説明

ベルト式動力伝達装置

【課題】少なくとも二つのボールベアリング5,6にて軸支した回転軸7に,複数本のリブ12a〜12dを有するVリブドベルト12を巻掛けするプーリ11を,当該プーリにおけるべルト巻掛け用輪体部14が前記ボールベアリングの箇所に位置するように取付けて成るベルト式動力伝達装置において,前記ボールベアリングの耐久性の向上を図る。
【解決手段】前記Vリブドベルト12における各リブのうち少なくとも一つのリブ12bを,前記各ボールベアリングのうち一つのボールベアリング5におけるボール列の中心線5a上に位置するか,或いは前記中心線5aの近傍に位置し,この一つのリブ12bを,残りの他のリブよりも高い寸法H1に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複数本のリブを有するVリブドベルトを使用した動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において,そのクランク軸から各種のエンジン補機への動力伝達には,複数本のリブを有するVリブドベルトを使用している。
【0003】
先行技術としての特許文献1には,エンジン補機側における回転軸を,その軸線方向に適宜間隔で並べた少なくとも二つのボールベアリングにて軸支し,この回転軸に,前記Vリブドベルトを巻掛けするプーリを,当該プーリにおけるベルト巻掛け用輪体部が前記回転軸における軸線方向のうち前記ボールベアリングの箇所に位置するように取付けて成るベルト式動力伝達装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−141080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記先行技術によると,回転軸に取付けたプーリにおけるベルト巻掛け用輪体部は,前記回転軸における軸線方向のうち前記ボールベアリングの箇所に位置していることにより,このプーリを前記回転軸から突出しない分だけ小型・軽量化できる利点がある。
【0006】
しかし,その反面,前記Vリブドベルトにおけるテンションに起因して前記回転軸にその軸線と直角方向に及ぶラジアル荷重における作用線は,当該Vリブドベルトにおける各リブの各々が同じ高さであることにより,当該Vリブドベルトにおける幅方向の中心線に一致するものの,このラジアル荷重における作用線は,前記複数個のボールベアリングのうち一つのボールベアリングにおける前記回転軸と直角方向の中心線と,一致するものではない。
【0007】
これにより,前記Vリブドベルトにおけるテンションに起因するラジアル荷重は,前記各ボールベアリングのうち一つのボールベアリングに対して,当該一つのボールベアリングにおける回転軸と直角方向の中心線よりもずれて作用することになるから,前記一つのボールペアリングに偏摩耗が発生するおそれが大きく,ボールベアリングの耐久性が低くなるという問題があった。
【0008】
その上,前記Vリブドベルトにおける各リブの各々が同じ高さであることにより,このVリブドベルトのプーリへの巻掛けに際して,プーリにおける各V溝のうち隣接のV溝への掛け間違いを発生するおそれが大きいという問題もあった。
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「回転軸を,その軸線方向に並べた少なくとも二つのボールベアリングにて軸支し,この回転軸に,複数本のリブを有するVリブドベルトを巻掛けするプーリを,当該プーリにおけるべルト巻掛け用輪体部が前記回転軸における軸線方向のうち前記ボールベアリングの箇所に位置するように取付けて成るベルト式動力伝達装置において,
前記Vリブドベルトにおける各リブのうち少なくとも一つのリブを,前記各ボールベアリングのうち一つのボールベアリングにおけるボール列の中心線上に位置するか,或いは前記中心線の近傍に位置し,この一つのリブを,残りの他のリブよりも高い寸法に構成した。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
複数本のリブを備えて成るVリブドベルトにおいて,その複数本のリブのうち少なくとも一つのリブを,残りの他のリブよりも高い寸法に構成すると,前記Vリブドベルトにおけるテンションに起因して前記回転軸にこれと直角方向に作用するラジアル荷重は,主として,前記各リブのうち高い高さ寸法のリブの箇所に位置することになる。
【0011】
そこで,請求項1に記載したように,前記Vリブドベルトにおける各リブのうち少なくとも一つのリブを,前記各ボールベアリングのうち一つのボールベアリングにおけるボール列の転がり中心線上に位置するか,或いは前記中心線の近傍に位置し,この一つのリブを,残りの他のリブよりも高い寸法に構成ことにより,前記Vリブドベルトにおけるテンションに起因するラジアル荷重の作用線は,前記一つのボールベアリングにおけるボール列の転がり中心線に一致するか,略一致することになるから,前記一つのボールベアリングにおける偏摩耗は少なくなって,ボールベアリングの耐久性を確実に向上できる。
【0012】
しかも,前記Vリブドベルトにおける各リブのうち少なくとも一つのリブを高くした構成であることにより,プーリへの巻掛けに際して,この高くしたリブが,プーリにおける各V溝に対する目安になるから,各V溝のうち隣接のV溝への掛け間違いが発生するおそれを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明の実施の形態を,図1及び図2の図面について説明する。
【0015】
図1は,内燃機関1に対するエンジン補機のうち冷却水ポンプ2を,前記内燃機関1におけるクランク軸3からの動力伝達にて駆動する場合を示している。
【0016】
前記冷却水ポンプ2は,前記内燃機関1に取付けたポンプケーシング4と,このポンプケーシング4にて軸線方向に並べた二つのボールベアリング5,6にて軸支したポンプ軸(回転軸)7と,このポンプ軸7のうち前記内燃機関1側におけるポンプ室8内の部分に固着したインペラー9によって構成されている。
【0017】
前記クランク軸3に固着される主動側プーリ10と,前記冷却水ポンプ2におけるポンプ軸7の一端に固着される従動側プーリ11との間には,動力伝達を行なうためのVリブドベルト12が巻掛けされている。
【0018】
このVリブドベルト12は,複数本のリブ,つまり,四本のリブ12a,12b,12c,12dを備えて成る構成である一方,前記主動側プーリ10におけるべルト巻掛け用輪体部13の外周には,前記Vリブドベルト12における各リブ12a,12b,12c,12dが嵌まる複数本のV溝10a,10b,10c,10dを備えており,更に,前記従動側プーリ11におけるべルト巻掛け用輪体部輪体部14の外周には,前記Vリブドベルト12における各リブ12a,12b,12c,12dが嵌まる複数本のV溝11a,11b,11c,11dを備えている。
【0019】
この場合,前記従動側プーリ11は,これを椀型にすることにより,当該プーリ11のうち前記ベルト巻掛け用輪体部14が,前記ポンプ軸7における軸線方向のうち前記ボールベアリング5,6の箇所に位置するように構成されている。
【0020】
そして,前記Vリブドベルト12における各リブ12a,12b,12c,12dのうち少なくとも一つのリブ,例えば,各図において左から数えて二番目のリブ12bを,その高さ寸法H1が残りの他のリブ12a,12c,12dにおける高さ寸法H0よりも高くなるように構成し,この高さを高くした二番目のリブ12bを,前記前記各ボールベアリング5,6のうち一つのボールベアリング5におけるボール列の転がり中心線5a上に位置するか,或いは前記中心線5aの近傍に位置する。
【0021】
なお,前記主動側プーリ10における各V溝10a,10b,10c,10d及び前記従動側プーリ11における各V溝11a,11b,11c,11dのうち,前記Vリブドベルト12における第2番目のリブ12bが嵌まるV溝10b,11bは,その深さ寸法L1が残りの他のV溝における深さ寸法L0よりも深くなるように構成されている。
【0022】
前記Vリブドベルト12において,その複数本のリブ12a,12b,12c,12dのうち第2番目のリブ12bを,残りの他のリブ12a,12c,12dよりも高い寸法H1に構成すると,前記Vリブドベルト12におけるテンションに起因して前記ポンプ軸(回転軸)7にこれと直角方向に作用するラジアル荷重Fは,図1に矢印で示すように,主として,前記各リブのうち高い高さ寸法H1に構成した第2番目リブ12bの箇所に位置することになる。
【0023】
そこで,前記したように,前記Vリブドベルト12における各リブ12a,12b,12c,12dのうち高さ寸法H1を高くした第2番目のリブ12bを,前記各ボールベアリング5,6のうち一つのボールベアリング5におけるボール列の転がり中心線5a上に位置するか,或いは前記中心線5aの近傍に位置することにより,前記Vリブドベルト12におけるテンションに起因するラジアル荷重Fの作用線は,前記各ボールベアリング5,6のうち一つのボールベアリング5におけるボール列の転がり中心線5aに一致するか,或いは,略一致することになるから,前記一つのボールベアリング5における偏摩耗を大幅に低減することができる。
【0024】
なお,前記Vリブドベルト12における一つのリブの高さ寸法H1を高くすることは,第2番目のリブ12bに適用することに限定されるものではなく,他のリブ12a,12c,12dに対して適用しても良いが,より好ましくは,前記各リブ12a,12b,12c,12dのうち右端の第1番目のリブ12a及び左端の第4番目の12dを除き,その間に位置する前記第2番目のリブ12b又は第3番目のリブ12cに適用した場合であり,これにより,前記ラジアル荷重Fを,高い高さ寸法H1にしたリブの箇所に,より積極的に集中することができるから,前記した効果を助長できる。
【0025】
また,前記した実施の形態は,内燃機関1において,そのクランク軸3から冷却水ポンプ2の動力伝達に適用した場合であったが,本発明は,これにに限らず,クランク軸3から他のエンジン補機への動力伝達や,エンジン補機の相互間における動力伝達に適用できるほか,内燃機関以外において,回転軸への動力伝達に適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
2 冷却水ポンプ
3 クランク軸
5,6 ボールベアリング
7 ポンプ軸(回転軸)
11 プーリ
11a,11b,11c,11d プーリのV溝
12 Vリブドベルト
12a,12b,12c,12d Vリブドベルトのリブ
14 プーリのベルト巻掛け用輪体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を,その軸線方向に並べた少なくとも二つのボールベアリングにて軸支し,この回転軸に,複数本のリブを有するVリブドベルトを巻掛けするプーリを,当該プーリにおけるべルト巻掛け用輪体部が前記回転軸における軸線方向のうち前記ボールベアリングの箇所に位置するように取付けて成るベルト式動力伝達装置において,
前記Vリブドベルトにおける各リブのうち少なくとも一つのリブを,前記各ボールベアリングのうち一つのボールベアリングにおけるボール列の中心線上に位置するか,或いは前記中心線の近傍に位置し,この一つのリブを,残りの他のリブよりも高い寸法に構成したことを特徴とするベルト式動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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