説明

ベンズアルデヒド化合物

【課題】変異型ロドプシンに対してフォールディング促進作用を有し、網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用な新規化合物を提供する。
【解決手段】下記の式(I)〔R1はアルデヒド基を示し;R2及びR3は水素原子、水酸基、アルキル基、又はアルコキシ基を示し;L1、L2、及びL3は-C(R4)(R5)-(R4及びR5は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又はアルキル基)、-O-、-N(R6)-(R6は水素原子又はアルキル基)、又は-C(=Q)-[=Qは=O、=S、=N-R7(R7は水素原子又はアルキル基)、又は=C(R8)(R9)(R8及びR9は水素原子又はアルキル基)]を示し;Xは-CH2-、-CH2-CH2-、又は-CH=CH-を示し;Y及びZは-O-、-CH2-、又は-C(R10)(R11)-(R10及びR11は水素原子又はアルキル基を示す〕で表される化合物又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異型ロドプシンに対してフォールディング促進作用を有し、網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用な新規ベンズアルデヒド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質が生体内で機能を発揮するためには、適切な折りたたみ構造をとる必要がある。折りたたみの異常、すなわちフォールディングの異常に起因する疾患は多数知られているが、未だ有効な治療法がないものが多い。ロドプシンの変異によりおこる網膜色素変性症もその一つである。通常、ロドプシンのような膜タンパク質は、翻訳後に小胞体(ER)でフォールディングし、その後細胞膜へ輸送される。一方、変異型ロドプシンはミスフォールドしやすく、ERの品質管理機構により「不良品」として認識・トラップされ、膜移行せずにERに蓄積する。この蓄積したロドプシンが凝集し、細胞死(網膜の変性)を引き起こすと考えられている(Mendes, H.F. et al., TRENDS in Mol. Med., 11, pp.177-185, 2005)。
【0003】
近年、難治性疾患疾患に多くみられるフォールディング異常を修正する手だてとして、リガンドのフォールディング促進作用の有用性が明らかになりつつある。例えば、バソプレシンV2受容体のフォールディング異常により起こる腎性尿崩症の臨床症状は、V2受容体アンタゴニストの投与により緩和することが示されている。この作用は受容体及びその下流のシグナル伝達を介した作用ではなく、アンタゴニストがフォールディング中間体に結合し、フォールディングを促進したことによる作用であるとされており、リガンドによるフォールディング異常の修正作用の有用性を示していると考えられている。
【0004】
桿体細胞で光受容体として機能するロドプシンに関しては、内在性リガンドである11-cis-レチナールがフォールディング異常を示す変異型ロドプシン(T17M)のフォールディングを促進(結果として局在異常を修正)すること、並びにモデルマウス(Li, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, pp.11933-11938, 1998)及び臨床試験(Berson, E.L. et al., Arch. Ophthalmol., 111, pp.761-772, 1993; Berson, E.L., Int. Ophthalmol. Clin., 40, pp.93-111, 2000)において前駆体であるビタミンAがロドプシン変異による網膜色素変性症に対して有効であることが示されている。
【0005】
しかしながら、高用量のビタミンA投与は脂溶性が高いことによる蓄積性、催奇形性、その他レチノイドとしての多様な生理作用などの副作用を引き起こす可能性があり、11-cis-レチナールはその構造に由来する化学的不安定性及び毒性などの問題点を有している。従って、ビタミンAや11-cis-レチナールの問題点を回避し、変異型ロドプシンに対して高いフォールディング促進作用を有する医薬の提供が望まれている。
【0006】
なお、網膜色素変性症に対して有効性を期待される化合物として、フォールディング異常を示す変異ロドプシン(P23H)に対して成熟と膜移行を促進する9-cis-レチナールが報告されており(Saliba, R.S. et al., J. Cell. Sci., 115, pp.2907-2918)、同様の作用を有する化合物として11-cis-レチナールを7員環でcis固定した11-cis-7-ring-レチナール(Noorwez, S.M. et al., J. Biol. Chem., 278, pp.14442-14450, 2003; Noorwez, S.M. et al., J. Biol. Chem., 279, 16278-16284, 2004)などが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mendes, H.F. et al., TRENDS in Mol. Med., 11, pp.177-185, 2005
【非特許文献2】Li, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, pp.11933-11938, 1998
【非特許文献3】Berson, E.L. et al., Arch. Ophthalmol., 111, pp.761-772, 1993
【非特許文献4】Berson, E.L., Int. Ophthalmol. Clin., 40, pp.93-111, 2000
【非特許文献5】Saliba, R.S. et al., J. Cell. Sci., 115, pp.290702918
【非特許文献6】Noorwez, S.M. et al., J. Biol. Chem., 278, pp.14442-14450, 2003
【非特許文献7】Noorwez, S.M. et al., J. Biol. Chem., 279, 16278-16284, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、変異型ロドプシンに対してフォールディング促進作用を有し、網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用な新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく、変異型ロドプシンのフォールディング促進による局在異常修正活性を指標として新規な化合物を鋭意探索した結果、下記の一般式(I)で表される化合物が変異型ロドプシンに対して所望のフォールディング促進作用を有しており、網膜色素変性症の予防及び/又は治療に有効であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1はアルデヒド基又はアルデヒド等価基を示し;R2及びR3はそれぞれ独立にベンゼン環上の任意の位置に存在する水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し;L1、L2、及びL3はそれぞれ独立に-C(R4)(R5)-(R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、-O-、-N(R6)-(R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は-C(=Q)-[=Qは=O、=S、=N-R7(R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は=C(R8)(R9)(R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)]を示し;Xは-CH2-、-CH2-CH2-、又は-CH=CH-を示し;Y及びZはそれぞれ独立に-O-、-CH2-、又は-C(R10)(R11)-(R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、R10及びR11が同時に水素原子であることはない)を示すが、Y及びZのうち少なくとも1つは-C(R10)(R11)-を示す〕で表される化合物又はその塩が提供される。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、R1がアルデヒド基であり、R2及びR3が水素原子である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩;Xが-CH2-CH2-である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩;Y及びZがそれぞれ独立に-C(R10)(R11)-である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩;及びY及びZが-C(CH3)2-である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0012】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CO-CH2-NH-、-CH2-CO-NH-、-NH-CO-CH2-、-NH-CH2-CO-、-CH2-NH-CO-、-NH-O-CH2-、-NH-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-O-NH-CH2-、-O-CH2-NH-、-CH2-O-NH-、-CO-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-CH2-CO-O-、-O-CO-CH2-、-O-CH2-CO-、-CH2-O-CO-、-C(=CH2)-O-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-CH2-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-CH2- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-O-NH-、-C(=CH2)-NH-O-、-NH-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-NH- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-CH2-、-CH2-C(=CH2)-CH2-、-CH2-CH2-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-C(=CH2)-、-O-CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-O-、-CO-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH2-CH2-CO-、-CO-CH2-CO-、-NH-CH2-CH2-、-CH2-NH-CH2-、-CH2-CH2-NH-、-NH-CH2-NH-、及び-CH2-CH2-CH2-、並びに上記の基において1個の水素原子が水酸基に置き換えられた基、及び上記の基において1個又は2個の水素原子がメチル基で置き換えられた基からなる群から選ばれる基である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0013】
さらに好ましい態様によれば、本発明により、-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CH2-NH-CO-、-CH2-CO-NH-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-CO-O-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-O-CH2-CO-、-CH2-CH2-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH(OH)-CH2-O-、-O-CH2-CH(OH)-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CO-CH2-CH2-、及び-CH2-CH2-CO-からなる群から選ばれる基である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩;-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CH2-NH-CO-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-CH2-CH2-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-CH2-CH2-O-、-CH(OH)-CH2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、及び-CO-CH2-CH2-からなる群から選ばれる基である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩;及び-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-からなる群から選ばれる基である上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0014】
別の観点からは、上記一般式(I)で表される化合物又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬が提供される。この医薬は、フォールディング異常を示す変異型ロドプシンに対してフォールディングを促進することにより網膜色素変性症の予防及び/又は治療に有用である。
【0015】
また、本発明により、フォールディング異常を示す変異型ロドプシンに対するフォールディング促進剤であって、上記一般式(I)で表される化合物又は生理的に許容されるその塩を含む促進剤が提供される。
【0016】
さらに本発明により、網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための上記式(I)で表される化合物又は生理的に許容されるその塩の使用;及び網膜色素変性症の予防及び/又は治療方法であって、上記式(I)で表される化合物又は生理的に許容されるその塩の予防及び/又は治療有効量を患者に投与する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明により提供される上記一般式(I)で表される化合物又はその塩はフォールディング異常を示す変異型ロドプシンに対してフォールディング促進作用を有していることから、網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】HAタグ導入によりロドプシンの局在に影響を与えないことを確認した結果を示した図である。緑はロドプシン、赤はPDI (protein disulfide isomerase; ERの酵素)に対する抗体で染色した結果を示す。
【図2】HAタフを導入したP23H変異ロドプシンに対して9-cis-レチナールの局在異常修正作用を確認した結果を示した図である。膜上のロドプシンを赤、細胞内も含めた全ロドプシンを緑で表している。上から順に、WT (DMSO 0.5%)、P23H (DMSO 0.5%)、P23H (9-cis-レチナール 5 μM) を示す。左から、緑: anti-rhodopsin (permeabilized)、赤: anti-HA (non-permeabilized)、重ね合わせ (緑+赤=黄)を示す。
【図3】96 wellプレートを用いて膜上のロドプシン量を発光量を指標にして評価した結果を示した図である。左図は、9-cis -レチナールによりP23Hロドプシンの膜移行量が増加することを示し、右図は野生型(WT)とP23H変異体のそれぞれの膜上発現量を示す。
【図4】96 wellプレートを用いた評価系で例1で合成した本発明の化合物の評価を行った結果を示した図である。
【図5】96 wellプレートを用いた評価系で例1で合成した本発明の化合物の評価を行った結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
R1はアルデヒド基又はアルデヒド等価基を示す。アルデヒド等価基の種類は特に限定されないが、例えば、ジメチルアセタール、ジエチルアセタール、エチレンジオキシアセタールなどのアセタール、ホウ酸(-B(OH)2)及びそのエステル(例えば-B(OR20)(OR21)(R20及びR21はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基など)、及びケトン(例えば-CO-R22(R22は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは1個又は2個以上のフッ素原子などで置換された炭素数1〜6のアルキル基)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0020】
一般式(I)で表される本発明の化合物においてベンゼン環上に存在するアルデヒド基の位置は特に限定されないが、ベンゼン環に結合する-L3-で表される基に対してパラ位であることが好ましい。このアルデヒド基を適宜の保護基で保護してアルデヒド等価基に変換することにより、一般式(I)で表される本発明の化合物をプロドラッグとして利用することができるが、このようにアルデヒド等価基を有する化合物も本発明の範囲に包含されることを理解すべきである。
【0021】
R2及びR3はそれぞれ独立にベンゼン環上の任意の位置に存在する水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。本明細書において「アルキル基」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を包含する。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシ基など)のアルキル部分についても同様である。R2及びR3としては水素原子が好ましい。
【0022】
Xは-CH2-、-CH2-CH2-、又は-CH=CH-を示すが、Xとしては-CH2-CH2-が好ましい。Y及びZはそれぞれ独立に-O-、-CH2-、又は-C(R10)(R11)-を示すが、Y及びZのうち少なくとも1つは-C(R10)(R11)-を示す。R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、R10及びR11が同時に水素原子であることはない。好ましくはY及びZがそれぞれ独立に-C(R10)(R11)-を示す場合であり、さらに好ましいのはY及びZが共に-C(CH3)2-を示す場合である。Y及びZが共に-C(CH3)2-を示す場合において、Xが-CH2-CH2-である場合が特に好ましい。
【0023】
L1、L2、及びL3はそれぞれ独立に-C(R4)(R5)-(R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子(ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよい)、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、-O-、-N(R6)-(R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は-C(=Q)-[=Qは=O、=S、=N-R7(R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は=C(R8)(R9)(R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)]を示す。R4及びR5は好ましくは水素原子、水酸基、又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、さらに好ましくは水素原子、水酸基、又はアルキル基を示し、特に好ましくは水素原子又は水酸基を示す。R6は好ましくは水素原子又はメチル基を示し、より好ましくは水素原子を示す。=Qは好ましくは=O又は=C(R8)(R9)を示す。R7は好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくはメチル基を示す。R8及びR9は好ましくは共に水素原子を示す。
【0024】
-L1-L2-L3-で表される基の具体例としては、例えば、-CO-NH-CH2-、-CO-CH2-NH-、-CH2-CO-NH-、-NH-CO-CH2-、-NH-CH2-CO-、-CH2-NH-CO-、-NH-O-CH2-、-NH-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-O-NH-CH2-、-O-CH2-NH-、-CH2-O-NH-、-CO-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-CH2-CO-O-、-O-CO-CH2-、-O-CH2-CO-、-CH2-O-CO-、-C(=CH2)-O-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-CH2-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-CH2- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-O-NH-、-C(=CH2)-NH-O-、-NH-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-NH- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-CH2-、-CH2-C(=CH2)-CH2-、-CH2-CH2-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-C(=CH2)-、-O-CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-O-、-CO-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH2-CH2-CO-、-CO-CH2-CO-、-NH-CH2-CH2-、-CH2-NH-CH2-、-CH2-CH2-NH-、-NH-CH2-NH-、及び-CH2-CH2-CH2-などの基のほか、上記の基において1個の水素原子が水酸基に置き換えられた基、及び上記の基において1個又は2個の水素原子がメチル基で置き換えられた基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0025】
-L1-L2-L3-で表される基として、好ましくは-CO-NH-CH2-、-CH2-NH-CO-、-CH2-CO-NH-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-CO-O-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-O-CH2-CO-、-CH2-CH2-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH(OH)-CH2-O-、-O-CH2-CH(OH)-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CO-CH2-CH2-、及び-CH2-CH2-CO-からなる群から選ばれる基を挙げることができ、さらに好ましくは-L1-L2-L3-で表される基として-CO-NH-CH2-、-CH2-NH-CO-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-CH2-CH2-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-CH2-CH2-O-、-CH(OH)-CH2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、及び-CO-CH2-CH2-からなる群から選ばれる基を挙げることができる。特に好ましくは、-L1-L2-L3-で表される基として-CO-NH-CH2-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-からなる群から選ばれる基を用いることができる。
【0026】
一般式(I)で表される本発明の化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、これらの不斉炭素に基づく任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、2個以上の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の任意の混合物などは、いずれも本発明の範囲に包含される。さらに、遊離化合物又は塩の形態の化合物の任意の水和物又は溶媒和物も本発明の範囲に包含される。
【0027】
一般式(I)で表される本発明の化合物は、塩の形態、例えば酸付加塩の形態で存在する場合があるが、本発明の範囲には任意の塩が包含される。酸付加塩としては、塩酸塩若しくは臭化水素酸塩などの鉱酸塩、又はp-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、シュウ酸塩、若しくは酒石酸塩などの有機酸塩を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0028】
上記一般式(I)で表される化合物のうち好ましい化合物を以下に示すが、本発明の範囲は下記の具体例に限定されることはない。下記の化合物のうち、(A)群の化合物については-L1-L2-L3-で表される基の例を示し、(B)群の化合物については-X-Y-Z-で表される環構造の例を示し、(C)群の化合物についてはアルデヒド等価基の例を示してあり、(D)群の化合物についてはR2及びR3で表される基の例を示す。従って、好ましい化合物は、(A)群の化合物についての-L1-L2-L3-で表される基、(B)群の化合物についての-X-Y-Z-で表される環構造、アルデヒド基又は(C)群の化合物についてのアルデヒド等価基、及びR2及びR3が水素原子である場合又は(D)群の化合物についてのR2及びR3で表される基の組み合わせから選択されることを理解すべきである。
【0029】
【化2】

【0030】
本明細書の実施例には、上記一般式(I) に包含される上記の好ましい化合物の製造方法が具体的に説明されている。従って、これらの製造方法において用いられた出発原料、反応試薬、及び反応条件などを適宜選択し、必要に応じてこれらの製造方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、本発明の範囲に包含される化合物はいずれも製造可能である。もっとも、本発明の化合物の製造方法は、実施例に具体的に説明された方法に限定されることはない。
【0031】
一般式(I)で表される本発明の化合物又はその塩は、以下の実施例に具体的に示されるように、フォールディング異常を示す変異型ロドプシンのフォールディングを促進する活性を有しており、その作用に基づいて、フォールディング異常を示す変異型ロドプシンのフォールディング異常に起因して発症する網膜色素変性症の予防及び/又は治療に有効性を示すという特徴がある。
【0032】
ロドプシンは桿体細胞で光受容体として機能するが、ロドプシンという用語はアポ型のオプシンに11-cis-レチナール(retinal)がリジン(Lys)との共有結合を介して結合したホロ型を意味している。ロドプシンに光が当たると11-cis-レチナール部分がtrans体へと異性化し、その結果として起こる構造変化によって活性型となり、G タンパク質であるGt(transducin) を活性化することで下流へシグナルを伝達する。続いて活性型ロドプシン内のtrans-レチナールとLys のイミン(イミニウム) は加水分解され、オプシンとall-trans-レチナールに分離する。このオプシンに新たに合成された11-cis-レチナールが結合することでロドプシンが再生する。
【0033】
網膜色素変性症は、遺伝性、進行性の網膜変性疾患であり、桿体細胞の変性とそれに続く錐体細胞の変性を特徴としている[Hartong, D. et al., Lancet, 368, pp.1795-1809, 2006; Kennan, A. et al., TRENDS in Genetics, 21, pp.103-110, 2005]。多くの場合に桿体細胞から先に変性が生じることから、初期には夜盲、視野狭窄が起こり、錐体細胞が失われるにつれて視力の低下を引き起こす。頻度は4,000-8,000 人に一人と言われており、患者の半数にははっきりとした遺伝傾向が認められる[難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jp/sikkan/114.htm(Updated on 7 September 2007)]。そのうち常染色体劣性の形式が最も多く(30%程度)、常染色体優性がそれに続く(15%)。この疾患のほとんどは単一遺伝子の変異によるが、どの遺伝子が変異を起こしているかは非常に多様で、上位45 の遺伝子で60%が説明できる程度である。
【0034】
常染色体優性網膜色素変性症の原因として最も多いのが、その25%を占めるロドプシンの変異である。1990 年にDryja らが初めてロドプシンのP23H(23 番のPro がHis へ置換) 変異が網膜色素変性症を引き起こしうることを示して以来(Drya T.P. et al., Nature, 343, pp.364-366, 1990)、100 を超える数の原因変異が報告されているが(Stojanovic, A. et al., Rceptors and Channels, 8, pp.33-50, 2002)、その多くはミスフォールドを起こしてトラフィッキング異常を生じるものと考えられている。網膜色素変性症の病態の本質は桿体細胞と錐体細胞の変性(アポトーシス) であると考えられている(Chang, G.Q. et al., Neuron, 11, pp.595-605, 1993; Portera-Cailliau, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, pp.974-978, 1994)。この機序については、大きく分けて変異体が機能を獲得する機序(gain of function) と変異体が野生型を抑制する機序(dominant negative)の2つが提案されている(Mendes, H.F. et al., TRENDS in Mol. Med., 11, pp.177-185, 2005)。
【0035】
変異体が機能を獲得する機序のうち、一つの可能性はミスフォールドしたロドプシンにより引き起こされる生体応答(UPR, Unfolded Protein Response: Rutkowski, D.T. et al., Trends Cell Biol., 14, pp.20-28, 2004)によるものである。これは生体がミスフォールドしたタンパク質を認識し、新たな転写翻訳全般を抑制することでミスフォールドしたタンパク質のさらなる蓄積を防ぐという本来防御的役割を担う応答であるが、これによってストレスが緩和されないとアポトーシスを起こすと考えられている。もう一つの可能性はミスフォールドしたロドプシンが凝集し、この凝集体が障害を起こす機序であり、凝集しやすいP23Hロドプシンによって引き起こされるユビキチン・プロテアソーム系の機能低下が視細胞変性の機序ではないかとの説がある(Illing, M.E. et al., J. Biol. Chem., 277, 34150-34160, 2002)。変異体が野生型を抑制する機序については、P23H ロドプシンが凝集するときに野生型も一緒に凝集することが示されており(Saliba、R.S. et al., J. Cell Sci., 115, 2907-2918, 2002)、フォールディング異常のある変異体であるP23H(及びG188R)が野生型の成熟および膜移行を抑制することも示されていることから(Rajan, R.S. et al., J. Biol. Chem., 280, pp.1284-1291, 2005)、フォールディングに異常のある変異を遺伝子座の片方に持つことで野生型ロドプシンが成熟及び膜移行しなくなることが示唆されている。
【0036】
このように網膜色素変性症はフォールディングに異常を呈する変異ロドプシンにより引き起こされる疾患であり、フォールディングに異常を呈する変異ロドプシンのフォールディングを促進することにより、予防及び/又は治療可能な疾患であると考えられる。本明細書において用いられる「フォールディングに異常を呈する変異ロドプシン」の用語については、先に説明したとおりロドプシンのミスフォールドを起こす変異は極めて多様であることが知られていることから(Stojanovic, A. et al., Rceptors and Channels, 8, pp.33-50, 2002)、この用語をいかなる意味においても限定的に解釈してはならず、最も広義に解釈しなければならない。また、上記の説明から、フォールディングに異常を呈する変異ロドプシンに対してフォールディングを促進する作用を有する本発明の医薬が網膜色素変性症の予防及び/又は治療に有効性を示すことは当業者に容易に理解されることは言うまでもない。なお、本明細書において「予防」の用語は網膜色素変性症の発症予防を含めて解釈すべきである。
【0037】
本発明の医薬は、上記の一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩の1種又は2種以上を有効成分として含んでいる。本発明の医薬としては上記物質それ自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用又は非経口用の医薬組成物として投与することができる。経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、点眼剤、又は経粘膜吸収剤等を挙げることができる。
【0038】
上記の医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができるが、これらは医薬組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の体重や年齢、症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。例えば、経口投与の場合には成人一日あたり 0.01 〜1,000 mg程度の範囲で用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例の範囲に限定されることはない。
例1
(a)合成の一般的手法
1H 及び13C NMR スペクトルはJEOL JNM-A500 (500 MHz) で測定し、ケミカルシフトは重クロロホルムのプロトン及び炭素(それぞれδ 7.26 ppm, 77.0 ppm)を標準とした数値で示した。
(b)OG526
【化3】

【0041】
テトラヒドロフラン(THF, 15 mL)に水素化リチウムアルミニウム(LAH, 309 mg, 8.1 mmol)を懸濁してp-シアノベンズアルデヒド(268 mg, 2.05 mmol)を0℃で加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応液に0℃でゆっくりNa2SO4・10H2Oを加え、続いて酢酸エチルを加えて室温で1時間攪拌した。得られた白色懸濁物をセライト濾過し、濾液を濃縮して粗ベンジルアミン(OG524)を白色固体として得た。得られた粗ベンジルアミンは精製せずに次工程に用いた。
【0042】
化合物OG261 (227 mg, 0.997 mmol)を無水ジクロルメタン(10 mL)に溶解してオキザリルクロリド(92 μL, 1.07 mmol)で処理し、数滴のジメチルホルムアミド(DMF)を0℃で加えて室温で1時間攪拌した。この混合物に無水 ジクロルメタン (10 mL)に溶解した上記工程で得られた化合物OG524 及びトリエチルアミン (0.15 mL, 1.07 mmol)を0℃で加え、反応混合物を室温に戻して終夜攪拌した。氷冷水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、希塩酸、及び食塩水で順次洗浄し、乾燥後に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル 2:1→1:3)で精製して目的物を白色結晶として得た(OG525, 341 mg, 0.970 mmol, 99%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.80 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.46 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 7.35-7.34 (m, total 5H), 6.33 (br s, 1H), 4.70 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.65 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 1.69 (s, 4H), 1.63 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 1.30 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0043】
OG525 (340 mg, 0.967 mmol)、ジクロルメタン (20 mL)、及びMnO2 (2.1 g, 24 mmol)の混合物を室温で終夜攪拌し、反応混合物をセライト濾過して濾液を濃縮した。得られた残渣を再結晶して(熱ヘキサン/ジクロルメタン)目的物を白色固体として得た(OG526, 256 mg, 0.732mmol, 76%)。
1H NMR (CDCl3): δ 10.00 (s, 1H), 7.86 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.49 (dd, J = 8.3, 1.8 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.32 Hz, 1H), 6.49 (br s, 1H), 4.74 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 1.70 (s, 4H), 1.31 (s, 6H), 1.29 (s, 6H).
【0044】
(c)OG541
【化4】

【0045】
テレフタル酸モノメチルエステル塩化物(1.90 g, 9.54 mmol)をジクロルメタン(20 mL)に溶解し、アンモニア水(4 mL, 過剰量)を加えて室温で終夜攪拌した。反応混合物に1規定希塩酸を加えてジクロルメタンで抽出し、有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、乾燥及び濃縮して目的物を白色粉末として得た(OG528, 1.45 g, 8.10 mmol, 85%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.12 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.10 (br s, 1H), 5.66 (br s, 1H), 3.95 (s, 3H).
【0046】
無水 ジクロルメタン (20 mL)にOG340 (332 mg, 1.76 mmol)を溶解し、ジクロロメチルメチルエーテル(0.320 mL, 3.53 mmol)及びTiCl4 (0.40 mL, 3.6 mL)を-78℃で加え、得られた暗色溶液を室温に戻して終夜攪拌した。0℃で氷冷した希塩酸を加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄し、乾燥して濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 7:1)で精製してアルデヒド体を得た。得られたアルデヒド体(337 mg)及びOG528(287 mg, 1.60 mmol)を無水トルエン(18 mL)溶解してトリフルオロ酢酸(TFA, 8.0 mmol)及びトリエチルシラン (1.3 mL, 8.0 mmol)を加えてアルゴン下で8時間加熱還流した。この溶液を水及び酢酸エチルに分配し、有機層を重曹水及び食塩水で順次洗浄し、乾燥して濃縮した。得られた残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 3:1 →2:1)で精製して目的物を得た(OG537, 263 mg, 0.693 mmol, 2 steps 39%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.09 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.84 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 6.34 (br s, 1H), 4.60 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 3.94 (s, 3H), 1.69 (s, 4H), 1.28 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0047】
OG537(174 mg, 0.459 mmol)のTHF溶液(10 mL)にLiBH4(180 mg, 8.2 mmol)を0℃で加えて終夜攪拌した。0℃でメタノール及び塩化アンモニウム水溶液をゆっくりと加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄し、乾燥及び濃縮して、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 1:1→1:2)で精製して目的物を白色泡状物として得た(OG540, 112 mg, 0.319 mmol, 69%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.78 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.31-7.28 (m, total 2H), 7.13 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.29 (br s, 1H), 4.76 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 4.60 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 1.69 (s, 4H), 1.28 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0048】
OG540(178 mg, 0.506 mmol)、MnO2(1.08 g, 12.4 mmol)、及びジクロルメタン(10 mL)の混合物を室温で終夜攪拌し、セライト濾過した後に母液を濃縮した。得られた残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 3:1→2:1)により精製して目的物を淡黄色泡状物として得た(OG541, 138 mg, 0.395 mmol, 78%)。
1H NMR (CDCl3): δ 10.08 (s, 1H), 7.95 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.93 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.28 ( d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 6.36 (br s, 1H), 4.61 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 1.69 (s, 4H), 1.29 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0049】
(d)OG555
【化5】

【0050】
OG261(142 mg, 0.612 mmol)、p-キシレン-α,α'-ジオール(103 mg, 0.746 mmol)、ジメチルアミノピリジン(20 mg, 0.164 mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI, 150 mg, 0.782 mmol)、及びトリエチルアミン(0.10 mL, 0.72 mmol) を無水ジクロルメタン(10 mL)に加えて室温で終夜攪拌した。反応混合物を水及びジクロルメタンに分配して有機層を希塩酸及び食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)で精製して目的物を黄色油状物として得た(OG539, 133 mg, 0.377 mmol, 62%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.03 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.79 (dd, J = 8.5, 1.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.35 (s, 2H), 4.71 (d, J = 3.7 Hz, 2H), 1.69 (s, 4H), 1.64 (br s, 1H), 1.30 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0051】
OG541の合成と同様にして目的物を得た(OG544, 98mg, 0.280 mmol, 75%)。
1H NMR (CDCl3): δ 10.03 (s, 1H), 8.05 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.82 (dd, J = 8.5, 1.8 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.43 (s, 2H), 1.70 (s, 4H), 1.31 (s, 6H), 1.30 (6H).
【0052】
(e)OG545
【化6】

【0053】
6-(ブロモエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,1,4,4-テトラメチルナフタレン(118 mg, 0.420 mmol)、テレフタルアルデヒド酸(88 mg, 0.586 mmol)、炭酸カリウム(280 mg, 2.03 mmol)をDMF(3 mL)に懸濁して室温で終夜攪拌した。反応混合物を水及び酢酸エチルに分配して、有機層を水及び食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 15:1→9:1)で精製して目的物を淡黄色油状物として得た(OG545, 106 mg, 0.303 mmol, 72%)。
1H NMR (CDCl3): δ 10.10 (s, 1H), 8.23 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 7.9, 2.0 Hz, 1H), 5.34 (s, 2H), 1.70 (s, 4H), 1.30 (s, 6H), 1.29 (s, 6H).
【0054】
(f)OG549
【化7】

【0055】
p-キシレン-α,α'-ジオール(309 mg, 2.24 mmol)を無水DMF(5 mL)に溶解して0℃でNaH(油中60%, 94 mg, 2.4 mmol)を加えて室温で30分攪拌した。この混合物に無水DMF(5 mL)に溶解した6-(ブロモメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,1,4,4-テトラメチルナフタレン(173 mg, 0.615 mmol)を0℃で加え、室温で3時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄し、乾燥して濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)で精製して目的物を透明オイルとして得た(OG547, 135 mg, 0.399 mmol, 65%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.38 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 4.70 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 4.56 (s, 2H), 4.50 (s, 2H), 1.68 (s, 4H), 1.28 (s, 6H), 1.27 (s, 6H).
【0056】
OG541の製造と同様にして目的物を得た(OG549, 72mg, 0.214 mmol, 54%)。
1H NMR (CDCl3): δ 10.01 (s, 1H), 7.87 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 4.63 (s, 2H), 4.54 (s, 2H), 1.69 (s, 4H), 1.29 (s, 6H), 1.28 (s, 6H).
【0057】
(g)OG551
【化8】

【0058】
OG340(164 mg, 0.871 mmol)及びブロモアセチルクロリド(0.085 mL, 1.02 mmol)を無水ジクロルメタン(10 mL)に溶解してAlCl3(160 mg, 1.20 mmol)を0℃で加え、室温で2時間攪拌した。氷冷した1規定塩酸をゆっくり加えて反応を停止し、反応混合物をジクロルメタンで抽出した。有機層を重曹水及び食塩水で順次洗浄した後、乾燥して濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 7:1)で精製して目的物をオレンジ色油状物として得た(OG550, 235 mg, 0.760 mmol, 87%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.97 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.72 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.42 (s, 2H), 1.71 (s, 4H), 1.32 (s, 6H), 1.30 (s, 6H).
【0059】
DMF (6 mL)にOG550(234 mg, 0.757 mmol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(101 mg, 0.827 mmol)、及び炭酸カリウム(273 mg, 1.98 mmol)を加えて終夜攪拌した。塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチルで抽出して、有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、乾燥して濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 3:1)で精製して目的物を得た(OG551, 200 mg, 0.571 mmol, 75%)。
1H NMR (CDCl3): δ 9.89 (s, 1H), 7.98 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.72 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 5.37 (s, 2H), 1.72 (s, 4H), 1.32 (s, 6H), 1.31 (s, 6H).
【0060】
(h)OG557
【化9】

【0061】
無水ジクロルメタン(15 mL)にOG340(1.03 g, 5.49 mmol)及びアセチルクロリド(0.59 mL, 8.30 mmol)を溶解し、AlCl3(1.01 g, 7.58 mmol)を0℃で加えた後に4時間加熱還流した。0℃で氷冷水を加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、乾燥して濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:1)で精製して目的物をオレンジ色油状物として得た(OG548, 1.10 g, 4.77 mmol, 87%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.94 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, J = 8.5, 1.8 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 2.57 (s, 3H), 1.71 (s, 4H), 1.32 (s, 6H), 1.30 (s, 6H).
【0062】
エタノール(6 mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(2N, 2 mL)にOG548(119 mg, 0.517 mmol)及びテレフタルアルデヒド酸(109 mg, 0.727 mmol)を溶解して室温で終夜攪拌した。希塩酸を加えて酸性化して酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後に乾燥して濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製した後、得られた生成物をジクロルメタン(2 mL)に溶解してトリエチルシラン(0.40 mL, 2.5 mmol)及びTFA(0.20 mL)を加え、終夜攪拌した。反応混合物をジクロルメタンで希釈して水及び食塩水で順次洗浄した後、乾燥して濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)で精製して目的物を淡黄色油状物として得た(OG554, 248 mg, 0.43 mmol, 83%)。
1H NMR (CDCl3): δ 8.02 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 7.9, 1.5 Hz, 1H), 2.73 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.01-1.95 (m, 2H), 1.67 (s, 4H), 1.27 (s, 6H), 1.27 (s, 6H).
MS (FAB): m/z 333 (M+H-H2O)+.
【0063】
OG554(248 mg, 0.43 mmol)をTHF(10 mL)に溶解してLAH(45 mg, 1.18 mmol)を0℃で加え、4時間加熱還流した。反応混合物に0℃でNa2SO4・10H2Oを加えて1時間攪拌した後、得られた白色懸濁物をセライトで濾過し、母液を濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:2)で精製して目的物を透明オイルとして得た(OG556, 132 mg, 0.392 mmol, 91%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.29 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.09 (s, 1H), 6.95 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.67 (s, 2H), 2.67 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.59 (t, 7.6 Hz, 2H), 1.98-1.91 (m, 2H), 1.67 (s, 4H), 1.27 (s, 6H), 1.27 (s, 6H).
【0064】
OG541の製造と同様にして目的物を得た(G557, 90mg, 0.269 mmol, 70%)。
1H NMR (CDCl3): δ 9.98 (s, 1H), 7.80 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 2.74 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.01-1.95 (m, 2H), 1.67 (s, 4H), 1.27 (s, 6H), 1.27 (s, 6H) .
【0065】
例2:試験例
変異型ロドプシンとしては、頻度が高く、フォールディング異常を起こすロドプシン変異として最初に見つかったP23H (23番ProのHisへの置換)変異体を用いた。この変異体は正常に細胞膜まで輸送されずにERに蓄積すること、11-cis-レチナー及び9-cis-レチナールにより変異体が細胞膜へ発現することが知られている。本発明の化合物について、この局在異常の修正を以下の2つの方法で評価した。(1)免疫染色・蛍光顕微鏡による細胞内の局在の確認;及び(2)膜上のロドプシンのみに抗体を結合させ、抗体についている酵素活性により結合した抗体量、すなわちロドプシン量の定量。
【0066】
膜上のロドプシンのみを定量するためには、ロドプシンの細胞外領域に対する抗体が必要となる。そこで、ロドプシンの細胞外側領域となるN末端にタグを導入した。ロドプシンのN末端にタグを入れた報告例はないが、同じGPCRであるバソプレシンV2受容体では局在に影響を与えることなくHA(hemaglutinin)タグ(9 a.a., YPYDVPDYA)が導入可能であることが示されている(Schonebeg, T. et al., EMBO J., 15, pp.1283-1291, 1996)。タグの挿入部位によっては局在異常を起こすことが知られているため、タグ導入によりロドプシン局在に影響がないかどうかを蛍光顕微鏡で確認した。HAタグの有無にかかわらず、野生型ロドプシンは主に細胞膜に局在しており、P23H変異体は細胞内(主にER)に局在していることが確認され、局在に関してタグ導入による影響はほとんどなかった(図1)。
【0067】
タグを導入したP23H変異体を用いて9-cis-レチナールの局在異常修正作用(Saliba, R.S. et al., J. Cell. Sci., 115, pp.2907-2918, 2002; Mendes, H.F. et al., Hum. Mol. Genet., 17, pp.3043-3054, 2008)が再現できるかどうかを確認した。図2は膜上のロドプシンを赤、細胞内も含めた全ロドプシンを緑で表している。上から順に、WT (DMSO 0.5%)、P23H (DMSO 0.5%)、P23H (9-cis-レチナール 5 μM) を示す。野生型では発現しているロドプシンの大部分が膜上に存在することがわかる(上段の赤・緑)。一方、P23Hロドプシンは大部分が細胞内にあり(中段の緑)、膜上にはほとんど発現していない(中段の赤)。P23Hを9-cis-レチナール (5 μM)で処理すると、膜上に発現しているロドプシンの量が増えることがわかる(下段の赤)。従って、9-cis-レチナールによりP23H変異体の膜移行が促進されていることが確認できた。
【0068】
つぎに、96 well プレートを用いて膜上のロドプシン量を評価する系(Cell ELISA)の構築を行った。ポリリジンでコートした96 well プレートにHEK293細胞(5-8×103 cell/well)をまき、5%ウシ胎児血清、ペニシリン、及びストレプトマイシンを添加したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)で加湿した5%CO2インキュベーター中で37℃で培養し、16-20時間後にリン酸カルシウム沈殿法によりトランスフェクトした。2時間後に細胞を被検化合物(DMSO最終濃度0.1%として5% FBSを含むDMEMで希釈)で処理し、20時間インキュベートした後に細胞を固定して(PBS中4%ホルムアルデヒドで室温にて30分処理)、ブロック化(1%BSA+PBS中0.05% Tween20で室温にて1時間処理)した後、8000倍希釈したHRP-共役抗HAポリクローナル抗体(A190-108P, Bethyl Laboratories, Inc.)で1.5時間室温で反応した。0.1% BSAを含むPBSで3回洗浄した後、化学発光HRP基質(SuperSignal ELSA Pico chemilunescent substrate, PIERCE Biotechnology, Inc.)を加えて室温で10分振盪した。その後に化学発光を測定し(Perkin Elmer wallac 1420 multilabel counter)、相対発光を(被検化合物処理ウェル−ウェル平均バックグラウンド)/(DMSO処理ウェル平均−ウェル平均バックグラウンド)として求めた。HRPの量と発光量はこの評価系で用いる範囲で直線的であり、発光量から膜上にあるロドプシン量を定量できる。
【0069】
この系を用いて、9-cis-レチナールによりP23Hロドプシンの膜移行量が増えるかどうか調べたところ、蛍光顕微鏡での観察結果と同様に、膜移行量が増加していることが確認できた(図3の左図)。100μMでの発光量低下は細胞毒性によるものである。30 μM程度から発光量の低下がみられることから、正確なEC50は算出できないものの、この評価系により9-cis -レチナールのEC50は数μMから数十μM程度であると結論された。図3の右図には野生型(WT)とP23H変異体のそれぞれの膜上発現量を示した。P23H変異体はWTに比べ、15%程度の膜上発現量であると考えられるが、これが9-cis-レチナールにより30%程度まで上昇する。一方、WTにおいては特に膜上発現量の上昇は認められなかった。縦軸の値は、トランスフェクションしていない場合の発光量を差し引き、DMSO処理時の発現量に対する比率で示した。
【0070】
上記の96 wellプレートを用いた評価系で例1で合成した本発明の化合物の評価を行った。結果を図4及び5に示す。この結果、本発明の化合物は9-cis-レチナールと同様にロドプシン変異体に対して膜移行量を増加させることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1はアルデヒド基又はアルデヒド等価基を示し;R2及びR3はそれぞれ独立にベンゼン環上の任意の位置に存在する水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し;L1、L2、及びL3はそれぞれ独立に-C(R4)(R5)-(R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、-O-、-N(R6)-(R6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は-C(=Q)-[=Qは=O、=S、=N-R7(R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、又は=C(R8)(R9)(R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)]を示し;Xは-CH2-、-CH2-CH2-、又は-CH=CH-を示し;Y及びZはそれぞれ独立に-O-、-CH2-、又は-C(R10)(R11)-(R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、R10及びR11が同時に水素原子であることはない)を示すが、Y及びZのうち少なくとも1つは-C(R10)(R11)-を示す〕で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
R1がアルデヒド基であり、R2及びR3が水素原子である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
Xが-CH2-CH2-であり、Y及びZが-C(CH3)2-である請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CO-CH2-NH-、-CH2-CO-NH-、-NH-CO-CH2-、-NH-CH2-CO-、-CH2-NH-CO-、-NH-O-CH2-、-NH-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-O-NH-CH2-、-O-CH2-NH-、-CH2-O-NH-、-CO-O-CH2-、-CO-CH2-O-、-CH2-CO-O-、-O-CO-CH2-、-O-CH2-CO-、-CH2-O-CO-、-C(=CH2)-O-CH2-、-C(=CH2)-CH2-O-、-CH2-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-CH2- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-O-NH-、-C(=CH2)-NH-O-、-NH-C(=CH2)-O-、-O-C(=CH2)-NH- -O-CH2-C(=CH2)-、-CH2-O-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-CH2-、-CH2-C(=CH2)-CH2-、-CH2-CH2-C(=CH2)-、-C(=CH2)-CH2-C(=CH2)-、-O-CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-O-、-CO-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH2-CH2-CO-、-CO-CH2-CO-、-NH-CH2-CH2-、-CH2-NH-CH2-、-CH2-CH2-NH-、-NH-CH2-NH-、及び-CH2-CH2-CH2-、並びに上記の基において1個の水素原子が水酸基に置き換えられた基、及び上記の基において1個又は2個の水素原子がメチル基で置き換えられた基からなる群から選ばれる基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
-L1-L2-L3-で表される基が-CO-NH-CH2-、-CO-O-CH2-、-CH2-O-CO-、-CH2-O-CH2-、-CO-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-からなる群から選ばれる基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化合物又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬。
【請求項7】
フォールディング異常を示す変異型ロドプシンに起因する網膜色素変性症の予防及び/又は治療のための請求項6に記載の医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6334(P2011−6334A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148965(P2009−148965)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月2日 社団法人 日本薬学会主催 日本薬学会第129年会Web公開 (刊行物等) 平成21年3月27日 社団法人 日本薬学会主催 日本薬学会第129年会にて発表
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】