周知である)内で鼻内投与用組成物に含まれるであろう。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的な組成物は、1つまたは2つ以上のペプチドを少なくとも約0.01ナノモルから約1モル、好ましくは少なくとも約1ナノモルから約100ミリモルの範囲の濃度で含むことができる。
【0030】
場合によって、本発明の医薬組成物は、例えば併用療法として1つまたは2つ以上の他の治療薬剤を含むことができる。例えば、本組成物は、本発明のペプチドに加えて1つまたは2つ以上の他の抗感染薬剤を含むことができる。前記は例えば、抗ウイルスプロテアーゼ酵素阻害剤(PI)、ウイルスDNAまたはRNAまたは逆転写酵素(RT)ポリメラーゼ阻害剤、別のウイルス/細胞融合阻害剤、ウイルスインテグラーゼ酵素阻害剤、ウイルス/細胞結合阻害剤、ウイルスまたは細胞ヘリカーゼ酵素阻害剤、細菌細胞壁生合成阻害剤、ウイルスまたは細菌付着阻害剤、HIV-1 RT阻害剤(例えばテノフォビア、エピビア、ジドブジンまたはスタブジンなど)、HIV-1プロテアーゼ阻害剤(例えばサクイナビア、リトナビア、ネルフィナビア、インジナビア、アンプレナビア、ロピナビア、アタザナビア、チプラナビア、フォサンプレナビアなど)、HIV-1融合阻害剤(例えばエンフビアチド(T20)、PRO-542、SCH-Cなど)、ポリビグアニド(PBG)、ヘルペスウイルスDNAポリメラーゼ阻害剤(例えばアシクロビア、ガンシクロビア、シドフォビアなど)、ヘルペスウイルスプロテアーゼ阻害剤、ヘルペスウイルス融合阻害剤、ヘルペスウイルス結合阻害剤、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤などである。前記追加される治療薬剤は、治療的に有用および有効な濃度範囲内で組成物に含まれるであろう(前記濃度範囲は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。追加される具体的ないずれの治療薬剤の濃度も、当該薬剤が単独療法で使用される典型的範囲と同じ範囲であるか、または前記濃度は、本発明のペプチドと一緒にしたときに相乗作用が存在する場合には単独療法の典型的濃度より低くてもよい。
【0031】
ある実施態様では、本発明は、ヘルペスウイルス感染、例えばHSV-1、HSV-2、VZV、EBVまたはHCMV感染を阻止するかまたは前記ヘルペスウイルス感染を治療するために本明細書に記載したペプチドを提供する。
別の特徴では、本発明はまた、少なくとも1つの本発明のペプチドの治療的に有効な量をヘルペスウイルス(例えばHCMV、HSV-1、HSV-2、EBV、VZV、HHV-6、HHV-7およびKSHV感染)に曝露された対象に投与することによって、前記ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する方法を提供する。本発明の方法は、免疫不全の対象を例えばHCMV感染について治療するために特に有効であり得るが、ただし前記に限定されない。本発明の方法では、ペプチドは、好ましくは上記に記載した医薬組成物の形で投与される。本発明のペプチドは、治療的に有用および有効な投薬範囲で対象に投与されるであろう(前記は医療および医薬業界で周知の日常的な方法によって決定される)。例えば、典型的なユニット投薬は、少なくとも約1ミリグラムから約1ミリグラム、好ましくは少なくとも約10ミリグラムから約100ミリグラムの範囲のペプチド量をデリバーするであろう。本ペプチドはシングルユニットドースでまたはマルチユニットドースで投与することができ、前記は固定期間または無制限の期間の間計画にしたがって例えば1時間毎、1日毎、1週間毎、または1ヶ月毎にデリバーされる。具体的な投薬および投与プロトコルは、投薬形、個々のペプチド、感染のタイプ、感染の重症度、対象の身体状況、並びに医療および医薬業界で周知の他の因子に応じて変動するであろう。
【0032】
ある実施態様では、本方法は、本発明のペプチドに加えて1つまたは2つ以上の追加の治療薬剤を、例えば併用療法として投与する工程を含む。例えば、本発明のペプチドは、1つまたは2つ以上の抗感染薬剤、例えば、抗ウイルスプロテアーゼ酵素阻害剤(PI)、ウイルスDNAまたはRNAまたは逆転写酵素(RT)ポリメラーゼ阻害剤(例えばフォスカーネット)、別のウイルス/細胞融合阻害剤、ウイルスインテグラーゼ酵素阻害剤、ウイルス/細胞結合阻害剤、ウイルスまたは細胞ヘリカーゼ酵素阻害剤、細菌細胞壁生合成阻害剤、ウイルスまたは細菌付着阻害剤、HIV-1 RT阻害剤(例えばテノフォビア、エピビア、ジドブジンまたはスタブジンなど)、HIV-1プロテアーゼ阻害剤(例えばサクイナビア、リトナビア、ネルフィナビア、インジナビア、アンプレナビア、ロピナビア、アタザナビア、チプラナビア、フォサンプレナビアなど)、HIV-1融合阻害剤(例えばエンフビアチド(T20)、PRO-542、SCH-Cなど)、ポリビグアニド(PBG)、ヘルペスウイルスDNAポリメラーゼ阻害剤(例えばアシクロビア、ガンシクロビア、バルガンシクロビア(ガンシクロビアのプロドラッグ)、シドフォビアなど)、ヘルペスウイルスプロテアーゼ阻害剤、ヘルペスウイルス融合阻害剤、ヘルペスウイルス結合阻害剤、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤などと一緒に投与することができる。本発明のペプチドとの併用療法、本発明の医薬組成物および本発明の方法で使用するために好ましいいくつかの薬剤には、ガンシクロビア、バルガンシクロビア、シドフォビアおよびフォスカーネットが含まれるが、ただしこれらに限定されない。ペプチドおよび他の治療薬剤を投与するための投薬は、例えばペプチドまたは治療薬剤の比活性、治療されるべき対象の年齢および体の状態、投薬形のタイプ、ヘルペスウイルス感染の重症度、ヘルペスウイルス感染のタイプ(例えばHCMV、HSV-1、HSV-2、EBV、VZV、HHV-6、HHV-7またはKSHV感染)のような因子などによって決められる(前記は医業専門家の通常の技術レベル内である)。他の治療薬の投薬は当該薬剤が単独療法で使用される典型的範囲と同じ範囲であるか、または本発明のペプチドと一緒に投与したときに相乗作用が存在する場合には典型的単独療法の投薬より低くてもよい。
以下の実施例は、本発明の単離ペプチド、医薬組成物および方法の一定の特徴および特性を例示するために提供される。
【実施例1】
【0033】
ペプチドのデザインおよび合成
ウイルスおよび細胞:
緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセットを含むHCMVのTowne株は、Dr. Dan Streblow(Oregon Health Science University)から入手し、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)で増殖させた。ウイルス上清を収集し、遠心して細胞屑を除去し、0.45μmのフィルターに通した。HFF細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリンG(100U/mL)、ストレプトマイシン(100mg/mL)およびGLUTAMAXTM L-グルタミンサプリメント(2mM)(Invitrogen)を補充したダルベッコー改変イーグル培養液(Dulbecco’s modified Eagle medium, DMEM)で増殖させた。
上記に記載したように、ウィムリーホワイト界面疎水性規準(WWIHS)は、折り畳まれていない界面上の場所よりも二重膜貫通ヘリックス構造を好むタンパク質のセグメントを識別する。WWIHSは、アミノ酸配列が脂質膜界面と相互作用する性向を概算するために用いることができる実験的に決定されたアルゴリズムである(55)。MPExコンピュータプログラム(Interface Scale of the Membrane Protein Explorer, version 3.0(以下のurlで入手できる:blanco.biomol.uci.edu/mpex))を用いて、HCMV gBのこれら個々のセグメントを識別した。前記界面規準は、折り畳まれていないペプチド鎖内の残基の水からホスホコリン二重層への輸送自由エネルギーを基準にする。細胞膜の脂質表面と相互作用する強い性向を示すHCMV gBの9つのセグメントを、MPExプログラムを用いて識別した。続いて、長さが19から31アミノ酸残基の範囲のペプチドを設計して調製し、そのようなWWIHSプラス配列のHCMV感染性阻止能力を評価した。合成したペプチドは前記識別したgBのWWIHSプラス領域と類似するが、ただし望ましくないダイマー化を防ぐためにCys残基はAla残基によって置き換えた(例えばCys185、Cys246およびCys250はAlaによって置換した(番号は配列番号:1を基準にする))。
HCMV gB合成ペプチドは、通常の固相N-α-9-フルレニルメチルオキシカルボニル(fmoc)化学反応によって合成し(Genemed Synthesis Inc.(San Francisco, CA))、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した。配列はアミノ酸分析およびエレクトロスプレー質量分析によって確認した。ペプチドのストック溶液は、10%ジメチルスルホキシド(DMSO、質量分析等級):90%(v/v)H2O中で調製した。ペプチド濃度は、芳香族側鎖の280nmにおける吸収によって決定した(SMARTSPEC TM 3000, BioRad, Hercules, CA)。
【実施例2】
【0034】
ウイルス感染のペプチドによる阻止
ヒト包皮線維芽細胞を24ウェルプレートの各ウェルに約3.5 x 105細胞の濃度で感染24時間前に播種した。HFF細胞を1x DPBSで洗浄し、模擬感染を実施するかまたは室温で約90分間ウイルス感染を実施した。前記ウイルス感染には、ある濃度範囲の阻害性ペプチドの存在下で約37℃で約90分プレインキュベートしたHCMVのTowne GFP株を約0.5感染多重度(MOI)で用いた。感染後、ウイルス混合物を除去し、10%FBS完全DMEMを各ウェルに添加し、約48時間約37℃でインキュベートした。感染後約48時間でGFP陽性細胞を蛍光顕微鏡により可視化し、続いてフローサイトメトリーを用いて定量した。結果は図2A−2Dおよび3B(各図のパネルI)に示されてあり、前記ではHCMV感染細胞と比較して有意なGFP陽性細胞数の減少は、*(p<0.05)、**(p<0.01)および***(p<0.001)によって示されている(一方向ANOVAおよびTurkeyの事後検定による)。各図のパネルIIおよびIIIはまた、MacPyMOL(62)およびFreeHand(Macromedia)プログラムを用いて作成した融合後構造におけるHSV-1 gBのリボン状構造を示す。HCMV gBトリマーはパネルIIおよびIIIに示されている。HCMV gBドメインに対応する、HSV-1 gBの種々のドメインを標的とするペプチドは、各図のパネルIIおよびIIIにおいて黒色で示され、矢印で指し示されている。HFF細胞をトリプシン処理し、遠心して1%FBS-ダルベッコーリン酸緩衝食塩水(DPBS)に再懸濁させた。GFP陽性細胞はフローサイトメトリーで定量した(Cytomics FC 500 Beckman Coulter, Fullerton, CA)。
【0035】
WWIHSはまた、代表的なクラスIIウイルス融合タンパク質(デングウイルスE)およびクラスIIIウイルス融合タンパク質を判定し、MPExプログラムにより脂質膜と結びつく潜在能力が高い(特に正の疎水性スコアをもつ)タンパク質内の配列の識別に用いられた。デングウイルスE幹ドメイン配列は正のWWIHS規準スコアを有し、デングウイルスおよび西ナイルウイルスの以前に決定された阻害因子に対応する(41)。クラスIIおよびクラスIIIウイルス融合タンパク質の両方に注目するために、本明細書ではクラスIIIドメインの用語体系を用いる。すなわち4つのドメインはドメインI、ドメインII、ドメインIIIおよびドメインIV(幹ドメイン)と認定される。この統一用語体系は、クラスIIウイルス融合タンパク質との一貫性のために、ドメインIIをクラスIII融合ドメインとして割り当てる(ドメインIIは、Rocheら(24)のVSV G用語体系ではIV、Heldweinら(25)のHSV-1 gB用語体系およびKadlecら(26)のバキュロウイルスの用語体系ではIとしても知られている)。ドメインの末端における小さな調整に加えて、現在のクラスIIIウイルス融合タンパク質の番号付与はまた2つの相互作用するドメインをドメインIIIにまとめる(すなわちRocheのVSV G用語体系ではI+II、HeldweinのHSV-1 gB用語体系およびKadlecのバキュロウイルス用語体系ではIII+IV)。
全体的構造の類似性に加えて、WWIHSプラス配列の分布の類似性もまた存在する。前記類似性には、融合ドメイン(ドメインII)内の少なくとも1つの伸長“融合ループ”、およびドメインIII内の1つまたは2つ以上のWWIHSプラススコア配列が含まれる。ACNPV gp64を例外として、クラスIIおよびクラスIII融合タンパク質は、ドメインIIに隣接する“ヒンジ”領域近くに別のWWIHSプラスのドメインII配列を含む。ヘルペスウイルスgBタンパク質は追加のWWIHSプラス配列をドメインI内に有する。
【0036】
以前の研究によって、ヘルペスウイルスファミリーの種々のメンバーのgBがウイルスの進入で重要な役割を果たすことが示された(30−36)。gBタンパク質はヘルペスウイルスファミリーでもっとも強く保存されたエンベロープタンパク質であり(23, 29)、したがってHCMVのgBはヘルペスウイルス科の他のメンバーのgBと構造的特徴を共有しそうである。ヘルペスウイルスのgB(23, 30, 32)、ラブドウイルスの糖タンパク質(24)およびバキュロウイルスのGP(37)は、エンベロープをもつウイルスの第三のクラスのウイルス融合タンパク質、クラスIIIウイルス融合タンパク質またはペネトレン(38)を含む。クラスIIIウイルス融合タンパク質は、クラスIまたはクラスIIウイルス融合タンパク質で見出される一定の特徴を共有する。クラスIIIウイルス融合タンパク質は、当該タンパク質の融合後の形態中でトリマー化する伸長α-ヘリックスを含む(39, 40, 24)。このことは、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルスおよびコロナウイルス(38)のクラスIウイルス融合タンパク質の融合後の形態について詳しく記載されているとおりである。同様に、フラビウイルスおよびアルファウイルスのクラスIIウイルス融合タンパク質は、主としてβ-シートおよび“融合ループ”で構成される融合ドメインを含む。クラスIIIウイルス融合タンパク質はまた、融合ドメインをクラスIIウイルス融合タンパク質のいくつかの他の特質とともに保有し、これら2つのタンパク質クラスが共通の先祖を共有する可能性を示唆している。
【0037】
WWIHSは、タンパク質の区分および膜境界面への折り畳みの簡便で定量的な説明を提供する。WWIHSスコアプラスのペプチドセグメントはまたタンパク質内の疎水性表面と相互作用することができ、ウイルス融合タンパク質の融合前の形態内でしばしば隔離されている。クラスIIおよびクラスIIIウイルス融合タンパク質の場合、融合ドメイン内の融合ループはしばしば正のWWIHSスコアを有する配列を含む。以前の研究では、正のWWIHSスコアを有するウイルス融合タンパク質内の配列と一致するかまたはオーバーラップする合成ペプチドはときにウイルス進入阻害剤として機能し得ると提唱されている(41−54)。例えばエンフビルチド(RocheのFUZEON(商標)ウイルス阻害剤)は、HIV-1のトランスメンブレンタンパク質(TM)中のWWIHSプラス配列とオーバーラップする36アミノ酸のペプチドである。エンフビルチドは36アミノ酸のペプチドであり、前記は、報告によればHIV-1 gp41の構造的再編成を阻害してHIV-1ビリオンと標的細胞膜との融合を阻止することによって機能する。Brennan-Bensonらが実施した実験では、この薬剤は妊娠時にHIV-1の垂直伝播を阻止するが、胎盤を通過しないことが示された(61)。
【0038】
MPExコンピュータプログラムを用いて、正のWWIHSスコアを示し、したがって細胞膜の脂質二重層と相互作用する性向が強く、HCMVの進入の阻害剤として機能し得るアミノ酸配列HCMV gB(配列番号:1)の領域を識別した。図1は、MPExプログラムによって作成したHCMV gBのWWIHS疎水性図を提供する。有意な正のWWIHSスコアをもつ9つのペプチドを識別した(図1に示した疎水性図の下線部分を参照されたい)。期待したとおり、これらWWIHS配列のいくつかは、HCMV gBの予想される融合ドメイン(予想融合ドメインを含む)と一致した。
有意な正のWWIHSスコアをもつ配列と一致するペプチドを合成し、ヘルペスウイルス(例えばHCMV)によるHCMV感染を阻止するそれらの能力について試験した。1つまたは2つ以上のCys残基を含むセグメントでは、ペプチドの望ましくないダイマー化を防止するために、合成ペプチドではCys残基をAla残基で置換した。合成ペプチドは、その実体を本明細書では“ペプチドxxx−yyy”と表し、式中“xxx−yyy”はHCMV gBの対応する残基を表す(特段の記載がなければ適切な場合にはCysはAlaで置換されている)。
【0039】
HCMV gBで識別された第一のWWIHSプラススコアの配列は、配列番号:1のアミノ酸残基146から200から成るセグメントであった(ΔGスコアは4.33Kcal/mol)。ペプチド評価の目的のために、このアミノ酸セグメントをより小さい2つの部分に分割した。すなわちペプチド146−173(配列番号:2)およびペプチド174−200(配列番号:3)である。HCMV gBの融合ドメイン内の第二の大きなセグメントのΔGスコアは3.39で、これもまたより小さなペプチドに分割した(すなわちペプチド233−263(配列番号:4)およびペプチドを64−291(配列番号:5))。別の融合ドメインと一致するさらに別のペプチド(ペプチド297−315(配列番号:6))もまた、4つのさらに別のペプチド(HCMV gBの他のドメインと一致する)とともに合成した。正のWWIHSスコアを有すると認定された配列番号:1の領域は以下のとおりであった:残基146−173、174−200、233−263、264−291、297−315(前記は融合ドメインに存在する)並びに残基415−433、476−494、573−591および614−632(前記はgBタンパク質の他のドメインに存在する)。表3は、HCMV gBの融合ドメインのWWIHSプラスセグメントを包含する合成ペプチドとともに外側のドメインII由来の1つのペプチド(ペプチド476−494(配列番号:7))のアミノ酸残基配列(一文字形式)を提供する(これらペプチドはヘルペスウイルスに対抗するin vitro評価のために調製した)。
【0040】
表3:選択合成ペプチド
【表3】

【0041】
表3に示した配列では、太字で示したアラニン(A)は、天然のHCMV gB配列のCys(C)のAla(A)による置換を表す。図2A、2B、2Cおよび2Dは、配列番号:2、3、4および5のペプチドのウイルス感染性阻害データを示す。各図のパネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメント(黒色)のおよその配置が矢印で指し示されている。各パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、各パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。
全ての合成ペプチドを以下の濃度で試験した:約100μM、50μM、25μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.3125μM、0.156μMおよび0.078μM。例えば、ペプチド174‐200(配列番号:3)は、濃度100μMで約80%のウイルス感染阻止、さらに濃度5μMおよび2.5μMでそれぞれ51%および62%阻止を示した(図2A)。ペプチド233−263(配列番号:4)は、濃度100μMおよび50μMでそれぞれ約97%および92%阻害効果、さらに濃度2.5μMで約60%阻止を示した(図2B)。濃度100μMのペプチド233−263(配列番号:4)とともにプレインキュベートしたHCMVのTowne株をMOI約0.5で感染させたHFF細胞の代表的な蛍光像および白色光像を感染後約48時間で撮影した(図4)。図4のパネルA−Bは、ペプチド非存在下でHCMVのTowne株を感染させたHFF細胞の代表的な蛍光顕微鏡像および白色光顕微鏡像をそれぞれ示している。パネルC−Dは、濃度100μMのペプチド233−263(配列番号:4)とともにプレインキュベートしたHCMVのTowne株をMOI約0.5で感染させたHFF細胞の代表的な蛍光像および白色光像をそれぞれ示している。図4の画像は、ペプチドが細胞の感染を効果的に阻止したことを視覚的に示している。ペプチド264−291(配列番号:5)単独は約19%から約70.5%(後者は濃度5μM)の阻止を示したが(図2C)、単独で試験したペプチド297−315(配列番号:6)は濃度50μMで約40%の阻止を示した(図2D)。残りのWWIHSプラスのペプチドはいずれも、試験したいずれの濃度においてもHCMV感染の有意な阻止を示さなかった(データは示されていない)。
【0042】
単独で試験した上記記載のペプチドの阻害効果は用量依存性ではない。融合阻止の首尾は、合成ペプチドの生物物理的特性およびそれらの濃度だけでなく、HCMV gBの結合ポケットのサイズおよび形状にも大いに左右される。
全ての合成ペプチドを単独で試験した後、2つのペプチドペアを組み合せて評価した。図3Aおよび3Bは、2つのペプチドの組合せについてのウイルス感染阻止データを示す。各図のパネルIIおよびIIIはHCMV gBトリマーのリボン状構造を示し、ペプチドセグメント(黒色)のおよその配置が矢印で指し示されている。各パネルIIは、細胞膜と接触するトリマーの末端から見た図を示し、各パネルIIIは、その右側で細胞膜と接触する末端をもつトリマーの側面図を示す。ペプチド174−200(配列番号:3)およびペプチド233−263(配列番号:4)は、一緒に試験したとき、各々50μMの濃度で約42%阻止を提供し(図3A)、相乗的態様では作用しなかった。この結果は、gBトリマー形成および融合事象(多段工程を含む)の首尾に要求されるビリオンの必要な構造変化を妨害できないペプチド-ペプチド相互作用によるのかもしれない。ペプチド濃度は、2つのペプチドが相乗的に作用する能力に影響を及ぼし得る1つの因子である。一方のペプチドまたは両方のペプチドの濃度が高すぎると、ペプチドは自己結合して、HCMV gBの推定的融合ループと干渉しHCMVビリオンと脂質膜との融合を阻止する能力を低下させる可能性がある。対照的に、濃度が低すぎると、感染阻止に必要なペプチドの相互作用(gBのHSPGへの結合、宿主細胞の細胞表面レセプターとの結合、細胞膜の脂質界面との結合、gBのトリマー化、または他のエンベロープ糖タンパク質と前記との結合)が達成できず、したがって感染をもたらす。
【0043】
驚くべきことに、2つのペプチドによる感染の相乗的阻止が1つのペプチド組み合せで観察された。図3Bに示すように、ペプチド264−291(配列番号:5)およびペプチド297−315(配列番号:6)の組合せは、濃度5μMおよび50μMでそれぞれ約53%および40%の最大阻止を示し、一方、この組み合わせは各々125nMの濃度で約67%阻止を示した。これら2つのペプチドが融合プロセスの別個の工程でHCMV進入を阻止することは可能である。これらペプチドはHCMV gBの結合ポケットと相互作用することによってビリオン:細胞膜融合を阻害すると考えられる。
いくつかの薬剤(ガンシクロビア、その経口プロドラッグのバルガンシクロビア、フォスカーネット、シドフォビアおよびフォミビルセンを含む)がHCMV関連疾患の治療に承認された。これら薬剤のいずれも(フォミビルセンを除く)共通の標的(ウイルスDNAポリメラーゼ)を有する(27)。上記に列挙した抗HCMV薬は、薬剤特異的副作用だけでなく臨床的に関連する薬剤耐性HCMVの出現も引き起こす(28)(前記副作用には白血球減少症、血小板減少症、貧血、骨髄形成不全、下痢および腎障害性が含まれる)。本発明のペプチドはこれら承認薬に対して有用な代替物を提供する。さらにまた、本発明のペプチドはこれらの薬剤と併用して用いることができる。
本発明の阻害性ペプチドはヘルペスウイルス感染(特にHCMV感染)に対して新規な治療薬を提供する。これらの抗ウイルス薬剤を抗ウイルス治療として用いて、妊婦および新生児のウイルス負荷を軽減できる。どのようにしてウイルスが妊娠中に胎児に感染するかは明らかではないが、いくつかの研究は、HCMVによる胎盤感染が胎児へのウイルスの伝播前に発生することを明らかにし、母親から胎児へのHCMVの垂直伝播における胎盤の役割を示唆している。さらにまた、胎盤のウイルス感染は、HCMVの一次感染を示す女性の15%で生じる妊娠早期の偶発的流産にも関係があった(57, 58)。妊娠中のHCMV感染から生じる胎盤の病変はまた、早産、子宮内発育制限(IUGR)または子癇前症を引き起こし得る(57, 59, 60)。
【0044】
本発明のペプチドは単独で用いることができるが、また、母親から子供への伝播予防での抗ウイルス療法として或いはHCMV感染新生児の治療で用いられる他の承認済み治療薬剤と併用して用いることができる。本発明のペプチドを土台にした抗ウイルス薬剤は、ウイルスコードタンパク質による活性化、細胞性酵素による更なるリン酸化またはウイルスDNAポリメラーゼによる増殖ウイルスDNAへの取り込みを必要としないであろう。したがって理論的には、それらは既存のFDA承認治療薬の重大な問題である薬剤特異的耐性を引き起こさないであろう。なぜならばそれら治療薬は異なる作用メカニズムを利用するからである。さらにまた、ペプチドの毒性を試験するために実施した細胞生存率アッセイの結果では、我々の実験で試験した最高の濃度でもペプチドによる細胞処理に起因する統計的に有意な毒性は全く示されていない。結果として、これら合成ペプチドを用いる治療に起因する副作用または毒性はありそうにない。
ヒトヘルペスウイルス1 gBのアミノ酸残基168−186および346−360に広がるアミノ酸残基配列を有するペプチド(HSV-1 gB、配列番号:8)(Akkarawongsaと共同研究者らが開発(56, 73))は、HSV-1感染を阻止すると報告されている。図5に示したHSV-1とHCMVのリボン状構造によって示されるように、HCMV gBセグメント297−315はHSV-1 gBの346から360のセグメントと類似する。この類似性のために、本発明のペプチド、特に配列番号:1の残基297−315の全部もしくは部分を含むペプチドまたはその変種は、HSV-1を阻害する活性を有すると予想される。さらにまた、HCMV gBペプチド476−494(配列番号:7)(gB94(gB94の残基496から510)およびgB95(gB95の残基501−515)中のオーバーラップする阻害性ペプチドの領域と一致する)は、HSV-1による感染を阻止するであろうと予想される。その確認として、これらのペプチドはたとえWWIHSがプラスではなくとも、それらはHSV-1に対して阻害性であることが観察された。HCMV gBの残基476−494に広がるHCMV gBセグメント(配列番号:1)(伸長α-ヘリックスを含むトリマー化ドメインと一致する)は正のWWIHSスコアをもたない。このセグメントに一致するペプチド(ペプチド476−494、配列番号:7)をHCMVのTowne株-GFPに対して試験した。このペプチドは高い試験濃度では全く阻害活性を示さなかったが、しかしながらHCMV感染細胞の数は、このペプチドの濃度が低下するにつれて減少した。このペプチドはHCMV gBのトリマー化ドメインと一致するので、高濃度では、この個々のペプチドは自己凝集し、融合を阻害することができないという可能性がある。
【0045】
HSV-1による感染を阻止するHCMV gBの能力を評価するために、Vero細胞を24ウェルプレートの各ウェルに約1.5 x 105細胞の濃度で感染前に24時間プレートした。この細胞を洗浄し、さらに模擬感染させるか、またはある範囲の濃度の4つの異なる合成ペプチドと約37℃で約90分プレインキュベートしたHSV-1 McIntyre株(ATCC)を約MOI 0.001にて室温で約90分ウイルス感染させた。ウイルスに曝露した後、ウイルス混合物を除去し、細胞を1%メチルセルロース含有2%FBS MEMで重層した。細胞を約37℃で約48時間インキュベートした。約48時間後、細胞を固定してクリスタルバイオレットで染色し、風乾した。図6は染色細胞像を示す。
図6では、各処置は三つ組で実施した:A=培養液、B= MOI 0.001のHSV-1、C=100μMペプチドおよびウイルス、D=50μMペプチドおよびウイルス、E=25μMペプチドおよびウイルス、F=10μMペプチドおよびウイルス、G=5μMペプチドおよびウイルス、H=2.5μMペプチドおよびウイルス。HCMV gBペプチド174−200(配列番号:3)、ペプチド233−263(配列番号:4)、およびペプチド264−291(配列番号:5)(前記はHCMV gBのドメインIIの部分に一致する)は各々HSV-1感染を阻止する。ペプチド476−494(配列番号:7)はHCMV gBのトリマー化ドメインと一致する(前記トリマー化ドメインは、HCMVビリオンと宿主細胞の脂質膜との融合時のHCMV gBホモトリマー形成で重要な伸長α-ヘリックスを含む)。HSV-1 gBタンパク質の領域496−510および501−515に広がるオーバーラップする阻害性HSV-1ペプチド(配列番号:8)は、HCMV gBペプチド476−494(配列番号:7)と類似する。予想したように、HCMVペプチド476−494(配列番号:7)は約2.5μMの濃度でもっともよく作用した。
【実施例3】
【0046】
HCMV TRpMIA株の阻害
臨床的に重要なHCMV(HCMV TRpMIA)を阻害する本発明のペプチドの能力を査定するために、ペプチド174−200(配列番号:3)、ペプチド233−263(配列番号:4)およびペプチド264−291(配列番号:5)を、上記のHCMV Towne株について実施例2で述べたアッセイ条件と同じ条件下でHFF細胞のHCMV TRpMIA感染の阻止について試験した。具体的には、HFF細胞を感染後約24時間で96ウェルプレートに約10,000細胞/ウェルの濃度でプレートした。個々の阻害性ペプチドは、約0.078μMから約100μMの範囲の種々の濃度でプレインキュベートしたHCMV TRpMIAの0.5 MOIに対して評価した。これらのアッセイから得られた結果は、ペプチド174−200、ペプチド233−263およびペプチド264−291についてそれぞれ図13、図14および図15に示されている。HCMVの感染の程度は、感染後24時間で前初期1(IE-1)またはIE-2 HCMVタンパク質を発現する細胞の数の判定によって決定した。無処置コントロールHCMV感染細胞と比較して、IE-1、IE-2またはその両方について陽性細胞の数における有意な減少をもたらす処置は、*(p<0.05)、**(p<0.01)および***(p<0.001、一方向ANOVAおよびTurkeyのポスト検定)によって示されている。ペプチド233−263(配列番号:4)の変種および誘導体もまた調製し同じアッセイで試験した。試験した変種および誘導体の配列は表4に示されている。配列番号:4に対する付加または改変は太字で示されている。
【0047】
表4:ペプチド233−263の変種および誘導体
【表4】

【0048】
表4で明らかなように、ペプチド233−263.1は、N末端に配列番号:1の残基230−232が添加された配列番号:4を含み、ペプチド233−263.2は、N末端に配列番号:1の残基227−232が添加された配列番号:4を含み、ペプチド233−263.3は、C末端に配列番号:1の残基264−266が添加された配列番号:4を含み、ペプチド233−263.4は、N末端に配列番号:1の残基230−232が添加され、C末端に配列番号:1の残基264−269が添加された配列番号:4を含み、ペプチド233−263.5は、Glu12がAlaによって置換された配列番号:4を含み、ペプチド233−263.6は、C末端に添加されたPro残基を有する配列番号:4を含み、ペプチド233−263.7は、C末端に添加されたGly残基を有する配列番号:4を含み、ペプチド233−263.8は、C末端に添加された配列GRKKRRQRRRP(配列番号:10)を有する配列番号:4を含み、さらにペプチド233−263.9は、C末端に添加された配列RRRRRRRRR(配列番号:9)を有する配列番号:4を含む。
図13のデータは、ペプチド174−200は25μM(**、p<0.01信頼レベル)、50μM(*、p<0.05信頼レベル)、および100μM(***、p<0.001信頼レベル)の濃度で有意な感染阻止を示すことを表している。
図14のデータは、ペプチド233−263は5μM(*、p<0.05信頼レベル)、10μM(***、p<0.001信頼レベル)、25μM(***、p<0.001信頼レベル)、50μM(***、p<0.001信頼レベル)、および100μM(***、p<0.001信頼レベル)の濃度で有意な感染阻止を示し、ほぼ完全な阻止は50から100μMで示されることを表している。
図15のデータは、ペプチド264−291は50μM(*、p<0.05信頼レベル)、および100μM(*、p<0.05信頼レベル)の濃度で有意な感染阻止を示すことを表している。
図16のデータ(ペプチド233−263.9を用いて得られた)は、ペプチド233−263のこの改変型は、驚くべきことに25μMから100μM(***、p<0.001信頼レベル)の濃度で非常に顕著な、ほぼ完全な感染阻止を示すことを表しており、図14に示したペプチド233−263を用いて得られた結果を超えて顕著に改善されている。
ペプチド233-263.1、233-263.2、233-263.3、233-263.4、233-263.5、233-263.6、233-263.1.8は各々、ペプチド233−263と比較してHCMV TRpMIAによる感染の阻止の効果はより低かったが、各ペプチドはコントロールと比較してある程度の阻止レベルは確かに示した。
DMSO中のペプチド溶液で実施した毒性アッセイは、DMSO溶媒が24時間のプレインキュベーション中にHFF細胞の生存率にある程度の負の効果を有する可能性があることを示した。
全ての参考文献(本明細書に引用した刊行物、特許出願および特許を含む)は、各参考文献が個々におよび具体的に参照により含まれることを指示されたかのように、かつその全体が本明細書に示されたかのように同程度に参照により本明細書に含まれる。
本発明の好ましい実施態様(本発明を実施するために発明者らが知る最良の態様を含む)が本明細書に記載されている。これら好ましい実施態様の変型は、前述の記載を熟読するとき当業者には明白となろう。本発明者らはそのような変型を適切な場合に当業者が利用することを予測し、さらに本発明者らは本明細書に具体的に記載した態様とは別の態様で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、関係法が許容するように、添付の特許請求の範囲に列挙した対象項目の全ての改変および等価物を包含する。さらにまた、その可能な変型の全てにおける上記に記載の成分のいずれの組み合わせも、本明細書に特段の指示がないかぎりまたは文脈上明瞭に矛盾しないかぎり本発明に包含される。
【0049】
参考文献












【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのウィムリーホワイト界面疎水性規準(WWIHS)プラスのヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質B(HCMV-gB)配列セグメントを含むアミノ酸残基配列を有する単離ペプチドであって、各WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントが、配列番号:1の残基146から315に由来するか、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から315の変種配列に由来する、連続する少なくとも8つのアミノ酸残基かつ60を超えないアミノ酸残基から成る、前記単離ペプチド。
【請求項2】
各WWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントが以下から成る群から独立に選択される、請求項1に記載の単離ペプチド:
(a)配列番号:1の残基146から200に由来するか、または配列番号:1の残基146から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から200の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基;
(b)配列番号:1の残基174から200に由来するか、または配列番号:1の残基174から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基174から200の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基;
(c)配列番号:1の残基233から263に由来するか、または配列番号:1の残基233から263に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基233から263の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基;
(d)配列番号:1の残基264から291に由来するか、または配列番号:1の残基264から291に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基264から291の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基;および
(e)配列番号:1の残基297から315に由来するか、または配列番号:1の残基297から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基297から315の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基。
【請求項3】
ペプチドのN末端アミノ基が、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、巨大分子基および追加のペプチド配列から成る群から選択される部分と結合している、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項4】
ペプチドのC末端カルボキシル基が、アミン、疎水基、巨大分子基および追加のペプチド配列から成る群から選択される部分と結合している、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項5】
WWIHSプラスセグメントが追加のペプチド配列とそのC末端で結合しており、前記追加のペプチド配列が配列番号:9を含む、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項6】
WWIHSプラスセグメントが追加のペプチド配列とそのN末端またはC末端で結合している、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項7】
ペプチドがホモデティックな環状ペプチドまたはヘテロデティックな環状ペプチドである、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項8】
ペプチドが少なくとも1つのD-アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項9】
少なくとも1つのヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質B(HCMV-gB)配列セグメントを含むアミノ酸残基配列を有する単離ペプチドであって、前記ペプチドの各HCMV-gB配列セグメントが、以下から成る群からそれぞれ独立に選択されるHCMV-gBの部分の連続する少なくとも15のアミノ酸残基から成る、前記単離ペプチド:
(a)配列番号:1の残基146から200に由来するか、または配列番号:1の残基146から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から200の配列変種に由来する連続残基;
(b)配列番号:1の残基174から200に由来するか、または配列番号:1の残基174から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基174から200の配列変種に由来する連続残基;
(c)配列番号:1の残基233から263に由来するか、または配列番号:1の残基233から263に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基233から263の配列変種に由来する連続残基;
(d)配列番号:1の残基264から291に由来するか、または配列番号:1の残基264から291に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基264から291の配列変種に由来する連続残基;
(e)配列番号:1の残基297から315に由来するか、または配列番号:1の残基297から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基297から315の配列変種に由来する連続残基;および
(f)配列番号:1の残基476から494に由来するか、または配列番号:1の残基476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基476から494の配列変種に由来する連続残基。
【請求項10】
ペプチドが、配列番号:1の残基174から200に由来するか、または配列番号:1の残基174から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基174から200の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項11】
ペプチドが、配列番号:1の残基233から263に由来するか、または配列番号:1の残基233から263に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基233から263の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項12】
ペプチドが、配列番号:1の残基264から291に由来するか、または配列番号:1の残基264から291に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基264から291の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項13】
ペプチドが、配列番号:1の残基297から315に由来するか、または配列番号:1の残基297から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基297から315の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項14】
ペプチドが、配列番号:1の残基476から494に由来するか、または配列番号:1の残基476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基476から494の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項15】
ペプチドが、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に対して少なくとも70%の配列同一性を有する配列変種から成る群から選択されるアミノ酸残基配列を有するHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項16】
配列変種が、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7と保存的置換のみにより相違する、請求項15に記載の単離ペプチド。
【請求項17】
ペプチドのN末端アミノ基が、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基および巨大分子基から成る群から選択される部分と結合している、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項18】
ペプチドのC末端カルボキシル基が、アミン、疎水基および巨大分子基から成る群から選択される部分と結合している、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項19】
HCMV-gB配列セグメントが追加のペプチド配列とそのN末端またはC末端で結合している、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項20】
HCMV-gB配列セグメントが追加のペプチド配列とそのC末端で結合しており、前記追加のペプチド配列が配列番号:9を含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項21】
ペプチドがホモデティックな環状ペプチドまたはヘテロデティックな環状ペプチドである、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項22】
ペプチドが少なくとも1つのD-アミノ酸残基を含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項23】
請求項1に記載のペプチドを医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤と一緒に含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する医薬組成物。
【請求項24】
請求項9に記載のペプチドを医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤と一緒に含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する医薬組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の単離ペプチドの治療的に有効な量をヘルペスウイルスに曝露された対象に投与する工程を含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する方法。
【請求項26】
ヘルペスウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ヘルペスウイルスがHSV-1である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
対象が免疫不全である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
請求項9に記載の単離ペプチドの治療的に有効な量をヘルペスウイルスに曝露された対象に投与する工程を含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する方法。
【請求項30】
ヘルペスウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ヘルペスウイルスがHSV-1である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
対象が免疫不全である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
ペプチドが、配列番号:1の残基146から315に由来するか、または配列番号:1の残基146から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有する配列番号:1の残基146から315の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るWWIHSプラスHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1および9のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項34】
ペプチドが、配列番号:1の残基174から200に由来するか、または配列番号:1の残基174から200に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基174から200の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1、9および33のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項35】
ペプチドが、配列番号:1の残基233から263に由来するか、または配列番号:1の残基233から263に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基233から263の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1、9、33および34のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項36】
ペプチドが、配列番号:1の残基264から291に由来するか、または配列番号:1の残基264から291に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基264から291の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1、9および33から35のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項37】
ペプチドが、配列番号:1の残基297から315に由来するか、または配列番号:1の残基297から315に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基297から315の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1、9および32から36のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項38】
ペプチドが、配列番号:1の残基476から494に由来するか、または配列番号:1の残基476から494に対し少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ保存的置換のみによりそれと相違する配列番号:1の残基476から494の配列変種に由来する、連続する少なくとも15の残基から成るHCMV-gB配列セグメントを含む、請求項1、9および32から37のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項39】
ペプチドのN末端アミノ基が、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基および巨大分子基から成る群から選択される部分と結合している、請求項1、9および32から38のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項40】
ペプチドのC末端カルボキシル基が、アミン、疎水基および巨大分子基から成る群から選択される部分と結合している、請求項1、9および32から39のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項41】
HCMV-gB配列セグメントが追加のペプチド配列とそのN末端またはC末端で結合している、請求項1、9および32から40のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項42】
HCMV-gB配列セグメントが追加のペプチド配列とそのC末端で結合しており、さらに前記追加のペプチド配列が配列番号:9を含む、請求項1、9および32から41のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項43】
ペプチドがホモデティックな環状ペプチドまたはヘテロデティックな環状ペプチドである、請求項1、9および32から42のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項44】
ペプチドが少なくとも1つのD-アミノ酸残基を含む、請求項1、9および32から43のいずれか1項に記載の単離ペプチド。
【請求項45】
請求項1、9および32から44のいずれか1項に記載の単離ペプチドを医薬的に許容できる担体、ビヒクルまたは希釈剤と一緒に含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する医薬組成物。
【請求項46】
請求項1、9および32から44のいずれか1項に記載の単離ペプチドの治療的に有効な量をヘルペスウイルスに曝露された対象に投与する工程を含む、ヘルペスウイルス感染を治療、予防または阻止する方法。
【請求項47】
ヘルペスウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヘルペスウイルスがHSV-1である、請求項46および47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
対象が免疫不全である、請求項46から48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
請求項1、9および32から44のいずれか1項に記載の単離ペプチドの、対象のヘルペスウイルス感染治療における使用。
【請求項51】
ヘルペスウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
ヘルペスウイルスがHSV-1である、請求項50および51のいずれか1項に記載の使用。
【請求項53】
対象が免疫不全である、請求項50から52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
対象のヘルペスウイルス感染治療のための医薬組成物の製造における、請求項1、9および32から44のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項55】
ヘルペスウイルスがヒトサイトメガロウイルスである、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
ヘルペスウイルスがHSV-1である、請求項54および55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
対象が免疫不全である、請求項54から56のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
相乗的組合せとして少なくとも2つのペプチドを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項59】
2つまたは3つ以上のペプチドの相乗的組合せ物が対象に投与される、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−509432(P2013−509432A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537122(P2012−537122)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054743
【国際公開番号】WO2011/053798
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(502137178)ザ アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンド (5)
【Fターム(参考)】