説明

ベルト伝動システム

【課題】ジャンピングを防止し、ベルトの張力調整を容易にする自動二輪車のベルト伝動システムを実現する。
【解決手段】自動二輪車の後輪駆動に用いられるベルト伝動システム10において、ドライブプーリ12の噛込み側には、ジャンピング防止ローラ20が設けられている。ジャンピング防止ローラ20は、固定式のテンショナ24の一部である。テンショナ24は、ジャンピング防止ローラ20を支持するブラケット26を含む。ブラケット26にはガイド溝26Gが設けられている。ジャンピング防止ローラ20のブラケット26に対する固定位置は、ジャンピング防止ローラ20が、常にジャンピング防止に適した位置にあるように調整される。このため、テンショナ24により、タイミングベルト18のジャンピング防止と張力調整とが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト伝動システムに関し、特に、自動二輪車の後輪駆動用のベルト伝動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車において、原動プーリと従動プーリとに掛け回されたベルトの張力を自動的に調整するベルトテンション装置が知られている(例えば特許文献1)。このようなベルトテンション装置を用いることにより、ベルトの張力を一定に保つことができる。
【0003】
一方、自動二輪車の急減速時等にベルトの歯飛び(ジャンピング)が発生する場合があるため、ジャンピングによるベルトの破損を防止すべく、ジャンピング防止用ローラを設けることが知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005―172103号公報
【特許文献2】特開2000―130525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルト伝動システムにおいて、ベルトの張力を調整するベルトテンション装置を設けた場合においても、ジャンピングを防止することはできない。このため、ジャンピングによって、例えばタイミングベルトの歯欠け、心線の破断等が生じうる。
【0005】
また、ジャンピング防止用ローラによっては、ベルトの張力を自動的に調整することはできない。このため、例えば自動二輪車のベルトの伝動システムにおいて、ジャンピング防止用ローラを設けた場合にあっても、ベルトの張力を調整するには、後輪の位置の調整等の煩雑な作業を必要とする。さらに、後輪の位置をずらした場合、アライメントを正確に調整することが困難である。
【0006】
そこで本発明は、ジャンピングを防止し、ベルトの張力調整を容易にする自動二輪車のベルト伝動システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のベルト伝動システムは、ドライブプーリと、ドリブンプーリと、ドライブプーリとドリブンプーリとに掛け回されたタイミングベルトとを備えた自動二輪車の後輪駆動用のベルト伝動システムである。そしてベルト伝動システムは、ドライブプーリの噛込み側に配置されたジャンピング防止ローラと、タイミングベルトの張力を調整するテンショナとを備えることを特徴とする。
【0008】
ベルト伝動システムにおいては、ジャンピング防止ローラが、テンショナの一部であることが好ましい。そしてこの場合、ジャンピング防止ローラの外周面とドライブプーリの歯先との距離が、タイミングベルトの総厚より小さく、タイミングベルトの背厚以上であることがより好ましい。また、ジャンピング防止ローラの位置が、ジャンピング防止ローラとドライブプーリとの軸間距離を一定に保ちつつ調整可能であることが、より好ましい。
【0009】
テンショナは、例えば、ドライブプーリの噛み出側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジャンピングを防止し、ベルトの張力調整を容易にする自動二輪車のベルト伝動システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明における搬送ベルトの実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のベルト伝動システムを示す側面図である。図2は、図1のII―II線に沿って切断した本実施形態のテンショナの断面図である。
【0012】
ベルト伝動システム10は、自動二輪車(図示せず)の後輪駆動に用いられる。ベルト伝動システム10は、ドライブプーリ12、ドリブンプーリ16、およびドライブプーリ12とドリブンプーリ16とに掛け回されたタイミングベルト18を含む。ドライブプーリ12は、クランク軸14からの動力により矢印Aの示す方向に回転する。そしてこの動力は、タイミングベルト18により、駆動輪である後輪(図示せず)のドリブンプーリ16に伝達され、後輪が回転する。
【0013】
ドライブプーリ12の噛込み側には、ジャンピング防止ローラ20が設けられている。ジャンピング防止ローラ20は、固定式のテンショナ24の一部である。すなわち、本実施形態のジャンピング防止ローラ20は、タイミングベルト18のジャンピングを防止するのみならず、テンショナ24の一部として、タイミングベルト18の背面18Sを押圧して張力を調整する。
【0014】
テンショナ24は、ジャンピング防止ローラ20を支持する板状のブラケット26を含む。ブラケット26にはガイド溝26Gが設けられている。ジャンピング防止ローラ20は、第1および第2の間隙部材34、35を介して、固定用ボルト30と、固定用ボルト30に螺合されるナット32により、ガイド溝26Gに取り付けられている(図2参照)。このときナット32は、ガイド溝26Gに嵌合されている。
【0015】
ジャンピング防止ローラ20のブラケット26に対する固定位置は、ナット32を緩め、ジャンピング防止ローラ20をガイド溝26Gから外した後に、再びガイド溝26Gに固定することにより調整される。このように、ジャンピング防止ローラ20の固定位置をガイド溝26Gに沿うように調整することにより、タイミングベルト18の張力が調整される。
【0016】
なお、ジャンピング防止ローラ20の内部には、ジャンピング防止ローラ20を回転自在に保持する軸受け22が設けられている。このため、ジャンピング防止ローラ20は、回転可能な状態でブラケット26に固定される。ボルト30の軸30A、すなわちジャンピング防止ローラ20の回転軸は、ブラケット26に垂直であり、ジャンピング防止ローラ20の外周面20Sに平行である。
【0017】
図3は、本実施形態のベルト伝動システム10におけるジャンピング防止ローラ20付近を拡大して示す側面図である。
【0018】
ジャンピング防止ローラ20の外周面20Sと、ドライブプーリ12の歯先円12C(歯先)との距離、すなわちプーリ間距離Dは、タイミングベルト18の総厚18Tよりも小さく、かつタイミングベルト18の背厚18R以上であるように、調整されている。このため、ジャンピング防止ローラ20は、タイミングベルト18のジャンピングを確実に防止することができる。
【0019】
なお、タイミングベルト18のジャンピングは、ベルト伝動システム10が設けられた自動二輪車(図示せず)の減速時においては、ドライブプーリ12の噛込み側(上側)において発生し易く、加速時にはドリブンプーリ16(図1参照)の噛込み側(下側)において発生し易い。そしてドライブプーリ12は、ドリブンプーリ16よりも径が小さく歯数が少ないことから、ドライブプーリ12側のジャンピングは、タイミングベルト18の早期破断等をより引き起こし易い。従って、ジャンピング防止ローラ20は、ドライブプーリ12の噛込み側に配置されている。
【0020】
ガイド溝26Gの幅方向の中心線Bは、ドライブプーリ12の回転軸12Aを中心とした円弧の一部である。このようにガイド溝26Gが形成されているため、ジャンピング防止ローラ20の固定位置は、ジャンピング防止ローラ20の回転軸20Aとドライブプーリ12の回転軸12Aとの距離、すなわち、ジャンピング防止ローラ20とドライブプーリ12との軸間距離Dを常に一定に保ちつつ、調整される。
【0021】
このため、ジャンピング防止ローラ20がいかなる固定位置にあるときでも、ジャンピング防止ローラ20とドライブプーリ12のプーリ間距離Dも一定である。従って、ジャンピング防止ローラ20の固定位置に係わらず、タイミングベルト18のジャンピングは確実に防止できる(段落[0018]参照)。なお、図3においては、説明の便宜上、破線で示すガイド溝26Gを除き、ブラケット26は省略されている。
【0022】
以上のように、本実施形態のベルト伝動システム10においては、張力調整機能を兼ね備えたジャンピング防止ローラ20を設けることにより、タイミングベルト18のジャンピングを防止するとともに、タイミングベルト18の張力を容易に調整することができる。さらに、タイミングベルト18の張力の調整と、ジャンピング防止とをテンショナ24のみで可能にすることから、ベルト伝動システム10の構造を簡素化することができる。
【0023】
テンショナ24は、オートテンショナであっても良い。この場合においても、ストッパ(図示せず)を設けること等によりテンションアーム(図示せず)の回転を制御し、テンショナのプーリ(図示せず)とドライブプーリ12とのプーリ間距離は、ジャンピング防止に適した一定の大きさに保たれる。
【0024】
次に、第2の実施形態につき、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図4は、第2の実施形態のベルト伝動システムを示す側面図である。
【0025】
本実施形態のベルト伝動システム40においては、ジャンピング防止ローラ50の位置は調整されず一定であり、ジャンピング防止ローラ50は張力調整機能を有していない。このためベルト伝動システム40では、テンショナ60が、ドライブプーリ12の噛み出側に配置されている。
【0026】
従って、本実施形態のベルト伝動システム40においても、タイミングベルト18のジャンピング防止と、タイミングベルト18の張力の容易な調整とが可能である。また、第1の実施形態に比べると、ベルト伝動システム40の構造を簡素化することはできないものの、ベルト伝動システム40は、ドライブプーリ12の噛み出側にテンショナ60が配置された既存のベルト伝動システムにジャンピング防止ローラ50を後付けすることにより、比較的容易に構成可能であるという利点を有する。
【0027】
ドライブプーリ12、ドリブンプーリ16、タイミングベルト18、ジャンピング防止ローラ20、50、テンショナ24、60の形状、構成等は、いずれの本実施形態に示されたものにも限定されない。例えば、第2の実施形態においても、テンショナ60は、固定式もしくはオートテンショナのいずれであっても良い。また、軸受け22は、図2に例示された転がり軸受け以外のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態のベルト伝動システムを示す側面図である。
【図2】図1のII―II線にて沿って切断した本実施形態のテンショナの断面図である。
【図3】第1の実施形態のベルト伝動システムにおけるジャンピング防止ローラ付近を拡大して示す側面図である。
【図4】第2の実施形態のベルト伝動システムを示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ベルト伝動システム
12 ドライブプーリ
12C 歯先円(歯先)
16 ドリブンプーリ
18 タイミングベルト
20 ジャンピング防止ローラ
20S 外周面
24 テンショナ
40 ベルト伝動システム
50 ジャンピング防止ローラ
60 テンショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブプーリと、ドリブンプーリと、前記ドライブプーリと前記ドリブンプーリとに掛け回されたタイミングベルトとを備えた自動二輪車の後輪駆動用のベルト伝動システムであって、
前記ドライブプーリの噛込み側に配置されたジャンピング防止ローラと、
前記タイミングベルトの張力を調整するテンショナとを備えることを特徴とするベルト伝動システム。
【請求項2】
前記ジャンピング防止ローラが、前記テンショナの一部であることを特徴とする請求項1に記載のベルト伝動システム。
【請求項3】
前記ジャンピング防止ローラの外周面と前記ドライブプーリの歯先との距離が、前記タイミングベルトの総厚より小さく、前記タイミングベルトの背厚以上であることを特徴とする請求項2に記載のベルト伝動システム。
【請求項4】
前記ジャンピング防止ローラの位置が、前記ジャンピング防止ローラと前記ドライブプーリとの軸間距離を一定に保ちつつ調整可能であることを特徴とする請求項2に記載のベルト伝動システム。
【請求項5】
前記テンショナが、前記ドライブプーリの噛み出側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のベルト伝動システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−74648(P2009−74648A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245919(P2007−245919)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】