説明

ベルト伝動装置及びこれに用いる伝動用ベルト

【課題】伝動効率や耐久性を平ベルト並みに改善しつつ、雨水等の付着にも強く安定してベルトの走行状態を維持することのできるベルト伝動装置を、低コストで提供する。
【解決手段】駆動プーリ1及び少なくとも1つの従動プーリ2〜4を平プーリとし、その間の動力の伝達を伝動用ベルトBの略平坦な伝動面b1によって行う。これによりベルト伝動装置Aのコストを大幅に削減でき、伝動効率や耐久性も平ベルト並みに改善できる。一方、ベルト外面側にはその長さ方向に延びる複数の突条82aを設け、これを規制プーリ5,6の周溝5aに係合させて、ベルト幅方向への移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトによる摩擦伝動の技術に関し、特に、伝動面が平坦なベルトの蛇行を防止するための対策に係る。
【背景技術】
【0002】
従来より摩擦伝動用のベルトとしてはVベルトやVリブドベルトが広く用いられており、特にVリブドベルトは、Vベルトと同じく楔効果の得られるものでありながら、比較的柔軟で曲げによるロスが少ないため、例えば自動車の補機駆動装置のように回転速度が高く回転変動も大きいにも拘わらず、省スペースで伝動効率の高いことが求められるベルト伝動装置に好適である。
【0003】
しかしながら、Vリブドベルトを用いた従来のベルト伝動装置では駆動プーリは勿論、従動プーリの殆どもリブドプーリになり、それぞれ高い加工精度を要求されるのみならず加工工数も多くなることから、コスト高になるという問題がある。
【0004】
また、Vリブドベルトは、平ベルトに比べれば曲げによるロスが大きい上に、リブドプーリとの出入りの際にリブ同士の擦れによって摩擦ロスが大きくなり、さらに、厚肉のリブゴム層を介してプーリに巻き付くことから、そのリブゴム層の剪断変形によるロスも大きくなってしまい、平ベルトに比べれば伝動効率が低くなるとともに、発熱によるゴムの劣化も懸念される。
【0005】
しかも、リブゴム層が変形して楔効果を生じるときに、心線の埋設されているゴム層にはベルト幅方向に波打つような変形が生じてしまい、心線の剥離等、種々の不具合を招く虞れがある。楔効果によって衝撃的な荷重に対しても滑りを生じ難いことも却って破損につながることが懸念される。
【0006】
さらに、前記のようにVリブドベルトとリブドプーリのリブ同士が擦れるときに異音を発することがあり、摩耗によってベルトの寿命が短くなるきらいもある。このことは、プーリ軸のずれや撓み等、所謂ミスアライメントによって助長される。
【0007】
以上のようなVリブドベルトに内在する問題点は平ベルトには存在しないが、一方で、平ベルトには前記のミスアライメント等に起因してベルトが走行中に蛇行したり、プーリの片側に寄ったりするという大きな問題がある。
【0008】
この蛇行や片寄りの問題に対しては従来より、平プーリの外周面にクラウンをつけるという対策がよく知られており(例えば特許文献1を参照)、プーリの両側にフランジを設けることも行われているが、いずれも蛇行や片寄りを十分に防げるものではないし、ベルトの一部分に負担が集中するきらいがあって実用性に欠ける。このため平ベルトは、実際には伝動装置において十分に活用されていないのが実情である。
【0009】
このような平ベルトの蛇行等の問題に対し本願の出願人は、ベルトの片寄りを生じたときに、このベルトの張力によってプーリの軸にかかる荷重の位置が変化することに着目し、この荷重を受けたプーリが揺動してベルトに対し斜交いになることによって、その片寄りを戻すようにした新規な機構(蛇行防止プーリ)を提案している(例えば特許文献2を参照)。
【特許文献1】実開昭59−45351号公報
【特許文献2】特開2006−10072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したようにVリブドベルトを用いたベルト伝動装置には、平ベルトを用いたものに比べるとコストや耐久性において未だ不利な点が多く、効率の面でも改善の余地が残されている。一方で平ベルト伝動装置には蛇行という大きな問題があって実用化が進んでいない。
【0011】
この平ベルトの蛇行等の問題について前記提案例(特許文献2)に係る蛇行防止プーリには、それを付加することに伴うコストの上昇という難があり、また、使用環境によっては雨水や汚泥或いは塵埃の付着による蛇行防止機能の低下も懸念される。
【0012】
そこで、本発明の目的は、伝動効率や耐久性を平ベルト並みに改善しつつ、雨水等の付着にも強く安定してベルトの走行状態を維持することのできる伝動装置を比較的低コストにて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために本発明では、動力の伝達をベルトの略平坦な伝動面によって行うようにして、プーリを含めたベルト伝動装置のコストを低下させ、伝動効率や耐久性も平ベルト並みとしながら、ベルトの外面側にはその長さ方向に延びる複数の突条を設けて、これによりベルト幅方向への移動を規制できるようにした。
【0014】
すなわち、本願の請求項1に係る発明は、駆動プーリと少なくとも一つの従動プーリとにエンドレスの伝動用ベルトを巻き掛けてなるベルト伝動装置であって、その伝動用ベルトには、ベルト長さ方向に延びる心線がベルト幅方向に並んで埋設され、この心線よりもベルト内面側には略平坦な伝動面を有する一方、ベルト外面側には、ベルト長さ方向に延びる突条がベルト幅方向に並んで複数、形成されている。
【0015】
そして、前記駆動プーリ及び少なくとも一つの従動プーリには前記伝動用ベルトの内面が巻き付けられている一方、当該伝動用ベルトの外面側には、外周に複数の周溝を有する規制プーリが押し当てられていて、その複数の周溝がそれぞれ突条に係合することにより伝動用ベルトの幅方向への移動を規制するものである。
【0016】
前記構成のベルト伝動装置では駆動プーリ及び少なくとも一つの従動プーリが平プーリであり、リブドプーリのような加工精度や加工工数は求められないから、従来のVリブドベルトを用いたものに比べてコストを大幅に削減できる。また、それらの平プーリに巻き付けられるのはベルトの平坦な伝動面であって、その直ぐ近くに心線があるから、曲げや摩擦によるロスは平ベルト並みに小さくなり、ゴム層に過大な剪断変形が生じることもない。よって、平ベルト並みに伝動効率が高くなるとともに発熱も抑えられる。
【0017】
特に駆動プーリについては相対的に大きな負荷がかかることから、平プーリによって構成することのメリットは大きい。すなわち、負荷の大きなプーリに巻き付けるときほど、ベルトのゴム層の変形が大きくなってロスも増大する上に、発熱量も多くなりやすいからである。
【0018】
また、前記の構成ではベルトの伝動面が略平坦であり楔効果は生じないので、この楔効果に起因して発熱量が多くなることもないし、大負荷時であっても心線の周りのゴム層に波打つような変形が生じて大きな負担がかかることもなく、ベルトの耐久性を向上する上で有利になる。衝撃的な荷重に対しては伝動面において適度な滑りを生じさせることが可能であり、このことも耐久性の向上には有利になる。
【0019】
その上で前記の構成では、伝動用ベルトの外面側に形成された複数の突条に規制プーリの周溝が係合することで、ベルト幅方向への移動を安定、確実に規制でき、仮に雨水や塵埃等が付着してもベルトの蛇行や片寄りを阻止することができる。複数の突条によって規制すれば、ベルトの一部分に負担が集中することもない。尚、突条の数は3つ以上とするのが好ましい。
【0020】
前記規制プーリは伝動用のプーリと兼用する必要はないので、例えばアイドラプーリのようにできるだけ負荷の小さな状態で用いることが好ましいが、勿論、複数の従動プーリの中で相対的に負荷の小さなものと兼用することもできる(請求項2)。また、規制プーリをテンションプーリとして用いることもでき、要するに規制プーリは、ベルトの全体的なレイアウトを考慮して蛇行の防止に効果的な箇所に必要最小限だけ(即ち少なくとも1つ)配設すればよい。
【0021】
また、前記伝動用ベルトの突条は、その突端に向かって両側面が互いに近づくように傾斜する断面台形状とし、この突条が進入する規制プーリの周溝は、その溝底から開口縁に向かって両側面が互いに遠ざかるように傾斜させるのがよい(請求項3)。こうすれば、規制プーリの周溝にベルトの突条が進入するときに強い擦れが起き難く、スムーズに滑り込むようになるから、摩擦によるロスが小さくなり、摩耗も抑制でき、異音の発生を抑える上でも有利になる。
【0022】
但し、そうして規制プーリの周溝をベルトの突条に対応する形状とした場合は、楔効果の生じることも考えられる。規制プーリは動力を伝達しないので、楔効果が起きてもその悪影響は比較的小さいが、ベルトの幅方向の移動を規制する上では楔効果は不要であり、上述したように伝動効率や耐久性の低下を招くとも考えられるから、好ましくは楔効果が生じないか或いはそれが非常に小さくなるように、ベルトの突条とプーリの周溝との相互の形状や位置の関係を設定するのがよい。
【0023】
すなわち、伝動用ベルトの突条の高さやピッチと規制プーリの周溝の深さやピッチとの相互の関係、或いはそれらの側面の傾斜の度合い等を調整して、例えば、突条の突端面が周溝の底面に当接するようにすると、楔効果を抑制しやすい(請求項4)。突条の突端面は平坦面とするのが好ましいが、これに限らず、プーリの溝底面に対応する形状とすればよい。
【0024】
その場合に好ましいのは、突条の突端面のベルト幅方向の長さをベルト幅の半分以上にすることであり(請求項5)、こうすれば、ベルトの外面側において突条の突端面の面積が過半を占めることになるから、前記の作用を得る上で有利になる。さらに、隣り合う突条の間に、周溝を除いた規制プーリの外周面が当接するようにしてもよい(請求項6)。
【0025】
見方を変えれば本発明は、上述の如き伝動装置に用いる伝動用ベルトであって、エンドレスのベルト本体の内面側に略平坦な伝動面を有し、そのベルト本体にはベルト長さ方向に延びる心線がベルト幅方向に並んで埋設されているとともに、この心線よりもベルト外面側には、ベルト長さ方向に延びていて、ベルト幅方向への移動を規制するための規制部材と係合される突条が、ベルト幅方向に並んで複数、形成されているものである(請求項7)。
【0026】
前記の伝動用ベルトをその内面(略平坦な伝動面)から、平プーリである駆動プーリ及び少なくとも1つの従動プーリに巻き掛けるとともに、外面側には例えば前記規制プーリのような規制部材を押し当てて、その周溝にベルトの突条を係合させれば、上述した請求項1の発明に係るベルト伝動装置が構成されて、その作用効果が得られる。尚、ベルトの幅方向への移動を規制する部材は、前記した規制プーリ以外のものであってもよい。
【0027】
また、上述したように伝動用ベルトにおいて突条は、その突端に向かって両側面が互いに近づくように傾斜する断面台形状とするのが好ましい(請求項8)。
【0028】
また、上述したように、突条の突端には周溝の底面に当接する当接面を形成してもよく(請求項9)、或いは隣り合う突条の間に、前記周溝を除いたプーリの外周面が当接する当接部を形成してもよい(請求項10)。
【発明の効果】
【0029】
以上、説明したように本発明に係るベルト伝動装置によると、駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を主にベルト内面側の略平坦な伝動面によって行うようにしたから、プーリを含めたベルト伝動装置のコストを大幅に削減できる上に、伝動効率や耐久性も平ベルト並みに改善できる。一方でベルトの外面側にはその長さ方向に延びる複数の突条を設けており、これを利用してベルト幅方向への移動を規制するようにすれば、雨水等の付着にも強く安定してベルトの蛇行等を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
(ベルト伝動装置)
図1は、本発明に係るベルト伝動装置Aを、一例としてエンジンの補機駆動に適用した場合のベルト及びプーリのレイアウトを模式的に示す。図において符号1は、エンジンEのクランクシャフト(図示せず)に回転一体に取付固定された駆動プーリとしてのクランクプーリであり、符号2〜4はそれぞれエンジンEの補機に取り付けられた従動プーリである。例えば、2は、エンジン補機であるパワーステアリング用ポンプ(図示せず)の回転軸に回転一体に取付固定されたPSポンププーリ、3は、同様にオルタネータ(図示せず)の回転軸に固定されたオルタネータプーリであり、4は、同様に空調機用コンプレッサ(図示せず)の回転軸に固定されたコンプレッサプーリである。
【0032】
また、図示の符号5は、伝動ベルトBの張力を調整するためのオートテンショナ7のテンションプーリを示し、符号6はアイドラプーリを示す。尚、図示のベルト伝動装置Aの構成はあくまで一例に過ぎない。本発明に係るベルト伝動装置は、各種の産業機械、その他の機器に使用することができ、その機器等における要求に応じて種々のベルトレイアウトが採用される。
【0033】
前記クランクプーリ1、PSポンププーリ2、オルタネータプーリ3及びコンプレッサプーリ4はいずれも平プーリであり、一方、テンションプーリ5アイドラプーリ6の外周には、それぞれ複数の周溝5a,5a,…が形成されている(図2にテンションプーリ5の周溝5aのみ符号を付して示す)。そして、それらのプーリ1〜6間にエンドレスの伝動用ベルトBが巻き掛けられて、エンジンEの運転に伴うクランク軸(クランクプーリ1)の回転により、ベルトBがクランクプーリ1→テンションプーリ5→PSポンププーリ2→オルタネータプーリ3→アイドラプーリ6→コンプレッサプーリ4→クランクプーリ1の順に図において時計回り方向に走行し、各補機を駆動するようになっている。
【0034】
すなわち、伝動用ベルトBは、クランクプーリ1及び補機プーリ2〜4においてはそれぞれ、内面側の略平坦な伝動面b1を平プーリ1〜4の外周面に押し当てた正曲げ状態で巻き付けられる一方、テンションプーリ5及びアイドラプーリ6にあってはそれぞれ、外面(背面)側から逆曲げ状態でプーリ5,6に巻き付けられていて、所謂サーペンタインレイアウトで巻き掛けられている。
【0035】
要するに本発明に係るベルト伝動装置Aは、平プーリであるクランクプーリ1及び補機プーリ2〜4の間の動力伝達を伝動用ベルトBの略平坦な伝動面b1によって行うようにしながら、そのベルト外面側に設けた複数の突条82a,82a,…(図2を参照)をプーリ5,6の外周の周溝5aに係合させて、ベルト幅方向への移動を規制するようにしたものである。このことから、以下ではテンションプーリ5及びアイドラプーリ6を規制プーリとも呼ぶ。
【0036】
(伝動用ベルトと規制プーリ)
詳しくは図2に示すように、伝動用ベルトBのベルト本体8は、抗張体として例えばアラミドやポリエステルの心線9,9,…が埋設された接着ゴム層80と、そのベルト内面側に形成された相対的に薄肉の内側ゴム層81と、接着ゴム層80のベルト外面側に形成された相対的に厚肉の外側ゴム層82と、からなる。
【0037】
前記接着ゴム層80は、図の例では厚みが0.8〜1.2mmくらいとされ、その内部にはベルト長さ方向に延びる心線9,9,…がベルト幅方向に並んで埋設されている。心線9の直径は0.7〜1.0mmくらいでそのピッチは例えば0.8〜1.2mmくらいである。接着ゴム層80は、心線9との剥離を阻止するために例えばアラミド系短繊維の混入した硬いゴム組成物からなる。
【0038】
内側ゴム層81は、伝動面b1が形成されたベルト内面側のゴム層であり、図の例では厚みが0.4〜0.6mmくらいとされ、例えばEPDM等のエチレン-α-オレフィンエラストマーゴムを主成分とするゴム組成物からなる。内側ゴム層81にシリカなどの親水性材料を含めれば、被水時の伝動能力の低下を抑制することができる。
【0039】
一方、外面側の外側ゴム層82には、ベルト長さ方向に延びる突条82a,82a,…がベルト幅方向に並んで複数(図の例では3つ)形成されている。各突条82aは断面が台形状であり、その突端には後述の如く規制プーリ5,6の周溝5aの底面に当接する平坦面が形成されるとともに、両側面はそれぞれ突端に向かって幅が狭くなるように傾斜していて、隣り合う突条82a同士の間には断面V字状の谷部が形成されている。図の例では隣り合う突条82a同士の間隔(ピッチ)は3.5〜3.6mmくらいである。
【0040】
外側ゴム層82は、前記内側ゴム層81と同様にエチレン-α-オレフィンエラストマーゴムを主成分とするゴム組成物からなるが、内側ゴム層81とは異なり動力伝達には寄与しないので、短繊維を混入して規制プーリ5,6の周溝5aとの間の摩擦係数が低くなるようにしてもよい。こうすれば、以下に述べる規制プーリ5,6との出入りの際の異音を抑えることができる。また、同様に摩擦係数が低くなるように補強布を貼設してもよく、この場合には耐摩耗性の向上も図られる。
【0041】
そうして突条82aの形成された伝動用ベルトBの外面側にはその蛇行を防止するために規制プーリ5,6が押し当てられていて、図2にテンションプーリ5について示すように、プーリ5の全周に亘る複数の周溝5a,5a,…にそれぞれ突条82a,82a,…が係合するようになっている。以下、テンションプーリ5の周溝5aとの係合についてのみ説明するが、アイドラプーリ6についても同様である。
【0042】
前記図2の他、図3にも示すように、規制プーリ5の周溝5aは、これに係合するベルトBの突条82aに対応して、平坦な溝底とこの溝底に向かい互いに近づくように傾斜する両側面とからなる断面台形状とされている。つまり、突条82aが突端に向かって窄む一方、周溝5aは開口縁ほど幅が広くなっているため、両者の出入りするときに強い擦れが起き難く、異音が発生し難い。仮にベルトBのミスアライメントが大きめであっても、突条82aは周溝5aにスムーズに滑り込むようになる。
【0043】
また、この実施形態では、図3に示すように突条82aと周溝5aとが係合した状態で、その突条82aの突端(図の上端)の平坦面が周溝5aの溝底に当接するように、突条82aの高さやピッチと周溝5aの深さやピッチとの相互の関係、或いはそれらの側面の傾斜の度合い等を設定している。このため、図示のように周溝5aに進入した突条82aには一般的なVリブドベルトのような楔効果が殆ど生じず、この楔効果に起因する伝動効率や耐久性の低下という悪影響が概ね解消される。
【0044】
特に図の例では、3つの突条82aの突端面のベルト幅方向長さの総和がベルト幅の半分以上になっている。このことは、突条82aの突端面が伝動用ベルトBの過半の面積を占めることを意味し、この突端面を介してベルトBとプーリ5,6との間の荷重の支持が行われるようになって、楔効果を十分に抑制することができる。尚、この例では規制プーリ5の周溝5aのピッチを例えば3.55〜3.65mmとして伝動用ベルトBの突条82aのピッチよりも若干、大きめにしているため、ミスアライメントによりベルトBが斜めになっていても、擦れによる異音が発生し難い。
【0045】
前記のような規制プーリ5,6は、例えば熱可塑性樹脂を用いて射出成形により低コストで製造することができる。この場合はあまり高い強度は得られないが、規制プーリ5,6は、いずれも動力の伝達には用いられないので不具合はない。樹脂としては安価で汎用性の高いポリアミド等が好適であり、強度を高めるためにガラス繊維を混入することもできる。
【0046】
尚、平プーリであるクランクプーリ1や補機プーリ2〜4は、より強度の高い樹脂を用いて製造してもよいが、鉄材の板金製とする方が低コストである。その外周面にはクラウンをつけてもよいしつけなくてもよいが、クラウンをつければ若干、伝動能力が高くなる上に、クラウニングによるベルトの蛇行防止も期待できるから、その分、規制プーリの数を少なくでき、低コスト化に有利になる。この例ではテンションプーリ5又はアイドラプーリ6のいずれかを平プーリとすればよい。
【0047】
(作用効果)
したがって、この実施形態のベルト伝動装置Aにおいては、上述したように、一般的なVリブドベルトを用いた伝動装置とは反対に、クランクプーリ1及び補機プーリ2〜4がいずれも平プーリであって、動力の伝達が伝動用ベルトBの略平坦な伝動面b1によって行われることから、ベルトBの曲げによるロス、プーリとの摩擦によるロス及びゴム層の剪断変形によるロスがいずれも平ベルト並みに小さくなり、伝動効率が高くなるとともに高い耐久性が得られる。
【0048】
すなわち、従来一般的なVリブドベルトの場合は、厚肉のリブゴム層を有することから平ベルトに比べて曲げによるロスが大きく、しかも、そのリブゴム層が心線とリブドプーリの外周面との間で圧縮されつつ大きく剪断変形することによっても大きなロスを生じ、平ベルトに比べると伝動効率に劣るものである。また、そうしてリブゴム層が大きく変形することにより発熱量が多くなって、ゴムの劣化が進むことになる。
【0049】
また、Vリブ毎に楔効果が生じる結果、ベルト全体がプーリ側に沈み込むように変形し、経時的な張力の低下が大きくなるので、初期張力を大きめに設定せざるを得ず、このことも機械的な損失の増大を招くとともに前記した発熱の問題を助長し、さらに、ベルトやプーリ軸受けの摩耗が大きくなるという悪影響もある。
【0050】
その上さらにVリブ毎に楔効果が生じると、心線の埋設されている接着ゴム層にはベルト幅方向に波打つような変形が生じ、心線と周囲のゴムとの間に大きな剪断応力が発生して剥離を誘発する虞れがある。楔効果によって衝撃的な荷重に対しても滑りを生じ難いことが却って破損につながる虞れもある。
【0051】
このような一般的なVリブドベルトとは異なり、この実施形態では大きな負荷のかかるクランクプーリ1や補機プーリ2〜4においてベルトBの略平坦な伝動面b1をプーリ外周面に巻き付けており、心線9に近接する薄肉の内側ゴム層81が概ね均一に変形することから、曲げや摩擦、或いは剪断変形によるロスもあまり大きくはならない。外側ゴム層82では楔効果が生じないので、Vリブドベルトのように発熱量が多くはならず、接着ゴム層80において心線9の周囲に大きな負担がかかることもない。衝撃的な荷重に対しては伝動面b1において適度な滑りが生じるようになる。以上より、伝動用ベルトBの耐久性を大幅に向上できる。
【0052】
そうして伝動効率や耐久性が平ベルト並みに改善されることから、この実施形態のベルト伝動装置Aは、比較的高張力、高負荷のシステムに適用して好適であり、そうして大きな負荷がかかる場合にもVリブドベルトに比べてベルト幅を狭くすることができるから、省スペース化が可能になるとともに、プーリを含む装置コストの低減に大きく寄与する。この実施形態のようにテンションプーリ5やアイドラプーリ6とベルトBの蛇行を規制するプーリとを兼用すれば、そのことも省スペース化に有利になる。
【0053】
さらに、高い強度の求められるクランクプーリ1及び補機プーリ2〜4、即ち動力伝達のためのプーリ1〜4がいずれも平プーリであり、それらにリブドプーリのような精度の高い加工を施す必要がないので、例えば板金製とすることによってコストのさらなる削減が図られる。テンションプーリ5やアイドラプーリ6はリブドプーリであるが、動力の伝達には寄与しないので加工精度はあまり高くなくてよく、高強度も要求されないから、樹脂の射出成形等によって低コストで製造可能である。
【0054】
さらにまた、この実施形態では、複数の突条82aが形成されている伝動用ベルトBの外面側に規制プーリ5,6を押し当てることで、伝動用ベルトBのベルト幅方向への移動を規制し、その蛇行や片寄りを安定、確実に防止することができる。仮に雨水や塵埃等が付着してもあまり問題はないし、複数の突条82aがそれぞれプーリ5,6の周溝5aに係合することから、ベルトBの一部分のみに負担が集中することもない。
【0055】
そうして突条82aが周溝5aに係合することから、規制プーリ5,6に巻き付く部位では伝動用ベルトBの外側ゴム層82において楔効果が生じるとも考えられるが、これらのプーリ5,6は回転負荷が殆ど無いから大きな剪断変形が生じることはなく、仮に楔効果が生じてもそれによる悪影響は小さい。しかも、この実施形態では上述したように突条82aの突端面を周溝5aの溝底に当接させて楔効果が生じないようにしているから、楔効果による悪影響は実質ないといえる。
【0056】
(実施例)
以下に、本発明に係るベルト伝動装置Aの性能を評価するための試験について説明する。実施例の伝動用ベルトは前記図2に示したもので、その寸法形状としてはベルト長さが1120mmでベルト幅が10.7mm、突条を含めた厚みが3.2mmである。突条の数は3つでその高さは0.9mm、ピッチは3.56mmであり、リブの突端面のベルト幅に対する長さの比率は約70%である。
【0057】
また、心線としてはポリエステル繊維を用いており、1100dtexのヤーン2本を下撚りしてなる3本のストランドが上撚りされた直径1.0mmのものが、ベルト幅方向に1.15mmのピッチで配置されている。
【0058】
一方、比較例として用いた一般的なVリブドベルトは、ベルト長さが1150mmでベルト幅は10.7mm、リブを含めた厚みが4.3mmである。リブの数は3つでその高さは2.0mm、ピッチは3.56mmであり、リブの突端面のベルト幅に対する長さの比率は約40%である。心線は前記実施例と同じくポリエステル繊維で、各々2本のヤーン(1100dtex)を下撚りしてなる3本のストランドが上撚りされた直径1.0mmのものであり、ベルト幅方向において1.15mmのピッチで配置されている。
【0059】
前記実施例及び比較例のベルトの仕様一覧を、以下に述べる試験に用いたプーリの仕様と共に表1に示す。また、ベルトの各ゴム層の配合を表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
−伝動能力等のテスト−
まず、前記の実施例、比較例に係るベルトの伝動能力、伝動効率及び発熱状況について一般的な試験方法により調べた。図4にベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す。各々プーリ径68mmの駆動プーリ41及び従動プーリ42と、プーリ径70mmの固定アイドラーリ43と、を用い、駆動プーリ41及び従動プーリ42間にベルトBを掛け渡すとともに、該両プーリ41,42間の緩み側スパンにおいてベルト外面側に固定アイドラプーリ43を押し当てた。尚、従動プーリ42は、回転軸心が移動可能でベルトBにデッドウェイトDWを負荷できるようになっている。
【0063】
実施例では、ベルトBの略平坦な内面が巻き付けられる駆動プーリ41及び従動プーリ42は、平プーリであり、突条の形成された外面側が巻き付けられるアイドラプーリ43は、規制プーリ(この例では一般的なリブドプーリで代用)である。反対に、比較例のVリブドベルトでは駆動プーリ41及び従動プーリ42がリブドプーリであり、アイドラプーリ43は平プーリである。このことは以下の試験においても同様である。
【0064】
そして、常温の雰囲気下において従動プーリ42にはベルト張力が増加する方向(図4の右方向)に2通りの荷重DW(588N≒60kgf、883N≒90kgf)をかけた状態で、それぞれ、駆動プーリ41を3600rpmで回転させながら、従動プーリ42の回転負荷を上昇させたときのスリップ率の変化を測定した。こうして測定したベルトのスリップ率に対する軸荷重と負荷トルクとの関係にベルトBの伝動能力が表れる。
【0065】
具体的には図5のグラフに示すように、許容限度のスリップ率(通常2%)に達したときの負荷トルクが大きいほど、ベルト伝動能力が高いと評価することができ、図の例では2%スリップ発生トルクの大きさは、実施例のベルトでは19N(DW588N:実線の○のグラフ)及び27Nm(DW883N:同破線)であり、一方、比較例では11N(DW588N:実線の△のグラフ)及び12Nm(DW883N:同破線)であった。本発明のベルト伝動装置は、楔効果がないにも拘わらずVリブドベルトの2倍の水準の伝動能力を示している。
【0066】
これは、ベルトの伝動面と心線とが近接していることから弾性スリップ率が小さくなり、結果としてスティックスリップへの移行が高トルク側にシフトしたことによると考えられる。従来よりゴム層の剪断変形がベルトの伝動能力に影響することは知られているが、ここまで大きな影響があることは知られておらず、画期的な発見であると思われる。
【0067】
尚、一般的にVリブドベルトでは、リブドプーリとの出入りの際の異音の発生を防止するためにリブゴム層に短繊維を混入して、表面の摩擦係数を低下させるようにしており、前記比較例のベルトでも同じである。一方、実施例のベルトでは伝動面の形成される内側ゴム層には短繊維を混入しておらず、摩擦係数は比較例のものよりも高い。前記のテスト結果にはこの摩擦係数の違いも影響していると考えられる。
【0068】
また、前記のテストの際に、駆動プーリ41及び従動プーリ42の回転数とトルクとを計測しておき、負荷トルクに対応する伝動効率を算出した。この結果は図6のグラフに示すようになり、前記図5のグラフと併せて、比較例では実用域(スリップ率が2%以下のとき)における最高効率が95〜96%であるのに対し実施例では97〜98%であることが分かる。よって、本発明のベルト伝動装置は、一般的に高効率といわれているVリブドベルトのものよりも実に2%も効率が高いことになり、これは、Vリブドベルトにおける曲げやプーリとの摩擦によるロス、さらにはリブゴム層の剪断変形によるロスの全てが低減されたことによると考えられる。
【0069】
さらに、前記の走行試験機を用いてベルトの発熱を調べた。すなわち、初期のベルト温度を30℃とし、まず、DW588Nを与えて無負荷で30分の慣らし運転を行ったところ、ベルト温度は実施例で47℃、比較例では43℃までそれぞれ上昇した。その後、DW588N、883Nでそれぞれ5%スリップまで前記のような伝動能力測定を行ったところ、ベルト温度は実施例で73℃、比較例では94℃までそれぞれ上昇した。
【0070】
すなわち、より伝動能力の高い実施例のベルトには、その分、大きな回転負荷がかかっているにも拘わらず、ベルトの温度上昇幅は実に21℃も小さくなっており、前記した曲げや摩擦、及び剪断変形によるロスの低減によって発熱が極めて効果的に抑えられていることが分かる。このことはベルトの耐久性に大きな影響を及ぼすと考えられる。
【0071】
−耐久性のテスト−
そこで、耐熱耐久、屈曲耐久及び高張力耐久の試験を行った。まず、図7には耐熱耐久テストのプーリレイアウトを示す。このテストでは、各々プーリ径120mmの駆動プーリ51及び従動プーリ52と、プーリ径70mmの固定アイドラーリ53と、プーリ径55mmで回転軸心の移動可能な可動アイドラプーリ54とを用い、駆動プーリ51及び従動プーリ52間にベルトを掛け渡すとともに、それら両プーリ51,52間の一方のスパンを固定アイドラプーリ53に、また、他方のスパンを可動アイドラプーリ54にそれぞれ巻き付けた。アイドラプーリ53,54へのベルトBの巻き付き角は90°とした。
【0072】
そして、85±3℃の雰囲気下において、従動プーリ52が11.768kW(≒16PS)の駆動力で回転されるよう、駆動プーリ51を4900rpmの回転速度に回転させながら、可動アイドラプーリ54にはベルト張力が増加する方向(図7の上方向)に負荷DW(559N≒57kgf)をかけた状態で各ベルトの耐久時間を測定した。この結果、比較例のVリブドベルトでは554時間でVリブにクラックが発生したのに対し、実施例では2000時間を経過してもクラックは発生しなかった。
【0073】
図8は、ベルトの屈曲疲労性を試験評価するために用いられる多軸屈曲試験機のプーリレイアウトを示す。この試験機は、上下に離れて配設された各々プーリ径60mmの駆動プーリ61及び従動プーリ62(上側が従動プーリ、下側が駆動プーリ)と、それらの上下方向中間付近に配設されたプーリ径50mmの一対のアイドラプーリ63,64と、その右方に離して設けられたプーリ径60mmのアイドラプーリ65とからなる。
【0074】
ベルトBは、駆動プーリ61、従動プーリ62及びアイドラプーリ65には内面側が接触するように正掛けで巻き付けるとともに、背面掛けのアイドラプーリ63,64には外面側から巻き付き角が90°になるように巻き付けた。そして、常温の雰囲気において、最上位置の従動プーリ62を上方に引っ張って392N(≒40kgf)のデッドウェイトDWを負荷しながら、最下位置の駆動プーリ61を5100rpmの回転速度で回転させたことろ、比較例のVリブドベルトでは2250時間でVリブにクラックが発生したのに対し、実施例では5000時間を経過してもクラックは発生しなかった。
【0075】
図示は省略するが、前記の耐熱耐久テストと同じ試験条件で可動アイドラプーリに加える負荷DWを981N≒100kgfとし、高張力下における各ベルトの耐久時間を測定したところ、比較例のVリブドベルトでは23.5時間で心線が剥離したのに対し、実施例では500時間を経過しても破損は生じなかった。
【0076】
以上のように実施例のベルトは比較例に対し耐熱耐久では3倍以上、屈曲耐久では2倍以上、そして高張力耐久では実に20倍以上の高い耐久性を示しており、このことから、ベルト単位幅当たりの張力、負荷が大きくなってもベルトの変形や発熱による心線の剥離(セパレーション)が発生し難くなるので、上述したようにVリブドベルトよりも狭い幅で使用することができる。
【0077】
(他の実施形態)
尚、本発明に係るベルト伝動装置Aや伝動用ベルトBの構成は、前記の実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、例えば前記実施形態においてはベルトBの蛇行を規制するプーリをテンションプーリ5やアイドラプーリ6のように回転負荷のないものとしているが、これに限らず、例えばウォータポンププーリ等のように負荷の比較的小さな従動プーリとしてもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、伝動用ベルトBの外側ゴム層82に形成する突条82aの突端面を、プーリ5の周溝5aの溝底に当接する平坦面とし、その面積はベルトBの過半を占めるようにしているが、突端面は平坦面でなくてもよいし、その面積比の設定も好ましい一例に過ぎない。
【0079】
さらに、そうして突条82aの突端面をプーリ5の周溝5aの溝底に当接させることに加えて、或いはこれに代えて、隣り合う突条82aの間の谷部の底に、周溝5aを除いた規制プーリ5,6の外周部を当接させるようにしてもよい。
【0080】
また、前記実施形態における伝動用ベルトBの材質は全くの例示であって、これに何ら限定されるものではないし、このベルトBには接着ゴム層80を設けずに内側ゴム層81ないし外側ゴム層82に心線9を埋設する構造としてもよい。心線をアラミド繊維とすればベルトBのスリップや発熱が抑制でき、本発明の効果がさらに高まる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上、説明したように本発明に係るベルト伝動装置によると、伝動効率や耐久性を平ベルト並みに改善でき、低コストでありながら、雨水等の付着にも強く、安定してベルトの走行状態を維持できるので、特に自動車エンジンの補機駆動等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のベルト伝動装置をエンジン補機駆動に適用した概略構成図である。
【図2】伝動用ベルトの突条と規制プーリの周溝との関係を示す一部断面図である。
【図3】ベルトとプーリとの係合状態を示す断面図である。
【図4】ベルトの伝動能力を調べる試験機のレイアウトの例を示す説明図である。
【図5】ベルトのスリップ率と負荷トルクとの関係を示すグラフ図である。
【図6】ベルトの伝動効率と負荷トルクとの関係を示すグラフ図である。
【図7】耐熱耐久テストに係る図4相当図である。
【図8】多軸屈曲テストに係る図4相当図である。
【符号の説明】
【0083】
A ベルト伝動装置
1 クランクプーリ(駆動プーリ)
2〜4 補機プーリ(従動プーリ)
5 テンションプーリ(規制プーリ)
5a 周溝
6 アイドラプーリ(規制プーリ)
B 伝動用ベルト
b1 伝動面
82a 突条
9 心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリと少なくとも一つの従動プーリとにエンドレスの伝動用ベルトを巻き掛けてなるベルト伝動装置であって、
前記伝動用ベルトは、ベルト長さ方向に延びる心線がベルト幅方向に並んで埋設され、この心線よりもベルト内面側に略平坦な伝動面を有する一方、ベルト外面側には、ベルト長さ方向に延びる突条がベルト幅方向に並んで複数、形成されており、
前記駆動プーリ及び少なくとも一つの従動プーリには前記伝動用ベルトの内面が巻き付けられている一方、当該伝動用ベルトの外面側には、外周に複数の周溝を有する規制プーリが押し当てられ、その周溝がそれぞれ突条に係合して伝動用ベルトの幅方向への移動を規制している、ことを特徴とするベルト伝動装置。
【請求項2】
規制プーリは、アイドラプーリ若しくは相対的に負荷の小さな従動プーリとして用いられている、請求項1に記載のベルト伝動装置。
【請求項3】
伝動用ベルトの突条は、その突端に向かって両側面が互いに近づくように傾斜する断面台形状をなし、
前記突条の進入する規制プーリの周溝は、その溝底から開口縁に向かって両側面が互いに遠ざかるように傾斜している、請求項1又は2のいずれかに記載のベルト伝動装置。
【請求項4】
伝動用ベルトの突条の突端面が、その突条の進入する規制プーリの周溝の底面に当接している、請求項1〜3のいずれか1つに記載のベルト伝動装置。
【請求項5】
突条の突端面のベルト幅方向の長さがベルト幅の半分以上である、請求項4に記載のベルト伝動装置。
【請求項6】
伝動用ベルトの隣り合う突条の間に、周溝を除いた規制プーリの外周面が当接している、請求項4又は5のいずれかに記載のベルト伝動装置。
【請求項7】
エンドレスのベルト本体の内面側に略平坦な伝動面を有し、駆動プーリと少なくとも一つの従動プーリとに巻き掛けられて動力を伝達する伝動用ベルトであって、
前記ベルト本体には、ベルト長さ方向に延びる心線がベルト幅方向に並んで埋設され、この心線よりもベルト外面側には、ベルト長さ方向に延びていてベルト幅方向への移動を規制するための規制部材と係合する突条が、ベルト幅方向に並んで複数、形成されている、ことを特徴とする伝動用ベルト。
【請求項8】
突条は、その突端に向かって両側面が互いに近づくように傾斜する断面台形状をなす、請求項7に記載の伝動用ベルト。
【請求項9】
規制部材は、外周に複数の周溝を有するプーリによって構成され、
突条の突端には、前記周溝の底面に当接する当接面が形成されている、請求項7又は8のいずれかに記載の伝動用ベルト。
【請求項10】
規制部材は、外周に複数の周溝を有するプーリによって構成され、
隣り合う突条の間に、前記周溝を除いたプーリの外周面が当接する当接部が形成されている、請求項9に記載の伝動用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−53992(P2010−53992A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221032(P2008−221032)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】