ベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体
【課題】粒径が異なる複数種のベントナイト成形体の混合作業を不要にして、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を製造することができるベントナイト成形体の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体を提供する。
【解決手段】粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形する。また、転動造粒工程で、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形する。
【解決手段】粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形する。また、転動造粒工程で、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射性廃棄物を処分した廃棄物埋設処分施設の処分坑道を埋め戻すための埋め戻し材などとして用いるベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下深部に高レベル(あるいは低レベル)の放射性廃棄物を埋設処分することが検討されている。この際、放射性廃棄物は、ガラスと混ぜて固化され、このガラス固化体を炭素鋼などからなるオーバーパックで密閉した廃棄体として処分される。また、廃棄体は、図10及び図11に示すように、地下深部の比較的安定した地山G内に、略環状に繋がる主要坑道1と、この主要坑道1と繋がるように形成した処分坑道や処分孔(以下、処分坑道2という)とからなる廃棄物埋設処分施設Aを構築し、この廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2内に処分される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、廃棄体を処分した処分坑道2をそのままにしておくと、処分坑道2の周辺地山Gの緩みが拡大したり、地下水の卓越した水みちが形成され、廃棄物埋設処分施設A全体としてのバリア性能を低下させるおそれがある。このため、地山Gと同等以上の低透水性の材料(埋め戻し材3)で処分坑道2を埋め戻すことが必要であり、この埋め戻し材3として、膨潤性や放射性物質の吸着性に優れるベントナイトを用いることが検討されている。そして、このようなベントナイトを埋め戻し材3として使用した場合には、地山Gから処分坑道2に侵入した地下水が接触するとともにベントナイトが膨潤し地山Gを押圧することによってさらなる地下水の侵入を防止することができ、且つ膨潤に伴い埋め戻し材3の透水係数が低下することで地下水の浸透を防止することができる。これにより、放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することが可能になる。
【0004】
そして、ベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材や、ベントナイトを板状に圧密成形し、このベントナイトプレートを破砕したベントナイト破砕材、ベントナイトを例えば円柱状に圧密成形したベントナイトペレット、ベントナイトを等方圧加圧処理により球形に圧密成形したベントナイトボールなど、数mm〜数十mm程度の大きさに形成したベントナイト成形体(ベントナイト粒状体)を埋め戻し材3として処分坑道2内に充填することが検討されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
一方、ベントナイト成形体を用いて優れたバリア性能を発揮させるためには、すなわち高密度のベントナイト遮水層を形成するためには、所定の空間にどれだけの質量のベントナイトを詰め込めるかが重要であるため、ベントナイト成形体を高密度で形成し、この高密度のベントナイト成形体を高充填率で充填(施工)する必要がある。
【0006】
これに対し、ベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材を用いる場合には、ベントナイト原鉱石の密度が高くないため、また、ベントナイト原鉱石を破砕する際にさらなる密度低下が生じるおそれがあるため、充填後に締め固めることが必要になってしまう。また、このようなベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材は、粒子形状が不規則であり、所定の空間に自由落下で投入しただけでは充填率が上がらないため、この点からも締め固めることが必要になってしまう。さらに、ベントナイトプレートを破砕したベントナイト破砕材においても、やはりベントナイトプレートを破砕することによって密度低下が生じるおそれがある。
【0007】
一方、ベントナイトを等方圧加圧処理により球形に圧密成形したベントナイトボールにおいては、球形に成形されているため、単一粒径のベントナイトボールを所定の空間に自由落下で投入した場合に、理論的に約75%の高充填率で充填することが可能である。しかしながら、数mm〜数十mm程度の粒径のベントナイトボールを数百MPaの圧力で等方圧加圧処理して成形することは、非常に大掛かりな装置が必要になるとともに、製造工程が複雑になり、製造に多大なコストを要するという問題があった。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒工程でディスクダイ(押し出し造粒機)を用いて湿潤状態の円柱状のベントナイト成形体を成形し、押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体を転動造粒工程で球形に成形し、さらに転動造粒工程で成形した球形のベントナイト成形体を乾燥収縮によって高密度化させるように乾燥工程で乾燥して、ベントナイト成形体を製造する方法を提案している(特願2008−127637)。
【0009】
このベントナイト成形体の製造方法によれば、高い圧力を使用したり、複雑な工程を要することなく、高密度で球形のベントナイト成形体を効率よく容易に製造することが可能になる。また、このように製造したベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入するだけで理論的に約75%の充填率で充填することが可能になる。
【特許文献1】特開2003−215297号公報
【特許文献2】特許第4036975号公報
【特許文献3】特開平6−41513号公報
【特許文献4】特許第3539928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方で、単一粒径のベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入して充填する場合と比較し、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体(粒径分布をもったベントナイト成形体)を所定空間に充填する方が高充填率で充填できる。
【0011】
しかしながら、従来の球形ベントナイト成形体は、押し出し造粒工程で、同径の押出孔を備えたディスクダイを用いてほぼ単一の大きさの円柱状のベントナイト成形体を成形し、円柱状のベントナイト成形体を転動造粒工程で球形に成形して製造するようにしていた。このため、粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を所定の空間に充填する場合には、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体をそれぞれ個別に製造し、これら粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を所定比率で事前に混ぜ合わせてから所定の空間に充填することになる。よって、充填率を高めるために、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混ぜ合わせるという煩雑な作業が必要になる。
【0012】
また、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混ぜ合わせる場合には、その混合作業に多大な労力と時間が必要になるため、粒径が異なる多種類のベントナイト成形体を用いることが難しく、例えば図12に示すように粒径分布が階段状になって、期待するほど充填率を高めることができないおそれもある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体の混合作業を不要にして、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を製造することができるベントナイト成形体の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0015】
本発明のベントナイト成形体の製造方法は、粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程と、該押し出し造粒工程で成形した前記ベントナイト成形体を転動造粒によって略球形に成形する転動造粒工程とを備えたベントナイト成形体の製造方法において、前記押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形し、前記転動造粒工程で、前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形することを特徴とする。
【0016】
ここで、転動造粒でベントナイト成形体を真球にすることは困難であるため、本発明において「略球形(略球形のベントナイト成形体)」とは、転動造粒で成形可能な範囲でベントナイト成形体の外面が滑らかな曲線で繋がりほぼ球形を呈した状態を意味する。
【0017】
この発明においては、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を同時に製造することが可能になる。これにより、容易に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で製造することが可能になり、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にできる。また、押し出し造粒工程で大きさが異なる多種類のベントナイト成形体を成形し、転動造粒工程で同時に転動造粒することで、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0018】
また、本発明のベントナイト成形体の製造方法においては、前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、大きさが異なる前記押出孔を備えたディスクダイを用意し、該ディスクダイを用いて前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に成形することが望ましい。
【0019】
この発明においては、押し出し造粒工程で、大きさが異なる押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト混練物を押し出し造粒することにより、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を製造することが可能になる。また、多種類の大きさの押出孔を備えたディスクダイを用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体を製造することが可能になる。
【0020】
さらに、本発明のベントナイト成形体の製造方法においては、前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、前記押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用意し、これらディスクダイを交換しながら前記大きさが異なるベントナイト成形体を成形するようにしてもよい。
【0021】
この発明においては、押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイ、すなわち各ディスクダイの押出孔の大きさが単一で、ディスクダイ同士の押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用い、これらディスクダイを交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによって、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を製造することが可能になる。また、押出孔の大きさが異なる多種類のディスクダイを用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体を製造することが可能になる。
【0022】
本発明のベントナイト成形体は、上記のベントナイト成形体の製造方法を用いて成形したことを特徴とする。
【0023】
この発明においては、上記のベントナイト成形体の製造方法によって成形するため、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)が得られることになり、所定の空間に自由落下で投入するだけで、確実に高充填率で充填することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体によれば、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を同時に混合した状態で製造することが可能になる。これにより、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にでき、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0025】
そして、このように製造したベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填することが可能になる。よって、例えば放射性廃棄物埋設処分施設の処分坑道を埋め戻す際の埋め戻し材などとして使用した場合に、確実にバリア性能に優れたベントナイト遮水層を形成することが可能になり、超長期にわたって放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することができ、信頼性の高い廃棄物埋設処分施設にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1から図11を参照し、本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体について説明する。本実施形態は、放射性廃棄物を処分する廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2の埋め戻し材3などとして用いられるベントナイト成形体の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体に関するものである。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のベントナイト成形体の製造方法においては、はじめに、粉体のベントナイトに所定量の水を加えて混ぜ合わせる。このとき、一般に粉体のベントナイトの含水比は7〜10%程度であり、この含水比が例えば25〜28%程度になるようにベントナイトに水を加えて混ぜ合わせる。なお、粉体のベントナイトに所定量の水を加えて混ぜ合わせた状態の含水比は、必ずしも25〜28%程度に限定されるものではなく、使用するベントナイトの特性(ベントナイトの産地など)や成形する粒径などに応じて適宜調整される。すなわち、粉体のベントナイトに対し水分量が少ないと、後述の押し出し造粒工程で成形した湿潤状態のベントナイト成形体の中の空気量が多くなり、後述の転動造粒工程による造粒時にベントナイト成形体が球形に成形されず、粉々になってしまう。また、水分量が多いと、押し出し造粒工程や転動造粒工程で成形される多数のベントナイト成形体が付着して大きな粒子になり、ベントナイト成形体が落花生型になったり、大きな空気層を含んで(低密度で)成形されてしまう。このため、粉体のベントナイトに加える水量は、ベントナイトの特性や成形する粒径などに応じ、押し出し造粒工程や転動造粒工程でベントナイト成形体を所定の形状に成形可能な量とする。
【0028】
そして、粉体のベントナイトと水を混練した段階で、押し出し造粒機を用いて、混練したベントナイト(ベントナイト混練物)を押し出し造粒し、湿潤状態の円柱状のベントナイト成形体を大量に成形する(押し出し造粒工程)。
【0029】
このとき、本実施形態のベントナイト成形体の製造方法では、押し出し造粒機のディスクダイとして、例えば図2に示すように、1mm、2mm、4mm、15mm、20mmなど、ベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔5aの孔径(大きさ)が異なるディスクダイ5を用意し、このディスクダイ5を用いてベントナイト成形体を成形する。そして、このようなディスクダイ5を用いることによって、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で同時に大量に成形する。
【0030】
あるいは、例えば図3(図3(a)、図3(b))に示すように、押出孔6a、7aの孔径(大きさ)が異なる複数のディスクダイ6、7、すなわち各ディスクダイ6、7の押出孔6a、7aの孔径が単一で、ディスクダイ6、7同士の押出孔6a、7aの孔径が異なる複数のディスクダイ6、7を用い、これらディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによって、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で大量に成形する。
【0031】
ついで、図1に示すように、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なる複数種のベントナイト成形体を転動造粒機に供給し、転動造粒機で転動造粒することによって、大きさが異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で同時に略球形に成形する(転動造粒工程)。このとき、例えば、転動造粒機のドラムに大量のベントナイト成形体を供給し、このドラムを高速回転させることでベントナイト成形体を略球形に成形する。
【0032】
そして、上記のように湿潤状態で略球形に成形したベントナイト成形体を乾燥させる(乾燥工程)。このとき、例えば図4に示すように、温風8が流通し熱が強制対流する乾燥炉9内に転動造粒工程で成形したベントナイト成形体10を設けて(すなわちベントナイト成形体10を熱が強制対流する空気環境下に設けて)乾燥させる。あるいは、例えば図5に示すように、熱源11から発せられた熱12が自然対流する空気環境下にベントナイト成形体10を設けて乾燥させる。このように温風8を流通させて熱を強制対流させた空気環境下や熱12を自然対流させた空気環境下に設けられたベントナイト成形体10は、乾燥収縮によって高密度化される。
【0033】
ここで、熱を強制対流させてベントナイト成形体10を乾燥させた場合には、図6に示すように、湿潤状態のベントナイト成形体10が、送風温度が40〜50℃であっても60分程度の乾燥時間で粉体のベントナイトと同等の含水比(7〜10%程度)まで乾燥する。また、熱12を自然対流させてベントナイト成形体10を乾燥させた場合には、図7に示すように、湿潤状態のベントナイト成形体10が、50℃で1440分程度(1日程度)、110℃でも240分程度の乾燥時間でゆっくりと乾燥する。
【0034】
図8は、図6で示した熱を強制対流させた場合と、図7で示した熱12を自然対流させた場合とでそれぞれ乾燥させたベントナイト成形体10の乾燥密度を示したものである。この図に示すように、50℃以下の温度であれば、熱を強制対流させた場合でも、熱によって乾燥収縮して高密度化し、時間をかけずに乾燥密度が1.8Mg/m3を上回る高密度のベントナイト成形体10が製造される。一方、熱12を自然対流させた場合には、強制対流させた場合よりゆっくりと乾燥することで、より乾燥収縮が良好に起こり、乾燥密度が2.0Mg/m3程度の、さらに高密度のベントナイト成形体10が製造される。
【0035】
このように粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を乾燥させた段階で、袋詰めなどすることにより、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10の混合物(ベントナイト成形体10)の製造が完了する。また、ベントナイト成形体10の混合物は、押し出し造粒工程で、多種類の大きさの押出孔5aを備えたディスクダイ5(図2参照)を用いたり、押出孔6a、7aの大きさが異なる多種類のディスクダイ6、7(図3参照)を用いることで、例えば図9に示すように、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10の混合物として製造される。
【0036】
そして、このように製造したベントナイト成形体10の混合物を例えば放射性廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2を埋め戻す際の埋め戻し材3などとして使用する際に、既に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10が混合した状態で製造されているため、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業が不要であり、ベントナイト成形体10の混合物を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填されることになる。
【0037】
したがって、本実施形態のベントナイト成形体10の製造方法においては、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体10を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を同時に製造することが可能になる。これにより、容易に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で製造することが可能になり、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にできる。また、押し出し造粒工程で大きさが異なる多種類のベントナイト成形体10を成形し、転動造粒工程で同時に転動造粒することで、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10(ベントナイト成形体10の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0038】
また、押し出し造粒工程で、大きさが異なる押出孔5aを備えたディスクダイ5を用いてベントナイト混練物を押し出し造粒することにより、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を製造することが可能になる。また、多種類の大きさの押出孔5aを備えたディスクダイ5を用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10を製造することが可能になる。
【0039】
さらに、押出孔6a、7aの大きさが異なる複数のディスクダイ6、7を用い、これらディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによっても、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を製造することが可能である。また、この場合には、押出孔6a、7aの大きさが異なる多種類のディスクダイ6、7を用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10を製造することが可能になる。
【0040】
これにより、本実施形態のベントナイト成形体10の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体10によれば、製造したベントナイト成形体10を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填することが可能になる。よって、例えば放射性廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2を埋め戻す際の埋め戻し材3などとして使用した場合に、確実にバリア性能に優れたベントナイト遮水層を形成することが可能になり、超長期にわたって放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することができ、信頼性の高い廃棄物埋設処分施設にすることが可能になる。
【0041】
以上、本発明に係るベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、押し出し造粒工程で、複数の押出孔5aの孔径が異なるディスクダイ5を用いてベントナイト成形体10を成形し、あるいは押出孔6a、7aの孔径が異なる複数のディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト成形体10を成形して、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で成形するものとした。これに対し、例えば同径の押出孔を備えたディスクダイを用い、押出孔から押し出されるベントナイト混練物の押出量を変化させながらベントナイト成形体10を成形するようにしてもよい。この場合においても、本実施形態と同様に、押し出し造粒工程で、大きさが異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で成形することが可能であり、この押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体10を転動造粒工程で同時に略球形に成形することで、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10(ベントナイト成形体10の混合物)を得ることが可能である。
【0042】
また、転動造粒工程で成形したベントナイト成形体10を乾燥する乾燥工程を、本実施形態に示した方法に限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で用いるディスクダイの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で用いるディスクダイの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の乾燥工程において、熱を強制対流させた空気環境下にベントナイト成形体を設けた状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の乾燥工程において、熱を自然対流させた空気環境下にベントナイト成形体を設けた状態を示す図である。
【図6】熱を強制対流させた場合におけるベントナイト成形体の含水比の時間変化の一例を示す図である。
【図7】熱を自然対流させた場合におけるベントナイト成形体の含水比の時間変化の一例を示す図である。
【図8】熱を強制対流させた場合と熱を自然対流させた場合のベントナイト成形体の乾燥密度の一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体の粒径分布の一例を示す図である。
【図10】廃棄物埋設処分施設を示す斜視図である。
【図11】図10の廃棄物埋設処分施設の主要坑道及び処分坑道を示す斜視図である。
【図12】従来のベントナイト成形体の製造方法で製造した粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した際の粒径分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 主要坑道
2 処分坑道
3 埋め戻し材
5 ディスクダイ
5a 押出孔
6 ディスクダイ
6a 押出孔
7 ディスクダイ
7a 押出孔
8 温風
9 乾燥炉
10 ベントナイト成形体
11 熱源
12 熱
A 廃棄物埋設処分施設
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射性廃棄物を処分した廃棄物埋設処分施設の処分坑道を埋め戻すための埋め戻し材などとして用いるベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下深部に高レベル(あるいは低レベル)の放射性廃棄物を埋設処分することが検討されている。この際、放射性廃棄物は、ガラスと混ぜて固化され、このガラス固化体を炭素鋼などからなるオーバーパックで密閉した廃棄体として処分される。また、廃棄体は、図10及び図11に示すように、地下深部の比較的安定した地山G内に、略環状に繋がる主要坑道1と、この主要坑道1と繋がるように形成した処分坑道や処分孔(以下、処分坑道2という)とからなる廃棄物埋設処分施設Aを構築し、この廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2内に処分される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、廃棄体を処分した処分坑道2をそのままにしておくと、処分坑道2の周辺地山Gの緩みが拡大したり、地下水の卓越した水みちが形成され、廃棄物埋設処分施設A全体としてのバリア性能を低下させるおそれがある。このため、地山Gと同等以上の低透水性の材料(埋め戻し材3)で処分坑道2を埋め戻すことが必要であり、この埋め戻し材3として、膨潤性や放射性物質の吸着性に優れるベントナイトを用いることが検討されている。そして、このようなベントナイトを埋め戻し材3として使用した場合には、地山Gから処分坑道2に侵入した地下水が接触するとともにベントナイトが膨潤し地山Gを押圧することによってさらなる地下水の侵入を防止することができ、且つ膨潤に伴い埋め戻し材3の透水係数が低下することで地下水の浸透を防止することができる。これにより、放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することが可能になる。
【0004】
そして、ベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材や、ベントナイトを板状に圧密成形し、このベントナイトプレートを破砕したベントナイト破砕材、ベントナイトを例えば円柱状に圧密成形したベントナイトペレット、ベントナイトを等方圧加圧処理により球形に圧密成形したベントナイトボールなど、数mm〜数十mm程度の大きさに形成したベントナイト成形体(ベントナイト粒状体)を埋め戻し材3として処分坑道2内に充填することが検討されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
一方、ベントナイト成形体を用いて優れたバリア性能を発揮させるためには、すなわち高密度のベントナイト遮水層を形成するためには、所定の空間にどれだけの質量のベントナイトを詰め込めるかが重要であるため、ベントナイト成形体を高密度で形成し、この高密度のベントナイト成形体を高充填率で充填(施工)する必要がある。
【0006】
これに対し、ベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材を用いる場合には、ベントナイト原鉱石の密度が高くないため、また、ベントナイト原鉱石を破砕する際にさらなる密度低下が生じるおそれがあるため、充填後に締め固めることが必要になってしまう。また、このようなベントナイト原鉱石を破砕したベントナイト破砕材は、粒子形状が不規則であり、所定の空間に自由落下で投入しただけでは充填率が上がらないため、この点からも締め固めることが必要になってしまう。さらに、ベントナイトプレートを破砕したベントナイト破砕材においても、やはりベントナイトプレートを破砕することによって密度低下が生じるおそれがある。
【0007】
一方、ベントナイトを等方圧加圧処理により球形に圧密成形したベントナイトボールにおいては、球形に成形されているため、単一粒径のベントナイトボールを所定の空間に自由落下で投入した場合に、理論的に約75%の高充填率で充填することが可能である。しかしながら、数mm〜数十mm程度の粒径のベントナイトボールを数百MPaの圧力で等方圧加圧処理して成形することは、非常に大掛かりな装置が必要になるとともに、製造工程が複雑になり、製造に多大なコストを要するという問題があった。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒工程でディスクダイ(押し出し造粒機)を用いて湿潤状態の円柱状のベントナイト成形体を成形し、押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体を転動造粒工程で球形に成形し、さらに転動造粒工程で成形した球形のベントナイト成形体を乾燥収縮によって高密度化させるように乾燥工程で乾燥して、ベントナイト成形体を製造する方法を提案している(特願2008−127637)。
【0009】
このベントナイト成形体の製造方法によれば、高い圧力を使用したり、複雑な工程を要することなく、高密度で球形のベントナイト成形体を効率よく容易に製造することが可能になる。また、このように製造したベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入するだけで理論的に約75%の充填率で充填することが可能になる。
【特許文献1】特開2003−215297号公報
【特許文献2】特許第4036975号公報
【特許文献3】特開平6−41513号公報
【特許文献4】特許第3539928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方で、単一粒径のベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入して充填する場合と比較し、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体(粒径分布をもったベントナイト成形体)を所定空間に充填する方が高充填率で充填できる。
【0011】
しかしながら、従来の球形ベントナイト成形体は、押し出し造粒工程で、同径の押出孔を備えたディスクダイを用いてほぼ単一の大きさの円柱状のベントナイト成形体を成形し、円柱状のベントナイト成形体を転動造粒工程で球形に成形して製造するようにしていた。このため、粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を所定の空間に充填する場合には、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体をそれぞれ個別に製造し、これら粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を所定比率で事前に混ぜ合わせてから所定の空間に充填することになる。よって、充填率を高めるために、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混ぜ合わせるという煩雑な作業が必要になる。
【0012】
また、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混ぜ合わせる場合には、その混合作業に多大な労力と時間が必要になるため、粒径が異なる多種類のベントナイト成形体を用いることが難しく、例えば図12に示すように粒径分布が階段状になって、期待するほど充填率を高めることができないおそれもある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体の混合作業を不要にして、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を製造することができるベントナイト成形体の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0015】
本発明のベントナイト成形体の製造方法は、粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程と、該押し出し造粒工程で成形した前記ベントナイト成形体を転動造粒によって略球形に成形する転動造粒工程とを備えたベントナイト成形体の製造方法において、前記押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形し、前記転動造粒工程で、前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形することを特徴とする。
【0016】
ここで、転動造粒でベントナイト成形体を真球にすることは困難であるため、本発明において「略球形(略球形のベントナイト成形体)」とは、転動造粒で成形可能な範囲でベントナイト成形体の外面が滑らかな曲線で繋がりほぼ球形を呈した状態を意味する。
【0017】
この発明においては、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を同時に製造することが可能になる。これにより、容易に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で製造することが可能になり、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にできる。また、押し出し造粒工程で大きさが異なる多種類のベントナイト成形体を成形し、転動造粒工程で同時に転動造粒することで、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0018】
また、本発明のベントナイト成形体の製造方法においては、前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、大きさが異なる前記押出孔を備えたディスクダイを用意し、該ディスクダイを用いて前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に成形することが望ましい。
【0019】
この発明においては、押し出し造粒工程で、大きさが異なる押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト混練物を押し出し造粒することにより、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を製造することが可能になる。また、多種類の大きさの押出孔を備えたディスクダイを用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体を製造することが可能になる。
【0020】
さらに、本発明のベントナイト成形体の製造方法においては、前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、前記押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用意し、これらディスクダイを交換しながら前記大きさが異なるベントナイト成形体を成形するようにしてもよい。
【0021】
この発明においては、押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイ、すなわち各ディスクダイの押出孔の大きさが単一で、ディスクダイ同士の押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用い、これらディスクダイを交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによって、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を製造することが可能になる。また、押出孔の大きさが異なる多種類のディスクダイを用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体を製造することが可能になる。
【0022】
本発明のベントナイト成形体は、上記のベントナイト成形体の製造方法を用いて成形したことを特徴とする。
【0023】
この発明においては、上記のベントナイト成形体の製造方法によって成形するため、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)が得られることになり、所定の空間に自由落下で投入するだけで、確実に高充填率で充填することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体によれば、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を同時に混合した状態で製造することが可能になる。これにより、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にでき、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体(ベントナイト成形体の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0025】
そして、このように製造したベントナイト成形体を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填することが可能になる。よって、例えば放射性廃棄物埋設処分施設の処分坑道を埋め戻す際の埋め戻し材などとして使用した場合に、確実にバリア性能に優れたベントナイト遮水層を形成することが可能になり、超長期にわたって放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することができ、信頼性の高い廃棄物埋設処分施設にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1から図11を参照し、本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体について説明する。本実施形態は、放射性廃棄物を処分する廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2の埋め戻し材3などとして用いられるベントナイト成形体の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体に関するものである。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のベントナイト成形体の製造方法においては、はじめに、粉体のベントナイトに所定量の水を加えて混ぜ合わせる。このとき、一般に粉体のベントナイトの含水比は7〜10%程度であり、この含水比が例えば25〜28%程度になるようにベントナイトに水を加えて混ぜ合わせる。なお、粉体のベントナイトに所定量の水を加えて混ぜ合わせた状態の含水比は、必ずしも25〜28%程度に限定されるものではなく、使用するベントナイトの特性(ベントナイトの産地など)や成形する粒径などに応じて適宜調整される。すなわち、粉体のベントナイトに対し水分量が少ないと、後述の押し出し造粒工程で成形した湿潤状態のベントナイト成形体の中の空気量が多くなり、後述の転動造粒工程による造粒時にベントナイト成形体が球形に成形されず、粉々になってしまう。また、水分量が多いと、押し出し造粒工程や転動造粒工程で成形される多数のベントナイト成形体が付着して大きな粒子になり、ベントナイト成形体が落花生型になったり、大きな空気層を含んで(低密度で)成形されてしまう。このため、粉体のベントナイトに加える水量は、ベントナイトの特性や成形する粒径などに応じ、押し出し造粒工程や転動造粒工程でベントナイト成形体を所定の形状に成形可能な量とする。
【0028】
そして、粉体のベントナイトと水を混練した段階で、押し出し造粒機を用いて、混練したベントナイト(ベントナイト混練物)を押し出し造粒し、湿潤状態の円柱状のベントナイト成形体を大量に成形する(押し出し造粒工程)。
【0029】
このとき、本実施形態のベントナイト成形体の製造方法では、押し出し造粒機のディスクダイとして、例えば図2に示すように、1mm、2mm、4mm、15mm、20mmなど、ベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔5aの孔径(大きさ)が異なるディスクダイ5を用意し、このディスクダイ5を用いてベントナイト成形体を成形する。そして、このようなディスクダイ5を用いることによって、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で同時に大量に成形する。
【0030】
あるいは、例えば図3(図3(a)、図3(b))に示すように、押出孔6a、7aの孔径(大きさ)が異なる複数のディスクダイ6、7、すなわち各ディスクダイ6、7の押出孔6a、7aの孔径が単一で、ディスクダイ6、7同士の押出孔6a、7aの孔径が異なる複数のディスクダイ6、7を用い、これらディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによって、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で大量に成形する。
【0031】
ついで、図1に示すように、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なる複数種のベントナイト成形体を転動造粒機に供給し、転動造粒機で転動造粒することによって、大きさが異なる複数種のベントナイト成形体を混合した状態で同時に略球形に成形する(転動造粒工程)。このとき、例えば、転動造粒機のドラムに大量のベントナイト成形体を供給し、このドラムを高速回転させることでベントナイト成形体を略球形に成形する。
【0032】
そして、上記のように湿潤状態で略球形に成形したベントナイト成形体を乾燥させる(乾燥工程)。このとき、例えば図4に示すように、温風8が流通し熱が強制対流する乾燥炉9内に転動造粒工程で成形したベントナイト成形体10を設けて(すなわちベントナイト成形体10を熱が強制対流する空気環境下に設けて)乾燥させる。あるいは、例えば図5に示すように、熱源11から発せられた熱12が自然対流する空気環境下にベントナイト成形体10を設けて乾燥させる。このように温風8を流通させて熱を強制対流させた空気環境下や熱12を自然対流させた空気環境下に設けられたベントナイト成形体10は、乾燥収縮によって高密度化される。
【0033】
ここで、熱を強制対流させてベントナイト成形体10を乾燥させた場合には、図6に示すように、湿潤状態のベントナイト成形体10が、送風温度が40〜50℃であっても60分程度の乾燥時間で粉体のベントナイトと同等の含水比(7〜10%程度)まで乾燥する。また、熱12を自然対流させてベントナイト成形体10を乾燥させた場合には、図7に示すように、湿潤状態のベントナイト成形体10が、50℃で1440分程度(1日程度)、110℃でも240分程度の乾燥時間でゆっくりと乾燥する。
【0034】
図8は、図6で示した熱を強制対流させた場合と、図7で示した熱12を自然対流させた場合とでそれぞれ乾燥させたベントナイト成形体10の乾燥密度を示したものである。この図に示すように、50℃以下の温度であれば、熱を強制対流させた場合でも、熱によって乾燥収縮して高密度化し、時間をかけずに乾燥密度が1.8Mg/m3を上回る高密度のベントナイト成形体10が製造される。一方、熱12を自然対流させた場合には、強制対流させた場合よりゆっくりと乾燥することで、より乾燥収縮が良好に起こり、乾燥密度が2.0Mg/m3程度の、さらに高密度のベントナイト成形体10が製造される。
【0035】
このように粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を乾燥させた段階で、袋詰めなどすることにより、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10の混合物(ベントナイト成形体10)の製造が完了する。また、ベントナイト成形体10の混合物は、押し出し造粒工程で、多種類の大きさの押出孔5aを備えたディスクダイ5(図2参照)を用いたり、押出孔6a、7aの大きさが異なる多種類のディスクダイ6、7(図3参照)を用いることで、例えば図9に示すように、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10の混合物として製造される。
【0036】
そして、このように製造したベントナイト成形体10の混合物を例えば放射性廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2を埋め戻す際の埋め戻し材3などとして使用する際に、既に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10が混合した状態で製造されているため、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業が不要であり、ベントナイト成形体10の混合物を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填されることになる。
【0037】
したがって、本実施形態のベントナイト成形体10の製造方法においては、押し出し造粒工程で成形した大きさが異なるベントナイト成形体10を転動造粒工程で同時に転動造粒することによって、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を同時に製造することが可能になる。これにより、容易に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で製造することが可能になり、従来のように個別に成形した粒径が異なるベントナイト成形体を所定比率で混ぜ合わせる混合作業を不要にできる。また、押し出し造粒工程で大きさが異なる多種類のベントナイト成形体10を成形し、転動造粒工程で同時に転動造粒することで、滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10(ベントナイト成形体10の混合物)を容易に且つ確実に製造することが可能になる。
【0038】
また、押し出し造粒工程で、大きさが異なる押出孔5aを備えたディスクダイ5を用いてベントナイト混練物を押し出し造粒することにより、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を製造することが可能になる。また、多種類の大きさの押出孔5aを備えたディスクダイ5を用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10を製造することが可能になる。
【0039】
さらに、押出孔6a、7aの大きさが異なる複数のディスクダイ6、7を用い、これらディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト混練物を押し出し造粒することによっても、容易に且つ確実に粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10を製造することが可能である。また、この場合には、押出孔6a、7aの大きさが異なる多種類のディスクダイ6、7を用いることで、容易に且つ確実に滑らかな粒径分布をもったベントナイト成形体10を製造することが可能になる。
【0040】
これにより、本実施形態のベントナイト成形体10の製造方法及びこの製造方法で製造したベントナイト成形体10によれば、製造したベントナイト成形体10を所定の空間に自由落下で投入するだけで、単一粒径のベントナイト成形体を用いる場合よりも高充填率で充填することが可能になる。よって、例えば放射性廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2を埋め戻す際の埋め戻し材3などとして使用した場合に、確実にバリア性能に優れたベントナイト遮水層を形成することが可能になり、超長期にわたって放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することができ、信頼性の高い廃棄物埋設処分施設にすることが可能になる。
【0041】
以上、本発明に係るベントナイト成形体の製造方法及びベントナイト成形体の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、押し出し造粒工程で、複数の押出孔5aの孔径が異なるディスクダイ5を用いてベントナイト成形体10を成形し、あるいは押出孔6a、7aの孔径が異なる複数のディスクダイ6、7を交換しながらベントナイト成形体10を成形して、大きさ(直径)が異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で成形するものとした。これに対し、例えば同径の押出孔を備えたディスクダイを用い、押出孔から押し出されるベントナイト混練物の押出量を変化させながらベントナイト成形体10を成形するようにしてもよい。この場合においても、本実施形態と同様に、押し出し造粒工程で、大きさが異なる複数種のベントナイト成形体10を混合した状態で成形することが可能であり、この押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体10を転動造粒工程で同時に略球形に成形することで、粒径が異なる複数種のベントナイト成形体10(ベントナイト成形体10の混合物)を得ることが可能である。
【0042】
また、転動造粒工程で成形したベントナイト成形体10を乾燥する乾燥工程を、本実施形態に示した方法に限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で用いるディスクダイの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で用いるディスクダイの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の乾燥工程において、熱を強制対流させた空気環境下にベントナイト成形体を設けた状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の乾燥工程において、熱を自然対流させた空気環境下にベントナイト成形体を設けた状態を示す図である。
【図6】熱を強制対流させた場合におけるベントナイト成形体の含水比の時間変化の一例を示す図である。
【図7】熱を自然対流させた場合におけるベントナイト成形体の含水比の時間変化の一例を示す図である。
【図8】熱を強制対流させた場合と熱を自然対流させた場合のベントナイト成形体の乾燥密度の一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るベントナイト成形体の製造方法の押し出し造粒工程で成形したベントナイト成形体の粒径分布の一例を示す図である。
【図10】廃棄物埋設処分施設を示す斜視図である。
【図11】図10の廃棄物埋設処分施設の主要坑道及び処分坑道を示す斜視図である。
【図12】従来のベントナイト成形体の製造方法で製造した粒径が異なる複数種のベントナイト成形体を混合した際の粒径分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 主要坑道
2 処分坑道
3 埋め戻し材
5 ディスクダイ
5a 押出孔
6 ディスクダイ
6a 押出孔
7 ディスクダイ
7a 押出孔
8 温風
9 乾燥炉
10 ベントナイト成形体
11 熱源
12 熱
A 廃棄物埋設処分施設
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程と、該押し出し造粒工程で成形した前記ベントナイト成形体を転動造粒によって略球形に成形する転動造粒工程とを備えたベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形し、
前記転動造粒工程で、前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形することを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、
大きさが異なる前記押出孔を備えたディスクダイを用意し、該ディスクダイを用いて前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に成形するようにしたことを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、
前記押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用意し、これらディスクダイを交換しながら前記大きさが異なるベントナイト成形体を成形するようにしたことを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のベントナイト成形体の製造方法を用いて成形したことを特徴とするベントナイト成形体。
【請求項1】
粉体のベントナイトに水を加えて混ぜ合わせるとともに、押し出し造粒によって湿潤状態のベントナイト成形体を成形する押し出し造粒工程と、該押し出し造粒工程で成形した前記ベントナイト成形体を転動造粒によって略球形に成形する転動造粒工程とを備えたベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、大きさが異なるベントナイト成形体を成形し、
前記転動造粒工程で、前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に略球形に成形することを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、
大きさが異なる前記押出孔を備えたディスクダイを用意し、該ディスクダイを用いて前記大きさが異なるベントナイト成形体を同時に成形するようにしたことを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のベントナイト成形体の製造方法において、
前記押し出し造粒工程で、前記ベントナイトと前記水を混ぜ合わせたベントナイト混練物が押し出される複数の押出孔を備えたディスクダイを用いてベントナイト成形体が成形され、
前記押出孔の大きさが異なる複数のディスクダイを用意し、これらディスクダイを交換しながら前記大きさが異なるベントナイト成形体を成形するようにしたことを特徴とするベントナイト成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のベントナイト成形体の製造方法を用いて成形したことを特徴とするベントナイト成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−143146(P2010−143146A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324367(P2008−324367)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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