説明

ベッド装置

【課題】弾性体ユニットが本来持つ寝心地感を保ちながら、生体情報を高精度で収集することが可能なベッド装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のベッド装置は、相互に独立し且つ個々的に変形可能な弾性体を備える弾性体ユニットと、弾性体に設けられ生体により発生する圧力を検出する少なくとも一個の圧力検出部と、圧力検出部から出力された生体の圧力信号に基づき、生体情報を検知する生体情報検知手段と、を有することを特徴とする。これにより、弾性体ユニットが本来持つ自然な寝姿勢や体圧分散性といった基本特性をそのまま発揮でき、寝心地感を最大限に保つことができる。また、圧力検出部は弾性体に設けられ、独立した弾性体同士が隣接した弾性体からの影響を受けにくく、生体の特定部位からの圧力信号を高精度で検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスが本来持つ寝心地感を保ちながら、生体情報を高精度で収集することが可能なベッド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療などにおける検査もしくは診断において、受検対象となる患者に直接に検出器を取付けて心拍あるいは呼吸などの生体信号を測定する方法が一般的に行われている。患者の人体に直接検出器を取り付けたり、もしくは検出器を取り付けるための補助手段などを設置したりすることにより、患者に身体的及び心理的な圧迫感を与えてしまうことがある。このため、自然な測定結果が得られないことが多く、検出器を長時間患者の身体に装着する場合などは患者にとって苦痛となる。また睡眠中の患者の心拍あるいは呼吸などの生体信号情報を入手しようとすると、患者が眠っている間にずっと検出器を装着している必要があり、患者の自然な睡眠が阻害されると同時に、本来の状態の測定データが得られない恐れもある。また、常時生体信号測定による観察が必要な場合には、患者にとっては更なる苦痛となる。故に、この問題を解決しようとする研究は近年注目されるようになった。
【0003】
例えば、特許第3419732号(以下、特許文献1と称する)は、空気式音センサーを使用した生体情報収集装置を開示している。具体的には、特許文献1は、ベッドを構成する上面の板の下に、気密性を有する部材からなる空気袋を配置し、ベッドの上に居る生体の体重により空気袋内の空気圧の変動を検出する方法である。
【0004】
また、特開2002−58653号(以下、特許文献2と称する)は、中空チューブを使用した生体信号検出装置を開示している。具体的には、特許文献2は、ベッドの上部に弾性中空チューブを水平方向に配置している。利用者の体重により中空チューブが変形し、チューブに接続された微差圧変化センサーで圧力変動を検出する方法である。
【0005】
また、特許第3513497号(以下、特許文献3と称する)は、空気マットを使用した生体情報収集装置を開示している。具体的には、特許文献3は、複数の独立した空気室を有する空気マットに、体重による空気圧変動が気流となり、共通のパイプを介してセンサーまで伝達して圧力変動を検出する方法である。
【特許文献1】特許第3419732号公報
【特許文献2】特開2002−58653号公報
【特許文献3】特許第3513497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、板部材の上に寝ることで硬さが使用者に不快感を与えてしまい、また、使用者の体にあった体圧分散や寝姿勢といった特性を得ることが期待できず、長時間の使用に不向きであるという問題がある。また、特許文献2に開示された技術は、弾性を有する中空チューブを利用して使用者の体圧を測定する仕組みであるが、特許文献1と同様に、就寝時に使用者に異物感を与えてしまうといった問題が解決されていない。さらに、特許文献3に開示された技術は、複数個の空気室の内部空気を等しくなるように保持し、かつそれを外気圧よりプラスに維持することで弾力を保つようにする機構を持つ必要がある。換言すると、特許文献3は前述した必要とする機構を持つために、エアーマット内部に支持材を入れることで弾性のある形状を保持する構造を取っているが、やはり構造の複雑さからコスト高となる上に、空気室を保持する必要性に変わりはないため、マットレスに本来必要とされる自然な寝姿勢、体圧分散性といった機能が期待できない。また、支持材をマットレスの下に配置した場合、構造的に厚さが必要となるが、現実では、ベッド装置構造の厚さを設けるには限界がある。従って、センサー配置場所の自由度がないことにも繋がっている。
【0007】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、弾性体ユニットが本来持つ寝心地感を保ちながら、生体情報を高精度で収集することが可能なベッド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベッド装置は、相互に独立し且つ個々的に変形可能な弾性体を備える弾性体ユニットと、弾性体に設けられ生体により発生する圧力を検出する少なくとも一個の圧力検出部と、圧力検出部から出力された生体の圧力信号に基づき、生体情報を検知する生体情報検知手段と、を有することを特徴とする。これにより、弾性体ユニットを構成する変形可能な弾性体は相互に独立して配置され、安定した形状及び弾力性を保つことができる。つまり、ベッド装置に弾性体を用いることによってマットレスが本来持つ自然な寝姿勢や体圧分散性といった基本特性がそのまま発揮でき、寝心地感を最大限に保つことができる。このため、より自然な眠る状態を使用者に与えることができ、使用者にとって異物感などの不快感を覚えなくなり、マットレスが持つ本来の機能を十分に発揮することができる。
【0009】
また、本発明のベッド装置の圧力検出部は、弾性体の上部、下部、内部のうち、少なくとも一方に設けられていることが好ましい。つまり、弾性体の上部、下部、内部のうち、少なくとも一方に少なくとも一個の圧力検出部を設けることにより、生体の特定部位により発した圧力を正確に検出することができる。即ち、正確に生体からの圧力信号を感知し、圧力を発した生体の部位を特定することができる。さらに、圧力検出部は弾性体の上部、下部、または内部に設けられ、独立した一個一個の弾性体同士が隣接した弾性体からの影響を受けにくいため、隣接された弾性体の上部、下部、または内部にある圧力検出部は相互に影響しにくくなっている。このため、生体の特定部位、例えば心拍数を検知するため心臓に近い部位などからの生体圧力信号を検出するとき、特定部位からの高精度の圧力信号を得ることができる。即ち、特定部位以外の部位からの圧力信号の干渉を大きく抑えることができる。特に、ダブルサイズのベッド装置では、使用者(生体)が二人の場合、近傍にいる人の影響を少なくすることができ、正確の個人生体情報を検出することができる。さらに、圧力検出部が直接生体に接触しないため、非拘束で生体情報が収集可能となる。
【0010】
本発明のベッド装置における圧力は、生体の体重、体動、呼吸、心拍のうちの少なくとも一方であることが好ましい。
【0011】
本発明のベッド装置の弾性体は、支持層の上面から突出するように設けられており、圧力検出部は、支持層の下部に設けられていることが好ましい。これにより、圧力検出部が弾性体ユニットに取り付けることが容易になり、弾性体ユニットにおいて、弾性体及び支持層に圧力検出部を同時に取り付けることが可能となる。
【0012】
本発明のベッド装置の圧力検出部は、弾性体ユニットにおいて弾性体ユニットの長手方向及び/または横方向に二箇所以上に分けられ、それぞれ独立に生体により発生する圧力を検出可能に設置されていることが好ましい。本発明のベッド装置を二人が使用した際、横方向に隣接して眠っている二人の体動情報を独立した圧力検出部で検出することができる。つまり、二人の体動よる振動信号を相互に影響せずに検出することができる。また、複数の箇所に圧力検出部を分けて設置することにより、呼吸、脈動、心拍などの特定の部位の振動発生源を個別に検出することができる。
【0013】
本発明のベッド装置の支持層の上方から視認する平面視において、柱状弾性体は千鳥配列とされていることが好ましい。
【0014】
本発明のベッド装置の弾性体は柱状、または球状であることが好ましい。弾性体は柱状である場合では、角柱形状、円柱形状、上端面が大径で下端面が小径となる逆円錐台形状、上端面が小径で下端面が大径となる円錐台形状、または樽形状のうちのいずれか一つの形状であることができる。また、弾性体は球状である場合では、球状、半球状などの形状とすることができる。さらに、弾性体の形状はこれらに限定されるものではなく、弾性体ユニットの上面を一つの平面に形成できる形状であれば良い。
【0015】
本発明のベッド装置の弾性体はエラストマー樹脂が使用されていることが好ましい。エラストマー樹脂のような弾力性に優れたものを使用することにより、マットレスの自然な寝姿勢や体圧分散特性を向上することができる。なお、本発明の柱状弾性体に使用された部材エラストマー樹脂に限らず、弾力性に優れ、マットレスの風合いや寝心地感を生かせる素材であればよい。また、本発明のベッド装置では、コイルスプリングを封入した袋を弾性体とし、コイルスプリングを封入した袋を複数個、マトリックス状に配列して弾性体ユニットを構成することもできる。
【0016】
本発明のベッド装置の生体情報検知手段は、圧力検出部で出力された生体圧力信号に基づき、生体情報を演算する演算部を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明のベッド装置の生体情報検知手段は、二箇所以上に設置された複数個の圧力検出部から出力された生体圧力信号により出力S/N比が算出され、出力S/N比を比較して高い出力S/N比を有する圧力検出部を優先的に選択する選択部が備えられていることが好ましい。なお、S/Nは、シグナル(S)とノイズ(N)の比を指すものであり、シグナル(S)は検出対象となる人体により発生する圧力信号を表し、ノイズ(N)は検出対象となる人体により発生する圧力信号以外の雑音信号を表すものである。これにより、圧力検出部で検出された体動(生体圧力)信号を演算部により生体情報として算出することができる。また、本発明のベッド装置の生体情報検知手段は、選択部を有することにより、二箇所以上に設置された複数個の圧力検出部から出力された生体圧力信号により出力S/N比が算出され、出力S/N比を比較して高い出力S/N比を有する圧力検出部を優先的に選択することができる。つまり、出力S/N比の高い圧力検出部が常に選択され、検出精度に有利である。
【0018】
本発明のベッド装置の生体情報検知手段は、生体情報演算部で算出された生体情報に基づき、生体状態を調整する生体状態調整部を有することが好ましい。これにより、算出された生体情報に基づき、生体の状態を、例えば睡眠環境を制御することにより調整することができる。なお、睡眠環境というのは、睡眠時の室温度、照明光度などの要素をいい、空調、または照明器具の電源操作を制御することにより室温度、照明光度など睡眠に影響する要素を調整することができる。つまり、生体状態調整部は、検出した生体情報を生体状態の調整にフィードバックすることができる。
【0019】
本発明のベッド装置の圧力検出部は圧電フィルムからなることが好ましい。圧電フィルムなどの圧力に反応して電子信号として出力できる部材を使用することにより、高い生体情報検出精度を有しながら、さらに圧電フィルム自体が極めて薄いという特徴から、設置されやすく、ベッド装置のデザイン性に有利である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のベッド装置によれば、弾性体ユニットを使用することにより、マットレスが本来持つ自然な寝姿勢や体圧分散性といった基本特性を保ちながら、寝心地感を最大限に保つことができる。このため、より自然な眠る状態を使用者に与えることができ、使用者にとって異物感などの不快感を覚えなくなり、マットレスが持つ本来の機能を十分に発揮することができる。また、弾性体ユニットに、一個以上の圧力検出部を設けることにより、独立した部位の生体の圧力を正確に検出することができ、正確に生体の圧力を感知し、圧力を発した生体の部位を特定することができる。さらに、独立した弾性体同士が隣接した弾性体からの影響を受けにくく、生体の特定部位から高精度の圧力信号を得ることができ、対象特定部位以外の部位(場所)からの圧力信号の干渉を大きく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のベッド装置の概略構成を図1、図2に示す。図1、図2に示すように、本発明のベッド装置は、主にベッド本体101と、ベッド本体101に内蔵された弾性体ユニット1と、弾性体ユニット1に取り付けられた感圧センサー2と、感圧センサー2から出力された生体信号を検知する生体情報検知手段3とで構成されている。なお、感圧センサー2は本発明の圧力検出部を構成するものである。
【0022】
ベッド本体101は、マットレスベース部材102と、マットレスベース部材102の上面側をカバーするクッション体104と、ベッドフレーム105(図2に示す)とからなる。また、マットレスベース部材102の中央部には、弾性体ユニット1を収納する凹状を成す収納部103が設けられている。さらに、マットレスベース部材102、弾性体ユニット1及びクッション体104を包囲する袋状を成す外装体(図示せず)が備えられている。収納部103はウレタンボードなどで形成されている。外装体は表地、裏地、側地を有することができる。
【0023】
図3、図4は弾性体ユニット1の拡大図(側面図、正面図)である。図3、図4に示すように、弾性体ユニット1は、板状の支持層11と支持層11に支持され、支持層11の上面111より突出するように設けられた複数の柱状弾性体12とから構成されている。支持層11は平板状である。支持層11に支持された円柱形状を成す複数の柱状弾性体12から柱状弾性体群が形成されている。なお、柱状弾性体12は支持層11に設けられ、柱状弾性体12の下面122は支持層11の上面111に接着されて固定されている。
【0024】
また、図4に示す弾性体ユニット1の正面図から分かるように、柱状弾性体12は千鳥配列で支持層11の上端面111に配置されている。千鳥配列では、1列目N1において矢印Y方向(弾性体ユニット1の長さ方向)に隣接する柱状弾性体12間に、2列目N2の柱状弾性体12が配置されている。さらに、2列目N2において矢印Y方向に隣接する柱状弾性体12間に、3列目N3の柱状弾性体12が配置されている。他の列についても同様である。このような千鳥配列では、矢印Y方向において、隣接する柱状弾性体12間の距離LAが長めに確保されるため、矢印Y方向において柱状弾性体12の本来の変形能が良好に確保される。
【0025】
図5は、本実施形態例の変形形態を示す弾性体ユニット1の側面図である。図5から分かるように、支持層11の下面112には、上面111と同様に柱状弾性体12が設けられ、さらに柱状弾性体12の上面121(図示下方)には感圧センサー2を構成する感圧フィルム21が取り付けられている。この際、人体の同一部位に対して二個の感圧センサー2から圧力信号を検出することとなるため、検出感度の向上に期待できる。また、感圧センサー2は柱状弾性体12の上面121に直接ではなく、間接的に取り付けることもできる。例えば、図3に示したように、支持層11を介して感圧センサー2は柱状弾性体11の下部に取り付けられることができる。また、感圧センサー2を柱状弾性体12の内部に取り付けることも可能である。
【0026】
ここで、柱状弾性体12はゲル塊状を成す軟質(低硬度)のエラストマーを基材として形成されている。エラストマーは、例えば、スチレン系ベースポリマーなどのベースポリマーにオイル(流体)を含有させた成形品(例えば押出成形品)をカットして形成されている。図5はエラストマーの特性の一例を示す。特性は図6に限定されない。図6の特性線SAに示すように、荷重が増加すると、変位が次第に増加する。従って高さ方向の荷重の負荷に伴い、柱状弾性体12は変形する。
【0027】
また、柱状弾性体12の硬度は、アスカーFP10、支持層11の硬度は196Nである。ここで、柱状弾性体12の硬度はデュロメータ(スプリング式のゴム硬度計)で測定されたものであり、支持層11の硬度はJIS K6401に規定されたウレタンフォーム硬度基準である。
【0028】
また、柱状弾性体12の上面121、または支持層11の下面112には、感圧センサー2が取り付けられている。感圧センサー2は圧電フィルム21で構成されている。なお、圧電フィルム21は弾性体ユニット2の柱状弾性体12の上面側121、或いは支持層12の下面側112の何れか一方に取り付けることもできる。感圧センサー2を構成する圧電フィルム21は弾性体ユニット1の上下面(柱状弾性体12の上面121、支持層11の下面112)において、弾性体ユニット1の長手方向(Y方向)及び横方向(X方向)に配置されている。なお、本実施形態の弾性体ユニット1の長手方向Yはベッド装置の長手方向と同一であり、横方向Xはベッド装置の横方向と同一である。
【0029】
圧電フィルム21で感知された生体の振動信号は、信号伝送ケーブルC1(図1に示す)を介して生体情報検知手段3に出力される。生体情報検知手段3は、振動信号を演算する演算部31、振動信号のS/N比を算出し、高いS/N比を有する振動信号を選択する選択部32、また出力された生体情報に基づき、外部へ生体情報を出力し、生体状態を影響する周囲環境要素、例えば温度、照明度などを制御する生体状態調整部33を備えている。生体状態調整部33は信号転送ケーブルC2を介して、外部の空調装置(図示せず)、照明器具(図示せず)などに接続され、空調装置、照明器具の電源を制御することができる。つまり、生体周囲の温度、照明度などを制御することにより、生体の状態を理想(予想)状態に調整することができる。
【0030】
具体例として、本実施形態のベッド装置の圧力検出部を構成する感圧センサー2は以下のように配置される。なお、感圧センサー2の配置方法は下記方法に限らない。
【0031】
1)単一感圧センサー配置
図7は一個の感圧センサー2により圧力検出部が構成されている例を示している。図8は本配置方法の側面図を示したものである。図7、図8に示したように、感圧センサー2はベッド本体101に設置された弾性体ユニット1のほぼ中央部に配置される。なお、人体P(生体)の寝姿勢に併せて、人体Pの心臓部、または胸部より近い位置に感圧センサー2が配置されている。本実施例では、弾性体ユニット1はベッド本体101の中央部に設置されているため、感圧センサー2は弾性体ユニット1の前方(人体頭部方向)から1/3の位置の中央部に配置されている。このように、心臓部、または胸部より近い位置に感圧センサー2を配置することにより、人体Pの心拍数や、呼吸数などの生体情報をより正確に検出することができる。
【0032】
2)複数感圧センサー配置
図9は複数の感圧センサー2により圧力検出部が構成されている例を示している。図10は本配置方法の側面図を示したものである。図8、図9から分かるように、四つの感圧センサー2A,2B,2C,2Dはベッド本体101に設置された弾性体ユニット1において、弾性体ユニット1の中央部を中心とした広い範囲内に所定間隔を隔てて配置されている。本実施例では、感圧センサー2A,2Bはベッド本体101の長手方向(Y方向)において、人体Pの心臓部、または胸部とほぼ同じ位置に配置されている。感圧センサー2C,2Dは、人体Pの心臓部、または胸部より後方(足部方向)に配置されている。このように、独立された感圧センサー2A,Bは、ベッド装置に眠っている使用者(人体P)の寝姿勢に関係なく、正確に人体Pの心拍数や、呼吸数などの生体情報を検出することができる。つまり、独立した感圧センサー2A,2Bがベッド本体101の長手方向において、人体Pの心臓部、または胸部の同一位置に所定間隔を隔てて配置されているので、ベッド装置に眠っている人体Pが寝姿勢を変えても、人体Pの心臓部や胸部は感圧センサー2A,または2Bの中の一方かの感圧センサーに近い位置にあることとなる。このため、高い精度で人体Pの心拍数や、呼吸数などを検出することができる。また、感圧センサー2A,2Bより後方に配置されている感圧センサー2C,2Dは、人体Pの心拍や、呼吸などの振動信号から離れ、体動を検出しやすい、つまり、独立した柱状弾性体12(図3、または図4に示す)に感圧センサー2(A,B,C,D)が設置されているため、感圧センサー2間は相互的に影響しにくくなっている。このため、感圧センサー2C,2Dは人体Pの体動などの生体情報を検出する際、人体Pの心拍や、呼吸などからの不要な信号(この場合、心拍や呼吸などの振動信号は体動信号に対して干渉信号となる)の検出が抑えられる。よって、体動信号の検出を高精度で行うことができる。また、感圧センサー2A,2Bのように、感圧センサー2C,2Dは所定間隔を隔てて配置されているため、人体Pの寝姿勢を変えても、感圧センサー2C,2Dの中の一方かの感圧センサーに近い位置にあることとなり、正確に体動信号を検出することができる。
【0033】
また、より精密に人体Pの生体情報を検出するために、感圧センサー2の数を4つ以上に増し、感圧センサー2の配置をより細密的に広い範囲内に分布することにより、より精密に生体情報を検出することができる。図11、図12に示すように、弾性体ユニット1に感圧センサー2A,2B,2C,2D,2F,2G,2H,2J,2Iを所定間隔で隔てて配置することにより、使用者(人体P)の体形、寝姿勢に関係なく、検出センサー2は常に人体Pの検出対象となる部位に密着して生体情報信号を検出することができる。
さらに、図13、図14に示すように、ダブルサイズのベッド装置には、二箇所以上に感圧センサー2を設置し、感圧センサー2A,2Bの配置間隔を所定距離で隔てることにより、使用者は二人(人体P1,P2)のときでも、独立した柱状弾性体12(図3、図4に示す)の特性を活かして人体P1、P2からの振動による生体情報を正確に検出することができる。つまり、独立した柱状弾性体12に複数の感圧センサー2を配置することにより、人体P1、P2それぞれの体動情報が干渉されずに検出することができる。また、感圧センサー2を一人に対して、複数個以上に設置することにより、より精密な振動信号が得られ、より正確な生体情報を検出することができる。
【0034】
生体情報検知手段3は、感圧センサー2で出力された生体振動信号に基づき、生体情報を演算する演算部31を備えている。また、生体情報検知手段3は、二箇所以上に設置された複数個の感圧センサー2から出力された生体振動信号により出力S/N比が算出され、出力S/N比を比較して高い出力S/N比を有する感圧センサー2を優先的に選択する選択部32が備えられている。感圧センサー2で検出された体動信号が演算部31により生体情報として算出される。また、生体情報検知手段3は、選択部32を有し、二箇所以上に設置された複数個の感圧センサー2から出力された生体振動信号により出力S/N比が算出され、出力S/N比を比較して高い出力S/N比を有する感圧センサー2が優先的に選択される。即ち、出力S/N比の高い感圧センサー2が常に選択され、正確に生体情報を検出するのに有利である。
【0035】
また、生体情報検知手段3は、生体情報演算部31で算出された生体情報に基づき、生体状態を調整する生体状態調整部33を備えている。算出された生体情報に基づき、生体の状態を、例えば睡眠環境(光、香り、音、ゆらぎ等)を制御することにより調整される。生体状態調整部33は、検出した生体情報を生体状態の調整にフィードバックされる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のベッド装置は、医療、保健の分野に使用できると共に、将来的に生体情報を利用した他の分野、例えば生体状態に応じた運転方式が自動的に制御される自動車などの分野に利用することも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態のベッド装置の概念図である。
【図2】本実施形態のベッド装置の側面概念図である。
【図3】本実施形態のベッド装置を構成する弾性体ユニットの側面図である。
【図4】本実施形態のベッド装置を構成する弾性体ユニットの平面図である。
【図5】本実施形態のベッド装置を構成する弾性体ユニットの変形形態の側面図である。
【図6】本実施形態のベッド装置を構成する弾性体ユニットに使用されたエラストマー樹脂の特性の一例を示すものである。
【図7】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの正面配置図である。
【図8】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの側面配置図である。
【図9】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの正面配置図である。
【図10】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの側面配置図である。
【図11】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの正面配置図である。
【図12】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの側面配置図である。
【図13】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの正面配置図である。
【図14】本実施形態のベッド装置の感圧センサーの側面配置図である。
【符号の説明】
【0038】
101:ベッド本体 102:マットレスベース部材
103:収納部 104:クッション体 105:ベッドフレーム
1:弾性体ユニット 11:支持層 12:柱状弾性体
111:支持層上端面 112:支持層下端面
121:柱状弾性体上端面 122:柱状弾性体下端面
LA:柱状弾性体間の距離 SA:柱状弾性体の特性線
2:感圧センサー 21:圧電フィルム
3:生体情報検知手段 31:演算部 32:選択部 33:生体状態調整部
C1,C2:信号伝送ケーブル P,P1,P2:生体(使用者)
2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I:感圧センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に独立し且つ個々的に変形可能な弾性体を備える弾性体ユニットと、
前記弾性体に設けられ生体により発生する圧力を検出する少なくとも一個の圧力検出部と、
前記圧力検出部から出力された生体の圧力信号に基づき、生体情報を検知する生体情報検知手段と、
を有することを特徴とするベッド装置。
【請求項2】
前記圧力検出部は、前記弾性体の上部、下部、内部のうち、少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項3】
前記圧力は、生体の体重、体動、呼吸、心拍のうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のベッド装置。
【請求項4】
前記弾性体は、支持層の上面から突出するように設けられており、前記圧力検出部は前記支持層の下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項5】
前記圧力検出部は、前記弾性体ユニットにおいて前記弾性体ユニットの長手方向及び/または横方向に二箇所以上に分けられ、それぞれ独立に生体により発生する圧力を検出可能に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項6】
前記支持層の上方から視認する平面視において、前記柱状弾性体は千鳥配列とされていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項7】
前記弾性体は柱状、または球状であることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項8】
前記弾性体はエラストマー樹脂が使用されていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項9】
前記生体情報検知手段は、前記圧力検出部で出力された生体圧力信号に基づき、生体情報を演算する演算部を有することを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項10】
前記生体情報検知手段は、二箇所以上に設置された前記複数個の圧力検出部から出力された生体圧力信号により出力S/N比が算出され、出力S/N比を比較して高い出力S/N比を有する前記圧力検出部を優先的に選択する選択部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項11】
前記生体情報検知手段は、前記生体情報演算部で算出された生体情報に基づき、生体状態を調整する生体状態調整部を有することを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。
【請求項12】
前記圧力検出部は圧電フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載のベッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−93198(P2008−93198A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278760(P2006−278760)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】