説明

ベルト駆動装置および記録装置

【課題】 ベルトをねじりコイルばねの付勢力により付勢するテンションアーム部が、ベルトの張力変化に起因して跳ね上げられるのを防止する。
【解決手段】 ベルト駆動装置500は、モータにより駆動して歯を備えた駆動プーリ552と、歯を備えた従動プーリ550と、駆動プーリの駆動力を従動プーリへ伝達するため、駆動プーリ552と従動プーリ550の歯付部562とに掛け回される無端で内周面に歯を備えたベルト553と、ベルトを付勢してベルトに張力を付加するオートテンション機構755と、テンションアーム跳ね上がり防止手段800とを備えている。また、テンションアーム跳ね上がり防止手段800は、前記オートテンション機構755が取り付けられる基体であるホルダ部551に、前記付勢力に対抗する前記ベルトからの反力の方向への前記テンションアーム部701の跳ね上がりを規制する規制部810を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置および該ベルト駆動装置を備えた記録装置に関する。更に本発明は、インク等の液体をそのヘッドから吐出して被記録材に記録を実行するインクジェット式記録装置等の記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来について、ベルトを用いて被記録材を搬送する記録装置を例として採り上げて説明する。この記録装置において、ヘッド駆動装置は、内周に歯を備えたベルトが、それぞれ外周に歯を備えた駆動プーリと従動プーリとに掛け回される。駆動プーリが正方向に回転すると、ベルトが駆動プーリの駆動力を従動プーリに伝達し、従動プーリが正方向に回転する。
【0003】
ところが、ベルトが撓んでいると、駆動プーリの歯とベルトの歯との噛み合いが外れ、駆動プーリに対してベルトが滑る(以下、歯飛び現象という)虞がある。そこで記録装置にはベルトに張力を与えるオートテンション機構が設けられ、このオートテンション機構によりベルトの撓みを防止する。このオートテンション機構の付勢手段として圧縮コイルばねを用いたベルト駆動装置がある(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−10263号公報
【特許文献2】特開2004−123381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のようなオートテンション機構では、圧縮コイルばねを用いることによって、部品点数が増加して構造が複雑になり、コストが高くなり、さらに、装置の小型化を妨げる問題があった。
そのため、構造を簡素化すべく、ねじりコイルばねを用いた従来のベルト駆動装置を図7に示す。図7(A)はベルト駆動装置を示す斜視図であり、同図(B)は下方斜視図である。
【0006】
ところが、ねじりコイルばねを用いたことにより、ねじりコイルばねの付勢方向への変形を規制することができない。従って、テンションアームの跳ね上がりを規制することができないので、前記テンションアームが、ベルトの張力変化に起因して跳ね上げられる新たな問題が発生した。
【0007】
そこで本発明は、このような問題に鑑み成されたものであり、その課題は、テンションアームの跳ね上がりを防止することのできるオートテンション機構を有するベルト駆動装置および該ベルト駆動装置を備えた記録装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、駆動プーリと、従動プーリと、前記駆動プーリの駆動力を前記従動プーリへ伝達するため、前記駆動プーリと前記従動プーリとに掛け回される無端のベルトと、テンションアームの先端部に前記ベルトの外周面と当接して従動回転するアイドラを保持し、前記テンションアームの基端部に配設されたねじりコイルばねの付勢力により前記アイドラを介して前記ベルトを付勢して前記ベルトに張力を付加するオートテンション機構とを備えたベルト駆動装置であって、前記ベルトの張力変化に起因して前記テンションアームが跳ね上げられるのを防止するテンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたことを特徴とするベルト駆動装置である。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ベルト駆動装置は、テンションアーム跳ね上がり防止手段を備えているので、例えば、モータの急な速度変化時あるいは正転・逆転切換時に、ベルトの張力変化に起因してテンションアームを跳ね上げる力が発生した場合であっても、前記テンションアームが跳ね上げられるのを防止できる。従って、該テンションアームはアイドラを介して前記ベルトを常に付勢することができる。その結果、ベルトに撓みが発生する虞がなく、前記歯飛び現象の虞もない。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記テンションアーム跳ね上がり防止手段は、前記オートテンション機構が取り付けられる基体に、前記付勢力に対抗する前記ベルトからの反力の方向への前記テンションアームの跳ね上がりを規制する規制部を備えたことを特徴とするベルト駆動装置である。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、規制部が前記オートテンション機構の取り付けられる基体に設けられているので、該テンションアーム跳ね上がり防止手段を簡単に構成できる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記規制部はテンションアームの前記先端部に対してベルト側と反対側の近傍に、ど当てを備えていることを特徴とするベルト駆動装置である。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記ど当てがテンションアームの前記先端部に対してベルト側と反対側の近傍に形成されているので、確実にテンションアームの跳ね上がりを防止できる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記アイドラの幅は前記ベルトの幅より広く、前記アイドラの両端に、前記ベルトの外れを防止するフランジ部が設けられていることを特徴とするベルト駆動装置である。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記アイドラの両端にフランジ部が設けられているので、前記フランジ部が前記ベルトの伝動方向を規制して前記ベルトの外れを防止できる。その結果、前記アイドラは該アイドラの外周面で前記ベルトの外周面を確実に付勢することができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記フランジ部の高さは、前記オートテンション機構が前記ベルトを付勢した状態においての前記ど当てと前記テンションアームとの間隙の距離より、高く形成されていることを特徴とするベルト駆動装置である。
本発明の第5の態様によれば、第4の態様と同様の作用効果に加え、前記フランジ部の高さが、前記オートテンション機構が前記ベルトを付勢した状態においての前記ど当てと前記テンションアームとの間隙の距離より高く形成されているので、前記テンションアームが跳ね上がる方向へ変動しても前記ベルトが前記フランジ部を乗り越える虞がない。従って、前記ベルトは前記アイドラから外れる虞がない。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様のベルト駆動装置を備えたことを特徴とする記録装置である。
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果を記録装置において得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る「ベルト駆動装置」としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。図2は、本発明に係るインクジェット式記録装置の本体カバーを取り外した状態の概略斜視図である。図3は、本発明に係るインクジェット式記録装置の内部構造の要部斜視図である。図4は、本発明に係るインクジェット式記録装置の内部構造の要部側断面図である。
【0017】
インクジェット式記録装置100は、図1に示した如く本体カバー1覆われており、本体カバー1の上面には、上方向へ開閉可能な上面カバー2が配設されている。上面カバー2を開くことによって、インクジェット式記録装置100の内部へユーザがアクセスすることが可能となり、インクカートリッジの交換等を行うことが可能になる。本体カバー1の前面には、電源スイッチ等のスイッチ類5が配設されているほか、排紙スタッカ3並びにトレイカバー4が前方へ開閉可能に配設されている。
【0018】
排紙スタッカ3は、記録実行時には前方に開いた状態で使用され、記録実行後の「被記録材」及び「被搬送体」としての記録紙Pが開いた状態の排紙スタッカ3の上に排出されて積重されるようになっている。トレイカバー4は、前方に開いた状態でディスクトレイを前方からユーザが手差し挿入するためのトレイ挿入口へのアクセスが可能になる。ディスクトレイは、光記録ディスクのラベル面への記録を実行する際に使用され、光記録ディスクを装着した状態のディスクトレイをトレイ挿入口の所定の挿入位置まで手差し挿入して記録を実行することによって、光記録ディスクのラベル面への記録を実行することができる。
【0019】
インクジェット式記録装置100の後部には、図示の如く自動給紙装置20が配設されており、自動給紙装置20の上部には、上方向へ開閉可能な給紙トレイカバー6が配設されている。給紙トレイカバー6は、記録実行時には開いた状態で使用され、開いた状態の給紙トレイカバー6と一体となって記録紙Pの支持面を形成する給紙トレイ22に記録実行前の記録紙Pが積重されるようになっている。給紙トレイ22に積重された記録紙Pは、給紙時に所定のタイミングで給紙ローラ21側へ揺動するホッパ23により給紙ローラ21の外周面に押圧される。給紙ローラ21の外周面に押圧された記録紙Pは、給紙ローラ軸211を回転軸として回転可能に配設されている給紙ローラ21の駆動回転によって、搬送駆動ローラ41の外周面と搬送従動ローラ42の外周面との当接面へ向けて1枚ずつ自動給紙される。
【0020】
インクジェット式記録装置100の筐体は、メインフレーム11、左サイドフレーム12、右サイドフレーム13、右サイド外フレーム13a及びリアフレーム19で主たる骨格が形成されている。左サイドフレーム12(部材191を介して)、右サイドフレーム13、及び右サイド外フレーム13aは、インクジェット式記録装置100の前面側においてリアフレーム19で連結されている。搬送駆動ローラ41の両端支持部は、記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)に回転可能な如く左サイドフレーム12と右サイドフレーム13とにそれぞれ軸支されている。
【0021】
搬送従動ローラホルダ43には、搬送従動ローラ42が記録紙Pの搬送方向へ従動回転可能に軸支されており、搬送従動ローラホルダ43は、搬送駆動ローラ41と平行に複数並べて配置され、それぞれメインフレーム11に揺動可能に支持されている。各搬送従動ローラホルダ43は、ばね431によって搬送駆動ローラ41へ押圧付勢されており、それによって、各搬送従動ローラ42は、略一定の押圧力で搬送駆動ローラ41の外周面に押圧されている。また、各搬送従動ローラホルダ43の副走査方向Y下流側には、補助ローラホルダ43Sがそれぞれ配設されており、補助ローラホルダ43Sには、補助ローラ42Sが記録紙Pの搬送方向へ従動回転可能に軸支されている。搬送駆動ローラ41の両端支持部、及び中央支持部近傍を除く外周面には、高摩擦抵抗被膜が均一に形成されている。
【0022】
自動給紙装置20から給紙される記録紙Pは、紙案内前部材44により搬送駆動ローラ41の外周面へ向けて案内され、搬送駆動ローラ41の外周面と搬送従動ローラ42との当接面に狭持されて搬送駆動ローラ41の高摩擦抵抗被膜面に押圧されて密着し、搬送駆動ローラ41が副走査方向Yへ回転することによって、搬送駆動ローラ41の回転量に応じた搬送量で副走査方向Yへ搬送される。
【0023】
搬送駆動ローラ41は、従動プーリ550が回転伝達可能に一体に取り付けられており、搬送用のモータ561(図3参照)の駆動プーリ552の駆動回転が無端なベルト553を介して従動プーリ550へ伝達されて回転する。搬送駆動ローラ41の回転によって副走査方向Yへ搬送される記録紙Pは、紙案内後部材45と一体に形成されているプラテン46に裏面が摺接しながら面姿勢が規制されつつ搬送される。尚、搬送駆動ローラ41の左端側には、搬送駆動ローラ41の回転量を検出する「回転量検出手段」として公知のロータリエンコーダが設けられている。ロータリエンコーダは、搬送駆動ローラ41の回転に連動して回転するロータリスケール50と、ロータリスケール50の外周に沿って等間隔に形成されているスリットを検出するロータリスケールセンサ501(図2参照)とを有している。
【0024】
インクジェット式記録装置100は、記録紙Pにインクを噴射して記録を行う記録ヘッド63を記録紙Pに対して主走査方向Xに走査させるためのキャリッジ62を備えている。キャリッジ62は、主走査方向Xに往復動可能にキャリッジガイド軸61に軸支されており、図示していないキャリッジ用モータの回転駆動力が図示していないベルト伝達機構によって伝達されて主走査方向Xに往復動する。キャリッジガイド軸61は、左サイドフレーム12と右サイド外フレーム13aとで両端を支持されて配設されている。キャリッジ62には、各色のインクが充填されたインクカートリッジ(図示せず)が着脱可能に搭載され、インクカートリッジから記録ヘッド63へ各色のインクが供給される。記録ヘッド63のヘッド面は、プラテン46と対向する位置で主走査方向Xへ往復動し、ヘッド面に多数配置されているノズルからプラテン46上を搬送される記録紙Pへインクが噴射されて記録が実行される。記録ヘッド63のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔は、プラテン46によって規定される。
【0025】
また、インクジェット式記録装置100には、キャリッジ62の移動位置を検出するための公知のリニアエンコーダが配設されている。リニアエンコーダは、キャリッジガイド軸61と平行に配設されたリニアスケール64と、キャリッジ62に搭載され、リニアスケール64に等間隔に形成されているスリットを検出するリニアスケールセンサ(図示せず)とを有している。
【0026】
一方、プラテン46より副走査方向Yの下流側には、記録実行後の記録紙Pを排紙する手段として、副走査方向Yへ回転可能に紙案内後部材45に軸支された第1の排紙駆動ローラ軸47及び第2の排紙駆動ローラ軸48が配設されている。第1の排紙駆動ローラ軸47には、図示の如く複数の第1の排紙駆動ローラ471が略等間隔に設けられており、第2の排紙駆動ローラ軸48にも同様に複数の第2の排紙駆動ローラ481が略等間隔に設けられている。第2の排紙駆動ローラ481は、従動プーリ550、中間歯車55及び排紙歯車56を介してモータ561の回転駆動力が第2の排紙駆動ローラ軸48へ伝達されて排出方向(副走査方向Y)に回転する。このとき、歯車58は、第2の排紙駆動ローラ軸48に回転伝達可能に取り付けられている歯車57と、歯車57と歯車58との間にある歯車(図示せず)とを介して歯車57と同じ方向に回転する。また、歯車58は、第1の排紙駆動ローラ軸47に回転伝達可能に取り付けられている。従って、モータ561の回転駆動力は、排紙駆動ローラ軸47へも伝達される。即ち、第1の排紙駆動ローラ471は、第2の排紙駆動ローラ481と同じように排出方向(副走査方向Y)に回転する。
【0027】
第1の排紙駆動ローラ軸47及び第2の排紙駆動ローラ軸48の上側には、主走査方向Xに長尺な排紙フレーム49(図4)が設けられている。排紙フレーム49には、第1の排紙駆動ローラ471に対応する位置に複数の第1の排紙従動ローラ472が従動回転可能に軸支されており、第2の排紙駆動ローラ481に対応する位置に複数の第2の排紙従動ローラ482が従動回転可能に軸支されている。第1の排紙従動ローラ472及び第2の排紙従動ローラ482は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙Pの記録面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラになっており、それぞれ第1の排紙駆動ローラ471及び第2の排紙駆動ローラ481に弱い付勢力で付勢されている。記録実行後の記録紙Pは、第1の排紙駆動ローラ471と第1の排紙従動ローラ472との間に狭持されて、第1の排紙駆動ローラ471の排出方向への回転によって搬送され、さらに、第2の排紙駆動ローラ481と第2の排紙従動ローラ(図4の符号482で示した位置に配設されているが図示せず)との間に狭持されて、第2の排紙駆動ローラ481の排出方向への回転によって、排紙スタッカ3へと排出される。
【0028】
このような構成を有するインクジェット式記録装置100は、まず、記録前の白紙の記録紙Pが自動給紙装置20によって自動給紙される。続いて、自動給紙された記録前の白紙の記録紙Pは、搬送駆動ローラ41の回転によって記録ヘッド63のヘッド面と対向するプラテン46に摺接しながら副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送される動作と、プラテン46の上で主走査方向Xへ往復動する記録ヘッド63からインクが噴射される動作とが交互に繰り返し実行されて記録面への記録が実行される。そして、記録実行後の記録紙Pは、第1の排紙駆動ローラ471及び第2の排紙駆動ローラ481の排出方向への回転によって開いた状態の排紙スタッカ3へ排出される。これらの一連の記録実行動作は、図示していない記録制御装置によって、自動給紙装置20の駆動力源としての自動給紙用モータ(図示せず)、モータ561並びにキャリッジ駆動用モータ(図示せず)が制御されて実行される。
【0029】
続いて、本発明に係る「ベルト駆動装置」について説明する。
図5は本発明のテンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたベルト駆動装置を示す正面図であり、図6は図5に示したテンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたベルト駆動装置を示す斜視図である。
【0030】
図5および図6に示す如く、ベルト駆動装置500は、モータ561により駆動して歯を備えた駆動プーリ552と、歯を備えた従動プーリ550と、駆動プーリ552の駆動力を従動プーリ550へ伝達するため、駆動プーリ552と従動プーリ550の歯付部562とに掛け回される無端で内周面に歯を備えたベルト553と、ベルト553を付勢してベルト553に張力を付加するオートテンション機構755と、テンションアーム跳ね上がり防止手段800とを備えることによって構成されている。
【0031】
このうち、オートテンション機構755は、テンションアーム部701の先端部701aにベルト553の外周面と当接して従動回転するアイドラ554を支軸部705を介して保持し、テンションアーム部701の基端部701bにねじりコイルを配設し、基端部701bをホルダ部551に設けられたばね軸556に係合させて、ねじりコイルばね700の付勢力により前記アイドラ554を介して前記ベルト553を付勢して前記ベルト553に張力を付加するように構成されている。
ねじりコイルばね700は、一端(図示せず)をテンションアーム部701に係止して、他端に設けられた係止腕部708を、ホルダ部551に設けられたばね係止部758に係止させて前記付勢力を発生させている。
また、ばね軸556に係合された基端部701bは、Eリング557によりホルダ部551に回動自在に保持される。
【0032】
本実施形態のテンションアーム跳ね上がり防止手段800は、前記ベルト553の張力変化に起因して前記テンションアーム部701が跳ね上げられるのを防止する機能を備えている。
具体的に、テンションアーム跳ね上がり防止手段800は、前記オートテンション機構755が取り付けられる基体であるホルダ部551に、前記付勢力に対抗する前記ベルト553からの反力の方向への前記テンションアーム部701の跳ね上がりを規制する規制部810を備えている。本実施形態において、規制部810はテンションアーム部701の前記先端部701aに対してベルト553側と反対側の近傍に形成されたど当て810aである。
また、本実施形態のアイドラ554の幅はベルト553の幅より広く、アイドラ554の両端に、ベルト553の外れを防止するフランジ部560が設けられている。
【0033】
ここで、図7を用いて従来のベルト駆動装置900の動作態様、およびテンションアーム部701が跳ね上げられる現象について説明する。
図7(A)は従来のベルト駆動装置900を示す斜視図であり、同図(B)は下方斜視図である。図7は、図5と比べて、符号810a(800,810)の示すど当て810aが無いという点のみ相違している。そのため、その他の部材については、説明を省略する。
【0034】
まず、モータ561が図7(A)において時計回りである正転駆動したとき、駆動プーリ552も時計回りに回動する。そして、ベルト553が駆動プーリ552と従動プーリ550の歯付部562とに互いの歯が噛み合うように掛け回されているので、従動プーリ550も時計回りに回動する。このとき、プーリに設けられた歯とベルト553に設けられた歯とが噛み合うので、駆動プーリ552の歯送りと従動プーリ550の歯送りとが同じになる。
【0035】
しかしながら、モータ561が正転駆動してベルト553を回動させる場合に、モータ561の駆動力により駆動プーリ552は、正転駆動における駆動プーリ552の上流側のベルト553を引っ張り、そして、引っ張ったベルト553を駆動プーリ552の下流側へ流す。即ち、モータ561の正転駆動における駆動プーリ552の上流側において張力が上昇する。一方、下流側において張力が低下するため、ベルト553が撓む。その結果、ベルト553と駆動プーリ552との互いの歯がしっかり噛み合わなくなり、歯飛び現象の虞が生じる。
そこで、ベルト553の撓みを防止するため、モータ561の正転駆動における駆動プーリ552の下流側に、ベルト553に張力を付加するオートテンション機構755が設けられている。
【0036】
ところが、従来のベルト駆動装置900において、ベルト553の張力を保つためにベルト553を付勢しても、ベルト553の張力変化に起因してアイドラ554を保持したテンションアーム部701が跳ね上げられ、ベルト553に撓みが発生する。その結果、ベルトと駆動プーリとの間に歯飛び現象の虞があった。
【0037】
続いて、テンションアーム部701が跳ね上げられる現象について説明する。
例えば、モータ561の駆動方向が正転から逆転へ切りかわった場合、駆動プーリ552は反時計方向へ回動し始める。そのとき、モータ561の駆動力により駆動プーリ552は、駆動プーリ552の上流側(正転時の下流側)のベルト553を引っ張り、そして、引っ張ったベルト553を駆動プーリ552の下流側(正転時の上流側)へ流す。即ち、上流側の張力と下流側の張力とが瞬時に入れ代わる。従って、オートテンション機構755が付勢していた側の張力は、急激に上昇するため、オートテンション機構755のテンションアーム部701を跳ね上げる。それにより一時的にオートテンション機構755がベルト553を付勢しなくなるので、撓みが発生して歯飛び現象等の不具合が生じる。
【0038】
一方、従来の他の態様においては、オートテンション機構の付勢手段として圧縮コイルばねを用いたベルト駆動装置があった(例えば特許文献1、特許文献2)。該圧縮コイルばねには圧縮方向において変形制限がある。即ち、圧縮しきった状態である。そのため、モータの急な速度変化時あるいは正転・逆転切換時のベルトの張力変化に起因してアイドラを跳ね上げる力が発生した場合であっても、前記アイドラを跳ね上げる力が作用する方向において、前記変形制限があるので、問題視されていなかった。
【0039】
それに対して、ねじりコイルばね700によって付勢するオートテンション機構755の場合、ねじりコイルばね700は、一定の円周方向へ付勢する特徴を備えているので、前記圧縮コイルばねのように、ばね単独で付勢する方向に対して変形制限を備えていない。即ち、ばね単独でテンションアーム部701の跳ね上がりを規制することができない。そのため、何らかの手段によりテンションアーム部701の跳ね上がりを規制する必要が生じた。
【0040】
そこで、上記の問題を解決するテンションアーム跳ね上がり防止手段800を備えたベルト駆動装置500が、前述した図5および図6に示す本実施形態である。
前述したように、本実施形態によるテンションアーム跳ね上がり防止手段800は、ホルダ部551に、ねじりコイルばね700の付勢に対抗する反力の方向へのテンションアーム部701の跳ね上がりを規制する規制部810を備えている。本実施形態の規制部810としてど当て810aが形成されている。
【0041】
このど当て810aの位置は、テンションアーム部701の先端部701aに対してベルト553側と反対側の近傍である。これにより、モータ561の急な速度変化時あるいは正転・逆転切換時のベルト553の張力変化に起因してテンションアーム部701を跳ね上げる力が発生した場合であっても、テンションアーム部701が規制部810と当接しテンションアーム部701の跳ね上がりが規制されるので、アイドラ554がベルト553から離れる虞がない。その結果、オートテンション機構755は常にベルト553を付勢し張力を付与し続けることができる。
【0042】
また、本実施形態のアイドラ554の幅はベルト553の幅より広く、アイドラ554の両端に、フランジ部560が設けられているので、アイドラ554からベルト553が外れる虞がない。
さらに、本実施形態のフランジ部の高さは、オートテンション機構755が前記ベルト553を付勢した状態においての前記ど当て810aと前記テンションアーム部701の先端部701aとの間隙の距離より、高く形成されている。その結果、モータ561の急な速度変化時あるいは正転・逆転切換時のベルト553の張力変化に起因してテンションアーム部701を跳ね上げる力が発生した場合であっても、ベルト553がフランジ部560を乗り越える虞がない。従って、ベルト553は、ベルト553の張力変化に起因してアイドラ554から外れる虞がない。
【0043】
また、フランジ部の高さは、ど当て810aと前記テンションアーム部701の先端部701aとの間隙の距離に基づいて設定したが、逆にフランジ部の高さに基づいてど当て810aと前記テンションアーム部701の先端部701aとの間隙の距離を設定することも可能である。さらに、このとき、ど当て810aの位置をアジャスタによって調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】インクジェット式記録装置の外観斜視図。
【図2】インクジェット式記録装置の本体カバーを取り外した状態の概略斜視図。
【図3】インクジェット式記録装置の内部構造の要部斜視図。
【図4】インクジェット式記録装置の内部構造の要部側断面図。
【図5】テンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたベルト駆動装置を示す正面図。
【図6】テンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたベルト駆動装置を示す斜視図。
【図7】従来のベルト駆動装置を示す斜視図(A)および下方斜視図(B)。
【符号の説明】
【0045】
1 本体カバー、2 上面カバー、3 排紙スタッカ、4 トレイカバー、
5 スイッチ類、6 給紙トレイカバー、14 サブフレーム、15 中支え部材、
16 調整部材、20 自動給紙装置、21 給紙ローラ、22 給紙トレイ、
23 ホッパ、41 搬送駆動ローラ、42 搬送従動ローラ、
43 搬送従動ローラホルダ、44 紙案内前部材、45 紙案内後部材、
46 プラテン、47 第1の排紙駆動ローラ軸、48 第2の排紙駆動ローラ軸、
61 キャリッジガイド軸、62 キャリッジ、63 記録ヘッド、
100 インクジェット式記録装置、500 ベルト駆動装置、550 従動プーリ、
551 ホルダ部、552 駆動プーリ、553 ベルト、554 アイドラ、
556 ばね軸、557 Eリング、560 フランジ部、561 モータ、
700 ねじりコイルばね、701 テンションアーム部、701a 先端部、
701b 基端部、705 支軸部、708 係止腕部、755 オートテンション機構、
758 ばね係止部、800 テンションアーム跳ね上がり防止手段、810 規制部、
810a ど当て、 900 従来のベルト駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリと、
従動プーリと、
前記駆動プーリの駆動力を前記従動プーリへ伝達するため、前記駆動プーリと前記従動プーリとに掛け回される無端のベルトと、
テンションアームの先端部に前記ベルトの外周面と当接して従動回転するアイドラを保持し、前記テンションアームの基端部に配設されたねじりコイルばねの付勢力により前記アイドラを介して前記ベルトを付勢して前記ベルトに張力を付加するオートテンション機構とを備えたベルト駆動装置であって、
前記ベルトの張力変化に起因して前記テンションアームが跳ね上げられるのを防止するテンションアーム跳ね上がり防止手段を備えたことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記テンションアーム跳ね上がり防止手段は、
前記オートテンション機構が取り付けられる基体に、前記付勢力に対抗する前記ベルトからの反力の方向への前記テンションアームの跳ね上がりを規制する規制部を備えたことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、前記規制部はテンションアームの前記先端部に対してベルト側と反対側の近傍に、ど当てを備えていることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記アイドラの幅は前記ベルトの幅より広く、前記アイドラの両端に、前記ベルトの外れを防止するフランジ部が設けられていることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項5】
請求項4において、前記フランジ部の高さは、前記オートテンション機構が前記ベルトを付勢した状態においての前記ど当てと前記テンションアームとの間隙の距離より、高く形成されていることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のベルト駆動装置を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−77900(P2006−77900A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263295(P2004−263295)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】