ベッド
【課題】マットの一部を移動させるスライド部を設けたベッドは、このスライド部は左右どちらかに移動するが、スライド部は常にベッド本体に接続しており、介護者の作業の妨げになることがある。また、左右にしか移動しないために、ベッドの設置場所が制限されるという問題がある。
【解決手段】ベッド本体を、上部ベッドと下部ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、さらに、この上部ベッドの利用者の両膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とする。
【解決手段】ベッド本体を、上部ベッドと下部ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、さらに、この上部ベッドの利用者の両膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護老人や病人等(以下利用者という。)が用いることができる介護用のベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベッドで、ベッドのレームが縦方向に上部と下部に分割して分離可能にしたベッドがある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−299833号公報
【特許文献2】特開2002−17794号公報 また、ベッド上で脚を上げられるようにバーが上下動するようにした技術がある(例えば、特許文献3、特許文献4)
【特許文献3】実開昭54−184208号公報
【特許文献4】実開昭61−88726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような上下に分割可能にしたベッドは、要介護老人や病人等が用いた場合に、下腹部洗浄を行うことができないという問題がある。
また、バーを設けるベッドは、バーが邪魔になり、これも要介護老人や病人等が用いた場合に、下腹部洗浄を行うことができないという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ベッド本体を上部ベッド、下部ベッドの独立した二つのベッドに分割し、それぞれの部分を独立して移動可能にすると共に左右に膝上げバーを独立させて設け、両脚を膝の関節部分(ふくらはぎ)から持ち上げることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、ベッド本体を、上部(頭側)ベッドと下部(足側)ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、このシンクに排水口を設け、ホースを接続することによりシンクの水を排出できるようにし、さらに、この上部ベッドの利用者の膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
上記の構成により、本発明は、ベッドを上下部に分割可能にし、その分割した各ベッドの両方共をそれぞれ独立して移動を可能とし、その上部ベッドに設けたシンクおよび両膝上げ台によって、ベッド上で使用者の下腹部に接近した状態で対向して位置することができることになり、介護者は、使
用者の下腹部の洗浄を行うことができることになる。
【0006】
さらに、膝上げ台により脚を上げ、さらに腰を上げた状態にすることができるために、着替えやシーツの交換等の作業を介護者は使用者の身体を片手で支えることなく両手で作業することができることになり各種作業を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は実施例を示す説明図である。
図において、1はベッド本体であり、任意個所、例えば腰付近から頭までの上部ベッド2とそれより脚側の下部ベッド3とに分割し、上下部ベッド2、3はそれぞれ独立したマットレスを載せるフレーム4、5とその四隅にそれぞれ脚部6、7を有し、図2に示す如く、分離が可能となっている。また、両上下部ベッド2、3の脚部6、7にはキャスター8、9を付けておき、それぞれの上下部ベッド2、3を容易に移動できるようにしておくとよい。なお、上記の分割個所は、上記では腰付近としたが、その個所の限るものではなく、それ以外の個所、例えば膝付近でもよく、さらには、大腿部付近や尻付近等でもよいもので、適宜に定めた位置とする。また、両フレーム4、5にはそれぞれマットレスが装着される。
【0008】
これら上部ベッド2と下部ベッド3の両フレーム4、5は、そのフレーム4、5の互いの接合端部に取り付けた係止突起10と係止部11等の任意の接続構造12によって分離および接続が容易に行えるようになっている。この接続構造は説明したような構造に限るものではなく、どのような構造でもよいもので、例えば、一方をほぞ状とし、他方をほぞ穴状とした接続構造を併用してもよい。要は、両上下部ベッド2、3が確実に連結状態が確保でき、また容易に分離できる構造であればどのような構造でもよい。この接続構造12は、図示したような手動構造でもよいが、自動構造としても無論よい。
【0009】
なお、この上部ベッド2および下部ベッド3のそれぞれは、従来からあるようなどのような機能や形式のベッドの構造でよいものである。例えば、マットレスを載せる枠体が所定個所で曲折してマットレスを曲折させることができるように所望個所で回動可能に連続させた枠体をモーターやシリンダ等による適宜な駆動手段で部分的に駆動させる構造としてマットレスを曲折して所望の角度の背もたれを形成する曲折機構や、フレームに上記のような適宜な駆動手段を設けてマットレスを載せる枠体を上下動させてマットレス面を所望の高さにする高さ調節機構、さらにはマットレスを載せる枠体の一端を回動可能にフレームに取り付け、フレームに上記のような適宜な駆動手段を設けることによってマットレス全体を所望の角度に傾斜させることができる角度調節機構等の既存の各種機構を有したものでよい。それら機構の操作は、手元に配線を伸ばした図示しない操作具のスイッチ操作でモーターやシリンダを操作して自動操作することができるものである。例として、曲折機構により曲折させて椅子のようにした場合を図3に示す。
【0010】
13は足載せ台であり、上部ベッド2のフレーム4の後端に、マットレス面に座った状態で丁度足を載せることができる高さとなるような位置にほぼ水平に配置できるように後部を回動可能に取り付け、不使用時にはその後部の回動部によりフレーム4の後端側に起こして畳めるようにしてある。なお、この足載せ台13の上面は足を載せても冷たくないように多少のクッション性を有する表面としておくとよい。
【0011】
14はシンクであり、上部ベッド2のフレーム4の後部端から頭部側に所定幅にわたってマットレスの下に位置するように設けたものである。このシンク14は、任意個所、本実施例では中央に排水口15が設けてあり、ホースを接続することによりシンクの水を近くに置いたバケツ等に排出することができるようにしてある。
したがって、通常時はシンク14上にはマットレスを載せてシンク14を覆った状態でベッド状態であり、必要に応じてそのマットレスを外すことによりシンク14が現われるようにしてある。なお、本実施例では、そのシンク14の上端部に上記の曲折機構が設けてあり、この曲折機構によって曲折した図3の状態は、丁度シンク上のマットレスに座った状態となっている。
【0012】
つぎに、上記下部ベッド3もしくは上部ベッド2(本実施例では上部ベッド2)の利用者の両方の膝の裏側付近に位置する個所のベッドの両側にそれぞれ片持ち状態で膝上げ台16を対向するように配置する。
この膝上げ台16はそれぞれ利用者の膝の裏側から下部(ふくらはぎ)を支えることができる長さであり、少なくとも上部をクッション材等の軟質材(クッション)によって覆ったような構造である。
【0013】
それぞれの膝上げ台16は上部ベッド2のマットレス端に設けた収納部17に納まるようになっている。したがって、膝上げ台が収納部に納まったときには膝上げ台の上面とマットレスの上面とは同一面となるようにしてある。
これら各膝上げ台16の支持軸は、上部ベッド2に取り付けたモーターやシリンダ等の駆動機構18によって駆動する軸、腕もしくはアングル等の連結体19の先端に支持されている。したがって、これら膝上げ台16は上部ベッド2と一体になっており、上部ベッド2の移動に伴って移動することになる。
【0014】
各膝上げ台16は、図示する如く、それぞれ駆動機構によって独立して駆動できるものであるが、上部ベッド2の下部中程に一つの駆動機構を設け、この駆動機構によって駆動されるベッド幅方向に配置した連結軸の両端に膝上げバーの両側に連結する連結体19をそれぞれ同時に駆動するようにして両膝上げ台を同時に上下動させるようにしてもよい。
なお、上記の如く、この駆動機構18はモーターやシリンダ等どのような構造のものでもよく、例えば、モーター軸に連結した膝上げ台16の支持軸を回動可能に連結して上下に駆動できるようにしたり、シリンダの場合にはシリンダ軸に直接膝上げ台16の支持軸を回動可能に連結したような構造である。
【0015】
膝上げ台を傾斜させることができるようにすることにより、利用者の身体を横にしたり寝返りをうつような作動が容易に行えることになる。
さらに、膝上げ台16は、その端部をそれぞれ連結体19や駆動機構等から外したりて取り付けたりして着脱することができるようにしてもよい。
以上の構成によると、駆動機構18を駆動することによって、両膝上げ台16は、連結体19を介して上下動することができ、駆動機構18の駆動を停止することによって所望の位置(角度)でそれぞれ膝上げ台16を止めることができる。
【0016】
なお、この駆動機構18は、上記した如く、通常にある一般的な駆動機構でよく、その選ばれた駆動機構によって膝上げ台16に動力を伝える連結体19の構造は任意に選択され、本実施例では連結体19は回転支点を有するアングル構造のものを示したが、腕、ねじ軸、回転軸等の構造が駆動機構の構造および配置位置によって任意に選択される。
以下に上記の構成の作用を説明する。
【0017】
通常時は、図1に示す如く、上部ベッド2と下部ベッド3が接続構造12によって一体に接続されており、一般のベッドと同様な扁平な状態であって通常の状態で利用者は利用することができる。
利用者がベッド上で仰臥状態で膝を立てたい場合や介護者が利用者のパジャマの着替えをさせたいような場合、利用者は膝の裏側を膝上げ台16の上に位置させ、図示しない操作具のスイッチをONすることにより、駆動機構18を駆動させて膝上げ台14を上昇させる。これによって、両膝を持ち上げることができ、所望の高さでスイッチをOFFすることによってその高さを維持する。そこで、膝上げバーはその高さにあってもよく、また、その状態を維持する筋力があったり利用者が所望する場合には元の位置に下げて戻して膝は立てた状態にしてもよい。これによって、所望の角度(高さ)に膝を立てた状態にすることができる。この状態は着替え等もさせ易い。
【0018】
さらに、両膝を持ち上げる高さは、膝をわずかに上げる高さや、脚全体が浮き、さらに腰を浮かせることができる高さ等任意である。このようにして時々脚の位置を換えたり膝を立てたりすることにより、とこずれを防止することもできる。
また、駆動機構の取り付け状態によって左右の膝上げバーを同時もしくは個別に操作して上下動させるようにすることができ、これによって両脚を同時に上げたり下げたり、片脚づつを上げたり下げたりすることが可能となる。
【0019】
左右の高さを変えることにより寝返りを打ったり、身体を横に向けたりすることが容易となる。
つぎに、例えば、利用者のおむつ、パジャマさらにはシーツを交換するような作業の場合、介護者はベッドの側方からでは作業がしにくい。そのような場合、接続構造12の接続状態を解除することによって上部ベッド2と下部ベッド3は分離が可能となる。そこで、分離した上部ベッド2もしくは下部ベッド3の任意の一方もしくは両方のベッドを任意の位置に移動させることによって上部ベッド2の下方に下部ベッド3のない空間を形成することができる。
【0020】
さらに、介護者は、おむつ取り替え操作等に際して、両ふくらはぎをそれぞれ膝上げ台16上に載せた状態にして両方の膝上げ台を上げることにより、両膝上げ台の間の中央部が空いているために、図4に示す如く、介護者の面前に膝上げ台がなく空間になるために介護作業の邪魔にならない。
このように介護者は、利用者の下腹部に対して正面に障害物がない状態で向かい合うことができるために、介護者は無理のない姿勢で膝上げ台16によって上げられた腰下の空間を利用して両手を使っておむつを取り替えることができ、今までのように利用者の腰を片方の手で上げたり支えたりして片手で取り替え作業をすることなく、両手を同時に用いて十分な作業を行うことができる。
【0021】
このとき、介護者は、足載せ台13に膝をついて作業をすることもでき、中腰の体勢での作業をしなくてすむことになる。
つぎに、上記した脚を上げた状態にすると、差込便器を容易に使用することができる。図4に示す如く、上部ベッド2を平らな状態もしくは多少起こした状態にして膝上げ台16を上げて使用者の膝を上げることによって腿を上げ、差込便器20を差し込む。この状態でも排便を行うことができるが、さらに、曲折機構により上部ベッド2を折り曲げると共に膝上げ台16を下げて椅子状にする。これによって、図5に示す如く、使用者は差込便器20の上に座ることができ、通常の排便姿勢で腹圧のかかる排便を行うことができることになり、使用者には無理なく差込便器により通常の排便ができることになる。これによって、介護作業が極めて行い易くなり、介護者の負担が大きく軽減される。
【0022】
また、上記説明でも明らかな如く、図3に示す如く、椅子としても使用することができるもので、曲折機構により上部ベッド2を折り曲げると共に膝上げ台16を下げて椅子状態にする。このとき、足載せ台13を下げて足を載せることができる。これによって、寝たきりになっている使用者も容易に座る状態に戻すことができ、体力の回復を図ることができる。さらには、これによって食事やその他椅子に座ってできるような作業が可能となる。
【0023】
つぎに、下腹部洗浄を説明する。
下腹部洗浄は、図6、図7に示す如く、脚を上げた状態で、シンク14上のマットレスを除去してシンク14を出し、排出口15に接続したホースの開口端をバケツ等に入れる。腰の下からシンクの端部にかけてマットレス上に合成樹脂等による防水シート21を敷く。
【0024】
そこで、ポータブル型の温水シャワー供給装置22を用いて介護者は下腹部を洗浄を行うことができる。この温水シャワー供給装置は、一般に市販されて使用されているものでよく、例えば、水を入れた容器内に温度設定可能な水中ヒータと水中ポンプがあり、排水ホースの先端にハンドシャワーを取り付けたものをそのままもしくは適宜改良して用いることができる。
【0025】
図示する如く、膝上げ台16は、左右からそれぞれの脚を膝から足さきにかけて上げ、下腹部に介護者が正面に障害物がない状態で向かい合うことができるために、介護者は無理のない姿勢で下腹部洗浄を行うことができる。
また、洗浄に用いた汚水は、すべてシンク14に落ち、ホースを介してバケツに流出する。
【0026】
洗浄終了後は、シンク14を洗い流し、水分をふき取って、その上にマットレスを設置してベッド状態に戻す。
なお、差込便器を用いる場合、上記したマットレス上で用いるのではなく,シンク上のマットレスを除去してシンクを露出させてそのシンク上に差込便器を置いて使用してもよい。
【0027】
以上の如く、上記した各種作業後は、上部ベッド2と下部ベッド3をもとの対向位置に戻し、接続構造12で両者を連結することによって一体とする。その状態で、駆動機構18を作動させて膝上げ台16を下ろし、収納部17に納めることによって通常の平坦状のベッドに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例を示す説明図
【図2】分離状態を示す説明図
【図3】上部ベッドを椅子状に折り曲げた状態の説明図
【図4】排便作動状態を示す説明図
【図5】排便作動状態を示す説明図
【図6】シンク上のマットを外した状態の説明図
【図7】下腹部洗浄の作動状態を示す説明図
【符号の説明】
【0029】
1 ベッド本体
2 上部ベッド
3 下部ベッド
4 フレーム
5 フレーム
6 脚部
7 脚部
8 キャスター
9 キャスター
10 係止突起
11 係止部
12 接続構造
13 足載せ台
14 シンク
15 排出口
16 膝上げ台
17 収納部
18 駆動機構
19 連結体
20 差込便器
21 防水シート
22 温水シャワー供給装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護老人や病人等(以下利用者という。)が用いることができる介護用のベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベッドで、ベッドのレームが縦方向に上部と下部に分割して分離可能にしたベッドがある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−299833号公報
【特許文献2】特開2002−17794号公報 また、ベッド上で脚を上げられるようにバーが上下動するようにした技術がある(例えば、特許文献3、特許文献4)
【特許文献3】実開昭54−184208号公報
【特許文献4】実開昭61−88726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような上下に分割可能にしたベッドは、要介護老人や病人等が用いた場合に、下腹部洗浄を行うことができないという問題がある。
また、バーを設けるベッドは、バーが邪魔になり、これも要介護老人や病人等が用いた場合に、下腹部洗浄を行うことができないという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ベッド本体を上部ベッド、下部ベッドの独立した二つのベッドに分割し、それぞれの部分を独立して移動可能にすると共に左右に膝上げバーを独立させて設け、両脚を膝の関節部分(ふくらはぎ)から持ち上げることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、ベッド本体を、上部(頭側)ベッドと下部(足側)ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、このシンクに排水口を設け、ホースを接続することによりシンクの水を排出できるようにし、さらに、この上部ベッドの利用者の膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
上記の構成により、本発明は、ベッドを上下部に分割可能にし、その分割した各ベッドの両方共をそれぞれ独立して移動を可能とし、その上部ベッドに設けたシンクおよび両膝上げ台によって、ベッド上で使用者の下腹部に接近した状態で対向して位置することができることになり、介護者は、使
用者の下腹部の洗浄を行うことができることになる。
【0006】
さらに、膝上げ台により脚を上げ、さらに腰を上げた状態にすることができるために、着替えやシーツの交換等の作業を介護者は使用者の身体を片手で支えることなく両手で作業することができることになり各種作業を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は実施例を示す説明図である。
図において、1はベッド本体であり、任意個所、例えば腰付近から頭までの上部ベッド2とそれより脚側の下部ベッド3とに分割し、上下部ベッド2、3はそれぞれ独立したマットレスを載せるフレーム4、5とその四隅にそれぞれ脚部6、7を有し、図2に示す如く、分離が可能となっている。また、両上下部ベッド2、3の脚部6、7にはキャスター8、9を付けておき、それぞれの上下部ベッド2、3を容易に移動できるようにしておくとよい。なお、上記の分割個所は、上記では腰付近としたが、その個所の限るものではなく、それ以外の個所、例えば膝付近でもよく、さらには、大腿部付近や尻付近等でもよいもので、適宜に定めた位置とする。また、両フレーム4、5にはそれぞれマットレスが装着される。
【0008】
これら上部ベッド2と下部ベッド3の両フレーム4、5は、そのフレーム4、5の互いの接合端部に取り付けた係止突起10と係止部11等の任意の接続構造12によって分離および接続が容易に行えるようになっている。この接続構造は説明したような構造に限るものではなく、どのような構造でもよいもので、例えば、一方をほぞ状とし、他方をほぞ穴状とした接続構造を併用してもよい。要は、両上下部ベッド2、3が確実に連結状態が確保でき、また容易に分離できる構造であればどのような構造でもよい。この接続構造12は、図示したような手動構造でもよいが、自動構造としても無論よい。
【0009】
なお、この上部ベッド2および下部ベッド3のそれぞれは、従来からあるようなどのような機能や形式のベッドの構造でよいものである。例えば、マットレスを載せる枠体が所定個所で曲折してマットレスを曲折させることができるように所望個所で回動可能に連続させた枠体をモーターやシリンダ等による適宜な駆動手段で部分的に駆動させる構造としてマットレスを曲折して所望の角度の背もたれを形成する曲折機構や、フレームに上記のような適宜な駆動手段を設けてマットレスを載せる枠体を上下動させてマットレス面を所望の高さにする高さ調節機構、さらにはマットレスを載せる枠体の一端を回動可能にフレームに取り付け、フレームに上記のような適宜な駆動手段を設けることによってマットレス全体を所望の角度に傾斜させることができる角度調節機構等の既存の各種機構を有したものでよい。それら機構の操作は、手元に配線を伸ばした図示しない操作具のスイッチ操作でモーターやシリンダを操作して自動操作することができるものである。例として、曲折機構により曲折させて椅子のようにした場合を図3に示す。
【0010】
13は足載せ台であり、上部ベッド2のフレーム4の後端に、マットレス面に座った状態で丁度足を載せることができる高さとなるような位置にほぼ水平に配置できるように後部を回動可能に取り付け、不使用時にはその後部の回動部によりフレーム4の後端側に起こして畳めるようにしてある。なお、この足載せ台13の上面は足を載せても冷たくないように多少のクッション性を有する表面としておくとよい。
【0011】
14はシンクであり、上部ベッド2のフレーム4の後部端から頭部側に所定幅にわたってマットレスの下に位置するように設けたものである。このシンク14は、任意個所、本実施例では中央に排水口15が設けてあり、ホースを接続することによりシンクの水を近くに置いたバケツ等に排出することができるようにしてある。
したがって、通常時はシンク14上にはマットレスを載せてシンク14を覆った状態でベッド状態であり、必要に応じてそのマットレスを外すことによりシンク14が現われるようにしてある。なお、本実施例では、そのシンク14の上端部に上記の曲折機構が設けてあり、この曲折機構によって曲折した図3の状態は、丁度シンク上のマットレスに座った状態となっている。
【0012】
つぎに、上記下部ベッド3もしくは上部ベッド2(本実施例では上部ベッド2)の利用者の両方の膝の裏側付近に位置する個所のベッドの両側にそれぞれ片持ち状態で膝上げ台16を対向するように配置する。
この膝上げ台16はそれぞれ利用者の膝の裏側から下部(ふくらはぎ)を支えることができる長さであり、少なくとも上部をクッション材等の軟質材(クッション)によって覆ったような構造である。
【0013】
それぞれの膝上げ台16は上部ベッド2のマットレス端に設けた収納部17に納まるようになっている。したがって、膝上げ台が収納部に納まったときには膝上げ台の上面とマットレスの上面とは同一面となるようにしてある。
これら各膝上げ台16の支持軸は、上部ベッド2に取り付けたモーターやシリンダ等の駆動機構18によって駆動する軸、腕もしくはアングル等の連結体19の先端に支持されている。したがって、これら膝上げ台16は上部ベッド2と一体になっており、上部ベッド2の移動に伴って移動することになる。
【0014】
各膝上げ台16は、図示する如く、それぞれ駆動機構によって独立して駆動できるものであるが、上部ベッド2の下部中程に一つの駆動機構を設け、この駆動機構によって駆動されるベッド幅方向に配置した連結軸の両端に膝上げバーの両側に連結する連結体19をそれぞれ同時に駆動するようにして両膝上げ台を同時に上下動させるようにしてもよい。
なお、上記の如く、この駆動機構18はモーターやシリンダ等どのような構造のものでもよく、例えば、モーター軸に連結した膝上げ台16の支持軸を回動可能に連結して上下に駆動できるようにしたり、シリンダの場合にはシリンダ軸に直接膝上げ台16の支持軸を回動可能に連結したような構造である。
【0015】
膝上げ台を傾斜させることができるようにすることにより、利用者の身体を横にしたり寝返りをうつような作動が容易に行えることになる。
さらに、膝上げ台16は、その端部をそれぞれ連結体19や駆動機構等から外したりて取り付けたりして着脱することができるようにしてもよい。
以上の構成によると、駆動機構18を駆動することによって、両膝上げ台16は、連結体19を介して上下動することができ、駆動機構18の駆動を停止することによって所望の位置(角度)でそれぞれ膝上げ台16を止めることができる。
【0016】
なお、この駆動機構18は、上記した如く、通常にある一般的な駆動機構でよく、その選ばれた駆動機構によって膝上げ台16に動力を伝える連結体19の構造は任意に選択され、本実施例では連結体19は回転支点を有するアングル構造のものを示したが、腕、ねじ軸、回転軸等の構造が駆動機構の構造および配置位置によって任意に選択される。
以下に上記の構成の作用を説明する。
【0017】
通常時は、図1に示す如く、上部ベッド2と下部ベッド3が接続構造12によって一体に接続されており、一般のベッドと同様な扁平な状態であって通常の状態で利用者は利用することができる。
利用者がベッド上で仰臥状態で膝を立てたい場合や介護者が利用者のパジャマの着替えをさせたいような場合、利用者は膝の裏側を膝上げ台16の上に位置させ、図示しない操作具のスイッチをONすることにより、駆動機構18を駆動させて膝上げ台14を上昇させる。これによって、両膝を持ち上げることができ、所望の高さでスイッチをOFFすることによってその高さを維持する。そこで、膝上げバーはその高さにあってもよく、また、その状態を維持する筋力があったり利用者が所望する場合には元の位置に下げて戻して膝は立てた状態にしてもよい。これによって、所望の角度(高さ)に膝を立てた状態にすることができる。この状態は着替え等もさせ易い。
【0018】
さらに、両膝を持ち上げる高さは、膝をわずかに上げる高さや、脚全体が浮き、さらに腰を浮かせることができる高さ等任意である。このようにして時々脚の位置を換えたり膝を立てたりすることにより、とこずれを防止することもできる。
また、駆動機構の取り付け状態によって左右の膝上げバーを同時もしくは個別に操作して上下動させるようにすることができ、これによって両脚を同時に上げたり下げたり、片脚づつを上げたり下げたりすることが可能となる。
【0019】
左右の高さを変えることにより寝返りを打ったり、身体を横に向けたりすることが容易となる。
つぎに、例えば、利用者のおむつ、パジャマさらにはシーツを交換するような作業の場合、介護者はベッドの側方からでは作業がしにくい。そのような場合、接続構造12の接続状態を解除することによって上部ベッド2と下部ベッド3は分離が可能となる。そこで、分離した上部ベッド2もしくは下部ベッド3の任意の一方もしくは両方のベッドを任意の位置に移動させることによって上部ベッド2の下方に下部ベッド3のない空間を形成することができる。
【0020】
さらに、介護者は、おむつ取り替え操作等に際して、両ふくらはぎをそれぞれ膝上げ台16上に載せた状態にして両方の膝上げ台を上げることにより、両膝上げ台の間の中央部が空いているために、図4に示す如く、介護者の面前に膝上げ台がなく空間になるために介護作業の邪魔にならない。
このように介護者は、利用者の下腹部に対して正面に障害物がない状態で向かい合うことができるために、介護者は無理のない姿勢で膝上げ台16によって上げられた腰下の空間を利用して両手を使っておむつを取り替えることができ、今までのように利用者の腰を片方の手で上げたり支えたりして片手で取り替え作業をすることなく、両手を同時に用いて十分な作業を行うことができる。
【0021】
このとき、介護者は、足載せ台13に膝をついて作業をすることもでき、中腰の体勢での作業をしなくてすむことになる。
つぎに、上記した脚を上げた状態にすると、差込便器を容易に使用することができる。図4に示す如く、上部ベッド2を平らな状態もしくは多少起こした状態にして膝上げ台16を上げて使用者の膝を上げることによって腿を上げ、差込便器20を差し込む。この状態でも排便を行うことができるが、さらに、曲折機構により上部ベッド2を折り曲げると共に膝上げ台16を下げて椅子状にする。これによって、図5に示す如く、使用者は差込便器20の上に座ることができ、通常の排便姿勢で腹圧のかかる排便を行うことができることになり、使用者には無理なく差込便器により通常の排便ができることになる。これによって、介護作業が極めて行い易くなり、介護者の負担が大きく軽減される。
【0022】
また、上記説明でも明らかな如く、図3に示す如く、椅子としても使用することができるもので、曲折機構により上部ベッド2を折り曲げると共に膝上げ台16を下げて椅子状態にする。このとき、足載せ台13を下げて足を載せることができる。これによって、寝たきりになっている使用者も容易に座る状態に戻すことができ、体力の回復を図ることができる。さらには、これによって食事やその他椅子に座ってできるような作業が可能となる。
【0023】
つぎに、下腹部洗浄を説明する。
下腹部洗浄は、図6、図7に示す如く、脚を上げた状態で、シンク14上のマットレスを除去してシンク14を出し、排出口15に接続したホースの開口端をバケツ等に入れる。腰の下からシンクの端部にかけてマットレス上に合成樹脂等による防水シート21を敷く。
【0024】
そこで、ポータブル型の温水シャワー供給装置22を用いて介護者は下腹部を洗浄を行うことができる。この温水シャワー供給装置は、一般に市販されて使用されているものでよく、例えば、水を入れた容器内に温度設定可能な水中ヒータと水中ポンプがあり、排水ホースの先端にハンドシャワーを取り付けたものをそのままもしくは適宜改良して用いることができる。
【0025】
図示する如く、膝上げ台16は、左右からそれぞれの脚を膝から足さきにかけて上げ、下腹部に介護者が正面に障害物がない状態で向かい合うことができるために、介護者は無理のない姿勢で下腹部洗浄を行うことができる。
また、洗浄に用いた汚水は、すべてシンク14に落ち、ホースを介してバケツに流出する。
【0026】
洗浄終了後は、シンク14を洗い流し、水分をふき取って、その上にマットレスを設置してベッド状態に戻す。
なお、差込便器を用いる場合、上記したマットレス上で用いるのではなく,シンク上のマットレスを除去してシンクを露出させてそのシンク上に差込便器を置いて使用してもよい。
【0027】
以上の如く、上記した各種作業後は、上部ベッド2と下部ベッド3をもとの対向位置に戻し、接続構造12で両者を連結することによって一体とする。その状態で、駆動機構18を作動させて膝上げ台16を下ろし、収納部17に納めることによって通常の平坦状のベッドに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例を示す説明図
【図2】分離状態を示す説明図
【図3】上部ベッドを椅子状に折り曲げた状態の説明図
【図4】排便作動状態を示す説明図
【図5】排便作動状態を示す説明図
【図6】シンク上のマットを外した状態の説明図
【図7】下腹部洗浄の作動状態を示す説明図
【符号の説明】
【0029】
1 ベッド本体
2 上部ベッド
3 下部ベッド
4 フレーム
5 フレーム
6 脚部
7 脚部
8 キャスター
9 キャスター
10 係止突起
11 係止部
12 接続構造
13 足載せ台
14 シンク
15 排出口
16 膝上げ台
17 収納部
18 駆動機構
19 連結体
20 差込便器
21 防水シート
22 温水シャワー供給装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド本体を、上部ベッドと下部ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、さらに、この上部ベッドの利用者の両膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とするベッド。
【請求項2】
請求項1において、両膝上げ台を一つの駆動機構に連結した連結体に取り付け、両膝上げ台を同時に駆動するようにしたことを特徴とするベッド。
【請求項3】
請求項1において、膝上げ台を駆動機構に連結した連結体に対して着脱可能にしたことを特徴とするベッド。
【請求項4】
請求項1において、上部ベッドのフレームの後端に、マットレス面に座った状態で丁度足を載せることができる高さとなるような位置にほぼ水平に配置できるように後部を回動可能に取り付けたことを特徴とするベッド。
【請求項1】
ベッド本体を、上部ベッドと下部ベッドに分割し、両上下部ベッドはそれぞれ独立したマットレスを載せるフレームと脚部を有し、それぞれ独立して任意の方向に移動可能で、フレームに設けた接続構造によって分離、接続が行える構成とし、上部ベッドのフレームの後部端から所定幅にわたってマットレスの下に位置するようにシンクを設け、さらに、この上部ベッドの利用者の両膝の裏側付近に位置する個所にベッドの両側からそれぞれ所定長さの膝上げ台をベッドの幅方向に先端が対向するように配置し、それぞれの膝上げ台を上部ベッドに取り付けた駆動機構に片持ち状に接続してそれぞれの膝上げ台を上下動可能としたことを特徴とするベッド。
【請求項2】
請求項1において、両膝上げ台を一つの駆動機構に連結した連結体に取り付け、両膝上げ台を同時に駆動するようにしたことを特徴とするベッド。
【請求項3】
請求項1において、膝上げ台を駆動機構に連結した連結体に対して着脱可能にしたことを特徴とするベッド。
【請求項4】
請求項1において、上部ベッドのフレームの後端に、マットレス面に座った状態で丁度足を載せることができる高さとなるような位置にほぼ水平に配置できるように後部を回動可能に取り付けたことを特徴とするベッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−136780(P2008−136780A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328352(P2006−328352)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成18年9月27〜29日 財団法人 保健福祉広報協会主催の「第33回国際福祉機器展 H.C.R.2006」に出品
【出願人】(505276340)株式会社ユニケア (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成18年9月27〜29日 財団法人 保健福祉広報協会主催の「第33回国際福祉機器展 H.C.R.2006」に出品
【出願人】(505276340)株式会社ユニケア (5)
【Fターム(参考)】
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